(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118859
(43)【公開日】2022-08-16
(54)【発明の名称】替芯ケース
(51)【国際特許分類】
B43K 19/14 20060101AFI20220808BHJP
【FI】
B43K19/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021015639
(22)【出願日】2021-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】藤沢 清志
(57)【要約】 (修正有)
【課題】芯の取り出し口を下向きにすることなく、必要とする替芯を容易に取り出すことができ、多量の替芯がケースから同時に飛び出す問題を解消した替芯ケースを提供する。
【解決手段】背面板と左右の脚板とにより囲まれた内側空間を替芯収容室にすると共に、前記背面板に施した屈曲可能な薄肉部を介して、先端部側に蓋体部2eを、後部側にケース部を形成したケース本体2と、前面板と左右の外側脚板とにより、長手方向に直交する断面がコ字状に成形され、ケース本体2側の替芯収容室を前記前面板で覆うと共に、前記外側脚板の内側に、ケース本体2の脚板を位置させて、ケース本体2を長手方向にスライド可能に支持したカバー部材1とを備える。蓋体部2eには長手方向に沿ってレール状のガイド体2jが形成され、カバー部材1にはガイド体2jに接する摺動体1gが設けられる。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面板と左右の脚板とにより、長手方向に直交する断面がコ字状に成形され、コ字状に囲まれた内側空間を替芯収容室にすると共に、前記背面板の長手方向の先端部近傍に施した屈曲可能な薄肉部を介して、先端部側に蓋体部を、後部側にケース部を形成したケース本体と、
前面板と左右の外側脚板とにより、長手方向に直交する断面がコ字状に成形され、前記ケース本体側の替芯収容室を前記前面板で覆うと共に、前記外側脚板の内側に、前記ケース本体の脚板を位置させて、ケース本体を長手方向にスライド可能に支持したカバー部材とを備え、
前記蓋体部における少なくとも一方の脚板と、この脚板を覆うカバー部材側の外側脚板とのいずれか一方には、前記長手方向に沿ってガイド体が形成されると共に、いずれか他方には前記ガイド体に接する摺動体が形成され、
前記ケース本体には、前記脚板の外側に突出する操作部が設けられ、前記カバー部材の長手方向に対して、前記操作部を相対移動させることで、前記カバー部材の先端部から前記ケース本体の蓋体部を繰り出すスライド動作を実現させることを特徴とする替芯ケース。
【請求項2】
前記ケース本体の左右の脚板に取り付けられて、前記替芯収容室を前面側で覆う内蓋がさらに備えられ、前記ケース本体の背面板における前記替芯収容室側の内面および前記内蓋の替芯収容室側の内面には、収容された替芯との面接触を避ける突起がそれぞれ施され、前記内蓋には、前記ケース本体の薄肉部から前記蓋体部にわたって、一対の保護板が前記左右の脚板の内側にそれぞれ位置するように形成されると共に、前記ガイド体に対する前記摺動体の摺接により、前記薄肉部を介して前記蓋体部を背面側に反らせる回動動作を与えることを特徴とする請求項1に記載の替芯ケース。
【請求項3】
前記ガイド体は、前記蓋体部の脚板の外側において、長手方向に沿って延びるレール状に突出した状態で形成されると共に、
前記摺動体は、前記スライド動作により前記蓋体部が繰り出されるカバー部材の先端部において、前記ガイド体に接するように突出して形成され、
前記ガイド体には、前記先端部側において前記背面板に平行した平行領域が形成されると共に、当該平行領域に続いて前記薄肉部側に向かって、前記背面板に対して離れる傾斜領域を形成することで、前記スライド動作の前半部においては、前記蓋体部に回動動作を与えることなく、前記カバー部材の先端部から前記蓋体部を繰り出す動作を与えると共に、前記スライド動作の後半部において、前記蓋体部を背面側に反らせる回動動作を与えることを特徴とする請求項1又は2に記載の替芯ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シャープペンシル等に用いられる筆記芯を収容する替芯ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
