(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022011878
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】火災感知器
(51)【国際特許分類】
G08B 17/10 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
G08B17/10 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020113280
(22)【出願日】2020-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】丸田 聡史
(72)【発明者】
【氏名】田村 政徳
(72)【発明者】
【氏名】沼澤 隆
(72)【発明者】
【氏名】秋山 信幸
【テーマコード(参考)】
5C085
【Fターム(参考)】
5C085AA01
5C085AA03
5C085AA13
5C085BA12
5C085BA31
5C085CA21
5C085CA30
5C085DA08
5C085DA10
5C085FA11
5C085FA12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】外観を損ねることなく火災感知器の種別を識別できる技術を提供する。
【解決手段】火災検出時に点灯又は点滅する環状の作動表示灯を備えている火災感知器のにおいて、作動表示灯の表示部となる透光性材料で形成された内カバー16の環状の光出射部20に、火災感知器の種別識別のための形状パターンを火災感知器の外観と同一系統の色で形成する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災検出時に点灯又は点滅する環状の作動表示灯を備えている火災感知器であって、
前記作動表示灯の表示部となる透光性材料で形成された環状の光出射部に、
前記火災感知器の種別識別のための形状パターンを火災感知器の外観と同一系統の色で形成したことを特徴とする火災感知器。
【請求項2】
有底筒形の本体ケースと該本体ケースの開口側を覆う外カバー部材とからなる筐体の内部に、熱感知素子および検出回路を構成する部品が実装された回路基板が収納され、前記外カバー部材又は本体ケースの外部に露出する箇所には前記熱感知素子に対応した位置に開口が形成されているとともに、火災検出時に点灯又は点滅する作動表示灯を備えている火災感知器であって、
前記外カバー部材の前記開口の周囲には、前記作動表示灯の表示部となる透光性材料で形成された環状の光出射部が配設され、
前記光出射部に火災感知器の種別識別のための形状パターンが形成され、その形状パターンが火災感知器の種類に応じて異なることを特徴とする火災感知器。
【請求項3】
前記外カバー部材には、複数の隔壁とこれらの隔壁の先端部が接続されるリング状ヘッド部を有し前記開口より突出する前記熱感知素子の頭部を保護するプロテクタ部が設けられ、
前記プロテクタ部の表面は前記外カバー部材の表面と同一系統の色と見えるよう加工され、
前記光出射部に形成された前記形状パターンは、前記プロテクタ部の隔壁の間で前記光出射部の環を部分的に覆うように形成されていることを特徴とする請求項2に記載の火災感知器。
【請求項4】
前記作動表示灯は、前記回路基板に実装された発光素子と、前記熱感知素子の周囲に配設された光出射部と、前記発光素子より発せられた光を前記光出射部へ誘導する導光部とを備え、
前記光出射部は、前記熱感知素子の径よりも内径の大きな挿通用円筒部および該挿通用円筒部の前記回路基板の側から当該回路基板から遠ざかる方向へ広がるすり鉢状部を備え光透過部材により形成された内カバーにより構成され、前記内カバーは前記挿通用円筒部内に前記熱感知素子の基部が位置するように配設され、
前記導光部は、前記発光素子より発せられた光を前記すり鉢状部へ誘導可能であり、
前記すり鉢状部の中心側の表面に被膜が形成され、前記すり鉢状部の周縁部より前記導光部により誘導された光の一部が出射されるように構成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の火災感知器。
【請求項5】
前記すり鉢状部の前記被膜は、前記外カバー部材の表面と同一系統の色であることを特徴とする請求項4に記載の火災感知器。
【請求項6】
