(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118641
(43)【公開日】2022-08-15
(54)【発明の名称】残留モノマーに起因する臭気を改善したアクリル系ポリマーエマルションまたはアクリル系ポリマーディスパージョン組成物および製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 220/12 20060101AFI20220805BHJP
C08F 2/00 20060101ALI20220805BHJP
C08F 4/40 20060101ALI20220805BHJP
C08F 2/22 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
C08F220/12
C08F2/00 A
C08F4/40
C08F2/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021015318
(22)【出願日】2021-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】390029458
【氏名又は名称】ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡田 麻緒
【テーマコード(参考)】
4J011
4J015
4J100
【Fターム(参考)】
4J011AA05
4J011BA06
4J011BB02
4J011BB09
4J011BB10
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4J015CA03
4J015CA05
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4J100AJ02Q
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4J100JA00
4J100JA05
4J100JA15
4J100JA57
4J100JA61
(57)【要約】 (修正有)
【課題】残留モノマーを低減し、低臭気化されたアクリル系ポリマーエマルションまたはディスパージョンを提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル酸エステルを重合して得られるアクリル系ポリマーにおいて、第1段階目のラジカル重合終了後、さらにレドックス開始剤による後重合工程を追加した、各々の残留(メタ)アクリル酸エステルの含有率が50ppm以下であることを特徴とするアクリル系ポリマーエマルション組成物またはアクリル系ポリマーディスパージョン組成物である。ただし、(メタ)アクリロニトリルは含まない。本発明の組成物により、残留モノマーを低減し、低臭気化されたアクリル系ポリマーエマルション、ディスパージョンを提供することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステルを含み、(メタ)アクリロニトリルを含まないモノマー混合物を、
第1段階目のラジカル重合工程終了後、さらにレドックス開始剤による後重合する工程を行うことによって得られる、
前記第1段目のラジカル重合工程終了後および後重合工程終了後の
それぞれの残留(メタ)アクリル酸エステルの含有率が50ppm以下であることを特徴とする、
アクリル系ポリマーエマルション組成物またはアクリル系ポリマーディスパージョン組成物の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の製造方法によって得られるアクリル系ポリマーエマルション組成物またはアクリル系ポリマーディスパージョン組成物。
【請求項3】
前記、アクリル系ポリマーエマルション組成物またはアクリル系ポリマーディスパージョン組成物が、アルキル基を含む総炭素数4~22の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸を少なくとも含むモノマーの混合物を乳化重合して得られる請求項2に記載のアクリル系ポリマーエマルション組成物またはアクリル系ポリマーディスパージョン組成物。
【請求項4】
少なくとも1種以上の官能基を有していない(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体と分子内に水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体、カルボキシル基を有する単量体、スチレン単量体、多官能(メタ)アクリル酸エステル単量体、多官能アリルエーテル単量体、自己縮合官能基含有単量体、紫外線吸収性単量体から選択される単量体の少なくとも1つ以上が共重合された請求項2または3に記載のアクリル系ポリマーエマルション組成物またはアクリル系ポリマーディスパージョン組成物。
【請求項5】
