(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118747
(43)【公開日】2022-08-16
(54)【発明の名称】ダイホルダ反転用治具及びこれを用いたダイホルダの反転方法
(51)【国際特許分類】
B21D 37/04 20060101AFI20220808BHJP
B29C 33/30 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
B21D37/04 T
B29C33/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021015419
(22)【出願日】2021-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】520446986
【氏名又は名称】楠精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 将輝
【テーマコード(参考)】
4E050
4F202
【Fターム(参考)】
4E050CB03
4E050CD01
4E050CD03
4E050CD04
4F202CA30
4F202CB01
4F202CR01
(57)【要約】
【課題】重量物であるダイホルダを簡便かつ安全に反転させることができるダイホルダ反転用治具及びこれを用いたダイホルダの反転方法を提供する。
【解決手段】本発明のダイホルダ反転用治具10は、略円弧状の下面12を持つ本体11の上側に、ダイホルダ50の側面を挿入できる凹部13と、本体11をダイホルダ50に着脱可能に固定する固定手段とを設けたものである。ダイホルダ反転用治具10をダイホルダ50の一方の側面に複数個取り付け、ダイホルダ反転用治具10の下面12を床面に接地させた状態のままダイホルダ50を吊り上げ、ダイホルダ反転用治具10を中心としてダイホルダを滑らかに反転させることができる。本体に補助板を取り付けることもできる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円弧状の下面を持つ本体の上側に、ダイホルダの側面を挿入できる凹部と、本体をダイホルダに着脱可能に固定する固定手段とを設けたことを特徴とするダイホルダ反転用治具。
【請求項2】
前記固定手段が、本体の片側に形成されたダイホルダの側面角部に当接する受け部と、本体の反対側に形成されたねじ式固定部とからなることを特徴とする請求項1に記載のダイホルダ反転用治具。
【請求項3】
前記本体の側面に、略円弧状の下面を持つ補助板を取付け、前記本体に対する補助板の取付け位置を変更可能としたことを特徴とする請求項1に記載のダイホルダ反転用治具。
【請求項4】
請求項1~3の何れかに記載のダイホルダ反転用治具をダイホルダの一方の側面に複数個取り付け、ダイホルダ反転用治具の下面を床面に接地させた状態のままダイホルダを吊り上げ、ダイホルダ反転用治具を中心としてダイホルダを反転させることを特徴とするダイホルダの反転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス成形機や射出成型機などの金型を取付けるダイホルダを反転させる際に用いられる、ダイホルダ反転用治具及びこれを用いたダイホルダの反転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ダイホルダはプレス成形機などの金型を取付けるために用いられる盤状の構造物であり、大型のものではその重量が数トンから十数トンに達する重量物である。
【0003】
プレス成形機などの上型は上側のダイホルダの下面に取付けられるため、上型を交換する際には成形機からダイホルダを取外して上下を反転させ、新しい上型を取付けたうえで再び上下を反転させ、成形機にセットする作業が行われる。この反転作業はダイホルダの側面にフックを掛けてホイストやクレーンで吊り上げながら行われる。しかし前記したようにダイホルダは重量物であるから、この作業は危険作業である。
【0004】
そこで従来から、特許文献1に示されたようなダイホルダのための反転装置が用いられて来た。この特許文献1の反転装置は、門型フレームの両側に昇降フレームを設け、これらの昇降フレームの間に枠型の反転フレームを支持させ、ダイホルダの両側面を反転フレームに固定したうえでボールねじによってダイホルダを上昇させたうえ、空中で反転フレームとともに反転させる装置である。
【0005】
