(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022011873
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】熱感知器
(51)【国際特許分類】
G08B 17/06 20060101AFI20220107BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20220107BHJP
G01K 1/14 20210101ALI20220107BHJP
【FI】
G08B17/06 K
G08B17/00 G
G01K1/14 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020113270
(22)【出願日】2020-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】丸田 聡史
(72)【発明者】
【氏名】田村 政徳
(72)【発明者】
【氏名】沼澤 隆
【テーマコード(参考)】
2F056
5C085
5G405
【Fターム(参考)】
2F056CE01
5C085AA01
5C085AB01
5C085BA12
5C085CA30
5C085FA40
5G405AA01
5G405AB01
5G405CA21
5G405CA60
5G405FA30
(57)【要約】
【課題】熱感知素子としてサーミスタを用いている熱感知器において、筐体およびサーミスタやプロテクタなどの部品を目立たないようにする。
【解決手段】有底筒形の本体ケース(11)と該本体ケースの開口側を覆う外カバー部材(12)とからなる筐体の内部に、熱感知素子および検出回路を構成する部品が実装された回路基板が収納され、外カバー部材には熱感知素子に対応した位置に開口が形成されているとともに、外側の空気が流入可能な流入口を備え熱感知素子の先端が臨む空間を形成しかつ前記開口を覆うプロテクタ部が設けられている熱感知器において、熱感知素子の表面は外カバー部材の表面と同一系統の色で、かつ表示灯の発光色が反射しやすい色に着色されているようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒形の本体ケースと該本体ケースの開口側を覆う外カバー部材とからなる筐体の内部に、熱感知素子および検出回路を構成する部品が実装された回路基板が収納され、前記外カバー部材には前記熱感知素子に対応した位置に開口が形成されているとともに、外側の空気が流入可能な流入口を備え前記熱感知素子の先端が臨む空間を形成しかつ前記開口を覆うプロテクタ部が設けられている熱感知器であって、
前記熱感知素子の表面は前記外カバー部材の表面と同一系統の色で、かつ表示灯の発光色が反射しやすい色に着色されていることを特徴とする熱感知器。
【請求項2】
前記筐体には、前記外カバー部材の一部より光を出射可能な作動表示灯が配設され、
前記作動表示灯より出射された光の一部が、前記熱感知素子の表面に照射されるように当該熱感知素子が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の熱感知器。
【請求項3】
前記作動表示灯は、前記回路基板に実装された発光素子と、透光性材料で形成され前記熱感知素子の周囲に配設された光出射部と、前記発光素子より発せられた光を前記光出射部へ誘導する導光部とを備え、
前記光出射部より出射された光の一部が前記熱感知素子の表面に照射されるように、当該熱感知素子および前記光出射部が配置されていることを特徴とする請求項2に記載の熱感知器。
【請求項4】
前記光出射部は、前記熱感知素子の径よりも内径の大きな挿通用円筒部および該挿通用円筒部の前記回路基板の側から当該回路基板から遠ざかる方向へ広がるすり鉢状部を備えた内カバーにより構成され、前記内カバーは前記挿通用円筒部内に前記熱感知素子の基部が位置するように配設され、前記すり鉢状部が前記外カバー部材の開口に対応するように配置され、
前記すり鉢状部又はすり鉢状部外側の鍔部より出射された光の一部が前記熱感知素子の表面に照射されるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の熱感知器。
