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特開2022-118625芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118625
(43)【公開日】2022-08-15
(54)【発明の名称】芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20220805BHJP
   C08L 55/02 20060101ALI20220805BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20220805BHJP
   C08L 51/00 20060101ALI20220805BHJP
   C08L 51/06 20060101ALI20220805BHJP
   C08K 5/49 20060101ALI20220805BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
C08L69/00
C08L55/02
C08L53/02
C08L51/00
C08L51/06
C08K5/49
C08K5/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021015286
(22)【出願日】2021-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】396001175
【氏名又は名称】住化ポリカーボネート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中石 英二
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BN063
4J002BN124
4J002BN15X
4J002BP015
4J002CG01W
4J002EJ067
4J002EW066
4J002EW086
4J002FD076
4J002FD077
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】ポリカーボネート樹脂本来の特性、すなわち耐熱性、機械的強度等を損なうことなく、軋み音低減効果とその長期信頼性、及び成形品の外観に優れ、自動車内装材部品として、特に好適に使用することができる。
【解決手段】ポリカーボネート樹脂(A)50~90重量部およびゴム強化スチレン系樹脂(B)50~10重量部からなる樹脂成分100重量部に対し、主鎖がポリエチレンで側鎖がポリスチレンのグラフト重合体、または主鎖がポリエチレンで側鎖がアクリロニトリル-スチレン共重合体のグラフト重合体(C)を0.5~10重量部、およびメチルメタクリレート・ジメチルシロキサン系グラフト共重合体(D)を0~5重量部含有することを特徴とする、芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂(A)50~90重量部およびゴム強化スチレン系樹脂(B)50~10重量部からなる樹脂成分100重量部に対し、主鎖がポリエチレンで側鎖がポリスチレンのグラフト重合体、または主鎖がポリエチレンで側鎖がアクリロニトリル-スチレン共重合体のグラフト重合体(C)を0.5~10重量部、およびメチルメタクリレート・ジメチルシロキサン系グラフト共重合体(D)を0~5重量部含有することを特徴とする、芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物。
【請求項2】
前記メチルメタクリレート・ジメチルシロキサン系グラフト共重合体(D)を、前記樹脂成分100重量部に対し、0.5~5重量部含有する、請求項1記載の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、芳香族ビニルからなる重合体ブロックと共役ジエン化合物からなる重合体を含有するブロック共重合体の水素化物(E)を、前記樹脂成分100重量部に対し、0~10重量含有する、請求項1記載の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、リン系酸化防止剤を0.5重量部まで含有する、請求項1~3のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
ゴム強化スチレン系樹脂100質量部に対して、フェノール系酸化防止剤を0.7重量部まで含有する、請求項1~4のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を含む、成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂本来の特性、すなわち耐熱性、機械的強度等を損なうことなく、軋み音低減効果および成形品の外観に優れたポリカーボネート系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性、耐熱性、塗装性などに優れた熱可塑性樹脂組成物であり、電気、電子、機械、自動車などの分野に広く用いられている。また、ポリカーボネート樹脂にABS樹脂をブレンドしたポリマーアロイ組成物は、その成形性の良さを理由に自動車内装材料、例えばコンソールパネル、ダッシュボード、カーナビ等の液晶モニター筐体等によく使用されている。これら製品は軽量化を目的として樹脂製部品を嵌合して組み立てられる。自動車内は低温から高温までの温度変化が大きく、樹脂製部品は熱変動による収縮、膨張により変形を生じやすく、嵌合部の僅かな寸法変化から生じるズレにより、車の走行時の振動ないしは格納式液晶モニターにおいてはその格納時の可動操作によって、軋み音が発生しやすくなる。この軋み音は乗車時の快適性を損ねてしまう。特に高級車はより高度な静粛性が求められるので、軋み音低減は極めて重要な課題である。また、これらの部品は長時間高温で曝されるため、熱劣化による軋み音低減効果の低下を抑制することも求められている。
【0003】
ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂/ABS樹脂アロイは非晶性樹脂であるため、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール等の結晶性樹脂と比べると摩擦係数が高く、スティックスリップ現象による軋み音を発生しやすい。スティックスリップ現象とは2つの物体が擦れ合う際に、静摩擦力が作用するスティック(固着)状態と、動摩擦力が作用するスリップ(すべり)状態が交互に現れる現象で、静摩擦係数(μs)と動摩擦係数(μk)の差(Δμ)が大きいと起こりやすいと言われている。このΔμを小さくすることで、スティックスリップ現象の発生を抑制し、軋み音の発生を低減させることが可能である。
