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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118852
(43)【公開日】2022-08-16
(54)【発明の名称】燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/1004 20160101AFI20220808BHJP
   H01M 8/0273 20160101ALI20220808BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20220808BHJP
【FI】
H01M8/1004
H01M8/0273
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021015630
(22)【出願日】2021-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】吉田 一彦
(72)【発明者】
【氏名】大平 紘敬
(72)【発明者】
【氏名】中澤 哲
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA02
5H126AA15
5H126BB06
5H126DD02
5H126DD05
5H126EE03
5H126EE11
5H126FF04
5H126FF07
(57)【要約】
【課題】電解質膜の劣化を抑制することができる燃料電池を提供する。
【解決手段】第1電極、電解質膜、及び、第2電極をこの順に備える膜電極接合体と、第1セパレータと、第2セパレータと、第1拡散層と、第2拡散層と、前記膜電極接合体の外周部に当該膜電極接合体と接触しないように所定の間隔を空けて配置され、且つ、前記第1セパレータと前記第2セパレータとの間に挟持される支持フレームと、前記支持フレームの少なくとも一方の面に配置される接合フィルムAと、前記膜電極接合体の少なくとも一方の面に配置される接合フィルムBと、前記支持フレームと前記膜電極接合体との間に配置され、且つ、前記接合フィルムAの片側端部と前記接合フィルムBの片側端部が互いに撓んだ状態で弾性接着剤を介して接合された接着部と、を備えることを特徴とする燃料電池。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極、電解質膜、及び、第2電極をこの順に備える膜電極接合体と、
前記膜電極接合体の前記第1電極側に配置された第1セパレータと、
前記膜電極接合体の前記第2電極側に配置された第2セパレータと、
前記第1電極と前記第1セパレータとの間に配置された第1拡散層と、
前記第2電極と前記第2セパレータとの間に配置された第2拡散層と、
前記膜電極接合体の外周部に当該膜電極接合体と接触しないように所定の間隔を空けて配置され、且つ、前記第1セパレータと前記第2セパレータとの間に挟持される支持フレームと、
前記支持フレームの少なくとも一方の面に配置される接合フィルムAと、
前記膜電極接合体の少なくとも一方の面に配置される接合フィルムBと、
前記支持フレームと前記膜電極接合体との間に配置され、且つ、前記接合フィルムAの片側端部と前記接合フィルムBの片側端部が互いに撓んだ状態で弾性接着剤を介して接合された接着部と、を備えることを特徴とする燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池(FC)は、複数の単セル(以下、セルと記載する場合がある)を積層した燃料電池スタック(以下、単にスタックと記載する場合がある)に、水素等の燃料ガスと酸素等の酸化剤ガスとの電気化学反応によって電気エネルギーを取り出す発電装置である。なお、実際に燃料電池に供給される燃料ガスおよび酸化剤ガスは、酸化・還元に寄与しないガスとの混合物である場合が多く、特に酸化剤ガスは酸素を含む空気であることが多い。なお、以下では、燃料ガスや酸化剤ガスを、特に区別することなく単に「反応ガス」あるいは「ガス」と呼ぶ場合もある。また、単セル、及び、単セルを積層した燃料電池スタックのいずれも、燃料電池と呼ぶ場合がある。