【請求項5】
前記すり鉢状部の表面または裏面の一部には、前記外カバー部材の表面と同一系統の色の被膜が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の熱感知器。
【請求項6】
前記すり鉢状部は透明材料で形成されており、前記回路基板の前記熱感知素子の実装側の面は前記外カバー部材の表面と同一系統の色に着色されていることを特徴とする請求項4に記載の熱感知器。
【請求項7】
前記熱感知素子の表面は梨地仕上げ面に形成されていることを特徴とする請求項4~6のいずれかに記載の熱感知器。
【請求項8】
前記外カバー部材は非透光性材料で形成され、前記プロテクタ部は前記外カバー部材とは異なる白濁色又は構造的に光を反射可能な加工を施した透光性材料で形成されており、
前記作動表示灯は、前記回路基板に実装された発光素子と前記プロテクタ部とにより構成され、前記発光素子より発せられた光が前記プロテクタ部へ誘導されることにより当該プロテクタ部が発光可能にされ、
前記プロテクタ部より出射された光の一部が前記熱感知素子の表面に照射されるように、前記プロテクタ部および前記熱感知素子が配置されていることを特徴とする請求項2に記載の熱感知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱感知素子(センサ)としてサーミスタを使用した熱感知器に関する。
【背景技術】
【0002】
サーミスタを使用した熱感知器は、一般に、ドーム型の筐体の中央に熱感知素子としてのサーミスタを配設し、サーミスタが下向きとなるように、筐体を建造物の天井面に取り付けて火災の発生を検出するように構成されている。
一般に、サーミスタを使用した熱感知器は、非発報状態では目立たないように、筐体(ケース)として白色を基調としたものが多い。一方、火災検出時に点灯又は点滅する作動表示灯は、例えば天井面に設置された状態で、視認性が良好となることが要求される。そのため、感知器本体(筐体)の一部に窓部を設け、その窓を通して作動表示灯の発光表示が視認できるように構成されている(例えば特許文献1)。また、砲弾型のLED(発光ダイオード)の頭部を感知器本体の表面に直接露出させるように構成されているものもある(例えば特許文献2の
図9)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-175860号公報
【特許文献2】特開平08-180273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱感知器が設置される天井面は白色又は白系色であることが多いため、白色を基調とした熱感知器を設置することで熱感知器を目立たなくすることができる。しかし、従来の熱感知器の多くはサーミスタとして黒色のものを使用することが多いとともに、サーミスタは、筐体の中央に下向きとなるように配設され、これを保護するようにプロテクタが設けられるとともに、熱気流をとらえやすくするため、プロテクタにはサーミスタを中心にして放射状のフィンが設けられている。そのため、従来の熱感知器は、熱感知器本体は目立たなくても、黒色のサーミスタが目立ってしまい、熱感知器が周囲の色と調和しないという課題がある。
【0005】
また、従来の熱感知器は、作動表示灯の窓がプロテクタの外側の感知器本体の表面に設けられることが多いが、表示窓は比較的小さいため視認する方向によってプロテクタや黒色のサーミスタによって妨げられてしまい、視認性が良好でないという課題がある。そこで、プロテクタを透明もしくは半透明の材料で形成することも考えられるが、そのようにすると、白色を基調とする熱感知器本体の中央に材質の異なるプロテクタが設けられた構成となるため、プロテクタが目立ってしまい周囲の色調と調和しないという課題が生じる。
【0006】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、熱感知素子としてサーミスタを用いている熱感知器において、サーミスタやプロテクタなどの部品が目立つことを抑止し、設置環境に馴染むようにすることにある。
