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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022011876
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】天端水返し材
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/64 20060101AFI20220107BHJP
   E04D 13/15 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
E04B1/64 C
E04D13/15 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020113276
(22)【出願日】2020-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】512267704
【氏名又は名称】楽建株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108947
【弁理士】
【氏名又は名称】涌井 謙一
(74)【代理人】
【識別番号】100117086
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典弘
(74)【代理人】
【識別番号】100124383
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一永
(74)【代理人】
【識別番号】100173392
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 貴宏
(74)【代理人】
【識別番号】100189290
【弁理士】
【氏名又は名称】三井 直人
(72)【発明者】
【氏名】田中 耕介
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DA03
2E001FA04
2E001FA16
2E001GA53
2E001HB01
(57)【要約】
【課題】コンクリート構造物の天端出隅角部における天端面の上に搭載して使用される天端水返し材であって、当該天端水返し材から落下した雨水がコンクリート構造物の壁面に接触し、壁面の劣化要因となってしまう問題を解決できる天端水返し材を提供する。
【解決手段】コンクリート構造物における天端出隅角部の天端面の上に搭載される板状の板状支持部と、前記板状支持部の前記天端出隅角部の側における天端出隅角部側端縁から、前記板状支持部の上方向に向かって斜めに伸びる板状の水返し部とを備えている天端水返し材。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物における天端出隅角部の天端面の上に搭載される板状の板状支持部と、
前記板状支持部の前記天端出隅角部の側における天端出隅角部側端縁から、前記板状支持部の上方向に向かって斜めに伸びる板状の水返し部と
を備えている天端水返し材。
【請求項2】
前記板状支持部は、前記天端出隅角部側端縁に対向する基端側端縁から前記天端出隅角部側端縁に向かって斜め上向かいに勾配を設けて前記コンクリート構造物における前記天端出隅角部の前記天端面に配置される
請求項1記載の天端水返し材。
【請求項3】
前記板状支持部は、前記天端出隅角部側端縁から前記コンクリート構造物の前記天端出隅角部の壁面に沿って鉛直方向下側に向かって伸びる水切り板部を備えている
請求項1又は2記載の天端水返し材。
【請求項4】
前記板状支持部の上側面から、前記水返し部の上端縁までの長さは6~7mmである請求項1~3のいずれか一項に記載の天端水返し材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンクリート構造物の天端出隅角部における天端面の上に搭載されて、前記コンクリート構造物の天面に降下した雨水が、前記コンクリート構造物の壁面から流下することを防止することに用いられる水返し材に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の天端出隅角部における天端面の上に搭載されて、雨水が天端から外壁伝いに流れないように壁から離れた位置で落水するようにしている水切り材については従来から種々のものが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-151810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンクリート構造物の外壁面の保全保護を考えた場合、雨水の壁面に対する影響は大きく、大きな劣化要因となっている。
