IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ミツバの特許一覧

特開2022-118765モータ制御装置およびモータ制御装置の起動方法
<>
  • 特開-モータ制御装置およびモータ制御装置の起動方法 図1
  • 特開-モータ制御装置およびモータ制御装置の起動方法 図2
  • 特開-モータ制御装置およびモータ制御装置の起動方法 図3
  • 特開-モータ制御装置およびモータ制御装置の起動方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118765
(43)【公開日】2022-08-16
(54)【発明の名称】モータ制御装置およびモータ制御装置の起動方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/06 20060101AFI20220808BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20220808BHJP
【FI】
H02P27/06
H02M7/48 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021015456
(22)【出願日】2021-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹尾 直人
【テーマコード(参考)】
5H505
5H770
【Fターム(参考)】
5H505AA16
5H505CC04
5H505DD03
5H505DD08
5H505EE49
5H505FF01
5H505HA05
5H505HA06
5H505HA09
5H505HA16
5H505HB01
5H505JJ03
5H505JJ16
5H505JJ17
5H505KK06
5H505LL24
5H505LL55
5H505MM03
5H770BA02
5H770DA03
5H770DA41
5H770EA01
5H770FA04
5H770GA11
5H770GA16
5H770HA03W
5H770JA17W
(57)【要約】
【課題】複数の電圧を検出する際の検出精度の相対ばらつきを低減することが可能なモータ制御装置およびモータ制御装置の起動方法を提供する。
【解決手段】電圧検出回路25は、バッテリ30のバッテリ電圧VbatおよびコンデンサC1のコンデンサ電圧Vcを検出する。選択回路26は、電圧検出回路25にバッテリ電圧Vbatを入力するかコンデンサ電圧Vcを入力するかを選択する。コントローラ16は、リレー17をオンに制御する前に、電圧検出回路25の検出結果に基づいて、コンデンサ電圧Vcが、バッテリ電圧Vbatを基準に定められた充電終了電圧に達するまで充電スイッチPSWをオンに制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータに電力を供給するインバータと、
前記インバータの電源ノードに接続されるコンデンサと、
オンに制御された際に、バッテリの電源ノードと前記インバータの電源ノードとを接続するリレーと、
オンに制御された際に、前記バッテリから前記コンデンサへの充電経路を形成する充電スイッチと、
前記バッテリから前記コンデンサへの前記充電経路に挿入され、充電電流を制限する制限素子と、
電圧検出回路、選択回路およびコントローラと、
を有し、
前記電圧検出回路は、前記バッテリのバッテリ電圧および前記コンデンサのコンデンサ電圧を検出し、
前記選択回路は、前記電圧検出回路に前記バッテリ電圧を入力するか前記コンデンサ電圧を入力するかを選択し、
前記コントローラは、前記リレーをオンに制御する前に、前記電圧検出回路の検出結果に基づいて、前記コンデンサ電圧が、前記バッテリ電圧を基準に定められた充電終了電圧に達するまで前記充電スイッチをオンに制御する、
モータ制御装置。
【請求項2】
前記選択回路は、
前記バッテリの電源ノードと前記電圧検出回路の入力ノードとの間に接続されるオンオフスイッチと、
前記インバータの電源ノードと前記電圧検出回路の入力ノードとの間に接続され、前記電圧検出回路の入力ノードから前記インバータの電源ノードに向けた方向の電流を遮断する整流素子と、
を有し、
