(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118645
(43)【公開日】2022-08-15
(54)【発明の名称】ゴム定量押出装置の定量能力監視方法及びゴム定量押出装置
(51)【国際特許分類】
B29B 7/58 20060101AFI20220805BHJP
B29B 7/42 20060101ALI20220805BHJP
B29C 48/92 20190101ALI20220805BHJP
B29C 48/37 20190101ALI20220805BHJP
【FI】
B29B7/58
B29B7/42
B29C48/92
B29C48/37
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021015322
(22)【出願日】2021-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 勝治
(72)【発明者】
【氏名】任 思怡
【テーマコード(参考)】
4F201
4F207
【Fターム(参考)】
4F201AA45
4F201AH20
4F201AP08
4F201AP13
4F201AP14
4F201BA01
4F201BK13
4F201BK25
4F201BK40
4F201BK73
4F201BK74
4F201BK80
4F207AA45
4F207AH20
4F207AP08
4F207AP13
4F207KA01
4F207KK12
4F207KL94
4F207KM05
(57)【要約】
【課題】装置を停止することなくゴム定量押出装置の定量性能を監視する。
【解決手段】本発明のゴム定量押出装置の定量能力監視方法は、ゴム定量押出装置64に供給されるゴム材料R2の質量を取得する第1工程と、ゴム材料R2を押出すのに要したゴム定量押出装置64の稼働情報を取得する第2工程と、第1工程で取得したゴム材料R2の質量と第2工程で取得したゴム定量押出装置64の稼働情報とから算出される吐出効率を計算する第3工程とを含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム定量押出装置の定量能力監視方法であって、
前記ゴム定量押出装置に供給されるゴム材料の質量を取得する第1工程と
前記ゴム材料を押出すのに要した前記ゴム定量押出装置の稼働情報を取得する第2工程と、
前記第1工程で取得した前記ゴム材料の質量と前記第2工程で取得した前記ゴム定量押出装置の稼働情報とから算出される吐出効率を計算する第3工程とを含む
ゴム定量押出装置の定量能力監視方法。
【請求項2】
前記ゴム定量押出装置はギアポンプを有し、前記稼働情報は前記ギアポンプに設けられたギアの回転回数である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ゴム定量押出装置は押出機を有し、前記稼働情報は前記押出機が有するスクリューの回転数である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ゴム定量押出装置に供給されるゴム材料は台車に保持されたものであり、前記ゴムの質量は台車に保持された状態で取得される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ゴムの質量は前記台車に備えたRFIDタグに記憶される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
相互に噛合して回転する一対のギアを有し、供給部から供給されたゴムを外部へ送り出すギアポンプを有するゴム定量押出装置において、
前記ギアの回転回数を検出する回転数検出部と、
前記供給部に供給したゴムの質量を検出する供給量検出部と、
前記ギアの1回転当たりに前記ギアポンプに取り込まれるゴムの供給量の実測値G1と、前記ギアの1回転当たりに前記ギアポンプに取り込まれるゴムの供給量の理論値Gとの比率(G1/G)を、前記回転数検出部の検出値と前記供給量検出部の検出値とから算出する算出部と、
前記算出部で算出した前記比率(G1/G)に基づいて前記ギアポンプの寿命を予測する予測部とを備えるゴム定量押出装置。