【0005】
壁面仕上げ材によりその影響は異なり、造膜型の外壁塗装材には雨水は浸透しないが、コンクリート打放や外壁タイル仕上げのモルタル目地では、雨水が浸透し、コンクリートやモルタルの水酸化カルシウムが流出して表層の粗面化ややせが生じている。
【0006】
雨水はコンクリート構造物の壁面に残留するとすぐにカビが発生する。このカビは、紫外線によりすぐに死滅するが、死滅したカビの残滓は壁面に残り、それがまた雨水を含むことでカビの発生が増殖され、黒い汚れとして壁面の汚染物質となっている。コンクリート構造物の北側の壁面に黒ずんだ汚染が広がっているのは、このカビの発生サイクルによる。カビは壁面の損傷の原因となる。
【0007】
雨水は風がなければ鉛直方向に落下して、平坦な部分に衝突すると水平方向に破裂拡散するため、外壁側への流れも生じる。屋上パラペット天端面では、天端出隅角近くに降った雨水は壁面伝いに流れ落ちる。また建物外部向きの風や雨量が大きい場合には外壁面に多く雨水がかかるようになり、壁面を流れる雨水は壁面を劣化させている。
【0008】
こうした症状を軽減する部材もある。例えば、笠木天端面の防水及び部材保護を行う金属製の笠木は、その幅が天端の幅より広くなっている場合、雨水による影響を軽減している。また、天端アングル水切金物は天端から外壁伝いに雨水が流れないように壁から離れた位置で落水するようにしている。このような天端水切金物は防水材の端末材も兼ねて簡易に取り付けられるため防水改修工事等でも多く使用されている。
【0009】
このような天端水切金物では、パラペットに飛来して外部側に向かう雨水をすべて壁下側に落ちるようにしている。落下した水滴は落下による風圧や自然風の影響により分散し、その傾向は階下にしたがい強くなる。分散した雨水の一部は壁や階下に手摺壁があればその天端面に落下し、壁面の劣化要因となる。
【0010】
そこで、この発明は、コンクリート構造物の天端出隅角部における天端面の上に搭載して使用される天端水返し材であって、当該天端水返し材から落下した雨水がコンクリート構造物の壁面に接触し、壁面の劣化要因となってしまう問題を解決することを目的にしている。すなわち、コンクリート構造物の天端出隅角部における天端面の上に搭載されて、前記コンクリート構造物の天面に降下した雨水が、前記コンクリート構造物の壁面から流下することを防止することに用いられる水返し材を提案することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[1]
コンクリート構造物における天端出隅角部の天端面の上に搭載される板状の板状支持部と、
前記板状支持部の前記天端出隅角部の側における天端出隅角部側端縁から、前記板状支持部の上方向に向かって斜めに伸びる板状の水返し部と
を備えている天端水返し材。
【0012】
[2]
前記板状支持部は、前記天端出隅角部側端縁に対向する基端側端縁から前記天端出隅角部側端縁に向かって斜め上向かいに勾配を設けて前記コンクリート構造物における前記天端出隅角部の前記天端面に配置される[1]の天端水返し材。
【0013】
[3]
前記板状支持部は、前記天端出隅角部側端縁から前記コンクリート構造物の前記天端出隅角部の壁面に沿って鉛直方向下側に向かって伸びる水切り板部を備えている[1]又は[2]の天端水返し材。
【0014】
[4]
前記板状支持部の上側面から、前記水返し部の上端縁までの長さは6~7mmである[1]~[3]のいずれかの天端水返し材。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、コンクリート構造物の天端出隅角部における天端面の上に搭載して使用される天端水返し材であって、当該天端水返し材から落下した雨水がコンクリート構造物の壁面に接触し、壁面の劣化要因となってしまう問題を解決できる天端水返し材を提供することができる。
【0016】
このように、この発明によれば、コンクリート構造物の天端出隅角部における天端面の上に搭載されて、前記コンクリート構造物の天面に降下した雨水が、前記コンクリート構造物の壁面から流下することを防止することに用いられる水返し材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(a)、(b)は、この発明の一実施形態に係る天端水返し材がコンクリート構造物の天端出隅角部における天端面の上に搭載されて使用される状態を説明する側面図。