【0004】
ポリカーボネート系樹脂に摺動性を付与させる方法としては、フッ素樹脂、シリコーンオイル、シリコーンポリマー等の摺動性改良剤を添加する方法が知られているが、成形時金型に摺動性改良剤に起因する物質が析出し、金型汚染を引き起こす問題があった。特にフッ素樹脂の場合には成形品の表面がアバタ状になり外観を損ねるという根本的な問題があった。
【0005】
別の方法として、特許文献1では軋み音低減を目的としてスチレン系(共)重合体セグメントを有するエチレン-酢酸ビニル共重合体と酸化ポリエチレンワックスを配合することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-141078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、高温下で長時間曝された場合の軋み音低減効果の持続性について、特許文献1には何ら記載もなく、示唆もされていない。
【0008】
本発明は、軋み音が著しく低減され、高温下に長時間おいた場合にも軋み音低減効果が低下せずに維持され、かつ成形品のゲート近傍に層状剥離がない外観に優れたポリカーボネート系樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、ポリカーボネート樹脂とゴム強化スチレン系樹脂とのポリマーアロイにおいて、ポリエチレンを主鎖に持つ特定構造のグラフト共重合体をそれぞれ特定量含有するポリカーボネート系樹脂組成物が、軋み音低減効果に優れ、かつ成形品外観及び長期信頼性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のポリカーボネート系樹脂組成物に関する。
【0010】
ポリカーボネート樹脂(A)50~90重量部およびゴム強化スチレン系樹脂(B)50~10重量部からなる樹脂成分100重量部に対し、主鎖がポリエチレンで側鎖がポリスチレンのグラフト重合体、または主鎖がポリエチレンで側鎖がアクリロニトリル-スチレン共重合体のグラフト重合体(C)を0.5~10重量部、およびメチルメタクリレート・ジメチルシロキサン系グラフト共重合体(D)を0~5重量部含有することを特徴とする、芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリカーボネート系樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂本来の特性、すなわち耐熱性、機械的強度等を損なうことなく、軋み音低減効果とその長期信頼性、及び成形品の外観に優れる。そのため軋み音低減が求められる自動車内装材部品として、特に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではない。なお、本願明細書において、「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値
として含む意味で使用される。
【0013】
本発明にて使用されるポリカーボネート樹脂(A)とは、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、またはジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体であり、代表的なものとしては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0014】
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-第三ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3、5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4′-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′-ジヒドロキシ-3,3′-ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4′-ジヒドロキシジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4′-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′-ジヒドロキシ-3,3′-ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4′-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′-ジヒドロキシ-3,3′-ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。
【0015】
これらは、単独または2種類以上混合して使用されるが、ハロゲンで置換されていない方が燃焼時に懸念される当該ハロゲンを含むガスの環境への排出防止の面から好ましい。これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4′-ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
【0016】
さらに、上記のジヒドロキシアリール化合物と以下に示すような3価以上のフェノール化合物を混合使用してもよい。3価以上のフェノールとしてはフロログルシン、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-ヘプテン、2,4,6-ジメチル-2,4,6-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-ヘプタン、1,3,5-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-ベンゾール、1,1,1-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-エタンおよび2,2-ビス-[4,4-(4,4′-ジヒドロキシジフェニル)-シクロヘキシル]-プロパンなどが挙げられる。
【0017】
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量には特に制限はないが、成形加工性、強度の面より通常10000~100000、より好ましくは15000~30000、さらに好ましくは17000~26000の範囲である。また、かかるポリカーボネート樹脂を製造するに際し、分子量調整剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。上記粘度平均分子量の測定方法は、ポリカーボネート樹脂を塩化メチレンを溶媒として0.5重量%の溶液とし、キャノンフェンスケ型粘度管を用い温度20℃で比粘度(ηsp)を測定し、濃度換算により極限粘度〔η〕を求め下記のSCHNELLの式から算出した。
