(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118756
(43)【公開日】2022-08-16
(54)【発明の名称】直噴エンジン用高圧燃料デリバリパイプアセンブリ
(51)【国際特許分類】
F02M 55/02 20060101AFI20220808BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
F02M55/02 330B
F02M55/02 360Z
F02M37/00 321A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021015439
(22)【出願日】2021-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000113942
【氏名又は名称】マルヤス工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155099
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100147625
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】村上 寛樹
(72)【発明者】
【氏名】中川 貴登
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066AA02
3G066AB02
3G066AD05
3G066BA30
3G066CB05
3G066CB19
3G066CD03
(57)【要約】
【課題】噴射弁ソケットのメインパイプに対する固着面積を過剰に広くすることなく、メインパイプと噴射弁ソケットの固着部分の応力を低減させる。
【解決手段】直噴エンジン用高圧燃料デリバリパイプアセンブリ10は、燃料通路11aが内部に形成されたメインパイプ11と、燃料噴射弁Iが液密に挿入される複数の噴射弁ソケット21と、複数の噴射弁ソケット21の各々に隣接する位置に設けられた複数の取付ボス22とを備え、噴射弁ソケット21は隣接する位置に配置された取付ボス22と一体的にソケットユニット20として形成され、ソケットユニット20は、噴射弁ソケット21と取付ボス22とが配置される位置でメインパイプ11の周面に固着される固着面部23と、固着面部23のメインパイプ11の長手方向の端部の少なくとも一方にてメインパイプ11の長手方向の外側に板状に突出してメインパイプ11の外周面に固着される突出板部24とを備えた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧燃料ポンプから加圧された燃料が供給される燃料通路が内部に形成されたメインパイプと、
燃料噴射弁が液密に挿入される噴射弁挿入穴を有して、前記メインパイプの長手方向に沿って所定の間隔を介して並べた位置に配設された複数の噴射弁ソケットと、
前記複数の噴射弁ソケットの前記メインパイプの長手方向の各々に隣接する位置に設けられて、前記メインパイプをエンジンに取り付けるための取付ボルトを挿通するためのボルト挿通孔を有した複数の取付ボスとを備えた直噴エンジン用高圧燃料デリバリパイプアセンブリであって、
前記噴射弁ソケットは隣接する位置に配置された前記取付ボスと一体的にソケットユニットとして形成され、
前記ソケットユニットは、前記噴射弁ソケットと前記取付ボスとが配置される位置で前記メインパイプの周面に固着される固着面部と、前記固着面部の前記メインパイプの長手方向の端部の少なくとも一方にて前記長手方向の外側に板状に突出して前記メインパイプの外周面に固着される突出板部とを備えたことを特徴とする直噴エンジン用高圧燃料デリバリパイプアセンブリ。
【請求項2】
請求項1に記載の直噴エンジン用高圧燃料デリバリパイプアセンブリにおいて、
前記突出板部には前記固着面部との間の端部に前記固着面部に近づくに従って徐々に立ち上がる曲面部が形成されたことを特徴とする直噴エンジン用高圧燃料デリバリパイプアセンブリ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の直噴エンジン用高圧燃料デリバリパイプアセンブリにおいて、