図2】(a)この発明の他の実施形態に係る天端水返し材を表す側面図、(b)図2(a)図示の天端水返し材がコンクリート構造物の天端出隅角部における天端面の上に搭載されて使用される状態の一例を説明する側面図。
図3】この発明の他の実施形態に係る天端水返し材がコンクリート構造物の天端出隅角部における天端面の上に搭載されて使用される状態を説明する側面図。
図4】(a)、(b)は、図1(a)図示の実施形態の天端水返し材がコンクリート構造物の天端出隅角部における天端面の上に搭載されて使用される他の状態を説明する側面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面を参照して本発明の天端水返し材の一例を説明する。
【0019】
図1(a)図示のように、この実施形態の天端水返し材1は、板状の板状支持部2と、板状の水返し部5とを備えている。天端水返し材1は、従来公知の天端水切金物のように金属製にすることができる。
【0020】
板状支持部2は、コンクリート構造物10における天端出隅角部11の天端面12の上に搭載される。板状支持部2は、天端出隅角部11の側に天端出隅角部側端縁4を、天端出隅角部側端縁4に対向する側に基端側端縁3を備えている。
【0021】
板状の水返し部5は、図1(a)図示のように、板状支持部2の天端出隅角部11の側における天端出隅角部側端縁4から、板状支持部2の上方向に向かって斜めに伸びている。
【0022】
コンクリート構造物10における天端出隅角部11の天端面12の上に搭載される板状支持部2が、板状支持部2の天端出隅角部11の側における天端出隅角部側端縁4から板状支持部2の上方向に向かって斜めに伸びている板状の水返し部5を備えていることにより、鉛直方向に落下する雨水、建物外周部側に斜め(図1の右上から左下に向かう斜め方向)に落下する雨水を、水返し部5により建物内側(図1(a)における左側)に返し、壁13側に落下させないようにしている。
【0023】
天端水返し材1は、コンクリート構造物10における天端出隅角部11の天端面12の上に搭載される板状支持部2が、その天端出隅角部11の側における天端出隅角部側端縁4から板状支持部2の上方向に向かって斜めに伸びている板状の水返し部5を上方に備えていることにより、雨水の流れが水返し部5を、図1における左から右側に向かう方向に、乗り越えない構造になっている。
【0024】
これによって、コンクリート構造物10の天端出隅角部11における天端面12の上に搭載されて、コンクリート構造物10の天面に降下した雨水が、コンクリート構造物10の壁面13から流下することを防止することが可能になる。
【0025】
図1(b)は、壁13が垂直ではなく、天端出隅角部11から斜め下方向に向かって伸びている構造のコンクリート構造物10の天端面12の上に板状支持部2が搭載されて図1図示の天端水返し材1が使用される場合を説明する図である。
【0026】
なお、図示していないが、図1(a)、(b)において、天端出隅角部側端縁4が、コンクリート構造物10における天端出隅角部11から、図面中の右側方向に向けて突出し、コンクリート構造物10の壁13よりも外側に突出するように、天端水返し材1が配置されている形態にすることもできる。
【0027】
図2は天端水返し材の他の実施形態を説明するものである。天端水返し材21は、板状の板状支持部22と、板状の水返し部25と、板状の水切り部26とを備えている。
【0028】
コンクリート構造物10における天端出隅角部11の天端面12の上に搭載される板状の板状支持部22は、天端出隅角部11の側に天端出隅角部側端縁24を、天端出隅角部側端縁24に対向する側に基端側端縁23を備えている。
【0029】
板状の水返し部25は、板状支持部22の天端出隅角部11の側における天端出隅角部側端縁24から、板状支持部22の上方向に向かって斜めに伸びている。
【0030】
板状の水切り部26は、板状支持部22の天端出隅角部11の側における天端出隅角部側端縁24から垂直方向(鉛直方向)で下側に向かって伸びている。
【0031】
板状の水切り部26は、従来公知の天端水切金物に備えられていたものである。
【0032】
図1図示の実施形態の天端水返し材1の場合、コンクリート構造物10における天端出隅角部11の天端面12の上に板状支持部22を搭載したときに、板状の水返し部5が地上側から見えにくくなる。
【0033】