前記熱感知素子の表面は前記外カバー部材の表面と同一系統の色で、かつ表示灯の発光色が反射しやすい色に着色されていることを特徴とする請求項2~5のいずれかに記載の火災感知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災時の熱や煙等の異常を検知する火災感知器に関し、特に熱感知器や煙感知器の種別を識別できるようにしたい場合に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
火災感知器には、サーミスタのような熱感知素子を使用した熱感知器、火災に伴い発生する煙を検知する光電素子を備えた煙感知器、炎から発する赤外線を検知する赤外線センサを備えた赤外線感知器などの種々の形式のものが提供されている。さらに、同一形式の火災感知器で基本構造は同じであっても、感度が異なるものや防水型とそうでないものなど種類が異なるものがある。そのため、建造物への火災感知器の設置に際しては、火災感知器の種別を確認した上で設置することが必要となる。
そこで、従来は火災感知器の筐体の表面に種別識別用のシールを貼付したり、特許文献1に記載されている発明のように、防虫網の色彩を変えて識別できるようにしたりしている。また、火災感知器は、非発報状態では目立たないように、筐体(ケース)として白色を基調としたものが多い。
【0003】
一方、火災感知器は火災検出時又は点検などで作動確認の際に点灯又は点滅する作動表示灯を備えており、その作動表示灯は、例えば天井面に設置された状態で、視認性が良好となることが要求される。
また、火災感知器のうちサーミスタを使用した火災感知器は、一般に、ドーム型の筐体の中央に熱感知素子としてのサーミスタを配設し、サーミスタが下向きとなるように、筐体を建造物の天井面に取り付けて火災の発生を検出するように構成されている。そして、火災感知器本体(筐体)の一部に窓部を設け、その窓を通して作動表示灯の発光表示が視認できるように構成されている(例えば特許文献2)。また、砲弾型のLED(発光ダイオード)の頭部を火災感知器本体の表面に直接露出させるように構成されているものもある(例えば特許文献3の
図9)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平02-123690号公報
【特許文献2】特開平11-175860号公報
【特許文献3】特開平08-180273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように火災感知器の筐体に、筐体の色合いを考慮していない種別識別用のシールを貼付したり防虫網の色彩を変えたりすると、それらは筐体の表面とは色が異なるため、天井面等に設置した際に目立ってしまい外観を損ねる(外観の調和を乱す)という課題がある。
また、火災感知器が設置される天井面は白色又は白系色であることが多いため、白色を基調とした火災感知器を設置することで火災感知器を目立たなくすることができる。しかし、従来の火災感知器の多くはサーミスタとして黒色のものを使用することが多いとともに、サーミスタは、筐体の中央に下向きとなるように配設され、これを保護するようにプロテクタが設けられるとともに、熱気流をとらえやすくするため、プロテクタにはサーミスタを中心にして放射状のフィンが設けられている。そのため、従来の火災感知器は、火災感知器本体は目立たなくても、黒色のサーミスタが目立ってしまい、火災感知器が周囲の色と調和しないという課題がある。
【0006】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、外観を損ねることなく火災感知器の種別を識別できるようにすることにある。
本発明の他の目的は、熱感知素子としてサーミスタを用いている火災感知器において、サーミスタやプロテクタなどの部品を筐体に対して目立たなくし、設置される天井等の周囲色となじませ、周囲環境との調和を損なわないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明は、
火災検出時に点灯又は点滅する環状の作動表示灯を備えている火災感知器であって、
前記作動表示灯の表示部となる透光性材料で形成された環状の光出射部に、
前記火災感知器の種別識別のための形状パターンを火災感知器の外観と同一系統の色で形成したものである。
上記のように構成された火災感知器によれば、環状の作動表示灯を備えている火災感知器において、火災感知器に種別を環境的な違和感を与えることなく表示することが可能となる。
【0008】
また、本出願に係る火災感知器の発明は、
有底筒形の本体ケースと該本体ケースの開口側を覆う外カバー部材とからなる筐体の内部に、熱感知素子および検出回路を構成する部品が実装された回路基板が収納され、前記外カバー部材又は本体ケースの外部に露出する箇所には前記熱感知素子に対応した位置に開口が形成されているとともに、火災検出時に点灯又は点滅する作動表示灯を備えている火災感知器において、