紫外線吸収性単量体が2-[2'-ヒドロキシ-5'-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2'-ヒドロキシ-3'-tert-ブチル-5'-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2'-ヒドロキシ-3'-t-ブチル-5'-(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5′-メチルフェニル)-5-(2'-メタクリロイルオキシエチル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-[(2'-ヒドロキシ-5'-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル)-5-クロロ]-2H-ベンゾトリアゾール、2-ベンゾイル-5-(2'-ヒドロキシ-3'-メタクリロイルオキシプロポキシ)-フェノール、2-ベンゾイル-5-(2'-メタクリロイルオキシエトキシ)-フェノール、2-ベンゾイル-5-(2'-アクリロイルオキシエトキシ)-フェノール、2-ベンゾイル-5-(2'-アクリロイルオキシエトキシ)-6-tert-ブチル-フェノール、2,4-ジフェニル-6-[2-ヒドロキシ-4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-メチルフェニル)-6-[2-ヒドロキシ-4-(3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピオキシ)]-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-[2-ヒドロキシ-4-(11-アクリロイルオキシ-ウンデシルオキシ)フェニル]-1,3,5-トリアジンから選択される少なくとも1種である請求項4に記載のアクリル系ポリマーエマルション組成物またはアクリル系ポリマーディスパージョン組成物。
【請求項6】
後重合工程のレドックス開始剤の酸化剤として、(a)R1OOR2(R1およびR2は水素、C1~C8―アルキル、ベンゾイル基、tert―ブチル基からなり、同一でも異なっていても良い)表される)または過硫酸塩を含む1種類以上の酸化剤成分を用いる請求項2~5のいずれかに記載のアクリル系ポリマーエマルション組成物またはアクリル系ポリマーディスパージョン組成物。
【請求項7】
後重合工程におけるレドックス開始剤の添加を2回以上行う請求項2~6のいずれかに記載のアクリル系ポリマーエマルション組成物またはアクリル系ポリマーディスパージョン組成物。
【請求項8】
前記請求項2~7のいずれかに記載のアクリル系ポリマーエマルション組成物またはアクリル系ポリマーディスパージョン組成物を含有する増粘剤、粘度調整剤、分散剤、乳化剤、皮膜形成剤、粘着剤、分子内に紫外線吸収性構造を有する耐候性向上剤。
【請求項9】
前記請求項2~7のいずれかに記載のアクリル系ポリマーエマルション組成物またはアクリル系ポリマーディスパージョン組成物を、洗浄剤、化粧品、粘着剤等の機能向上成分として使用する用途。
【請求項10】
前記請求項8に記載の増粘剤、粘度調整剤、分散剤、乳化剤、皮膜形成剤、粘着剤、分子内に紫外線吸収性構造を有する耐候性向上剤を含有する洗浄剤、化粧品、皮膚貼付用粘着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、残留モノマーを低減し、残留モノマーに起因する臭気を改善したアクリル系ポリマーエマルション、ディスパージョン組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アクリル系ポリマーエマルション、ディスパージョン組成物は主に乳化重合によって製造されることが一般的であるが、得られた重合体液中には未反応のアクリルモノマー(以下、残留モノマーとする)が含まれ臭気や安全性に問題を引き起こすことがある。この問題を解決するために様々な方法が開発されている(ストリッピング、水蒸気蒸留、後重合)がどの方法も残留モノマーの低減には不十分だった(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-163910
【特許文献2】特表2001-516774
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アクリル系ポリマーエマルション、ディスパージョン組成物の残留モノマー低減のために様々な方法があることはよく知られているが、従来技術では残留モノマーを完全に除去することは出来ない。今回、発明者はラジカル重合終了後に特定のレドックス開始剤を用いて後重合を行うことで、従来よりも残留モノマーの含有率を低減し、低臭気化されたアクリル系ポリマーエマルション、ディスパージョンを製造する方法を見出し、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明のアクリル系ポリマーエマルションは、(メタ)アクリル酸エステルを重合して得られるアクリル系ポリマーであり、第1段階目のラジカル重合終了後、さらにレドックス開始剤による後重合工程を追加し、各々の残留(メタ)アクリル酸エステルの含有率が50ppm以下であることを特徴とする。ただし、本発明のアクリル系ポリマーエマルション組成物またはアクリル系ポリマーディスパージョン組成物は、(メタ)アクリロニトリルは含まない。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、残留モノマーを低減し、低臭気化されたアクリル系ポリマーエマルション、ディスパージョンを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明について、例を挙げて説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限
定されない。
【0008】
