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特開2022-11884清浄化用皮膜形成剤組成物、衛生設備機器設置床面の清浄化方法、衛生設備機器設置床面の汚染防止方法及び衛生設備機器設置環境の防臭方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022011884
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】清浄化用皮膜形成剤組成物、衛生設備機器設置床面の清浄化方法、衛生設備機器設置床面の汚染防止方法及び衛生設備機器設置環境の防臭方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 3/37 20060101AFI20220107BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20220107BHJP
   B08B 17/04 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
C11D3/37
C11D17/08
B08B17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020113287
(22)【出願日】2020-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】小林 亜子
【テーマコード(参考)】
3B117
4H003
【Fターム(参考)】
3B117AA01
4H003AB39
4H003BA12
4H003DA05
4H003DA07
4H003DC02
4H003EA21
4H003EB04
4H003EB06
4H003EB16
4H003EB29
4H003EB30
4H003EB33
4H003EB38
4H003EB41
4H003ED02
4H003ED28
4H003ED29
4H003FA04
(57)【要約】
【課題】物品同士の隙間内を容易に清浄化でき、かつ隙間及びその周辺の汚染を防止できる清浄化用皮膜形成剤組成物。
【解決手段】(A)成分:(メタ)アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂及びウレタン樹脂から選ばれる1種以上の皮膜形成高分子と、(B)成分:水と、(C)成分:前記(A)成分以外の水溶性高分子化合物0.05~0.7質量%と、を含有することよりなる。前記(C)成分は増粘多糖類が好ましく、(A)成分/(C)成分で表される質量比は30~1000が好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:(メタ)アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂及びウレタン樹脂から選ばれる1種以上の皮膜形成高分子と、
(B)成分:水と、
(C)成分:前記(A)成分以外の水溶性高分子0.05~0.7質量%と、
を含有する、清浄化用皮膜形成剤組成物。
【請求項2】
前記(C)成分は、増粘多糖類である、請求項1に記載の清浄化用皮膜形成剤組成物。
【請求項3】
前記(A)成分/前記(C)成分で表される質量比は、30~1000である、請求項1又は2に記載の清浄化用皮膜形成剤組成物。
【請求項4】
衛生設備機器が設置された床用である、請求項1~3のいずれか一項に記載の清浄化用皮膜形成剤組成物。
【請求項5】
衛生設備機器と、前記衛生設備機器が設置された床との隙間を含む領域に、請求項1~4のいずれか一項に記載の清浄化用皮膜形成剤組成物を塗布し、塗布した前記清浄化用皮膜形成剤組成物で皮膜を形成した後、前記皮膜を取り除く、衛生設備機器設置床面の清浄化方法。
【請求項6】
衛生設備機器と、前記衛生設備機器が設置された床との隙間を含む領域に、請求項1~4のいずれか一項に記載の清浄化用皮膜形成剤組成物を塗布し、塗布した前記清浄化用皮膜形成剤組成物で皮膜を形成する、衛生設備機器設置床面の汚染防止方法。
【請求項7】
前記皮膜を取り除く、請求項6に記載の衛生設備機器設置床面の汚染防止方法。
【請求項8】
衛生設備機器と、前記衛生設備機器が設置された床との隙間を含む領域に、請求項1~4のいずれか一項に記載の清浄化用皮膜形成剤組成物を塗布し、塗布した前記清浄化用皮膜形成剤組成物で皮膜を形成する、衛生設備機器設置環境の防臭方法。
【請求項9】
前記皮膜を取り除く、請求項8に記載の衛生設備機器設置環境の防臭方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清浄化用皮膜形成剤組成物、衛生設備機器設置床面の清浄化方法、衛生設備機器設置床面の汚染防止方法及び衛生設備機器設置環境の防臭方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洗面台、便器、バスタブ、台所流し台等、洗面用、トイレ用又は浴室用の衛生器具である衛生設備機器は、本体の一部又は全部が床上に位置している。通常、衛生設備機器の一部又は衛生設備機器に接続された配管が、床又は壁の貫通口内に位置している。
衛生設備機器本体の清掃は容易であるが、衛生設備機器本体の周縁部の床面には埃、ゴミ、水等がたまりやすく不衛生となりやすい。例えば、洋式便器や和式便器等の便器をトイレの床に載置した場合、床板と便器との境界に隙間が生じる。便器使用時に便器外面や床面に飛散した尿や水が、その隙間に入り込み、床面の汚れや悪臭の原因となる。
また、隙間にたまった汚れの洗浄には、ブラシ、雑巾等の道具と水とを組み合わせて掻き出す方法が採られるが、道具が隙間の奥まで入りきらず、汚れを除去しきれないという問題がある。加えて、清掃時の身体的負担の観点から、新たな洗浄用製品及び洗浄方法が求められている。
【0003】
こうした問題に対し、特定の2種の重合体を特定の割合で含有する湿気硬化型樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。特許文献1の発明によれば、衛生設備機器の周囲の汚れを防止し、汚れた後においては、硬化樹脂を被着部から剥離することで、衛生設備機器の周囲の清浄化を図れる。
また、皮膜を形成し、形成した皮膜を取り除くことで清浄化を図る組成物としては、特定の高分子と水と特定の有機溶剤とを特定の質量比で含有する清浄化用皮膜形成剤組成物が提案されている(特許文献2)。特許文献2の発明によれば、サッシレール等に対して、容易かつ簡便に清浄化を図れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/060112号
【特許文献2】特開2018-2828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の発明は、(ア)組成物が隙間の奥に行き渡らない、(イ)組成物を使用する前に衛生設備機器周囲の掃除が必要であり、作業が煩雑である、(ウ)組成物は一度空気に触れると硬化が始まるため、開封後に時間が経過すると使用できない、という問題を有する。特許文献2の発明は、衛生設備機器と床との隙間に塗布すると、組成物が隙間の開口面に滞留せずに落下してしまい、隙間を皮膜で覆うことができないという問題がある。特に、水平方向に向いて開口した隙間に対して塗布する場合、隙間内部に組成物が浸透せずに、下方に落下してしまう。このため、隙間を塞ぐことも、隙間内の汚れを除去することも、不十分である。
そこで、本発明は、物品同士の隙間内を容易に清浄化でき、かつ物品同士の隙間及びその周辺の汚染を防止できる、清浄化用皮膜形成剤組成物を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の態様を有する。
<1>
(A)成分:(メタ)アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂及びウレタン樹脂から選ばれる1種以上の皮膜形成高分子と、
(B)成分:水と、
(C)成分:前記(A)成分以外の水溶性高分子0.05~0.7質量%と、
を含有する、清浄化用皮膜形成剤組成物。
<2>
前記(C)成分は、増粘多糖類である、<1>に記載の清浄化用皮膜形成剤組成物。
<3>
前記(A)成分/前記(C)成分で表される質量比は、30~1000である、<1>又は<2>に記載の清浄化用皮膜形成剤組成物。
<4>