シャープペンシル等に用いられる筆記芯を収容する替芯ケースは、有底状のケース本体と、このケース本体の開口部に着脱可能に装着される蓋体との二部品により構成される例が多い。
例えば特許文献1に開示された替芯ケースは、樹脂素材によるケース本体と、樹脂素材による蓋体との二部品により構成されており、前記蓋体は替芯ケースの長手方向に直交する方向にスライドさせることで、ケース本体の開口部(替芯の取出し口)が開放される。
この場合、ケース開口部に対する蓋体のスライド位置が、例えば2段階に設定できるように構成されており、これにより、ユーザは替芯を取り出すのに適した広さの開口を設定することができる。
【0003】
また、特許文献2に開示された替芯ケースは、同じく樹脂素材によるケース本体と、樹脂素材による蓋体との二部品により構成されており、有底状のケース本体の開口部に、蓋体が着脱可能に取り付けられる。
ケース本体に形成された前記開口部(替芯の取出し口)は、前面側において傾めにカットされており、これにより、ユーザは替芯を指先で摘むことができるように構成され、使い易い替芯ケースを実現させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-30136号公報
【特許文献2】特開2010-173248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記した各特許文献に開示された替芯ケースにおいては、いずれも替芯取出し口を開けた状態で、取出し口が若干下に向くようにケース本体を傾ける操作が必要となる。そして、替芯が自身の重力によって、ケース本体内から取出し口に出ることを利用して、必要とする替芯を取り出すものとなる。
これによると、ケース本体の傾きを調整しつつ、ケース本体を揺り動かすなどの微妙な操作が要求される。このために、必要以上の替芯、あるいはケース本体内の全ての替芯が取出し口から飛び出して、床面に散乱することもあり、床面に散乱した替芯を拾い戻す作業が強いられる場合も発生する。
【0006】
この発明は、従来の替芯ケースの前記した問題点に着目してなされたものであり、替芯の取り出し口を下向きにすることなく、必要とする替芯を容易に取り出すことが可能であり、多量の替芯がケース本体から同時に飛び出すなどの従来のものの問題点を解消した替芯ケースを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題を解決するためになされたこの発明に係る替芯ケースは、背面板と左右の脚板とにより、長手方向に直交する断面がコ字状に成形され、コ字状に囲まれた内側空間を替芯収容室にすると共に、前記背面板の長手方向の先端部近傍に施した屈曲可能な薄肉部を介して、先端部側に蓋体部を、後部側にケース部を形成したケース本体と、前面板と左右の外側脚板とにより、長手方向に直交する断面がコ字状に成形され、前記ケース本体側の替芯収容室を前記前面板で覆うと共に、前記外側脚板の内側に、前記ケース本体の脚板を位置させて、ケース本体を長手方向にスライド可能に支持したカバー部材とを備え、前記蓋体部における少なくとも一方の脚板と、この脚板を覆うカバー部材側の外側脚板とのいずれか一方には、前記長手方向に沿ってガイド体が形成されると共に、いずれか他方には前記ガイド体に接する摺動体が形成され、前記ケース本体には、前記脚板の外側に突出する操作部が設けられ、前記カバー部材の長手方向に対して、前記操作部を相対移動させることで、前記カバー部材の先端部から前記ケース本体の蓋体部を繰り出すスライド動作を実現させることを特徴とする。
【0008】
この場合、好ましい実施の形態においては、前記ケース本体の左右の脚板に取り付けられて、前記替芯収容室を前面側で覆う内蓋がさらに備えられ、前記ケース本体の背面板における前記替芯収容室側の内面および前記内蓋の替芯収容室側の内面には、収容された替芯との面接触を避ける突起がそれぞれ施され、前記内蓋には、前記ケース本体の薄肉部から前記蓋体部にわたって、一対の保護板が前記左右の脚板の内側にそれぞれ位置するように形成されると共に、前記ガイド体に対する前記摺動体の摺接により、前記薄肉部を介して前記蓋体部を背面側に反らせる回動動作を与えるように構成される。
