(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118709
(43)【公開日】2022-08-15
(54)【発明の名称】次亜塩素酸ナトリウム光学濃度分析によるリアルタイム副産物定量測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/27 20060101AFI20220805BHJP
C02F 1/76 20060101ALN20220805BHJP
【FI】
G01N21/27 Z
C02F1/76 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022010868
(22)【出願日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】10-2021-0014640
(32)【優先日】2021-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】522037816
【氏名又は名称】ジェイテク カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】キム,クァン-ユ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ユンイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,セ-ボン
【テーマコード(参考)】
2G059
4D050
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB04
2G059CC01
2G059EE01
2G059EE12
2G059MM01
4D050AA03
4D050AA12
4D050AB06
4D050BB06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】次亜塩素酸ナトリウムの分解による副産物の発生量の予測を可能とし、副産物の供給を抑制するための副産物定量測定装置を提供する。
【解決手段】貯蔵槽5に貯蔵されている次亜塩素酸ナトリウム溶液の濃度をリアルタイムで測定することができる光学分析装置100からの次亜塩素酸ナトリウムの濃度を濃度受信部210を介して入力し、その濃度変化値に応じて、次亜塩素酸ナトリウムが変換されて生成された副産物の濃度を算定し、該副産物の濃度に応じて、流出入調整部240を介して、貯蔵槽に流入する次亜塩素酸ナトリウムの量を調節するか、或いは貯蔵槽からの排出量を調節する。
【選択図】
図3b
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次亜塩素酸ナトリウムの分解によるリアルタイム副産物定量測定装置であって、
次亜塩素酸ナトリウムの濃度を分析するための光学分析装置と、
前記光学分析装置を介して測定された貯蔵槽内の次亜塩素酸ナトリウム濃度の入力を受ける副産物制御部と、を備え、
前記光学分析装置は、色度単一値で次亜塩素酸ナトリウムの濃度を回帰分析してリアルタイム測定し、
前記副産物制御部は、入力された次亜塩素酸ナトリウムの濃度に基づいて、生成された副産物の濃度を算定することを特徴とする、次亜塩素酸ナトリウム光学濃度分析によるリアルタイム副産物定量測定装置。
【請求項2】
前記副産物制御部は、
濃度受信部を介して入力された次亜塩素酸ナトリウムの濃度変化値に応じて、
次亜塩素酸ナトリウムが変換されて生成された副産物の濃度を算定し、
前記副産物の濃度に応じて、流出入調整部を介して、前記貯蔵槽に流入する次亜塩素酸ナトリウムの量を調節するか、或いは前記貯蔵槽からの排出量を調節することを特徴とする、請求項1に記載の次亜塩素酸ナトリウム光学濃度分析によるリアルタイム副産物定量測定装置。
【請求項3】
前記貯蔵槽内で感知されたリアルタイム情報の入力を受ける情報収集部、及び、
前記情報収集部に入力された情報に基づいて、生成される副産物の濃度算定値を補正する補正部をさらに含んで構成されることを特徴とする、請求項2に記載の次亜塩素酸ナトリウム光学濃度分析によるリアルタイム副産物定量測定装置。
【請求項4】
前記光学分析装置は、
多波長発光部と、互いに異なる波長の3つ以上の光センサーを有する受光部と、を備え、
前記多波長発光部と前記受光部との間で、次亜塩素酸ナトリウム溶液の波長別流体光透過度を測定することを特徴とする、請求項1に記載の次亜塩素酸ナトリウム光学濃度分析によるリアルタイム副産物定量測定装置。
【請求項5】
前記光学分析装置は、
測定された3つ以上の波長別流体光透過度値を受信する多波長入力部と、
前記3つ以上の流体光透過度の相対的比率を適用して所定のアルゴリズム演算を行い、演算された値による濃度を算出するアルゴリズム部と、を含んで構成されることを特徴とする、請求項4に記載の次亜塩素酸ナトリウム光学濃度分析によるリアルタイム副産物定量測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水場や下水処理場に投入される次亜塩素酸ナトリウム溶液の濃度をリアルタイムで測定することができる次亜塩素酸ナトリウムの濃度分析装置を用いて、貯蔵槽に保管される次亜塩素酸ナトリウムの現在濃度をリアルタイムで反映して次亜塩素酸ナトリウムの副産物発生量を算定し、副産物の濃度範囲に適した次亜塩素酸ナトリウムの流入量や投入量を算出することができるようにする副産物定量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の上下水道消毒は、消毒力が良く、経済的であるうえ、残留性により水の殺菌及び管路の汚染防止に最適な塩素消毒方法を採用してきたが、塩素消毒の場合、液化塩素を気化器で気化した後でエジェクタに投入するため、高圧による危険性を考慮して、近年では、液体塩素である次亜塩素酸ナトリウムに置き換えられている。次亜塩素酸ナトリウムは、有効塩素の濃度が0.8%~12%の濃度を持つように製造されるものであって、特に市販の次亜塩素酸ナトリウムは、12%の高濃度のものが主に使用される。
