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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118745
(43)【公開日】2022-08-16
(54)【発明の名称】防潮堤竪壁の配筋構造
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/04 20060101AFI20220808BHJP
【FI】
E02B3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021015401
(22)【出願日】2021-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000230010
【氏名又は名称】ジオスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】小山 直人
(72)【発明者】
【氏名】松野 真樹
(72)【発明者】
【氏名】中谷 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】谷口 哲憲
【テーマコード(参考)】
2D118
【Fターム(参考)】
2D118AA12
2D118BA03
2D118BA05
2D118GA07
(57)【要約】
【課題】鉄筋コンクリート造の防潮堤竪壁において、かぶりコンクリートの剥落を抑制する。
【解決手段】第1の鉄筋10と、第2の鉄筋20と、を備え、第1の鉄筋10は、第1の下部直線部11と、第1の中間直線部13と、第1の上部直線部12と、第1の下部屈曲部14と、第1の上部屈曲部15と、を有し、第2の鉄筋20は、第2の下部直線部21と、第2の中間直線部23と、第2の上部直線部22と、第2の下部屈曲部24と、第2の上部屈曲部25と、を有し、竪壁本体2の第1の領域R1に、第1の下部屈曲部14と第2の上部屈曲部25が位置し、第2の領域R2に、第1の上部屈曲部15と第2の下部屈曲部24が位置し、竪壁本体2の幅方向から見て、第1の中間直線部13は、第2の中間直線部23と交差するように、鉄筋コンクリート造の防潮堤竪壁1の配筋構造を構成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート造の防潮堤竪壁の配筋構造であって、
前記防潮堤竪壁の竪壁本体に埋設された、該竪壁本体の高さ方向に延伸する、第1の鉄筋と、第2の鉄筋と、を備え、
前記竪壁本体は、竪壁下部と、前記竪壁下部よりも薄い竪壁上部と、前記竪壁下部と前記竪壁上部との間に位置する、該竪壁下部から該竪壁上部にかけて厚さが漸減する竪壁中間部と、を有し、
前記第1の鉄筋は、第1の下部直線部と、第1の中間直線部と、第1の上部直線部と、前記第1の下部直線部の上端および前記第1の中間直線部の下端を接続する第1の下部屈曲部と、前記第1の中間直線部の上端および前記第1の上部直線部の下端を接続する第1の上部屈曲部と、を有し、
前記第2の鉄筋は、第2の下部直線部と、第2の中間直線部と、第2の上部直線部と、前記第2の下部直線部の上端および前記第2の中間直線部の下端を接続する第2の下部屈曲部と、前記第2の中間直線部の上端および前記第2の上部直線部の下端を接続する第2の上部屈曲部と、を有し、
前記竪壁本体の厚さの1/2の位置を通る中心面を境界として分割された該竪壁本体の2つの領域のうち、第1の領域に、前記第1の下部屈曲部と前記第2の上部屈曲部が位置し、第2の領域に、前記第1の上部屈曲部と前記第2の下部屈曲部が位置し、
前記竪壁本体の幅方向から見て、前記第1の中間直線部は、前記第2の中間直線部と交差していることを特徴とする、防潮堤竪壁の配筋構造。
【請求項2】