燃料電池の燃料極(アノード)では、ガス流路及びガス拡散層から供給される燃料ガスとしての水素(H)が触媒層の触媒作用によりプロトン化し、電解質膜を通過して酸化剤極(カソード)へと移動する。同時に生成した電子は、外部回路を通って仕事をし、カソードへと移動する。カソードに供給される酸化剤ガスとしての酸素(O)は、カソードの触媒層でプロトンおよび電子と反応し、水を生成する。生成した水は、電解質膜に適度な湿度を与え、余剰な水はガス拡散層(GDL、以下単に拡散層と記載する場合がある)を透過して、系外へと排出される。
【0003】
燃料電池車両(以下車両と記載する場合がある)に車載されて用いられる燃料電池に関して様々な技術が提案されている。
例えば特許文献1では、燃料電池の電解質膜の膨張収縮による膜裂けを抑制するために電解質膜の一部を撓ませる旨が開示されている。
特許文献2では、支持フレームとガス拡散層との間に位置する接着剤層が緩衝材になり、MEA(膜電極接合体)が破断するのを抑制できる燃料電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-072165号公報
【特許文献2】特開2019-109964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃料電池においては、アノードとカソードとの間におけるガスシール性を確保することが必須であるが、低コスト化のために熱膨張率の大きい支持フレーム材を使用した時でも電解質膜の破断を防止する必要がある。電解質膜は通常15μm以下で薄膜であること、水の膨潤が大きいことから入力が入ると電解質膜が劣化する。なお、膜厚を15μm以上にするとプロトンが移動する距離が大きくなるため抵抗が大きくなる。また、水の膨潤を抑えるとプロトンが通りにくくなり抵抗が大きくなる。
特許文献1では、電解質膜の撓ませた部分は拡散層など他の部材に挟まれていないためむき出しになり、電解質膜が劣化しやすい。特許文献2では、膜電極接合体と接着剤層は直線状に接しているため、熱がかかった場合に支持フレームの膨張収縮による応力および膜電極接合体の乾湿での膨張収縮による応力を受けて膜電極接合体が破断する可能性がある。
【0006】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、電解質膜の劣化を抑制することができる燃料電池を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示においては、第1電極、電解質膜、及び、第2電極をこの順に備える膜電極接合体と、
前記膜電極接合体の前記第1電極側に配置された第1セパレータと、
前記膜電極接合体の前記第2電極側に配置された第2セパレータと、
前記第1電極と前記第1セパレータとの間に配置された第1拡散層と、
前記第2電極と前記第2セパレータとの間に配置された第2拡散層と、
前記膜電極接合体の外周部に当該膜電極接合体と接触しないように所定の間隔を空けて配置され、且つ、前記第1セパレータと前記第2セパレータとの間に挟持される支持フレームと、
前記支持フレームの少なくとも一方の面に配置される接合フィルムAと、
前記膜電極接合体の少なくとも一方の面に配置される接合フィルムBと、
前記支持フレームと前記膜電極接合体との間に配置され、且つ、前記接合フィルムAの片側端部と前記接合フィルムBの片側端部が互いに撓んだ状態で弾性接着剤を介して接合された接着部と、を備えることを特徴とする燃料電池を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の燃料電池は、電解質膜の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の燃料電池の一例を示す断面模式図である。
図2図2は、本開示の燃料電池の別の一例を示す断面模式図である。
図3図3は、本開示の燃料電池の別の一例を示す断面模式図である。
図4図4は、本開示の燃料電池の別の一例を示す断面模式図である。
図5図5は、本開示の燃料電池の別の一例を示す断面模式図である。
図6図6は、本開示の燃料電池の別の一例を示す断面模式図である。