前記コントローラは、前記オンオフスイッチをオンに制御することで前記電圧検出回路に前記バッテリ電圧を検出させ、前記オンオフスイッチをオフに制御することで前記電圧検出回路に前記コンデンサ電圧を検出させる、
請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記電圧検出回路は、
入力電圧を分圧する分圧回路と、
前記分圧回路の出力電圧を前記コントローラへ伝送する絶縁アンプと、
を有する、
請求項1または請求項2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のモータ制御装置において、
オンに制御された際に、前記コンデンサから接地電源への放電経路を形成する放電スイッチを有し、
前記制限素子は、前記充電経路と前記放電経路の重複箇所に挿入される、
モータ制御装置。
【請求項5】
モータに電力を供給するインバータと、
前記インバータの電源ノードに接続されるコンデンサと、
オンに制御された際に、バッテリの電源ノードと前記インバータの電源ノードとを接続するリレーと、
オンに制御された際に、前記バッテリから前記コンデンサへの充電経路を形成する充電スイッチと、
前記バッテリから前記コンデンサへの前記充電経路に挿入され、充電電流を制限する制限素子と、
前記バッテリのバッテリ電圧および前記コンデンサのコンデンサ電圧を検出する電圧検出回路と、
前記電圧検出回路に前記バッテリ電圧を入力するか前記コンデンサ電圧を入力するかを選択する選択回路と、
を有するモータ制御装置の起動方法であって、
前記リレーをオンに制御する前に、前記電圧検出回路の検出結果に基づいて、前記コンデンサ電圧が、前記バッテリ電圧を基準に定められた充電終了電圧に達するまで前記充電スイッチをオンに制御する、
モータ制御装置の起動方法。
【請求項6】
請求項5に記載のモータ制御装置の起動方法において、
ユーザ操作に応じて前記モータの始動信号が入力される前の期間で、前記選択回路に前記バッテリ電圧を選択させることで前記電圧検出回路に前記バッテリ電圧を検出させる第1のステップと、
前記モータの前記始動信号が入力された後の期間で、前記選択回路に前記コンデンサ電圧を選択させることで前記電圧検出回路に前記コンデンサ電圧を検出させながら、前記コンデンサ電圧が前記充電終了電圧に達するまで前記充電スイッチをオンに制御する第2のステップと、
を有する、
モータ制御装置の起動方法。
【請求項7】
請求項6に記載のモータ制御装置の起動方法において、
前記モータ制御装置は、オンに制御された際に、前記コンデンサから接地電源への放電経路を形成する放電スイッチを有し、
前記第1のステップと前記第2のステップの間の期間で、前記選択回路に前記コンデンサ電圧を選択させることで前記電圧検出回路に前記コンデンサ電圧を検出させながら、前記コンデンサ電圧が予め定めた充電開始電圧に達するまで前記放電スイッチをオンに制御する第3のステップを有する、
モータ制御装置の起動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置およびモータ制御装置の起動方法に関し、特に、電動車両用の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電源が入っていない状態でも、モータからの回生電圧が過大とならないように制御可能な電動車両の回生充電制御装置が示される。当該装置は、バッテリのパワーラインにメインスイッチを介さずに接続される非絶縁DC/DCコンバータと、当該非絶縁DC/DCコンバータからの電力で動作し、電圧検出部を含むハードウェアレギュレータとを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-147237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、電動車両(EV:Electric Vehicle)には、車輪に取り付けられるモータと、バッテリを電源としてモータを駆動するインバータとが搭載される。インバータには、バッテリからリレーの一種であるコンタクタを介して電源が供給される。また、インバータの電源には、安定化のため、通常、大容量の電解コンデンサ等が接続される。このような構成において、インバータに電源を投入する際には、バッテリから電解コンデンサへコンタクタを介して突入電流が流れ得る。この場合、例えば、電解コンデンサの劣化やコンタクタの接点の溶着等が生じ得る。