前記第1の中間直線部と交差し、少なくとも前記第2の上部直線部の埋設高さまで延伸するように埋設された第3の鉄筋と、
前記第2の中間直線部と交差し、少なくとも前記第1の上部直線部の埋設高さまで延伸するように埋設された第4の鉄筋と、を有していることを特徴とする、請求項1に記載の防潮堤竪壁の配筋構造。
【請求項3】
前記竪壁本体の厚さ方向に垂直な2つの外面のうち、第1の外面から一定の深さに、前記第1の下部直線部、前記第1の中間直線部、前記第3の鉄筋および前記第2の上部直線部のいずれかが埋設され、
第2の外面から一定の深さに、前記第2の下部直線部、前記第2の中間直線部、前記第4の鉄筋および前記第1の上部直線部のいずれかが埋設されていることを特徴とする、請求項2に記載の防潮堤竪壁の配筋構造。
【請求項4】
前記竪壁本体を幅方向から見て、前記第1の中間直線部と前記第2の中間直線部の交差箇所が前記竪壁上部の内方に位置していることを特徴としている、請求項2または3に記載の防潮堤竪壁の配筋構造。
【請求項5】
前記竪壁本体を幅方向から見て、前記第1の中間直線部と前記第2の中間直線部の交差箇所近傍に、前記第1の鉄筋、前記第2の鉄筋、前記第3の鉄筋および前記第4の鉄筋の周囲を取り囲む拘束鉄筋が埋設されていることを特徴とする、請求項2~4のいずれか一項に記載の防潮堤竪壁の配筋構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防潮堤竪壁の配筋構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート造の竪壁とフーチングで構成される防潮堤においては、津波等により防潮堤に外力が作用した際に竪壁の下端部に最大断面力が発生する。一方で、発生する断面力は竪壁の下端から上端にかけて減少し、竪壁の上端近傍では断面力が極めて小さいことが多い。
【0003】
そのため、竪壁を製造する際には、経済性を考慮し、竪壁上部の厚さを竪壁下部よりも薄くする場合がある。そのような竪壁として、例えば下端から上端にかけて一定の勾配で部材厚が薄くなる台形形状の竪壁や、一定の部材厚の竪壁下部と、その竪壁下部よりも薄い一定の部材厚の竪壁上部の間に、部材厚が漸減するくびれ状の竪壁中間部が設けられた竪壁が知られている。
【0004】
上記のような竪壁のうち、くびれ状の竪壁中間部を有する防潮堤竪壁として、特許文献1には鉄筋コンクリート製のプレキャスト竪壁が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-196983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のプレキャスト竪壁は、竪壁外面と同形状の鉄筋が竪壁の海側面の近傍と陸側面の近傍にそれぞれ埋設されている。このような竪壁の場合、津波等により防潮堤に外力が作用した際には、図1のように竪壁の海側面の近傍の鉄筋に引張応力が生じ、竪壁上部と竪壁中間部の間に位置する鉄筋の屈曲部には腹圧による力Fが発生する。そして、この力Fは、かぶりコンクリートを外側に押し出す方向に作用し、力Fが過大であると、かぶりコンクリートが剥落するおそれがある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、鉄筋コンクリート造の防潮堤竪壁において、かぶりコンクリートの剥落を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明は、鉄筋コンクリート造の防潮堤竪壁の配筋構造であって、前記防潮堤竪壁の竪壁本体に埋設された、該竪壁本体の高さ方向に延伸する、第1の鉄筋と、第2の鉄筋と、を備え、前記竪壁本体は、竪壁下部と、前記竪壁下部よりも薄い竪壁上部と、前記竪壁下部と前記竪壁上部との