前記ソケットユニットは前記固着面部と前記突出板部とが一体的に形成された補強板を備え、前記噴射弁ソケットと前記取付ボスは前記補強板を介して前記メインパイプに固着されたことを特徴とする直噴エンジン用高圧燃料デリバリパイプアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多気筒エンジンの燃焼室内に高圧の燃料を直接噴射する場合に使用する直噴エンジン用高圧燃料デリバリパイプアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には多気筒エンジンの燃焼室内に高圧の燃料を直接噴射する場合に使用する直噴エンジン用高圧燃料デリバリパイプアセンブリの発明が開示されている。特許文献1の直噴エンジン用高圧燃料デリバリパイプアセンブリは、高圧燃料ポンプから加圧された燃料が供給される燃料通路が内部に形成されたメインパイプと、このメインパイプに一体的に固着されて燃料噴射弁が液密に挿入される噴射弁挿入穴を有する4つの噴射弁ソケットと、メインパイプに一体的に固着されてメインパイプをエンジンに取り付けるためのボルト挿通孔を有した4つの筒形をした取付ボスとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の直噴エンジン用高圧燃料デリバリパイプアセンブリにおいては、燃料の噴射圧力をさらに高くすることが求められている。燃料の噴射圧力を高くするときには、メインパイプと噴射弁ソケットとの固着部分の強度をさらに高くする必要があり、例えば、
図11及び
図12に示したように、噴射弁ソケット101のメインパイプ100に対する固着面積を広くするとともに、噴射弁ソケット101のメインパイプ100に対する固着部分の周囲の肉厚を厚くすることで、メインパイプ100と噴射弁ソケット101との固着部分の強度をさらに高くすることができる。しかし、噴射弁ソケット101のメインパイプ100に対する固着面積を広くするとともに周囲の肉厚を厚くすると、噴射弁ソケット101の重量が重くなりすぎることがある。また、たとえ、噴射弁ソケット101のメインパイプ100に対する固着面積を広くしても、メインパイプ100と噴射弁ソケット101との固着部分の強度を充分に高くすることができないことがある。本発明は、噴射弁ソケットのメインパイプに対する固着面積を過剰に広くすることなく、メインパイプと噴射弁ソケットの固着部分の応力を低減させることができる直噴エンジン用高圧燃料デリバリパイプアセンブリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、高圧燃料ポンプから加圧された燃料が供給される燃料通路が内部に形成されたメインパイプと、燃料噴射弁が液密に挿入される噴射弁挿入穴を有してメインパイプの長手方向に沿って所定の間隔を介して並べた位置で配設された複数の噴射弁ソケットと、複数の噴射弁ソケットのメインパイプの長手方向の各々に隣接する位置に設けられてメインパイプをエンジンに取り付けるための取付ボルトを挿通するためのボルト挿通孔を有した複数の取付ボスとを備えた直噴エンジン用高圧燃料デリバリパイプアセンブリであって、ソケットユニットは、噴射弁ソケットと取付ボスとが配置される位置でメインパイプの周面に固着される固着面部と、固着面部のメインパイプの長手方向の端部の少なくとも一方にて該長手方向の外側に板状に突出してメインパイプの外周面に固着される突出板部とを備えたことを特徴とする直噴エンジン用高圧燃料デリバリパイプアセンブリを提供するものである。
【0006】
この種の直噴エンジン用高圧燃料デリバリパイプアセンブリにおいては、噴射弁ソケットと取付ボスとをソケットユニットとして一体的に形成し、ソケットユニットのメインパイプの長手方向の端部に厚みのあるブロック形状で該長手方向に延出させるよう補強してメインパイプに固着させたときには、ソケットユニットのメインパイプに対する固着強度を高くすることができるが、噴射弁ソケットに燃料噴射弁から燃料を噴射させたときに生じる軸方向上向きの反力が加わったときに、ブロック形状に延出させたブロック形部が変形しにくくなっているので、メインパイプにおけるブロック形部が固着された部分に大きな応力が生じることになる。