【0003】
次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)は、浄水場・下水処理場の殺菌装置、ボイラー、淡水化工程処理水、発電所の冷却水処理、飲用水処理、植物、野菜及び肉類加工、家庭用漂白剤に使用される、強い塩素臭を有する無色透明液体タイプの塩素系消毒剤である。次亜塩素酸ナトリウムは、次亜塩素酸ナトリウム発生器で塩と水とが混合されて希釈された希釈水が電解槽を通過する過程中に、セルの両側に印加された直流電圧によって次亜塩素酸ナトリウム溶液と水素ガスに電気分解されながら、次のとおりに反応して生成される。
NaCl+H2O+2e-→NaOCl+H2
【0004】
このような次亜塩素酸ナトリウムは、現場で直接電気分解槽を設置し、水に溶かした塩を電気分解して生産するか、貯蔵槽に貯蔵して使用するか、或いは市販の次亜塩素酸ナトリウムを貯蔵槽に入れて使用する。
【0005】
図1は一般な次亜塩素酸ナトリウムの生成装置を示す図である。
図1を参照すると、軟水器1を経た水は、配管を介して希釈水槽2及び塩貯蔵槽3へ供給され、塩貯蔵槽3は、電解に使用する塩を溶解させて飽和塩水を作り、希釈水槽2は、飽和食塩水を希釈するための水を貯蔵する。電気分解槽4は、飽和塩水と希釈塩水の供給を配管を介して受け、これを電解させて次亜塩素酸ナトリウムを生成し、電気分解槽4で電気分解及び生成された次亜塩素酸ナトリウムは、貯蔵槽5に供給されて貯蔵されてから、必要に応じて浄水場、下水処理場等の投入地6に注入される。投入地に濃度測定装置7を備えて残留塩素の濃度を測定する。市販の次亜塩素酸ナトリウムの場合は、貯蔵槽5内に直ちに保管することができる。
【0006】
ところが、次亜塩素酸ナトリウムは、常温で化学的に不安定であるため、時間が経てば経つほど有効塩素が低減し、特に温度が高ければ高いほどその低減速度が著しく速くなる特性があるので、安定的な濃度を維持することができないという問題点を伴っている。これを解決するために、濃度維持のための薬液を投入しているが、有効塩素の減少量によって、時には過剰に投入され、臭素酸塩や塩素酸塩などの発がん性物質も一緒に増加して人体に有害であり、水質に悪影響を及ぼしている。次亜塩素酸ナトリウムは、生産及び保管過程で温度やイオン強度、濃度、pHなどの影響により自然分解されるが、このような消毒工程中に、次亜塩素酸ナトリウムの分解が、副産物である塩素酸塩(ClO3
-)の形成の直接原因となり、さらに過塩素酸塩(ClO4
-)の形成の原因となる。このような塩素酸塩は、有害化学物質であって、皮膚接触時には皮膚の発疹や目の痛みなどが発生することがあり、摂取時には腹痛、嘔吐、下痢を誘発し、過剰摂取時には低酸素症を伴う青色症と呼吸困難を誘発するが、塩素酸塩に対する環境部の水質監視基準は、0.7mg/L(≒8.4×10-6M)である。過塩素酸塩も、有害化学物質であって、環境残留性を有し、化学的に安定して容易に分解されず、自然水にアンモニウム、ナトリウム、カリウムなどと塩の形態で存在するため、皮膚及び目に強い刺激性があり、甲状腺でヨウ素の摂取を妨げて甲状腺ホルモンの生成に影響を与えるおそれがあるが、環境部の水質監視基準は、0.015mg-ClO4
-/Lである。
【0007】
ところが、次亜塩素酸ナトリウム貯蔵槽に貯蔵される次亜塩素酸ナトリウムのリアルタイム濃度を正確に感知するか、或いは分解されて生成された臭素酸塩や塩素酸塩などの副産物の濃度を正確に測定することができる手段がないため、投入地に投入される次亜塩素酸ナトリウムの投入量を正しく算出することができないという限界がある。
【0008】
投入前、貯蔵槽に貯蔵されている次亜塩素酸ナトリウムは、例えば12%程度の高濃度である。既存の試薬が必要な分光光度法や電気伝導度法は、10ppm未満の低濃度範囲に対してのみ測定が可能であるので、投入前に120,000ppmレベルの高濃度を持った次亜塩素酸ナトリウム溶液を測定するためには、相当量希釈させる過程を経なければならないので、その過程が煩わしく、リアルタイム測定が不可能であるという問題点がある。したがって、試薬式分光光度法では、投入・希釈前の高濃度溶液に対する測定自体を試みることはできなかった。また、電極法は、物理的吸着をベースとするので、耐化学性、耐久性が足りないが、高濃度・高腐食性の次亜塩素酸ナトリウム溶液と接触すると、装備が破損するしかなく、誤差範囲が10%に達するなど、専門的な校正が随時求められるとともに、電極などの寿命周期が短くて交換が頻繁であり、塩分含有量による伝導度の誤差も大きいという欠点がある。従来の伝導度、比重又は密度に基づくリアルタイム次亜塩素酸ナトリウム濃度測定は、工程、温度別流入次亜塩素酸ナトリウム中の塩分含有量に絶対的に依存し、しかも、次亜塩素酸ナトリウム分解時に多量の塩分(NaCl、電解質では、電気伝導性を有するNa+イオンとして存在)がさらに形成され、温度の影響によるこのような塩分含有量の急激な増加時に伝導度、比重又は密度の変化の影響が非常に大きいため、結果として四季基準の有効塩素濃度測定精度が非常に低い方法である。これは、広い温度範囲や濃度範囲で、塩分自体の次亜塩素酸ナトリウム中の溶解度差が大きく、周囲温度の影響又は配達される次亜塩素酸ナトリウムの工程別差異による塩分含有量が異なるため、塩分含有量を補正する二重化差等計測に依存しなければならないので、このような伝導度、比重又は密度に基づく濃度測定装置の使用は、四季の気候特性上、その精度に問題が生じる。
【0009】
