(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118796
(43)【公開日】2022-08-16
(54)【発明の名称】エレベータの監視装置、監視システム、及び監視方法
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20220808BHJP
B66B 3/02 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
B66B5/00 G
B66B3/02 Q
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021015525
(22)【出願日】2021-02-03
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】503135063
【氏名又は名称】日本昇降機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100175662
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100101409
【弁理士】
【氏名又は名称】葛西 泰二
(74)【代理人】
【識別番号】100175385
【氏名又は名称】葛西 さやか
(72)【発明者】
【氏名】岡本 成史
(72)【発明者】
【氏名】早瀬戸 裕樹
【テーマコード(参考)】
3F303
3F304
【Fターム(参考)】
3F303CB08
3F304EA05
3F304ED16
(57)【要約】
【課題】エレベータに設置した後に、乗りかごの現在位置を算出するための初期値を自動的に設定できる監視装置を提供する。
【解決手段】監視装置10は、エレベータEの通常運転中に乗りかご30が最下階又は最上階に到着した際、その直前にスローダウンスイッチ1A又はスローアップスイッチ1BがOFF状態からON状態に切り替わるのを検知して、最下階又は最上階を乗りかご30の現在位置を算出する際の初期値に設定する。その後、乗りかご30が移動すると、最下階又は最上階を初期値として、乗りかご30の直前停止階と、この直前停止階からの移動方向と、直前停止階を基準として現在の停止階までに通過した階床数とから、乗りかご30の現在位置を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路と、前記昇降路内を移動する乗りかごと、前記昇降路内において最下階の近傍に設置されるスローダウンスイッチと、前記昇降路内において最上階の近傍に設置されるスローアップスイッチとを備えるエレベータの運転状況を監視する監視装置であって、
前記乗りかごの移動方向を検知するかご移動方向検知機能、
前記乗りかごが停止又は通過した階床を検知する階床検知機能、
前記スローダウンスイッチのOFF状態からON状態への切替わりを検知するスローダウン検知機能、
前記スローアップスイッチのOFF状態からON状態への切替わりを検知するスローアップ検知機能、
前記乗りかごの直前停止階と、前記直前停止階からの移動方向と、現在の停止階に停止するまでに通過した階床数とから、前記乗りかごの現在位置を算出する位置算出機能、及び、
前記乗りかごの通常運転中に、前記スローダウンスイッチ及び前記スローアップスイッチのいずれか一方のOFF状態からON状態への切替わりを検知したときに、前記最下階又は前記最上階を前記乗りかごの現在位置の算出の初期値に設定する初期値設定機能を有している、エレベータの監視装置。
【請求項2】
前記エレベータの運転を制御する制御盤にフォトカップラを介して接続され、前記制御盤に対し入力される信号又は前記制御盤から出力される信号の有無を検知する信号検知部を更に備え、
前記信号検知部で検知した信号の有無に基づいて、前記かご移動方向検知機能、前記階床検知機能、前記スローダウン検知機能、及び前記スローアップ検知機能のうちの少なくとも1つが実現される、請求項1記載のエレベータの監視装置。
【請求項3】
前記エレベータの外部に設置される監視用サーバコンピュータが接続される通信回線に接続可能な通信手段を更に含み、
前記乗りかごの現在位置に関する情報を、前記通信手段により前記通信回線を介して、前記監視用サーバコンピュータへ送信する情報送信機能を更に有する、請求項1又は請求項2記載のエレベータの監視装置。
【請求項4】
通信回線と、
前記通信回線に接続される請求項3記載のエレベータの監視装置と、
前記通信回線に接続される監視用サーバコンピュータとを含み、
前記エレベータの乗りかごの現在位置に関する情報を、前記エレベータの監視装置から、前記通信回線を介して、前記監視用サーバコンピュータへ送信するように構成される、エレベータの監視システム。
【請求項5】
昇降路と、前記昇降路内を移動する乗りかごと、前記昇降路内において最下階の近傍に設置されるスローダウンスイッチと、前記昇降路内において最上階の近傍に設置されるスローアップスイッチとを備えるエレベータの運転状況を監視する監視方法であって、
請求項1から請求項3のいずれかに記載する監視装置を設置した後の前記エレベータの通常運転開始後に、前記スローダウンスイッチのOFF状態からON状態への切替わり及び前記スローアップスイッチのOFF状態からON状態への切替わりのいずれか一方を検知したときに、前記最下階又は前記最上階を前記乗りかごの現在位置の算出の初期値に設定する初期値設定工程、
前記乗りかごの直前停止階からの移動方向を検知するかご移動方向検知工程、
前記乗りかごが前記直前停止階から現在の停止階へ移動するまでに通過した階床数を検知する階床検知工程、
前記乗りかごの直前停止階と前記移動方向と前記階床数とから、前記乗りかごの現在位置を算出する位置算出工程とを含む、エレベータの監視方法。
【請求項6】
前記エレベータの通常運転中に、前記スローダウンスイッチのOFF状態からON状態への切替わり及び前記スローアップスイッチのOFF状態からON状態への切替わりのいずれか一方を検知したときに、前記最下階又は前記最上階を前記乗りかごの現在位置の算出の初期値に再設定する初期値再設定工程を更に含む、請求項5記載のエレベータの監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの乗りかごの現在位置を監視するための監視装置、監視システム、及び監視方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベータの乗りかごの位置を把握する手段として、特許文献1に、巻上機の回転に同期してエンコーダから出力されるパルス信号をカウントすることで乗りかごの移動中の位置を連続的に検出するかご位置検出手段と、乗りかごの移動に伴い各階床毎に定められた着床位置を検出する着床位置検出手段と、この着床位置検出手段によって検出される着床位置の検出回数を、終端階を基準にして常時カウントするカウント手段とを備えるエレベータの制御装置が記載されている。又、特許文献1には、乗りかごの実際の位置と検出位置との間にずれが生じた場合には、乗りかごを最寄階又は終端階まで移動させ、その位置を基準にしてかご位置のずれを補正することも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、エレベータに制御装置を設置した後、乗りかごの現在位置の検出処理を初めて実行する際に、初期値をどのように設定するかについての記載がない。又、特許文献1の制御装置は、エレベータの駆動制御システムの一部に組み込まれる構成のため、既設のエレベータに後から設置するのは、エレベータの製造業者や施工業者以外の者では困難である。