前記外カバー部材の前記開口の周囲には、前記作動表示灯の表示部となる透光性材料で形成された環状の光出射部が配設され、
前記光出射部に火災感知器の種別識別のための形状パターンが形成され、その形状パターンが火災感知器の種類に応じて異なるように構成したものである。
【0009】
上記のように構成された火災感知器によれば、光出射部に形成した形状パターンによって火災感知器の種類を識別することが可能になるとともに、火災感知器表面や周囲の天井等の色と同一系統の色が付された所定の形状パターンで光出射部を覆うため、作動表示灯が消灯している状態で光出射部に形成した所定の形状パターンが目立たないようにすることができ、火災感知器の外観を損ねることがない。また、作動表示灯が環状の光出射部を有するため、点灯時に360°あらゆる方向から視認することができ、作動表示灯の視認性を良好にすることができる。
【0010】
ここで、望ましくは、前記外カバー部材には、複数の隔壁とこれらの隔壁の先端部が接続されるリング状ヘッド部を有し前記開口より突出する前記熱感知素子の頭部を保護するプロテクタ部が設けられ、
前記プロテクタ部の表面は前記外カバー部材の表面と同一系統の色と見えるよう加工され
前記光出射部に形成された前記形状パターンは、前記プロテクタ部の隔壁の間で前記光出射部の環を部分的に覆う(分断する)ように形成される。
かかる構成によれば、プロテクタ部を有する火災感知器において、プロテクタ部を目立たなくすることができる。また、光出射部に形成された前記形状パターンが光出射部の環を部分的に覆う(分断する)ように形成されているため、前記形状パターンの位置を容易に見つけることができ、火災感知器の種類の確認を迅速に行うことができる。
【0011】
また、望ましくは、前記作動表示灯は、前記回路基板に実装された発光素子と、前記熱感知素子の周囲に配設された光出射部と、前記発光素子より発せられた光を前記光出射部へ誘導する導光部とを備え、
前記光出射部は、前記熱感知素子の径よりも内径の大きな挿通用円筒部および該挿通用円筒部の前記回路基板の側から当該回路基板から遠ざかる方向へ広がるすり鉢状部を備え光透過部材により形成された内カバーにより構成され、前記内カバーは前記挿通用円筒部内に前記熱感知素子の基部が位置するように配設され、
前記導光部は、前記発光素子より発せられた光を前記すり鉢状部へ誘導可能であり、
前記すり鉢状部の中心側の表面に被膜が形成され、前記すり鉢状部の周縁部より前記導光部により誘導された光の一部が出射されるように構成する。
【0012】
かかる構成によれば、内カバーのすり鉢状部の周縁部より出射された光が熱感知素子に周囲から照射され、熱感知素子を明るく照らすため、多方向から見た作動表示灯の視認性を向上させることができる。
【0013】
さらに、望ましくは、前記すり鉢状部の前記被膜は、前記外カバー部材の表面と同一系統の色であるように構成する。
かかる構成によれば、すり鉢状部を有する内カバーを筐体(外カバー)に対して目立たないようにすることができる。
【0014】
また、望ましくは、前記熱感知素子の表面は前記外カバー部材の表面と同一系統の色で、かつ表示灯の発光色が反射しやすい色に着色されているように構成する。
かかる構成によれば、熱感知素子の表面は前記外カバー部材の表面と同一系統の色に着色されているため、サーミスタを筐体(外カバー)に対して目立たず周囲環境の色と調和させるができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る火災感知器によれば、監視時(作動表示灯消灯時)は周囲の色と調和し、作動表示灯点灯時は全方向から視認性が良い形での点灯が可能となり、外観を損ねることなく火災感知器の種別を識別可能にすることができる。また、サーミスタやプロテクタなどの部品を備えた火災感知器において、種別識別のための形状パターンおよびサーミスタやプロテクタなどの部品を筐体に対して目立たない形で設けることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明を熱感知器に適用した場合の一実施形態を示すもので、(A)は正面断面図、(B)は斜視図である。
【
図2】
図1の実施形態の熱感知器を構成する内カバーの詳細に構成例を示すもので、(A)は正面断面図、(B)は底面図である。
【
図3】(A)は
図2の内カバーにおいて内カバーに外カバーを被せた際に覆われる領域を示した図、(B)は光出射部に設ける種別識別用の形状パターン例を示す図である。
【
図4】
図1の実施形態の熱感知器の変形例を示す正面断面図である。
【
図5】