図7図7は、本開示の燃料電池の一例を示す平面図(上図)、接合フィルムA/弾性接着剤/接合フィルムB接合体の一例を示す平面図(中図)、接合フィルムA/弾性接着剤/接合フィルムB接合体のA-A断面図(下図)である。
図8図8は、本開示の燃料電池の構成の一例を示す分解斜視図である。
図9図9は、本開示の燃料電池の熱圧着時の挙動の一例を説明するための断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示においては、第1電極、電解質膜、及び、第2電極をこの順に備える膜電極接合体と、
前記膜電極接合体の前記第1電極側に配置された第1セパレータと、
前記膜電極接合体の前記第2電極側に配置された第2セパレータと、
前記第1電極と前記第1セパレータとの間に配置された第1拡散層と、
前記第2電極と前記第2セパレータとの間に配置された第2拡散層と、
前記膜電極接合体の外周部に当該膜電極接合体と接触しないように所定の間隔を空けて配置され、且つ、前記第1セパレータと前記第2セパレータとの間に挟持される支持フレームと、
前記支持フレームの少なくとも一方の面に配置される接合フィルムAと、
前記膜電極接合体の少なくとも一方の面に配置される接合フィルムBと、
前記支持フレームと前記膜電極接合体との間に配置され、且つ、前記接合フィルムAの片側端部と前記接合フィルムBの片側端部が互いに撓んだ状態で弾性接着剤を介して接合された接着部と、を備えることを特徴とする燃料電池を提供する。
【0011】
本開示者らは、加熱時における電解質膜端部挙動を可視化して、種々の部材における挙動を評価した結果、熱膨張率の大きいフィルム状の部材を支持フレームと接合し、膜電極接合体にも別のフィルム状の部材を接合して各々のフィルム状部材を弾性接着剤で接合することで、フィルム状の部材にかかる応力、膜電極接合体への印加応力を弾性領域以下に下げることができ、電解質膜の破断抑制効果が得られることを見出した。
本開示によれば、接合フィルムを支持フレームおよび膜電極接合体に別々に接合し、各々の接合フィルムを面接着することで接合フィルムのガスバリア性により、アノードとカソードの各反応ガスを互いに隔離でき、且つ、膜電極接合体と支持フレームを直接接合しないことで、支持フレームの熱変形による応力を接合フィルムおよび接合フィルム同士の接着剤が緩和することができるようになり、膜電極接合体に応力がかからないようにすることができ、電解質を含む膜電極接合体が破断するのを抑制することができる。
【0012】
本開示の燃料電池は、膜電極接合体と、第1セパレータと、第2セパレータと、第1拡散層と、第2拡散層と、支持フレームと、接合フィルムAと、接合フィルムBと、接着部と、を備える
【0013】
膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)は、第1電極、電解質膜、及び、第2電極をこの順に備える。
【0014】
電解質膜は、例えば、固体高分子電解質膜であってもよい。固体高分子電解質膜としては、例えば、水分が含まれたパーフルオロスルホン酸の薄膜等のフッ素系電解質膜、及び、炭化水素系電解質膜等が挙げられる。電解質膜としては、例えば、ナフィオン膜(デュポン社製)等であってもよい。
【0015】
第1電極、及び、第2電極は、一方がカソードであり、もう一方がアノードである。
カソード(酸化剤極)は、カソード触媒層を含む。
アノード(燃料極)は、アノード触媒層を含む。
カソード触媒層及びアノード触媒層をまとめて触媒層と称する。
触媒層は、電気化学反応を促進する金属等の触媒、電解質、及び、電子伝導性を有するカーボン粒子等の担体を備えていてもよい。
触媒(触媒金属)としては、例えば、白金(Pt)、及び、Ptと他の金属とから成る合金(例えばコバルト、及び、ニッケル等を混合したPt合金)等を用いることができる。
上記触媒はカーボン粒子等の担体上に担持されており、各触媒層では、触媒金属を担持した担体(触媒担持担体)と電解質とが混在していてもよい。
【0016】
第1セパレータは、膜電極接合体の第1電極側に配置される。
第2セパレータは、膜電極接合体の第2電極側に配置される。
第1セパレータと第2セパレータは、一方がカソード側セパレータであり、もう一方がアノード側セパレータである。
