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特開2022-118646消しゴム、消しゴムの製造装置及び消しゴムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118646
(43)【公開日】2022-08-15
(54)【発明の名称】消しゴム、消しゴムの製造装置及び消しゴムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B43L 19/00 20060101AFI20220805BHJP
【FI】
B43L19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021015323
(22)【出願日】2021-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000134589
【氏名又は名称】株式会社トンボ鉛筆
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100087893
【弁理士】
【氏名又は名称】中馬 典嗣
(72)【発明者】
【氏名】花岡 貴文
(57)【要約】
【課題】一般的な消しゴム形状を保ちつつ、必要に応じて角部を増加可能な消しゴム、消しゴムの製造装置及び消しゴムの製造方法を提供する。
【解決手段】基端側に入口12aが形成されると共に先端側に出口12bが形成され、内部を加熱可能な筒部12と、筒部12の内部に回転可能に配置され、入口12aより投入されて筒部12の内部で加熱される材料を、混錬しつつ出口12b側に押し出すスクリュー部16と、成型孔15aを有し、筒部12の出口12bに装着され、スクリュー部16により押し出された材料を、成型孔15aを通すことで成型する口金部15と、筒部12と口金部15との間に、成型孔15aを分割するように配置された分割面形成部材14と、を備える製造装置10を用いて、同一の材料で製造された消しゴム1であって、消しゴム1における他の部分よりも小さな引張力で分割可能な分割面を備える消しゴム1を製造する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の材料で製造された消しゴムであって、
前記消しゴムにおける他の部分よりも小さな引張力で、前記消しゴムを分割可能な分割面を備える、消しゴム。
【請求項2】
前記分割面は、前記分割面を挟んだ一方と他方との間に、前記引張力として0.027kg/cm~6.67kg/cmの力を加えたときに、分割される面である、
請求項1に記載の消しゴム。
【請求項3】
内部空間を有し、該内部空間への材料の入口と出口とが設けられた材料保持部と、
前記材料保持部の前記内部空間に投入された材料を前記出口から外部に押し出す押出部と、
成型孔を有し、前記材料保持部の前記出口に装着され、前記押出部により押し出された前記材料を、前記成型孔を通すことで成型する口金部と、
前記材料保持部と前記口金部との間に、前記成型孔を分割するように配置された分割面形成部材と、を備え、
同一の材料で製造された消しゴムであって、前記消しゴムにおける他の部分よりも小さな引張力で分割可能な分割面を備える消しゴムを製造する、消しゴムの製造装置。
【請求項4】
前記口金部は前記成型孔が貫通して設けられた板状部材であり、異なる厚みの前記口金部が装着可能な、
請求項3に記載の消しゴムの製造装置。
【請求項5】
内部空間を有し、該内部空間への材料の入口と出口とが設けられた材料保持部の前記内部空間に材料を投入し、
前記材料を前記出口から外部に押し出し、
押し出された前記材料を、前記材料保持部の前記出口に装着された口金部の成型孔を通すことで成型する消しゴムの製造方法において、
押し出された前記材料が前記成型孔に流入される際に、前記材料を、前記材料保持部と前記口金部との間に前記成型孔を分割するように配置された分割面形成部材で分割することにより、同一の材料で製造された消しゴムであって、前記消しゴムにおける他の部分よりも小さな引張力で分割可能な分割面を備える消しゴムを製造する、消しゴムの製造方法。
【請求項6】
板状の消しゴム片を複数枚製造し、
製造された前記消しゴム片を重ね合わせてプレスして、複数枚の前記消しゴム片を接合することで、
同一の材料で製造された消しゴムであって、前記消しゴムにおける他の部分よりも小さな引張力で分割可能な分割面を備える消しゴムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消しゴム、消しゴムの製造装置及び消しゴムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