これに対し、本発明の直噴エンジン用高圧燃料デリバリパイプアセンブリにおいては、ソケットユニットは、噴射弁ソケットと取付ボスとが配置される位置でメインパイプの周面に固着される固着面部と、固着面部のメインパイプの長手方向の端部の少なくとも一方にて該長手方向の外側に板状に突出してメインパイプの外周面に固着される突出板部とを備えたので、ソケットユニットのメインパイプに対する固着強度を高くすることができるとともに、噴射弁ソケットに燃料噴射弁から燃料を噴射させたときに生じる軸方向上向きの反力が加わっても、突出板部はある程度の変形を受容されるため、メインパイプの突出板部が固着された部分に大きな応力が生じにくくなる。
【0007】
上記のように構成した直噴エンジン用高圧燃料デリバリパイプアセンブリにおいては、突出板部には固着面部との間の端部に固着面部に近づくに従って徐々に立ち上がる曲面部が形成されるのが好ましい。噴射弁ソケットに燃料噴射弁から燃料を噴射させたときに生じる軸方向の反力が加わったときに、固着面部と突出板部との間に大きな応力が生じやすいが、突出板部には固着面部との間の端部に固着面部に近づくに従って徐々に立ち上がる曲面部が形成されているので、固着面部と突出板部との間に生じる応力を低減させることができる。
【0008】
上記のように構成した直噴エンジン用高圧燃料デリバリパイプアセンブリにおいては、
ソケットユニットは固着面部と突出板部とが一体的に形成された補強板を備え、噴射弁ソケットと取付ボスは補強板を介してメインパイプに固着されるのが好ましい。このようにしたときには、突出板部は補強板として固着面部の長手方向の端部に一体的に形成されているので、ソケットユニットに突出板部を突出して設ける加工作業の手間を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態の直噴エンジン用高圧燃料デリバリパイプアセンブリの斜視図である。
【
図6】第2実施形態の直噴エンジン用高圧燃料デリバリパイプアセンブリの斜視図である。
【
図11】従来の直噴エンジン用高圧燃料デリバリパイプアセンブリの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、添付図面により、本発明による直噴エンジン用高圧燃料デリバリパイプアセンブリの各実施形態の説明をする。
(第1実施形態)
第1実施形態の直噴エンジン用高圧燃料デリバリパイプアセンブリ10は直列4気筒の直噴型エンジンに用いられるものであり、
図1及び
図2に示すように、両端が密栓プラグ12により閉じられた1本のメインパイプ11と、このメインパイプ11に所定の間隔を介して並べた位置で配設された4つ(複数)の噴射弁ソケット21と、メインパイプ11をエンジンに取り付けるための4つ(複数)の取付ボス22と、メインパイプ11の長手方向の端部に固定したジョイント部材13と、メインパイプ11の長手方向の略中央部に固定したセンサ取付部材14とを備えている。これらの各部材は全体が一体となるようにろう付けにより固着され、固着後に必要に応じて鍍金等の表面処理がされている。
【0011】
メインパイプ11は鋼材等の金属材よりなり、直線状に延びる真直管材を所定の長さに切断したものであり、
図3~
図5に示したように、メインパイプ11の内部には長手方向に延びる燃料通路11aが形成されている。
図3及び
図4に示したように、メインパイプ11の周面にはエンジンに差し込んで固定した燃料噴射弁I(燃料噴射弁Iは
図2にのみ示した)と同じ数(この実施形態では4つ)の連通孔11bが形成されており、これらの連通孔11bはメインパイプ11の長手方向にてエンジンに差し込んで固定した燃料噴射弁Iの間隔と同じ間隔となっている。これらの連通孔11bは、後述する噴射弁ソケット21に形成した連通孔21bとともにメインパイプ11の燃料通路11aと噴射弁ソケット21の噴射弁挿入穴21aの内部空間とを連通している。ジョイント部材13には高圧燃料ポンプから加圧された燃料が供給される燃料供給管(図示省略)がユニオンナット(図示省略)により締め付け固定され、メインパイプ11内の燃料通路11aには高圧燃料ポンプからの加圧された燃料が供給される。また、センサ取付部材14には燃圧センサ(図示省略)が取り付けられ、燃圧センサによって燃料通路11aの燃料圧力が検出される。