間に位置する、該竪壁下部から該竪壁上部にかけて厚さが漸減する竪壁中間部と、を有し、前記第1の鉄筋は、第1の下部直線部と、第1の中間直線部と、第1の上部直線部と、前記第1の下部直線部の上端および前記第1の中間直線部の下端を接続する第1の下部屈曲部と、前記第1の中間直線部の上端および前記第1の上部直線部の下端を接続する第1の上部屈曲部と、を有し、前記第2の鉄筋は、第2の下部直線部と、第2の中間直線部と、第2の上部直線部と、前記第2の下部直線部の上端および前記第2の中間直線部の下端を接続する第2の下部屈曲部と、前記第2の中間直線部の上端および前記第2の上部直線部の下端を接続する第2の上部屈曲部と、を有し、前記竪壁本体の厚さの1/2の位置を通る中心面を境界として分割された該竪壁本体の2つの領域のうち、第1の領域に、前記第1の下部屈曲部と前記第2の上部屈曲部が位置し、第2の領域に、前記第1の上部屈曲部と前記第2の下部屈曲部が位置し、前記竪壁本体の幅方向から見て、前記第1の中間直線部は、前記第2の中間直線部と交差していることを特徴としている。
【0009】
前記第1の中間直線部と交差し、少なくとも前記第2の上部直線部の埋設高さまで延伸するように埋設された第3の鉄筋と、前記第2の中間直線部と交差し、少なくとも前記第1の上部直線部の埋設高さまで延伸するように埋設された第4の鉄筋と、を有していてもよい。
【0010】
前記竪壁本体の厚さ方向に垂直な2つの外面のうち、第1の外面から一定の深さに、前記第1の下部直線部、前記第1の中間直線部、前記第3の鉄筋および前記第2の上部直線部のいずれかが埋設され、第2の外面から一定の深さに、前記第2の下部直線部、前記第2の中間直線部、前記第4の鉄筋および前記第1の上部直線部のいずれかが埋設されてもよい。
【0011】
前記竪壁本体を幅方向から見て、前記第1の中間直線部と前記第2の中間直線部の交差箇所が前記竪壁上部の内方に位置していてもよい。
【0012】
前記竪壁本体を幅方向から見て、前記第1の中間直線部と前記第2の中間直線部の交差箇所近傍に、前記第1の鉄筋、前記第2の鉄筋、前記第3の鉄筋および前記第4の鉄筋の周囲を取り囲む拘束鉄筋が埋設されてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、鉄筋コンクリート造の防潮堤竪壁において、かぶりコンクリートの剥落を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】防潮堤竪壁を幅方向から見た、従来の防潮堤竪壁の概略構成を示す模式図である。
図2】防潮堤竪壁を幅方向から見た、本発明の一実施形態に係る防潮堤竪壁を備えた防潮堤の概略構成を示す模式図である。
図3】防潮堤竪壁の海側面から見た、防潮堤竪壁の概略構成を示す模式図である。
図4図3中の第1~第4の鉄筋のA-A断面を示す図である。
図5図2の拡大図である。
図6】各鉄筋の形状例を示す図である。
図7】各鉄筋の形状例を示す図である。
図8】防潮堤竪壁を幅方向から見た、他の実施形態に係る防潮堤竪壁の概略構成を示す模式図である。
図9図8中の第1~第4の鉄筋のB-B断面を示す図である。
図10】拘束鉄筋の形状例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
図2は、防潮堤竪壁1を幅方向(X方向)から見た、本実施形態に係る防潮堤竪壁1を備えた防潮堤80の概略構成を示す模式図である。図3は、防潮堤竪壁1を厚さ方向(Y方向)から見た、防潮堤竪壁1の概略構成を示す模式図である。図4は、図3中の第1の鉄筋10~第4の鉄筋40のA-A断面を示す図である。図5は、図2の拡大図である。
【0017】
図2に示す防潮堤80は、地中に埋設された基礎部としての鋼管杭81と、鋼管杭81の上端部に固定されたフーチング82と、フーチング82の上部に固定された防潮堤竪壁1を備えている。