消しゴムの角部は、細かい文字等を消すのに便利である。しかし、使用していくと角部が丸まり、細かいところが消しにくくなる。ナイフ等の刃物を使用すれば、消しゴムの丸まった部分をカットして角部を再生することができる。しかし、角部を形成するために刃物を携帯する必要があり、また、刃物の使用による危険性もある。
このため、通常、直方体の消しゴムの角部は8個であるが、8以上の角部が設けられた消しゴムも存在する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-34624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、角部が多くなると、消しゴムの形状が複雑になり、携帯性が悪く、使用時に持ちにくく、形状にフィットしたスリーブが形成しにくく、さらに消しゴム生地に強度が必要である。
【0005】
本発明は、一般的な消しゴム形状を保ちつつ、必要に応じて角部を増加可能な消しゴム、消しゴムの製造装置及び消しゴムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の一態様は、同一の材料で製造された消しゴムであって、前記消しゴムにおける他の部分よりも小さな引張力で、前記消しゴムを分割可能な分割面を備える、消しゴムを提供する。
【0007】
前記分割面は、前記分割面を挟んだ一方と他方との間に、前記引張力として0.027kg/cm~6.67kg/cmの力を加えたときに、分割される面であることが好ましい。
【0008】
また、本発明の他の態様は、内部空間を有し、該内部空間への材料の入口と出口とが設けられた材料保持部と、前記材料保持部の前記内部空間に投入された材料を前記出口から外部に押し出す押出部と、成型孔を有し、前記材料保持部の前記出口に装着され、前記押出部により押し出された前記材料を、前記成型孔を通すことで成型する口金部と、前記材料保持部と前記口金部との間に、前記成型孔を分割するように配置された分割面形成部材と、を備え、同一の材料で製造された消しゴムであって、前記消しゴムにおける他の部分よりも小さな引張力で分割可能な分割面を備える消しゴムを製造する、消しゴムの製造装置を提供する。
【0009】
前記口金部は前記成型孔が貫通して設けられた板状部材であり、異なる厚みの前記口金部が装着可能であってもよい。
【0010】
本発明のさらに他の態様は、内部空間を有し、該内部空間への材料の入口と出口とが設けられた材料保持部の前記内部空間に材料を投入し、前記材料を前記出口から外部に押し出し、押し出された前記材料を、前記材料保持部の前記出口に装着された口金部の成型孔を通すことで成型する消しゴムの製造方法において、押し出された前記材料が前記成型孔に流入される際に、前記材料を、前記材料保持部と前記口金部との間に前記成型孔を分割するように配置された分割面形成部材で分割することにより、同一の材料で製造された消しゴムであって、前記消しゴムにおける他の部分よりも小さな引張力で分割可能な分割面を備える消しゴムを製造する、消しゴムの製造方法を提供する。
【0011】
本発明のさらなる他の態様は、板状の消しゴム片を複数枚製造し、製造された前記消しゴム片を重ね合わせてプレスして、複数枚の前記消しゴム片を接合することで、同一の材料で製造された消しゴムであって、前記消しゴムにおける他の部分よりも小さな引張力で分割可能な分割面を備える消しゴムの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、一般的な消しゴム形状を保ちつつ、必要に応じて角部を増加可能な消しゴム、消しゴムの製造装置及び消しゴムの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る消しゴム1の斜視図であり、(a)は消しゴム1に引張力を加えていない状態、(b)は所定の引張力を加えて消しゴム1を分割面2で分割した状態、(c)は所定の引張力より小さな力で消しゴム1を分割面2で分割する場合の例を示した図である。
図2】分割面2の他の形態を示す図であり、(a)は分割面2が複数の場合、(b)は分割面2が曲線を含む場合、(c)は分割面2が複数の平面を含む場合である。
図3】第1実施形態としての押出成型による製造方法を実施する製造装置10の分解図である。
図4】製造装置10を組み立てた状態の斜視図である。