本発明の他の目的は、熱感知素子としてサーミスタを用いている熱感知器において、作動表示灯の視認性を向上させることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明は、
有底筒形の本体ケースと該本体ケースの開口側を覆う外カバー部材とからなる筐体の内部に、熱感知素子および検出回路を構成する部品が実装された回路基板が収納され、前記外カバー部材には前記熱感知素子に対応した位置に開口が形成されているとともに、外側の空気が流入可能な流入口を備え前記熱感知素子の先端が臨む空間を形成しかつ前記開口を覆うプロテクタ部が設けられている熱感知器であって、
前記熱感知素子の表面は前記外カバー部材の表面と同一系統の色で、かつ表示灯の発光色が反射しやすい色に着色されているように構成したものである。
上記のように構成された熱感知器によれば、熱感知素子の表面は前記外カバー部材の表面と同一系統の色に着色されているため、サーミスタを筐体に対して目立たず周囲環境と色の調和ができる。
【0008】
ここで、望ましくは、前記筐体には、前記外カバー部材の一部より光を出射可能な作動表示灯が配設され、
前記作動表示灯より出射された光の一部が、前記熱感知素子の表面に照射されるように当該熱感知素子が配置されているように構成する。
かかる構成によれば、作動表示灯より出射された光の一部が熱感知素子の表面に照射され、熱感知素子を明るくするため、作動表示灯の視認性を向上させることができる。
【0009】
さらに、望ましくは、前記作動表示灯は、前記回路基板に実装された発光素子と、透光性材料で形成され前記熱感知素子の周囲に配設された光出射部と、前記発光素子より発せられた光を前記光出射部へ誘導する導光部とを備え、
前記光出射部より出射された光の一部が前記熱感知素子の表面に照射されるように、当該熱感知素子および前記光出射部が配置されているように構成する。
かかる構成によれば、透光性材料で形成された光出射部が熱感知素子の周囲に配設されているため、光出射部から出射された光が熱感知素子へ向けて照射され、熱感知素子を明るくするため、多方向から見た作動表示灯の視認性を向上させることができる。
【0010】
さらに、望ましくは、前記光出射部は、前記熱感知素子の径よりも内径の大きな挿通用円筒部および該挿通用円筒部の前記回路基板の側から当該回路基板から遠ざかる方向へ広がるすり鉢状部を備えた内カバーにより構成され、前記内カバーは前記挿通用円筒部内に前記熱感知素子の基部が位置するように配設され、前記すり鉢状部が前記外カバー部材の開口に対応するように配置され、
前記すり鉢状部又はすり鉢状部外側の鍔部より出射された光の一部が前記熱感知素子の表面に照射されるように構成する。
かかる構成によれば、内カバーにより熱感知素子を保護しつつ、内カバーのすり鉢状部より出射された光の一部が熱感知素子の表面に照射され、熱感知素子を明るくするため、作動表示灯の視認性を向上させることができる。
【0011】
さらに、望ましくは、前記すり鉢状部の表面または裏面の一部には、前記外カバー部材の表面と同一系統の色の被膜が設けられているように構成する。
かかる構成によれば、内カバーを筐体に対して目立たないようにすることができる。
【0012】
また、望ましくは、前記すり鉢状部は透明材料で形成されており、前記回路基板の前記熱感知素子の実装側の面は前記外カバー部材の表面と同一系統の色に着色されているように構成する。
かかる構成によれば、すり鉢状部は透明材料で形成されていてすり鉢状部を透して回路基板が見えてしまう場合に、回路基板を筐体に対して目立たないようにすることができる。
【0013】
さらに、望ましくは、前記熱感知素子の表面は梨地仕上げ面に形成されているように構成する。
かかる構成によれば、熱感知素子の表面は梨地仕上げ面であるため、熱感知素子の表面に照射された光が乱反射することで、熱感知素子をより明るくするため、作動表示灯の視認性をさらに向上させることができる。
【0014】
また、望ましくは、前記外カバー部材は非透光性材料で形成され、前記プロテクタ部は前記外カバー部材とは異なる白濁色又は構造的に光を反射可能な加工を施した透光性材料で形成されており、