第1セパレータは、第1電極がカソードの場合はカソード側セパレータであり、第1電極がアノードの場合はアノード側セパレータである。
第2セパレータは、第2電極がカソードの場合はカソード側セパレータであり、第2電極がアノードの場合はアノード側セパレータである。
第1セパレータと第2セパレータをまとめてセパレータと称する。アノード側セパレータとカソード側セパレータとをまとめてセパレータと称する。
【0017】
セパレータは、複数のリブと当該リブで隔てられた複数のガス流路溝とを有し、当該リブとガス拡散層とが当接していてもよい。
セパレータは、ガス拡散層に接する面に反応ガス流路を有していてもよい。また、セパレータは、ガス拡散層に接する面とは反対側の面に燃料電池の温度を一定に保つための冷媒流路を有していてもよい。
セパレータは、反応ガス及び冷媒を燃料電池の積層方向に流通させるための供給孔及び排出孔を有していてもよい。冷媒としては、低温時の凍結を防止するために例えばエチレングリコールと水との混合溶液を用いることができる。
本開示においては、燃料ガス、及び、酸化剤ガスをまとめて反応ガスと称する。アノードに供給される反応ガスは、燃料ガスであり、カソードに供給される反応ガスは酸化剤ガスである。燃料ガスは水素等であってもよい。酸化剤ガスは酸素、空気、乾燥空気等であってもよい。
供給孔は、燃料ガス供給孔、酸化剤ガス供給孔、及び、冷媒供給孔等が挙げられる。
排出孔は、燃料ガス排出孔、酸化剤ガス排出孔、及び、冷媒排出孔等が挙げられる。
セパレータは、1つ以上の燃料ガス供給孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス供給孔を有していてもよく、1つ以上の冷媒供給孔を有していてもよく、1つ以上の燃料ガス排出孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス排出孔を有していてもよく、1つ以上の冷媒排出孔を有していてもよい。
セパレータがアノード側セパレータである場合は、1つ以上の燃料ガス供給孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス供給孔を有していてもよく、1つ以上の冷媒供給孔を有していてもよく、1つ以上の燃料ガス排出孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス排出孔を有していてもよく、1つ以上の冷媒排出孔を有していてもよく、アノード側セパレータは、アノード側ガス拡散層に接する面に燃料ガス供給孔から燃料ガス排出孔に燃料ガスを流す燃料ガス流路を有していてもよく、アノード側ガス拡散層に接する面とは反対側の面に冷媒供給孔から冷媒排出孔に冷媒を流す冷媒流路を有していてもよい。
セパレータがカソード側セパレータである場合は、1つ以上の燃料ガス供給孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス供給孔を有していてもよく、1つ以上の冷媒供給孔を有していてもよく、1つ以上の燃料ガス排出孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス排出孔を有していてもよく、1つ以上の冷媒排出孔を有していてもよく、カソード側セパレータは、カソード側ガス拡散層に接する面に酸化剤ガス供給孔から酸化剤ガス排出孔に酸化剤ガスを流す酸化剤ガス流路を有していてもよく、カソード側ガス拡散層に接する面とは反対側の面に冷媒供給孔から冷媒排出孔に冷媒を流す冷媒流路を有していてもよい。
セパレータは、ガス不透過の導電性部材等であってもよい。導電性部材としては、例えば、カーボンを圧縮してガス不透過とした緻密質カーボン、及び、プレス成形した金属(例えば、鉄、アルミニウム、及び、ステンレス等)板等であってもよい。また、セパレータが集電機能を備えるものであってもよい。
【0018】
第1拡散層は、第1電極と第1セパレータとの間に配置される。
第2拡散層は、第2電極と第2セパレータとの間に配置される。
第1拡散層と第2拡散層は、一方がカソード側拡散層であり、もう一方がアノード側拡散層である。
第1拡散層は、第1電極がカソードの場合はカソード側拡散層であり、第1電極がアノードの場合はアノード側拡散層である。