【0005】
そこで、例えば、バッテリおよび電解コンデンサの各電圧を個々の検出回路で検出しながら、電解コンデンサを、コンタクタとは異なる経路で徐々に充電したのち、コンタクタをオンに制御するような仕組みを設けることが考えられる。しかし、バッテリおよび電解コンデンサの各電圧を個々の検出回路で検出すると、検出回路間で検出精度の相対ばらつきが生じる恐れがあった。その結果、電解コンデンサやリレーを十分に保護できない事態等が生じる恐れがあった。
【0006】
本発明は、このようなことに鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、複数の電圧を検出する際の検出精度の相対ばらつきを低減することが可能なモータ制御装置およびモータ制御装置の起動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のモータ制御装置は、モータに電力を供給するインバータと、前記インバータの電源ノードに接続されるコンデンサと、オンに制御された際に、バッテリの電源ノードと前記インバータの電源ノードとを接続するリレーと、オンに制御された際に、前記バッテリから前記コンデンサへの充電経路を形成する充電スイッチと、前記バッテリから前記コンデンサへの前記充電経路に挿入され、充電電流を制限する制限素子と、電圧検出回路、選択回路およびコントローラと、を有し、前記電圧検出回路は、前記バッテリのバッテリ電圧および前記コンデンサのコンデンサ電圧を検出し、前記選択回路は、前記電圧検出回路に前記バッテリ電圧を入力するか前記コンデンサ電圧を入力するかを選択し、前記コントローラは、前記リレーをオンに制御する前に、前記電圧検出回路の検出結果に基づいて、前記コンデンサ電圧が、前記バッテリ電圧を基準に定められた充電終了電圧に達するまで前記充電スイッチをオンに制御する、ように構成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数の電圧を検出する際の検出精度の相対ばらつきを低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態によるモータ制御装置周りの主要部の構成例を示す概略図である。
図2図1におけるコントローラの主要部の構成例を示す概略図である。
図3図2のコントローラにおける処理内容の一例を示すフロー図である。
図4】本発明の比較例となるモータ制御装置周りの主要部の構成例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0011】
《モータ制御装置の概略》
図1は、本発明の一実施の形態によるモータ制御装置周りの主要部の構成例を示す概略図である。図2は、図1におけるコントローラの主要部の構成例を示す概略図である。図1には、モータ制御装置10と、メインスイッチMSWと、バッテリ30と、モータ40とが示される。これらの構成は、電動車両(EV)に搭載され、特に、電動バイク等に搭載される。モータ40は、例えば、3相(u相、v相、w相)のブラシレスDCモータ等であり、車両の車輪に取り付けられる。
【0012】
メインスイッチMSWは、ユーザがモータ40を始動する際に操作するスタートボタン等である。メインスイッチMSWは、このユーザ操作に応じて、モータ制御装置10へモータ40の始動信号STRを出力する。モータ制御装置10は、図1に示されるような各種内部部品が実装された配線基板等によって構成される。以下、モータ制御装置10の内部構成について説明する。
【0013】
インバータ15は、3相のハイサイドスイッチング素子HSu,HSv,HSwおよび3相のロウサイドスイッチング素子LSu,LSv,LSwを備え、モータ40に電力(ここでは3相交流電力)を供給する。コンデンサC1は、例えば、電解コンデンサであり、インバータ15の電源ノードNcに接続され、インバータ15の電源を安定化させる。コンタクタ17は、リレーの一種であり、オンに制御された際に、バッテリ30の電源ノードNbとインバータ15の電源ノードNcとを接続する。コンタクタスイッチCSWは、このコンタクタ(リレー)17のオン/オフを制御する。