〔η〕=1.23×10-40.83
【0018】
本発明にて使用されるゴム強化スチレン系樹脂(B)としては、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、ハイインパクト・ポリスチレン樹脂(HIPS)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS樹脂)などが挙げられる。好ましいゴム強化スチレン系樹脂(B)の例としては、ゴム質重合体の存在下に芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体成分がグラフト共重合したグラフト共重合体を含むものが挙げられ、さらに好ましくは塊状重合によって作られるABS樹脂が挙げられる。
【0019】
ゴム強化スチレン系樹脂(B)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)及びゴム強化スチレン系樹脂(B)の合計の10~50重量%である。ゴム強化スチレン系樹脂(B)の配合量が10重量%未満では流動性が劣り、50重量%を超えると耐熱性が低下し好ましくない。
【0020】
本発明にて使用されるグラフト共重合体(C)とは、ポリエチレンと、ポリスチレンまたはアクリロニトリル-スチレン共重合体とが分岐または架橋構造的に化学結合したグラフト共重合体であって、主鎖がポリエチレン、側鎖がポリスチレンまたはアクリロニトリル-スチレン共重合体となっている。グラフト共重合体中、ポリエチレン成分は40~90wt%が好ましく、より好ましくは50~80wt%である。従って、グラフト共重合体中、側鎖のポリスチレン成分またはアクリロニトリル-スチレン共重合体は10~60wt%が好ましく、より好ましくは20~50wt%となる。グラフト共重合体(C)における構成成分の割合が上記範囲を外れると、得られる樹脂成形品の軋み音低減効果が低下する。グラフト共重合体としては、上記の条件を満たしたものであればいずれの公知のものを使用することができ、市販品としては、例えば日油製のモディパー(登録商標)A1100やモディパー(登録商標)A1401等が挙げられる。
【0021】
グラフト共重合体(C)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)とゴム強化スチレン系樹脂(B)の合計100重量部に対して0.5~10重量部であり、1~8重量部が好ましく、2~7重量部がより好ましい。グラフト共重合体(C)の配合量が0.5重量部未満では十分な軋み音低減効果が得られず、10重量部よりも多いと耐熱性や成形品外観に劣る。
【0022】
本発明にて使用されるメチルメタクリレート・ジメチルシロキサン系グラフト共重合体(D)は、ポリオルガノシロキサン成分とポリアルキル(メタ)アクリレート成分とからなる複合ゴムに1種類以上のビニル系単量体がグラフト重合された複合ゴム系グラフト共重合体であり、ポリオルガノシロキサン成分とポリアルキル(メタ)アクリレート成分とからなる複合ゴムに芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物および(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれた少なくとも一種のビニル系単量体がグラフト重合されたものが挙げられる。これらは、例えば、三菱ケミカル社製メタブレン(登録商標)SX-005として市販されており、入手可能である。
【0023】
メチルメタクリレート・ジメチルシロキサン系グラフト共重合体(D)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)とゴム強化スチレン系樹脂(B)の合計100重量部に対して0.5~5重量部であり、1~4重量部が好ましく、1.5~3重量部がより好ましい。グラフト共重合体(D)の配合量が0.5重量部未満では十分な軋み音低減効果が得られず、5重量部よりも多いと成形品のゲート近傍に層状剥離が発生するので好ましくない。
【0024】
本発明にて使用される芳香族ビニルからなる重合体ブロックと共役ジエン化合物からなる重合体を含有するブロック共重合体の水素化物(E)としては、スチレン-エチレン・ブテン-スチレン樹脂(SEBS)、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレン樹脂(SEPS)が挙げられる。SEBSは、例えば旭化成社製タフテック(登録商標)H1052, H1041として市販されており、入手可能である。SEPSは、例えばクラレ社製セプトン(登録商標)2104として市販されており、入手可能である。
【0025】
芳香族ビニルからなる重合体ブロックと共役ジエン化合物からなる重合体を含有するブロック共重合体の水素化物(E)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)とゴム強化スチレン系樹脂(B)の合計100重量部に対して0~10重量部であり、1~8重量部が好ましく、2~7重量部がより好ましい。配合量が10重量部よりも多いと耐熱性に劣るので好ましくない。
【0026】
本発明にて使用される各種配合成分(A)~(E)の配合方法は特に制限はなく、任意の混合機、例えばタンブラー、リボンブレンダー、高速ミキサー等によりこれらを混合し、通常の一軸または二軸押出機で容易に溶融混練することができる。また、これらの配合順序についても特に制限はない。
【0027】
更に、本発明の効果を損なわない範囲で、前記(A)~(E)からなる樹脂組成物に各種の熱安定剤、酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤、顔料、充填剤、流動改良剤等の添加剤を配合しても良い。
【0028】
本発明に係る芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、酸化防止剤として、リン系酸化防止剤を含有しても良い。
【0029】
リン系酸化防止剤は、本発明が目的とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を得られる限り特に制限されることはないが、下記亜リン酸エステル構造を有する亜リン酸エステル化合物を含むことが好ましい。
【化1】
【0030】
本発明の実施形態の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、リン系酸化防止剤が、下記式(1)で表される亜リン酸エステル化合物、下記式(2)で表される亜リン酸エステル化合物、下記式(3)で表される亜リン酸エステル化合物及び下記式(4)で表される亜リン酸エステル化合物から選択される少なくとも1種以上の化合物を含むことが好ましい。