【0012】
図1及び
図2に示したように、メインパイプ11の周面には噴射弁ソケット21と取付ボス22とが一体的に形成された4つのソケットユニット20が固着されており、ソケットユニット20は燃料噴射弁Iに対応した数で配設されている。ソケットユニット20は鉄の鍛造品として噴射弁ソケット21と取付ボス22とを一体的に備え、噴射弁ソケット21と取付ボス22とが配置される位置でメインパイプ11の周面に固着される固着面部23と、固着面部23のメインパイプ11の長手方向の端部の一方または両方(少なくとも一方)にてメインパイプ11の長手方向の外側に板状に突出してメインパイプ11の外周面に固着される突出板部24とを一体的に備えている。各ソケットユニット20の噴射弁ソケット21はメインパイプ11の連通孔11bとが形成された位置となるように配置された状態で、固着面部23と突出板部24とはメインパイプ11の周面に固着されている。
【0013】
図3に示したように、噴射弁ソケット21には燃料噴射弁Iが液密に挿入される噴射弁挿入穴21aが形成されており、噴射弁挿入穴21aには燃料噴射弁Iが液密に挿入される。固着面部23及び噴射弁ソケット21には噴射弁挿入穴21aに向けて延びる連通孔21bが形成されており、連通孔21bはメインパイプ11の連通孔11bとともにメインパイプ11の燃料通路11aと噴射弁ソケット21の噴射弁挿入穴21aとを連通させている。
【0014】
図1、
図2及び
図4に示したように、取付ボス22は、メインパイプ11をエンジンに取り付けるためのものであり、各々の噴射弁ソケット21の側面下部に一体的に設けられている。取付ボス22は噴射弁ソケット21のメインパイプ11における長手方向(軸方向)に隣接する位置として当該長手方向の側面に一体的に設けられ、取付ボルトを上側から挿通するためのボルト挿通孔22aが鉛直方向に形成される略円筒形状をしている。取付ボス22と噴射弁ソケット21の側面との間には斜材部22bが設けられており、斜材部22bは燃料噴射弁Iから燃料を噴射させて噴射弁ソケット21に軸方向上向きの反力が加わったときに噴射弁ソケット21が取付ボス22側に傾くのを抑制する機能を有している
【0015】
図1、
図2及び
図4に示したように、固着面部23は、メインパイプ11の長手方向にて噴射弁ソケット21と取付ボス22が配置される位置に一体的に形成され、噴射弁ソケット21と取付ボス22とをメインパイプ11に固定するためのものである。この実施形態の固着面部23は、メインパイプ11の周面の周方向の略150°の範囲に密着した状態で固着されている。なお、固着面部23はメインパイプ11の周面の周方向の150°の範囲で固着されるものに限られるものでなく、120°~180°の範囲で固着されるものであってもよい。
【0016】
図1、
図2及び
図4に示したように、突出板部24は、固着面部23のメインパイプ11の長手方向の端部にてメインパイプの長手方向の外側に板状に突出してメインパイプ11の外周面に固着されている。この実施形態では、1番左側のソケットユニット20の突出板部24は固着面部23の右端部から右側に突出しており、1番右側のソケットユニット20の突出板部24は固着面部23の左端部から左側に突出しており、左から2番目及び3番目(右側から3番目及び2番目)のソケットユニット20の突出板部24は固着面部23の左右の両端部から外側に突出している。
【0017】
この実施形態の突出板部24の厚み(板厚)は、ソケットユニット20のメインパイプ11に対する固着強度を高くすることができるようにしつつ、噴射弁ソケット21に軸方向上向きの反力が加わったときに適度にある程度の変形を受容できる厚みとして1.5mmとしているが、これに限られるものでなく、突出板部24の厚み(板厚)を0.5~1.5mmの範囲としていたときに、メインパイプ11における固着部分の応力を低減させることができる。
【0018】