【0009】
さらに前記ガイド体は、前記蓋体部の脚板の外側において、長手方向に沿って延びるレール状に突出した状態で形成されると共に、前記摺動体は、前記スライド動作により前記蓋体部が繰り出されるカバー部材の先端部において、前記ガイド体に接するように突出して形成され、前記ガイド体には、前記先端部側において前記背面板に平行した平行領域が形成されると共に、当該平行領域に続いて前記薄肉部側に向かって、前記背面板に対して離れる傾斜領域を形成することで、前記スライド動作の前半部においては、前記蓋体部に回動動作を与えることなく、前記カバー部材の先端部から前記蓋体部を繰り出す動作を与えると共に、前記スライド動作の後半部において、前記蓋体部を背面側に反らせる回動動作を与えるように構成される。
【発明の効果】
【0010】
前記したこの発明に係る替芯ケースによると、屈曲可能な薄肉部を介して蓋体部とケース部とを形成したケース本体が、カバー部材内にスライド可能に装着されて替芯ケースが形成される。そして、蓋体部とカバー部材側のいずれか一方および他方には、スライド動作により互いに摺接可能なガイド体と摺動体が施されることで、スライド動作に伴いカバー部材の先端部からケース本体の蓋体部を背面側に反らせる回動動作が与えられる。
【0011】
したがって、薄肉部による蓋体部の回動動作により、替芯の先端部がケース部から露出されるので、必要とする替芯を容易に取り出すことが可能である。
それ故、替芯の取り出し口を下向きにすることなく、替芯の取り出しが可能であり、多量の替芯がケース本体側から同時に飛び出すなどの従来のものの問題点を解消した替芯ケースを提供することができる。
【0012】
この場合、ケース本体には、脚板の外側に突出する操作部が設けられ、カバー部材の長手方向に対して、前記操作部を相対移動させることで、前記カバー部材の先端部から前記ケース本体の蓋体部を繰り出すスライド動作が可能である。したがって、前記操作部を利用することで、カバー部材に対するケース本体側のスライド動作を容易に実現することができ、操作性に優れた替芯ケースを提供することができる。
【0013】
さらに、ケース本体側に替芯収容室を前面側で覆う内蓋をさらに取り付け、ケース本体側と内蓋の内面に、替芯との面接触を避ける突起をそれぞれ形成したことで、替芯が静電気により替芯収容室内に張り付く問題を効果的に解消することができる。
これによると、ケース本体と内蓋とが二部品で形成されるので、一部品により対向する内面に突起をそれぞれ形成させる場合に比較して、離型において対向する突起を無理抜きにより損傷を与える問題を避けることができる。
【0014】
加えて、内蓋には、ケース本体の薄肉部から蓋体部にわたって位置する一対の保護板を、ケース本体の左右の脚板の内側にそれぞれ形成した構成を採用したので、スライド動作により繰り出された蓋体部を、カバー部材内に戻す際に、背面側に反った蓋体部側の脚板とケース部側の脚板との間に、替芯が挟み込まれる問題を効果的に解消させることができる。
【0015】
なお、この発明に係るその他の効果については、発明を実施するための形態の欄において、実施例の説明と共にその都度説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】
図2のa-a線より矢印方向に見た断面図である。
【
図4】
図2のb-b線より矢印方向に見た断面図である。
【
図5】蓋体部を途中まで繰り出した状態をケース本体側から見た背面図である。
【
図7】
図5のc-c線より矢印方向に見た断面図である。
【
図8】
図7に示す状態からさらに蓋体部を全開させた状態を示す断面図である。
【
図9】蓋体部を全開させた状態をカバー部材側から見た斜視図である。
【
図10】同じく替芯が収容された状態をカバー部材側から見た斜視図である。
【
図11】ケース本体の単品構成を示した正面図である。
【