【請求項7】
前記ギアポンプに供給するゴムを保持する台車と、
前記台車に設けられ外部機器と非接触通信可能であり、前記台車が保持するゴムの質量が記憶されるRFIDタグと、
前記RFIDタグと非接触通信可能であり、前記RFIDタグから前記台車が保持するゴムの質量を読取る読取り部とを備え、
前記算出部は、前記読取り部が取得したゴムの質量から前記ゴムの供給量の実測値G1を算出する請求項6に記載のゴム定量押出装置。
【請求項8】
供給部からバレル内へ供給されたゴムを混錬して前記バレルの先端側に送り出すスクリューを有する押出機を有するゴム定量押出装置において、
前記スクリューの回転回数を検出する回転数検出部と、
前記供給部に供給したゴムの質量を検出する供給量検出部と、
前記スクリューの1回転当たりに前記スクリューに取り込まれるゴムの供給量の実測値S1と、前記スクリューの1回転当たりに前記押出機に取り込まれるゴムの供給量の理論値Sとの比率(S1/S)を、前記回転数検出部の検出値と前記供給量検出部の検出値とから算出する算出部と、
前記算出部で算出した前記比率(S1/S)に基づいて前記スクリューの寿命を予測する予測部とを備えるゴム定量押出装置。
【請求項9】
前記押出機に供給するゴムを保持する台車と、
前記台車に設けられ外部機器と非接触通信可能であり、前記台車が保持するゴムの質量が記憶されるRFIDタグと、
前記RFIDタグと非接触通信可能であり、前記RFIDタグから前記台車が保持するゴムの質量を読取る読取り部とを備え、
前記算出部は、前記読取り部が取得したゴムの質量から前記ゴムの供給量の実測値S1を算出する請求項8に記載のゴム定量押出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム定量押出装置の定量能力監視方法及びゴム定量押出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤなどの製造においては、供給部から供給されたゴムを外部へ一定量ずつ押し出すギアポンプや押出機などのゴム定量押出装置が用いられている。このようなゴム定量押出装置では、長期間にわたって使用されると内部部品の摩耗によって外部へ押し出されるゴム量が一定でなくなる。
【0003】
所望の性能が得られなくなると修理するが、ゴム定量押出装置の修理の時期にあわせて生産計画を調整したり、適切な時期に修理部品を調達することでゴム定量押出装置による生産効率を向上させるため、ゴム定量押出装置の寿命を予測して交換時期を予測することが望まれている。
【0004】
そこで、下記特許文献1では、ギアポンプにおいて相互に噛合して回転する一対のギアの回転数とギアポンプから押し出されるゴムの吐出量とを検出し、検出した回転数とゴムの吐出量とからギアポンプの寿命を予測する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の方法をタイヤなどの製造設備に組み込まれたゴム定量押出装置に適用する場合、ゴム定量押出装置から押し出されるゴムの吐出量を測定するために、吐出量を計測する機構を製造設備に設ける必要があるが、設備が生産で稼働中は計測できない。
【0007】
また、製造設備においてゴム定量押出装置から押し出されたゴムは、成型ドラムなどの回転体に押し出されることがある。このような場合、成型ドラムごとゴム量を計測することも考えられるが、ゴムの吐出量を精度良く測定するためには設備を停止させて計測する必要があり、生産性を大きく損ねることとなる。
【0008】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、製造設備を停止することなくゴム定量押出装置が所定量のゴムを安定して押し出す性能(定量能力)を監視することができる方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のゴム定量押出装置の定量能力監視方法は、ゴム定量押出装置の定量能力監視方法であって、前記ゴム定量押出装置に供給されるゴム材料の質量を取得する第1工程と前記ゴム材料を押出すのに要した前記ゴム定量押出装置の稼働情報を取得する第2工程と、前記第1工程で取得した前記ゴム材料の質量と前記第2工程で取得した前記ゴム定量押出装置の稼働情報とから算出される吐出効率を計算する第3工程とを含むゴム定量押出装置の定量能力監視方法である。