第2拡散層は、第2電極がカソードの場合はカソード側拡散層であり、第2電極がアノードの場合はアノード側拡散層である。
第1拡散層と第2拡散層をまとめてガス拡散層又は拡散層と称する。カソード側拡散層及びアノード側拡散層をまとめてガス拡散層又は拡散層と称する。
ガス拡散層は、カーボンクロス、及びカーボンペーパー等のカーボン多孔質体、並びに、金属メッシュ、金属発泡体等の金属多孔質体等であってもよい。
【0019】
支持フレームは、膜電極接合体の外周部に当該膜電極接合体と接触しないように所定の間隔を空けて配置され、且つ、第1セパレータと第2セパレータとの間に挟持される。所定の間隔は、接着部を配置することができる間隔であれば特に限定されない。
支持フレームの材料には、MEAの外側へのガスの流出を防止することができる材料であれば特に限定されず、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等が挙げられる。
支持フレームは、接着剤を介して第1セパレータと第2セパレータと接合されていてもよい。接着剤は、ポリエステル系及び変性オレフィン系等の熱可塑性樹脂であってもよく、変性エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂であってもよく、後述する弾性接着剤として例示するものであってもよい。
【0020】
接合フィルムAは、支持フレームの少なくとも一方の面に配置されていればよく、指示フレームの両面に配置されていてもよい。接合フィルムAは、その片側端部が膜電極接合体側に延伸されている。接合フィルムAの膜電極接合体側に延伸する片側端部は、膜電極接合体と接触していてもよく、接触していなくてもよい。
接合フィルムBは、膜電極接合体の少なくとも一方の面に配置されていればよく、膜電極接合体の両面に配置されていてもよい。接合フィルムBは、その片側端部が支持フレーム側に支持フレームと接触しないように延伸されている。接合フィルムBの支持フレーム側に延伸する片側端部は、支持フレームと接触していてもよく、接触していなくてもよい。
接合フィルムAと接合フィルムBをまとめて接合フィルムと称する。
接合フィルムは、-30~95℃で加水分解しない材料であってもよく、例えば、PPS(ポリフェニルスルフィド)、PPSU(ポリフェニルスルホン)、ポリエチレン/ポリプロピレンブロック共重合体等が挙げられ、中でも価格の点でポリエチレン/ポリプロピレンブロック共重合体であってもよい。PPSは東レのトレリナ(A900)等であってもよい。ポリエチレン/ポリプロピレンブロック共重合体は、例えば、加水分解しないこと、及び、-30~95℃での使用領域で使用可能なことから日本ポリプロ社製のBC4Cであってもよい。
【0021】
接着部は、支持フレームと膜電極接合体との間に配置され、且つ、接合フィルムAの片側端部と接合フィルムBの片側端部が互いに撓んだ状態で弾性接着剤を介して接合された構成を有する。
本開示において接着部は、弾性接着剤により接合フィルムAの片側端部と接合フィルムBの片側端部が接合された支持フレームと膜電極接合体との間の領域を意味する。
弾性接着剤は、膜電極接合体への応力をより緩和させる観点から弾性接着剤の弾性率は、接合フィルム、及び、膜電極接合体よりも小さくてもよい。
弾性接着剤は、通常使用領域である-30~95℃で支持フレームよりも弾性率が低くてもよく、また、水が発生しやすいため、耐加水分解性に優れたポリエチレン系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ニトリルゴム等を含んでいてもよい。
弾性接着剤は、例えば、接着剤が付与された三井化学社製のアドマーが挙げられる。また、ポリエチレン系樹脂が主成分であるNF307、LF128等が挙げられ、ポリエチレンが主成分の為-30℃時でも脆化せず十分な柔軟性が得られ、且つ、ビカット軟化点が95℃以上であり十分な柔軟性が得られる
弾性接着剤の厚みは、膜電極接合体への応力をより緩和させる観点から第1拡散層又は第2拡散層と同じ厚みとしてもよい。
【0022】
弾性接着剤と接合フィルムA、接合フィルムBの接合は熱圧着等で作製できる。