結局、高濃度の次亜塩素酸ナトリウム濃度は、ヨウ素滴定法を用いて測定するしかないが、ヨウ素滴定法は、三角フラスコに精製水60ml及びカリウム1gを入れた後、混合するステップと、酢酸10mlをフラスコに入れて混合するステップと、次亜塩素酸ナトリウム溶液5gをフラスコに入れるステップと、チオ硫酸塩をフラスコに入れて混合して色変化を観察した後、投入量を記録するステップと、チオ硫酸塩の実際投入量x709.2を計算して濃度を測定するステップとを含んでなる。すなわち、次亜塩素酸ナトリウム溶液を採水して実験室で測定する手動式方法なので、このとき、測定された濃度は、測定者の専門性や主観的立場によって異なり、また濃度測定時間が多くかかるという問題点があるため、リアルタイムで自動濃度測定が行われないという欠点がある。リアルタイムで自動濃度測定が行われなければ、分解されて生成された副産物が基準値を超えた状態で投入地に供給されても、少なくは数日から多くは数ヶ月ずつこれを確認することができず放置されるという問題点がある。
【0010】
塩素酸塩イオンなどの副産物は、基本的に、酸化-還元試薬との反応結果、溶液の色変化(比色法もしくは光学的接近法)又は電気化学的手段(電流法、電極法)を用いて分析することができるが、塩素酸塩イオンが濃塩酸(HCl)の存在下で塩化物イオン(Cl)と反応した結果、生成される塩素分子(chlorine、Cl2)がベンジジン(benzidine)と反応して生成する黄色のハロキノン(haloquinone)の吸光度を青色光源(438nm)を用いて測定して塩素酸塩の濃度を測定する場合、検出限界(LOD)0.0008mg/Lを基準として、12分以上ずつ長い時間がかかるという問題点がある。
【0011】
したがって、貯蔵された高濃度次亜塩素酸ナトリウムの濃度をリアルタイムで自動的に測定し、それから分解された副産物の濃度をリアルタイムで算出することができるようにして、投入地に供給される次亜塩素酸ナトリウムの濃度を一定かつ均一に維持するための装置が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、かかる問題点を解決するためのもので、貯蔵槽の高濃度次亜塩素酸ナトリウム溶液の濃度をリアルタイムで測定し、これから副産物発生量を算定するためのリアルタイム副産物定量測定装置を提供することを目的とする。
【0013】
本発明は、消毒剤保管及び供給工程におけるリアルタイム濃度分析による濃度変化量の感知によって、次亜塩素酸ナトリウム分解の程度指標で副産物発生量の予測を可能とし、副産物の供給を抑制するための副産物定量測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するための本発明の構成は、次亜塩素酸ナトリウムの分解によるリアルタイム副産物定量測定装置であって、次亜塩素酸ナトリウムの濃度を分析するための光学分析装置と、前記光学分析装置を介して測定された貯蔵槽内の次亜塩素酸ナトリウム濃度の入力を受ける副産物制御部と、を備え、前記光学分析装置は、色度単一値で次亜塩素酸ナトリウムの濃度を回帰分析してリアルタイム測定し、前記副産物制御部は、入力された次亜塩素酸ナトリウムの濃度に基づいて、生成された副産物の濃度を算定することを特徴とする、次亜塩素酸ナトリウム光学濃度分析によるリアルタイム副産物定量測定装置を提供する。
【0015】
前記副産物制御部200は、濃度受信部210を介して入力された次亜塩素酸ナトリウムの濃度変化値に応じて、次亜塩素酸ナトリウムが変換されて生成された副産物の濃度を算定し、前記副産物の濃度に応じて、流出入調整部240を介して、前記貯蔵槽5に流入する次亜塩素酸ナトリウムの量を調節するか、或いは貯蔵槽5からの排出量を調節することを特徴とする。
【0016】
前記貯蔵槽5内で感知されたリアルタイム情報の入力を受ける情報収集部220、及び前記情報収集部220に入力された情報に基づいて、生成される副産物の濃度算定値を補正する補正部230をさらに含んで構成されることを特徴とする。
【0017】
前記光学分析装置は、多波長発光部と、互いに異なる波長の3つ以上の光センサーを有する受光部と、を備え、前記多波長発光部と前記受光部との間で、次亜塩素酸ナトリウム溶液の波長別流体光透過度を測定することを特徴とする。
【0018】
前記光学分析装置は、測定された3つ以上の波長別流体光透過度値を受信する多波長入力部と、前記3つ以上の流体光透過度の相対的比率を適用して所定のアルゴリズム演算を行い、演算された値による濃度を算出するアルゴリズム部と、を含んで構成されることを特徴とする。
【0019】
前記アルゴリズム部は、複数の波長間の光透過度比率を算定する比率算定部を備え、濃度算出部は、算定された光透過度比率に基づいて測定濃度値を算出することを特徴とする。
【0020】
前記アルゴリズム部は、複数の波長間の光透過度比率を算定する比率算定部と、前記比率算定部で算定された複数の波長間の光透過度比率の相互関係に応じて対応する色度を導出する色度導出部と、を含んで構成されることを特徴とする。
【0021】
前記アルゴリズム部は、前記光透過度比率又は前記色度に対応する測定濃度値を導出する回帰分析部を含んで構成されることを特徴とする。
【0022】
前記光学分析装置は、次亜塩素酸ナトリウム溶液の基準濃度値を入力するための基準濃度入力部をさらに備え、前記アルゴリズム部は、相関校正部をさらに備え、前記基準濃度入力部に入力された次亜塩素酸ナトリウム溶液の基準濃度値は、前記アルゴリズム部の相関校正部に提供され、前記基準濃度値に対応する次亜塩素酸ナトリウム溶液に対して前記光学分析装置を介して測定されて前記回帰分析部を経て導出された測定濃度値が前記相関校正部に提供されることにより、前記相関校正部で前記基準濃度値と前記測定濃度値とを相互比較し、その比較による校正結果は前記回帰分析部に更新適用されることを特徴とする。
【0023】
前記基準濃度入力部から互いに異なる2以上の異なる濃度の次亜塩素酸ナトリウム溶液の第1、…、n基準濃度値(nは、2以上)の入力を受け、前記相関校正部は、前記第1、…、n基準濃度値に対応する第1、…、n測定濃度値の入力を受けるため、前記相関校正部における第1、…、n基準濃度値と第1、…、n測定濃度値との比較による校正結果が、前記回帰分析部に更新適用されることを特徴とする。
【0024】