本発明の(メタ)アクリル酸エステルを重合して得られるアクリル系ポリマーは、少なくとも1種以上の官能基を有していない(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体と、分子内に水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体、カルボキシル基を有する単量体、スチレン単量体、多官能(メタ)アクリル酸エステル単量体、多官能アリルエーテル単量体、自己縮合官能基含有単量体、紫外線吸収性単量体からなる群より選択される単量体の少なくとも1つ以上が共重合されている。
【0009】
本発明において、「(メタ)アクリル」にはアクリルおよびメタクリルが含まれる。
本発明において、「官能基を有していない(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体」とは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が、水酸基等の他のいずれの置換基においても置換されていない単量体のことを言う。
【0010】
また、本発明において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの「アルキル」は、例えば、直鎖状または分枝状のアルキルを含む。前記アルキルの炭素数は、1~18あり、好ましくは、1~4である。前記アルキルは、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基およびtert-ブチル基等が挙げられる。アルキル基から誘導される基や原子団(アルコキシ基等)についても同様である。アルキル基を構造中に含む基(アルキルアミノ基、アルコキシ基等)、または、アルキル基から誘導される基(ハロアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、アルカノイル基等)においても同様である。
【0011】
官能基を有していない(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらは1種のみを用いても2種以上併用してもよい。
【0012】
分子内に水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、アクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、アクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステルのカプロラクトン付加物、アクリル酸またはメタクリル酸のポリアルキレングリコールエステル等が挙げられる。前記アクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステルにおいて、前記アルキル基は、直鎖状でも分枝状でもよく、炭素数は、例えば、1~8であってもよい。前記アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルとしては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸3-ヒドロキシブチル、アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル等があげられる。前記メタクリル酸のヒドロキシアルキルエステルとしては、特に限定されないが、例えば、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4-ヒドロキシブチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸3-ヒドロキシブチル、メタクリル酸8-ヒドロキシオクチル、メタクリル酸6-ヒドロキシヘキシル等があげられる。これらは1種のみを用いても2種以上併用してもよい。
【0013】
カルボキシル基を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸等が挙げられる。これらは1種のみを用いても2種以上併用してもよい。
【0014】
多官能(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、ジビニル化合物、ジ(トリ)アクリル酸エステル、ジ(トリ)メタクリル酸エステルのように不飽和結合を分子内に2個以上有する単量体等が挙げられる。これらは1種のみを用いても2種以上併用してもよい。
【0015】
多官能アリルエーテル単量体としては、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテルのような少なくとも2つ以上のアリル基を有するアリルエーテル類等が挙げられる。これらは1種のみを用いても2種以上併用してもよい。
【0016】
自己縮合官能基含有単量体としては、N-メチロールアクリルアミド、グリシジルアクレート等が挙げられる。これらは1種のみを用いても2種以上併用してもよい。
【0017】