衛生設備機器が設置された床用である、<1>~<3>のいずれかに記載の清浄化用皮膜形成剤組成物。
【0007】
<5>
衛生設備機器と、前記衛生設備機器が設置された床との隙間を含む領域に、<1>~<4>のいずれかに記載の清浄化用皮膜形成剤組成物を塗布し、塗布した前記清浄化用皮膜形成剤組成物で皮膜を形成した後、前記皮膜を取り除く、衛生設備機器設置床面の清浄化方法。
<6>
衛生設備機器と、前記衛生設備機器が設置された床との隙間を含む領域に、<1>~<4>のいずれかに記載の清浄化用皮膜形成剤組成物を塗布し、塗布した前記清浄化用皮膜形成剤組成物で皮膜を形成する、衛生設備機器設置床面の汚染防止方法。
<7>
前記皮膜を取り除く、<6>に記載の衛生設備機器設置床面の汚染防止方法。
<8>
衛生設備機器と、前記衛生設備機器が設置された床との隙間を含む領域に、<1>~<4>のいずれかに記載の清浄化用皮膜形成剤組成物を塗布し、塗布した前記清浄化用皮膜形成剤組成物で皮膜を形成する、衛生設備機器設置環境の防臭方法。
<9>
前記皮膜を取り除く、<8>に記載の衛生設備機器設置環境の防臭方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の容器入り清浄化用皮膜形成剤は、物品同士の隙間内を容易に清浄化でき、かつ物品同士の隙間及びその周辺の汚染を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】評価に用いた隙間モデルを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(清浄化用皮膜形成剤組成物)
本発明の清浄化用皮膜形成剤組成物(以下、「皮膜形成剤」ということがある)は、(メタ)アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂及びウレタン樹脂から選ばれる1種以上の皮膜形成高分子と、(B)成分:水と、(C)成分:前記(A)成分以外の水溶性高分子化合物とを含有する液体組成物である。
【0011】
本実施形態の皮膜形成剤は、皮膜形成性を有する液体組成物である。「皮膜形成性」とは、剥離可能な皮膜を形成できる性質である。例えば、大気圧条件下において2cm×10cmの範囲に高分子の水分散液又は水溶液を厚み0.05~0.5mmとなるように塗布し、48時間放置したときに、皮膜が形成されるものである。このようにして形成される皮膜は、手等で剥離可能なものであることが好ましい。
【0012】
<(A)成分>
(A)成分は、(メタ)アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂及びウレタン樹脂から選ばれる1種以上の皮膜形成高分子である。
(A)成分としては、(メタ)アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂が好ましく、酢酸ビニル樹脂がより好ましい。これらの(A)成分であれば、汚れをより良好に除去できる(即ち、汚れ除去効果を高められる)。
【0013】
(メタ)アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、(メタ)アクリル酸エステルの共重合体)、(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸エステル以外のエチレン性不飽和単量体との共重合体が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの総称である。汚れ除去効果を高める観点から(メタ)アクリル酸エステル類の共重合体が好ましい。
【0014】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル等の直鎖状又は分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の脂環式基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の芳香族基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシフェニルエチル等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アルキルアミノ等が挙げられる。
【0015】
エチレン性不飽和単量体としては、少なくとも1個の重合可能なビニル基を有するものであればよく、例えば、スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、複素環式ビニル化合物、ハロゲン化ビニル化合物、ビニルエステル類、モノオレフィン類、共役ジオレフィン類、α,β-不飽和モノあるいはジカルボン酸、シアン化ビニル化合物、カルボニル基含有エチレン性不飽和単量体、スルホン酸基含有エチレン性不飽和単量体が挙げられる。
【0016】
酢酸ビニル樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体、又は酢酸ビニルと(メタ)アクリル酸エステルを除く上記エチレン性不飽和単量体との共重合体が挙げられる。汚れ除去効果を高める観点からエチレン-酢酸ビニル共重合体が好ましい。
エチレン-酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニルの共重合比率は、エチレン-酢酸ビニル共重合体を構成する構成単位100mol%に対し、25~99mol%が好ましい。酢酸ビニルの共重合比率を上記範囲内とすると、凸凹面を含む複雑な形状でも破けにくい強靭な皮膜をつくることができる。
【0017】
酢酸ビニル樹脂のゲル分率は、20~60質量%が好ましい。ゲル分率がこの範囲内であると、凸凹面を含む複雑な形状でも破けにくい強靭な皮膜を形成できる。
ゲル分率は、例えば以下のように測定されるトルエン不溶分である。酢酸ビニル樹脂の水分散液又は水溶液を基材上に塗布し、乾燥してフィルム(皮膜)を形成する。乾燥した皮膜を細かく切って試料とし、この試料(約0.250~0.350g)の質量を1mgまで秤量する(質量A)。次に、フラスコにトルエンを100ml量り採り、前記試料を加えて完全密封する。完全密封した状態で室温において16±2時間静置させた後、前記フラスコ内の溶液をマグネチックスターラで1時間撹拌する。その後、この溶液をNo.2濾紙で濾過する。予め、アルミ皿の質量を測定し(質量B)、No.2濾紙でろ過したろ液をアルミ皿に20ml量り採る。アルミ皿を乾燥させ、乾燥後の質量(アルミサラ及びろ液の乾燥物の合計量)を1mgまで秤量し(質量C)、トルエン不溶分(質量%)を下記(1)式により計算する。
トルエン不溶分(質量%)=100-[(質量C-質量B)×5/質量A]×100 ・・・(1)
【0018】
塩化ビニル樹脂としては、塩化ビニルの単独重合体、又は塩化ビニルと(メタ)アクリル酸エステルを除く上記エチレン性不飽和単量体との共重合体が挙げられる。汚れ除去効果を高める観点からポリ塩化ビニルが好ましい。
塩化ビニル樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-エチレン共重合体、塩化ビニル-プロピレン共重合体、塩化ビニル-スチレン共重合体、塩化ビニル-イソブチレン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル-スチレン-無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル-スチレン-アクリロニリトル共重合体、塩化ビニル-ブタジエン共重合体、塩化ビニル-イソプレン共重合体、塩化ビニル-塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン-酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル-マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル-アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル-各種ビニルエーテル共重合体等の塩化ビニル樹脂を用いることができる。
【0019】
ウレタン樹脂としては、ポリウレタン樹脂とアクリルウレタン樹脂が挙げられる。汚れ除去効果を高める観点からポリウレタン樹脂が好ましい。