図16】カバー部材の単品構成を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明に係る替芯ケースについて、図に基づいて説明する。
図1および
図2は、替芯ケースの全体構成をカバー部材1の表面側から見た状態およびケース本体2の裏面側から見た状態で示している。
この実施の形態においては、前記カバー部材1およびケース本体2は、樹脂素材により成形されており、また後述するケース本体2に取り付けられて、前記カバー部材1により覆われる内蓋3も、同様に樹脂素材により成形されている。そして、カバー部材1に対してケース本体2および内蓋3が、長手方向に沿ってスライド可能にカバー部材1に取り付けられ替芯ケースが構成されている。
なお、以下においては、ケース本体2の後述する蓋体部2eがカバー部材1から繰り出される長手方向の一方を、説明の便宜上先端部と称し、他方を後部と称することにする。
【0018】
図11~
図18に、前記したケース本体2、内蓋3およびカバー部材1の各単品構成が示されており、先ずはこれらの単品構成を示す各図に基づいて、各部材の詳細な構成について説明する。
図11および
図12は、ケース本体2を示しており、このケース本体2は、背面板2aと左右の脚板2bとにより、長手方向に直交する断面がコ字状に成形され、コ字状に囲まれた内側空間に替芯収容室2cを形成している。
【0019】
また、背面板2aの長手方向の先端部近傍に施した屈曲可能な薄肉部2dを介して、先端部側に蓋体部2eを、後部側にケース部2fが形成されている。
そして、蓋体部2eには左右の脚板2bを連結して、蓋体部2eの先端部を塞ぐ閉塞板2gが形成されると共に、ケース部2fの後部には左右の脚板2bを連結して、ケース部2fの後部を塞ぐ後部閉塞板2hが形成されている。
【0020】
前記蓋体部2eの左右両脚部2bの外側には、それぞれ一対のガイド体2jが、長手方向に沿ってレール状に突出して形成されている。このガイド体2jは、
図12に示すように蓋体部2eの先端部側において、背面板2aに平行した平行領域2j1が形成されると共に、この平行領域2j1に続いて、前記薄肉部2d側に向かって、背面板2aに対して離れる傾斜領域2j2が形成されている。
なお、このガイド体2jの前記した平行領域2j1と傾斜領域2j2は、後で説明するカバー部材1の先端部から、ケース本体2の蓋体部2eを繰り出すスライド動作に伴い、カバー部材1側に備えられた摺動体1gに摺接することで、前記した薄肉部2dを介して、前記蓋体部2eに対して背面側に反らせる回動動作を与えるように作用する。
【0021】
前記したケース部2fにおける左右の脚板2bには、後述する内蓋3を取り付けるための嵌合凹部2kが、長手方向のほぼ中央部および蓋体部2e寄りに形成されている。
また、ケース部2fにおける左右の脚板2bの両外側には、ケース本体2の長手方向に沿って一対のスライド突起2mが形成されている。このスライド突起2mは、カバー部材1に設けられる後述するケース支持部1dに係止して、ケース本体2が長手方向にスライド可能に支持されるように作用する。
【0022】
また、ケース部2fにおける左右脚板2bの後部寄りには、リブ状のクリック突起2nが形成されており、これは、カバー部材1がケース本体2に対してスライド動作する際に、ケース本体2側に形成されたクリック体1fを乗り越えることで、クリック作用を発生させるものとなる。したがって、このクリック作用は、ケース本体2をカバー部材1内に戻す際にも同様に発生する。
さらに、ケース部2fの背面板2aにおける替芯収容室2c側の内面には、収容された替芯Lとの面接触を避ける複数本の突起2pが、ケース本体2の長手方向に直交するように形成されている。これは樹脂素材により形成されたケース本体2の替芯収容室2cの内面において、替芯Lが静電気で吸着されて張り付くのを避ける作用を果たす。
【0023】
また、ケース部2fの左右脚板2bにおける前記した薄肉部2dの付近には、脚板2bの外側にそれぞれ突出した一対の操作部2tが、ケース本体2に一体成形されている。
この一対の操作部2tは、ケース本体2をカバー部材1にスライド可能に取り付けた状態において、カバー部材1に対してケース本体2を相対移動させるスライド操作が容易になし得るようにするものである。