また、左端及び右端を除くソケットユニット20の噴射弁ソケット21には左端及び右端のソケットユニット20の噴射弁ソケット21よりも燃料噴射弁Iから燃料を噴射させたときに軸方向上向きの大きな反力が加わることになる。このため、この実施形態では、左端及び右端を除くソケットユニット20の突出板部24は、ソケットユニット20のメインパイプ11に対する固着強度を高くすることができるようにしつつ、噴射弁ソケット21に軸方向上向きの反力が加わったときに適度にある程度の変形を受容できる長さとしてメインパイプ11の長手方向の外側に6mmの長さで突出させているが、メインパイプ11の長手方向の外側に6mmの長さで突出させたものに限られるものでなく、メインパイプ11の長手方向の外側に6mm以上の長さで突出させたものであってもよい。なお、この実施形態では、左端及び右端のソケットユニット20の突出板部24はメインパイプ11の長手方向に3mmの長さで突出させているが、これに限られるものでなく、メインパイプ11の長手方向の外側に3mm以上の長さで突出させたものであってもよい。
【0019】
図5に示したように、突出板部24は固着面部23と同様にメインパイプ11の周面の周方向の略150°の範囲に密着した状態で固着されている。なお、突出板部24は、固着面部23と同様に、メインパイプ11の周面の周方向の150°の範囲で固着されるものに限られるものでなく、120°~180°の範囲で固着されるものであってもよい。
【0020】
図4に示したように、突出板部24には固着面部23との間の端部に固着面部23に近づくに従って徐々に立ち上がるR面よりなる曲面部24aが形成されている。曲面部24aは突出板部24と固着面部23との間に生じる応力を低減させる機能を有している。この実施形態の曲面部24aの曲率半径をR1(1mm)としており、R1(1mm)以上であれば突出板部24と固着面部23との間に生じる応力を低減させる機能を発揮させることができる。
【0021】
この直噴エンジン用高圧燃料デリバリパイプアセンブリ10を製造するときには、メインパイプ11の両端に密栓プラグ12と、メインパイプ11の長手方向の端部にジョイント部材13と、メインパイプ11の長手方向の中央部にセンサ取付部材14と、メインパイプ11の連通孔11bが形成された位置に連通孔21bが連通するように噴射弁ソケット21と取付ボス22が一体的に形成されたソケットユニット20の固着面部23と突出板部24とをメインパイプ11に密着させるようにして溶接等により仮止めし、各部品をメインパイプ11に対してろう付けによって液密に固着させる。
【0022】
上記のように構成した直噴エンジン用高圧燃料デリバリパイプアセンブリ10においては、燃料噴射弁Iからエンジンの各気筒に高圧の燃料を噴射させたときに、噴射弁ソケット21には燃料噴射弁Iから燃料を噴射させたときに生じる反力が噴射弁ソケット21の軸方向上向きに加わり、メインパイプ11にはソケットユニット20を固着するための固着面部23との間に応力が発生する。
【0023】
この実施形態の直噴エンジン用高圧燃料デリバリパイプアセンブリ10においては、噴射弁ソケット21は隣接する位置に配置された取付ボス22と一体的にソケットユニット20として形成され、ソケットユニット20は、噴射弁ソケット21と取付ボス22とが配置される位置でメインパイプ11の周面に固着される固着面部23と、固着面部23のメインパイプ11の長手方向の端部にてメインパイプ11の長手方向の外側に板状に突出してメインパイプ11の外周面に固着される突出板部24とを備えている。
【0024】
この種の直噴エンジン用高圧燃料デリバリパイプアセンブリにおいては、噴射弁ソケットと取付ボスとをソケットユニットとして一体的に形成し、ソケットユニットのメインパイプの長手方向の端部に厚み(例えば3mm~5mm)のあるブロック形状で該長手方向に延出させるよう補強してメインパイプに固着させたときには、ソケットユニットのメインパイプに対する固着強度を高くすることができるが、噴射弁ソケットに燃料噴射弁から燃料を噴射させたときに生じる軸方向の反力が加わったときに、ブロック形状に延出させたブロック形部が変形しにくくなっているので、メインパイプにおけるブロック形部が固着された部分に大きな応力が生じることになる。
【0025】