一方、図2図示の天端水返し材21の場合、板状支持部22の天端出隅角部11の側における天端出隅角部側端縁24から垂直方向(鉛直方向)で下側に向かって伸びている板状の水切り部26を備えているので、図2(a)で板状の水返し部25の左側、すなわち、板状の板状支持部22が天端出隅角部11の天端面12の上に搭載されるコンクリート構造物10の外側に降る雨水は、板状の水切り部26の外側表面(図2(a)における左側表面)を伝わって鉛直方向下側に向かって降下できる。
【0034】
なお、本実施形態の天端水返し材1、21では、図2(a)図示の天端水返し材21のように、天端出隅角部側端縁24が、コンクリート構造物10における天端出隅角部11よりも外側になるように配置する形態にすることもできる。
【0035】
この場合、図2(b)で板状の水返し部25の右側、すなわち、板状の板状支持部22が天端出隅角部11の天端面12の上に搭載されるコンクリート構造物10の外側に降る雨水は、板状の水切り部26の外側表面(図2(b)における右側表面)を伝わって鉛直方向下側に向かって降下するので、直接、コンクリート構造物10の外壁面13に降下しないようにすることができる。
【0036】
なお、図示していないが、天端水返し材21が、図1(a)図示の天端水返し材1が配置されている位置になるようにし、図2(b)における板状の水切り部26の内側表面(図2(b)における左側表面)が、コンクリート構造物10の外壁面13に当接している配置形態にすることもできる。
【0037】
この実施形態において、天端水返し材1、21の板状支持部2、22に落下した雨水は、落下して水平方向に拡がるため、水返し部5、25の高さは、板状支持部2、22の上側面から、水返し部5、25の上端縁までの長さ(高さ)が6~7mの高さがあれば上述した水返しの機能を発揮することができる。
【0038】
図3は、板状支持部32が、天端出隅角部側端縁34に対向する基端側端縁33から天端出隅角部側端縁34に向かって斜め上向かいに勾配を設けてコンクリート構造物10における天端出隅角部11の天端面12に配置される形態になっている天端水返し材31を説明するものである。
【0039】
このようにすることで、基端側端縁33における板状支持部32の上側面から水返し部35の上端縁までの長さ(高さ)を大きくすることができ、上述した水返し効果を高めることができる。
【0040】
図3図示の実施形態では、天端出隅角部側端縁34側の板状支持部32の下側面を支える支持脚37が天端面12の上に搭載されるようになっているが、図示していない他の構造によって、板状支持部32が、基端側端縁33から天端出隅角部側端縁34に向かって斜め上向かいに勾配を設けて天端面12に配置される形態にすることができる。
【0041】
図4(a)、(b)は、図1(a)図示の実施形態の天端水返し材1がコンクリート構造物10の天端出隅角部における天端面の上に搭載されて使用される他の実施形態を説明する側面図である。
【0042】
図4(a)ではコンクリート構造物10の天端出隅角部が、コンクリート構造物10における笠木材40の上に搭載されている支持材41の天端出隅角部44である場合を説明するものである。笠木材40の上に支持材41が搭載され、支持材41の天端出隅角部44における天端面41の上に天端水返し材1が搭載されている。
【0043】
図4(b)ではコンクリート構造物10の天端出隅角部が、コンクリート構造物10における水切り材50の上に搭載されている支持材51の天端出隅角部54である場合を説明するものである。水切り材50の上に、支持材51が搭載され、支持材51の天端出隅角部54における天端面55の上に天端水返し材1が搭載されている。
【0044】
図4(a)、(b)いずれの場合であっても、既存のアルミニウム製笠木や水切り金物に設置することで雨水処理の大きな効果を得ることができる。
【0045】
天端水返し材1、21、31は、板状の水切り部26、36をつけた方が効果が大きいが、それがなくても、上述した構造の板状の水返し部5、25、35を備えていることで、十二分に上述した水返しの機能を発揮することができる。
【0046】
打放コンクリート仕上げ壁は、意匠性を求めて施工されることが多く、パラペット天端面に笠木を付けないケースが多く、また水切材も意匠上敬遠されることが多い。このような場合に、図1を用いて説明した天端水返し材1によれば、雨水の対策を行い、外観上目立ちにくいため有効である。
【0047】
また斜壁面で、従来の水切金物は、天端の雨水の影響をなくすことは全くできないが、本発明の天端水返し材では、その効果が期待できる。
図1
図2
図3
図4