すなわち、カバー部材1の長手方向に対して、前記操作部2tを相対移動させることで、カバー部材1の先端部からケース本体2の蓋体部2eを繰り出すスライド操作が実現できる。
【0024】
さらにケース本体2における背面板2aの裏側には、
図2に示すように後半部の長手方向に沿って、凹み部2qが形成されると共に、この凹み部2q内にはケース本体2の長手方向に直交する方向に配列された多数の線状の突起群2rが形成されている。そして、凹み部2qの先端部側には、好ましくは三角形状の矢印マーク2sが成形されている。
前記矢印マーク2sは、カバー部材1に対するケース本体2側のスライド方向を示しており、突起群2rはスライド操作における指先の滑り止めとして機能するものとなる。
【0025】
図13~
図15は、前記したケース本体2の左右の脚板2bに取り付けられて、前記替芯収容室2cを前面側で覆う内蓋3の単品構成を示している。
この内蓋3は、偏平状に形成されて長手方向の中央部と先端部付近に嵌合凸部3aが形成されている。この嵌合凸部3aは、ケース本体2に形成された内蓋嵌合凹部2kに嵌め込まれて、ケース本体2の替芯収容室2cを前面側で覆うようにして取り付けられる。
【0026】
このとき内蓋3の先端部に形成された一対の保護板3bが、ケース本体2の左右の脚板2bの内側において、ケース本体2の薄肉部2dから蓋体部2eにわたって位置するように配置される。
これにより、発明の効果の欄に記載したとおり、スライド動作により繰り出された蓋体部2eを、カバー部材1内に戻す際に、背面側に反った蓋体部2e側の脚板2bと、ケース部2f側の脚板2bとの間に、替芯Lが挟み込まれる問題を、効果的に解消させることができる。
【0027】
また、内蓋3の後部において、内蓋3の内面に突出して形成された一対のスペーサ3cは、内蓋3の後部においてカバー部材1の背面板2aとの間に、一定の間隔を保持するように作用する。
さらに、内蓋3の内面には、複数本の突起3dが内蓋3の長手方向に直交する方向に形成されている。これは、ケース部2fの替芯収容室2cを前面から覆う樹脂製の内蓋3において、替芯Lとの面接触を避けるものであり、替芯Lが静電気で吸着されて内蓋3に張り付くのを避けるものとなる。
【0028】
図16~
図18は、カバー部材1の単品構成を示しており、このカバー部材1は前面板1aと左右の外側脚板1bとにより、長手方向に直交する断面がコ字状に成形されており、このカバー部材1の後部には、左右の外側脚板1bを連結する後部脚板1cが形成されている。そして、前面板1aによってカバー部材1の替芯収容室2cを覆うと共に、左右の外側脚板1bの内側に、ケース本体2の左右の脚板2bを位置させて、ケース本体2を長手方向にスライド可能に支持する。
そして、スライド動作により、カバー部材1の先端部側からケース本体2の前記蓋体部2eが繰り出されるように構成されている。
【0029】
なお、カバー部材1における左右の外側脚板1bの先端部付近には、左右の外側脚板1bに沿って案内凹部1mが、それぞれ外側脚板1bの一部を切り欠いた状態で形成されている。この案内凹部1mは、カバー部材1にケース本体2を取り付けた状態において、ケース本体2に形成された一対の操作部2tが位置して、この操作部2tが案内凹部1mにおいてスライド可能に配置されるものとなる。
【0030】
また、左右の外側脚板1bの縁部に沿って、長手方向の2か所に、それぞれ内側に向かい合うようにしてケース支持部1dが形成されており、これはケース本体2の脚板2bに形成された左右のスライド突起2mを摺動可能に支持することで、ケース本体2をスライド可能に支持すると共に、カバー部材1からのケース本体2の外れ防止としての機能も果たす。そして、左右の外側脚板1bの後部寄りの内側には、一対のスライド突起1eが向かい合うように形成されている。これはケース本体2に形成したリブ状のクリック突起2nが前方に乗り越えることで、ケース本体2を開き状態にする際にクリック作用を発生させるものとなる。
さらに、外側脚板1bの後部側の内側には、一対のクリック体1fが向かい合うようにして形成されており、このクリック体1fは、ケース本体2をスライド動作させる際に、ケース本体2に形成したリブ状のクリック突起2nが後方に乗り越えることで、クリック作用を発生させるものとなる。