前記作動表示灯は、前記回路基板に実装された発光素子と前記プロテクタ部とにより構成され、前記発光素子より発せられた光が前記プロテクタ部へ誘導されることにより当該プロテクタ部が発光可能にされ、
前記プロテクタ部より出射された光の一部が前記熱感知素子の表面に照射されるように、前記プロテクタ部および前記熱感知素子が配置されているように構成する。
【0015】
上記のような構成によれば、プロテクタ部が作動表示灯の光出射部として機能するため別途光出射部を設ける必要がないとともに、プロテクタ部が白濁色又は構造的に光を反射可能な加工を施した透光性材料で形成されているため、作動表示灯の消灯中はプロテクタ部を筐体に対して目立たないようにすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る熱感知器によれば、サーミスタやプロテクタなどの部品をサーミスタやプロテクタなどの部品を設置環境の中で目立たないようにすることができる。また、作動表示灯の視認性を向上させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る熱感知器の一実施形態を示すもので、(A)は正面断面図、(B)は斜視図である。
【
図2】(A)は
図1の実施形態の熱感知器の第1の変形例を示す正面断面図、(B)は第2の変形例を示す正面断面図である。
【
図3】本発明に係る熱感知器の他の実施形態を示す正面断面図である。
【
図4】内カバーの他の構成例を示すもので、(A)は正面断面図、(B)は底面図、(C)は変形例を示す断面図である。
【
図5】内カバーのさらに他の構成例を示すもので、(A)は正面断面図、(B)は底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る熱感知器の一実施形態について説明する。
図1は露出型の熱感知器であり、
図1(A)には実施形態の熱感知器の正面断面図が、
図1(B)には実施形態の熱感知器の斜視図が示されている。
図1に示す実施形態においては、施工例として多い天井面や壁面が白色の場合について、感知器外観を白色とした場合を説明する。また、作動表示灯は赤色発光とする。
本実施形態の熱感知器10は、熱感知素子としてサーミスタを用い火災に伴い発生した熱によって熱せられた空気がサーミスタに接触することで生じる電気抵抗の変化を検出して火災を検知可能な感知器であり、建造物の天井面などに設置されて使用されるように構成されている。
【0019】
本実施形態の熱感知器10は、
図1(A)に示すように、熱を感知する部品を収容するための収容凹部11Aを有し建造物の天井面に取り付けているベース部材に結合可能な有底筒形の本体ケース11と、中央にサーミスタの先端部を覆うプロテクタ部を有し前記本体ケース11の開口側全体を覆う外カバー12と、該外カバー12の周縁部を覆いつつ天井面の取り付けネジや配線を隠すための化粧カバー13とを備え、本体ケース11と外カバー12とにより内部に収容空間を有する筐体が形成される。
【0020】
また、本実施形態の熱感知器10は、前記本体ケース11の収容凹部11A内に収容された回路基板14と、該回路基板14に実装されたサーミスタ15と、該サーミスタ15が挿通可能な挿通孔を有し上端が上記回路基板14の表面に接するように配設された円筒部16aと該円筒部16aから下方へ向かって広がるすり鉢状部16bとすり鉢状部16bの下端に設けられた鍔部16cとを有する内カバー16を備える。
【0021】
上記回路基板14は、上面および下面に火災感知のための電子回路を構成する抵抗や容量、IC(半導体集積回路)などの電子部品20が実装されるプリント配線基板により構成され、回路基板14のほぼ中央にサーミスタ15のリード端子の先端が回路基板14を貫通して反対側の面より突出し、フロー半田付け等によって接続される。
また、本実施形態の熱感知器においては、外カバー12と化粧カバー13が白色の樹脂で形成されているとともに、サーミスタ15として、表面に白色のエポキシ樹脂等の塗料が塗布されたものが使用されている。