【0014】
充電スイッチPSWは、オンに制御された際に、バッテリ30からコンデンサC1への充電経路を形成する。放電スイッチDSWは、オンに制御された際に、コンデンサC1から接地電源GNDへの放電経路を形成する。抵抗素子R1は、この充電経路と放電経路の重複箇所に挿入され、充電電流および放電電流を制限する制限素子として機能する。例えば、充電スイッチPSWは、高耐圧のpチャネル型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等で構成され、放電スイッチDSWは、高耐圧のnチャネル型MOSFET等で構成される。
【0015】
ダイオードD1は、バッテリ30の電源ノードNbに、バッテリ30側をアノード、モータ制御装置10の内部側をカソードとして挿入される。ダイオードD1は、バッテリ30が逆極性に接続された際に、電源ノードNbに流れる電流を遮断する役目を担う。電圧検出回路25は、バッテリ30のバッテリ電圧VbatおよびコンデンサC1のコンデンサ電圧Vcを検出する。この際に、選択回路26は、電圧検出回路25にバッテリ電圧Vbatを入力するかコンデンサ電圧Vcを入力するかを選択する。
【0016】
電圧検出回路25は、詳細には、分圧回路19と、絶縁アンプ18と、アナログディジタル変換器ADCとを備える。分圧回路19は、例えば、複数の分圧抵抗素子等を備え、入力ノードNinの入力電圧、すなわち、選択回路26によって選択された電圧を分圧する。絶縁アンプ18は、例えば、フォトカプラまたはトランスと、所定の内部回路とを備え、分圧回路19の出力電圧をコントローラ16へ伝送する。
【0017】
絶縁アンプ18において、フォトカプラ等の入力側には、バッテリ電圧Vbatが供給され、出力側には制御用電圧Vddが供給される。所定の内部回路は、分圧回路19の出力電圧に応じてフォトカプラ等の入力を制御することで、フォトカプラ等に、入力ノードNinにおける入力電圧の大きさを反映した検出電圧Vdetを制御用電圧Vddのレンジで出力させる。
【0018】
バッテリ電圧Vbatは、例えば、数10V~数100V等である。制御用電圧Vddは、コントローラ16の電源電圧であり、例えば、3.3Vや5V等である。このように、バッテリ電圧Vbatと制御用電圧Vddには、大きい電位差がある。このため、絶縁アンプ18が設けられる。アナログディジタル変換器ADCは、この例では、コントローラ16内に設けられ、絶縁アンプ18からの検出電圧Vdetをディジタル値に変換する。なお、制御用電圧Vddは、例えば、バッテリ電圧Vbatをもとに、図示しない電源レギュレータを用いて生成される。
【0019】
選択回路26は、オンオフスイッチSW1と、整流素子21とを備える。オンオフスイッチSW1は、例えば、高耐圧のMOSFET等によって構成され、バッテリ30の電源ノードNbと電圧検出回路25の入力ノードNinとの間に接続される。整流素子21は、インバータ15の電源ノードNcと電圧検出回路25の入力ノードNinとの間に接続され、電圧検出回路25の入力ノードNinからインバータ15の電源ノードNcに向けた方向の電流を遮断する。この例では、整流素子21は、電源ノードNc側をアノード、入力ノードNin側をカソードとするダイオードで構成される。
【0020】
ここで、オンオフスイッチSW1がオンに制御された場合、電圧検出回路25には、バッテリ電圧Vbatが入力される。この際に、電圧検出回路25の入力ノードNinに伝送されたバッテリ電圧Vbatは、少なくともインバータ15の電源ノードNcにおけるコンデンサ電圧Vc以上の値となる。このため、整流素子21によって、入力ノードNinから電源ノードNcに向けた意図しない充電経路、すなわち、充電スイッチPSWを介さない充電経路は、阻止される。一方、オンオフスイッチSW1がオフに制御された場合、電圧検出回路25には、整流素子21等を介してコンデンサ電圧Vcが入力される。
【0021】
なお、選択回路26は、このような構成に限らず、例えば、整流素子21の代わりにオンオフスイッチSW1と同様のスイッチを備え、各スイッチを排他的に制御するような構成であってもよい。ただし、図1のように、電圧が高い側に、オンオフスイッチSW1を、電圧が低い側に整流素子21を設けることで、このように2個のスイッチを設けるような場合と比較して、構成および制御の簡素化が図れる。