【0031】
式(1):
【化2】
(式(1)中、Rは炭素数1~20のアルキル基を示し、aは、0~3の整数を示す)
【0032】
式(1)において、Rは、炭素数1~20のアルキル基であるが、さらには、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましい。
【0033】
式(1)で表される化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト等が挙げられる。これらの中でも、特にトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイトが好適であり、例えば、BASF社製のイルガフォス168(「イルガフォス」はビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの登録商標)として商業的に入手可能である。
【0034】
式(2):
【化3】
(式(2)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数5~8のシクロアルキル基、炭素数6~12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7~12のアラルキル基又はフェニル基を示す。Rは、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を示す。Xは、単結合、硫黄原子又は式:-CHR-(ここで、Rは、水素原子、炭素数1~8のアルキル基又は炭素数5~8のシクロアルキル基を示す)で表される基を示す。Aは、炭素数1~8のアルキレン基又は式:*-COR-(ここで、Rは、単結合又は炭素数1~8のアルキレン基を示し、*は、酸素側の結合手であることを示す)で表される基を示す。Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1~8のアルコキシ基又は炭素数7~12のアラルキルオキシ基を示し、もう一方が水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を示す。)
【0035】
炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、t-ペンチル基、i-オクチル基、t-オクチル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。炭素数5~8のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。炭素数6~12のアルキルシクロアルキル基としては、例えば、1-メチルシクロペンチル基、1-メチルシクロヘキシル基、1-メチル-4-i-プロピルシクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数7~12のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、α-メチルベンジル基、α,α-ジメチルベンジル基等が挙げられる。
【0036】
、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~8のアルキル基、炭素数5~8のシクロアルキル基又は炭素数6~12のアルキルシクロアルキル基であることが好ましい。特に、R及びRは、それぞれ独立して、t-ブチル基、t-ペンチル基、t-オクチル基等のt-アルキル基、シクロヘキシル基又は1-メチルシクロヘキシル基であることが好ましい。特に、Rは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、t-ペンチル基等の炭素数1~5のアルキル基であることが好ましく、メチル基、t-ブチル基又はt-ペンチル基であることがさらに好ましい。
【0037】
は、水素原子、炭素数1~8のアルキル基又は炭素数5~8のシクロアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、t-ペンチル基等の炭素数1~5のアルキル基であることがさらに好ましい。
【0038】
式(2)において、Rは、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を示す。炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、R、R、R及びRの説明にて例示したアルキル基が挙げられる。特に、Rは、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがさらに好ましい。
【0039】
式(2)において、Xは、単結合、硫黄原子又は式:-CHR-で表される基を示す。ここで、式:-CHR-中のRは、水素原子、炭素数1~8のアルキル基又は炭素数5~8のシクロアルキル基を示す。炭素数1~8のアルキル基及び炭素数5~8のシクロアルキル基としては、例えば、それぞれR、R、R及びRの説明にて例示したアルキル基及びシクロアルキル基が挙げられる。特に、Xは、単結合、メチレン基、又はメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基等で置換されたメチレン基であることが好ましく、単結合であることがさらに好ましい。
【0040】
式(2)において、Aは、炭素数1~8のアルキレン基又は式:*-COR-で表される基を示す。炭素数1~8のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン基等が挙げられ、好ましくはプロピレン基である。また、式:*-COR-におけるRは、単結合又は炭素数1~8のアルキレン基を示す。Rを示す炭素数1~8のアルキレン基としては、例えば、Aの説明にて例示したアルキレン基が挙げられる。Rは、単結合又はエチレン基であることが好ましい。また、式:*-COR-における*は、酸素側の結合手であり、カルボニル基がフォスファイト基の酸素原子と結合していることを示す。
【0041】
式(2)において、Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1~8のアルコキシ基又は炭素数7~12のアラルキルオキシ基を示し、もう一方が水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を示す。炭素数1~8のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、t-ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられる。炭素数7~12のアラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基、α-メチルベンジルオキシ基、α,α-ジメチルベンジルオキシ基等が挙げられる。炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、R、R、R及びRの説明にて例示したアルキル基が挙げられる。