ポリウレタン樹脂としては、ポリエーテルポリオールを用いたエーテル型、ポリエステルポリオールを用いたポリエステル型、ポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールを用いたエステル・エーテル型、ポリカーボネートポリオールを用いたカーボネート型が挙げられる。
これらの中でもエステル型とエステル・エーテル型が好ましく、エステル・エーテル型がより好ましい。
【0020】
(A)成分のガラス転移温度は、0~100℃が好ましく、5~50℃がより好ましく、10~25℃がさらに好ましい。
(A)成分のガラス転移温度が上記下限値以上であると、より破けにくい強靭な皮膜を形成できる。
(A)成分のガラス転移温度が上記上限値以下であると、常温において、より容易に皮膜を形成できる。
ガラス転移温度はJIS-K-7121に規定するプラスチック転位温度測定方法により得られる値である。
【0021】
これらの(A)成分は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0022】
(A)成分の含有量は、皮膜形成剤の総質量に対し、20~70質量%が好ましく、30~60質量%がより好ましい。
(A)成分の含有量が上記下限値以上であると、皮膜が破けにくくなり汚れ除去効果をより高められる。
(A)成分の含有量が上記上限値以下であると、(B)成分への溶解性又は分散性が向上し、凝集物が生じるのをより良好に抑制できる。
【0023】
<(B)成分>
(B)成分は水である。皮膜形成剤は、(B)成分を含有することで、流動性を発揮する。
(B)成分としては、水道水、蒸留水、イオン交換水、超純水を用いることができる。(B)成分としては、蒸留水、イオン交換水等の精製水が好ましい。
(B)成分の含有量は、皮膜形成剤の総質量に対し、25~75質量%が好ましく、30~60質量%がより好ましい。(B)成分の含有量が上記下限値以上であると、(A)成分の溶解性や分散性が向上し、(A)成分の凝集物が生じるのを抑制しやすくなる。(B)成分の含有量が上記上限値以下であると、皮膜が破けにくくなり汚れ除去効果をより高められる。
【0024】
<(C)成分>
(C)成分は、(A)成分以外の水溶性高分子である。皮膜形成剤は、(C)成分を含有することで、物品同士の隙間を覆う皮膜を形成できる。
本明細書において高分子とは、重量平均分子量1000以上の化合物である。重量平均分子量は、溶媒としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いてGPC(ゲルパーミネーションクロマトグラフィー)により測定した値を、PEG(ポリエチレングリコール)における較正曲線に基づいて換算した値である。
本明細書において水溶性高分子とは、1リットルビーカー内で、40℃の条件で、高分子1gを水1000gに添加し、スターラー(太さ8mm、長さ50mm)により12時間撹拌(200rpm)した後に、透明に溶解しているものをいう。
【0025】
(C)成分としては、合成高分子化合物、半合成高分子化合物、天然高分子化合物があげられる。
合成高分子化合物としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩等が挙げられる。
半合成高分子化合物としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルキサンタンガム、カチオン化グアガム等が挙げられる。
天然高分子化合物としては、増粘多糖類が挙げられる。増粘多糖類は、植物系又は微生物系の天然高分子化合物であり、グリコシド結合によって単糖分子が多数重合した物質である。但し、本願発明では、セルロースの構成成分であるグルコースの水酸基が置換されたメチルセルロース等のセルロース誘導体は前記の半合成高分子に分類される。増粘多糖類としては、例えば、プルラン、グアガム、ローストビーンガム及びその誘導体、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、コーンスターチ、キサンタンガム、ダイユータンガム、ペクチン、アラビアガム、ジェランガム、寒天、トラガントガム、タマリンドシードガム、澱粉、キトサン等が挙げられる。
これらの(C)成分は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。(C)成分は、予め水に溶解、又は分散している物を用いてもよい。
皮膜形成剤の広げやすさ、隙間をより良好に塞ぐ観点から、(C)成分は、天然高分子化合物が好ましく、増粘多糖類がより好ましく、キサンタンガム、ダイユータンガムがさらに好ましく、ダイユータンガムが特に好ましい。
加えて、皮膜形成剤がエステル基等の加水分解性の構造を持つ成分(例えば、(メタ)アクリル樹脂)を含む場合、保存安定性の観点から、(C)成分は天然高分子化合物を用いることが好ましい。
さらに、皮膜形成剤の経時劣化を抑制する観点から、(C)成分は、増粘多糖類が好ましく、キサンタンガム、ダイユータンガムがより好ましく、ダイユータンガムが特に好ましい。
【0026】
(C)成分の含有量は、皮膜形成剤の総質量に対して、0.05~0.7質量%が好ましく、0.07~0.5質量%がより好ましく、0.1~0.3質量%がさらに好ましい。
【0027】
皮膜形成剤中、(C)成分の質量に対する(A)成分の質量比、即ち、(A)成分/(C)成分で表される質量比(A/C比)は、30~1000が好ましく、70~800がより好ましく、100~500がさらに好ましく、270~450が特に好ましい。A/C比が上記下限値以上であれば、物品同士の隙間により容易に浸透し、形成された皮膜をより容易に取り除けるため、汚れ除去効果をより高められる。A/Cが上記上限値以下であれば、物品同士の隙間を覆う皮膜をより安定的に形成でき、隙間への汚れの浸入、隙間近傍への汚れ付着をより効果的に防止できる(防汚効果)。隙間への汚れの浸入を防止することで、衛生機器設置床面(例えば、洗面所、トイレ、風呂、台所等の床面)の汚染を防止して、隙間の汚染に由来する衛生機器設置環境(例えば、洗面所、トイレ、風呂、台所等)での臭気発生をより効果的に防止できる(防臭効果)。
【0028】
<任意成分>
本発明の皮膜形成剤には、さらに上記以外の任意成分を配合できる。任意成分としては、例えば、有機溶剤、リン酸系界面活性剤、可溶化剤、金属封鎖剤、消臭剤、除菌剤、抗菌剤、香料、乳化剤、アルコール、pH調整剤、金属封鎖剤、可塑剤、造膜助剤、防腐剤、酸化防止剤、無機微粒子、紫外線吸収剤、苦味剤、色素、顔料、充填剤等が挙げられる。
【0029】
≪有機溶剤≫
皮膜形成剤は、有機溶剤を含有することで、皮膜形成剤による皮膜の厚みをより均一にでき、親水性汚れへの浸透力をより高められる。
【0030】
有機溶剤としては、溶解度パラメータ(SP値)が異なる2種以上を組み合わせてもよい。
有機溶剤としては、例えば、SP値12.5~18.0の有機溶剤(以下、「(D1)成分」ということがある)と、SP値7.5~11.0の有機溶剤(以下、「(D2)成分」ということがある)との組み合わせが挙げられる。
溶解度パラメーター(SP値)とは、ハンセン溶解度パラメータのことを指し、2成分系溶液の溶解度の目安となる指標である。
各有機溶剤のSP値δ((cal/cm1/2)を計算するための方法として、下記(2)式を用いる。
δ=((δd+δp+δh)/4.2)1/2 ・・・(2)
ここで、δdはLondon分散力項、δpは分子分極項、δhは水素結合項という。
また、ハンセン溶解度パラメータ・ソフトウェア(HSPiP ver.4.1.x)、あるいは、“HANSEN SOLBILITY PARAMETERS” A User’s Handbook Second Editionに記載される値(δd、δp、δh:単位(J/cm1/2)をもとに算出する事ができる。
また、有機溶剤を複数使用する場合のSP値は、下記(3)により、各有機溶剤のSP値の加重平均として求める。
m=δ1φ1+δ2φ2 ・・・(3)
ここでδ1、δ2は各溶剤成分のSP値であり、φ1、φ2は各溶剤成分の体積分率である。
【0031】
(D1)成分のSP値は12.5~18.0であり、13.0~17.0が好ましく、14.5~16.5がより好ましい。(C)成分のSP値を上記範囲内とすることで皮膜に柔軟性が付与されて皮膜が割れにくくなり汚れ除去効果をより高められる。
【0032】