紫外線吸収性単量体としては、2-[2'-ヒドロキシ-5'-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2'-ヒドロキシ-3'-tert-ブチル-5'-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2'-ヒドロキシ-3'-t-ブチル-5'-(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5′-メチルフェニル)-5-(2'-メタクリロイルオキシエチル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-[(2'-ヒドロキシ-5'-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル)-5-クロロ]-2H-ベンゾトリアゾール、2-ベンゾイル-5-(2'-ヒドロキシ-3'-メタクリロイルオキシプロポキシ)-フェノール、2-ベンゾイル-5-(2'-メタクリロイルオキシエトキシ)-フェノール、2-ベンゾイル-5-(2'-アクリロイルオキシエトキシ)-フェノール、2-ベンゾイル-5-(2'-アクリロイルオキシエトキシ)-6-tert-ブチル-フェノール、2,4-ジフェニル-6-[2-ヒドロキシ-4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-メチルフェニル)-6-[2-ヒドロキシ-4-(3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピオキシ)]-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-[2-ヒドロキシ-4-(11-アクリロイルオキシ-ウンデシルオキシ)フェニル]-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。これらは1種のみを用いても2種以上併用してもよい。
【0018】
本発明のアクリル系ポリマーエマルション、ディスパージョンの製造方法は特に限定されない。例えば、前記単量体の全てを乳化重合させることで、前記共重合体を製造するとともにアクリル系ポリマーエマルション、ディスパージョンとしてもよい。
【0019】
前記乳化重合の方法は、特に限定されず、例えば、一般的な乳化重合の方法と同様もしくはそれに準じてもよいし、または、それに適宜変更を加えてもよい。前記乳化重合の方法は、具体的には、例えば、(1)水および全ての共重合成分を一括混合して乳化重合する方法、(2)水および全ての共重合成分の混合物のうち、一部を反応器に加え、残りを前記反応器中に滴下して乳化重合する方法(プレエマルション法)、(3)モノマー滴下法、等があげられる。これらの中でも、乳化重合反応の安定性の点から(2)のプレエマルション法が好ましい。また、水および前記共重合成分に加え、必要に応じ、重合開始剤、乳化剤、分散安定剤等を混合して乳化重合を行ってもよい。
【0020】
前記重合開始剤は、特に限定されないが、レドックス系開始剤でも、非レドックス系開始剤でもよく、例えば、非レドックス開始剤としては、水溶性アゾ重合開始剤、ペルオキシ二硫酸のアンモニウム塩またはアルカリ金属塩類、有機過酸化物類、過酸化水素等があげられ、1種類のみ用いても2種類以上併用してもよい。前記水溶性アゾ重合開始剤は、例えば、富士フイルム和光純薬株式会社の商品名V-50、V-501、VA-086、VA-057、VA-061等があげられ、1種類のみ用いても2種類以上併用してもよい。
【0021】
前記レドックス開始剤は、特に限定されないが、適切な酸化剤としては、例えば、過酸化水素、t-ブチルヒドロペルオキシド、t-アミルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、およびペルオキシ二硫酸のアンモニウム塩またはアルカリ金属塩などが挙げられ、1種類のみ用いても2種類以上併用してもよい。
【0022】
還元剤は、公知のものが使用でき、例えば、硫黄を含む酸のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、硫化ナトリウム、水硫化ナトリウム、二硫酸ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム、ホルマジンスルフィン酸、アセトンビスルファイト、ヒドロキシメタンスルホン酸、アミン、例えばエタノールアミン、有機酸、例えば、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、ギ酸、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、および上記酸の塩、グルコース等が挙げられ、1種類のみ用いても2種類以上併用してもよい。還元剤成分の使用量は特に限定されず、前記酸化剤成分の0.2~2倍の範囲で適宜調整してもよいが、酸化剤成分と同一モル量が好ましい。
【0023】
前記乳化剤は、特に限定されないが、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等があげられ、1種類のみ用いても2種類以上併用してもよい。前記アニオン性界面活性剤は、例えば、アルキル硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、商品名アデカリアソープSR-10、アデカリアソープSR-20(いずれも株式会社ADEKA製)、商品名アクアロンHS-10、アクアロンHS-20(いずれも第一工業製薬株式会社製)、商品名エレミノールJS-20、エレミノールRS-3000(いずれも三洋化成工業株式会社製)、商品名ラテムルPD-104(花王株式会社製)、商品名テイカパワーBN-2060(テイカ株式会社)等があげられ、1種類のみ用いても2種類以上併用してもよい。前記ノニオン性界面活性剤は、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、商品名アデカリアソープER-10、アデカリアソープER-20、アデカリアソープER-30、アデカリアソープER-40(いずれも株式会社ADEKA製)、商品名アクアロンRN-10、アクアロンRN-20(いずれも第一工業製薬株式会社製)、商品名ラテムルPD-420、ラテムルPD-430(いずれも花王株式会社製)等が挙げられ、1種類のみ用いても2種類以上併用してもよい。