【0042】
式(2)で表される化合物としては、例えば、2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-〔3-(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン、6-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、6-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロポキシ]-4,8-ジ-t-ブチル-2,10-ジメチル-12H-ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、6-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]-4,8-ジ-t-ブチル-2,10-ジメチル-12H-ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン等が挙げられる。これらの中でも、特に光学特性が求められる分野に、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を用いる場合には、2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-〔3-(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピンが好適であり、例えば、住友化学(株)製のスミライザーGP(「スミライザー」は登録商標)として商業的に入手可能である。
【0043】
式(3):
【化4】
(式中、R及びR10は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基を示し、b及びcは、それぞれ独立して、0~3の整数を示す。)
【0044】
式(3)で表される化合物としては、例えば、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジフォスファイト等が挙げられる。ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイトは、ADEKA社製、商品名「アデカスタブPEP-24G」として商業的に入手可能である。(株)ADEKA製のアデカスタブPEP-36(「アデカスタブ」は登録商標)が商業的に入手可能である。
【0045】
式(4):
【化5】
【0046】
(式中、R11~R18は、それぞれ独立に、炭素数1~3のアルキル基またはアルケニル基を示す。R11とR12、R13とR14、R15とR16、R17とR18とは、互いに結合して環を形成していても良い。R19~R22は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~20のアルキル基を示す。d~gは、それぞれ独立して、0~5の整数である。X~Xは、それぞれ独立に、単結合または炭素原子を示す。X~Xが単結合である場合、R11~R22のうち、当該単結合に繋がった官能基は一般式(4)から除外される)
【0047】
式(4)で表される化合物の具体例としては、例えばビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイトが挙げられる。これは、Dover Chemical社製、商品名「Doverphos(登録商標) S-9228」、ADEKA社製、商品名「アデカスタブPEP-45」(ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト)として商業的に入手可能である。
【0048】
さらに、上記の他にもテトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレン-ジ-ホスホナイト等が挙げられる。このような、有機ホスホナイト化合物としては、具体的には、例えば、クラリアントジャパン社製Sandstab PEPQ等も挙げることができる。
【0049】
リン系酸化防止剤の量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、0.5重量部以下であることが好ましく、0.02~0.2質量部であることがより好ましい。
【0050】
また、本発明に係る芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、リン系酸化防止剤に代えて、あるいは、リン系酸化防止剤に加えて、フェノール系酸化防止剤を配合しても良い。
【0051】
フェノール系酸化防止剤(D)としては、下記式(5)で表される化合物を挙げることができる。
【0052】
式(5):
【化6】
(式中、R23は炭素数1~20のアルキル基、又はアルキル基で置換されてもよいアリール基を示す。)
【0053】
その他のフェノール系酸化防止剤としては、α-トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、2-tert-ブチル-6-(3’-tert-ブチル-5’-メチル-2’-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、2,2’-ジメチレン-ビス(6-α-メチル-ベンジル-p-クレゾール)2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-ブチリデン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-N-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、1,6-へキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2-tert-ブチル-4-メチル6-(3-tert-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9-ビス{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1,-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’-ジ-チオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-トリ-チオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2-チオジエチレンビス-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、N,N’-ヘキサメチレンビス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス2[3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、及びテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが例示される。これらはいずれも入手容易である。上記フェノール系酸化防止剤は、単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0054】