(D1)成分としては、多価アルコールが好ましく、炭素数2~4の2~3価アルコールがより好ましく、炭素数2~4の2価アルコールがさらに好ましい。具体的には、プロピレングリコール(SP値=14.7),ジプロピレングリコール(SP値=12.9)、トリエチレングリコール(SP値=13.4)、エチレングリコール(SP値=16.1)、グリセリン(SP値=17.6)等が挙げられる。中でもエチレングリコールが特に好ましい。
【0033】
これらの(D1)成分は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0034】
(D1)成分の含有量は、皮膜形成剤の総質量に対し、0.1~4.5質量%が好ましく、0.5~3.5質量%がより好ましい。
(D1)成分の含有量が上記下限値以上であると、泥汚れ等の疎水性汚れに対する浸透力を向上させ、汚れ除去効果をより高められる。
(D1)成分の含有量が上記上限値以下であると、皮膜が破けにくくなり、汚れ除去効果をより高められる。
【0035】
(D2)成分のSP値は7.5~11.0であり、8.0~10.5が好ましく、8.5~10.0がより好ましい。
(D2)成分のSP値が上記下限値以上であると、(A)成分の凝集物が生じるのを抑制でき、皮膜が破けにくくなる。
(D2)成分のSP値が上記上限値以下であると、泥等の疎水性汚れに対して浸透しやすくなり、汚れ除去効果をより高められる。
【0036】
(D2)としては、汚れ除去効果を高める観点から下記式(d)で表されるグリコールエーテル系溶剤が好ましい。
【0037】
RO-(AO)-R’ ・・・(d)
式中、Rは炭素数1~8の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基又はアリル基であり、R’は水素原子、炭素数1~4の直鎖状のアルキル基、又はアセチル基であり、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基を表し、mは平均繰り返し数で0.1~20を表す。
【0038】
(D2)成分は、式(d)中、R’が水素原子又は炭素数1~8の直鎖状のアルキル基であるグリコールエーテル系溶剤(以下、(D21)成分ともいう)、式(d)中、R’がアセチル基であるグリコールエーテル系溶剤(以下、(D22)成分ともいう)を含むことが好ましい。
【0039】
(D21)成分としては、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(SP値=10.7)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(SP値=10.7)、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル(SP値=10.9)、エチレングリコールモノブチルエーテル(SP値=10.2)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(SP値=10.0)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(SP値=10.0)、エチレングリコールモノイソブチルエーテル(SP値=9.1)、エチレングリコールモノヘキシルエーテル(SP値=9.9)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(SP値=9.7)、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル(SP値=9.3)、エチレングリコールモノアリルエーテル(SP値=10.8)、エチレングリコールモノフェニルエーテル(SP値=10.8)、エチレングリコールモノベンジルエーテル(SP値=10.9)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(SP値=10.0)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(SP値=9.7)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(SP値=9.4)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(SP値=9.6)、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(SP値=9.8)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(SP値=9.0)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(SP値=9.6)、エチレングリコールジメチルエーテル(SP値=8.6)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(SP値=8.8)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(SP値=8.7)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(SP値=8.3)等が挙げられる。
【0040】
中でも、汚れ除去効果をより高める観点から、式(d)中、Rが炭素数1~8の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であるモノアルキルグリコールエーテルが好ましい。中でも、上記式(d)中、Rが炭素数4~8の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、AOが炭素数2のオキシアルキレン基、R’が水素原子、nが0.1~10であるモノアルキルグリコールエーテルがより好ましい。
前記モノアルキルグリコールエーテルの中でもジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルが好ましく、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルがより好ましい。
【0041】
(D22)成分としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(SP値=10.0)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(SP値=9.6)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(SP値=8.9)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(SP値=9.4)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(SP値=9.0)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(SP値=9.4)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(SP値=9.0)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(SP値=9.2)が挙げられる。
これらの中でも、汚れ除去効果と造膜性の観点から、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートが好ましい。
【0042】
これらの(D2)成分は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0043】
(D2)成分の含有量は、皮膜形成剤の総質量に対し、0.1~4.5質量%が好ましく、0.5~3.5質量%がより好ましい。
(D2)成分の含有量が上記下限値以上であると、泥汚れ等の疎水性汚れに対する浸透力を向上させ、汚れ除去効果をより高められる。
(D2)成分の含有量が上記上限値以下であると、皮膜が破けにくくなり、汚れ除去効果をより高められる。
【0044】
(D2)成分は、(D21)成分と(D22)成分とを両方含むことが好ましい。
(D21)成分/(D22)成分で表される質量比(以下、D21/D22比ともいう)は、0.2~1.0が好ましく、0.3~0.6がより好ましい。
D21/D22比が上記下限値以上であると、汚れへの浸透性がより高まり、汚れ除去効果をより高められる。