【0005】
本発明は、乗りかごの直前停止階、移動方向、及び通過した階床数から乗りかごの現在位置を算出することのできる監視装置、監視システム、及び監視方法において、監視装置の設置後に初めてエレベータの通常運転を開始した時に、乗りかごの現在位置の算出の初期値を自動的に設定できる手段を提供することを目的とするものである。又、本発明は、既存のエレベータに対し容易に導入し得る監視装置及び監視システムの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、請求項1記載の発明は、昇降路と、昇降路内を移動する乗りかごと、昇降路内において最下階の近傍に設置されるスローダウンスイッチと、昇降路内において最上階の近傍に設置されるスローアップスイッチとを備えるエレベータの運転状況を監視する監視装置であって、乗りかごの移動方向を検知するかご移動方向検知機能、乗りかごが停止又は通過した階床を検知する階床検知機能、スローダウンスイッチのOFF状態からON状態への切替わりを検知するスローダウン検知機能、スローアップスイッチのOFF状態からON状態への切替わりを検知するスローアップ検知機能、乗りかごの直前停止階と、直前停止階からの移動方向と、現在の停止階に停止するまでに通過した階床数とから、乗りかごの現在位置を算出する位置算出機能、及び、乗りかごの通常運転中に、スローダウンスイッチ及びスローアップスイッチのいずれか一方のOFF状態からON状態への切替わりを検知したときに、最下階又は最上階を乗りかごの現在位置の算出の初期値に設定する初期値設定機能を有しているものである。
【0007】
このように構成すると、エレベータの監視装置は、エレベータの通常運転中に乗りかごが最下階又は最上階へ接近することによりスローダウンスイッチ又はスローアップスイッチがOFF状態からON状態に切り替わるのを検知して、最下階又は最上階を乗りかごの現在位置を算出する際の初期値に設定する。その後、乗りかごが最下階又は最上階からの移動を開始すると、最下階又は最上階を初期値として、乗りかごの直前停止階と、この直前停止階からの移動方向と、直前停止階から現在の停止階までに通過した階床数とに基づき、乗りかごの現在位置を算出する。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加えて、エレベータの運転を制御する制御盤にフォトカップラを介して接続され、制御盤に対し入力される信号又は制御盤から出力される信号の有無を検知する信号検知部を更に備え、信号検知部で検知した信号の有無に基づいて、かご移動方向検知機能、階床検知機能、スローダウン検知機能、及びスローアップ検知機能のうちの少なくとも1つが実現されるものである。
【0009】
このように構成すると、信号検知部は、制御盤に対する信号入力又は制御盤からの信号出力が生じると、それをフォトカップラを介して検知する。検知した信号の種類に基づいて、かごの移動方向、直前停止階から現在の停止階までに通過した階床数、スローダウンスイッチのOFF状態からON状態への切替わり、及びスローアップスイッチのOFF状態からON状態への切替わりのうちの少なくとも1つを検知する。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の構成に加えて、エレベータの外部に設置される監視用サーバコンピュータが接続される通信回線に接続可能な通信手段を更に含み、乗りかごの現在位置に関する情報を、通信手段により通信回線を介して、監視用サーバコンピュータへ送信する情報送信機能を更に有するものである。
【0011】
このように構成すると、エレベータの監視装置は、検知した信号に基づいて算出した乗りかごの現在位置に関する情報を、通信手段及び通信回線を利用して、外部の監視用サーバコンピュータへ送信する。
【0012】
請求項4記載の発明は、通信回線と、通信回線に接続される請求項3記載のエレベータの監視装置と、通信回線に接続される監視用サーバコンピュータとを含み、エレベータの乗りかごの現在位置に関する情報を、エレベータの監視装置から、通信回線を介して、監視用サーバコンピュータへ送信するように構成される、エレベータの監視システムである。
【0013】
このように構成すると、エレベータの監視装置が乗りかごの現在位置に関する情報を算出し、これを通信手段及び通信回線を利用して外部の監視用サーバコンピュータへ送信する。
【0014】
請求項5記載の発明は、昇降路と、昇降路内を移動する乗りかごと、昇降路内において最下階の近傍に設置されるスローダウンスイッチと、昇降路内において最上階の近傍に設置されるスローアップスイッチとを備えるエレベータの運転状況を監視する監視方法であって、請求項1から請求項3のいずれかに記載する監視装置を設置した後のエレベータの通常運転開始後に、スローダウンスイッチのOFF状態からON状態への切替わり及びスローアップスイッチのOFF状態からON状態への切替わりのいずれか一方を検知したときに、最下階又は最上階を乗りかごの現在位置の算出の初期値に設定する初期値設定工程、乗りかごの直前停止階からの移動方向を検知するかご移動方向検知工程、乗りかごが直前停止階から現在の停止階へ移動するまでに通過した階床数を検知する階床検知工程、乗りかごの直前停止階と移動方向と階床数とから、乗りかごの現在位置を算出する位置算出工程とを含むものである。
【0015】
このように構成すると、監視装置の設置後にエレベータの通常運転を開始したときに、初期値設定工程でスローダウンスイッチ又はスローアップスイッチがOFF状態からON状態へ切替わるのを検知すると、エレベータの乗りかごが最下階又は最上階に到着すると判断して、最下階又は最上階を乗りかごの現在位置を算出する際の初期値に設定する。その後、乗りかごが移動すると、かご移動方向検知工程及び階床検知工程を実行して、最下階又は最上階を初期値として、直前停止階、直前停止階からの移動方向、現在の停止階に停止するまでに通過した階床数を取得し、取得した乗りかごの移動方向と通過した階床数とに基づき、位置算出工程を実行して、乗りかごの現在位置を算出する。
【0016】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、エレベータの通常運転中に、スローダウンスイッチのOFF状態からON状態への切替わり及びスローアップスイッチのOFF状態からON状態への切替わりのいずれか一方を検知したときに、最下階又は最上階を乗りかごの現在位置の算出の初期値に再設定する初期値再設定工程を更に含むものである。
【0017】