図1の実施形態の熱感知器を構成する内カバーの他の構成例を示すもので、(A)は正面断面図、(B)は底面図である。
【
図6】
図1の実施形態の熱感知器を構成する内カバーのさらに他の構成例を示す正面断面図である。
【
図7】内カバーおよびプロテクタ部の他の構成例を示すもので、(A)は正面断面図、(B)は底面図である。
【
図8】本発明を煙感知器に適用した場合の実施形態を示すもので、(A)は正面図、(B)は斜視図である。
【
図9】本発明の変形例を示すもので、(A)は熱感知器に適用した変形例を示す底面図、(B)は煙感知器に適用した変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る熱感知器の一実施形態について説明する。
図1(A)には実施形態の熱感知器の正面断面図が、
図1(B)には実施形態の熱感知器の斜視図が示されている。
本実施形態の熱感知器10は、熱感知素子としてサーミスタを用い火災に伴い発生した熱によって熱せられた空気がサーミスタに接触することで生じる電気抵抗の変化を検出して火災を検知可能な感知器であり、建造物の天井面などに設置されて使用されるように構成されている。
【0018】
本実施形態の熱感知器10は、
図1に示すように、熱を感知する部品を収容するための収容凹部11Aを有し建造物の天井面に取り付けているベース部材に結合可能な有底筒形の本体ケース11と、中央にサーミスタの先端部を覆うプロテクタ部を有し前記本体ケース11の開口側全体を覆う外カバー12と、該外カバー12の周縁部を覆いつつ天井面の取り付けネジや配線を隠すための化粧カバー13とを備え、本体ケース11と外カバー12とにより内部に収容空間を有する筐体が形成される。
【0019】
また、本実施形態の熱感知器10は、前記本体ケース11の収容凹部11A内に収容された回路基板14と、該回路基板14に実装されたサーミスタ15と、該サーミスタ15が挿通可能な挿通孔を有し上端が上記回路基板14の表面に接するように配設された円筒部16aと該円筒部16aから下方へ向かって広がるすり鉢状部16bとすり鉢状部16bの下端に設けられた鍔部16cとを有する内カバー16を備える。
【0020】
上記回路基板14は、上面および下面に火災感知のための電子回路を構成する抵抗や容量、IC(半導体集積回路)などの電子部品が実装されるプリント配線基板により構成され、回路基板14のほぼ中央にサーミスタ15のリード端子の先端が回路基板14を貫通して反対側の面より突出し、フロー半田付け等によって接続される。
また、本実施形態の熱感知器においては、外カバー12と化粧カバー13が白色の樹脂で形成されているとともに、サーミスタ15として、表面に白色のエポキシ樹脂等の塗料が塗布されたものが使用されている。なお、筐体の色とサーミスタの被覆の色を同系色とする場合は、表示灯の発光色が反射しやすい色とする。
【0021】
一方、外カバー12には、その中央に、上記内カバー16の鍔部16cに少なくとも1部が当接する(重なる形で当接する)円形状の開口部12Aが形成されているとともに、上記内カバー16の下方に位置するリング状のヘッド部12Bが設けられ、該ヘッド部12Bの近傍まで上記サーミスタ15の頭部が達するように、サーミスタ15が配設されている。
さらに、上記リング状ヘッド部12Bと外カバー12の下壁との間に、
図1(B)に示すように、放射状に配設された隔壁12Cが複数個(例えば6個)形成され、これらの隔壁12C間に外部の空気をケース内部に流入可能にする流入口として機能する開口が設けられている。ヘッド部12Bと隔壁12Cとによってプロテクタ部が構成される。ここで、上記隔壁12Cは板状でも良い。
【0022】
また、本実施形態の熱感知器においては、すり鉢状部16bを有する内カバー16がポリカーボネート樹脂等の透光性材料で形成されているとともに、この内カバー16の鍔部16cに対応する位置に、動作状態報知用のLED(発光ダイオード)17が実装されている。このLED17には、筐体と異なる色(例えば赤)の光を発するものが使用されている。そして、内カバー16の鍔部16c裏面のLED17と対向する部位には、凹部からなる導光部16eが設けられている。
【0023】
また、内カバー16の鍔部16c裏面のLED17と対向する部位には、凹部からなる導光部16eが設けられている。また、鍔部16cには、導光部16eと反対側の面(図では下面)に光反射部16fが設けられている。光反射部16fは、側方から見たときに断面がV字をなす凹部(溝)で構成されており、導光部16eから入光したLED17の光は光反射部16fで反射され、内カバー16の鍔部16cから内カバー16全体へ誘導され、内カバー16から光が出射され、感知器が作動中であることを表示することができるようになっている。内カバー16から出射された光は、放射状に配設された隔壁12Cの間から外側へ放出されるため、360度あらゆる方向から視認することができ、作動表示灯の視認性が良好となる。なお、LED17は1個に限定されず、2個以上であっても良い。