弾性接着剤の上面には支持フレーム側の接合フィルムAと膜電極接合体側の接合フィルムBのいずれの接合フィルムが配置されていてもよく、弾性接着剤の下面には支持フレーム側の接合フィルムAと膜電極接合体側の接合フィルムBのいずれの接合フィルムが配置されていてもよい。接合フィルムの撓み部の公差によりどちら側の接合フィルムを接着剤の上面にもってくるかを決めることで大きな公差も許容できる。接合フィルムA、接合フィルムBの各片側端部は、弾性接着剤中で接合されていてもよい。
膜電極接合体への応力をより緩和させる観点から支持フレームの下面(アノード側)に接合した接合フィルムAの膜電極接合体側に延伸する片側端部を弾性接着剤の下面に接合し、弾性接着剤の上面に膜電極接合体側に接合した接合フィルムBの指示フレーム側に延伸する片側端部を接合してもよい。弾性接着剤の厚みによる弾性力により支持フレームから膜電極接合体への入力をより緩和できる。
【0023】
燃料電池は、必要に応じて触媒層とガス拡散層の間にマイクロポーラス層(MPL)を有していてもよい。マイクロポーラス層は、PTFE等の撥水性樹脂とカーボンブラック等の導電性材料との混合物を含んでいてもよい。
【0024】
(第1実施形態)
図1は、本開示の燃料電池の一例を示す断面模式図である。
燃料電池1は、電解質膜11の両側に第1電極111および第2電極112が接合された膜電極接合体(MEA)を有する。
燃料電池1はMEAの両側に、第1拡散層151ならびに第1セパレータ121および第2拡散層152ならびに第2セパレータ122を有する。
第1セパレータ121および第2セパレータ122にそれぞれ第1流路131および第2流路132が形成されている。
MEAの外周部には、MEAと接触しないように所定の間隔を空けて支持フレーム16が配置されている。
支持フレーム16は第1セパレータ121と第2セパレータ122に接触し、両面に接着層が形成されている。
接合フィルムA17は、支持フレーム16の第1セパレータ121側の面上に配置され、且つ、片側端部がMEA側に延出し、接合フィルムB18は、MEAの第1拡散層151側の面上に配置され、且つ片側端部が支持フレーム16側に延出し、接合フィルムA17と接合フィルムB18の各々の片側端部は第2セパレータ122側に撓んだ状態で弾性接着剤により接合されている。
接合フィルムA17および接合フィルムB18は各々熱圧着により支持フレーム16、MEAと接合されている。
第1流路131内を第1反応ガス141が流れ、第1拡散層151内で面方向に拡散し、第1電極111へ到達する。
第2電極112側でも同様に第2流路132内を第2反応ガス142が流れ、第2反応ガス142が第2電極112へ輸送され電気化学反応によりエネルギーを取り出す。
第1反応ガス141は、第1電極111がカソードの場合は酸化剤ガスであり、アノードの場合は燃料ガスである。
第2反応ガス142は、第2電極112がカソードの場合は酸化剤ガスであり、アノードの場合は燃料ガスである。
【0025】
(第2実施形態)
図2は、本開示の燃料電池の別の一例を示す断面模式図である。
図2において図1と同様の構成については説明を省略する。
接合フィルムA17は、支持フレーム16の上面に接合され、MEA側に延伸する接合フィルムA17の片側端部は弾性接着剤19の上面に接合する。
接合フィルムB18は、MEAの上面に接合され、支持フレーム16側に延伸する接合フィルムB18の片側端部は弾性接着剤19の下面に接合する。
【0026】
(第3実施形態)
図3は、本開示の燃料電池の別の一例を示す断面模式図である。
図3において図1と同様の構成については説明を省略する。
接合フィルムA17は、支持フレーム16の下面に接合され、MEA側に延伸する接合フィルムA17の片側端部は弾性接着剤19の下面に接合する。
接合フィルムB18は、MEAの上面に接合され、支持フレーム16側に延伸する接合フィルムB18の片側端部は弾性接着剤19の上面に接合する。
【0027】
(第4実施形態)
図4は、本開示の燃料電池の別の一例を示す断面模式図である。
図4において図1と同様の構成については説明を省略する。
接合フィルムA17は、支持フレーム16の上面に接合され、MEA側に延伸する接合フィルムA17の片側端部は弾性接着剤19の内部に接合する。
接合フィルムB18は、MEAの上面に接合され、支持フレーム16側に延伸する接合フィルムB18の片側端部は弾性接着剤19の内部に接合する。