このように構成すると、エレベータの通常運転の実行中にスローダウンスイッチ又はスローアップスイッチがOFF状態からON状態へ切替わるのを検知すると、初期値再設定工程を行って、最下階又は最上階を乗りかごの現在位置を算出する際の初期値に再設定する。その後、乗りかごが移動すると、かご移動方向検知工程及び階床検知工程を実行し、再設定した最下階又は最上階を初期値として位置算出工程を実行して、乗りかごの現在位置を算出する。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の発明によれば、エレベータに通常設置されるスローダウンスイッチ又はスローアップスイッチのOFF状態からON状態への切替わりを検知することにより、乗りかごが最下階又は最上階に到着したことを検知するから、エレベータの通常運転中に乗りかごの現在位置を算出するための初期値を自動的に設定することができる。従って、エレベータの監視装置を設置して最初に使用を始めるに際し、従来のように乗りかごを強制的に最下階又は最上階へ移動させる必要が無いから、直ちにエレベータの通常運転を開始することができる。又、乗りかごが最下階又は最上階に到達する度に乗りかごの現在位置を算出するための初期値を設定し直すことができるので、乗りかごの現在位置算出の正確性を担保することができる。更に監視装置は、乗りかごの位置を監視するだけなので、エレベータの製造業者や施工業者以外の者でも、既設のエレベータに後から設置するのが容易である。
【0019】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、フォトカップラを介して制御盤に対する信号入力又は制御盤からの信号出力の有無のみを検知するように構成されているから、制御盤に対する入出力信号に影響を与えない。そのため、エレベータに監視装置を設置しても、エレベータの運転制御の安全性、正確性が保証される。
【0020】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加えて、エレベータの乗りかごの現在位置を遠隔的に把握することができる。
【0021】
請求項4記載の発明によれば、エレベータの乗りかごの現在位置を遠隔的に把握することができる監視システムを提供することができる。
【0022】
請求項5記載の発明によれば、初期値設定工程を実行することにより、スローダウンスイッチ又はスローアップスイッチのOFF状態からON状態への切替わりを検知することによって乗りかごが最下階又は最上階に到着したことを検知するから、エレベータの通常運転中に乗りかごの現在位置を算出するための初期値を自動的に設定することができる。従って、エレベータの監視装置を設置してから初めてエレベータの通常運転を始めるに際し、従来のように乗りかごを強制的に最下階又は最上階へ移動させる必要が無いため、直ちにエレベータの通常運転を開始することができる。
【0023】
請求項6記載の発明によれば、請求項5記載の発明の効果に加えて、初期値再設定工程により、エレベータの通常運転の実行中に乗りかごが最下階又は最上階へ到着すると、乗りかごの現在位置を算出するための初期値を自動的に再設定することができる。よって、現在位置の算出の正確性を担保できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施の形態による監視装置を設置したエレベータの構造を概略的に示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態による監視装置を設置したエレベータの構造を概略的に示す模式図である。
【
図3】本発明の実施の形態による監視システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【
図4】本発明の実施の形態による監視装置における信号検知部が取得する信号の種類を説明する図である。
【
図5】本発明の実施の形態による監視装置における信号出力部が出力する信号の種類を説明する図である。
【
図6】本発明の実施の形態による監視方法を説明するフローチャートである。
【
図7】本発明の実施の形態による監視方法の異なる態様を説明するフローチャートである。
【
図8】本発明の実施の形態による監視システムの別態様の構成を概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1の実施の形態]
図1は本発明の実施の形態による監視装置を設置したエレベータの構造を概略的に示す斜視図であり、
図2は本発明の実施の形態による監視装置を設置したエレベータの構造を概略的に示す模式図であり、
図3は本発明の実施の形態による監視システムの構成を概略的に示すブロック図であり、
図4は本発明の実施の形態による監視装置における信号検知部が取得する信号の種類を説明する図であり、
図5は本発明の実施の形態による監視装置における信号出力部が出力する信号の種類を説明する図であり、
図6は本発明の実施の形態による監視方法を説明するフローチャートである。
【0026】
<エレベータの概要>
図1及び
図2に、本発明に係る監視装置10が設置されるエレベータEがトラクション式エレベータの場合を示す。このエレベータEは、建物等に設けられた昇降路100内に、乗りかご30及びカウンタウエイト(つり合い錘とも言う)60がそれぞれガイドレール101、102に沿って昇降可能に配置され、これら乗りかご30とカウンタウエイト60とを連結するロープ70を巻上機71で駆動することにより、乗りかご30を効率的に昇降させることができるように構成されている。
【0027】
本例では、昇降路100の天井100bの上方に機械室80が設けられ、この機械室80に、制御盤52、ロープ70が巻き付けられたシーブ72を回転駆動する巻上機71、ロープ70のつりさげ位置を調整するためのそらせ車73等と共に、本発明に係る監視装置10が設置されている。巻上機71には、通電が停止すると動作するブレーキ装置が組み込まれる。更に、図示は省略したが、機械室80には、乗りかご30の移動速度を監視し、速度が規定値を超えたときには強制的に乗りかごを減速又は停止させる調速機が設けられる。他方、乗りかご30の天井裏には、非常用電源やコントロールユニット30aが設置される。
【0028】
エレベータEは、乗りかご30の位置及び移動状況を把握する手段や各種安全装置を備えており、それらによって運転の安全性及び快適性を担保している。
【0029】
乗りかご30の位置を検出する手段としては、ロータリーエンコーダや着床スイッチが用いられる。ロータリーエンコーダ(不図示)は例えばインクリメンタル式が用いられ、巻上機71の駆動軸に取り付けられる。巻上機71の回転駆動に同期してロータリーエンコーダから出力されるパルス信号を読み取ることにより、乗りかご30の移動方向と、実際の位置(絶対位置)とを連続的に検出することができる。
【0030】