【0024】
さらに、本実施形態の熱感知器では、内カバー16のすり鉢状部16b及び鍔部16cから出射した光が中央の白色のサーミスタ15の表面に当たって反射することで、サーミスタ15も表示部として機能することができ、見かけ上の発光表示の面積を大きくしたり視認可能な方向を広げたりすることができる。
具体的には、サーミスタ15が一般的な黒色の場合、サーミスタ15によって内カバー16のすり鉢状部16bの一部分が隠されるとともにサーミスタ15に当たった作動表示灯の光は吸収されて光量が減少してしまうこととなるが、サーミスタ15の表面が白色等の表示灯の発光色が反射しやすい色にすると、すり鉢状部16bから出射した光(例えば赤色)がサーミスタ15の表面に当たって反射するため光量の減少が回避され、発光状態が見え易くなる。なお、サーミスタ15の表面は、光沢のある仕上げではなく梨地仕上げ(乱反射する加工)とするのが良い。これにより、すり鉢状部16b及び鍔部16cからの光をサーミスタ15の表面で乱反射させて、発光状態をより見え易くすることができる。
【0025】
さらに、本実施形態の熱感知器においては、内カバー16の円筒部16aの内側に樹脂19を充填した構造を採用している。これにより、天井面に形成された配線等を通す穴から筐体内(本体ケース11内側の基板収納空間)に圧力の高い空気が入り込み、その高圧の空気が内カバー16の円筒部16aとサーミスタ15との隙間から流れ出すことで、サーミスタ15の周囲に円筒状の気流層が生じ、その気流によってサーミスタ15に熱気流の流入が阻害されたり、サーミスタ15に水が付着し、埃が堆積し易くなって熱感知機能が低下したりするのを防止することができる。また、充填する樹脂19として白色の樹脂を使用することで、円筒部16aの内側の色(例えば、基板表面の色)が外部から視認する際に樹脂19で覆い隠される。なお、充填する樹脂19は必ずしも白色である必要はなく、樹脂19の充填後に樹脂の表面に白色の被覆を形成してもよい。
【0026】
次に、
図2および
図3を用いて、
図1の実施形態の熱感知器を構成する内カバー16の詳細について説明する。なお、
図2において、(A)は内カバー16の断面図、(B)は内カバー16の底面図、
図3(A)は内カバー16に外カバー12を被せた際に覆われる領域を示した底面図、
図3(B)は光出射部に設ける種別識別用の形状パターン例を示す図である。
内カバー16は透光性材料で形成され、鍔部16cの裏面には凹面状をなす導光部16eが形成され、この導光部16eに対向するように、回路基板14にLED17が実装されている。また、導光部16eの反対側の鍔部16cの表面にはV溝からなる光反射部16fが設けられており、LED17から出射された光は導光部16eに入射され、光反射部16fで反射され、鍔部16c全体へ誘導されるようになっている。
【0027】
また、内カバー16のすり鉢状部16bの表面(
図2では下面)には、白色の塗料を塗布して被膜18が形成されており、内カバー16の鍔部16cから光を出射し、感知器が作動中であることを表示することができるようになっている。
さらに、本実施例においては、内カバー16に外カバー12を被せた際に覆われる領域を表わす
図3(A)に示されているように、鍔部16cの外側の環状の円領域16c-1は外カバー12により覆われる領域であり、組み立てられた状態では、筐体外への発光が行われない領域となる。一方、鍔部16cの内側の環状の円領域16c-2は外カバーに覆われない領域であり、組み立てられた状態での実質的な発光部となる。この内側の領域16c-2が、後述の種別を示す領域となる。
なお、
図3(A)においては、内カバー16の鍔部16cを横切る6本の隔壁12Cが円の中心から放射状に約60度間隔で配置されている。そして、各隔壁12Cの間が形状パターンの形成領域#1~#6とされている。
図3(A)では、隔壁が6本の例を示したが、これに限られず、隔壁の数は6本以外でも同様に種別を示す領域を設定できる。
【0028】
上記各領域#1~#6においては、熱感知器の種別ごとに異なる形状パターンで、すり鉢状部に塗布した塗料と同じ色の塗料を塗布することにより熱感知器の種別を判別することが可能となる。
種別例は、以下の通りである。
(a)差動式か、定温式か、
(b)1種か、2種か、特種か、
(c)防水か、非防水か、