【0018】
本実施形態における防潮堤竪壁1は、プレキャスト鉄筋コンクリートであり、竪壁本体2と、竪壁本体2に埋設された第1の鉄筋10~第4の鉄筋40を有している。
【0019】
竪壁本体2は、互いに厚さ(部材厚)が異なる竪壁下部3と、竪壁上部4と、竪壁下部3と竪壁上部4の間に位置する竪壁中間部5を有している。これらの竪壁下部3、竪壁上部4および竪壁中間部5のうち、竪壁下部3の厚さが最も厚く、竪壁上部4の厚さが最も薄い。竪壁中間部5は、竪壁下部3から竪壁上部4にかけて厚さが漸減している。すなわち、竪壁中間部5は、竪壁下部3から竪壁上部4に向かって連続的に減厚する部分であり、竪壁本体2の高さ方向(Z方向)に垂直な断面の形状が高さ方向に沿って変化する断面変化部である。
【0020】
なお、本明細書においては、竪壁本体2の厚さ方向(Y方向)と交差する竪壁本体2の二つの外面のうち、図2中の左側に位置する第1の外面2aを海側面と称し、図2中の右側に位置する第2の外面2bを陸側面と称す。
【0021】
第1の鉄筋10~第4の鉄筋40は、それぞれ竪壁本体2の高さ方向(Z方向)に延伸している。図3または図4に示すように、第1の鉄筋10は、竪壁本体2の幅方向(X方向)に沿って間隔をおいて複数埋設されている。同様に、第2の鉄筋20~第4の鉄筋40についても、それぞれ竪壁本体2の幅方向に沿って間隔をおいて複数埋設されている。以下、第1の鉄筋10~第4の鉄筋40の形状や埋設位置等について説明する。
【0022】
図2に示すように、第1の鉄筋10は、第1の下部直線部11と、第1の上部直線部12と、第1の中間直線部13の3箇所の直線部と、第1の下部屈曲部14と、第1の上部屈曲部15の2箇所の屈曲部を有している。なお、図2において、第2の上部直線部22と第1の上部屈曲部15は、後述する第4の鉄筋40に対して紙面奥側に位置している。
【0023】
第1の下部直線部11は、竪壁下部3の海側面2aから一定の深さに埋設され、竪壁本体2の高さ方向(Z方向)に延伸している。第1の上部直線部12は、竪壁上部4の陸側面2bから一定の深さに埋設され、竪壁本体2の高さ方向に延伸している。第1の中間直線部13は、竪壁下部3の海側面2aから竪壁上部4の陸側面2bに向かって延伸するように傾斜している。第1の下部屈曲部14は、鉄筋が曲げ加工された部分であり、第1の下部直線部11の上端と第1の中間直線部13の下端を接続する。第1の上部屈曲部15は、鉄筋が曲げ加工された部分であり、第1の中間直線部13の上端と第1の上部直線部12の下端を接続する。
【0024】
第2の鉄筋20は、第2の下部直線部21と、第2の上部直線部22と、第2の中間直線部23の3箇所の直線部と、第2の下部屈曲部24と、第2の上部屈曲部25の2箇所の屈曲部を有している。
【0025】
第2の下部直線部21は、竪壁下部3の陸側面2bから一定の深さに埋設され、竪壁本体2の高さ方向(Z方向)に延伸している。第2の上部直線部22は、竪壁上部4の海側面2aから一定の深さに埋設され、竪壁本体2の高さ方向に延伸している。第2の中間直線部23は、竪壁下部3の陸側面2bから竪壁上部4の海側面2aに向かって延伸するように傾斜している。第2の下部屈曲部24は、鉄筋が曲げ加工された部分であり、第2の下部直線部21の上端と第2の中間直線部23の下端を接続する。第2の上部屈曲部25は、鉄筋が曲げ加工された部分であり、第2の中間直線部23の上端と第2の上部直線部22の下端を接続する。
【0026】