【0031】
一方、カバー部材1の先端部における外側脚板1b内には、摺動体1gが向かい合うようにして突設されている。この一対の摺動体1gは、ケース本体2がスライドして、カバー部材1の先端部から蓋体部2eが突出する際に、蓋体部2eに形成されたガイド体2jの平行領域2j1および傾斜領域2j2に接して、蓋体部2eを背面側に反らせる機能を果たす。その動作の詳細については、
図4~
図8等に基づいて後で説明する。
【0032】
また、カバー部材1の先端部における前記した摺動体1gの僅かに後部寄りには、ストッパー1hが向かい合うようにして設けられている。この一対のストッパー1hは、ケース本体2のスライドにより、蓋体部2eが全開した状態において、ケース部2fの脚板2bに形成されたスライド突起2mの先端部が当接する(
図8参照)ことで、ケース本体2のスライド動作を停止させるものとなる。
また、この一対のストッパー1hは、ケース本体2をカバー部材1内に引き戻すスライド動作において、ガイド体2jの戻しガイド部2j3に接して、背面側に反った状態の蓋体部2eを、ケース本体2の長手方向に沿う状態に戻す役割も果たす。その動作については、
図4~
図8等に基づいて後で説明する。
【0033】
さらに、カバー部材1における前面板1aの表面には、
図1に示すようにカバー部材1のほぼ中央部に円形状の窪み1kが形成されている。
この窪み1kと、前記したケース本体2側の線状の突起群2rは、カバー部材1に対してケース本体2をスライド操作するに際して、この窪み1kに例えば親指を当てると共に、ケース本体2側の線状の突起群2rに例えば人指し指を当てて相対的にスライドさせることで、そのスライド動作を円滑になし得ることができる。
このスライド操作にあたっては、ケース本体2に設けられて、カバー部材1の両側に突出する前記した一対の操作部2tを利用して、カバー部材1の長手方向に沿ってケース本体2をスライドさせることもできる。
【0034】
なお、
図1および
図2に示すように、カバー部材1にケース本体2を収容した状態においては、カバー部材1の前面板1aを正面視した状態(
図1に示す状態)において、カバー部材1の先端部に形成した先端凹部1jに沿って、ケース本体2の先端部に形成された蓋体部2eの閉塞板2gが視認可能となる。
これによると、ケース本体2を成形する樹脂色を、この替芯ケースに収容される替芯Lの芯色とほぼ同色に合わせることで、替芯ケースに収容された芯色を、閉塞板2gの着色によってユーザに識別させることもできる。
【0035】
この場合、ケース本体2を成形する樹脂色の濃度を、替芯Lの硬度に応じて段階的に異ならせることにより、閉塞板2gの濃度によってユーザに識別させることもできる。ここで挙げる同色は、マンセル表色系の色相で、10色相以内、明度および彩度で3以内を示す。また、濃度は部品の表面を濃度計(sakura DENSITO METER PDA65小西六写真工業株式会社)で測定したものとする。また、芯の硬度はJIS S
6005:2007に規定されている方法で測定した筆記硬度を示す。
【0036】
図3~
図10は、カバー部材1に対してケース本体2をスライド動作させた場合における主に蓋体部2eの開閉動作について説明するものである。
図3は、内蓋3を取り付けたケース本体2を、カバー部材1に収容した状態の中央断面図(
図2のa-a線より見た断面図)であり、
図4は、このときの蓋体部2eに形成された一方のガイド体2j部分に沿った断面図(
図2のb-b線より見た断面図)である。
カバー部材1に対して、ケース本体2が収容された
図4に示す状態においては、カバー部材1のストッパー1hが、ガイド体2jの戻しガイド部2j3に当接しており、したがって、蓋体部2eはカバー部材1の長手方向に沿って、閉じた状態を維持する。
【0037】
図5および
図6はカバー部材1の先端部から、ケース本体2の蓋体部2eを、蓋体部2eの長さ寸法の半分程度突出させた状態を示しており、
図7はこのときの蓋体部2eの様子を示している。すなわち、カバー部材1の先端部から蓋体部2eを突出させる初期の段階(前半部)においては、カバー部材1側の摺動体1gは、蓋体部2eに形成されたガイド体2jの平行領域2j1に接してスライドする。このために、蓋体部2eには回動動作を与えることなく、カバー部材1の先端部から蓋体部2eを繰り出す動作が与えられる。