着床スイッチ(不図示)は、乗りかご30とこれが停止する各階床の乗場90との間に設けられて、乗りかご30の着床位置を検出する。着床スイッチは例えば、投光器と受光器とをコ字型に対向させて配置した光電式のスイッチと遮蔽部材とからなり、投光器から受光器への投射光の光路が遮られるとON信号(又はOFF信号)を出力するように構成される。着床スイッチは、上述のような構成のスイッチの複数個(例えば3個)を乗りかご30の底部に昇降方向に沿って所定間隔に配置したものと、昇降路100内において各階床に設けた着検板(遮蔽部材)とで構成される。乗りかご30が各階床の乗場90に到着したときの停止位置が適正範囲ならば、複数個のうちの特定の光電式スイッチの光路が着検板で遮断されON信号が出力される。従って、どの位置のスイッチからON信号が出力されているかを検知することで、乗りかご30の停止位置が適正かどうかを判定することができる。尚、スイッチから出力されるのがOFF信号の場合もある。そして停止位置が適正ならば、乗場ドア91の開閉動作が可能になる。尚、着床スイッチは、リードスイッチと永久磁石とを対向させて配置し、リードスイッチとマグネットとの間が遮蔽部材で電磁的に遮蔽されるとON信号(又はOFF信号)を出力するように構成したものを用いてもよい。
【0031】
エレベータEの安全装置としては、スローダウンスイッチ1A、スローアップスイッチ1B、リミットスイッチ2A、2B、ファイナルリミットスイッチ3A、3B、及び、緩衝器103、104等がある。
【0032】
スローダウンスイッチ1A(スローアップスイッチ1B)は、例えばマイクロスイッチを内蔵した機械式のリミットスイッチが使用され、昇降路100内において、乗りかご30が最下階(最上階)に停止するときの底部位置(天井位置)から所定距離だけ上方(下方)に離れた位置に配置されるものである。乗りかご30の外側面にはカム4が設けられ、乗りかご30が最下階(最上階)に接近すると、このカム4が接触することにより、スローダウンスイッチ1A(スローアップスイッチ1B)がOFF状態からON状態に切り替わる。そして、このON状態時における乗りかご30の降下速度(上昇速度)が規定値を超えているときには、調速機によって、乗りかご30を強制的に減速するように設定されている。
【0033】
リミットスイッチ2A、2Bは、昇降路100内の最下階及び最上階側に設けられ、乗りかご30が最下階又は最上階における規定の停止位置を通過したときに、乗りかご30の外側面のカム4が接触することによりON状態に切り替わるよう設定されている。リミットスイッチ2A、2BがON状態になった時には何らかの異常が生じているとして、巻上機71への通電を止め、乗りかごを強制的に停止させる。
【0034】
ファイナルリミットスイッチ3A、3Bは、昇降路100内において上記のリミットスイッチ2Aと底面100aとの間及びリミットスイッチ2Bと天井100bとの間にそれぞれ配置されるものであり、上記のリミットスイッチ2A、2BがON状態になっても乗りかご30が停止しなかった場合に動作する。即ち、乗りかご30の外側面のカム4が接触することによりファイナルリミットスイッチ3A、3BがON状態に切り替わったときには、エレベータEへの電力供給を遮断すると共にブレーキを作動させ、乗りかご30を強制的に停止させる。
【0035】
緩衝器103、104は、昇降路100の底面100aの所定位置に配置される。最上階や最下階の終端階において、ファイナルリミットスイッチ3A、3Bが動作しても乗りかごが十分減速しなかった場合、昇降路100の底面100aに乗りかご30又はカウンタウエイト60が衝突する可能性がある。そこで、万一衝突した時の衝撃を緩和するため緩衝器103、104が配置される。緩衝器103、104には、例えば封入したオイルの流体抵抗を利用する油入式構造やばね式構造のものが使用される。
【0036】
<監視システム>
図3を参照して、本例の監視システムSは、監視装置10、監視系通信回線N、及び、管理センタ20を含み、監視装置10によって、後述する駆動系制御システム50に含まれる制御盤52から乗りかごの現在位置に関する情報を取得し、これを外部の管理センタ20に設置される監視用サーバコンピュータ24へ監視系通信回線Nを通じて送信するように構成される。
【0037】
監視系通信回線Nは、例えばLTE規格に従う通信回線(LTE回線)が使用され、インターネットにも接続可能である。
【0038】
管理センタ20は、通常、エレベータが設置されている建物の外部に設けられる。管理センタ20内には、監視系通信回線Nと接続される監視用サーバコンピュータ24、監視用サーバコンピュータ24を監視系通信回線Nに接続するための通信装置23、監視用サーバコンピュータ24の情報を表示させるためのモニター25等が設置される。
【0039】
エレベータの駆動系制御システム50は、乗りかご30の昇降やドアの開閉等のエレベータの各種動作を実行させるためのエレベータ駆動装置51と、このエレベータ駆動装置51を制御する制御盤52と、各種スイッチやセンサからなる検知手段55とを含み、制御盤52が監視装置10に対し情報のやり取りを行うように連絡される。駆動系制御システム50は、駆動系通信回線53を介して駆動系管理センタ54と接続され、エレベータの動作を遠隔的に監視し、必要に応じて遠隔的に制御できるよう構成されている。
【0040】
上記のように構成した監視システムSは、監視装置10で乗りかごの現在位置に関する情報を算出し、これを通信手段14及び監視系通信回線Nを介して、監視用サーバコンピュータ24へ送信する。このデータ通信は、例えばLTE回線を通じインターネットを介して行われる。このようにして、エレベータの乗りかごの現在位置に関する情報を、管理センタ20で取得して解析することにより、エレベータの運転状況を遠隔的に把握することができる。又、この監視システムSには、監視装置10を停電時でも動作させるための独立電源42を設けてもよい。独立電源42としては、蓄電池やUPS(無停電電源装置)等が使用される。
【0041】
<監視装置>
本例の監視装置10(
図3参照)は、通信手段14、制御手段15、記憶手段16、信号検知部17、及び信号出力部18を含む。
【0042】
通信手段14は、監視系通信回線Nを介し、監視装置10と管理センタ20との間でデータ通信する機能を有するものである。例えば監視系通信回線NがLTE回線の場合、LTE通信モジュールが使用される。
【0043】
制御手段15は、通信手段14、記憶手段16、及び、制御手段15自体の動作を制御して、これらに予め定めた動作を実行させる機能を有する。このような制御手段15は、例えば、CPUやMPU等の演算部やRAM等の主記憶部を備える小型コンピュータで実現することができる。
【0044】
記憶手段16は、各種データや監視装置10の各種動作を制御するプログラム等を書き換え可能に記憶する機能を有するものであり、例えばハードディスク(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)、USBメモリ、SDカード等を使用環境や必要容量に応じ選択して使用することができる。
【0045】
信号検知部17は、制御盤52に接続され、制御盤52に対し入力される信号又は制御盤52から出力される信号の有無を検知する。他方、信号出力部18は、制御盤52に接続され、制御手段15から出力される信号を制御盤52に対し出力する。本例の信号検知部17及び信号出力部18は、接続インターフェースとして例えばフォトカップラが使用される。フォトカップラを使用する場合、信号検知部17では、制御盤52において出力の有無を検知したい信号線を発光側端子に導く。信号出力部18では、制御盤52に信号を出力したい信号線を受光側端子に導く。フォトカップラは、発光側に電流が流れることにより生じた光を受光側で電気信号に変換するものであるから、主として信号出力の有無の検知に使用される。フォトカップラを使用することにより、制御盤52と監視装置10とは電気的に絶縁されるので、安全性の高い接続が可能である。又、監視装置10と制御盤52との間の電流値の相違は、回路に抵抗を挿入することで容易に調整することが可能である。