ここで、竪壁本体2の厚さの1/2の位置を通る面を中心面Cと定義する。なお、“竪壁本体2の厚さの1/2の位置を通る面”とは、竪壁本体2の下端から上端までを高さ方向(Z方向)に垂直に切断した際に各断面における厚さが1/2の位置を全て通る面である。このような中心面Cを境界として分割された竪壁本体2の2つの領域のうち、海側面2aが存在する側の第1の領域を海側領域R1と称し、陸側面2bが存在する側の第2の領域を陸側領域R2と称す。
【0027】
第1の中間直線部13は、上記中心面Cを跨るように傾斜して延伸しており、第1の下部屈曲部14は海側領域R1に位置し、第1の上部屈曲部15は陸側領域R2に位置している。また、第2の中間直線部23は、上記中心面Cを跨るように傾斜して延伸しており、第2の下部屈曲部24は陸側領域R2に位置し、第2の上部屈曲部25は海側領域R1に位置している。このように、第1の鉄筋10の各屈曲部が中心面Cを境界とした別々の領域に位置すると共に、第2の鉄筋20の各屈曲部が中心面Cを境界とした別々の領域に位置しているため、竪壁本体2の幅方向から見て、第1の鉄筋10と第2の鉄筋20は交差している。
【0028】
本実施形態においては、第1の中間直線部13と第2の中間直線部23の交差箇所Pは竪壁上部4の内方に位置している。なお、後述する腹圧によるかぶりコンクリートの剥落を抑制する観点においては、交差箇所Pは竪壁上部4の内方に位置していることに限定されず、例えば竪壁中間部5の内方に位置していてもよい。
【0029】
第3の鉄筋30は、竪壁下部3から竪壁上部4に向かって直線状に延伸し、竪壁下部3と竪壁上部4に対して平行に埋設されている。また、第3の鉄筋30は、竪壁本体2の厚さ方向(Y方向)における埋設位置が、第2の鉄筋20の第2の上部直線部22と同一の位置であって、竪壁本体2の幅方向(X方向)から見たときに第3の鉄筋30と第2の上部直線部22は互いに重なっている。このように埋設された第3の鉄筋30は、第1の中間直線部13と第2の中間直線部23の交差箇所Pの近傍において、当該交差箇所Pと竪壁本体2の海側面2aの間に位置している。
【0030】
第4の鉄筋40は、竪壁下部3から竪壁上部4に向かって直線状に延伸し、竪壁下部3と竪壁上部4に対して平行に埋設されている。また、第4の鉄筋40は、竪壁本体2の厚さ方向(Y方向)における埋設位置が、第1の鉄筋10の第1の上部直線部12と同一の位置であって、竪壁本体2の幅方向(X方向)から見たときに第4の鉄筋40と第1の上部直線部12は互いに重なっている。このように埋設された第4の鉄筋40は、第1の中間直線部13と第2の中間直線部23の交差箇所Pの近傍において、当該交差箇所Pと竪壁本体2の陸側面2bの間に位置している。
【0031】
図4に示すように、第3の鉄筋30と第4の鉄筋40の各々は、竪壁本体2の幅方向(X方向)において第1の鉄筋10と第2の鉄筋20の間に挟まれて配置され、第1の鉄筋10および第2の鉄筋20に接するように埋設されている。なお、第3の鉄筋30と第4の鉄筋40は、竪壁本体2の幅方向(X方向)において、第1の鉄筋10と第2の鉄筋20の間に挟まれてなくてもよく、第1の鉄筋10~第4の鉄筋40のX方向における配置順は特に限定されない。
【0032】
図2に示すように、竪壁本体2の下面から第1の鉄筋10と第2の鉄筋20が突出している。このため、防潮堤80の構築時においては、それらの突出した第1の鉄筋10と第2の鉄筋20が、フーチング82の上部に形成された、鉄筋を受容するスリーブ83に挿入されることによってフーチング82の上部に防潮堤竪壁1が固定される。本実施形態のような、竪壁本体2の下面から鉄筋が突出したプレキャスト鉄筋コンクリートの防潮堤竪壁1を用いることで、現場での防潮堤80の構築を容易に行うことができる。なお、竪壁本体2の下面から突出する鉄筋は、第1の鉄筋10~第4の鉄筋40の少なくともいずれかの鉄筋であればよい。
【0033】