これに対し、この実施形態の直噴エンジン用高圧燃料デリバリパイプアセンブリ10においては、ソケットユニット20は、噴射弁ソケット21と取付ボス22とが配置される位置でメインパイプ11の周面に固着される固着面部23と、固着面部23のメインパイプ11の長手方向の端部にてメインパイプ11の長手方向の外側に板状に突出してメインパイプの外周面に固着される突出板部24とを備え、この実施形態の突出板部24は厚みを1.5mmとしている。これによって、ソケットユニット20のメインパイプ11に対する固着強度を高くすることができるとともに、噴射弁ソケット21に燃料噴射弁Iから燃料を噴射させたときに生じる軸方向の反力が加わっても、突出板部24はある程度の変形を受容されるため、メインパイプ11の突出板部24が固着された部分に大きな応力が生じにくくなる。
【0026】
また、この直噴エンジン用高圧燃料デリバリパイプアセンブリ10においては、突出板部24には固着面部23との間の端部に固着面部23に近づくに従って徐々に立ち上がる曲面部24aが形成されている。噴射弁ソケット21に燃料噴射弁Iから燃料を噴射させたときに生じる軸方向の反力が加わったときに、固着面部23と突出板部24との間に大きな応力が生じやすいが、突出板部24には固着面部23との間の端部に固着面部23に近づくに従って徐々に立ち上がる曲面部24aが形成されているので、固着面部23と突出板部24との間に生じる応力を低減させることができる。
【0027】
(第2実施形態)
第1実施形態の直噴エンジン用高圧燃料デリバリパイプアセンブリ10においては、ソケットユニット20をメインパイプ11の周面に固着するための固着面部23は、噴射弁ソケット21と取付ボス22と一体的に形成されいる。これに対し、
図6~
図10に示したように、第2実施形態の直噴エンジン用高圧燃料デリバリパイプアセンブリ10においては、ソケットユニット20をメインパイプ11の周面に固着するための固着面部23は噴射弁ソケット21と取付ボス22と別体に構成され、固着面部23と突出板部24とを一体的に形成した補強板25を備えるようにし、噴射弁ソケット21と取付ボス22は補強板25を介してメインパイプ11の周面に固着されている。また、突出板部24は噴射弁ソケット21と取付ボス22が固着される固着面部23よりもプレス加工によって厚みが薄く形成されており、突出板部24には固着面部23との間の端部に固着面部23に近づくに従って徐々に立ち上がる曲面部24aが形成されている。
【0028】
この第2実施形態の直噴エンジン用高圧燃料デリバリパイプアセンブリ10においても、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができるとともに、突出板部24は補強板25として固着面部23の長手方向の端部に一体的に形成されているので、ソケットユニット20に突出板部24を突出して設ける加工作業の手間を低減させることができる。
【0029】
第1及び第2実施形態の直噴エンジン用高圧燃料デリバリパイプアセンブリ10の左端及び右端のソケットユニット20においては、突出板部24を固着面部23のメインパイプ11の長手方向の一方の端部にだけ設けたが、これに限られるものでなく、突出板部24を固着面部23のメインパイプ11の長手方向の両方の端部に設けたものであってもよい。同様に、左端及び右端以外のソケットユニット20においては、突出板部24を固着面部23のメインパイプ11の長手方向の両方の端部に設けたが、これに限られるものでなく、強度が多少低下するものの、突出板部24を固着面部23のメインパイプ11の長手方向の一方の端部にだけ設けたものであってもよい。
【0030】
第1及び第2実施形態の直噴エンジン用高圧燃料デリバリパイプアセンブリ10は、直列4気筒の直噴型エンジンに対応して4つの噴射弁ソケット21と4つの取付ボス22を備えたものであるが、これに限られるものではなく、各実施形態の直噴エンジン用高圧燃料デリバリパイプアセンブリ10を2つ使用してV型8気筒の直噴型エンジンに用いるようにしたものであってもよい。第1及び第2実施形態の直噴エンジン用高圧燃料デリバリパイプアセンブリ10を、3つ以上の噴射弁ソケット21と3つ以上の取付ボス22とを備えるようにして、3気筒以上の直列型またはV型の直噴型エンジンに使用するものであってもよい。
【符号の説明】
【0031】
10…直噴エンジン用高圧燃料デリバリパイプアセンブリ、11…メインパイプ、11a…燃料通路、20…ソケットユニット、21…噴射弁ソケット、21a…噴射弁挿入穴、22…取付ボス、23…固着面部、24…突出板部、24a…曲面部、25…補強板、I…燃料噴射弁。