図5】製造装置10の材料押し出し部分の断面図である。
図6】製造装置10の材料押し出し部分の正面図である。
図7】製造装置10を用いて、所定形状の塩化ビニル系樹脂の消しゴム1を製造し、その分割面2を分離する引張力を測定した結果を示す表である。
図8】製造装置10を用いて、非塩化ビニル系樹脂消しゴム1を製造し、その分割面2を分離する引張力を測定した結果を示す表である。
図9】製造装置10を用いて製造した実施例及び比較例の試験片の形状を示す写真である。
図10】製造装置10を用いて製造した実施例及び比較例の試験片の引張力の測定方法を示す写真である。
図11】消しゴム1の製造方法の第2実施形態としてのプレス成型による製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。実施形態の消しゴム1は、略直方体形状である。消しゴム1は、全体が同一の材料で製造され、消しゴム1における他の部分よりも小さな引張力で、消しゴム1を分割可能な分割面2を備える。同一の材料とは、部分ごとに異なる材料が用いられておらず、材料の成分も略均一であることを意味する。
【0015】
図1は、実施形態に係る消しゴム1の斜視図であり、(a)は消しゴム1に所定の引張力を加えていない状態、(b)は所定の引張力を加えて消しゴム1を分割面2で分割した状態、(c)は所定の引張力より小さな力で消しゴム1を分割面2で分割する場合の例を示した図である。
図1(a)に示すように、分割面2は、所定の引張力を加えない状態において、消しゴム1の外表面に、切れ目、溝部、スリット等を形成していない。すなわち、消しゴム1の外表面は、分割面2が内部に延びている外表面も含めて切れ目、溝部、スリット等が形成されていない平坦面である。
【0016】
(消しゴム1の材料)
消しゴム1は、ゴム類、プラスチック類、熱可塑性エラストマー類等の基材成分に、可塑剤又はプロセスオイル等の軟化成分と、充填剤と、安定剤と、必要に応じて着色料等を配合して均一に混合した後、例えば一旦加熱により硬化してペレット形状や板状にした後、再度加熱することで消しゴム形状に成型される。
【0017】
(基材成分)
消しゴム1は、例えば、以下のような基材成分の種類により大別することができる。これらの基材成分は、単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いることができる。
【0018】
(1)基材成分として熱可塑性樹脂が用いられるプラスチック系消しゴム
プラスチック系消しゴムの基材成分である熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル-エチレン-酢酸ビニル樹脂等の塩化ビニル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル樹脂等の酢酸ビニル系樹脂等が挙げられる。
なかでも塩化ビニル系樹脂、特に塩化ビニル樹脂が、可塑剤との混和が容易であり、且つ高い保形性と高い消字性とを兼ね備えた消しゴム1を得るために好適である。
【0019】
(2)基材成分としてゴムが用いられるゴム系消しゴム
ゴム系消しゴムの基材成分であるゴムとして、IIR(ブチルゴム)、IR(イソプレンゴム)、SBR(スチレン-ブタジエンゴム)、BR(ブタジエンゴム)、EPM(エチレンプロピレンゴム)、EPDM(エチレンプロピレンジエン三元共重合体)、アクリルゴム、ポリイソブチレン、NR(ポリイソプレン,天然ゴム)等が挙げられる。
【0020】
(3)基材成分としてエラストマーが用いられるエラストマー系消しゴム
エラストマー消しゴムの基材成分であるエラストマーとしては、スチレン系、ブタジエン系、イソプレン系、エチレン-プロピレン系、ニトリル系、クロロプレン系、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系、及びオレフィン系のエラストマーが挙げられる。
【0021】
(軟化成分)
軟化成分は可塑剤又はプロセスオイルである。
可塑剤としては、ジオクチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジブチルフタレート等のフタレート系可塑剤、アセチルクエン酸トリブチル等のアセチルクエン酸エステル系可塑剤、ジ-2-エチルヘキシルアジペート、アジピン酸ポリエステル等のアジピン酸エステル系可塑剤、アルキルスルフォン酸フェニルエステル等のアルキルスルフォン酸エステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤、及び安息香酸系エステル等が好適に用いられる。これらの可塑剤は単独で用いてもよく、必要に応じてこれらのうち2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
