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  • 特開-手指消毒監視システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118623
(43)【公開日】2022-08-15
(54)【発明の名称】手指消毒監視システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 25/10 20060101AFI20220805BHJP
   G16H 40/20 20180101ALI20220805BHJP
【FI】
G08B25/10 D
G16H40/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021015282
(22)【出願日】2021-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】591253593
【氏名又は名称】株式会社ケアコム
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 諭
【テーマコード(参考)】
5C087
5L099
【Fターム(参考)】
5C087AA02
5C087AA10
5C087AA19
5C087BB11
5C087BB18
5C087BB72
5C087DD03
5C087DD29
5C087DD35
5C087FF02
5C087FF16
5C087FF23
5C087GG06
5C087GG36
5C087GG38
5C087GG66
5L099AA00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】医療従事者が患者と接触する前後に手指消毒が行われていないことをより正確に検知できる手指消毒監視システムを提供する。
【解決手段】消毒用容器100に対する消毒液剤の吐出操作を検出して検出信号を送信する吐出操作検出装置1と、患者が携帯し、定期的に所定信号を送信する無線送信装置2と、医療従事者が携帯する携帯端末3と、を備える手指消毒監視システムであって、携帯端末3は、所定信号を受信する前の第1所定時間内に検出信号を受信していない場合に、手指消毒を行うように促す催告通知を行う。医療従事者が消毒用容器100の吐出操作を実際に行ったとき、吐出操作検出装置1から出力される検出信号と、医療従事者が患者に近づいたときに送信される所定信号との夫々の受信時刻を利用して判定を行うことにより、医療従事者が患者と接触する前に手指消毒が行われていないことをより正確に検知する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消毒液剤を吐出する消毒用容器に設けられ、当該消毒用容器に対する消毒液剤の吐出操作が行われたことを検出して検出信号を送信する吐出操作検出装置と、
患者により携帯され、所定のインターバルを置いて定期的に所定信号を送信する無線送信装置と、
医療従事者により携帯され、上記検出信号および上記所定信号を受信する携帯端末とを備え、
上記携帯端末は、上記所定信号を受信したときに、上記所定信号を受信する前の第1所定時間内に上記検出信号を受信しているか否かを判定し、上記第1所定時間内に上記検出信号を受信していないと判定された場合に、上記医療従事者に対して手指消毒を行うように促す催告通知を行うことを特徴とする手指消毒監視システム。
【請求項2】
上記携帯端末は、上記所定信号を最初に受信した後の第2所定時間内に上記検出信号を受信したか否かを更に判定し、上記所定信号を最初に受信する前の上記第1所定時間内に上記検出信号を受信しておらず、かつ、上記所定信号を最初に受信した後の第2所定時間内に上記検出信号を受信していないと判定された場合に、上記催告通知を更に行うことを特徴とする請求項1に記載の手指消毒監視システム。
【請求項3】
上記携帯端末は、上記所定信号を最後に受信した後の第3所定時間内に上記検出信号を受信したか否かを更に判定し、上記第3所定時間内に上記検出信号を受信していない場合に、上記催告通知を更に行うことを特徴とする請求項1または2に記載の手指消毒監視システム。
【請求項4】
上記無線送信装置は、患者により携帯されることに代えて、患者が所在する場所に設置されることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の手指消毒監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手指消毒監視システムに関し、特に、手指消毒を実行しているか否かを監視するシステムに用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