また、防潮堤竪壁1とフーチング82が一つのプレキャストコンクリートで構成されてもよい。また、各鉄筋の上端部と下端部の一方または両方の端部においては、コンクリートとの定着効果を高めるために、例えばL字状のフック形状に加工されていてもよい。
【0034】
本実施形態における防潮堤竪壁1を備えた防潮堤80は以上のように構成されている。この防潮堤80に津波等によって外力が作用した際には、竪壁本体2の前述の中心面Cが中立面となって竪壁本体2の海側領域R1に引張応力が生じ、陸側領域R2に圧縮応力が生じる。このため、竪壁本体2の海側領域R1に埋設された鉄筋には引張応力が生じ、竪壁本体2の陸側領域R2に埋設された鉄筋には圧縮応力が生じる。
【0035】
このとき、第1の鉄筋10は、第1の下部直線部11が海側領域R1に位置しているため、第1の下部直線部11には引張応力が生じる。一方、第1の中間直線部13においては、第1の下部屈曲部14が海側領域R1に位置しているために第1の下部屈曲部14の近傍の第1の中間直線部13では引張応力が生じるが、第1の上部屈曲部15は陸側領域R2に位置していることから、第1の上部屈曲部15の近傍の第1の中間直線部13には圧縮応力が生じる。このため、第1の鉄筋10においては、第1の下部屈曲部14に引張応力による腹圧が生じるが、腹圧によって生じる力Fは、中心面C側に向かう方向の力であり、かぶりコンクリートを外側に押し出す方向への力ではない。
【0036】
また、第2の鉄筋20においては、陸側領域R2に位置する、第2の上部直線部22と、第2の上部屈曲部25の近傍の第2の中間直線部23に引張応力が作用することになる。このため、第2の鉄筋20においては、第2の上部屈曲部25に引張応力による腹圧が生じるが、腹圧によって生じる力Fは、中心面C側に向かう方向の力であり、かぶりコンクリートを外側に押し出す方向への力ではない。
【0037】
したがって、本実施形態に係る防潮堤竪壁1の配筋構造によれば、防潮堤80に津波等による外力が作用しても、かぶりコンクリートを押し出す方向への腹圧は生じないことから、かぶりコンクリートの剥落を抑制することが可能となる。
【0038】
なお、防潮堤80の強度を向上させる観点では、竪壁本体2に生じる応力を受けるための鉄筋が高さ方向(Z方向)に連続していることが好ましい。本実施形態の場合、竪壁下部3から竪壁中間部5にかけて一定の深さで第1の下部直線部11と第1の中間直線部13が埋設されているが、竪壁上部4においては第1の中間直線部13が海側面2aから離れる方向に延伸しているため、第1の鉄筋10には、竪壁本体2の海側領域R1に作用する引張応力を受けることができない部分がある。しかしながら、本実施形態における配筋構造の場合、第1の鉄筋10で受けることができない引張応力を受ける鉄筋として第3の鉄筋30と、第2の鉄筋20の第2の上部直線部22がある。
【0039】
すなわち、本実施形態に係る防潮堤竪壁1においては、竪壁本体2の海側面2aから一定の深さに、第1の下部直線部11、第1の中間直線部13、第3の鉄筋30、第2の上部直線部22のいずれかが埋設されており、防潮堤竪壁1が補強された状態にある。同様に、竪壁本体2の陸側面2bから一定の深さには、第2の下部直線部21、第2の中間直線部23、第4の鉄筋40、第1の上部直線部12のいずれかが埋設されており、防潮堤竪壁1が補強された状態にある。第3の鉄筋30と第4の鉄筋40を設けることは必須ではないが、上記のように防潮堤竪壁1を補強して防潮堤80の強度を向上させる観点からは、第3の鉄筋30と第4の鉄筋40を設けることが好ましい。
【0040】