プロセスオイルとしては、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等の鉱物油、動植物油あるいはこれらを由来とするオイルが用いられる。
【0022】
(充填剤)
充填剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、タルク、クレー、珪藻土、石英粉、アルミナ、アルミナシリケート、マイカ等が用いられる。
【0023】
(分割面2)
実施形態において分割面2は、図1に示すように、消しゴム1を分割可能な1つの平面であり、分割面2で分割されると消しゴム1は2つの直方体の消しゴム片1a、1bに分割される。
ただし、これに限定されない。図2は分割面2の他の形態を示す図であり、図2(a)に示すように分割面2は複数であってもよく、図2(b)に示すように、分割面2は、断面が一部湾曲した曲線を含むジグゾーパズル状であってもよく、図2(c)に示すように、分割面2は、複数の平面を含む断面ジグザグ状であってもよい。
なお、分割面2は、図示するように、消しゴムを使用していく方向である消しゴムの長手方向に対して垂直方向に沿う方向に形成されることが好ましい。
【0024】
分割面2は、上述のように消しゴム1における他の部分よりも小さな所定の引張力で、消しゴム1を分割可能な面である。所定の引張力とは、分割面2を挟んで消しゴム1の一方を固定して、他方を引っ張った場合に、分割面2でゴム片1a、1bとが分割されるときの引張力である。
実施形態の消しゴム1は、一側面の大きさが、5mm×15mmである。そして、消しゴム1の分割面2は、その一側面と平行、同形且つ同じサイズの5mm×15mmである。
この5mm×15mmの分割面2を引き離して、消しゴム1をゴム片1a、1bとに分割するときの引張力は、0.02kg~5kgの力が好ましく、1kg~4kgの力であることがより好ましい。
なお、0.02kg~5kgは1cmあたりの力にすると、0.027kg~6.67kgであり、1kg~4kgは1cmあたりの力にすると、1.33kg~5.33kgである。
【0025】
参考として、山形保険医療研究第18号2015「基礎代謝と握力の関連」によると、指でつまむピンチ力と呼ばれる力の、20代から50代の平均は、右手6.6kg~7.1kg、左手5.8kg~6.4kgである。実施形態の引張力の好ましい範囲は、それ以下の力であるので、使用者は消しゴム1を分割面2で容易に分割することができる。
また、一般的な消しゴムを用いて、消字の際の荷重モニターテストを行った結果、小学校低学年男女の消字の際の荷重の平均は、最大2.085kg、最小0.78kg、平均1.322kgであるので、最小の力の子でも、消しゴム1を分割面2で容易に分割することができる。
なお、図1(c)に示すように、分割面2を一方の側から引き剥がすことによってより小さな力で分離することができる。
【0026】
(消しゴム1の製造方法の第1実施形態:押出成型の場合)
以下、消しゴム1の製造方法の第1実施形態としての押出成型による製造方法を説明する。
図3は、第1実施形態としての押出成型による製造方法を実施する製造装置10の分解図である。図4は、製造装置10を組み立てた状態の斜視図である。図5は、製造装置10の材料押し出し部分の断面図である。図6は、製造装置10の材料押し出し部分の正面図である。
【0027】
製造装置10は、材料投入ホッパ11と、シリンダ部12A及びヘッド部12Bを有する材料保持部である筒部12と、シリンダ部12Aの内部に配置された押出部であるスクリュー部16と、分割面形成部材14と、口金部15と、を備える。
【0028】
(材料投入ホッパ11)
材料投入ホッパ11は材料投入口11aを有し、材料投入口11aから投入された、例えばペレット状の材料を、筒部12の入口12aへと導く。
【0029】
(筒部12)
筒部12は、シリンダ部12Aと、シリンダ部12Aの先端側に設けられたヘッド部12Bとを有する。
シリンダ部12Aは、基端側に材料投入ホッパ11が取り付けられる入口12aが形成され、内部にスクリュー部16が配置されている。シリンダ部12Aは、さらに、図示しない加熱装置により内部を加熱可能であり、材料投入ホッパ11から投入されたペレット状の材料を加熱して溶融させる。