WHOは医療関連感染の中で、医療従事者の手指が媒体となって病原体の感染伝播が発生する5段階について警鐘を鳴らし、ガイドラインを通じて、石鹸と流水による手洗いや、アルコール消毒薬による手指消毒といった手指衛生の励行を推奨している。しかし、医療従事者の手指衛生実施率が50%にすら満たない医療機関も多く、その遵守率(コンプライアンス)は高くない。
【0003】
そのため、医療従事者が必要なタイミングで手指衛生を実行しているかどうかの実態をセンシングし、その結果を現場にフィードバックすることにより、手指衛生の遵守率向上に努めることが求められている。これに対し、従来、手指衛生の実施状況を管理または監視するシステムが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
特許文献1に記載の院内手洗い管理システムでは、消毒用アルコールボトルが使用されたときの押圧力を検知する感圧センサから通信機を介して送信される押圧値と、そのときに医療従事者のネームカードホルダなどに装着されている個人ID送信機から送信される個人IDとを、院内各所に設置された中継機を介して院内サーバにて受信することにより、「だれが」「どこで」「いつ」手指消毒を実施したかという情報を収集して管理する。
【0005】
特許文献2に記載の監視システムでは、手洗い場などの監視エリアを撮像し、監視エリア内を移動する移動体の移動軌跡と滞在時間とに基づいて所定の動作(手洗い動作)を実行しているか否かを判定し、実行していない場合に警告などを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-180960号公報
【特許文献2】特開2011-34458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
病原体の感染伝播を防止するためには、医療従事者が患者と接触する前後に手指消毒が行われている必要がある。しかしながら、上記特許文献1に記載のシステムでは、手指消毒の実施の有無を管理するのみである。そのため、だれが、どこで、いつ手指消毒を実施したかを把握することはできるものの、手指消毒を実施していない者に対してリアルタイムに実施を促すことはできない。そのため、医療従事者が手指消毒を行わないまま患者と接触することを防止することができない。
【0008】
一方、特許文献2に記載のシステムによれば、手洗い動作を実行していないと判定された者に対して手洗い動作を行うように警告することができる。しかしながら、特許文献2に記載の技術は、監視エリアでの移動体の移動軌跡と滞在時間とに基づいて手洗い動作を実行しているか否かを判定する仕組みのため、手洗い動作を実行していない場合であっても、移動軌跡と滞在時間の条件が合致すれば手洗い動作を実行していると判定されることがある。逆に、手洗い動作を実行している場合であっても、移動軌跡と滞在時間の条件が合致しなければ手洗い動作を実行していないと判定されることもある。このように、特許文献2に記載のシステムでは、誤った警告が行われたり、必要な警告が行われなかったりするという問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、医療従事者が患者と接触する前後において、手指消毒が行われていないことをより正確に検知して警告を行うことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するために、本発明の手指消毒監視システムは、消毒液剤を吐出する消毒用容器に設けられ、当該消毒用容器に対する消毒液剤の吐出操作が行われたことを検出して検出信号を送信する吐出操作検出装置と、患者により携帯され、所定のインターバルを置いて定期的に所定信号を送信する無線送信装置と、医療従事者により携帯され、検出信号および所定信号を受信する携帯端末とを備え、携帯端末において、所定信号を受信したときに、所定信号を受信する前の第1所定時間内に検出信号を受信しているか否かを判定し、第1所定時間内に検出信号を受信していないと判定された場合に、医療従事者に対して手指消毒を行うように促す催告通知を行うようにしている。
【発明の効果】
【0011】
上記のように構成した本発明によれば、医療従事者が手指消毒を行うために消毒用容器の吐出操作を実際に行ったときに吐出操作検出装置から出力される検出信号を用いて、医療従事者により手指消毒が行われているか否かが判定される。このため、移動体の移動軌跡および滞在時間に基づいて判定する従来技術と比べて、手指消毒が行われているか否かをより正確に判定することが可能である。また、本発明では、携帯端末を携帯する医療従事者が無線送信装置を携帯する患者に近づいたときに携帯端末にて受信される所定信号および上述の検出信号のそれぞれの受信時刻を利用して、医療従事者が患者に近づいて所定信号を受信する前の第1所定時間内に手指消毒が行われているか否かを判定することが可能である。これにより、本発明によれば、医療従事者が患者と接触する前に手指消毒が行われていないことをより正確に検知して警告を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態による手指消毒監視システムの構成例を示す図である。