水処理剤や漂白剤などの用途で製造された次亜塩素酸塩(ClO)が含まれている次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)、次亜塩素酸カルシウム溶液(Ca(OCl)2)などの濃度をリアルタイムで直接測定するための分析装置において、ヨウ素滴定法又はDPD試薬法などによるゼロ/スパン(Zero/Span)原濃度校正を行った後、リアルタイム測定時には、発色又はpH調整、安定剤などの試薬の使用がない多波長分光分析方式の光学分析装置を備え、前記光学分析装置は、色度単一値で、溶液に含有された次亜塩素酸塩イオン(ClO-)の濃度を回帰分析して測定することを特徴とする、光学系別可視光透過指数固有特性値を用いて現場校正及び測定する多波長リアルタイム濃度分析装置を活用して、副産物の濃度及び発生量を測定するための装置である。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、貯蔵槽の高濃度次亜塩素酸ナトリウム溶液の濃度をリアルタイムで測定し、これから副産物発生量を算定して対応することができるようにするという効果がある。
また、本発明は、消毒剤保管及び供給工程でリアルタイム濃度分析による濃度変化量の感知を介して、次亜塩素酸ナトリウム分解及び副産物発生量を予測し、副産物の供給を抑制することができるようにするという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】一般な次亜塩素酸ナトリウムの生成装置を示す図である。
【
図2】本発明に適用される光学濃度計の一実施例を示す図である。
【
図3a】本発明による次亜塩素酸ナトリウムの生成装置を示す図である。
【
図3b】本発明による次亜塩素酸ナトリウムの光学分析装置を示す図である。
【
図3c】本発明による次亜塩素酸ナトリウムと副産物との相関関係を示すグラフである。
【
図4】光学分析装置における濃度による波長別光透過率の推移を示すグラフである。
【
図5】本発明の光学分析装置における濃度による多波長別光透過率を示すグラフである。
【
図6】本発明の光学分析装置における濃度による多波長別光透過率を示すグラフである。
【
図7】本発明の光学分析装置の構成を示す図である。
【
図8】本発明のアルゴリズム部の構成を示す図である。
【
図9】
図5のような濃度変化における濃度測定値を示すグラフである。
【
図10】
図6のような濃度変化における濃度測定値を示すグラフである。
【
図11】本発明のICT融合リアルタイム副産物定量測定装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図2は本発明に適用される光学濃度計の一実施例を示す図である。
図2を参照すると、本発明に使用される光学濃度計10は、本出願人の韓国登録特許第10 2182384号で開発されたものであって、本体部11の左右に発光水平部14と受光水平部15が形成されており、上方には出水部13が備えられており、水平正面には入水部12が形成されている。このような発光水平部14と受光水平部15を介して発光部(図示せず)から多波長の光が、その間に流れる高濃度の次亜塩素酸ナトリウム溶液を透過して受光部(図示せず)で感知される。このような光学濃度計10は、吸光性黒体材質の耐腐食性、強アルカリ性の耐化学性外光遮蔽光学系を構成するようにして、光学系別特性固有値が導出されるようにし、この特性固有値は、測定光路の長さ及び次亜塩素酸塩イオンの濃度に比例する。
【0028】
浄水場や下水処理場などの消毒に用いられる現場発生次亜塩素酸ナトリウム又は市販の次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素注入消毒剤溶液の濃度を測定しようとするとき、化学原料成分が持つ固有の光学特性を利用する無試薬分光分析の際に、濃度希釈及びpH変化反応過程で化学的分解が同時に行われるため、単波長測定光源のみでは、導出されるデータ値の直進性の不在により実測定への適用時に困難がある。しかも、次亜塩素酸ナトリウムの場合は、特定の単波長での光透過率は、濃度とは無関係に類似値を持つことがある。よって、多波長測定光源を適用することにより、かかる問題を回避し、分光色差濃度変化の分析時に直進性及び再現性の確保が可能であり、水処理剤である次亜塩素酸ナトリウムの濃度別原液に対して試薬反応なしでもリアルタイムで分析する必要性がある。
【0029】
図3a乃至
図3cはそれぞれ本発明による次亜塩素酸ナトリウムの生成装置及を示す図、光学分析装置を示す図、及び次亜塩素酸ナトリウムと副産物との相関関係を示すグラフである。
図3aを参照すると、本発明による光学分析装置100は、次亜塩素酸ナトリウムの貯蔵槽5側又はその内部、すなわち投入地6の前段側に配置される。これは、残留塩素濃度を測定するための従来の濃度測定装置7(
図1)が投入地6側に配置されるのとは差別される。
図2を参照して説明した光学濃度計10は、光学分析装置100の一構成として含まれる。
【0030】
図3bを参照すると、貯蔵槽5側又はその内部の光学分析装置100は、副産物制御部200に連結される。光学分析装置100で一定時間間隔にて測定されるリアルタイム次亜塩素酸ナトリウム溶液の濃度値、濃度変化値は、副産物制御部200の濃度受信部210に提供される。副産物制御部200は、受信された次亜塩素酸ナトリウムの濃度値に応じて、副産物の発生量を計算する。
【0031】
塩素酸塩などの副産物の濃度及び発生量は、イオンクロマトグラフィー(Ion Chromatography、IC)又は液体クロマトグラフィー(Liquid Chromatography、LC)で測定しなければならないが、これらの方法は、現場測定が不可能であるため、運送過程で次亜塩素酸ナトリウムが分解されて塩素酸塩の定量に誤差が発生するおそれがある。本発明では、固有の光学分析装置100の分光光度法を用いて、塩素酸塩などの副産物の現場測定、リアルタイム測定を可能とする。
【0032】
このために、次亜塩素酸ナトリウムと塩素酸塩との化学量論的関係