【0030】
(スクリュー部16)
スクリュー部16は、シリンダ部12Aの内部空間に配置され、図示しない駆動部により回転駆動される。スクリュー部16は、シリンダ部12Aの内部に投入されて加熱溶融された材料を、混練しながらシリンダ部12Aの先端側へ押し出す。
【0031】
(ヘッド部12B)
ヘッド部12Bはシリンダ部12Aの先端側に取り付けられる。ヘッド部12Bの先端側には、シリンダ部12A内で加熱溶融され且つ混錬された材料が押し出される出口12bが形成される。
【0032】
(口金部15)
口金部15は、所定厚みの板状部材であり、中央に成型孔15aが設けられている。口金部15はヘッド部12Bの先端面に、ヘッド部12Bの出口12bと成型孔15aとが重なるようにして配置されている。
口金部15は、出口12bより押し出された溶融材料を、成型孔15aを通すことにより、成型孔15aの形状に成型する。成型孔15aは矩形形状で、この成型孔15aを通して押し出された材料は、成型孔15aと同形の矩形断面を有する棒状の消しゴム材料1Aに成型される。
【0033】
(分割面形成部材14)
分割面形成部材14は、実施形態では、金属のワイヤーである線状部材であり、溶融された材料が押し出される押し出し方向と直交する方向に延びている。分割面形成部材14は、ヘッド部12Bと口金部15との間において、ヘッド部12Bの出口12bと、口金部15の成型孔15aとが重なる、材料が押し出される流路上に配置されている。分割面形成部材14は、材料の流路となる矩形の成型孔15aを2等分するように配置されている。
【0034】
実施形態では、線状部材である分割面形成部材14が1本配置されているが、図2(a)に対応するように分割面形成部材14は複数本配置されていてもよい。また、実施形態で線状部材である分割面形成部材14は直線的に延びているが、図2(b)、(c)の分割面2に対応するように曲がっていてもよい。さらに、分割面形成部材14は、線状部材でなくてもよく、材料の押し出し方向に所定幅を有し且つ押し出し方向と直交する方向に延びる帯状部材であってもよい。
【0035】
次いで、消しゴム1の製造方法について説明する。
図示しない加熱装置によりシリンダ部12Aの内部が所定温度に加熱される。そして、図示しない駆動部によりシリンダ部12A内のスクリュー部16が回転される。
この状態で、ペレット状の材料が材料投入ホッパ11に投入される。投入されたペレットは、入口12aより自重によりシリンダ部12A内に自然落下して供給される。
シリンダ部12A内においてペレットは加熱されて溶融し、回転するスクリュー部16により混練されながらシリンダ部12Aの先端部へと送られ、ヘッド部12Bに設けられた出口12bから筒部12の外部へと押し出される。
【0036】
出口12bから押し出された加熱溶融された材料は、口金部15の成型孔15aに流入されるが、その際、分割面形成部材14により流れが2つに分けられる。すなわち、強制的にウェルドラインが形成される。ウェルドラインは金型内で溶融樹脂が流れる際に分岐しその後合流した箇所にできる脆弱部分である。
材料が口金部15の成型孔15aを通過して固まる際、2つの流れに分けられた材料は再度結合するが、その再結合したウェルドラインの部分は、他の部分より分離が容易な分割面2となる。そして、分割面2が形成された矩形断面の連続した棒状の消しゴム材料1Aが押出成型される。棒状の消しゴム材料1Aは、その後、所定長さで切断されることにより消しゴム1が製造される。
【0037】
分割面2は、再結合した部分であるので、他の部分より分離が容易である。しかし、所定の引張力を加えない状態では結合しており、消しゴム1の外表面に、切れ目、溝部、スリット等は形成されていない。すなわち、消しゴム1における分割面2が内部に延びている外表面は、平坦である。
【0038】
また、分割面2を分離する所定の引張力は、口金部15の厚さ、すなわち、溶融材料が口金部15の成型孔15aを通過する時間を変えることで変更可能である。
口金部15が厚いと、溶融材料が成型孔15aを通過する時間が長くなるので、分割面2の結合力が強くなり、分割面2を分離させるのに強い引張力が必要である。
口金部15が薄いと、溶融材料が成型孔15aを通過する時間が短くなるので、分割面2の結合力が弱くなり、分割面2を分離させる引張力は弱くなる。
【0039】
図7は、第1実施形態の製造装置10を用いて、塩化ビニル系樹脂の消しゴム1を製造し、その分割面2を分離する引張力を測定した結果を示す表である。