図2】本実施形態の携帯端末が備える機能構成例を示すブロック図である。
図3】本実施形態の携帯端末が備える他の機能構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態による手指消毒監視システムの構成例を示す図である。図1に示すように、本実施形態の手指消毒監視システムは、医療従事者により携帯される消毒用容器100に設けられた吐出操作検出装置1と、患者により携帯される無線送信装置2と、医療従事者により携帯される携帯端末3とを備えて構成される。
【0014】
消毒用容器100は、例えばポンプ式のボトルであり、上部のノズルヘッドを下方に押下することにより、ボトル内の消毒液剤が一定量吐出されるようになっている。このノズルヘッドに吐出操作検出装置1が装着されている。吐出操作検出装置1は、感圧センサと無線送信装置とを備えており、消毒用容器100に対する消毒液剤の吐出操作(ノズルヘッドの押下操作)が行われたことを検出して検出信号を送信する。
【0015】
吐出操作検出装置1の無線送信装置は、例えばBLE(Bluetooth Low Energy)タグであり(Bluetoothは登録商標)、吐出操作検出装置1は検出信号をBLE信号として無線送信する。医療従事者が携帯する消毒用容器100に設けられた吐出操作検出装置1の無線送信装置が送信する検出信号は、同じ医療従事者が携帯する携帯端末3で受信できればよく、無線送信装置の通信距離(通信可能範囲)は数十cmから数mほどあれば十分である。
【0016】
なお、ここで説明した消毒用容器100の構成および吐出操作検出装置1の構成は一例であり、これに限定されるものではない。
【0017】
患者が携帯する無線送信装置2は、所定のインターバルを置いて定期的に所定信号を送信する。所定信号は、吐出操作検出装置1から出力される検出信号と区別し得るものであればよく、その内容は任意である。無線送信装置2は、例えばBLEタグであり、所定信号をBLE信号として無線送信する。無線送信装置2が送信する所定信号の通信距離は、数mから十数m程度である。
【0018】
携帯端末3は、吐出操作検出装置1から送信される検出信号および無線送信装置2から送信される所定信号を受信する。吐出操作検出装置1と携帯端末3は何れも同じ医療従事者により携帯されるので、吐出操作検出装置1から検出信号が送信されると、それは常に携帯端末3にて受信される。一方、無線送信装置2は患者により携帯されるので、無線送信装置2から定期的に送信される所定信号は、無線送信装置2の通信距離以内に医療従事者が存在するときにのみ携帯端末3にて受信される。
【0019】
図1(a)は、無線送信装置2の通信距離外の場所で、医療従事者が消毒用容器100の吐出操作を行った状態を示している。この場合、医療従事者が携帯する吐出操作検出装置1から送信された検出信号は携帯端末3にて受信される一方、患者が携帯する無線送信装置2から送信された所定信号は携帯端末3にて受信されない。図1(b)は無線送信装置2の通信距離以内に医療従事者が存在する状態を示している。この場合、無線送信装置2から送信された所定信号は携帯端末3にて受信される。
【0020】
携帯端末3は、患者の無線送信装置2から送信された所定信号を受信したときに、当該所定信号を受信する前の第1所定時間内に吐出操作検出装置1から検出信号を受信しているか否かを判定し、第1所定時間内に検出信号を受信していないと判定された場合に、医療従事者に対して手指消毒を行うように促す催告通知を行う。第1所定時間は、医療従事者が患者と接触する際における病原体の感染伝播を防止するために、医療従事者が患者と接触する前に手指消毒を行うという観点から適切な値に設定される。また、医療従事者が通常の歩行速度で患者のもとに向かうことを想定して、第1所定時間は「(第1所定時間×歩行速度)>(無線送信装置2の通信距離)」の関係が成り立つ値に設定される。
【0021】
図2は、携帯端末3が備える機能構成例を示すブロック図である。図2に示すように、本実施形態の携帯端末3は、機能構成として、信号受信部31、信号判定部32、検出信号受信時刻記憶部33、受信状況判定部34および催告通知部35を備えている。これらの機能ブロック31~35は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック31~35は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROMに記憶されたプログラムが動作することによって実現される。なお、当該プログラムは、ハードディスクや半導体メモリ等の他の記録媒体に記憶されていてもよい。
【0022】
信号受信部31は、BLE信号を受信する。信号受信部31が受信するBLE信号は、医療従事者の吐出操作検出装置1から送信される検出信号および患者の無線送信装置2から送信される所定信号を含む。信号判定部32は、信号受信部31により受信されたBLE信号が検出信号または所定信号の何れであるかを判定する。
