(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118664
(43)【公開日】2022-08-15
(54)【発明の名称】難燃剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 21/02 20060101AFI20220805BHJP
【FI】
C09K21/02
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021015356
(22)【出願日】2021-02-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】308031887
【氏名又は名称】スモリホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095359
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 篤
(72)【発明者】
【氏名】須森 明
【テーマコード(参考)】
4H028
【Fターム(参考)】
4H028AA02
4H028AA05
4H028AA06
4H028AA10
4H028AA12
4H028BA06
(57)【要約】
【課題】長期間固まらずに使用できるとともに、つのまた糊による臭いが抑制された難燃剤組成物を提供する。
【解決手段】ホウ酸またはホウ酸塩と、つのまた糊と、ゼオライト粉末と、水とを含む。さらに、石灰を含んでもよい。アルミニウム粉末、銅粉および銀粉の1種または2種以上の組み合わせを含んでもよい。ホウ酸またはホウ酸塩は全体の5~35質量%、つのまた糊は全体の1~10質量%、ゼオライト粉末は全体の5~35質量%、石灰は全体の2~10質量%、アルミニウム粉末、銅粉および銀粉の1種または2種以上の組み合わせは全体の1~3質量%、水は全体の50~85質量%含まれることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウ酸またはホウ酸塩と、つのまた糊と、ゼオライト粉末と、水とを含むことを特徴とする難燃剤組成物。
【請求項2】
石灰を含むことを特徴とする請求項1記載の難燃剤組成物。
【請求項3】
アルミニウム粉末、銅粉および銀粉の1種または2種以上の組み合わせを含むことを特徴とする請求項1または2記載の難燃剤組成物。
【請求項4】
前記ホウ酸またはホウ酸塩は全体の5~35質量%、前記つのまた糊は全体の1~10質量%、前記ゼオライト粉末は全体の5~35質量%、前記石灰は全体の2~10質量%、前記アルミニウム粉末、銅粉および銀粉の1種または2種以上の組み合わせは全体の1~3質量%、前記水は全体の50~85質量%含まれることを特徴とする請求項3記載の難燃剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、白セメントなどの水硬性無機粉体に無機系骨材や、水酸化アルミニウム、ホウ酸またはホウ酸塩などの不燃剤を配合して粉剤とし、その粉剤にアクリル系樹脂などの水性エマルション樹脂よりなる液剤を混練してなる不燃塗料が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、難燃性の伝統的な塗り壁材として、漆喰が知られている。漆喰の原料には、消石灰と、つのまた糊が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の不燃塗料では、アクリル系樹脂などの水性エマルション樹脂を含むため、1か月も経つと固まってしまい、吹付け塗装ができなくなるという課題があった。
また、漆喰は、原料のつのまた糊により、海藻特有の臭いを有するという課題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、長期間固まらずに使用できるとともに、つのまた糊による臭いが抑制された難燃剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る難燃剤組成物は、ホウ酸またはホウ酸塩と、つのまた糊と、ゼオライト粉末と、水とを含むことを特徴とする。