この実施形態におけるサーミスタ15への着色は、作動表示灯が異常を表す赤色で発光した際に、赤色を充分反射する色として白を選択しているが、白に限られるものではなく、赤色光を充分反射し視認できる系統の色であればよい。
なお、本実施例では、感知器が天井等に設置された際に視認される感知器表面部を外カバーと表現し、上記外カバー12と化粧カバー13、プロテクタ12Cを総称して外カバー部材という。
【0022】
一方、外カバー12には、その中央に、上記内カバー16の鍔部16cに少なくとも1部が当接する(重なる形で当接)円形状の開口部12Aが形成されているとともに、上記内カバー16の下方に位置するリング状のヘッド部12Bが設けられ、該ヘッド部12Bの近傍まで上記サーミスタ15の頭部が達するように、サーミスタ15が配設されている。
さらに、上記リング状ヘッド部12Bと外カバー12との間に、
図1(B)に示すように、放射状に配設された柱状の隔壁12Cが複数個(例えば6個)形成され、これらの隔壁12C間に外部の空気をケース内部に流入可能にする流入口として機能する開口が設けられている。ヘッド部12Bと隔壁12Cとによってプロテクタ部が構成される。上記隔壁12Cは板状でも良い。
【0023】
また、本実施形態の熱感知器においては、すり鉢状部16bを有する内カバー16がポリカーボネート樹脂等の透光性材料で形成されているとともに、この内カバー16の鍔部16cに対応する位置に、動作状態報知用のLED(発光ダイオード)17が実装されている。このLED17には、筐体と異なる色(例えば赤)の光を発するものが使用されている。そして、内カバー16の鍔部16c裏面のLED17と対向する部位には、凹部からなる導光部16eが設けられている。
【0024】
また、内カバー16の鍔部16c裏面のLED17と対向する部位には、凹部からなる導光部16eが設けられている。また、鍔部には、導光部16eと反対側の面(図では下面)に光反射部16fが設けられている。光反射部16fは、側方から見たときに断面がV字をなす凹部(溝)で構成されており、導光部16eから入光したLED17の光は光反射部16fで反射され、内カバー16のすり鉢状部16b全体へ誘導され、すり鉢状部16bから光が出射され、感知器が作動中であることを表示することができるようになっている。なお、LED17は1個に限定されず、2個以上であっても良い。
【0025】
さらに、本実施形態の熱感知器では、内カバー16のすり鉢状部16b及び鍔部16cから出射した光が中央の白色のサーミスタ15の表面に当たって反射することで、サーミスタ15も表示部として機能することができ、見かけ上の発光表示の面積を大きくしたり、視認可能な方向を広げたりすることができる。
具体的には、サーミスタ15が一般的な黒色の場合、サーミスタ15によって内カバー16のすり鉢状部16bの一部分が隠されるとともにサーミスタ15に当たった作動表示灯の光は吸収されて光量が減少してしまうこととなるが、サーミスタ15の表面が白色等表示灯の発光色が反射しやすい色であると、すり鉢状部16bから出射した光がサーミスタ15の表面に当たって反射するため光量の減少が回避され、発光状態が見え易くなる。なお、サーミスタ15の表面は、光沢のある仕上げではなく梨地仕上げ(乱反射する加工)とするのが良い。これにより、すり鉢状部16b及び鍔部16cからの光をサーミスタ15の表面で乱反射させて、発光状態をより見え易くすることができる。
【0026】
さらに、本実施形態の熱感知器においては、内カバー16の円筒部16aの内側に樹脂19を充填した構造を採用している。これにより、天井面に形成された配線等を通す穴から筐体内(本体ケース11内側の基板収納空間)に圧力の高い空気が入り込み、その高圧の空気が内カバー16の円筒部16aとサーミスタ15との隙間から流れ出すことで、サーミスタ15の周囲に円筒状の気流層が生じ、その気流によってサーミスタ15に熱気流の流入が阻害されたり、サーミスタ15に水が付着し、埃が堆積し易くなって熱感知機能が低下するのを防止することができる。また、充填する樹脂19として白色の樹脂を使用することで、円筒部16aの内側の色(例えば、基板表面の色)が外部から視認する際に樹脂で覆い隠される。
なお、内カバー16は、