【0023】
検出信号受信時刻記憶部33は、信号受信部31により受信されたBLE信号が検出信号であると信号判定部32により判定された場合、その検出信号の受信時刻を記憶する。検出信号受信時刻記憶部33は、信号受信部31により検出信号が受信される都度、その受信時刻を記憶する。ここで、検出信号受信時刻記憶部33は、検出信号の受信時刻を全て記憶してもよいし、直近の受信時刻のみを記憶するようにしてもよい。
【0024】
受信状況判定部34は、信号受信部31により受信されたBLE信号が所定信号であると信号判定部32により判定された場合、その所定信号の受信時刻と、検出信号受信時刻記憶部33に記憶された検出信号の直近の受信時刻とを比較して、所定信号を受信する前の第1所定時間内に検出信号を受信しているか否かを判定する。
【0025】
ここで、患者の無線送信装置2から所定信号を受信する前の第1所定時間内に医療従事者が消毒用容器100の吐出操作を行っていない場合は、所定信号の受信時刻より前の第1所定時間以内における検出信号の受信時刻が検出信号受信時刻記憶部33に記憶されていない。よって、この場合に受信状況判定部34は、所定信号を受信する前の第1所定時間内に検出信号を受信していないと判定する。一方、所定信号を受信する前の第1所定時間内に医療従事者が消毒用容器100の吐出操作を行っている場合は、所定信号の受信時刻より前の第1所定時間以内における検出信号の受信時刻が検出信号受信時刻記憶部33に記憶されている。よって、この場合に受信状況判定部34は、所定信号を受信する前の第1所定時間内に検出信号を受信していると判定する。
【0026】
催告通知部35は、所定信号を受信する前の第1所定時間内に検出信号を受信していないと受信状況判定部34により判定された場合に、医療従事者に対して手指消毒を行うように促す催告通知を行う。例えば、催告通知部35は、携帯端末3が備えるディスプレイに対して、医療従事者に対して手指消毒を行うように促す警告メッセージを表示する。このとき、携帯端末3が備えるスピーカから警告音を出力するようにしてもよい。
【0027】
受信状況判定部34は、医療従事者が無線送信装置2の通信距離内の場所に入ることによって信号受信部31により最初に受信された所定信号について上述の判定を行った後、信号受信部31により引き続き所定のインターバルで定期的に受信される所定信号については上述の判定を行わないようにする。催告通知が繰り返し行われることを防ぐためである。医療従事者が無線送信装置2の通信距離外の位置にいったん離れることによって信号受信部31が所定のインターバルで所定信号を受信しなくなった後、所定信号を再び受信した場合には判定を再実行する。
【0028】
以上のように構成した本実施形態によれば、医療従事者が手指消毒を行うために消毒用容器100の吐出操作を実際に行ったときに吐出操作検出装置1から出力される検出信号を用いて、医療従事者により手指消毒が行われているか否かが判定される。このため、移動体の移動軌跡および滞在時間に基づいて手指衛生が行われているか否か判定する従来技術と比べて、手指消毒が行われているか否かをより正確に判定することが可能である。
【0029】
また、本実施形態では、医療従事者が消毒用容器100の吐出操作を実際に行ったときに携帯端末3にて受信される検出信号の受信時刻を記憶しておいて、携帯端末3を携帯する医療従事者が無線送信装置2を携帯する患者に近づいたときに携帯端末3にて受信される所定信号の受信時刻と比較することにより、医療従事者が患者に近づいて所定信号を受信する前の第1所定時間内に手指消毒が行われているか否かを判定することを可能としている。
【0030】
以上により、本実施形態によれば、医療従事者が患者と接触する前に手指消毒が行われていないことをより正確に検知して警告を行うことができる。
【0031】
なお、上記実施形態において、携帯端末3は、所定信号を最初に受信した後の第2所定時間内に検出信号を受信したか否かを更に判定し、所定信号を最初に受信する前の第1所定時間内に検出信号を受信しておらず、かつ、所定信号を最初に受信した後の第2所定時間内に検出信号を受信していないと判定された場合に、催告通知を更に行うようにしてもよい。
【0032】
例えば、医療従事者が通常の歩行速度で患者のもとに向かうことを想定して、「(第1所定時間×歩行速度)>(無線送信装置2の通信距離)」の関係が成り立つように第1所定時間を設定するとともに、「(無線送信装置2の通信距離)>(第2所定時間×歩行速度)」の関係が成り立つように第2所定時間を設定する。そして、受信状況判定部34は、医療従事者が無線送信装置2の通信距離内の場所に入ることによって信号受信部31により最初に所定信号が受信された時点で上述の判定を行うとともに、そのときの時刻を記憶する。また、受信状況判定部34は、当該1回目の判定を行ったときから第2所定時間が経過した時点で、1回目の判定を行った後に検出信号を受信しているか否か(1回目の判定を行った時刻よりも後の受信時刻が検出信号受信時刻記憶部33に記憶されているか否か)の判定を行う。