本発明に係る難燃剤組成物は、さらに石灰を含んでいてもよい。
本発明に係る難燃剤組成物は、さらにアルミニウム粉末、銅粉および銀粉の1種または2種以上の組み合わせを含んでいてもよい。
前記ホウ酸またはホウ酸塩は全体の5~35質量%、前記つのまた糊は全体の1~10質量%、前記ゼオライト粉末は全体の5~35質量%、前記石灰は全体の2~10質量%、前記アルミニウム粉末、銅粉および銀粉の1種または2種以上の組み合わせは全体の1~3質量%、前記水は全体の50~85質量%含まれることが好ましい。
【0007】
本発明に係る難燃剤組成物は、ホウ酸またはホウ酸塩およびゼオライト粉末により高い難燃性を有する。ホウ酸またはホウ酸塩は、さらに防カビ機能、防蟻機能を有する。本発明に係る難燃剤組成物は、アクリル系樹脂などの水性エマルション樹脂を含まず、つのまた糊により長期間固まらずに使用できる。つのまた糊は、防カビ機能も有する。また、セオライト粉末を含むため、つのまた糊による臭いが抑制されている。
さらに石灰を含む場合には、難燃性をより高めることができる。
アルミニウム粉末、銅粉および銀粉の1種または2種以上の組み合わせを含む場合には、高い抗菌性を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、長期間固まらずに使用できるとともに、つのまた糊による臭いが抑制された難燃剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の実施の形態の難燃剤組成物は、ホウ酸またはホウ酸塩と、つのまた糊と、ゼオライト粉末と、水とを含む。ホウ酸塩としては、ホウ酸ナトリウムが好ましい。つのまた糊は、つのまたを煮沸して抽出した糊から成り、市販のものを用いることができる。つのまた糊は、市販のつのまた糊粉末を水に溶解させたものを用いてもよい。その場合、つのまた糊粉末の1質量%水溶液を用いることが好ましい。ゼオライト粉末は、粒径50μm以下のものが好ましい。粒径50μm以下のゼオライト粉末を分散させた水は、電動スプレーガンにより噴射することができ、吹付け回数を増やすことにより付着層の厚さを調整可能である。
ホウ酸またはホウ酸塩は全体の5~35質量%、つのまた糊は全体の1~10質量%、ゼオライト粉末は全体の5~35質量%、水は全体の50~85質量%含まれることが好ましい。
さらに石灰を含んでいてもよい。石灰は、含まれる場合、全体の2~10質量%含まれることが好ましい。
さらにアルミニウム粉末、銅粉および銀粉の1種または2種以上の組み合わせを含んでいてもよい。アルミニウム粉末、銅粉および/または銀粉が含まれる場合、全体の1~3質量%含まれることが好ましい。
【0010】
実施の形態の難燃剤組成物は、ホウ酸またはホウ酸塩およびゼオライト粉末により高い難燃性を有する。ホウ酸またはホウ酸塩は、難燃作用のほか、防カビ機能、防蟻機能を有する。つのまた糊は、難燃化対象にホウ酸またはホウ酸塩およびゼオライト粉末をしっかりと付着させる作用を有する。また、つのまた糊はホウ酸またはホウ酸塩とゼオライト粉末とを水に均等に分散させるので、難燃剤組成物は使用の際に振り混ぜることにより長期間固まらずに使用することができる。つのまた糊は、カビ防止作用も有する。本実施の形態の難燃剤組成物は、アクリル系樹脂などの水性エマルション樹脂を含まず、天然由来の素材から成って人体への安全性が高く、かつ長期の耐久性を有する。
ゼオライト粉末は、多孔質のため、吸放湿性を有するとともにホウ酸またはホウ酸塩を捕捉し、ホウ酸またはホウ酸塩の定着性および安定性を高める。定着したホウ酸またはホウ酸塩は、長期間にわたって防カビ機能、防蟻機能を発揮する。また、ゼオライト粉末で定着されたホウ酸またはホウ酸塩は、弱いながらも殺菌効果、抗ウイルス効果をもたらす。ゼオライト粉末は、アンモニアイオンなどの吸着効果も有する。さらに、セオライト粉末を含むため、つのまた糊による臭いが抑制されている。
【0011】