【0010】
本発明のゴム定量押出装置は、相互に噛合して回転する一対のギアを有し、供給部から供給されたゴムを外部へ送り出すギアポンプを有するゴム定量押出装置において、前記ギアの回転回数を検出する回転数検出部と、前記供給部に供給したゴムの質量を検出する供給量検出部と、前記ギアの1回転当たりに前記ギアポンプに取り込まれるゴムの供給量の実測値G1と、前記ギアの1回転当たりに前記ギアポンプに取り込まれるゴムの供給量の理論値Gとの比率(G1/G)を、前記回転数検出部の検出値と前記供給量検出部の検出値とから算出する算出部と、前記算出部で算出した前記比率(G1/G)に基づいて前記ギアポンプの寿命を予測する予測部とを備えるものである。
【0011】
本発明のゴム定量押出装置は、供給部からバレル内へ供給されたゴムを混錬して前記バレルの先端側に送り出すスクリューを有する押出機を有するゴム定量押出装置において、前記スクリューの回転回数を検出する回転数検出部と、前記供給部に供給したゴムの質量を検出する供給量検出部と、前記スクリューの1回転当たりに前記スクリューに取り込まれるゴムの供給量の実測値S1と、前記スクリューの1回転当たりに前記押出機に取り込まれるゴムの供給量の理論値Sとの比率(S1/S)を、前記回転数検出部の検出値と前記供給量検出部の検出値とから算出する算出部と、前記算出部で算出した前記比率(S1/S)に基づいて前記スクリューの寿命を予測する予測部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
上記の発明では、タイヤ等の生産を停止させたり、生産性を低下させたりすることなくゴム定量押出装置の定量性能を監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るゴム定量押出装置の定量能力を監視する方法が適用されるタイヤ構成部材の製造設備の概略構成を示す図
【
図4】ゴム定量押出装置の定量能力を監視する手順を示すフロー図
【
図5】ギアポンプの稼働量と吐出効率ηとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態では、ゴム定量押出装置として押出機及びギアポンプを備えるタイヤ構成部材の製造設備1において、成型部6に設けられたギアポンプ64の定量能力を監視する場合を例に説明する。
【0015】
タイヤ構成部材の製造設備1は、
図1に示すように、材料混錬部2、材料準備部3、計量部5、成型部6、及び制御部10から構成されている。
【0016】
材料混錬部2には、供給部22、バレル23、スクリュー24、口金部25及びモータ26を備える押出機21が設けられおり、ゴム組成物を混錬して長尺のゴム材料R1を作製する。
【0017】
押出機21は、ゴム組成物及び添加剤を不図示の混練機で混錬したゴム材料が供給部22からバレル23内部へ供給される。モータ26は制御部10によってその回転数が制御され、スクリュー24を所定の回転数で回転させる。これにより、バレル23内部へ供給されたゴム材料は、モータ26の駆動軸に接続されたスクリュー24で更に混錬された後、バレル23の先端の口金部25から長尺のゴム材料R1が押し出される。
【0018】
口金部25から押し出されたゴム材料R1は、平板状のパレット27に載置され、材料準備部3へ搬送される。なお、口金部25から押し出されるゴム材料R1の形状はどのような形状であってもよいが、例えば、幅広のシート状とすることが好ましい。
【0019】
材料準備部3は、押出機31、処理槽40、乾燥搬送部41、及び台車42を備え、材料混錬部2において作製したゴム材料R1に対して二次加工を行う。
【0020】
押出機31は、上記した押出機21と同様、供給部32、バレル33、スクリュー34、口金部35、及びモータ36を備える。パレット27に載置されたゴム材料R1は供給部32から押出機31のバレル33内部へ供給される。押出機31では、制御部10によって制御されたモータ36が、スクリュー34を所定の回転数で回転させる。これにより、バレル33内部へ供給されたゴム材料R1がスクリュー34で更に混錬された後、バレル33の先端の口金部35から長尺のゴム材料R2が押し出される。なお、口金部35から押し出されるゴム材料R2の形状はどのような形状であってもよいが、搬送時などの安定性の点から断面が楕円形や長方形など厚手の扁平形状とすることが好ましい。