【0046】
図4を参照して、信号検知部17において出力の有無を取得したい信号の種類は以下を含む。
・乗りかご内の階床ボタンを押したときに制御盤から巻上機へ出力されるUP方向信号(乗りかごの上昇命令信号)及びDOWN方向信号(乗りかごの降下命令信号)
・巻上機に付設されるロータリーエンコーダから出力されるパルス信号のa相及びb相
・乗りかごの昇降方向に沿って上部着床スイッチ、主着床スイッチ、下部着床スイッチが順に設けられている場合、それぞれから出力される主着床信号、上部着床信号、及び、下部着床信号
・スローダウンスイッチがOFF状態からON状態へ切り替わった時に出力されるスローダウン信号
・スローアップスイッチがOFF状態からON状態へ切り替わった時に出力されるスローアップ信号
本例の信号検知部17は、上記のほか、ブレーキ装置から出力されるブレーキ信号、かごドア開閉装置から出力されるかごドア信号、乗場ドア開閉装置から出力される乗場ドア信号、AC電源装置から出力されるAC電力信号、地震センサから出力される地震信号、ハードウェア異常センサから出力されるハードウェア異常信号、及び、ソフトウェア異常センサから出力されるソフトウェア異常信号の有無を検知するように構成されている。
【0047】
本例の監視装置は、信号検知部17で検知した信号の有無に基づいて、乗りかごの移動方向を検知するかご移動方向検知機能、乗りかごが停止又は通過した階床を検知する階床検知機能、スローダウンスイッチのOFF状態からON状態への切替わりを検知するスローダウン検知機能、スローアップスイッチのOFF状態からON状態への切替わりを検知するスローアップ検知機能、乗りかごの直前停止階と、直前停止階からの移動方向と、現在の停止階に停止するまでに通過した階床数とから、乗りかごの現在位置を算出する位置算出機能、乗りかごの通常運転中に、スローダウンスイッチ及びスローアップスイッチのいずれか一方のOFF状態からON状態への切替わりを検知したときに、最下階又は最上階を乗りかごの現在位置の算出の初期値に設定する初期値設定機能を有する。
【0048】
かご移動方向検知機能は、次のいずれかの手法により実現される。
(1)乗りかご内の階床ボタンが押されたときに制御盤から巻上機に出力されるUP方向信号又はDOWN方向信号を検知する手法:UP方向信号を検知したときは上昇、DOWN方向信号を検知したときは降下と判定する。
(2)乗りかごの昇降方向に沿って配置された上部着床スイッチ及び下部着床スイッチから出力される信号のON/OFFを検知する手法:着床位置を通過する際に上部着床スイッチ及び下部着床スイッチがON(又はOFF)になる順序に基づき乗りかごの移動方向を判定する。
(3)ロータリーエンコーダから出力されるパルス信号のa相とb相の出力状態を検出する手法:a相とb相との間に位相差を有することにより、a相の出力時にb相がON/OFFのいずれであるかによって回転方向を判定する。
【0049】
階床検知機能は、着床スイッチのON/OFFの切替わりを検知すると共に、切替わり回数をカウントすることによって実現される。例えば主着床スイッチが、乗りかごの停止可能位置ではON(又はOFF)、停止不可能位置ではOFF(又はON)になるとすると、移動前に停止していた直前停止階から移動後の現在停止階までに、主着床スイッチのON/OFF状態が切り替わった回数が、乗りかごが通過した階床数となる。
【0050】
スローダウン検知機能及びスローアップ検知機能は、乗りかごが最下階又は最上階に接近したときに、スローダウンスイッチ又はスローアップスイッチがOFF状態からON状態へ切り替わったのを検知することによって実現される。
【0051】
位置算出機能は、データの演算機能を有するコンピュータ等によって実現されるものであり、乗りかごが移動したときに、上述の各機能によって取得した、直前停止階からの移動方向のデータ、及び、現在の停止階までに通過した階床数のデータを用いて、現在位置を算出する。
【0052】
上記のほか、本例の監視装置10は、信号検知部17で、地震信号、ハードウェア異常信号、ソフトウェア異常信号の出力の有無を取得することができるので、これらの情報を管理センタへ送信することにより、地震の発生、ハードウェア異常の発生、ソフトウェア異常の発生を管理センタで遠隔的に把握することを可能にする。
【0053】
図5を参照して、信号出力部18において、制御盤52へ出力する信号の種類は、本例では、最上階乗場ボタンに対する最上階乗場ボタン出力信号、最下階乗場ボタンに対する最下階乗場ボタン信号、ハイコーダに対するハイコーダ出力信号、各階乗場ボタンに対する各階乗場ボタン出力信号、かご内の各ボタンに対するかご内各ボタン出力信号を含む。本例の監視装置10は、信号出力部18を通じ制御盤52へ信号を出力して、エレベータに所定の動作を行わせることができるよう構成されている。
【0054】
具体的には、本例で採用する最上階乗場ボタン出力信号及び最下階乗場ボタン信号は、これを出力すると、制御盤52に対し、最上階乗場ボタン又は最下階乗場ボタンが利用者に押されたのと同じ効果を及ぼす。同様に、各階乗場ボタン出力信号は、各階乗場ボタンが利用者に押されたのと同じ効果を及ぼす。かご内各ボタン出力信号は、かご内の各ボタン利用者に押されたのと同じ効果を及ぼす。ハイコーダ出力信号は、エレベータに関する各種信号を記録するハイコーダに対し、蓄積したデータの出力を指示する。
【0055】
本例では、監視装置10から制御盤52へ出力する信号の種類を、エレベータ駆動装置に対し直接入力されるものではなく、間接的に実行命令を与えるような種類のものに限定されている。即ち、制御盤52に対し、利用者が乗場やかご内のボタンを押したのと同等の信号出力を疑似的に行うものであるから、エレベータの駆動装置に直接的な干渉を及ぼすことなく、遠隔的に乗りかごの運転操作ができるという利点を有している。
【0056】
<監視方法>
上記のように構成された監視装置10によるエレベータの監視方法の一例を、
図6を参照して説明する。
【0057】
初めに、監視装置10の設置を行う(P1)。これは、エレベータの運転を停止させた状態で、監視装置を機械室等の適所に設置すると共に、監視装置の信号検知部及び信号出力部を制御盤に接続する作業を含む。監視装置の設置が完了したならば、監視装置を起動させ(P2)、エレベータの通常運転を開始する(P3)。
【0058】
次に、初期値設定工程(P4~P6)を行う。監視装置を設置してエレベータの通常運転を開始した後、乗りかごが最下階又は最上階に移動したときに、スローダウンスイッチ又はスローアップスイッチがOFF状態からON状態へ切り替わる。監視装置は、スローダウン信号を検知(P4)したとき又はスローアップ信号を検知(P5)したときに、最下階又は最上階を乗りかごの現在位置の算出の初期値に設定する(P6)。尚、最下階から最上階までの階床数は、予め記憶部に初期設定データとして与えられる。