反応をベースとし、塩素濃度の減少は、塩素酸塩の増加と直接的な関係があることを活用し、次亜塩素酸ナトリウムの分解と臭素酸塩の形状との相互関係を定量化して活用する。つまり、下記数式1のように、次亜塩素酸ナトリウムの分解による副産物である塩素酸塩(ClO
3
-)形成量の化学量論式は、1gのCl
2濃度が減少したときに392mgのClO
3
-形成の増加が算出されることを発見及び活用する。
【0033】
【0034】
図3aによれば、時間が経てば経つほど塩素濃度が減少(青線)し、それにより塩素酸塩(オレンジ線)の濃度が増加する様相を確認することができる。すなわち、リアルタイムで塩素の濃度減少を感知すると、それにより塩素酸塩の濃度増加を算出することができる。このような相互計算を副産物制御部200で行う。
【0035】
また、次亜塩素酸塩中の塩の含有量や遷移金属、初期塩素酸塩含有量などの影響要因を考慮するため、周期的に塩素酸塩含有量を実測して補正係数で校正する現場運用が可能である。例えば、1gのCl2濃度減少測定時に塩素酸塩形成量間の実測補正係数が0.927であれば、392mg ClO3
-*0.927=363mg ClO3
-の比率で適用されるが、次亜塩素酸ナトリウムの温度、pH、遷移金属、塩含有量などの感知値が入力される情報収集部220と、入力された感知値などの情報に応じた補正係数を算定するか、或いは補正係数の入力を受ける補正部230と、を備える。遷移金属、塩含有量、pHに応じて補正部230で補正係数を0.926786に算定すると、補正前の化学量論分解率は0.392から0.363300112に補正され、次亜塩素酸塩の濃度減少時に、塩素酸塩は、前記分解率と補正係数が適用された濃度だけ発生するものと算定される。
【0036】
隠蔽光学系構造でリアルタイム多波長光学式無試薬単一色度法によって次亜塩素酸ナトリウムの濃度を直接現場測定し、製造次亜塩素酸ナトリウム及び塩素酸塩濃度測定初期値と現場測定次亜塩素酸ナトリウム濃度変化量による塩素酸塩化学量論分解率、周期的な塩素酸塩濃度補正係数の校正によって次亜塩素酸ナトリウム濃度の変化、すなわち次亜塩素酸ナトリウム分解による塩素酸塩形成量を推定することにより、本発明の測定が完了する。ここで、周期的な塩素酸塩濃度測定値(イオンクロマトグラフィーによる含有量測定など)の校正として、遷移金属、塩含有量、pH、貯蔵槽要素などの影響要因を前記リアルタイム無試薬現場測定された次亜塩素酸ナトリウム濃度の変化量に連動した一つの単一補正係数で校正することができ、これにより塩素酸塩の規制を考慮した、浄水基準の次亜塩素酸ナトリウム最大注入率をリアルタイムで表示し、次亜塩素酸ナトリウム原液の無試薬多波長光学式直接濃度測定による次亜塩素酸ナトリウム注入量の制御に活用する。最大注入率は、浄水基準の塩素酸塩の規制700μg-ClO3/L、又は別途の管理基準を超えないようにリアルタイム無試薬光学式次亜塩素酸ナトリウム濃度測定による次亜塩素酸ナトリウム注入量の上限値を表示して、残留塩素注入制御に活用する。
【0037】
補正部230で情報収集部220を介した入力値を算定して、補正係数を算出するか、或いは作業者や管理サーバーから補正係数の入力を受けるようにするが、このような補正係数を決定する要因は、次の通りである。
【0038】
次亜塩素酸ナトリウムの分解及び塩素酸塩、過塩素酸塩の形成は、次亜塩素酸ナトリウムの濃度とイオン強度によって異なり、さらに高いイオン強度及び次亜塩素酸ナトリウムの濃度は、次亜塩素酸ナトリウムの分解速度を増加させながら、さらに大きい塩素酸塩、過塩素酸塩発生反応を起こす。次亜塩素酸ナトリウム溶液の4倍希釈は、過塩素酸塩の形成速度を36倍減少させるが、このような希釈貯蔵の利点として濃度分析注入管理の重要性が確認され、このような貯蔵環境の調整によって人体の塩素酸塩への曝露を減らす有効な方法である。
【0039】
次亜塩素酸ナトリウム溶液は、低温に保管しなければならず、温度が高ければ高いほど次亜塩素酸ナトリウムの化学分解速度が速くなり、以後に塩素酸塩、過塩素酸塩が形成される。保管温度が5℃減少するたびに過塩素酸塩の形成速度が約2倍減少するので、次亜塩素酸ナトリウムの貯蔵温度環境管理及びその濃度分析を介して人体の過塩素酸塩への曝露を減らす有効な方法である。
【0040】
次亜塩素酸ナトリウムの貯蔵環境は、希釈後にも、貯蔵された次亜塩素酸ナトリウム溶液のpHをpH11~13に制御しなければならず、pH値が11よりも低い濃縮次亜塩素酸ナトリウム溶液の保管は、次亜塩素酸ナトリウムイオン/次亜塩素酸の速い分解により結果的に塩素酸塩が生成されて推奨されない。pHが13よりも高ければ、イオン強度効果により過塩素酸塩の形成が増大するが、低濃度現場発生次亜塩素酸ナトリウムのpH9~10の一般的なpH範囲を考慮すると、このような低濃度溶液は、製造後、できるだけ早く使用しなければならず、1~2日以上貯蔵することができないという問題がある。このような貯蔵環境におけるpH影響による濃度分析は、人体の塩素酸塩/過塩素酸塩への曝露を減らす有効な方法である。
【0041】
遷移金属イオンの存在は、次亜塩素酸ナトリウムの分解速度を増加させ、このような分解が過塩素酸塩の形成を減少させると同時に、有効塩素の濃度も減少させて、ユーティリティは、過塩素酸塩、塩素酸塩及び臭素酸塩などの副産物の大量負荷をもたらすより多くの量の次亜塩素酸ナトリウム溶液を使用するようにする。このような貯蔵環境における遷移金属イオンの存在の影響による濃度分析は、人体の塩素酸塩/過塩素酸塩への曝露を減らす有効な方法である。
【0042】
時間の経過に伴い、次亜塩素酸ナトリウムは自然に分解されて酸素、塩素酸塩、過塩素酸塩を生成する。貯蔵時間が短ければ、次亜塩素酸ナトリウム溶液中でこのような副産物の形成が最小限に抑えられ、このような貯蔵環境における経時的な影響による濃度分析は、人体の塩素酸塩/過塩素酸塩への曝露を減らす有効な方法である。
【0043】