【0021】
処理槽40は、押出機31の口金部35の後続に設けられた剥離剤液などを収容した液槽である。押出機31から押し出されたゴム材料R2は、処理槽40の剥離剤液などに浸漬され表面が処理された状態で送り出される。
【0022】
乾燥搬送部41は、処理槽40の後続に設けられ、剥離剤液などが付着したゴム材料R2を搬送しながらブロワー48からの送風によって乾燥する。
【0023】
台車42は、軸方向の両端部にフランジを有するロール43と、ロール43を回転可能に支持する支持フレーム44とを備え、乾燥搬送部41において乾燥されたゴム材料R2をロール43で巻き取り、所定量のゴム材料R2を保持する。また、台車42の支持フレーム44には、台車42に関する情報や台車42が支持するゴム材料R2の質量Wを記憶するためのRFIDタグ45が設けられている。ゴム材料R2を保持した台車42は、計量部5を介して成型部6の台車固定部61に設置される。なお、RFIDタグ45には、台車42を特定するID情報を含む台車42に関する情報が記憶され、必要に応じてゴム材料R2の質量Wを計測した日時や、ゴム材料R2の種類や、ロット番号などの情報も記憶されてもよい。
【0024】
計量部5は、ゴム材料R2を保持した台車42の質量を計測する計量センサ51と、台車42の支持フレーム44に設けられたRFIDタグ45と非接触通信を行うRFIDリードライター52が設けられている。計量センサ51及びRFIDリードライター52は制御部10に接続されており、計量センサ51の検出結果が制御部10へ送信され、RFIDリードライター52が制御部10からの指示に従って、計量部5において質量を計測した台車42に関する情報を台車42のRFIDタグ45から読取り、台車42が保持するゴム材料R2の質量WをRFIDタグ45に書き込み記憶させる。
【0025】
図1及び
図2に示すように、成型部6は、台車固定部61、ゴム引出装置62、押出機63、ギアポンプ64、及び成型ドラム65を備え、ギアポンプ64から押し出されたゴムストリップSを回転する成型ドラム65に供給することで、成型ドラム65の外周面に空気入りタイヤを構成するゴム部材を成型する。
【0026】
台車固定部61は、計量部5において質量が計測された台車42の設置を検出する台車検出部66と、台車固定部61に設置された台車42のRFIDタグ45と非接触通信を行うRFIDリードライター67とが設けられている。台車検出部66及びRFIDリードライター67は制御部10に接続されており、台車検出部66が台車42の設置を検出すると、制御部10からの指示に従ってRFIDリードライター67が台車42のRFIDタグ45に記憶されたゴム材料R2の質量Wを読み込み、読み込んだゴム材料R2の質量Wを制御部10へ送信する。
【0027】
ゴム引出装置62は、台車固定部61に設置された台車42からゴム材料R2を引き出して押出機63の供給部72へ供給する。
【0028】
押出機63は、円筒形のバレル73と、供給部72から供給されたゴム材料R2を混練して先端側(ギアポンプ64側)に送り出すスクリュー74と、スクリュー74を回転させるモータ76とを有し、ギアポンプ64とともにゴム定量押出装置を構成する。押出機63は、制御部10に制御されたモータ76がスクリュー74を回転させることで、供給部72からバレル73内部に供給されたゴムを混練しながらギアポンプ64の入口側へ供給する。
【0029】
ギアポンプ64は、押出機63の押出方向先端側に接続されており、相互に噛合して回転する一対のギア77と、一対のギア77を収納するギア室78が設けられたケーシング79と、口金部80を備える。一対のギア77は、それぞれギアモータ83によって回転駆動され、それらの回転数は制御部10により制御される。
【0030】
ケーシング79は、ギア室78と押出機63との間に入口側チャンバー81が設けられ、ギア室78と口金部80との間に出口側チャンバー82が設けられている。ギアポンプ64は、一対のギア77の噛み合いが離れる時に押出機63から入口側チャンバー81に供給されたゴムを歯溝に入り込み、ギア77の回転によって出口側チャンバー82へ送り出す。