D21/D22比が上記上限値以下であると、より均一な皮膜を形成でき、剥離性をより高められる。
【0045】
有機溶剤の含有量は、皮膜形成剤の総質量に対して、0.1~15.0質量%が好ましく、1.0~10.0質量%がより好ましい。有機溶剤の含有量が上記下限値以上であれば、汚れに対する浸透性を高めて、汚れ除去効果をより高められる。有機溶剤の含有量が上記上限値以下であれば、皮膜が破けにくくなり、汚れ除去効果をより高められる。
【0046】
≪リン酸エステル系界面活性剤≫
皮膜形成剤は、リン酸エステル型界面活性剤((E)成分)を含有してもよい。(E)成分は、皮膜の剥離性と、形成した皮膜の厚みの均一性とをより高められる。
(E)成分としては、アルキルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル及びそれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0047】
アルキルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル又はそれらの塩としては、下記式(5)で表される化合物が挙げられる。
[RO(AO)-P(=O)-(OM)3-q ・・・(e)
式中、Rは炭素数8~20のアルキル基又は炭素数8~20のアルケニル基であり、AOはオキシアルキレン基であり、pはオキシアルキレン基の平均繰り返し数であって0以上であり、qは1~3の整数であり、Mは水素原子、アルカリ金属原子、アンモニウム基、又は水酸基が置換してもよいモノ、ジ、トリアルキル(炭素数2~5)アンモニウム基である。
qが1である場合、式中の複数のMはそれぞれ同一でも異なってもよい。
Mにおけるアルカリ金属原子としては、例えばナトリウム、カリウム等が挙げられる。
【0048】
(e)式中、pが0の場合はアルキルリン酸エステル又はその塩を示し、pが正の数の場合はポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸又はその塩を示す。
のアルキル基又はアルケニル基の炭素数は、12~15が好ましい。
Oは、清浄化処理能力の観点から、オキシエチレン(EO)基が好ましい。
pは、0~12が好ましく、3~9がより好ましい。
(e)式で表される化合物としては、Rが炭素数12~15のアルキル基又は炭素数12~15のアルケニル基であり、pが3~9であり、qが1であり、Mが水素原子であるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルが特に好ましい。
【0049】
(E)成分は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
(E)成分の含有量は、皮膜形成剤の総質量に対し、0.1~3.0質量%が好ましく、0.5~2.0質量%がより好ましい。
(E)成分の含有量が上記下限値以上であると、皮膜をより容易に剥離できる。
(E)成分の含有量が上記上限値以下であると、均一な皮膜を形成しやすくなり、皮膜をより容易に剥離できる。
【0050】
≪金属封鎖剤≫
金属封鎖剤としては、例えば、有機カルボン酸類、アミノカルボン酸類、ホスホン酸類、ホスホノカルボン酸類、リン酸類等が挙げられる。
【0051】
金属封鎖剤の含有量は、皮膜形成剤の総質量に対して、0.01~5.0質量%が好ましく、0.1~3.0質量%がより好ましい。金属封鎖剤の含有量が上記範囲内であれば、洗浄力をより高められる。
【0052】
≪消臭剤≫
皮膜形成剤が消臭剤を含有することで、衛生設備機器設置環境への防臭効果をより高められる。消臭剤としては、例えば合成香料等が挙げられる。合成香料としては、例えば、α-ピネン、β-ピネン、リモネン、p-サイメン、オシメン、ターピノーレン、ジヒドロミルセノール、シス-3-ヘキセノール、トランス-3-ヘキセノール、イソプレゴール、l-メントール、1-オクテン-3-オール、1-ペンテン-3-オール、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、ベンズアルデヒド、2,6-ジメチル-5-ヘプテン-1-アール<Melonal:Givaudan-Roure>、2,6-ノナジエナール、1,8-シネオール、p-クレジルメチルエーテル、オクタナールジメチルアセタール、リモネンオキサイド、ローズオキサイド、ギ酸ヘキシル、酢酸エチル、オクタン酸アリル、2-エチル酪酸アリル、ヘキサン酸アリル、ヘプタン酸エチル、デカン酸メチル、ヘキサン酸メチル、オクタン酸メチル、プロピオン酸イソアミル、酢酸イソアミル、酢酸プレニル、酢酸ミルテニル、酢酸1-オクテン-3-イル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸イソアミル、イソ酪酸イソアミル、ヘキサン酸エチル、オクタン酸エチル、2-エチルヘキサン酸エチル、イソ酪酸エチル、2-メチル酪酸メチル、2-メチル酪酸エチル、プロピオン酸エチル、ギ酸シス3-ヘキセニル、イソ吉草酸シス3-ヘキセニル、プロピオン酸シス3-ヘキセニル、アセト酢酸エチル、安息香酸メチル、フラネオール、メチルヘプテノン、8-メルカプトメントン、アセチルセドレン、アセチルイソオイゲノール、ウンデカナール、ドデカナール、アリルアミルグリコレート、4-イソプロピル-5,5-ジメチル-1,3-ジオキサン<Anthoxan:Henkel>、酢酸ベンジル、ベンジルアルコール、プロピオン酸ベンジル、酢酸o-tert.-ブチルシクロヘキシル<Verdox:International Flavors & Fragrances(IFF)>、酢酸p-tert.-ブチルシクロヘキシル<Vertenex:IFF>、カルボン、シトラール、ゲラニルニトリル、シトロネラール、シトロネロール、酢酸シトロネリル、シトロネリルニトリル、クレゾール、酢酸p-クレジル、イソ酪酸p-クレジル、酢酸トリシクロデセニル<Cyclacet:IFF>、プロピオン酸トリシクロデセニル<Cycloprop:IFF>、1-デセナール、2-ペンチルシクロペンタノン<Delphone:Firmenich>、ジヒドロリナロール、ジメチルベンジルカルビノール、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、ジメチルオクタナール、酢酸3,7-ジメチルオクタニル、ジメチルフェネチルカルビノール、酢酸ジメチルフェネチルカルビニル、ジフェニルオキサイド、ドデカナール、4-トリシクロデシリデンブタナール<Dupical:Quest>、エストラゴール、p-エチル-α、α-ジメチルヒドロシンナムアルデヒド、レブリン酸エチル、エチルリナロール、オイゲノール、α-フェンコン、酢酸フェンキル、α-フェンキルアルコール、ゲラニオール、酢酸ゲラニル、ギ酸ゲラニル、グアイアコール、酢酸1-エチニルシクロヘキシル<Herbacet No.1:IFF>、アントラニル酸シス-3-ヘキセニル、安息香酸シス-3-ヘキセニル、酪酸シス-3-ヘキセニル、フェニルアセトアルデヒド、ハイドラトロパアルデヒド ジメチルアセタール、ハイドラトロパアルデヒドエチレングリコールアセタール、ハイドラトロピックアルデヒド、ヒドロキシシトロネラール、ヒドロキシシトロネラールジメチルアセタール、インドール、アンゲリカ酸イソアミル、酢酸イソボルニル、イソダマスコン、イソジャスモン、シクロオクチルカルボン酸メチル<Jasmacyclat:Henkel>、酢酸5-メチル-3-ブチルテトラヒドロピラン-4-イル<Jasmelia:IFF>、シス-ジャスモン、4-メチレン-3,5,6,6-テトラメチル-2-ヘプタノン<Koavone:IFF>、p-tert.