なお、
図7に示す状態は、摺動体1gはガイド体2jの傾斜領域2j2に僅かに接しており、これに伴い蓋体部2eは、薄肉部2dを介して背面側に僅かに反った状態になされている。
【0038】
前記したように、蓋体部2eを突出させる初期の段階においては、蓋体部2eには回動動作を与えることなく、カバー部材1の先端部から蓋体部2eを繰り出す動作がなされるので、たとえ替芯ケースを不用意に傾けても、ケース内の替芯Lが飛び出て落下するのを阻止することができる。
【0039】
図8は蓋体部2eをカバー部材1からさらに繰り出して、蓋体部2eが全開した状態を示している。
図7に示す状態から
図8の状態に至る蓋体部2eの繰り出し動作の後半部においては、カバー部材1の繰り出しに伴い、摺動体1gはガイド体2jの傾斜領域2j2に沿って摺動するため、蓋体部2eには薄肉部2dを介して、急激に背面側に反る回動動作が与えられる。
そして、蓋体部2eが全開した
図8に示す状態においては、ケース本体2の長手方向に沿って設けられたスライド突起2mの先端部が、ストッパー1hに当接して蓋体部2eの繰り出しは停止される。
【0040】
図9および
図10は、蓋体部2eの全開状態における替芯ケースの外観構成を示しており、
図10はケースに替芯Lが収容された状態で示している。
蓋体部2eの全開状態においては、
図8に示すように摺動体1gには、ガイド体2jの傾斜領域2j2の後部が接しており、この状態においては、薄肉部2dを介して蓋体部2eを、指先等でさらに任意に反らせることができる。
したがって、替芯ケースから必要な数の替芯Lを正確に取り出すことができる。
【0041】
一方、
図8~
図10に示す蓋体部2eの全開状態から、蓋体部2eをカバー部材1内にスラスドさせて戻す場合には、例えば
図7に示されているように、ガイド体2jの戻しガイド部2j3が、ケース部材1側のストッパー1hに摺動することになる。これにより、背面側に反った状態の蓋体部2eは、ケース本体2の長手方向に沿う状態に戻されながらカバー部材1内に収容される。
そして、蓋体部2eがカバー部材1内に全て収容された
図4に示す状態においては、ガイド体2jの戻しガイド部2j3が、ケース部材1側のストッパー1hに当接しており、したがって、蓋体部2eは閉じた状態を維持することになる。
【0042】
なお、蓋体部2eの全開状態からカバー部材1内に戻す場合には、前記薄肉部2dを介した蓋体部2eとケース部2fに設けられた各脚板2bの間に、ケース内に収用された一部の替芯Lを挟み込んで、替芯Lを折損させるなどの問題が発生し得る。
しかし、
図9に示されているように、内蓋3の先端部に形成された一対の保護板3bが、蓋体部2eとケース部2fの各脚板2bの内側に位置するので、前記した替芯Lを折損させる問題を回避することができる。
【0043】
以上説明した替芯ケースの実施の形態においては、ケース本体2に内蓋3を取り付けた状態で、ケース本体2をカバー部材1にスライド可能に装着しているが、前記内蓋3は必ずしも必要ではなく、これは省略することもできる。
また中蓋3を用いる場合においては、図示せぬ薄肉状の連結帯を介してケース本体2の後部側に中蓋3連結して一体成形することができる。そして、薄肉状の連結帯を折り返して、ケース本体2に内蓋3を組み付けることで、部品数の削減が可能であり、これにより製造上の管理を容易にすると共に、より低コスト化も可能な替芯ケースを提供することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 カバー部材
1a 前面板
1b 外側脚板
1d ケース支持部
1g 摺動体
1h ストッパー
1k 窪み
1m 案内凹部
2 ケース本体
2a 背面板
2b 脚板
2c 替芯収容室
2d 薄肉部
2e 蓋体部
2f ケース部
2g 閉塞板
2j ガイド体
2j1 平行領域
2j2 傾斜領域
2j3 戻しガイド部
2m スライド突起
2p 突起(芯張り付き防止突起)
2r 突起群
2t 操作部
3 内蓋
3b 保護板
3d 突起(芯張り付き防止突起)
L 替芯