【0031】
口金部80は、所定の断面形状の吐出口が設けられており、ギアポンプ64から送り出されたゴムを吐出口から外部へ吐出してゴムストリップSを連続的に押出成型する。なお、口金部80から押し出されるゴムストリップSは、小幅かつ小厚さでリボン状をなし、成型ドラム65の外周面に成型するゴム部材に応じて種々のサイズのものが採用できる。また、ゴムストリップSの断面形状は、特定のものに限られず、例えば三角形や三日月形、円形、矩形など、仕上げ断面形状に応じて種々の且つ好ましい形状が採用できる。
【0032】
制御部10は、マイクコンピュータ及びメモリーなどの記憶装置を含んで構成され、
図3に示すように、押出機21,31、63のモータ26,36、76と、ギアポンプ64のギアモータ83と、成型ドラム65、計量センサ51、RFIDリードライター52,67と、台車検出部66と、キーボードなどの入力部68接続され、タイヤ構成部材の製造設備1を制御する。
【0033】
制御部10は、稼働量取得部及び回転数検出部として機能し、ギアポンプ64の稼働情報として新しいギアポンプ64の稼働を開始した時点から現在までのギアポンプ64の実働時間の積算値(稼働量)や、ギア77の回転回数を取得する。また、制御部10は、ギア77の1回転当たりにギアポンプ64に取り込まれるゴムの供給量の理論値Gに対する実測値G1の比率η(=G1/G、以下、吐出効率ηという)を検出する算出部、及び、吐出効率ηに基づいてギアポンプ64の寿命を予測する予測部としても機能する。
【0034】
次に、制御部10が成型部6に設けられたギアポンプ64の定量能力を監視する場合の制御について説明する。
【0035】
まず、制御部10は、ゴム材料R2を保持した台車42の質量の検出結果が計量センサ51から送信されると、RFIDリードライター52を制御して台車42のRFIDタグ45から台車42に関する情報を読取り、当該台車42自体の質量(つまり、ゴム材料R2を保持していない状態での台車42の質量)を取得する。
【0036】
なお、台車42自体の質量を取得する方法は、台車42のRFIDタグ45にその台車42自体の質量を記憶しておき、これをRFIDリードライター52によって読み込むことで取得してもよい。また、台車42を特定するID情報と台車42自体の質量とを制御部10が有する記憶装置に紐付けて記憶しておき、RFIDリードライター52によって台車42のID情報を取得し、取得したID情報に対応する台車42の質量を記憶装置より取得してもよい。
【0037】
制御部10は、ゴム材料R2を保持した台車42の質量から台車42自体の質量を差し引くことで、台車42が保持するゴム材料R2の質量Wを算出し、算出した質量WをRFIDリードライター52によってRFIDタグ45に記憶させる。
【0038】
そして、台車42が成型部6の台車固定部61に設置されると、制御部10は、押出機63、ギアポンプ64及び成型ドラム65を動作させて、成型ドラム65の外周面にゴム部材の成型を開始するとともに、ギアポンプ64の定量能力の監視を開始する。
【0039】
具体的には、
図4に示すように、成型部6の台車検出部66が台車42の設置を検出すると(ステップS1のYes)、制御部10からの指示に従って、RFIDリードライター67が台車42のRFIDタグ45に記憶されたゴム材料R2の質量Wを読み込み、読み込んだゴム材料R2の質量Wを制御部10へ送信する(ステップS2)。
【0040】
そして、制御部10は、ゴム材料R2の質量Wを記憶装置に記憶した後(ステップS3)、押出機63のモータ76、ギアポンプ64のギアモータ83、及び成型ドラム65を駆動して、口金部80から押し出されるゴムストリップSを回転する成型ドラム65に供給する(ステップS4)。
【0041】
制御部10は、ギアポンプ64のギアモータ83を起動すると、ギア77が回転した回数の計測を開始し、台車42が保持するゴム材料R2が無くなりゴム部材の成型が終了するまでギア77が回転した回数の計測を続ける。併せて、制御部10は、新しいギアポンプ64の稼働を開始した時点から現在までのギアポンプ64の実働時間を積算し、この実働時間の積算値をギアポンプ64の稼働量として記憶装置に記憶する(ステップS5)。