-ブチル-α-メチルヒドロシンナムアルデヒド<Lilial:Givaudan-Roure>、リナロール、リナロールオキサイド、メントン、酢酸l-メンチル、p-メチルアセトフェノン、アニス酸メチル、ヘプチンカルボン酸メチル、フェニルグリシド酸メチル、サリチル酸メチル、2-メチルウンデカナール、マイラックアルデヒド、ネラール、ネロール、酢酸ネリル、酢酸ノニル、酢酸ノピル、1-オクタノール、酢酸オクチル、酢酸3-ペンチルテトラヒドロピラン-4-イル、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール、フェニルアセトアルデヒドプロピレングリコールアセタール、酢酸フェネチル、α-フェネチルアルコール、β-フェネチルアルコール、プロピオン酸2-フェネチル、酢酸3-フェニルプロピル、3-フェニルプロピルアルコール、イソ酪酸3-フェニルプロピル、酢酸ロジニル、9-デセノール<Rosalva:IFF>、酢酸スチラリル、スチラリルアルコール、ターピネン-4-オール、ターピネオール、酢酸ターピニル、テトラヒドロアロオシメノール、テトラヒドロゲラニオール、テトラヒドロリナロール、テトラヒドロムゴール、テトラヒドロミルセノール、チオゲラニオール、チモール、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド<Triplal:IFF>、ウンデカナール、トランス-2-ウンデセナール、2-メチル-3-(p-メトキシフェニル)-プロパナール<Canthoxal:IFF>、マルトール、アセトアルデヒド2-フェニル-2,4-ペンタンジオールアセタール<Vertacetal:Dragoco>、テトラデカナール、γ-ウンデカラクトン、γ-ノナラクトン、アンブロックス<Ambroxan:Henkel>、サリチル酸アミル、8,9-エポキシセドラン、イソアミルフェネチルエーテル<Anther:Quest>、アニスアルデヒド、オーランチオール、ベンジルイソオイゲノール、サリチル酸ベンジル、6,7-ジヒドロ-1,1,2,3,3-ペンタメチル-4-(5H)-インダノン<Cashmeran:IFF>、セドリルメチルエーテル<Cedramber:IFF>、セドレン、ギ酸セドリル、セドロール、シンナミックアルコール、酢酸シンナミル、ケイヒ酸シンナミル、クマリン、フェニル酢酸p-クレジル、シクラメンアルデヒド、サリチル酸シクロヘキシル、γ-デカラクトン、δ-デカラクトン、アントラニル酸ジメチル、酪酸ジメチルベンジルカルビニル、δ-ドデカラクトン、ケイヒ酸エチル、エチルマルトール、メチルフェニルグリシド酸エチル、エチルバニリン、フェニル酢酸オイゲニル、ファルネソール、酪酸ゲラニル、イソ酪酸ゲラニル、イソ吉草酸ゲラニル、3a-エチルドデカヒドロ-6,6,9a-トリメチルナフト[2.1b]フラン<Grisalva:IFF>、ジヒドロジャスモン酸メチル<Hedione:Firmenich>、α-メチル-3,4-メチレンジオキシヒドロシンナムアルデヒド<Helional:IFF>、ヘリオトロピン、サリチル酸シス-3-ヘキセニル、α-ヘキシルシンナムアルデヒド、サリチル酸ヘキシル、イソブチルキノリン、7-アセチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-1,1,6,7-テトラメチルナフタレン<Iso E super:IFF>、イソオイゲノール、イソロンギホラノン、ジャスミンラクトン、γ-ジャスモラクトン、テトラヒドロ-6-(3-ペンテニル)-2H-ピラン-2-オン<Jasmolactone:Firmenich>、4(3)-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-シクロヘキセン-1-カルボキシアルデヒド<Lyral:IFF>、1-(5,5-ジメチルシクロヘキセン-1-イル)-4-ペンテン-1-オン<α-Dynascone:Firmenich>、2,4-ジヒドロキシ-3,6-ジメチル安息香酸メチル、β-ナフチルイソブチルエーテル、β-ナフチルメチルエーテル、β-ナフチルエチルエーテル、ネロリドール、γ-オクタラクトン、パチョリアルコール、フェニルアセトアルデヒド2,4-ジヒドロキシ-4-メチルペンタンアセタール、ピバリン酸2-フェネチル、p-ヒドロキシフェニルブタノン、ローズフェノン、1-(2,2,6-トリメチルシクロヘキサン-1-イル)-ヘキサン-3-オール、クエン酸トリエチル、バニリン、酢酸ベチベリル、ダマスコン類、ダマセノン類、イオノン類、メチルイオノン類、合成サンダルウッド類、合成ムスク類、イロン類等がある。
【0053】
消臭剤の含有量は、皮膜形成剤の総質量に対して、0.01~5.0質量%が好ましく、0.05~2.0質量%がより好ましい。消臭剤の含有量が上記下限値以上であれば、防臭効果をより高められる。消臭剤の含有量が上記上限値以下であれば、組成物を保存した際に、より分離しにくくできる(即ち、分離安定性をより高められる)。
【0054】
≪香料≫
皮膜形成剤は、香料(但し、上記の消臭剤を除く)を含有することで、臭気をマスキングすることができる。香料としては、香料成分及び香料成分を溶剤に分散した香料組成物が挙げられる。香料成分のリストは、様々な文献、例えば「Perfume and Flavor Chemicals」,Vol.Iand II,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)、「合成香料 化学と商品知識」、印藤元一著、化学工業日報社(1996)、「Perfume and Flavor Materials of Natural Origin」,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994 )、「香りの百科」、日本香料協会編、朝倉書店(1989)および「Perfumery Material Performance V.3.3」,Boelens Aroma Chemical Information Service(1996)、及び「Flower oils and Floral Compounds In Perfumery」,Danute Lajaujis Anonis,Allured Pub.Co.(1993)等に記載されている。
【0055】
香料の含有量は、皮膜形成剤の総質量に対して、0.01~5.0質量%が好ましく、0.05~2.0質量%がより好ましい。香料の含有量が上記下限値以上であれば、防臭効果をより高められる。香料の含有量が上記上限値以下であれば、分離安定性をより高められる。
【0056】
≪除菌剤又は抗菌剤≫
皮膜形成剤は、除菌剤又は抗菌剤を含有することで、防臭効果をより高められる。
例えば、カチオン性界面活性剤、ポリヘキサメチレンビグアニド系抗菌剤、イソチアゾロン系抗菌剤等が挙げられる。これらは特に限定されず、公知のものを使用することができる。
カチオン性界面活性剤型抗菌剤としては、例えばジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムメトサルフェート、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジヒドロキシエチルアンモニウムクロライド、ジ牛脂アルキルジメチルアンモニウムクロライド、ジ(ステアロイルオキシエチル)ジメチルアンモニウムクロライド、ジ(オレオイルオキシエチル)ジメチルアンモニウムクロライド、ジ(パルミトイルオキシエチル)ジメチルアンモニウムメトサルフェート、ジ(ステアロイルオキシイソプロピル)ジメチルアンモニウムクロライド、ジ(オレオイルオキシイソプロピル)ジメチルアンモニウムクロライド、ジ(オレオイルオキシブチル)ジメチルアンモニウムクロライド、ジ(ステアロイルオキシエチル)メチルヒドロキシエチルアンモニウムメトサルフェート、トリ(ステアロイルオキシエチル)メチルメトサルフェート等が挙げられる。
ポリヘキサメチレンビグアニド系抗菌剤は下記(I)式で表され、市販の物としては下記一般式(I)のnが12である、ポリ(ヘキサメチレンビグアニド)塩酸塩(Proxel IB(登録商標))を使用することができる。
【0057】
【化1】
【0058】
イソチアゾロン系抗菌剤としては、例えば、N-ブチル-1,2-ベンズイソリアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン等が挙げられる。好ましいイソチアゾロン系抗菌剤としては、市販のものを用いることができ、Proxel XL2(商品名、アーチケミカルズジャパン社製)、AN1000(商品名、アーチケミカルズジャパン社製)、ACTICIDE MBS(商品名、ソージャパン株式会社)、ネオロンTM M-10 防腐剤(ロームアンドハース社)等を使用することができる。
【0059】
除菌剤又は抗菌剤の含有量は、皮膜形成剤の総質量に対して、0.01~10.0質量%が好ましく、0.05~5.0質量%がより好ましい。除菌剤又は抗菌剤の含有量が上記下限値以上であれば、防臭効果をより高められる。除菌剤又は抗菌剤の含有量が上記上限値以下であれば、分離安定性をより高められる。
なお、(A)~(C)成分及び任意成分の合計は100質量%である。
【0060】
<物性>