【0022】
逆流防止回路20は、電圧検出回路25の入力ノードNinとインバータ15の電源ノードNcとの間で、整流素子21と直列に挿入される。絶縁アンプ18の構成によっては、例えば、絶縁アンプ18に電源が投入されていない場合に、バッテリ30から絶縁アンプ18内の所定の内部回路を介して絶縁アンプ18の電源に電流が流れ込む場合がある。逆流防止回路20は、このような電流の流れ込みを防止するために設けられる。
【0023】
コントローラ16は、例えば、マイクロコントローラ等によって構成され、モータ制御装置10全体を制御する。コントローラ16は、図2に示されるように、プリチャージ制御部160と、故障検出部161と、PWM(Pulse Width Modulation)制御部162と、前述した電圧検出回路25内のアナログディジタル変換器ADCとを備える。
【0024】
プリチャージ制御部160および故障検出部161は、例えば、マイクロコントローラ内のメモリに格納されたプログラムをマイクロコントローラ内のプロセッサが実行することで実現される。PWM制御部162は、例えば、マイクロコントローラ内のPWMタイマ等を用いて実現される。ただし、プリチャージ制御部160、故障検出部161およびPWM制御部162の一部または全ては、マイクロコントローラに限らず、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアで実現されてもよい。
【0025】
プリチャージ制御部160は、モータ制御装置10の起動時に、コンタクタ(リレー)17をオンに制御する前に、コンデンサC1のプリチャージを行う。すなわち、モータ制御装置10の起動時に、仮に、コンデンサC1が未充電の状態でコンタクタ(リレー)17をオンに制御すると、バッテリ30からコンデンサC1へコンタクタ17を介して大きな突入電流が流れ得る。この場合、例えば、コンデンサC1の劣化やコンタクタ17の接点の溶着等が生じる恐れがある。
【0026】
そこで、プリチャージ制御部160が設けられる。プリチャージ制御部160は、その主な動作として、電圧検出回路25の検出結果、すなわちアナログディジタル変換器ADCの出力に基づいて、コンデンサ電圧Vcが、バッテリ電圧Vbatを基準に定められた充電終了電圧に達するまで充電スイッチPSWをオンに制御する。これに伴い、コンデンサC1は、抵抗素子R1およびコンデンサC1に伴うRC時定数で、充電終了電圧に向けて徐々に充電される。
【0027】
プリチャージ制御部160は、オンオフスイッチ制御信号SONと、充電スイッチ制御信号PONと、放電スイッチ制御信号DONと、コンタクタスイッチ制御信号CONとを出力する。図1のオンオフスイッチSW1は、オンオフスイッチ制御信号SONによって制御され、コンタクタスイッチCSW、ひいてはコンタクタ17は、コンタクタスイッチ制御信号CONによって制御される。図1の充電スイッチPSWは、充電スイッチ制御信号PONによって制御され、放電スイッチDSWは、放電スイッチ制御信号DONによって制御される。
【0028】
故障検出部161は、アナログディジタル変換器ADCの出力、すなわち電圧検出回路25からの検出電圧Vdetに基づいて、例えば、バッテリ電圧Vbatやコンデンサ電圧Vcの異常等を故障として検出する。故障検出部161は、検出対象を切り替えるため、オンオフスイッチ制御信号SONを出力してもよい。PWM制御部162は、インバータ15内の各スイッチング素子を3相のPWM信号PWMu,PWMv,PWMwでスイッチング制御する。
【0029】
また、図1において、モータ制御装置10内の絶縁バッファ22は、コントローラ16からのオンオフスイッチ制御信号SON、充電スイッチ制御信号PONおよび放電スイッチ制御信号DON等を受け、各制御信号を、オンオフスイッチSW1、充電スイッチPSWおよび放電スイッチDSW等へそれぞれ出力する。絶縁バッファ22は、例えば、フォトカプラまたはトランスを備え、制御用電圧Vddレベルの制御信号をバッテリ電圧Vbatレベルの制御信号に変換する。
【0030】
《コントローラの詳細》