各種別について、個別に区別する形状パターンとするために、定義の一例を以下に示す。
(定義)
差動:1本線/定温:2本線 ※(線の本数)
1種:1領域、/2種:2領域連続、/特種:3領域連続 ※(連続領域の使い方)
防水:シングル、/非防水:ダブル(対角線上で2倍) ※(領域の片側を使用するか、両側を使用するか)
【0029】
図3(A)に、一例として、感知器が[定温/防水/特種]の場合の#1~#6の領域に対する種別表記方法を示す。
この場合、種別が定温であるので「2本線」、特種であるので「3領域連続」、機能が防水であるので「シングル」、となり、この例では#1~#3の各領域に2本線の白色塗料が塗布される形態となる。
塗布の形状パターンの例を、次の表1および表2に示す。このうち、表1は定温型の感知器の種別と形状パターンとの関係を、表2は差動型の感知器の種別と形状パターンとの関係を示す。
【0030】
【0031】
なお、上記で示した種別の他に、「R型対応か/P型対応か」、「自動試験機能付きか/自動試験機能なしか」というような形状パターンもあるが、感知器に表す種別の形状パターンが増える場合は、例えば各領域に塗布する線の数を3本、4本……と増やすことで、区別する種別が増えたとしても、種別を区別する表記は可能である。
また、感知器に表す種別の形状パターンを増やす方法として、リングを半径方向の線で切断するように塗料を塗布する例を説明したが、リングを年輪のように2重,3重に多重化する形でも種別を区別する表記が可能である。リングの分断とリングの多重化を組み合わせると判別可能な種別をさらに増やすことができる。
【0032】
また、光出射部20の各領域#1~#6に塗布される白色の塗料の面積は、光出射部20から照射される光量が少なくなりすぎず、且つ目視で形状パターンの判別ができる程度の大きさに設定される。なお、光出射部20に塗布される形状パターンとしては、
図3(B)に示すような形状パターンが考えられる。このうち上段は上記実施形態で使用したリングを横切る線の形状パターンで左から1本線、2本線、3本線、4本線を示している。下段は、円環状の光出射部を年輪の様に2重円環にした場合に適した形状パターンの例で、上段で示した例を上下に分割した形状パターンを示す。
なお、本発明は環状に形成された構造物(領域)に形状パターンの加工を施すとともに、感知器本体の色と環状構造物(環状表示灯)の色を異ならせることにより、感知器の種別を簡単に識別することができるようにするものであるからプロテクタの隔壁(フィン)の数や、領域の分け方等は適宜応用可能である。
【0033】
さらに、
図9(A)に上記実施例の変形例の熱感知器の平面図を示す。この変形例では、外カバー12の内側の鍔部16cの内側の円領域16c-2に隔壁12Cにより区切られた領域をそれぞれ#1-#6とした際の形状パターンの形成方法を説明する。
図9(A)と
図3(A)とは各領域の表記が左右反転しているが、
図3(A)は見る方向が底面図で、
図9(A)は平面図であり、同じ領域の位置が左右反転している。
この変形例では、鍔部16cの内側の円領域16c-2の領域への形状パターンの形成の仕方として、外カバー12の内カバー16の鍔部16cの内側の円領域16c-2に接する位置(縁部)に、形成パターンに相当する突起を外カバー12側の縁側から内側へ突出するように外カバーと一体に成型し、外カバー12を内カバー16に重ねて組み立てることで、鍔部16cの内側の円領域16c-2の一部を覆う(分断する)形状パターンとしたものである。
【0034】
さらに、本実施例の内カバー16には、
図2(A)に示すように、すり鉢状部16bから鉛直方向上方へ向かって突出するように形成された3本の係止片16dが設けられている(
図2には、3本の係止片16dのうち1本が示されている)。係止片16dの先端には爪部が形成されており、この爪部が、回路基板14に形成されている係合穴14aに係合されることで、内カバー16が回路基板14に結合されている。この例では3本の係止片で説明したが、対角線上に配置した2本の係止片で係合穴に係合させるようにしても特に支障はない。
【0035】
なお、内カバー16は、
図4に示すように、円筒部16aを長くしてすり鉢状部16bをなくし、円筒部16aに鍔部16cを直結させた形状であっても良い。
また、回路基板14の表面(
図4では下面)に、白色のレジストや絶縁性塗料の塗布、あるいはシルク印刷しても良い。同様に実装部品20の表面を白色に塗っても良い。内カバー16の透光性材料の透明度が高い場合、内カバー16越しに回路基板14や実装部品21が透けて外カバー12の開口部から基板表面の色が透けて見えたり、開口部が黒っぽく見えたりしてしまうが、回路基板14及び実装部品21の表面を白色に着色することで、外カバー12の開口部を明るくし、感知器全体が白色で統一されているように見せることができる。