【0024】
前記分散安定剤は、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール、デンプン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、水溶性アクリル樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性ポリアミド樹脂、水溶性ポリウレタン樹脂等が挙げられ、1種類のみ用いても2種類以上併用してもよい。
【0025】
前記(2)のプレエマルション法は、特に限定されないが、例えば、以下のようにして行うことができる。まず、水および全ての共重合成分を混合し、プレエマルションを得る。このプレエマルションには、前記重合開始剤、前記乳化剤、前記分散安定剤等を混合してもよい。また、例えば、必要に応じ、親水性溶剤、疎水性溶剤等を混合してもよい。つぎに、前記プレエマルションの一部を重合反応させる(第1の重合工程)。このとき、必要に応じ、加熱、攪拌等をしてもよい。反応系は、開放系であってもよいが、窒素等の不活性ガスで置換されていてもよい。前記第1の重合工程における反応温度は特に限定されないが、例えば、30~100℃、または60~90℃である。前記第1の重合工程における反応時間も特に限定されず、適宜設定可能である。つぎに、残りのプレエマルションを滴下し、さらに重合反応させる(第2の重合工程)。前記第2の重合工程は、滴下終了後、さらに重合反応を継続してもよい。前記第2の重合工程における反応温度は特に限定されないが、例えば、前記第1の重合工程と同じである。前記残りのプレエマルションの滴下時間も特に限定されず、適宜設定可能である。前記滴下終了後における反応時間も特に限定されず、適宜設定可能である。以上のようにして、前記重合体を製造できる。
【0026】
本発明のアクリル系ポリマーエマルション組成物またはアクリル系ポリマーディスパージョン組成物の製造方法は、重合反応開始した後に、さらにレドックス開始剤を添加する工程を有する(後重合)。本発明における後重合の方法は、特に限定されず、前記レドックス開始剤は前記アクリル系ポリマーディスパージョンの重合反応終了後に添加することができる。レドックス開始剤の酸化剤と還元剤は、同時または順次に添加することができる。使用するレドックス開始剤の成分量については、本重合で使用したモノマーの全量に対して、それぞれ通常0.01~0.5%、望ましくは、0.02~0.2%が使用される。また、後重合の反応時間は特に限定されず、使用するレドックス開始剤の成分は全量を一度に添加してもよいが、2回以上に分けて添加してもよく、反応系に断続的に滴下する方法で添加してもよい。
【0027】
本発明における後重合は必要に応じ、加熱、攪拌等をしてもよい。反応系は、開放系であってもよいが、窒素等の不活性ガスで置換されていてもよい。前記後重合を行う温度は、通常は10~100℃、望ましくは50~85℃である。また、反応系の撹拌方法は特に限定されない。
【0028】
後重合で用いるレドックス開始剤は、最初の重合反応の重合開始剤と同じでも、異なってもよい。
【0029】
また、後重合で用いられるレドックス開始剤は、特に限定されないが、適切な酸化剤としては、下記一般式
R1OOR2
(R1およびR2は水素、C1~C8―アルキル、ベンゾイル基、tert―ブチル基から選択され、同一でも異なっていても良い)
で表される化合物であり、具体的には、過酸化水素、t-ブチルヒドロペルオキシド、t-アミルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、およびペルオキシ二硫酸のアンモニウム塩またはアルカリ金属塩などが挙げられ、1種類のみ用いても2種類以上併用してもよい。
【0030】
還元剤は、公知のものが使用でき、例えば、硫黄を含む酸のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、硫化ナトリウム、水硫化ナトリウム、二硫酸ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム、ホルマジンスルフィン酸、アセトンビスルファイト、ヒドロキシメタンスルホン酸、アミン、例えばエタノールアミン、有機酸、例えば、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、ギ酸、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、および上記酸の塩、グルコースなどが挙げられ、1種類のみ用いても2種類以上併用してもよい。還元剤成分の使用量は特に限定されず、前記酸化剤成分の0.2~2倍の範囲で適宜調整してもよいが、酸化剤成分と同一モル量が好ましい。
【0031】
本発明のアクリル系ポリマーエマルション組成物またはアクリル系ポリマーディスパージョン組成物の用途としては、増粘剤、粘度調整剤、分散剤、乳化剤、皮膜形成剤、粘着剤、分子内に紫外線吸収性構造を有する耐候性向上剤などが挙げられる。これらの用途を有する本発明のアクリル系ポリマーエマルション、アクリル系ポリマーディスパージョンは、残留モノマーに起因する臭気が十分に低減されていることから、特に洗浄剤、化粧品、皮膚貼付用粘着剤等、一般消費者向け日用雑貨の機能向上成分として好適である。