しかしこの装置は大型で据え置き型の装置であるため、大型のプレスマシンの近傍に専用機として設置するには適しているが、様々なサイズのダイホルダを簡便に反転させる場合には不向きであった。またダイホルダを反転装置まで搬送して反転フレームに取付ける必要があるため、多くの作業時間を要するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、重量物であるダイホルダを簡便かつ安全に反転させることができるダイホルダ反転用治具及びこれを用いたダイホルダの反転方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するためになされた本発明のダイホルダ反転用治具は、略円弧状の下面を持つ本体の上側に、ダイホルダの側面を挿入できる凹部と、本体をダイホルダに着脱可能に固定する固定手段とを設けたことを特徴とするものである。
【0009】
なお、前記固定手段が、本体の片側に形成されたダイホルダの側面角部に当接する受け部と、本体の反対側に形成されたねじ式固定部とからなることが好ましい。また、前記本体の側面に、略円弧状の下面を持つ補助板を取付け、前記本体に対する補助板の取付け位置を変更可能とすることができる。
【0010】
また本発明のダイホルダの反転方法は、上記のダイホルダ反転用治具をダイホルダの一方の側面に複数個取り付け、ダイホルダ反転用治具の下面を床面に接地させた状態のままダイホルダを吊り上げ、ダイホルダ反転用治具を中心としてダイホルダを反転させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ダイホルダ反転用治具をダイホルダの一方の側面に固定手段により固定し、ダイホルダ反転用治具の下面を床面に接地させた状態のままダイホルダを吊り上げることにより、反転用治具の略円弧状の下面を中心として転動させながら、ダイホルダをスムーズかつ安全に反転させることができる。この反転用治具は人手により持ち運びできるので取扱いが便利である。また、固定手段をねじ式固定部を備えた構造としておけば、厚さが異なるダイホルダにも対応できるので、便利である。さらに、本体の側面に略円弧状の下面を持つ補助板を取付けた構造とすれば、本体に対する補助板の取付け位置を変更することによって、接地点である支点の位置を変更することができ、ダイホルダを左右何れの方向にも安全に倒すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態のダイホルダ反転用治具の正面図である。
【
図2】実施形態のダイホルダ反転用治具の右側面図である。
【
図3】ダイホルダ反転用治具をダイホルダに装着した状態の正面図である。
【
図4】ダイホルダ反転用治具をダイホルダに装着した状態の側面図である。
【
図6】他の実施形態の本体の正面図と側面図である。
【
図7】他の実施形態の補助板の正面図と側面図である。
【
図8】他の実施形態のダイホルダ反転用治具をダイホルダに装着した状態の正面図である。
【
図9】他の実施形態のダイホルダ反転用治具を本体の反対側に装着した状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1は実施形態のダイホルダ反転用治具10の正面図、
図2はその右側面図である。
【0014】
ダイホルダ反転用治具10は、平板状の本体11を備えている。
図1に示すように、この本体11は略円弧状の下面12を持ち、本体11の上側には、ダイホルダの側面を挿入できる凹部13が形成されている。本地11はダイホルダの重量に耐える厚みと強度を持つ鋼板製とすることが好ましい。凹部13は水平な底片14と、その左右の垂直辺15,16を備えた長方形状であり、
図3に示すようにダイホルダ50の側面を挿入できる横幅を持つものである。なお、下面12の形状は完全な円弧である必要はなく、楕円などの円弧に近い形状であってもよい。
【0015】
本体11の垂直辺15側の端部には、ダイホルダ50の側面角部に当接する受け部17が形成されている。また垂直辺16側の端部にも同様の立上げ部18が形成されている。この立上げ部18の表裏両側には、
図2に示すように、垂直辺16と面一となるように突片19が溶接されている。これらの突片19にはタップ穴20が形成されており、
図3に示すように、ボルトを捩じ込むことができるねじ式固定部22となっている。このように、受け部17とねじ式固定部22とによって、固定手段が形成されている。
【0016】
このような構造としたので、受け部17にダイホルダ50の側面角部を当接させた状態でタップ穴20にボルトを捩じ込み、ボルトの先端をダイホルダ50の反対側の側面角部に強く押し当てることにより、ダイホルダ反転用治具10をダイホルダ50の一方の側面に固定することができる。このダイホルダ反転用治具10は、受け部17に挿入できる幅を持つダイホルダ50であれば、各種のダイホルダ50に容易に取付けることが可能であり、また反転作業中に外れることもない。
【0017】