【0036】
次に、
図5~
図7を用いて、上記内カバー16の他の構成例について説明する。このうち、
図5の内カバー16は、すり鉢状部16bの表面の外周縁を除いた部位と鍔部16cの表面に白色の塗料を塗布して被膜18を形成したものである。また、すり鉢状部16bの表面の外周縁にリング状の光出射部20が設けられ、この光出射部20を種別識別領域としている。この光出射部20を種別識別領域での種別判定のための形状パターンの形成方法は、前記実施例と同様で良い。
この実施例においては、円柱状の導光部16eより入射されたLEDの光は、光反射部16fで反射されて鍔部16cに沿って水平方向へ広がり、すり鉢状部16bの表面の被膜18のない外周縁の円環状部分から出射される。なお、光反射部16fは、
図5(B)において矢印C方向から見たときも断面がV字をなす溝として形成されている。
【0037】
本実施例を適用した感知器においては、すり鉢状部16bの表面の被膜18のない外周縁の上記円環状部分から出射した光が、プロテクタ部の柱の隙間から外部へ広がるとともに、一部は白色のサーミスタ15の表面に照射されて反射する。これにより、作動表示灯の点灯状態を視認させ易くすることができる。
なお、白色の被膜18は、すり鉢状部16bの表面でなく裏面に形成しても良いし、塗料を塗布して形成する代わりに白色のフィルムを貼り付けても良い。また、白色の被膜18は、すり鉢状部16bの表面と裏面に形成しても良い。この場合、内カバー16から光の出射する面積(範囲)が絞られ、表示灯としての光量を充分得ることができる。
また、内カバーの材質として、透明度の高い材質を使う場合は、発光させる面の裏面に多数の細い線状の溝からなる微細加工を施すようにしてもよい。
【0038】
図6に示す実施例の内カバー16は、鍔部16cの全面には被膜を設けず、すり鉢状部16bの表面全体に白色の塗料を塗布して被膜18を形成するとともに、鍔部16cの内周縁に局所的な段差部16gを設け、この段差部16gの表面に塗料を塗布することで、光出射部20に熱感知器の種別ごとに異なる形状パターンを形成したものである。光反射部16fは、導光部16eからの光を鍔部16cに沿って反射するように、側方視でV字をなすように形成されている。
従って、
図6に示す内カバー16の底面図は
図2(B)と同じになる。このように段差部16gを設けることで、光出射部20に熱感知器の種別ごとに異なる形状パターン形成のために塗料を塗布する際に、誤って領域外を塗布してしまうミスを回避することができる。
【0039】
図7(A),(B)には上記実施例の熱感知器の変形例が示されている。このうち、
図7(A)は内カバー16の断面説明図、
図7(B)は外カバー12の中央のプロテクタ部を下から見た状態を示す図である。因みに、
図7(A)は、
図7(B)におけるA-A線に沿った断面を示している。
【0040】
この変形例の熱感知器は、
図7(A)に示すように、内カバー16の鍔部16cが外側へ張り出すように形成されているとともに、鍔部16cの表面(図では下面)に長方形に近い台形状の凸状部16hが所定のピッチで円周方向に並んで形成されている。
また、外カバー12には、
図7(B)に示すように、上記凸状部16hと嵌合可能な複数の窓12fが円周方向に並んで形成されている。凸状部16hの裏面には、多数の細い線状の溝からなる微細加工を施すようにしてもよい。なお、凸状部16hの形状は台形(疑似長方形)に限定されず、菱形、円形、楕円形など任意の形状を採用することができる。
さらに、本変形例の熱感知器においては、凸状部16hの形成パターンを感知器の種類に応じて変えることによって、感知器の種類を識別できるように構成されている。
形成パターンについては、
図2で示した形状パターンの例を使うことができるが、他で定義した形状パターンでも良い。
【0041】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、光出射部20を種別識別領域として利用し白色の塗料を塗布しているが、白色以外の色の塗料を塗布するようにしてもよい。
好適な例としては、感知器表面と同系色で作動表示灯の光(赤、青、緑、黄など)を反射しやすい色の塗料を塗布して被膜を形成するのが望ましい。
また、上記実施形態ではサーミスタ15の表面を白色とすると説明したが、本発明は、表面が白色でないサーミスタを使用した熱感知器に適用しても良い。
【0042】
また、上記実施形態では、作動表示灯の発光素子として砲弾型のLEDを使用した場合の内カバー16の形状の例を示したが、砲弾型のLEDの代わりに、面実装可能な薄型のLEDチップを使用することも可能であり、その場合、