図3は、図2のコントローラにおける処理内容の一例を示すフロー図である。図3を大別すると、ステップS101~S103は、バッテリ電圧Vbatを検出するための第1のステップとなり、ステップS108~S110は、コンデンサC1を充電するための第2のステップとなる。また、第1のステップと第2のステップの間で行われるステップS105~S107は、コンデンサC1を放電するための第3のステップとなる。
【0031】
図3において、まず、プリチャージ制御部160は、車両のキースイッチがオンに制御されたのち、オンオフスイッチ制御信号SONを用いてオンオフスイッチSW1をオンに制御する(ステップS101)。これによって、プリチャージ制御部160は、選択回路26にバッテリ電圧Vbatを選択させる。キースイッチは、モータ40を始動させる前段階で、車両の電源投入を行うためのスイッチである。
【0032】
続いて、プリチャージ制御部160は、モータ40を始動させるためのメインスイッチMSWがオンとなるまでの期間、すなわちメインスイッチMSWからの始動信号STRが入力される前の期間で(ステップS103)、電圧検出回路25にバッテリ電圧Vbatを検出させる(ステップS102)。具体的には、プリチャージ制御部160は、アナログディジタル変換器ADCからのディジタル値を取得する。
【0033】
その後、モータ40の始動信号STRが入力されると、プリチャージ制御部160は、オンオフスイッチ制御信号SONを用いてオンオフスイッチSW1をオフに制御する(ステップS104)。これによって、プリチャージ制御部160は、選択回路26にコンデンサ電圧Vcを選択させる。そして、プリチャージ制御部160は、電圧検出回路25にコンデンサ電圧Vcを検出させながら(ステップS105)、コンデンサ電圧Vcが予め定めた充電開始電圧Vstに達するまで、放電スイッチDSWをオンに制御する(ステップS106,S107)。
【0034】
具体的には、プリチャージ制御部160は、アナログディジタル変換器ADCからのディジタル値を取得しながら、コンデンサ電圧Vcが充電開始電圧Vst以下となるまで、放電スイッチ制御信号DONを用いて放電スイッチDSWをオンに制御する。放電スイッチDSWがオンに制御された場合、コンデンサ電圧Vcは、充電開始電圧Vstに向けてRC時定数で徐々に低下する。
【0035】
ここで、ステップS103でメインスイッチMSWがオンに制御された際、コンデンサC1には、モータ40を前回起動させた際の電荷が残存している場合がある。この場合、その後の充電動作(ステップS108~S110)に影響が生じる恐れがある。そこで、プリチャージ制御部160は、ステップS105~S107によって、コンデンサ電圧Vcが充電開始電圧Vst以下になっていることを保証する。
【0036】
ステップS105~S107の後、プリチャージ制御部160は、引き続き電圧検出回路25にコンデンサ電圧Vcを検出させながら(ステップS108)、コンデンサ電圧Vcが充電終了電圧Vedに達するまで、充電スイッチPSWをオンに制御する(ステップS109,S110)。具体的には、プリチャージ制御部160は、アナログディジタル変換器ADCからのディジタル値を取得しながら、コンデンサ電圧Vcが充電終了電圧Ved以上となるまで、充電スイッチ制御信号PONを用いて充電スイッチPSWをオンに制御する。充電スイッチPSWがオンに制御された場合、コンデンサ電圧Vcは、充電終了電圧Vedに向けてRC時定数で徐々に上昇する。
【0037】
コンデンサ電圧Vcが充電終了電圧Ved以上になると、プリチャージ制御部160は、充電スイッチPSWをオフに制御し、コンタクタスイッチ制御信号CONを用いて、コンタクタスイッチCSW、ひいてはコンタクタ(リレー)17をオンに制御する(ステップS111)。その結果、バッテリ30からコンデンサC1へのコンタクタ17を介した突入電流を防止することが可能になる。なお、充電終了電圧Vedは、ステップS102で検出したバッテリ電圧Vbatを基準に定められ、例えば、バッテリ電圧Vbatの90%程度の値等に定められる。また、ステップS106での充電開始電圧Vstは、充電終了電圧Vedよりも低い値に定められる。
【0038】
《実施の形態の主要な効果》