貯蔵槽などで希釈作用と温度低下を組み合わせると、次亜塩素酸ナトリウム分解及び過塩素酸塩形成への重大な影響が観察されるが、貯蔵槽などで12~13%のバルク次亜塩素酸ナトリウム溶液を2倍に希釈し、保管温度を10℃下げると、結果として、次亜塩素酸ナトリウムが希釈されていない周囲温度で貯蔵される場合よりも次亜塩素酸ナトリウム分解が16倍、過塩素酸塩分解が27倍減少する。貯蔵槽などで冬に10℃、夏に35℃の平均バルク次亜塩素酸ナトリウム貯蔵温度を維持する場合、12~13%の次亜塩素酸ナトリウムに対する過塩素酸塩形成速度は、夏を基準に約18倍速くなる。冬には過塩素酸塩の濃度が約3ヶ月間10倍増加することを予想することができ、夏にはわずか5日で10倍に増加するが、次亜塩素酸ナトリウム溶液が2倍に希釈された場合、過塩素酸塩濃度の増加は、夏には一ヶ月、冬には20ヶ月(平均温度10℃と仮定)がかかる。したがって、次亜塩素酸ナトリウム溶液での過塩素酸塩形成量を最小限に抑えるために、希釈と温度制御との組み合わせが推奨され、このような貯蔵環境における季節的要因の影響による濃度分析は、人体の塩素酸塩/過塩素酸塩への曝露を減らす有効な方法となる。
【0044】
大規模のクロルアルカリ化学工程で生産する市販のバルク次亜塩素酸ナトリウムの場合、生産後の保管、長距離運送、貯蔵管理の温度及び時間の経過、pHの変化に起因して、次亜塩素酸ナトリウムが分解されて発生する有害副産物の蓄積が大きく懸念される状況である。本発明は、化学量論上の次亜塩素酸ナトリウムの分解時に一定の比率で塩素酸塩に変化する点を発見し、これを活用して、運送、貯蔵、保管時の次亜塩素酸ナトリウム濃度変化量の監視によって塩素酸塩及び過塩素酸塩発生量の予測を可能とする。
【0045】
このように次亜塩素酸ナトリウムの成分規格管理で最も必要な技術は、生産された次亜塩素酸ナトリウムの分解による濃度低下の有無を確認することができるリアルタイム濃度分析技術であり、これは、世界的にまだ商用化されていないリアルタイム測定装置分野であって、ヨウ素滴定法、試薬反応による比色法の手動測定、又は数ppmレベルの希釈による処理後の残留塩素量測定、ORP測定などに依存しており、測定後の応答時間が多くかかるか、或いは化学試薬反応による高価な装備の構成、電極酸化により測定確度が低いため現場での適用が容易でないので、リアルタイム消毒剤工程濃度管理が不可能である。
【0046】
図11は本発明のICT融合リアルタイム次亜塩素酸ナトリウムの濃度分析装置を示す構成図である。
図11を参照すると、光学分析装置100は管理サーバー300とネットワーク302を介して連結され、光学分析装置100でリアルタイムにて測定される濃度、副産物制御部200で算定された副産物の濃度は、管理サーバー300に伝送される。副産物制御部200は、貯蔵槽5側に設置されるか、場合によっては管理サーバー300の内部又は管理サーバー300側に位置するか、或いは別途の装置構成及び位置に備えられることができる。管理サーバー300は、光学分析装置100の情報、濃度情報、動作情報及びアラーム情報、副産物制御部200の副産物濃度情報などを受信し、これを管理者端末400に送信する。
【0047】
米国EPA飲料水モニタリング実行結果によると、人体有害副産物である塩素酸塩が健康基準値0.2mg/Lを1回以上超えた事例が、地域比率では38.4%、人口比率では48.2%に達しているが、上述したようなリアルタイム光学分析装置100、ネットワーク302及び管理サーバー300を備える光学系別可視光透過指数固有特性値を利用して現場校正及び測定する多波長リアルタイム濃度分析装置によって、分解濃度値を追跡して塩素酸塩形成量を直観的に把握し、最大注入率及び/又は濃度別適正注入量を制御することにより、このような問題を源泉的に解消することができるきっかけとなる。
【0048】
このとき、最大注入率及び/又は濃度別適正注入量を制御するために、副産物制御部200は、流出入調整部240を介して、貯蔵槽5内に投入される次亜塩素酸ナトリウムの量を調節するか、或いは排出される量や時間、間隔、比率だけでなく、貯蔵槽のpH、温度などを調節する信号を発生するようにし、貯蔵槽5の前後に連結されたバルブ及び/又はポンプの動作を制御する。副産物濃度のリアルタイム測定、算定及び制御のために、次亜塩素酸ナトリウムと副産物との相関関係を活用し、さらにリアルタイム高濃度次亜塩素酸ナトリウム濃度測定技術がこれを裏付ける。
【0049】
本発明では、高濃度及び任意希釈濃度次亜塩素酸ナトリウムの濃度変化量に対するリアルタイム光学濃度分析で、化学量論上の有害副産物変換率による塩素酸塩発生量の予測を可能にしなければならないが、既存のORP式や比色法、温度、pHに依存する測定確度及び測定時間遅延、手動測定問題などの高濃度次亜塩素酸ナトリウム測定方式を改善したリアルタイム次亜塩素酸ナトリウム濃度管理及び有害副産物工程管理に適用可能な技術を使用しようとし、特に、高濃度のバルク次亜塩素酸ナトリウムが大量に流通する水処理消毒剤市場で、過塩素酸塩と塩素酸塩成分の有害性の懸念が大きく台頭した中で、このような水処理剤の副産物抑制管理のためのICT融合を可能にする核心工程管理技術を提供しようとし、リアルタイム高濃度次亜塩素酸ナトリウムの濃度測定のために多波長光学分析装置を使用する。以下では、その理論的根拠及びリアルタイム高濃度測定のための装置について説明する。
【0050】
図4は本発明の濃度分析装置における濃度による波長別光透過率の推移を示すグラフである。
図4を参照すると、数千ppmレベルの次亜塩素酸ナトリウムの希釈濃度による波長別光透過率は、分析の結果、正/負方向性の変化が随時起こる。x軸は濃度、y軸は光透過率、各色別に異なる波長光による推移を示す。光透過率は、透過指数と同じであり、吸光度とは逆の次元の概念に該当することができる。本発明は、このような可視光透過指数である光透過率が光学系別の固有特性値を有することを活用する。
【0051】