皮膜形成剤の粘度は、25℃において2000mPa・s~30000mPa・sが好ましく、3000mPa・s~20000mPa・sがより好ましく、5000mPa・s~10000mPa・sがさらに好ましい。粘度が上記下限値以上であれば、物品同士の隙間に流下せず、より良好に隙間を皮膜で覆える。粘度が上記上限値以下であれば、物品同士の隙間に対してより容易に塗り広げられ、汚れ除去効果のさらなる向上を図れる。
粘度は、JIS-Z-8803の方法に準じた方法で測定できる。例えば、粘度の測定は、皮膜形成剤を25℃に調温した後、B型粘度計(東機産業社製「BLII型」)を用いて、No.4ローター/回転数6rpmで1分後の数値を読み取ることで測定できる。
【0061】
皮膜形成剤のpHは、特に限定されないが、3.0~10.0が好ましく、5.0~8.0がより好ましい。pHは、JIS Z8802:2011に従い、25℃で測定される値である。
【0062】
(製造方法)
皮膜形成剤は、(A)~(C)成分及び必要に応じて他の成分を混合することにより調製できる。各成分の混合順序は特に限定されない。
例えば、混合槽に(B)成分の全量の7~9割を投入し、これを撹拌しつつ、(A)成分及び(C)成分を1~10質量部/分の速度で投入し、常温(例えば25℃)で10~120分間攪拌することで(A)成分及び(C)成分を含む水溶液又は水分散液を得る。
次に、必要に応じてpH調整剤を適量加えてpHを7に調整した後、任意成分及び(B)成分の残分を加えてさらに10~60分間攪拌して、皮膜形成剤を得る。
得られた皮膜形成剤を容器に充填し、容器入り物品としてもよい。容器としては、例えば、容器本体と、容器本体の内外を連通するノズルとを有するものが挙げられる。なお、容器はノズルを有しないものでもよい。容器の形状は特に限定されず、円柱状、角柱状、円錐状、角錘状等が挙げられる。容器本体の素材としては、プラスチック、金属、ガラス等が挙げられる。
【0063】
(使用方法)
本発明の皮膜形成剤を用いた清浄化方法、防汚方法及び防臭方法について説明する。
<清浄化方法>
本発明の清浄化方法は、皮膜形成剤を清浄化対象に対して塗布し、皮膜形成剤を乾燥させて皮膜を形成し(皮膜形成工程)、次いで、前記皮膜を清浄化対象から剥離する(剥離工程)。
ここで「清浄化」とは、清浄化対象に存在する汚れを取り除く処理を指す。汚れとは、清浄化対象以外の物質を広く指す可能性があるが、主な汚れとしては埃、土埃等や、それらが水分を含んで付着した後、水分を失ったものがある。清浄化処理能力とは、汚れを取り除く性能を広く指すが、主に効率(時間当たり表面上の汚れの物質を低減できる量)、特に1回の清浄化処理操作(本発明では、1回皮膜を形成し、取り除く操作)によって清浄化対象の表面からどれだけの汚れを除去できるかを指す。
【0064】
清浄化対象としては、洗面所、トイレ、浴室又は台所等、衛生設備機器設置環境における、あらゆる場所が挙げられる。特に、衛生設備機器と床との隙間に対し、本発明の皮膜形成剤を好適に適用できる。衛生設備機器の材質は、特に限定されず、陶磁器、金属、プラスチック、ガラス等が挙げられる。床の材質は、特に限定されず、陶磁器、金属、プラスチック、ガラス、コンクリート、木材等が挙げられる。
【0065】
以下、衛生設備機器設置床面の清浄化方法を例にして説明する。
皮膜形成工程では、清浄化対象に皮膜形成剤を塗布する。本例の清浄化対象は、衛生設備機器設置床面(以下、単に「床面」ということがある)である。清浄化対象は、床面のいずれでもよいが、衛生設備機器と、衛生設備機器が設置されている床との隙間を含む領域が好ましい。
塗布対象となる隙間の幅としては、例えば、0.01~5mmが好ましく、0.1~3.0mmがより好ましい。隙間の幅が上記下限値以上であれば、皮膜形成剤が隙間内に浸入して、隙間内の汚れをより良好に除去できる。隙間の幅が上記上限値以下であれば、皮膜形成剤によって形成された皮膜が隙間の開口部をより確実に覆える。
衛生設備機器と床との隙間を含む領域(含隙間領域)に、皮膜形成剤を塗布する。この際、本発明の皮膜形成剤は、適度な流動性と滞留性とを有するため、皮膜形成剤が隙間の内部に浸入し、かつ皮膜形成剤で隙間の開口部を覆った状態となる。
皮膜形成剤の塗布方法は、特に限定されず、容器のノズルから注出しつつ塗布する方法、筆、刷毛等の塗布具で塗布する方法、エアゾールスプレー等で吹き付けて塗布する方法等が挙げられる。
皮膜形成剤の塗布量は特に限定されず、例えば、30~300mg/cmとされる。また、皮膜形成剤の塗布量は、衛生設備機器と床との境界の長さに対し、0.1~0.3g/cmが好ましい。
含隙間領域に皮膜形成剤を塗布した状態で、皮膜形成剤による皮膜を形成する。皮膜とは、形成された状態(後述する、流動性を有さなくなった状態)において、目安として0.05~10mm程度の厚みを有する膜である。皮膜は、皮膜形成剤を固体(流動性を有さない状態)とすることで、形成される。本発明では、皮膜の形成は皮膜形成剤を乾燥させて行う。ここで乾燥は、水分等の溶媒の一部又は全部を除去することである。
乾燥の程度、即ち皮膜形成剤の含水率の低下の程度としては、目安として皮膜形成剤が固体になる条件であればよい。
乾燥する際は、自然乾燥、即ち皮膜形成剤を放置して表面から自然に水分を蒸発させ、これを皮膜が形成されるまで行ってもよい。また、ドライヤー、扇風機、又は換気扇等で風を皮膜形成剤に当てる手段を併用してもよい。皮膜形成剤を塗布後、塗布した面に吸水性を有する粉末をふりかけて、皮膜形成剤から水分を除去してもよい。
【0066】
清浄化対象に皮膜形成剤を塗布する段階で、清浄化対象に存在する汚れが、清浄化対象から皮膜形成剤の側に取り込まれることで、清浄化対象から汚れが除去される。また、皮膜を形成する過程、例えば皮膜形成剤を乾燥させるために放置している過程でも、清浄化対象からの汚れの除去が行われる(以上、皮膜形成工程)。
【0067】
剥離工程では、清浄化対象上に形成された皮膜を剥離して、取り除く。皮膜を剥離する際には、本発明の皮膜であれば、端を指でつまんで、剥がす等でごく容易に行える。また例えば、ヘラ又は竹串等の先端が鋭利な道具を使用して、清浄化対象から皮膜を剥がし取る操作を併用してもよい。あるいは、取っ手となる紙又はプラスチック板を設置して、皮膜を形成した時に、この取っ手を皮膜と一体化することで、取っ手をつまんで皮膜を剥がしてもよい。皮膜が硬くはがれにくい場合は、道具を用いて剥がしてもよい。こうして、清浄化対象から皮膜を取り除くと、清浄化対象に存在した汚れが皮膜と共に、取り除かれる(以上、剥離工程)。皮膜形成剤を塗布してから、皮膜を剥離するまでの期間は、例えば、25℃、湿度50%RHの環境下で、12時間以上が好ましく、24時間以上がより好ましい。皮膜形成剤を塗布してから、皮膜を剥離するまでの期間の上限は、特に限定されず、例えば、1ヶ月後に剥離してもよいし、1年後に剥離してもよい。
【0068】
上述した衛生設備機器設置床面の清浄化方法によれば、皮膜形成剤が隙間に入り込み、かつ隙間の開口部を覆う皮膜となる。このため、形成された皮膜により覆われた箇所(例えば、隙間)には、外部からの汚れが付着せず、かつ皮膜を容易に取り除くことで、隙間内部の汚れを容易に除去できる。
【0069】
<防汚方法>
本発明の防汚方法(汚染防止方法)は、皮膜形成剤を防汚対象に塗布し、皮膜形成剤を乾燥させて皮膜を形成すること(皮膜形成工程)を含む。本発明の防汚方法は、皮膜形成工程に次いで、前記皮膜を防汚対象から剥離してもよい(剥離工程)。
【0070】
ここで「防汚」とは、防汚対象に汚れが付着するのを防止する処理である。
防汚対象は、上述の清浄化対象と同様である。
【0071】
以下、衛生設備機器設置床面の防汚方法を例にして説明する。
皮膜形成工程では、防汚対象に皮膜形成剤を塗布する。防汚方法における皮膜形成工程は、清浄化方法における皮膜形成工程と同様である。
皮膜形成工程で皮膜が形成されると、この皮膜によって覆われた箇所には、外部から汚れが付着せず、皮膜に汚れが付着する。本例では、隙間の開口部が皮膜で覆われているため、隙間に汚れが浸入するのを防止できる。
【0072】
皮膜を形成し、任意の期間が経過した後、皮膜を剥離して、取り除くことで(除去工程)、皮膜に付着した汚れを除去できる。その後、皮膜形成工程と剥離工程とをこの順で繰り返すことで、防汚対象の汚染を防止できる。
【0073】
<防臭方法>
本発明の防臭方法は、皮膜形成剤を施工対象に対して塗布し、皮膜形成剤を乾燥させて皮膜を形成すること(皮膜形成工程)を含む。本発明の防臭方法は、皮膜形成工程に次いで、前記皮膜を施工対象から剥離してもよい(剥離工程)。