図2(A)に示すように、円筒部16aを長くしてすり鉢状部16bをなくし、円筒部16aに鍔部16cを直結させた形状であっても良い。
【0027】
また、LED17を内カバー16の鍔部16cに対向させる代わりに、
図2(B)に示すように、外カバー12の平面部に作動表示灯の窓(丸窓)を設けてその窓より砲弾型のLED17の頭部を露出させるように構成しても良い。このように砲弾型のLED17を配設するとともに、LED17より出射され頭部の凸レンズで広がる光の光路内に白色のサーミスタ15が入るようにサーミスタ15の高さを設定することで、サーミスタ15の表面でLED17からの光を反射して作動表示灯の一部として機能させることができる。なお、砲弾型LED17の頭部を外カバー12の平面部より突出させる代わりに、外カバー12の作動表示用の窓に平面あるいは凸状のレンズを設けても良い。窓が平面の場合には、光の広がり角度が小さいが、凸レンズを設けることで、光の広がり角度を大きくすることができ、サーミスタ15の高さが低くても反射させることができる。
【0028】
また、回路基板14の表面(
図1では下面)に、白色のレジストや絶縁性塗料を塗布、あるいは白色のシルク印刷を行っても良い。同様に実装部品20の表面を白色に塗っても良い。内カバー16の透光性材料の透明度が高い場合、内カバー16越しに回路基板14や実装部品が透けて外カバー12の開口部から基板表面の色が透けて見えたり、開口部が黒っぽく見えたりしまうが、回路基板14及び実装部品20の表面を白色に着色することで、外カバー12の開口部を明るくし、感知器全体が白色で統一されているように見せることができる。なお、この際は後述するように透光性材料に発報時にLEDからの光を導き周囲に拡散できる微細構造の加工が利用できる。
【0029】
次に、
図3を用いて、熱感知器の他の実施形態を説明する。
図3は埋め込み型の熱感知器であり、本実施形態の熱感知器10は、
図1に示す実施形態の露出型の熱感知器10における化粧カバー13がなく、有底円筒形の本体ケース11と、中央にサーミスタの先端部を覆うプロテクタ部を有し前記本体ケース11の開口側全体を覆う外カバー12と、本体ケース11と外カバー12とにより内部に収容空間を有する筐体が形成され、筐体内に円筒部16aとすり鉢状部16bと鍔部16cを有しサーミスタ15を保護する内カバー16が収納されている。
【0030】
この実施形態の熱感知器も、外カバー12が白色の樹脂で形成されているとともに、回路基板14に実装されたサーミスタ15として、表面に白色のエポキシ樹脂等の塗料が塗布されたものが使用されている例として説明する。
また、内カバー16は透光性材料で形成され、鍔部16cには回路基板14へ向かって突出する円柱状の導光部16eが形成され、この導光部16eの端面に対向するように、回路基板14に高さの低いLEDチップ17が面実装されており、LEDチップ17から出射された光は導光部16eを通って内カバー16の鍔部16cに誘導され、そこに形成されている光反射部16fで反射され、内カバー16のすり鉢状部16b全体へ誘導され、すり鉢状部16bから光を出射し、感知器が作動中であることを表示することができるようになっている。
【0031】
また、内カバー16には、すり鉢状部16bから鉛直方向上方へ向かって突出するように形成された3本の係止片16dが設けられている(
図3には、3本の係止片16dのうち1本が示されている)。係止片16dの先端には爪部が形成されており、この爪部が、回路基板14に形成されている係合穴14aに係合されることで、内カバー16が回路基板14に結合されている。係止片16dは、3本が必須ではなく、2本でもよい。また、係止片16dは、すり鉢状部16bではなく、鍔部16cに設けられていても良い。
さらに、本実施形態の熱感知器においても、内カバー16の円筒部16aの内側に樹脂19が充填され、サーミスタ15の熱感知機能が低下するのを防止している。充填される樹脂は、白色系またはそれ以外の色でも良いが、筐体色が白の場合は樹脂も白が望ましい。また、天井等周囲環境の色が白色系以外の色の場合、充填される樹脂の表面に白色系の塗料を塗布しても良い。その場合は、筐体の色も合わせる。
【0032】
また、回路基板14の表面(