このグラフによれば、単波長を基準に、互いに異なる濃度値に対して同一の光透過率を重複して示す。例えば、青色で表示された500nmの単波長光による濃度測定結果によれば、濃度93ppmでの光透過率が約2000余りであるが、4271ppmの濃度でも光透過率が約2000を再び示しており、光透過率が2000であるとき、濃度が93ppm程度であってもよく、4271ppm程度であってもよい。すなわち、単波長の光強度計算では、濃度変化の方向性及び弁別力がなく、濃度の有意差分析が困難であることが分かる。広い範囲での直接的な濃度解析が不可能であることを意味するので、低濃度区間でのみ比例関係に基づいて単波長を活用するしかなかった。
【0052】
本発明は、このような単波長分光法の問題点を解決し、多波長の比率を分析して、低濃度又は高濃度を問わず、濃度を測定するようにするためのものである。
【0053】
図5及び
図6は本発明の濃度分析装置における濃度による多波長別光透過率を示すグラフである。
図5及び
図6を参照すると、多波長分析による濃度変化時の色差分析を行ったものであって、黒色で表示されたものは実際濃度値を示し、これと共に表示されたL1~L6は当該濃度値に対応する様々な波長別光透過率を同時に示すものである。実際濃度が変動するとき、多波長の測定光透過率は、固有の特定の比率をなして変動する。
【0054】
このような多波長の様々な測定値が特定の濃度値を指すことができるようにアルゴリズムを介して演算を行わなければならないが、このために、本発明は、次の構成を備えている。
【0055】
図7は本発明の光学分析装置の構成を示す図、
図8は本発明のアルゴリズム部の構成を示す図である。
図7を参照すると、発光部110と受光部120との間には、3つ以上の多波長の光が投射され、それらの間には、次亜塩素酸ナトリウム溶液が流れる。受光部120で測定された多波長の光透過率値は、多波長入力部130で受信する。
【0056】
受信した各波長別光透過率値は、アルゴリズム部140で各波長別の比率を考慮して演算し、その演算値に応じて測定濃度値を算出する。特に、本発明は、多波長光透過率の相互比率から様々なパターンの色度値を抽出することができるということを活用し、併せて、ここで再び濃度によって線形的にマッチングされる特定の色度値を見つけることができることを発見し(直線性)、これを繰り返し算出するために回帰関数の適用が可能であること(再現性)に基づくことを特徴とする。
【0057】
図8を参照すると、アルゴリズム部140は、比率算定部142、色度導出部144、濃度算出部148を基本的に含んで構成され、濃度算出部148は、回帰分析部146を含んで構成される。比率算定部142は、測定された複数の波長別光透過率比率を算定し、色度導出部144は、前記比率にマッチングされる色度値を導出する。色度導出部144を介して、次亜塩素酸ナトリウムの濃度別原液に対して、多波長光源別光透過率比率値は、次亜塩素酸塩イオン濃度に対する色度単一値に変換可能である。次亜塩素酸塩イオン濃度に対する無試薬多波長測定色度単一値は、ASTM、DINなどの色度測定を次亜塩素酸塩イオン濃度に対して準用することを含むことができる。
【0058】
アルゴリズム部140には、当該色度に該当する原濃度値を保存していてもよく、後述する基準濃度入力部150からの入力される実際濃度値に応じて新たに色度マッチング値を設定してもよい。
【0059】
このようなアルゴリズム部140の一次的特徴は、従来と同様の単波長光透過率の絶対値では様々な範囲での濃度判断が不可能であるので、これを活用せず、様々な波長別光透過率の相対的な比率を色度判断の根拠として使用するという点である。相対的な比率の三次元変化値のうち、導出される規則に従って、波長間の光透過率の相互比率とその変化が幾つかの濃度及びその変化にマッチングされるように定めることができる。本発明は、このような光透過率の相対的比率を活用してアルゴリズムを導出することにより、高強度の発光装置を使用することなく或いは測定溶液を相当希釈することなく、高濃度を含む様々な濃度の特性値を抽出することができる。色度導出部144は、比率算定部142から提供された比率に基づいて色度値を導出する。
【0060】
アルゴリズム部140の色度導出部144で提供された色度値に応じて、回帰分析部146での回帰分析(線形、指数、ログ、多項式、累乗など)を経て、濃度算出部148が特定の測定濃度値を算出する。
【0061】
回帰分析部146は、提供された色度値xに対して測定濃度値cがc=ax+b(aは傾き、bは切片)となる関係で分析して濃度を算出する。このような測定濃度値と実際の原濃度は、色度値の変化に応じて同一の増減様相を示すが、その絶対値では差異があり得る。回帰分析部146は、色度値と線形比例関係になる特定のマッチング値を導出し、これを測定濃度値のマッチング値として使用する。このとき、測定濃度値のマッチング値の増減と実際濃度の増減との関係は、グラフ上、直線性を持つようにする。ただし、この状態でこの特定の色度値、マッチング値、これによる測定濃度値が実際濃度とは異なるか或いは異なり得るので、これを定めるために、以下の構成及び過程を行わなければならない。
【0062】
基準濃度入力部150をさらに備え、アルゴリズム部140には相関校正部152をさらに備える。相関校正部152では、回帰分析部146で算出された測定濃度値cが実際の原濃度yと一致するか或いはどの関係を持つかを確認して校正し、その校正された値に応じて回帰分析部146の分析演算時に反映されるように更新及び保存するようにする機能を果たす。
【0063】
光学分析装置100は、設置位置の特性や光学系、装備特性、製造誤差、部品性能に応じて、同一に製造された装備でも絶対的な測定、マッチング値を有するのではなく、互いに異なる胎生的絶対値の差を持っている。すなわち、上述した濃度算出部148の回帰分析部146による特定の色度値を介して、直線比例関係を導出するが、どの特定の算出値がどんな実際濃度を指すかはある程度差があり得る。
【0064】
例えば、2以上の光学分析装置100に対する2以上のA、B設置現場において、測定中の溶液の実際基準濃度は1000であるとき、A現場のA光学分析装置100の最初測定濃度値は500という数値が算出され、B現場のB光学分析装置100の最初測定濃度値は450という数値が算出されることができる。したがって、A光学分析装置100において、以降も500という数値が算出されると、これに対応する測定濃度値が1000であり、B光学分析装置100において、以降も450という数値が算出されると、これに対応する測定濃度値が1000であると判断するように校正を行う必要がある。