【0059】
続いて、乗りかごが移動したときの現在位置の算出の基準となる直前停止階の情報を取得する(P7)。初期値設定工程後の最初の移動時の直前停止階は、最下階又は最上階である。
【0060】
乗りかごが移動すると、制御盤から取得した情報に基づき、直前停止階からの移動方向のデータを取得するかご移動方向検知工程(P8)と、乗りかごが直前停止階から現在の停止階へ移動するまでに通過した階床数のデータを取得する階床検知工程(P9)とを行う。そして、取得した乗りかごの直前停止階、乗りかごの移動方向、及び通過階床数の各データを用いて、乗りかごの現在停止階を算出する位置算出工程(P10)を実行する。
【0061】
引き続き、乗りかごが移動したならば、上述のようにして算出した現在停止階を、移動前の直前停止階に設定(P7)し、かご移動方向検知工程、階床検知工程、位置算出工程を行って(P8~P10)、次の現在停止階を求める。
【0062】
このように、本例の監視装置及び監視方法によれば、通常エレベータに設置されるスローダウンスイッチ又はスローアップスイッチのOFF状態からON状態への切替わりを検知することによって最下階又は最上階を特定するから、エレベータの通常運転中に乗りかごの現在位置を算出するための初期値を自動的に設定することができる。従って、エレベータの監視装置を設置して後、従来のように乗りかごを強制的に最下階又は最上階へ移動させることなく、直ちにエレベータの通常運転を開始することができるという利点が得られる。
【0063】
[第2の実施の形態]
図7は本発明の実施の形態による監視方法の異なる態様を説明するフローチャートである。本例は、上記の監視方法に更に初期値再設定工程を追加したものである。
【0064】
監視装置を設置してから、最初に乗りかごの現在停止位置を算出する位置算出工程を実行するまで(P1~P10)は、第1の実施の形態と共通である。
【0065】
本例では、エレベータの通常運転継続中に、スローダウン信号を検知(P11)したとき又はスローアップ信号を検知(P12)したときに、最下階又は最上階を、乗りかごの現在位置の算出の初期値に再設定するよう設定したものである。
【0066】
これにより、エレベータの通常運転の実行中にスローダウンスイッチ又はスローアップスイッチがOFF状態からON状態へ切替わるのを検知すると、初期値再設定工程を行って、最下階又は最上階を乗りかごの現在位置を算出する際の初期値に再度設定しなおす(P6)。その後、乗りかごが移動すると、かご移動方向検知工程(P8)及び階床検知工程(P9)を実行して、再設定した最下階又は最上階を初期値として位置算出工程(P10)を実行して、乗りかごの現在位置を算出する。
【0067】
本例の監視方法によれば、初期値再設定工程により、エレベータの通常運転の実行中に乗りかごが最下階又は最上階へ到着する度に、乗りかごの現在位置を算出するための初期値を自動的に再設定するから、現在位置の算出の正確性を担保することができるという効果が得られる。
【0068】
尚、初期値再設定工程は、乗りかごが最下階又は最上階に到着する度に毎回実行してもよいが、1日に1回、週に1回のように、適宜の時間間隔を開けて行うように設定してもよい。
【0069】
[第3の実施の形態]
図8は本発明の実施の形態による監視システムの別態様の構成を概略的に示すブロック図である。
【0070】
本例は、乗りかご内に設置されるインターホンと外部の管理センタ等の電話機とを通話可能に接続する直話装置に監視装置の機能を組み込んで、通話兼監視システムを構築したものである。
【0071】
本例の通話兼監視システムTは、エレベータの乗りかご30に設置されるインターホン32と、音声信号及びデータ信号による通信が可能な第1の通信回線N1と、インターネットに接続可能な第2の通信回線N2と、第1の通信回線N1に接続される電話機21及び監視用サーバコンピュータ24と、インターネット上に構築されるクラウドサーバCと、インターホン32と電気的に接続されると共に、第1の通信回線N1及び第2の通信回線N2に接続される直話装置兼監視装置10Aとを含む。
【0072】
インターホン32は、音声を収音するマイクロホン34、及び音声を出力するスピーカ33を備える。乗りかご30にはインターホン32を起動させるための非常ボタンが備えられる。非常ボタン31を操作するとインターホン32が通話可能に準備されるように構成される。例えば、非常ボタンを押すことによりインターホン32に通電が開始され、この通電開始を直話装置兼監視装置10Aが検知して、直話装置兼監視装置10Aとの間で音声信号の送受信が開始される。
【0073】
第1の通信回線N1は、例えばLTE規格に従う通信回線(LTE回線)が使用され、直話装置兼監視装置10Aと、管理センタ20A内の電話機21及び監視用サーバコンピュータ24と接続される。監視用サーバコンピュータ24は、通信装置23と共に、サーバ装置22を構成する。直話装置兼監視装置10Aと電話機21との間は音声信号による通信が行われ、直話装置兼監視装置10Aと監視用サーバコンピュータ24との間はSMS信号等を利用したデータ信号による通信が行われる。第2の通信回線N2は、直話装置兼監視装置10Aをインターネットに接続するための通信回線である。
【0074】
クラウドサーバCは、インターネット上に構築された仮想サーバであり、インターネットに接続可能な第2の通信回線N2を介して直話装置兼監視装置10Aと接続し、インターネットを経由して直話装置兼監視装置10Aとの間でデータのアップロード及びダウンロードを含むデータ通信か可能なように構成されている。又、クラウドサーバCは、第2の通信回線N2を介して監視用サーバコンピュータ24とも接続できるように構成され、インターネットを経由して監視用サーバコンピュータ24との間でデータのアップロード及びダウンロードを含むデータ通信が可能となっている。
【0075】
直話装置兼監視装置10Aは、通信手段14、制御手段15、記憶手段16の外に、通話機能を実現するための音声処理手段11を含む。通信手段14は、インターホン32と電話機21とを通話可能に接続する機能、直話装置兼監視装置10Aと監視用サーバコンピュータ24とを接続する機能、及び、第2の通信回線N2を介して直話装置兼監視装置10AとクラウドサーバCとを接続する機能を有する。
【0076】
音声処理手段11は、インターホン32における音声の入出力を実現するためのものであり、音声信号の種類を変換(DA/AD変換)する音声信号変換部12、音声信号のコーデック処理、周波数の調整、信号強度の調整等を行う信号調整部13等を含む。本例の音声処理手段11は、電話機21との間では、第1の通信回線N1(LTE回線)を通じて送信される音声信号をインターホン32のスピーカ33から音声として出力可能な音声信号に処理すると共に、収音時にインターホン32のマイクロホン34から出力される音声信号を第1の通信回線N1を通じて伝送可能な信号に処理する機能を有する。又、制御手段15との間では、制御手段15から出力される音声信号をスピーカ33から音声として出力可能な信号に変換すると共に、収音時にマイクロホン34から出力される音声信号を制御手段15が処理可能な信号に変換する機能を有する。このような音声処理手段11は、音声基板や音声信号変換器等により実現される。