図3では下面)に、白色のレジストや絶縁性塗料を塗布したり、あるいは白色のシルク印刷をしても良い。同様に実装部品20の表面を白色に塗っても良い。内カバー16の透光性材料の透明度が高い場合、内カバー16越しに回路基板14や実装部品が透けて外カバー12の開口部から基板表面の色が透けて見えたり、開口部が黒っぽく見えたりしてしまうが、回路基板14及び実装部品の表面を白色に着色することで、外カバー12の開口部を明るくし、感知器全体が白色で統一されているように見せることができる。
【0033】
次に、
図4および
図5を用いて、
図1及び
図3の実施形態で説明した上記内カバー16の他の構成例について説明する。このうち、
図4の内カバー16は、すり鉢状部16bの表面の外周縁を除いた部位に白色の塗料を塗布して被膜18を形成したものである。なお、
図4の(A)は内カバー16の断面図、(B)は内カバー16の底面図である。
この実施例においては、円柱状の導光部16eより入射されたLEDの光は、光反射部16fで反射されて鍔部16cに沿って水平方向へ広がり、内カバー16のすり鉢状部16bの表面の被膜18の外側の円環状部分Rから出射されるように構成されている。なお、光反射部16fは、
図4(B)において矢印C方向から見たときに断面がV字をなす溝として形成されている。
【0034】
本実施例を適用した感知器においては、上記円環状部分から出射した光が、プロテクタ部の柱の隙間から外部へ広がるとともに、一部は白色のサーミスタ15の表面に照射されて反射する。これにより、作動表示灯の点灯状態を視認させ易くすることができる。
なお、白色の被膜18は、すり鉢状部16bの表面でなく裏面に形成しても良いし、塗料を塗布して形成する代わりに白色のフィルムを貼り付けても良い。その際、内カバー16の円筒部16aの内側に充填された樹脂19の表面にも白い被膜を同時に形成してもよい。また、充填される樹脂としては、白色と白濁色の2色樹脂成型又は、白色と透明の2色樹脂成型で形成してもよい。また、被膜18は白色に限定されず、白色系であれば良い。また、白色系の被膜18を形成する代わりに、内部を誘導されてきた光を反射可能な構造(例えば多数の微細な溝)の加工を施すようにしても良い。
すり鉢状部16bの裏面に白い被膜を形成した場合、監視時(作動表示灯消灯時)は、白色に視認されるが、発報時(作動表示灯点灯時)は、すり鉢状部の内側全体からLEDの光が放出されることとなり、サーミスタ15に充分な光の照射ができることになり、作動表示の際に白色のサーミスタの反射で視認性が良い状態を作り出すことができる。
【0035】
また、
図4(A)に点線で示すように、外カバー12の開口部12Aの径を、内カバー16の鍔部16cの内径よりも大きく形成することで、鍔部16cの内側の一部を露出させて、この円環状の部分からLEDの光を出射させるように構成してもよい。その際、開口部12Aの内側の鍔部16cの平面部分に凸状部を形成することで、内カバー16から白色のサーミスタ15の表面へ光を出射できる面積を増やし、LED17の光を白色のサーミスタ15の表面に確実に照射して反射させることができる。
なお、上記で説明した、すり鉢状部16bの表面の白い被膜と裏面の白い被膜を同時に形成してもよい。この場合、透光性材料の内カバー16内を伝達される光が内カバー16から外部に放出される面積を絞ることができ、作動表示灯としての光量を充分得ることができる。
また、
図4(C)に示すように、内カバー16を回路基板14へ止着するための係止片16dは、すり鉢状部16bではなく鍔部16cに設けても良い。また、LED17の光を集光し易くするため、導光部16eの端面を凹面状に形成しても良い。
【0036】
図5に示す内カバー16は、鍔部16cの外周縁に沿って下向きに突出するリブ状の出光部16gが設けられている点で、
図4に示す実施例の内カバー16と相異している。
また、出光部16gを設けたのに伴い、導光部16eに対応して鍔部16cの表面部に形成されている光反射部16fが、導光部16eからの光を外側すなわち出光部16gへも反射するように、鉛直方向に断面した場合にもV字をなすように形成されている点でも
図4の実施例の内カバー16と相異している。