【0028】
(第5実施形態)
図5は、本開示の燃料電池の別の一例を示す断面模式図である。
図5において図1と同様の構成については説明を省略する。
接合フィルムA17は、支持フレーム16の上面に接合され、MEA側に延伸する接合フィルムA17の片側端部は弾性接着剤19の上面に接合する。
接合フィルムB18は、MEAの上面に接合され、支持フレーム16側に延伸する接合フィルムB18の片側端部は弾性接着剤19の上面に接合する。
【0029】
(第6実施形態)
図6は、本開示の燃料電池の別の一例を示す断面模式図である。
図6において図1と同様の構成については説明を省略する。
接合フィルムA17は、支持フレーム16の上面に接合され、MEA側に延伸する接合フィルムA17の片側端部は弾性接着剤19の下面に接合する。
接合フィルムB18は、MEAの上面と第1拡散層151の間の接触面にかけて挟持されるように配置され、且つ、接合フィルムB18とMEAとは接着剤20を介して接着され、支持フレーム16側に延伸する接合フィルムB18の片側端部は弾性接着剤19の上面に接合する。
加熱時に支持フレーム16、接合フィルムB18は熱膨張または溶融し変位が生じ、特に接合フィルムB18はMEAの上面に接合されるためMEAへ損傷を与える可能性があるが、接合フィルムB18が接着剤20を介してMEAと接合されるため、接着剤20がバッファーになり接合フィルムB18のみの場合よりも応力緩和作用が強くなり、MEAの劣化をより抑制することができる。接着剤20は、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよく、弾性接着剤として例示したものであってもよい。
【0030】
図7は、本開示の燃料電池の一例を示す平面図(上図)、接合フィルムA/弾性接着剤/接合フィルムB接合体の一例を示す平面図(中図)、接合フィルムA/弾性接着剤/接合フィルムB接合体のA-A断面図(下図)である。
図8は、本開示の燃料電池の構成の一例を示す分解斜視図である。
接合フィルムA17の片側端部と接合フィルムB18の片側端部を弾性接着剤19の下面と上面にそれぞれ接合する。
図7~8において図1と同様の構成については説明を省略する。
接合された接合フィルムA17のもう一方の片側端部を支持フレーム16に、接合フィルムB18のもう一方の片側端部を第2拡散層152+MEA12に熱圧着により接合する。
接合フィルムとして接合フィルムA17と接合フィルムB18の2種類を使い分けることにより、支持フレーム16の材質に接合し易い接合フィルム材質とMEA12に接合し易い接合フィルム材質に分けて選定することができる。
【0031】
図9は、本開示の燃料電池の熱圧着時の挙動の一例を説明するための断面模式図である。
図9において図1と同様の構成については説明を省略する。
燃料電池1を製作するとき、支持フレーム16の一部または全部を加熱して第1セパレータ121および第2セパレータ122と支持フレーム16とを熱圧着する。
接合フィルムA17と接合フィルムB18は弾性接着剤19にUV等を照射して硬化させることにより接合してもよい。
接着時に燃料電池1を上下から拘束し、熱を加えた時、支持フレーム16および接合フィルムA17は外側へ熱膨張する。
加熱時に支持フレーム16、接合フィルムA17および接合フィルムB18は熱膨張または溶融しMEAを引っ張る可能性があるが、支持フレーム16の溶融、または大きな熱膨張による変位が発生しても、撓んだ状態の接合フィルム17および接合フィルム18の各片側端部とこれらの接合フィルム間の弾性接着剤19によって変位を吸収しMEAへの入力を抑制することができる。
【符号の説明】
【0032】
1:燃料電池
11:電解質膜
12:MEA
16:支持フレーム
17:接合フィルムA
18:接合フィルムB
19:弾性接着剤
20:接着剤
111:第1電極
112:第2電極
121:第1セパレータ
122:第2セパレータ
131:第1流路
132:第2流路
141:第1反応ガス
142:第2反応ガス
151:第1拡散層
152:第2拡散層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9