実施例1、実施例2は、第1実施形態の製造装置10、すなわち分割面形成部材14が配置されている製造装置10を用いて製造した消しゴム1であり、分割面2を備える。実施例1は厚さが1mm、実施例2は厚さが5mmの口金部15を用いた。
比較例1、比較例2は、第1実施形態の製造装置10から分割面形成部材14を除いた製造装置を用いて製造した消しゴム1であり、分割面2を備えていない。比較例1は厚さが1mm、比較例2は厚さが5mmの口金部15を用いた。
【0040】
実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2は、塩化ビニル樹脂を基材成分とするプラスチック系消しゴム1である。
具体的には、基材成分として塩化ビニル樹脂を24.95重量%、可塑剤としてアルキルスルホン酸フェニルエステルを49.95重量%、充填剤として炭酸カルシウムを24.95重量%、添加剤を0.15重量%含む。
【0041】
図8は、第1実施形態の製造装置10を用いて、非塩化ビニル系樹脂の消しゴム1を製造し、その分割面2を分離する引張力を測定した結果を示す表である。
実施例3、実施例4は、第1実施形態の製造装置10、すなわち分割面形成部材14が配置されている製造装置10を用いて製造した消しゴム1であり、分割面2を備える。実施例3は厚さが1mm、実施例4は厚さが5mmの口金部15を用いた。
比較例3、比較例4は、第1実施形態の製造装置10から分割面形成部材14を除いた製造装置を用いて製造した消しゴム1であり、分割面2を備えていない。比較例3は厚さが1mm、比較例4は厚さが5mmの口金部15を用いた。
【0042】
実施例3、実施例4、比較例3、比較例4は、熱可塑性エラストマーを基材成分としたエラストマー系消しゴム1である。
具体的には、基材成分として熱可塑性エラストマーを30重量%、充填剤としてシリカ粒子を60重量%、軟化成分としてプロセスオイルを10重量%含む。
【0043】
図9は、引張力を測定するための実施例及び比較例の試験片の形状を示す写真である。試験片の形状はJIS K 7139 タイプCPに基づく小形引張試験片形状である。図10は、製造装置10を用いて製造した実施例及び比較例の試験片の引張力の測定方法を示す写真である。
【0044】
引張力の測定方法は次の通りである。実施例では、製造装置10で製造し約2mm厚にした消しゴム1を、分割面がくびれの真ん中になるように図9の形状に打ち抜き加工して試験片を作製した。比較例では、分割面形成部材のない製造装置で製造した分割面のない消しゴムを、実施例と同様の方法で加工して試験片を作製した。
【0045】
これらの試験片を、JIS K 7161-1に基づき、万能材料試験機5566型(インストロン社製)を用いて、試験片の両端を図10に示すように引張り、分断されたときの力を引張力とした。それぞれの試験片につき5回測定した平均をとった。
試験条件は、試験速度50mm/min、チャック間距離30mm、測定数n=5、試験室の温度23℃±2℃、試験室の相対湿度50%±10%である。
【0046】
引張力の測定の際に分断された実施例1、2、3、4の試験片は、いずれも分割面に沿ってきれいに分離した。比較例1、2、3、4の試験片は、いずれもくびれ部分でちぎれるように分断し、断面は凸凹が多く汚くなった。
【0047】
図7に示すように、塩化ビニル樹脂が用いられるプラスチック系消しゴム1で、口金厚さが1mmの場合において、実施例1の消しゴムの引張力は2.56kg/cmであり、比較例1の消しゴムの引張力は、13.6kg/cmであった。
すなわち、分割面2が設けられている実施例1の消しゴムは、比較例1の消しゴムに対して18.8%と低い値で分割可能であることが証明された。
【0048】
また、塩化ビニル樹脂が用いられるプラスチック系消しゴム1で、口金厚さが5mmの場合において、実施例2の消しゴムの引張力は6.45kg/cmであり、比較例2の消しゴムの引張力は、13.6kg/cmであった。
すなわち、実施例2の消しゴムは分割面2により比較例2の消しゴムに対して47.4%と低い値で分割可能であることが示された。
【0049】
なお、実施例1の消しゴムの引張力を消しゴム1の断面サイズ5mm×15mmに換算すると1.92kgとなり、実施例2の消しゴムの引張力を消しゴム1の断面サイズ5mm×15mmに換算すると4.83kgとなる。
【0050】
図8に示すように、熱可塑性エラストマーが用いられるエラストマー系消しゴム1で、口金厚さが1mmの場合において、実施例3の消しゴムの引張力は3.21kg/cmであり、比較例3の消しゴムの引張力は、39.6kg/cmであった。