図4は、ダイホルダ50の2か所にダイホルダ反転用治具10を取付けた状態を示す図である。ダイホルダ50の重量に応じて、ダイホルダ反転用治具10を増加することができる。ダイホルダ50の他の側面には複数のフック受け51が形成されており、この実施形態では上下左右に全部で4個のフック受け51が設けられている。
【0018】
次に、上記のダイホルダ反転用治具10を用いてダイホルダ50を反転させる方法を説明する。先ず
図5の(A)に示すように、ダイホルダ50のフック受け51にホイスト等のワイヤ40の下端のフック41を引っ掛けて吊り上げ、ダイホルダ反転用治具10の略円弧状の下面12が床面に接地した状態とする。略円弧状の下面12としたことにより、下面12の一か所に荷重が集中することがないので、床面の損傷を避けることができる。
【0019】
このときダイホルダ50の重心が接地点を通る鉛直線よりも反転させたい側(
図5では右側)にあれば、ダイホルダ50に時計方向の回転モーメントが作用するので、ワイヤ40を
図5の(B)のように緩めれば、ダイホルダ50は反転用治具10の略円弧状の下面12を中心として転動しながら滑らかに回転し、
図5の(C)に示すように安全に反転させることができる。またダイホルダ50の重心が接地点を通る鉛直線の反対側にある場合には、人手によってダイホルダ50の上部を押せば、ダイホルダ50は反転用治具10の略円弧状の下面12を中心として容易に転動し、反転させたい側に重心を移動させることができる。
【0020】
このように本発明によれば、重量物であるダイホルダ50をスムーズに、かつ安全に反転させることができる。またねじ式固定部22を緩めることにより、ダイホルダ反転用治具10を容易に着脱して持ち運ぶことができるので、従来の据え置き式の反転装置とは異なり、様々なダイホルダ50の反転を簡便に行うことができる。
【0021】
次に、他の実施形態のダイホルダ反転用治具を説明する。
図6は他の実施形態のダイホルダ反転用治具の本体30を示し、
図7は補助板31を示す。本体30の基本構造は前記の実施形態と同様であるが、複数のボルト孔32が左右方向に一定ピッチで形成され、またその中央部に位置決め用突起33が形成されている。
【0022】
補助板31は
図7に示すように略円弧状の下面34を持ち、上部にボルト孔35が左右方向に一定ピッチで形成されている。そのピッチは本体30のボルト孔32のピッチと同一である。また上面には、本体30の位置決め用突起33を受けることができる凹部36が、上記したピッチと同一ピッチで形成されている。このため、補助板31は本体30に対する取付位置を上記のピッチ単位で変更することができる。
【0023】
補助板31の略円弧状の下面34の曲率半径は、本体30の下面の曲率半径よりも大きくなっている。また、補助板31は本体30に取付けたときに本体30の下方に突出するように、下面34からボルト孔35までの距離が定められている。
【0024】
図8に本体30の右寄りの位置に補助板31を取付けた状態を示し、
図9に本体30の左寄りの位置に補助板31を取付けた状態を示す。
図8ではダイホルダ50の重心Wが補助板31の下端の接地点Pよりも左側にあるので反時計方向の回転モーメントが生じ、
図9では逆にダイホルダ50の重心Wが補助板31の下端の接地点Pよりも右側にあるので時計方向の回転モーメントが生じる。このように補助板31の取付け位置を変えることによって、ダイホルダ50が自然に倒れようとする方向を変えることができる。
【0025】
図10に、他の実施形態のダイホルダ反転用治具を用いたダイホルダ50の反転方法を示す。(A)に示す状態からワイヤ40を引き上げ、(C)の直立状態となると、上記した時計方向の回転モーメントによってダイホルダ50は(D)のように傾き、(E)のように反転させることができる。このため、ホイストクレーンによってワイヤ40を横に引っ張る操作が不要となり、
図5に示す反転方法よりも安全性をさらに高めることができる。(E)の状態から(A)の状態に反転させる際には、補助板31の取付け位置を変更することにより、反時計方向の回転モーメントを発生させることができる。
【0026】
このように、本発明のダイホルダ反転用治具を用いることにより、重量物であるダイホルダ50を安全に反転させることができる。また本発明のダイホルダ反転用治具は持ち運びが可能であり、任意の場所でダイホルダ50を反転させることができる。
【符号の説明】
【0027】
10 ダイホルダ反転用治具
11 本体
12 略円弧状の下面
13 凹部
14 底片
15 垂直辺
16 垂直辺
17 受け部
18 立上げ部
19 突片
20 タップ
22 ねじ式固定部
30 本体
31 補助板
32 ボルト孔
33 位置決め用突起
34 下面
35 ボルト孔
36 凹部
40 ワイヤ
41 フック
50 ダイホルダ
51 フック受け
P 接地点
W 重心