図4は、本発明の比較例となるモータ制御装置周りの主要部の構成例を示す概略図である。図4に示すモータ制御装置10’は、図1に示したモータ制御装置10と比較して、特に、2個の電圧検出回路25a,25bを有する点が異なっている。電圧検出回路25aは、分圧回路19a、絶縁アンプ18aおよびアナログディジタル変換器ADCaを備え、逆流防止回路20aを介して伝送されたバッテリ電圧Vbatを検出する。一方、電圧検出回路25bは、分圧回路19b、絶縁アンプ18bおよびアナログディジタル変換器ADCbを備え、逆流防止回路20bを介して伝送されたコンデンサ電圧Vcを検出する。
【0039】
なお、アナログディジタル変換器ADCa,ADCbは、図1の場合と同様に、コントローラ16’内に設けられる。また、絶縁バッファ22’は、図1の場合と同様に、コントローラ16’からの充電スイッチ制御信号PONおよび放電スイッチ制御信号DONを、充電スイッチPSWおよび放電スイッチDSWへそれぞれ伝送する。その他の構成に関しても、図1の場合と同様である。
【0040】
しかし、図4のように、バッテリ電圧Vbatおよびコンデンサ電圧Vcを個々の電圧検出回路25a,25bで検出すると、電圧検出回路25a,25b間で検出精度の相対ばらつきが生じる恐れがある。例えば、電圧検出回路25aの検出ばらつきが+6%、電圧検出回路25bの検出ばらつきが-6%だった場合、最大12%の相対ばらつきが生じ得る。このような検出ばらつきは、特に、絶縁アンプ18a,18bの性能に起因して生じ得る。
【0041】
その結果、例えば、図3のステップS109におけるコンデンサ電圧Vcと充電終了電圧Vedとの比較判定が、不正確になり得る。具体例として、実際にはVc≧Vedであるにも関わらず、いつまでたってもVc<Vedと判定され、ステップS108~S110のループを抜けられないような事態が生じ得る。また、実際にはVc<Vedであるにも関わらず、Vc≧Vedと判定され、ステップS111に伴う突入電流が、本来の設計値よりも大きく増加する事態が生じ得る。さらに、このようなプリチャージ制御部160の不具合に加えて、図2の故障検出部161による故障検出精度も低下し得る。
【0042】
一方、図1の構成例を用いると、電圧検出回路25が共通化されているため、複数の電圧を検出する際の検出精度の相対ばらつきを低減することが可能になる。その結果、プリチャージ制御部160の動作を正確に行うことができ、突入電流を本来の設計値通りに定めることが可能になる。また、故障検出部161による故障検出精度を向上させることも可能になる。さらに、その他の効果として、電圧検出回路25の共通化によって、回路面積を低減できる。また、絶縁アンプ18または分圧回路19の精度に対する要求を緩和できる。これらの結果、モータ制御装置10のコストを低減することが可能になる。
【0043】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。その他、上記各実施の形態における各構成要素の材質,形状,寸法,数,設置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、上記各実施の形態に限定されない。
【符号の説明】
【0044】
10,10’:モータ制御装置、15:インバータ、16,16’:コントローラ、17:コンタクタ(リレー)、18,18a,18b:絶縁アンプ、19,19a,19b:分圧回路、20,20a,20b:逆流防止回路、21:整流素子、22,22’:絶縁バッファ、25,25a,25b:電圧検出回路、26:選択回路、30:バッテリ、40:モータ、160:プリチャージ制御部、161:故障検出部、162:PWM制御部、ADC,ADCa,ADCb:アナログディジタル変換器、C1:コンデンサ、CON:コンタクタスイッチ制御信号、CSW:コンタクタスイッチ、D1;ダイオード、DON:放電スイッチ制御信号、DSW:放電スイッチ、HS(u,v,w):ハイサイドスイッチング素子、LS(u,v,w):ロウサイドスイッチング素子、MSW:メインスイッチ、Nb:電源ノード、Nc:電源ノード、Nin:入力ノード、PON:充電スイッチ制御信号、PSW:充電スイッチ、PWM(u,v,w):PWM信号、R1:抵抗素子、SON:オンオフスイッチ制御信号、STR:始動信号、SW1:オンオフスイッチ、Vbat:バッテリ電圧、Vc:コンデンサ電圧、Vdd:制御用電圧、Vdet:検出電圧、Ved:充電終了電圧、Vst:充電開始電圧
図1
図2
図3
図4