【0033】
このようにすると、医療従事者が無線送信装置2の通信距離内の場所に入った時点で、無線送信装置2の通信距離外の場所で医療従事者により手指消毒が行われたか否かが一度判定される。また、それから第2所定時間後の時点で、無線送信装置2の通信距離内の場所で患者に接触する前に医療従事者により手指消毒が行われたか否かが再度判定される。そして、通信距離外の場所で手指消毒が行われていない場合は、携帯端末3が無線送信装置2から最初に所定信号を受信したときに催告通知が行われる。さらに、それから第2所定時間以内にもまだ手指消毒が行われていない場合は、催告通知が再び行われる。これにより、手指消毒を行うことなく患者に近づいている医療従事者に対してより強い警告を発することができる。
【0034】
また、上記実施形態において、携帯端末3は、所定信号を最後に受信した後の第3所定時間内に検出信号を受信したか否かを更に判定し、第3所定時間内に検出信号を受信していない場合に、催告通知を更に行うようにしてもよい。この場合における携帯端末3の機能構成例を図3に示す。なお、この図3において、図2に示した構成要素と同一の機能を有する構成要素には同一の符号を付している。図3に示す例において、携帯端末3は、機能構成として、所定信号受信時刻記憶部36を更に備えるとともに、受信状況判定部34および催告通知部35に代えて受信状況判定部34’および催告通知部35’を備えている。
【0035】
所定信号受信時刻記憶部36は、信号受信部31により受信されたBLE信号が所定信号であると信号判定部32により判定された場合、その所定信号の受信時刻を記憶する。医療従事者が患者の無線送信装置2の通信距離内の場所にいる間、信号受信部31は所定信号を所定のインターバルで繰り返し受信し、その受信時刻が所定信号受信時刻記憶部36に逐次記憶される。そして、医療従事者が無線送信装置2の通信距離外の場所に移動すると、所定信号受信時刻記憶部36に対する所定信号の受信時刻の記憶が停止する。
【0036】
受信状況判定部34’は、医療従事者が無線送信装置2の通信距離内の場所に入ることによって信号受信部31により最初に所定信号が受信された時点で受信状況判定部34と同様の判定を行うことに加えて、以下の判定を行う。すなわち、受信状況判定部34’は、所定信号受信時刻記憶部36に所定信号の受信時刻が所定のインターバルで記憶されなくなったことを検知して、それから第3所定時間が経過した時点で判定を行い、所定信号受信時刻記憶部36に記憶されている直近の受信時刻よりも後に検出信号が受信されたことを示す受信時刻が検出信号受信時刻記憶部33に記憶されているか否かを判定する。
【0037】
催告通知部35’は、催告通知部35と同様の催告通知を行うことに加えて、所定信号を最後に受信した後の第3所定時間内に検出信号を受信していないと受信状況判定部34’により判定された場合にも、催告通知を行う。このようにすれば、医療従事者が患者と接触する前だけでなく、医療従事者が患者と接触した後にも手指消毒が行われていないことをより正確に検知して警告を行うことができる。
【0038】
なお、上記実施形態では、無線送信装置2を患者が携帯する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、無線送信装置2は、患者が所在する場所(例えば、入院患者のベッドまたはその近傍など)に設置するようにしてもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、所定信号および検出信号をBLE信号として送受信する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、BLE以外の無線通信手段を利用して所定信号および検出信号を送受信するようにしてもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、消毒用容器100が医療従事者により携帯される可搬型である例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、消毒用容器100は、病院の所定の場所に設置される据置型のものであってもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、手指消毒監視システムを病院にて使用する場合について説明したが、介護施設その他の施設で使用することも可能である。
【0042】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 吐出操作検出装置
2 無線送信装置
3 携帯端末
31 信号受信部
32 信号判定部
33 検出信号受信時刻記憶部
34,34’ 受信状況判定部
35,35’ 催告通知部
36 所定信号受信時刻記憶部
図1
図2
図3