【0032】
本発明のアクリル系ポリマーエマルション組成物またはアクリル系ポリマーディスパージョン組成物は、さらに必要に応じてレベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、増粘剤、分散剤、防腐剤、抗菌剤、pH調整剤、湿潤剤、発泡剤、着色剤、清涼剤、香料などを含んでもよい。
【実施例0033】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例および比較例において使用した商品名または化学式、およびその製造元、販売元を表1にまとめて示す。
【0034】
【表1】
メタクリル酸-2-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル]エチル
【0035】
<残留モノマーの定量>
残留モノマーの定量にはGC/MS (GC - Agilent製 GC7980A, MS - 日本電子製 Q-1050GC)を用いた。
<臭気の官能評価>
得られたアクリル系ポリマーエマルション、ディスパージョンの臭気を官能評価した。
〇 : エステル臭を感じなかった
△ : 弱いエステル臭を感じた
× : 強いエステル臭を感じた
【0036】
[実施例1]
ビーカーAにアクリル酸エチル 199.7質量部、メタクリル酸 100質量部、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル 0.3質量部を量り取り均一撹拌した。ビーカーBにイオン交換水200質量部、タイポールNLS-30 2.4質量部、過硫酸カリウム 0.5質量部を量り取り、均一撹拌した。ビーカーBにビーカーAの内容物を加え、ディスパーで混合してプレエマルションを得た。撹拌機、冷却管、温度計、滴下ロートを備えたセパラブルフラスコにイオン交換水 460質量部、タイポールNLS-30 10質量部量り取り、セパラブルフラスコ内の雰囲気を窒素ガスに置換し、撹拌しながら80~85℃まで加熱した。上記のプレエマルション 25質量部をセパラブルフラスコに投入し、30分間先行重合を行った。その後、滴下ロートを用いて残りのプレエマルションを4時間かけて滴下した。プレエマルションの滴下が終了して1時間が経過した後、内容物を室温まで冷却しアクリル系ポリマーディスパージョン(A1)を得た。ディスパージョン(A1)の残留アクリル酸エチル含有率は522ppmであった。次いで、ディスパージョン(A1)を新たな反応器に移し替え、撹拌と雰囲気の窒素ガス置換を開始し、63~67℃まで昇温した。その後、濃度0.5質量%の70質量%tert-ブチルヒトロキシペルオキシド水溶液 5質量部、濃度0.68質量%のエリソルビン酸水溶液 5質量部をセパラブルフラスコ中に投入した。1時間経過後、濃度0.5質量%の70質量%tert-ブチルヒトロキシペルオキシド水溶液 5質量部、濃度0.68質量%のエリソルビン酸水溶液 5質量部をセパラブルフラスコ中に投入した。
さらに1時間経過後、濃度0.5質量%の70質量%tert-ブチルヒトロキシペルオキシド水溶液 5質量部、濃度0.68質量%のエリソルビン酸水溶液 5質量部をセパラブルフラスコ中に投入した。さらに1時間経過後、濃度0.5質量%の70質量%tert-ブチルヒトロキシペルオキシド水溶液 5質量部、濃度0.68質量%のエリソルビン酸水溶液 5質量部をセパラブルフラスコ中に投入した。さらに1時間経過後、冷却を開始して室温まで冷却した。得られたアクリル系ポリマーディスパージョン(B2)の固形分は30質量%、粒子径は100nm、pHは2.6、粘度は12mPa・s、残留アクリル酸エチル含有率は1ppm未満であった。
【0037】
[実施例2]
モノマー、重合開始剤、乳化剤、イオン交換水の組成を表2の通りとしたことを除いては実施例1と同様の操作を行い、アクリル系ポリマーディスパージョン(A2)を得た。ディスパージョン(A2)の残留アクリル酸エチル含有率は表2の通りであった。このディスパージョン(A2)をレドックス開始剤の酸化剤および還元剤の組成を表2の通りとしたことを除いては実施例2と同様の操作を行い、アクリル系ポリマーディスパージョン(B2)を得た。得られたアクリル系ポリマーディスパージョン(B2)の固形分、粒子径、pH、粘度、残留アクリル酸エチル含有率は表2の通りであった。
【0038】
[実施例3~8]
実施例2と同様にして、アクリル系ポリマーディスパージョン(A3~A8)ならびに(B3~B8)を得た。固形分、粒子径、pH、粘度、残留アクリル酸エチル含有率は表2の通りであった。なお、実施例3~7については、残留アクリル酸エチルの含有率に加え、残留アクリル酸ラウリルの含有率も測定した。
【0039】
[実施例9]
実施例2と同様にして、アクリル系ポリマーディスパージョン(A9)を得た。次いで、ディスパージョン(A9)を新たな反応器に移し替え、撹拌と雰囲気の窒素ガス置換を開始し、63~67℃まで昇温した。その後、濃度0.5質量%の70質量%tert-ブチルヒトロキシペルオキシド水溶液 5質量部、濃度0.86質量%の二硫酸ナトリウム水溶液 5質量部をセパラブルフラスコ中に投入した。1時間経過後、濃度0.5質量%の70質量%tert-ブチルヒトロキシペルオキシド水溶液 5質量部、濃度0.86質量%の二硫酸ナトリウム水溶液 5質量部をセパラブルフラスコ中に投入した。さらに1時間経過後、冷却を開始して室温まで冷却した。得られたアクリル系ポリマーディスパージョン(B9)の固形分、粒子径、pH、粘度は、残留アクリル酸エチル含有率は表2の通りであった。