図7(A)に示すように、導光部16eとして、円柱状のものを内カバー16の鍔部16cに設けてその端面をLEDチップに対向させるように構成しても良い。
さらに、上記実施形態ではサーミスタ15を保護するプロテクタ部を有する熱感知器に適用したものを説明したが、本発明は、プロテクタ部を有していない感知器全般に適用することも可能である。
【0043】
次に煙感知器についての実施例を
図8(A)、(B)および
図9(B)を参照して説明する。
このうち、
図8(A)は煙感知器の平面図、(B)は煙感知器の斜視図、
図9(B)は変形例の煙感知器の斜視図である。
煙感知器は
図8(A)に示すように、設置面が上側で、感知器の煙流入口が下側(空間側)になる形で設置される。この実施例では、煙流入口の周りを囲む形で環状の作動表示灯が設置されている。
【0044】
図8(B)に示すように、煙感知器の煙流入口は暗箱を覆う天蓋12Bと天蓋12Bを支える4本の支柱12Cの間にあり、その外側で支柱12Cの根本側(天蓋と反対側)に環状の作動表示灯(16c-2)が配置される場合の例を説明する。図中では、支柱1(12C-1)と支柱2(12C-2)が見えており、支柱3と支柱4は背面側で隠れているが、時計回り方向に順に支柱1、支柱2、支柱3、支柱4と順に配置されているものとして説明する。支柱4の右側で支柱1左側を領域1(#1)、支柱1右側で支柱2の左を領域2(#2)、支柱2右側で支柱3の左を領域3(#3)、支柱3右側で支柱4の左を領域4(#4)、とした場合を例にとって説明する。
【0045】
各領域#1-#4に接する環状の作動表示灯の領域を煙感知器の種別判定用に利用する際の定義の一例を、次の表3に示す。
【表3】
【0046】
表3に示す通り、煙感知器の種別を各領域に対応させて定義し、その定義に従って環状の表示灯の対応する領域(#1-#4)に種別識別用の形状パターンを形成する。例えば、煙感知器の種別として1種、2種、3種があった場合、種別に合わせて1種は1本線、2種は2本線、3種は3本線と対応付けて、4つの領域に何れかの種別に対応した種別以降「形状パターン」と略して説明する。このように構成(形成)することで種別の識別が可能となる。
図8(B)では、煙感知器の3種の場合を示しており、領域1(#1)と領域3(#3)に3本線の形状パターンを形成した例を示している。この例では形状パターンの確認しやすさ、バランスを考慮して対向する2つの領域に形状パターンを付与している。
また、表3では、煙感知器の2種を形状パターンなしとしているがより大量に使われる種別について形状パターンなしとすることで、形状パターンの付与の効率化ができる。
【0047】
また、さらに別の種別を表す場合、作動表示灯となる領域16c-2の支柱(フィン)に対応する位置に形状パターンを付すことで別の種別を表すことも可能となる。具体例を、次の表4に示す。
【表4】
【0048】
表4は、煙感知器の他の種別として、P型で試験機能なしと/P型で試験機能ありと/R型(試験機能あり)の3種類があり、自動試験機能がない場合は支柱(フィン)位置に形状パターンを形成しない、P型で試験機能がある場合に支柱1と支柱3に対応する環状の作動表示灯の支柱(フィン)の位置に形状パターンを形成する、R型の場合全ての支柱に対応する環状の作動表示灯の支柱(フィン)の位置に形状パターンを形成する、ことを示している(
図8(B))。
形状パターンの形成方法は、別の実施例で説明した通り、感知器の外観の色と同じ又は外観の色と同系色で形成するが、塗料の塗布,シールの貼り付け等での実現が可能である。
ここで、環状の作動表示灯が支柱の内側に配置される場合でも表3や表4に示す定義に従って形状パターンを形成することが可能であり、上記の説明と同様に種別判定もできる。
【0049】
図9(B)に示す変形例は、
図8(B)と同様に3種に自動試験機能付き煙感知器を表す例であり、環状の作動表示灯の設置後に外側にカバー部材(化粧部材)が取り付けられる場合の形状パターンの形成の例を示している。外側にカバー部材に環状の作動表示灯を一部覆う突起を一体成型で形成し、形成した突起で環状の作動表示灯覆を覆うことで、上記実施例で説明した基準で環状の作動表示灯に形状パターンを形成することができる。
【符号の説明】
【0050】
10 火災感知器
11 本体ケース
12 外カバー
13 化粧カバー
14 回路基板
15 サーミスタ(熱感知素子)
16 内カバー
16a 円筒部
16b すり鉢状部
16c 鍔部
16d 係止片
16e 導光部
16f 反射部
17 LED(発光素子)
18 被膜
19 充填樹脂
20 光出射部