【0042】
そして、台車42が保持するゴム材料R2が無くなると(ステップS6のYes)、制御部10は、押出機63のモータ76、ギアポンプ64のギアモータ83、及び成型ドラム65を停止する。また、制御部10は、台車42が保持するゴム材料R2を使い終わるまでにギア77が回転した回数rと、ステップS2において取得したゴム材料R2の質量Wから、ギア77の1回転当たりにギアポンプ64に取り込まれるゴムの供給量の実測値G1(=W/r)から算出とともに、ギア77の1回転当たりにギアポンプ64に取り込まれるゴムの供給量の理論値Gに対する供給量の実測値G1の吐出効率η(=G1/G)を算出する。
【0043】
なお、ゴムの供給量の理論値Gは、ギア77の1回転当たりにギアポンプ64から押し出されるゴムに一致する。つまり、ギア77の1回転当たりにギアポンプ64から押し出されるゴムの体積の理論値に相当する(体積)Cと、ギアポンプ64に供給するゴムの密度ρとすると、ギア77の1回転当たりにギアポンプ64から押し出されるゴムの吐出量の理論値を下記式(2)から算出することができ、このゴムの吐出量の理論値がゴムの供給量の理論値Gとなるので、ゴム材料R2の質量W、ギア容量C、ギア77の回転回数r、ゴムの密度ρから吐出効率ηは下記式(3)から算出することができる。なお、ギア容量Cは、ギアポンプ64のギア77及びギア室78の形状から決定する値であり、ゴムの密度ρとともに入力部19から適宜に設定することができる。
【0044】
G1=W/r 式(1)
G =C×ρ 式(2)
η=G1/G=W/(C×r×ρ) 式(3)
制御部10は、算出した吐出効率ηと、吐出効率ηを算出した時点において制御部18が記憶装置に記憶するギアポンプ64の稼働量とを関連付けて記憶する(ステップS7)。
【0045】
そして、制御部10は、
図5に例示するように、今までに算出した吐出効率ηとギアポンプ64の稼働量との関係を示す近似関数Fを算出し、算出した近似関数から吐出効率ηが所定の基準値ηth以下に達する時のギアポンプ64の稼働量を算出する。制御部18は、吐出効率ηが所定の基準値ηth以下に達する時のギアポンプ64の実動時間の積算値を、ギアポンプ64の交換あるいは修理時期とすることでギアポンプ64の寿命を予測する(ステップS8)。
【0046】
なお、吐出効率ηとギアポンプ64の稼働量との関係を示す近似関数Fとして、直線関数、曲線関数のいずれの関数であっても良い。また、吐出効率ηの基準値ηthは、入力部19から適宜に設定することができる。
【0047】
以上のような本実施形態では、押出機63の供給部72に供給したゴム材料R2の質量W及びギア77の回転数rに基づいて算出される吐出効率ηからギアポンプ64の寿命を予測するため、供給部72にゴム材料R2を供給する前にゴム材料R2の質量を計測することができ、製造設備の生産性を損なうことなく供給部72に供給するゴム材料R2の質量を精度良く計測することができる。その結果、タイヤ構成部材の製造設備1の生産性を損ねることなくギアポンプ64の定量能力を監視することができる。
【0048】
本実施形態では、台車42がゴム材料R2を保持した状態でゴム材料R2の質量を計測するため、ゴム材料R2の取り回しが容易となる。しかも、ゴム材料R2は、台車42に保持されてから押出機63の供給部72に供給されるまでの間、台車42に保持された状態で所定の保管場所に一定時間待機することが多いため、ゴム材料R2の質量を測定するためのスペースや時間を確保しやすい。そのため、製造設備1を新設する場合だけでなく既存の製造設備1についても本実施形態の方法を容易に適用することができる。
【0049】
また、本実施形態では、台車42に保持されたゴム材料R2の質量が、台車42に設けられたRFIDタグ45に記憶されているため、計量部5と成型部6との間で制御部10が連携していない場合であっても、計量部5において計測したゴム材料R2の質量Wを成型部6へ容易に受け渡すことができる。
さらに、一度保持したゴム材料が台車から容易には離脱できない巻き取り式台車に記録手段(実施例ではRFIDタグ)を固定しているため、一度巻き取ったゴム材料と、巻き取り後に取得した質量データのミスマッチが極めて生じ難い。