難燃剤組成物は、振り混ぜて電動スプレーガンなどで噴射して塗布することができる。このため、作業性が良好である。難燃剤組成物を難燃化対象の表面に付着、浸透させることにより、難燃化対象に高い難燃効果を付与することができる。難燃剤組成物を難燃化対象の表面に浸透させる方法としては、浸漬、塗布、噴射、その他いかなる方法であってもよい。また、塗装材などに混合して用いてもよい。
つのまた糊は特有の臭いを有するが、ゼオライト粉末により、つのまた糊の臭いを効果的に抑制することができる。
さらに石灰を含む場合には、難燃性をより高めることができる。
アルミニウム粉末、銅粉および銀粉の1種または2種以上の組み合わせを含む場合には、高い抗菌性を有する。また、アルミニウム粉末、銅粉および銀粉は、ゼオライト粉末とホウ酸またはホウ酸塩とを全体に分散させやすく、難燃効果を高めることができる。
難燃化対象の例としては、木材、紙材、発泡樹脂、ゴム材などが挙げられる。木材は、床材や天井板、構造体、合板など用途を問わない。難燃剤組成物は、着色剤、防黴剤、防虫剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【実施例0012】
〔実施例1〕
45℃の湯61質量部に、つのまた糊3質量部と、ホウ酸18質量部と、ゼオライト粉末18質量部とを添加し、電動ミキサーにより混合し、実施例1の難燃剤組成物を製造した。つのまた糊は、市販のつのまた糊(村樫石灰工業株式会社製)を用いた。ゼオライト粉末には、粒径50μm以下のものを用いた。
〔実施例2〕
45℃の湯60質量部に、つのまた糊3質量部と、ホウ酸18質量部と、銅粉末1質量部と、ゼオライト粉末18質量部とを添加し、電動ミキサーにより混合し、実施例2の難燃剤組成物を製造した。銅粉末以外の材料には、実施例1と同じものを用いた。
〔実施例3〕
45℃の湯57質量部に、つのまた糊3質量部と、ホウ酸18質量部と、銅粉末1質量部と、ゼオライト粉末18質量部と、石灰3質量部とを添加し、電動ミキサーにより混合し、実施例3の難燃剤組成物を製造した。銅粉末および石灰以外の材料には、実施例1と同じものを用いた。
【0013】
〔比較例1〕
以下の配合により、比較例1の難燃剤組成物を製造した。各材料には、実施例3と同じものを用いた。
45℃の湯57質量部に、つのまた糊3質量部と、ホウ酸18質量部と、銅粉末1質量部と、石灰3質量部とを添加し、電動ミキサーにより混合し、比較例1の難燃剤組成物を製造した。
〔比較例2〕
以下の配合により、比較例2の難燃剤組成物を製造した。エマルション形接着剤を除く各材料には、実施例1と同じものを用いた。
45℃の湯60質量部に、アクリル共重合樹脂系エマルション形接着剤(商品名「ボンド スーパージョイントXホワイト」、コニシ株式会社製)3質量部と、ホウ酸18質量部と、銅粉末1質量部と、ゼオライト粉末18質量部とを添加し、電動ミキサーにより混合し、比較例2の難燃剤組成物を製造した。
【0014】
実施例1~3および比較例1、2の難燃剤組成物を密閉容器に入れ、撹拌後の難燃剤組成物に10cm×10cmのコピー用紙を浸漬させた。浸漬させたコピー用紙を密閉容器から取り出し、自然乾燥させた後、約1200℃のバーナーで1分間加熱した。その結果、いずれも黒く炭化したものの、炎は上がらなかった。
実施例1~3および比較例2の難燃剤組成物は全く臭いがしなかったのに対し、比較例1の難燃剤組成物ではつのまた特有の臭いがした。
【0015】
実施例1~3および比較例1、2の難燃剤組成物をそれぞれ電動スプレーガンに入れて撹拌してから30日間、60日間、180日間静置した後、振り混ぜ、ノズルをお湯に漬けてから、吹付け処理を行った。その結果、実施例1~3および比較例1の難燃剤組成物では、180日間経過後でも製造直後と同様に吹付け処理をすることができた。これに対し、比較例2の難燃剤組成物では30日目には振り混ぜてもノズルをお湯に漬けても、電動スプレーガンの内部で固まっていて、吹付け処理ができなかった。
実施例1~3および比較例1の難燃剤組成物を入れた電動スプレーガンは、それぞれの難燃剤組成物を何度も注ぎ足し、内部を洗わずに繰り返し使用することができた。これに対し、比較例2の難燃剤組成物を入れた電動スプレーガンは、内部に付着した難燃剤組成物が次第に固まってしまうため、内部を洗わなければ繰り返し使用することができなかった。