【0074】
ここで「防臭」とは、施工対象に汚れが蓄積し、あるいは施工対象に存在する汚れが変質して、異臭を発するのを防止する処理を指す。
施工対象は、上述の清浄化対象と同様である。
防臭を施す空間は、衛生設備機器設置環境である。即ち、防臭を施す対象は、洗面所、トイレ、風呂又は台所等である。
【0075】
以下、衛生設備機器設置環境の防臭方法を例にして説明する。
皮膜形成工程では、施工対象に皮膜形成剤を塗布する。防臭方法における皮膜形成工程は、清浄化方法における皮膜形成工程と同様である。
皮膜形成工程で皮膜が形成されると、この皮膜によって覆われた箇所には、外部から汚れが付着せず、皮膜に汚れが付着する。本例では、隙間の開口部が皮膜で覆われているため、隙間に汚れが浸入するのを防止できる。このため、隙間に汚れが長期に残留することなく、汚れに起因する臭気の発生を防止できる。
【0076】
皮膜を形成し、任意の期間が経過した後、皮膜を剥離して、取り除くことで(除去工程)、皮膜に付着した汚れを除去できる。その後、皮膜形成工程と剥離工程とをこの順で繰り返すことで、衛生設備機器設置環境における異臭の発生を防止できる。
なお、防臭方法に用いられる皮膜形成剤は、消臭剤、除菌剤及び抗菌剤の少なくとも1種を含有していることが好ましい。皮膜形成剤が消臭剤、除菌剤又は抗菌剤を含有することで、防臭効果のさらなる向上が図れる。
【実施例0077】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0078】
(使用原料)
<(A)成分>
・A-1:エチレン-酢酸ビニル共重合体のエマルション(住化ケムテックス株式会社製、製品名:SUMIKAFLEX S-752、固形分:50質量%、ガラス転移温度(Tg):15℃)。
・A-2:ポリ酢酸ビニルのエマルション(日信化学工業株式会社製、製品名:ビニブランGV6181、固形分50%、ガラス転移温度(Tg):30℃)。
【0079】
<(B)成分>
・B-1:イオン交換水。
【0080】
<(C)成分>
・C-1:ダイユータンガム(三晶株式会社製、製品名:KELCO-VIS DG)。
・C-2:キサンタンガム(三晶株式会社製、製品名:KELZAN)。
・C-3:カラギーナン(三晶株式会社製、製品名:GENUVISCO J-J)。
・C-4:カルボキシメチルセルロースナトリウム(ダイセルファインケム株式会社製、製品名:CMCダイセル1260)。
・C-5:ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製、製品名:クラレポバール22-88)。
・C-6:ポリアクリル酸系高分子(ダウ・ケミカル株式会社製、製品名: Acusol842)。
【0081】
<任意成分>
・有機溶剤1:エチレングリコール(丸善石油化学株式会社製)。
・有機溶剤2:ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(日本乳化剤株式会社製、製品名:ヘキシルジグリコール。
・有機溶剤3:ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(KHネオケム株式会社製)。
・界面活性剤:ポリオキシエチレン(9)アルキルエーテルリン酸エステル(リン酸系界面活性剤、東邦化学株式会社、製品名:フォスファノールRS610、アルキル基の炭素数12-15、エチレンオキシドの平均付加モル数9)。
・金属封鎖剤:エチレンジアミン4酢酸2ナトリウム(キレスト株式会社製、製品名:キレスト200)。
・pH調整剤:1N水酸化ナトリウム(関東化学株式会社製)。
【0082】
(評価方法)
図1の隙間モデル1を用いて、清浄化力及び被覆性を評価した。
隙間モデル1は、一方を長手とする平板状の底板10と、底板10の一方の長手から立ち上がる第一の側板12と、底板10の他方の長手から立ち上がる第二の側板14とを有する。第一の側板12と第二の側板14とは、底板10の幅方向で対向している。底板10は、陶器の板である。第一の側板12は、陶器の板である。第二の側板14は、ポリ塩化ビニルの板である。
底板10の長さLは、10cmである。第一の側板12及び第二の側板14の高さHは、5mmである。第一の側板12と第二の側板14との距離(即ち、底板10の幅)Wは、3mmである。隙間モデル1においては、第一の側板12と第二の側板14との間に隙間20が形成されている。
黒土27mgを隙間20内に散布し、底板10の表面にモデル隙間汚れ30を作成した。
第一の側板12を鉛直方向上方にし、第二の側板14を鉛直方向下方にして、モデル隙間汚れ30が形成された隙間モデル1を配置した。即ち、隙間20を水平方向に向けて開口させた。
隙間20に対して、清浄化用皮膜形成剤組成物2gを塗布し、被膜形成後の隙間の被覆性(防汚性)、皮膜を剥離した後の汚れ落ち(汚れ除去力)を目視で確認し、下記評価基準にて採点し、5回の合計値を評価点とした。なお、評価基準における隙間の表面とは、第一の側板12の上端と第二の側板14の上端とで挟まれた領域である。
【0083】
<汚れ除去力>
5点:モデル隙間汚れを完全に除去できている。
4点:モデル隙間汚れがわずかに残っているが、ほぼすべて除去できている。
3点:モデル隙間汚れを半分程度は除去できている。
2点:モデル隙間汚れのわずか一部を除去できている。
1点:モデル隙間汚れのほぼ全てを除去できていない。
【0084】
<防汚性:乾燥後の皮膜>
5点:隙間の表面の全体を厚み1mm以上の皮膜が覆っている。
4点:隙間の表面を覆う皮膜の一部に厚み1mm未満の箇所を有するが、皮膜が全体を覆えている。
3点:隙間の表面を覆う皮膜に、わずかに隙間が生じている箇所を有するが、ほぼ全体覆えている。
2点:隙間の表面を隙間が生じているが、一部は覆えている。
1点:隙間の表面がほぼ覆えていない。
【0085】
(実施例1~16、比較例1)
表1~3に示す組成に従い、以下の手順で各成分を水に加え、混合して各例の皮膜形成剤を調製した。
表中、各成分の含有量は、純分換算値である。表中、含有量の記載のないものは、配合していない。
【0086】
(A)成分を(B)成分の一部に分散した分散液を1Lビーカーに投入し、スリーワンモーターで回転数500rpmで攪拌しながら溶剤、活性剤の混合溶液を添加し、次いで、金属封鎖剤を添加した。その後、(B)成分の残部に増粘剤を分散し、これをビーカーに投入し、30分間攪拌し、pH調整剤でpH7.0に調整して、各例の清浄化用皮膜形成剤組成物を得た。
なお、評価には、製造直後の清浄化用皮膜形成剤組成物及び保存後の清浄化用皮膜形成剤組成物(表中、「40℃2カ月」と記載)を用いた。保存後の清浄化用皮膜形成剤組成物は、100mLのガラス瓶(PS-11瓶広口規格)に清浄化用皮膜形成剤組成物を80mL充填し、キャップをせずに25℃、湿度60%RHの雰囲気化で1時間放置し、次いで、キャップをして40℃で2カ月間保存したものである。
【0087】
(比較例2)
市販の皮膜形成剤組成物を比較例2とした。比較例2の皮膜形成剤組成物は、練状(ペースト状)で、一成分形特殊変成シリコーン系ピーラブルシーラーを含有し、水分と反応し増粘固化するものあった。比較例2の皮膜形成剤組成物については、購入後、直ちに又は保存後に清浄化力及び防汚性を評価した。保存後の皮膜形成剤組成物(表中、「40℃2カ月」と記載)は、その容器のキャップを開け、25℃、湿度60%RHの雰囲気化で1時間放置し、次いで、キャップを閉め、40℃で2か月保存したものである。その結果を表中に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】
【0091】
表1~3に示すように、本発明を適用した実施例1~16は、製造直後の清浄化力及び防汚性が15~20点であり、40℃保管後の清浄化力及び防汚性が14~25点であった。中でも、C-1、C-2又はC-3を(C)成分として用いた実施例2、5、6は、実施例7~9に比べて、40℃保管後の防汚性が高かった。実施例1~16は、正常化力及び防汚性に優れるため、汚れの除去し、かつ汚れの付着を防止できるので、防臭効果を高められる。
(C)成分を欠く比較例1は、清浄化力が10~11点であり、防汚性が8~10点であった。比較例2は、練状で伸びにくく、隙間への浸入が不十分であり、汚れ除去力が10点であった。加えて、比較例2の40℃2カ月保存品は、組成物が固化してしまい、使用できなかった。
図1