【0077】
記憶手段16は、通信手段14、音声処理手段11、記憶手段16、及び制御手段15の各動作を制御するためのプログラムとそれらプログラムを実行する際に必要とされる各種設定データが記憶される。記憶手段16には、ハードディスク(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)、USBメモリ、SDカード等が使用される。制御手段15は、例えば、CPUやMPU等の演算部やRAM等の主記憶部を備える小型コンピュータで実現することができる。
【0078】
管理人室40や機械室等には通常、エレベータのインターホン(子機)32と通話可能に接続されるインターホン(親機)41が設置される。インターホン(親機)41は、非常ボタンが操作されると、エレベータ内のインターホン(子機)32と通話できるよう構成される。直話装置兼監視装置10Aをインターホン(親機)41とも接続して、インターホン(親機)41、インターホン(子機)32、及び外部の電話機21の三者間で相互に通話できるよう構成してもよい。尚、停電時でもインターホン32による通話を可能にする必要があるため、管理人室40等には、停電等の非常時に電力を供給するための独立電源42が備えられる。独立電源42としては、蓄電池やUPS(無停電電源装置)等が使用される。
【0079】
エレベータの駆動系制御システム50については、その構成は第1の実施の形態と共通である。
【0080】
以上のように構成された通話兼監視システムTは、エレベータの運転状況を監視する機能部分については上述の実施の形態と共通する。ここでは、通話に関連する機能について説明する。
【0081】
インターホン32は、故障や停電等によりエレベータの乗りかご30内に乗員が閉じ込められた時に使用されることが想定される。停電が生じたときには、UPS等の独立電源42からインターホン32及び直話装置兼監視装置10Aへ動作電力が供給される。非常ボタン31を操作すると、インターホン32に通電されると共に、直話装置兼監視装置10Aの制御手段15へ起動信号が出力される。起動信号を受信した直話装置兼監視装置10Aは、管理センタ20の電話機21へ、第1の通信回線N1を介して架電する。電話機21と通信手段14との間で回線接続が確立すると、第1の通信回線N1及び音声処理手段11を介して、インターホン32と電話機21との間で相互の通話が可能となる。又、必要に応じ、管理センタ20側から乗りかご30のインターホン32へ架電することも可能である。この場合、電話機21から、通信手段14のLTE通信モジュールに割り当てられている電話番号に架電することにより、インターホン32と電話機21との間での通話が可能となる。
【0082】
直話装置兼監視装置10Aの記憶手段16には、直話装置兼監視装置10Aの各種機能を実現するための各種データが記憶されている。このデータは状況に応じ内容を書き換えたり新規のデータを追加したりする等の更新処理が必要となる場合がある。本例の通話兼監視システムTは、予めクラウドサーバCにアップロードされた更新用のデータを、直話装置兼監視装置10Aが、第2の通信回線N2及びインターネットを介しダウンロードして、記憶手段16に記憶されているデータの書き換えや新規データの追加等の更新処理を実行するように構成されている。
【0083】
その他、本例の通話兼監視システムTは、必要に応じ、記憶手段16に記憶された音声データをインターホン32のスピーカ33から音声として再生し、乗りかご30内の乗員に音声ガイダンスを行う機能を有してもよい。更に、インターホン32と外部の電話機21との通話を録音する機能を有してもよい。
【0084】
[その他の実施の形態]
本発明の監視装置によれば、制御盤から取得するデータに基づいて、乗りかごの移動履歴データや、各階床に対する停止回数データを生成することができる。従って、これらデータと各階床間の距離データとを組み合わせることにより、乗りかごの移動距離を算出することが可能である。又、着床信号の出力時間間隔を検知し、これと各階床間の距離データとを組み合わせることにより、乗りかごの移動速度を算出することが可能である。これら乗りかごの移動距離及び移動速度に関する情報は、メンテナンス時期の判定や、故障が起きたときの原因推測に有効利用することができる。
【0085】
更に、かごドア信号及び乗場ドア信号の出力の有無を検知するから、これらドア信号と乗りかごの現在位置データとを組み合わせることにより、階床ごとのドアの開閉回数情報や各階ごとの利用頻度情報を提供することが可能である。
【0086】
更に、ブレーキ信号、着床信号、及び、かごドア信号の出力を検知し、その状態から、乗りかごの異常停止、滑り、戸開走行を判定することが可能である。判定方法は、次の通りである。
・異常停止:ブレーキ信号がON、且つ、着床信号が停止不可能位置を示す場合
・滑り:ブレーキ信号がON、且つ、着床信号が変化する場合
・戸開走行:ブレーキ信号がON、着床信号が変化し、且つ、かごドア信号がONの場合
監視装置が算出したエレベータの運転状況に関する情報は、監視用サーバコンピュータで取得する以外に、作業員等が携帯するモバイル装置から監視装置の通信手段にアクセスして、情報を取得するようにしてもよい。或いは、ノートPC等を監視装置に直接ケーブルで接続し、有線通信により情報を取得するようにしてもよい。
【0087】
監視装置及び直話装置兼監視装置は、既存のエレベータを有する建物の管理人室や機械室等に後から追加して設置してもよく、建設当初から組み込んだ設計としてもよい。
【0088】
監視システム又は通話兼監視システムは、制御盤から取得した信号に基づき監視装置又は直話装置兼監視装置で演算を行うのに代えて、取得した信号の情報を管理センタへ送信し、管理センタの監視用サーバコンピュータで演算を実行して乗りかごの現在位置を算出するように構成してもよい。この場合、監視装置又は直話装置兼監視装置は、通信手段を備え、かご移動方向検知機能、階床検知機能、スローダウン検知機能、スローアップ検知機能、初期値設定機能、及び、監視用サーバコンピュータへ情報を送信する情報送信機能を有し、監視用サーバコンピュータが、監視装置から出力された乗りかごの運転状況に関する情報に基づき、乗りかごの現在位置を算出する位置算出機能を有するように構成される。これにより監視装置の必要処理能力を抑えられるので、監視装置の低廉化を図れる。
【符号の説明】
【0089】
E…エレベータ
S…監視システム
T…通話兼監視システム
1A…スローダウンスイッチ
1B…スローアップスイッチ
2A、2B…リミットスイッチ
3A、3B…ファイナルリミットスイッチ
4…カム
10…監視装置
10A…直話装置兼監視装置
11…音声処理手段
12…音声信号変換部
13…信号調整部
14…通信手段
15…制御手段
16…記憶手段
17…信号検知部
18…信号出力部
20、20A…管理センタ
21…電話機
23…通信装置
24…監視用サーバコンピュータ
25…モニター
30…乗りかご
30a…コントロールユニット