【0050】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0051】
例えば、上記した実施形態では、ギアポンプ64の吐出効率ηに基づいてギアポンプ64の定量能力を監視することで、ギアポンプ14の寿命を予測する場合について説明したが、算出した吐出効率ηを用いてギアポンプ64から押し出されるゴム量の減少を補填するようにギア77の回転速度を変更するなど、ギアポンプ64の定量能力の監視結果をタイヤ構成部材の製造設備1の種々の制御に活用することができる。
【0052】
また、上記した実施形態では、成型部6に設けられたギアポンプ64の定量能力を監視する場合について説明したが、材料混錬部2に設けられた押出機21や材料準備部3に設けられた押出機31について、供給部22,32に供給するゴム材料とスクリュー24、34の回転回数に基づいて、各押出機21,31の定量能力を監視してもよい。
【0053】
例えば、材料準備部3に設けられた押出機31の定量能力を監視する場合、押出機31の供給部32に供給するゴム材料R1の質量をパレット27ごとに計測し、その計測結果W1と、パレット27が保持するゴム材料R1を使い終わるまでに押出機31のスクリュー34が回転した回数r1から、スクリュー34の1回転当たりに押出機31に取り込まれるゴムの供給量の実測値S1(=W1/r1)を算出とともに、スクリュー34の1回転当たりに押出機31に取り込まれるゴムの供給量の理論値Sに対する供給量の実測値S1の吐出効率(S1/S)を算出し、算出した吐出効率と押出機31の稼働量とから押出機31の寿命を予測してもよい。
【0054】
また、上記した実施形態では、制御部10が算出したゴム材料R2の質量Wを台車42に設けられたRFIDタグ45に記憶し、これをRFIDリードライター67によって読み込むことで、台車固定部61に設置された台車42が保持するゴム材料R2の質量Wを制御部10が取得した。このような方法以外にも、台車42を特定するID情報とその台車42が保持するゴム材料R2の質量Wとを制御部10が有する記憶装置に紐付けて記憶しておき、RFIDリードライター67によって台車42のID情報を取得し、取得したID情報に対応する台車42が保持するゴム材料R2の質量Wを記憶装置より取得したり、あるいは、RFIDタグ45に代えてバーコードを台車42に設け、これを計量部5及び台車固定部61に設けたバーコードリーダによって読み込むことで、計量部5において得たゴム材料R2の質量Wを台車42のID情報と紐付けたり、台車固定部61において取得したID情報に対応する台車42が保持するゴム材料R2の質量Wを記憶装置より取得してもよい。
【0055】
また、上記した実施形態では、ギア77やスクリュー34の1回転当たりにギアポンプ64や押出機31に取り込まれるゴム供給量の理論値に対する実測値G1の比率を吐出効率としたが、種々の機械効率を吐出効率として利用することができる。例えば、台車42やパレット27が保持するゴム材料を使い終わるまでにギアポンプ64や押出機31が要した電力Eを、台車42やパレット27が保持するゴム材料の質量又は体積で除した機械効率(エネルギー効率)や、台車42やパレット27が保持するゴム材料の質量又は体積を、台車42やパレット27が保持するゴム材料を使い終わるまでにギア77やスクリュー34が回転した回数で除した機械効率などを吐出効率として利用してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…タイヤ構成部材の製造設備、2…材料混錬部、3…材料準備部、5…計量部、6…成型部、10…制御部、21…押出機、22…供給部、31…押出機、32…供給部、42…台車、43…ロール、44…支持フレーム、45…RFIDタグ、51…計量センサ、52…RFIDリードライター、61…台車固定部、63…押出機、64…ギアポンプ、65…成型ドラム、66…台車検出部、67…RFIDリードライター、72…供給部、73…バレル、74…スクリュー、76…モータ、77…ギア、78…ギア室、79…ケーシング、80…口金部、81…入口側チャンバー、82…出口側チャンバー、83…ギアモータ