すなわち、分割面2が設けられている実施例3の消しゴムは、比較例3の消しゴムに対して8.1%と低い値で分割可能であることが示された。
【0051】
また、熱可塑性エラストマーが用いられるエラストマー系消しゴム1で、口金厚さが5mmの場合において、実施例4の消しゴムの引張力は6.21kg/cmであり、比較例4の消しゴムの引張力は、39.6kg/cmであった。
すなわち、分割面2が設けられている実施例4の消しゴムは、比較例4の消しゴムに対して15.7%と低い値で分割可能であることが示された。
【0052】
なお、実施例3の消しゴムの引張力を消しゴム1の断面サイズ5mm×15mmに換算すると2.41kgとなり、実施例4の消しゴムの引張力を消しゴム1の断面サイズ5mm×15mmに換算すると4.65kgとなる。
【0053】
このように、実施形態の製造方法によると、消しゴム1を分割面2の大きさを、5mm×長さ15mmとした場合に、分割面2を挟んで一方を固定して他方を引っ張ったときに0.02kg~5kgの力とすることができる。
【0054】
(消しゴム1の製造方法の第2実施形態:プレス成型の場合)
図11は消しゴム1の製造方法の第2実施形態としてのプレス成型による製造方法を説明する図である。
まず、図11(a)に示すように、それぞれ同形の凹部20aが設けられた2つの金型20のそれぞれの凹部20aに、基材成分と、可塑剤又はプロセスオイル等の軟化成分と、充填剤と、安定剤と、必要に応じて着色料等を配合して均一に混合した混合材料を流入する。このとき、可塑剤は液体であるので、混合材料は液状となる。
金型20を加熱すると、例えば塩化ビニル系の熱可塑性樹脂である基材成分の分子鎖内に可塑剤が取り込まれて流動性が低下し、材料が固化する。凹部20aに固化した材料が入っている2つの金型20を、互いの凹部20aが対向するように向い合わせる。この状態で2つの金型20を互いに押圧して加熱する。
そうすると、それぞれの凹部20a内の材料は接合され、接合面は、ウェルドラインと同等の分割面2となる。
これにより、全体が同一の材料で製造され、消しゴム1における他の部分よりも小さな引張力で、消しゴム1を分割可能な分割面2を備える消しゴム1が製造される。
【0055】
以上、実施形態の消しゴム1は、通常の樹脂成型において不具合とされるウェルドラインを意図的に発生させることにより、分割面2を形成する。この分割面2は、全体が同一の材料で製造されている消しゴム1であっても、消しゴム1における他の部分よりも小さな引張力で、消しゴム1を分割可能な面となる。
一方、消しゴム1は、分割面2で分割する前は、直方体の通常の消しゴム形状を有し、外表面に、切れ目、溝部、スリット等は形成されていない。すなわち、消しゴム1の、分割面2が内部に延びている外表面は、平坦である。
したがって、角を増やした特殊な形状の消しゴムと比べて携帯性に優れ、使用時に持ちやすく、形状にフィットしたスリーブが形成しやすい。さらに消しゴム生地は通常の強度でよい。
消しゴム1は角部を使って細かい部分を消していくと角部が丸くなる。
ここで、実施形態の消しゴム1は他の部分よりも小さな引張力で、消しゴム1を分割可能な分割面2を備えているので、この分割面2によって、分割することができる。分割された消しゴム1は、分割された部分に新たな角部を形成することができ、さらに小さな部分を消すことができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これに限定されない。
例えば、2つのラインからそれぞれ材料を流入することで、ウェルドラインによる分割面を形成する、射出成型により消しゴム1を製造してもよい。
また、実施形態では、押出部として回転駆動することで筒部12に投入された材料を押し出すスクリュー部16を用いたが、これに限らない。すなわち、押出部として、筒部の軸方向に進退することで筒部に投入された材料を押し出す押し子(ステム)を用いてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 消しゴム
1a ゴム片
1b ゴム片
2 分割面
10 製造装置
11 材料投入ホッパ
11a 材料投入口
12 筒部(材料保持部)
12A シリンダ部
12B ヘッド部
12a 入口
12b 出口
14 分割面形成部材
15 口金部
15a 成型孔
16 スクリュー部(押出部)
20 金型
20a 凹部1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11