【0037】
上記出光部16gは、下方から見た場合、
図5(B)に示すように、リング状をなしている。なお、光反射部16fは、
図4の実施例と同様、
図5(B)において矢印C方向から見たときにも断面がV字をなす溝として形成されている。
さらに、鍔部16cの外周縁に沿って下向きに突出するリブ状の出光部16gを設けたのに伴い、外カバー12には、
図5(A)に示すように、スリット12eが形成され、このスリット12eに上記出光部16gが嵌合され、その頭部が外カバー12の表面に臨むように構成されている。スリット12eは、出光部16gに対応して、平面視でリング状をなす。
【0038】
また、出光部16gの頭部は、
図5(A)に示すように、下方へ向かって膨らむ形状をなすように形成されており、レンズ効果で出光部16gから光が広がりつつ出射されるようになっている。そして、内側へ向かった光の一部は、内カバー16の内側に配設される表面が白色のサーミスタ15に照射されて反射する。なお、
図5の内カバー16は、出光部16gの位置がプロテクタ部を構成する柱状の隔壁12Cの外側に位置することとなるが、隔壁12Cと重なる位置あるいは内側に位置するように形成しても良い。また、出光部16gの頭部を膨らませる代わりに平坦な面にしても良い。
【0039】
上記のように構成された本実施例の内カバー16を備えた熱感知器においては、建造物の天井面に設置された状態でLED17が点灯されると、内カバー16のすり鉢状部16b全体およびリング状の出光部16gが発光し、その光が複数の隔壁12C間すなわち360°いずれの方向からも見える状態になるため視認の方向性がないとともに、トータルの発光面積が前述の実施例の熱感知器よりも大きくなる。また、出光部16gから出た光が隔壁12Cの側面および白色のサーミスタ15を照らすため、一層視認性が向上することとなる。
【0040】
以上の説明から、上記実施形態の感知器は、サーミスタ15と外カバー12(化粧カバー13を含む)は同系色である、サーミスタ15と外カバー12とは異なる色の発光色がLED15から出射され、内カバー16又はプロテクタ(12B,12C)とサーミスタ15でLED17の発光色を導く、外カバーと同系色でLEDの発光色が反射しやすい色に着色したサーミスタを設けた、という特徴を有していることが分かる。
【0041】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、内カバー16を透光性材料で形成して内カバー16の鍔部16cにLED17からの光が誘導されて発光するように構成しているが、プロテクタ部を外カバー12と別体にして、白濁色又は構造的に光を反射可能な加工を施した透光性材料で形成し、LED17からの光をLED17直上に配置した隔壁12C経由でプロテクタ部全体へ誘導して発光させるように構成しても良い。
【0042】
この場合、プロテクタ部を透明な材料で形成すると白色の外カバー12と見かけが異なってしまうので、プロテクタ部の形成素材内に光を乱反射させる筐体色と同じ系統(例えば、白色)の微粒子を混入した筐体色と同じ系統の色で濁った透光性材料で形成するのが望ましい。これにより、LED17の消灯時にプロテクタ部は筐体色に近い色合いとなり、感知器全体を同系の色で統一し、天井面に設置した際に熱感知器を目立たなくすることができる。また、プロテクタ部を構造的に光を反射可能な加工を施した透光性材料で形成した場合、非透光時は筐体色が背景色として透過され、透光時は発光色で発光させることができ、感知器全体を同系の色で統一し、天井面に設置した際に熱感知器を目立たなくすることができる。
また、作動表示灯の点灯時は、作動表示を視認性が高い形で表示ができる。よって、監視時は、周囲環境の色合いと調和する色で目立たないようにし、発光時は発光部を最大限目立つように示させることができる。
【符号の説明】
【0043】
10 熱感知器
11 本体ケース
12 外カバー
13 化粧カバー
14 回路基板
15 サーミスタ(熱感知素子)
16 内カバー
16a 円筒部
16b すり鉢状部
16c 鍔部
16d 係止片
16e 導光部
16f 反射部
17 LED(発光素子)
18 被膜
19 充填樹脂