中でも、上記式(5)で表される化合物であるn-オクタデシル-3-(3',5'-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好適であり、例えば、ADEKA社製、商品名「アデカスタブAO-50」として商業的に入手可能である。
【0055】
リン系酸化防止剤の量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、0.3~0.7重量部であることが好ましい。
【実施例0056】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、実施例中の「%」、「部」はそれぞれ重量基準に基づく。
【0057】
なお、使用した原材料は以下のものである。
ポリカーボネート樹脂(A):
ビスフェノールAとホスゲンから合成されたポリカーボネート樹脂
(住化ポリカーボネート社製 SDポリカ200-20、以下PCと略記)
ゴム強化スチレン系樹脂(B):
塊状重合法ABS樹脂
(日本エイアンドエル社製 サンタックAT-05、以下ABSと略記)
ポリエチレン系グラフト共重合体(C):
ポリエチレン-ポリスチレングラフト共重合体
(日油社製 モディパーA1100、以下C-1と略記)
ポリエチレン-アクリロニトリル・スチレン グラフト共重合体
(日油社製 モディパーA1401、以下C-2と略記)
メチルメタクリレート・ジメチルシロキサン系グラフト共重合体(D):
(三菱化学社製 メタブレンSX-005、以下Dと略記)
芳香族ビニルからなる重合体ブロックと共役ジエン化合物からなる重合体を含有するブロック共重合体の水素化物(E):
(クラレ社製スチレン-エチレン・プロプレン-スチレン共重合体 セプトン2104、以下Eと略記)
【0058】
ペレットの作成方法及び各種評価項目の測定方法等は、以下のとおりである。
【0059】
(樹脂組成物ペレットの作成)
表1および表2に示す配合成分および配合比率にて、各種配合成分をタンブラーで混合し、37mm径の二軸押出機(芝浦機械社製TEM37SS)を用いて、シリンダー温度260度にて溶融混練し、各種ペレットを得た。
【0060】
(荷重たわみ温度)
得られたペレットを100℃で4時間乾燥後、射出成形機(FANUC社製S2000i100B)を用いて250℃、射出圧力50MPa、射出速度30mm/秒、金型温度80℃の条件下でISOの規格に準じた試験片(4mm厚み)を作製した。荷重たわみ温度はISO75-2に準じて測定した。評価の基準としては、荷重たわみ温度が90℃を超えるものを合格(○)、90℃以下を不合格(×)とした。
【0061】
(摩擦係数)
得られたペレットを100℃で4時間乾燥後、射出成形機(FUNAC社製S2000i100B)を用いて260℃、射出圧力50MPa、射出速度30mm/秒、金型温度80℃の条件下で150mm×90mm×2mm厚みの平板を作製した。その平板を63mm×63mm×2mm厚みに切り出した。この平板をエスペック社製セーフティオーブンSPHH-202にて、80℃で300時間耐熱試験を実施した。
【0062】
静摩擦係数(以下μs)、動摩擦係数(以下μk)の測定は新東科学社製摩擦試験機トライボギアTYPE40を用いて、室温23℃、湿度50%RHの雰囲気中で、荷重1500g、試験速度10mm/minの条件にて測定した。相手材としてはSDポリカ IM6011(住化ポリカーボネート社製 ポリカーボネート/ABSアロイ)を用いた。μs、μkの値からΔμ(μs-μk)を算出した。評価の基準としては、μsが0.4未満、μkが0.4未満、Δμが0.06未満を合格(○)とした。μsが0.4以上、μkが0.4以上、Δμが0.06以上を不合格(×)とした。
【0063】
(成形品外観)
得られたペレットを100℃で4時間乾燥後、射出成形機(FANUC社製S2000i100B)を用いて260℃、射出圧力50MPa、射出速度30mm/秒、金型温度80℃の条件下で150mm×90mm×2mm厚みの平板を作製した。JIS K5400の100マスのクロスカット試験をゲート直下で行い、剥離マス目数が5以下を合格(○)、5を超えるものを不合格(×)とした。
【0064】
(流動性)
得られたペレットを100℃で4時間乾燥後、射出成形機(FUNAC社製S2000i)を用いて280℃、金型温度80℃、射出圧力160MPaの条件下、アルキメデススパイラルフロー金型(幅10mm、厚み1.0mm)を用い流動長を測定した。スパイラル流動長が150mm以上を合格(○)、150mm未満を不合格(×)とした。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
表1に示すとおり、本発明の構成を満足する場合(実施例1~9)には、全ての評価項目において十分な性能を有していた。
【0068】
一方、表2に示すとおり、本発明の構成を満足しない場合には、何らかの欠点を有していた。
【0069】
比較例1は、ポリカーボネート樹脂の配合量が規定よりも少ない場合で、耐熱性に劣っていた。
比較例2は、ポリカーボネート樹脂の配合量が規定よりも多い場合で、流動性に劣っていた。
【0070】
比較例3は、ポリエチレン系グラフト共重合体の配合量が規定よりも少ない場合で、軋み音低減効果(μs、μk、Δμ)に劣っていた。
比較例4は、ポリエチレン系グラフト共重合体の配合量が規定よりも多い場合で、耐熱性及び成形品外観に劣っていた。
【0071】
比較例5は、メチルメタクリレート・ジメチルシロキサン系グラフト共重合体の配合量が規定よりも多い場合で、成形品外観に劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂本来の特性、すなわち耐熱性、機械的強度等を損なうことなく、軋み音低減効果とその長期信頼性、及び成形品の外観に優れ、自動車内装材部品として、特に好適に使用することができ、工業的利用価値が極めて高い。