31…非常ボタン
32…インターホン(子機)
33…スピーカ
34…マイクロホン
40…管理人室
41…インターホン(親機)
42…独立電源
50…駆動系制御システム
51…エレベータ駆動装置
52…制御盤
53…駆動系通信回線
54…駆動系管理センタ
55…検知手段
60…カウンタウエイト
70…ロープ
71…巻上機
72…シーブ
73…そらせ車
80…機械室
90…乗場
91…乗場ドア
100…昇降路
100a…底面
100b…天井
101、102…ガイドレール
103、104…緩衝器
C…クラウドサーバ
N…監視系通信回線
N1…第1の通信回線
N2…第2の通信回線
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。
【手続補正書】
【提出日】2021-09-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上記の目的を達成するため、請求項1記載の発明は、昇降路と、昇降路内を移動する乗りかごと、昇降路内において最下階の近傍に設置されるスローダウンスイッチと、昇降路内において最上階の近傍に設置されるスローアップスイッチとを備え、乗りかごを最下階又は最上階に到着させる運転が行われるエレベータの運転状況を監視する監視装置であって、乗りかごの移動方向を検知するかご移動方向検知機能、乗りかごが停止又は通過した階床を検知する階床検知機能、スローダウンスイッチのOFF状態からON状態への切替わりを検知するスローダウン検知機能、スローアップスイッチのOFF状態からON状態への切替わりを検知するスローアップ検知機能、乗りかごの直前停止階と、直前停止階からの移動方向と、現在の停止階に停止するまでに通過した階床数とから、乗りかごの現在位置を算出する位置算出機能、及び、乗りかごの通常運転中に、スローダウンスイッチ及びスローアップスイッチのいずれか一方のOFF状態からON状態への切替わりを検知したときに、最下階又は最上階を乗りかごの現在位置の算出の初期値に設定する初期値設定機能を有しているものである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
請求項5記載の発明は、昇降路と、昇降路内を移動する乗りかごと、昇降路内において最下階の近傍に設置されるスローダウンスイッチと、昇降路内において最上階の近傍に設置されるスローアップスイッチとを備え、乗りかごを最下階又は最上階に到着させる運転が行われるエレベータの運転状況を監視する監視方法であって、請求項1から請求項3のいずれかに記載する監視装置を設置した後のエレベータの通常運転開始後に、スローダウンスイッチのOFF状態からON状態への切替わり及びスローアップスイッチのOFF状態からON状態への切替わりのいずれか一方を検知したときに、最下階又は最上階を乗りかごの現在位置の算出の初期値に設定する初期値設定工程、乗りかごの直前停止階からの移動方向を検知するかご移動方向検知工程、乗りかごが直前停止階から現在の停止階へ移動するまでに通過した階床数を検知する階床検知工程、乗りかごの直前停止階と移動方向と階床数とから、乗りかごの現在位置を算出する位置算出工程とを含むものである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路と、前記昇降路内を移動する乗りかごと、前記昇降路内において最下階の近傍に設置されるスローダウンスイッチと、前記昇降路内において最上階の近傍に設置されるスローアップスイッチとを備え、前記乗りかごを前記最下階又は前記最上階に到着させる運転が行われるエレベータの運転状況を監視する監視装置であって、
前記乗りかごの移動方向を検知するかご移動方向検知機能、
前記乗りかごが停止又は通過した階床を検知する階床検知機能、
前記スローダウンスイッチのOFF状態からON状態への切替わりを検知するスローダウン検知機能、
前記スローアップスイッチのOFF状態からON状態への切替わりを検知するスローアップ検知機能、
前記乗りかごの直前停止階と、前記直前停止階からの移動方向と、現在の停止階に停止するまでに通過した階床数とから、前記乗りかごの現在位置を算出する位置算出機能、及び、
前記乗りかごの通常運転中に、前記スローダウンスイッチ及び前記スローアップスイッチのいずれか一方のOFF状態からON状態への切替わりを検知したときに、前記最下階又は前記最上階を前記乗りかごの現在位置の算出の初期値に設定する初期値設定機能を有している、エレベータの監視装置。
【請求項2】
前記エレベータの運転を制御する制御盤にフォトカップラを介して接続され、前記制御盤に対し入力される信号又は前記制御盤から出力される信号の有無を取得する信号検知部を更に備え、
前記信号検知部で取得した信号の有無に基づいて、前記かご移動方向検知機能、前記階床検知機能、前記スローダウン検知機能、及び前記スローアップ検知機能のうちの少なくとも1つが実現される、請求項1記載のエレベータの監視装置。
【請求項3】
前記エレベータの外部に設置される監視用サーバコンピュータが接続される通信回線に接続可能な通信手段を更に含み、
前記乗りかごの現在位置に関する情報を、前記通信手段により前記通信回線を介して、前記監視用サーバコンピュータへ送信する情報送信機能を更に有する、請求項1又は請求項2記載のエレベータの監視装置。
【請求項4】
通信回線と、
前記通信回線に接続される請求項3記載のエレベータの監視装置と、
前記通信回線に接続される監視用サーバコンピュータとを含み、
前記エレベータの乗りかごの現在位置に関する情報を、前記エレベータの監視装置から、前記通信回線を介して、前記監視用サーバコンピュータへ送信するように構成される、エレベータの監視システム。
【請求項5】
昇降路と、前記昇降路内を移動する乗りかごと、前記昇降路内において最下階の近傍に設置されるスローダウンスイッチと、前記昇降路内において最上階の近傍に設置されるスローアップスイッチとを備え、前記乗りかごを前記最下階又は前記最上階に到着させる運転が行われるエレベータの運転状況を監視する監視方法であって、
請求項1から請求項3のいずれかに記載する監視装置を設置した後の前記エレベータの通常運転開始後に、前記スローダウンスイッチのOFF状態からON状態への切替わり及び前記スローアップスイッチのOFF状態からON状態への切替わりのいずれか一方を検知したときに、前記最下階又は前記最上階を前記乗りかごの現在位置の算出の初期値に設定する初期値設定工程、
前記乗りかごの直前停止階からの移動方向を検知するかご移動方向検知工程、
前記乗りかごが前記直前停止階から現在の停止階へ移動するまでに通過した階床数を検知する階床検知工程、
前記乗りかごの直前停止階と前記移動方向と前記階床数とから、前記乗りかごの現在位置を算出する位置算出工程とを含む、エレベータの監視方法。
【請求項6】
前記エレベータの通常運転中に、前記スローダウンスイッチのOFF状態からON状態への切替わり及び前記スローアップスイッチのOFF状態からON状態への切替わりのいずれか一方を検知したときに、前記最下階又は前記最上階を前記乗りかごの現在位置の算出の初期値に再設定する初期値再設定工程を更に含む、請求項5記載のエレベータの監視方法。