【0040】
[実施例10]
実施例2と同様にして、アクリル系ポリマーディスパージョン(A10)を得た。次いで、ディスパージョン(A10)を新たな反応器に移し替え、撹拌と雰囲気の窒素ガス置換を開始し、63~67℃まで昇温した。その後、濃度0.5質量%の70質量%tert-ブチルヒトロキシペルオキシド水溶液 5質量部、濃度0.40質量%の亜硫酸水素ナトリウム水溶液 5質量部をセパラブルフラスコ中に投入した。1時間経過後、濃度0.5質量%の70質量%tert-ブチルヒトロキシペルオキシド水溶液 5質量部、濃度0.40質量%の亜硫酸水素ナトリウム水溶液 5質量部をセパラブルフラスコ中に投入した。さらに1時間経過後、冷却を開始して室温まで冷却した。得られたアクリル系ポリマーディスパージョン(B10)の固形分、粒子径、pH、粘度は、残留アクリル酸エチル含有率は表2の通りであった。
【0041】
[実施例11]
実施例1と同様にして、アクリル系ポリマーディスパージョン(A11)を得た。次いで、ディスパージョン(A11)を新たな反応器に移し替え、撹拌と雰囲気の窒素ガス置換を開始し、63~67℃まで昇温した。その後、濃度0.5質量%の70質量%tert-ブチルヒトロキシペルオキシド水溶液 20質量部、濃度0.68質量%のエリソルビン酸水溶液 20質量部をセパラブルフラスコ中に投入した。
2時間経過後、冷却を開始して室温まで冷却した。得られたアクリル系ポリマーディスパージョン(B11)の固形分、粒子径、pH、粘度は、残留アクリル酸エチル含有率は表2の通りであった。
【0042】
[実施例12]
実施例2と同様にして、アクリル系ポリマーディスパージョン(A12)を得た。次いで、ディスパージョン(A12)を新たな反応器に移し替え、撹拌と雰囲気の窒素ガス置換を開始し、63~67℃まで昇温した。その後、濃度0.5質量%の過硫酸カリウム水溶液 10質量部、濃度0.5質量%のエリソルビン酸水溶液 6質量部をセパラブルフラスコ中に投入した。1時間経過後、濃度0.5質量%の過硫酸カリウム水溶液 10質量部、濃度0.5質量%のエリソルビン酸水溶液 6質量部をセパラブルフラスコ中に投入した。さらに1時間経過後、冷却を開始して室温まで冷却した。得られたアクリル系ポリマーディスパージョン(B12)の固形分、粒子径、pH、粘度は、残留アクリル酸エチル含有率は表2の通りであった。
【0043】
[実施例13]
ビーカーAにアクリル酸-2-エチルヘキシル 220質量部、アクリル酸n-ブチル 70質量部、アクリル酸 3質量部、メタクリル酸 7質量部を量り取り均一撹拌した。ビーカーBにイオン交換水150質量部、 エレミノールJS-20 8質量部を量り取り、均一撹拌した。ビーカーBにビーカーAの内容物を加え、ディスパーで混合してプレエマルションを得た。つづいて、ビーカーCにV-50 0.06質量部、イオン交換水 6質量部を量り取り、均一撹拌した。また、ビーカーDにV-50 0.4質量部、イオン交換水 120質量部を量り取り、均一撹拌した。撹拌機、冷却管、温度計、滴下ロートを備えたセパラブルフラスコにイオン交換水 324質量部を量り取り、セパラブルフラスコ内の雰囲気を窒素ガスに置換し、撹拌しながら72~77℃まで加熱した。上記のプレエマルション 23質量部とビーカーCのV-50水溶液 6.06質量部をセパラブルフラスコに投入し、30分間先行重合を行った。その後、2本の滴下ロートを用いて残りのプレエマルションとビーカーDのV-50水溶液 120.4質量部をそれぞれ4時間かけて滴下した。プレエマルションの滴下が終了して2時間が経過した後、内容物を室温まで冷却しアクリル系ポリマーエマルション(A13)を得た。エマルション(A13)の残留アクリル酸-2-エチルヘキシルの含有率、残留アクリル酸n-ブチルの含有率は表2の通りであった。次いで、エマルション(A13)を新たな反応器に移し替え、撹拌と雰囲気の窒素ガス置換を開始し、63~67℃まで昇温した。その後、濃度0.5質量%の70質量%tert-ブチルヒトロキシペルオキシド水溶液 20質量部、濃度0.68質量%のエリソルビン酸水溶液 20質量部をセパラブルフラスコ中に投入した。1時間経過後、濃度0.5質量%の70質量%tert-ブチルヒトロキシペルオキシド水溶液 20質量部、濃度0.68質量%のエリソルビン酸水溶液 20質量部をセパラブルフラスコ中に投入した。さらに1時間経過後、濃度0.5質量%の70質量%tert-ブチルヒトロキシペルオキシド水溶液 20質量部、濃度0.68質量%のエリソルビン酸水溶液 20質量部をセパラブルフラスコ中に投入した。さらに1時間経過後、濃度0.5質量%の70質量%tert-ブチルヒトロキシペルオキシド水溶液 20質量部、濃度0.68質量%のエリソルビン酸水溶液 20質量部をセパラブルフラスコ中に投入した。さらに1時間経過後、冷却を開始して室温まで冷却した。得られたアクリル系ポリマーエマルション(B13)の固形分、粒子径、pH、粘度、残留アクリル酸-2-エチルヘキシルの含有率、残留アクリル酸n-ブチルの含有率は表2の通りであった。
【0044】
[実施例14]