また、本実施形態では第3の鉄筋30と第4の鉄筋40が竪壁本体2の上端近傍まで延伸しているが、図6に示すように、第1の上部直線部12と第2の上部直線部22が竪壁本体2の上端近傍まで延伸していてもよい。この場合、竪壁本体2の高さ方向(Z方向)に連続して鉄筋を埋設するという観点では第3の鉄筋30と第4の鉄筋40が上端近傍まで延伸していなくてもよい。すなわち、竪壁本体2の高さ方向に連続して鉄筋を埋設するという観点では、第3の鉄筋30が、第1の中間直線部13と交差し、少なくとも第2の上部直線部22の埋設高さまで延伸し、第4の鉄筋40が、第2の中間直線部23と交差し、少なくとも第1の上部直線部12の埋設高さまで延伸しているとよい。したがって、例えば図7に示すように、第1の鉄筋10と第2の鉄筋20が竪壁上部4の上端近傍まで延伸している場合には、第3の鉄筋30と第4の鉄筋40は交差箇所Pの近傍にのみ埋設されていてもよい。この場合、第3の鉄筋30と第4の鉄筋40は、それぞれ竪壁上部4と竪壁中間部5のコンクリートに定着されている。
【0041】
また、本実施形態では、竪壁本体2の海側面2aから一定の深さに第1の下部直線部11、第1の中間直線部13、第3の鉄筋30および第2の上部直線部22が埋設され、竪壁本体2の陸側面2bから一定の深さに第2の下部直線部21、第2の中間直線部23、第4の鉄筋40および第2の上部直線部22が埋設されていたが、各面2a、2bからの深さは一定でなくてもよい。
【0042】
図8および図9に示すように、防潮堤竪壁1においては、第1の鉄筋10~第4の鉄筋40の周囲を取り囲む拘束鉄筋50が設けられてもよい。図9に示すように、拘束鉄筋50はコ字状に曲げ加工されており、1本の第1の鉄筋10~第4の鉄筋40に対して1本の拘束鉄筋50が設けられている。また、図8に示す例では、拘束鉄筋50は竪壁本体2の高さ方向(Z方向)に複数設けられており、交差箇所Pの近傍で第1の中間直線部13、第2の中間直線部23、第3の鉄筋30および第4の鉄筋40の周囲を取り囲む拘束鉄筋50や、交差箇所Pよりも上方において、第1の上部直線部12、第2の上部直線部22、第3の鉄筋30および第4の鉄筋40の周囲を取り囲む拘束鉄筋50が存在する。
【0043】
拘束鉄筋50が設けられることで、コンクリートによって固められた拘束鉄筋50の内側にある第1の鉄筋10~第4の鉄筋40が一体構造物のように強固なものとなり、防潮堤80の強度を向上させることができる。なお、拘束鉄筋50の数や配置は、要求される防潮堤80の強度や各鉄筋の形状等に応じて適宜定められるが、防潮堤80の強度を効果的に向上させる観点からは、少なくとも第1の鉄筋10と第2の鉄筋20の交差箇所Pの近傍に設けられることが好ましい。
【0044】
また例えば、拘束鉄筋50は、図10のような矩形状に曲げ加工された形状であってもよく、竪壁本体2の幅方向(X方向)に間隔をおいて配置された複数の第1の鉄筋10~第4の鉄筋40を1本の拘束鉄筋50で取り囲むようにしてもよい。
【0045】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、防潮堤に適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 防潮堤竪壁
2 竪壁本体
2a 海側面(第1の外面)
2b 陸側面(第2の外面)
3 竪壁下部
4 竪壁上部
5 竪壁中間部
10 第1の鉄筋
11 第1の下部直線部
12 第1の上部直線部
13 第1の中間直線部
14 第1の下部屈曲部
15 第1の上部屈曲部
20 第2の鉄筋
21 第2の下部直線部
22 第2の上部直線部
23 第2の中間直線部
24 第2の下部屈曲部
25 第2の上部屈曲部
30 第3の鉄筋
40 第4の鉄筋
50 拘束鉄筋
80 防潮堤
81 鋼管杭
82 フーチング
83 スリーブ
C 中心面
F 腹圧による力
P 交差箇所
1 海側領域(第1の領域)
2 陸側領域(第2の領域)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10