【0065】
したがって、光学分析装置100が製造されて現場に設置された後、基準値を提供する必要があり、このような基準値の入力を受けるための装置が基準濃度入力部150である。第1基準濃度の溶液に対して現場設置された光学分析装置100の分光測定による第1測定濃度を導出させ、同時にこれに対応する第1基準濃度を基準濃度入力部150に入力する。このとき、実際の第1基準濃度は、ヨウ素滴定法、DPD試薬法によって測定されるか、或いは濃度が定められた標準溶液を使用し、情報を入力することができる。再び、第1基準濃度とは異なる第2基準濃度の溶液に対する分光測定を介して、第2測定濃度を導出させ、同様に第2基準濃度を基準濃度入力部150に入力させる。
【0066】
相関校正部152では、入力された第1、2基準濃度値と、測定された第1、2測定濃度値とを相互比較して、校正値ないしは校正関数を導出し、これを回帰分析部146に伝達及び保存して、回帰分析部146の回帰分析関数を更新するか、或いは濃度算出部148内のDB(図示せず)に保存されるようにする。相関校正部152は、第1、2ないしはそれ以上のn回にわたった基準濃度値及び測定濃度値の入力時に、2以上の地点に対するゼロ/スパン(zero/span)方式の校正を行う。光学系別の特性固有値による2点以上のゼロ/スパン校正時の特性安定化のための時間変化適用基準値は、次亜塩素酸塩イオン濃度及び/又は測定容器の容積に比例するか、或いは耐腐食材質の密度に反比例する。
【0067】
図9及び
図10は
図5及び
図6のような濃度変化における測定濃度値を示すグラフである。
図9及び
図10を参照すると、比率算定部142における様々な波長別光透過率比率の算定によって色度導出部144で導出された色度値に応じて、最終的に図面のような様々な濃度別変化態様が導出される。
【0068】
波長別光透過率比率の算定による色度値の導出だけで、一部領域ずつ実際濃度との一致、比例関係が導出される。このうち、全領域に対して一致、比例関係が導出されるのは赤色Df(REF)ラインである。よって、各領域別の適切なラインを採用して活用することもでき、
図5及び
図6の実際濃度変化である黒色Df(REF)ライングラフと一致するのが
図9及び
図10の赤色Df(REF)ライングラフであるので、このような導出分析値を採用することが最も好ましく、これにより有効塩素の濃度を試薬なしでも数十万ppmに達するまで正確に測定することができる。
【0069】
このように
図9及び
図10のように導出された様々な色度値の対応関係のうち、実際濃度との線形的比例関係を持つ黒色Df(REF)ライングラフの導出関係を抽出することが、回帰分析部146の役割になる。
【0070】
本発明の第1特徴(多波長を用いた次亜塩素酸塩の原濃度別色度選定及び測定濃度値導出アルゴリズム)は、試薬使用なしでアルカリ性次亜塩素酸ナトリウム溶液に対する多波長間の光透過度比率を感知すると、光透過度比率に応じて次亜塩素酸塩(Cl-)の原濃度にマッチングするための色度を選定する。色度は、回帰分析(線形、指数、ログ、多項式、累乗など)数式を導出適用して、測定濃度値cを指示する。
【0071】
本発明の第2特徴(校正)は、現場値の入力後にゼロ/スパン方式で特性が把握され、光学系別に固有の回帰分析(線形、指数、ログ、多項式、累乗など)数式として知られている次亜塩素酸塩(ClO-)原濃度別の色度特性に応じて特定のゼロ/スパン(Zero/Span)区間の次亜塩素酸塩(ClO-)測定濃度値cを指示する2ポイント以上の校正を行い、校正後、試薬の使用が不要な多波長光学測定でアルカリ性次亜塩素酸ナトリウム溶液中のClO-測定値を指示することができる。これは、同じ原濃度yに対して同じ色度xが光学系別に固有に変わっても、回帰分析を介して校正すれば、原濃度とそれぞれの回帰分析数式校正結果値である測定濃度値cとの相関係数が0.975~1の間に属することを意味する。
【0072】
本発明は、高腐食性酸化剤である次亜塩素酸ナトリウム消毒剤を産業用化学工程の原液状態流体流れ条件でリアルタイムにて濃度分析することができる新しい概念の分光色差濃度分析技術を提供し、このようなリアルタイム濃度分析技術に副産物の化学量論上の原理適用を組み合わせて、副産物の濃度測定及びそれによる対比を行うことができるようにする目的及び効果がある。
【0073】
また、本発明は、多波長分光光度法を用いて高濃度の次亜塩素酸ナトリウムの濃度を測定することができるようにする技術を提供し、濃度分析装置ごとに互いに異なるしかない特性値を現場に合わせて調整及び適用することができるようにする技術を提供する。また、光学式、非電流測定、無試薬方式を採用し、リアルタイムで現場測定濃度を外部へ伝達することができるシステムを提供し、非専門家も容易に装備の現場校正を行うことができるようにし、現場で好まれる分光分析法が、試薬や希釈過程なしでも、低濃度だけでなく、高濃度の塩素測定及び分析に使用できるようにする。
【0074】
本発明は、高腐食性酸化剤である次亜塩素酸ナトリウム消毒剤を産業用化学工程の原液状態流体流れ条件でリアルタイム濃度分析し、その副産物の濃度や発生量を算出することができるようにする。
【符号の説明】
【0075】
1 軟水器
2 希釈水槽
3 塩貯蔵槽
4 電気分解槽
5 貯蔵槽
6 投入地
100 光学分析装置
110 発光部
120 受光部
130 多波長入力部
140 アルゴリズム部
142 比率算定部
144 色度導出部
146 回帰分析部
148 濃度算出部
150 基準濃度入力部
152 相関校正部
200 副産物制御部
210 濃度受信部
220 情報収集部
230 補正部
240 流出入調整部
302 ネットワーク
300 管理サーバー
400 管理者端末
【外国語明細書】