ビーカーAにメタクリル酸メチル 150質量部、アクリル酸n-ブチル 50質量部、アクリル酸 7質量部、メタクリル酸 3質量部、メタクリル酸-2-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル]エチル 90質量部、エレミノールJS-20 12質量部を量り取り、50~60℃に加熱して均一撹拌した。ビーカーBにイオン交換水150質量部を量り取り、50~60℃に加熱した。ビーカーBにビーカーAの内容物を加え、ディスパーで混合してプレエマルションを得た。つづいて、ビーカーCにV-50 0.06質量部、イオン交換水 6質量部を量り取り、均一撹拌した。また、ビーカーDにV-50 0.4質量部、イオン交換水 120質量部を量り取り、均一撹拌した。撹拌機、冷却管、温度計、滴下ロートを備えたセパラブルフラスコにイオン交換水 324質量部を量り取り、撹拌しながら72~77℃まで加熱した。上記のプレエマルション 23質量部とビーカーCのV-50水溶液 6.06質量部をセパラブルフラスコに投入し、30分間先行重合を行った。その後、2本の滴下ロートを用いて残りのプレエマルションとビーカーDのV-50水溶液 120.4質量部をそれぞれ4時間かけて滴下した。プレエマルションの滴下が終了して2時間が経過した後、内容物を室温まで冷却しアクリル系ポリマーディスパージョン(A8)を得た。ディスパージョン(A14)の残留メタクリル酸メチルの含有率、残留アクリル酸n-ブチルの含有率は表2の通りであった。次いで、ディスパージョン(A14)を新たな反応器に移し替え、撹拌と雰囲気の窒素ガス置換を開始し、63~67℃まで昇温した。その後、濃度0.5質量%の70質量%質量tert-ブチルヒトロキシペルオキシド水溶液 20質量部、濃度0.68質量%のエリソルビン酸水溶液 20質量部をセパラブルフラスコ中に投入した。1時間経過後、濃度0.5質量%の70質量%tert-ブチルヒトロキシペルオキシド水溶液 20質量部、濃度0.68質量%のエリソルビン酸水溶液 20質量部をセパラブルフラスコ中に投入した。さらに1時間経過後、濃度0.5質量%の70質量%tert-ブチルヒトロキシペルオキシド水溶液 20質量部、濃度0.68質量%のエリソルビン酸水溶液 20質量部をセパラブルフラスコ中に投入した。さらに1時間経過後、濃度0.5質量%の70質量%tert-ブチルヒトロキシペルオキシド水溶液 20質量部、濃度0.68質量%のエリソルビン酸水溶液 20質量部をセパラブルフラスコ中に投入した。さらに1時間経過後、冷却を開始して室温まで冷却した。得られたアクリル系ポリマーディスパージョン(B14)の固形分、粒子径、pH、粘度、残留メタクリル酸メチル含有率、残留アクリル酸n-ブチルの含有率は表2の通りであった。
【0045】
[比較例1]
実施例1と同様にして、アクリル系ポリマーディスパージョン(A15)を得た。次いで、ディスパージョン(A15)を新たな反応器に移し替え、撹拌と雰囲気の窒素ガス置換を開始し、63~67℃まで昇温した。5時間経過後、冷却を開始して室温まで冷却した。得られたアクリル系ポリマーディスパージョン(B15)の固形分、粒子径、pH、粘度は、残留アクリル酸エチル含有率は表2の通りであった。
【0046】
[比較例2]
実施例1と同様にして、アクリル系ポリマーディスパージョン(A16)を得た。次いで、ディスパージョン(A16)を新たな反応器に移し替え、撹拌と雰囲気の窒素ガス置換を開始し、63~67℃まで昇温した。その後、濃度0.68質量%のエリソルビン酸水溶液 5質量部をセパラブルフラスコ中に投入した。1時間経過後、濃度0.68質量%のエリソルビン酸水溶液 5質量部をセパラブルフラスコ中に投入した。さらに1時間経過後、濃度0.68質量%のエリソルビン酸水溶液 5質量部をセパラブルフラスコ中に投入した。さらに1時間経過後、濃度0.68質量%のエリソルビン酸水溶液 5質量部をセパラブルフラスコ中に投入した。さらに1時間経過後、冷却を開始して室温まで冷却した。得られたアクリル系ポリマーディスパージョン(B16)の固形分、粒子径、pH、粘度、残留メタクリル酸メチル含有率、残留アクリル酸n-ブチルの含有率は表2の通りであった。
【0047】
[比較例3]
実施例1と同様にして、アクリル系ポリマーディスパージョン(A17)を得た。次いで、ディスパージョン(A17)を新たな反応器に移し替え、撹拌と雰囲気の窒素ガス置換を開始し、63~67℃まで昇温した。その後、濃度0.5質量%の70質量%tert-ブチルヒトロキシペルオキシド水溶液 5質量部をセパラブルフラスコ中に投入した。1時間経過後、濃度0.5質量%の70質量%tert-ブチルヒトロキシペルオキシド水溶液 5質量部をセパラブルフラスコ中に投入した。さらに1時間経過後、濃度0.5質量%の70質量%tert-ブチルヒトロキシペルオキシド水溶液 5質量部をセパラブルフラスコ中に投入した。さらに1時間経過後、濃度0.5質量%の70質量%tert-ブチルヒトロキシペルオキシド水溶液 5質量部をセパラブルフラスコ中に投入した。さらに1時間経過後、冷却を開始して室温まで冷却した。得られたアクリル系ポリマーディスパージョン(B17)の固形分、粒子径、pH、粘度、残留メタクリル酸メチル含有率、残留アクリル酸n-ブチルの含有率は表2の通りであった。
【0048】
【0049】
【表3】
表2、3に示した通り、レドックス開始剤を用いて後重合を行った実施例1~8は良好な臭気官能評価を示し、残留(メタ)アクリル酸エステルの含有率が50ppm以下であった。実施例9~14は弱いエステル臭を感じたものの、実用に供する水準であった。これに対し、レドックス開始剤成分を用いない比較例1、レドックス開始剤成分の酸化剤または還元剤のどちらか一方のみを含む比較例2および3は強いエステル臭を感じ、高い残留(メタ)アクリル酸エステルの含有率を示した。