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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118860
(43)【公開日】2022-08-16
(54)【発明の名称】ハンド機構
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20220808BHJP
   B25J 15/06 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
B25J15/08 J
B25J15/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021015640
(22)【出願日】2021-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 嘉将
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 聖也
(72)【発明者】
【氏名】包 民
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707BS12
3C707DS01
3C707ES05
3C707ES07
3C707ET03
3C707FS01
3C707FU03
(57)【要約】
【課題】対象物の把持と対象物の吸着とを好適に両立することができる技術を提供する。
【解決手段】本発明に係るハンド機構は、指先を含む第1指リンク部と、第1指リンク部の指元側の端部に設けられる第1関節部と、第1関節部を介して第1指リンク部に接続される第2指リンク部と、第2指リンク部の指元側の端部に設けられる第2関節部と、を含む指部を、複数備える。複数の指部のうちの少なくとも一本の所定の指部には、吸着機構が設けられる。吸着機構は、所定の指における第1指リンク部の背面に設けられ、負圧を発生させることで対象物を吸着及び保持する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
指先を含む第1指リンク部と、
前記第1指リンク部の指元側の端部に設けられる第1関節部と、
前記第1関節部を介して前記第1指リンク部に接続される第2指リンク部と、
前記第2指リンク部の指元側の端部に設けられる第2関節部と、
を含む指部を、複数備えるハンド機構であって、
複数の前記指部のうち少なくとも一本の所定の指部における前記第1指リンク部の背面に設けられ、負圧を発生させることで対象物を吸着及び保持する吸着機構を備える、
ハンド機構。
【請求項2】
前記吸着機構は、
前記第1指リンク部の指元側から指先側へ向かって延在する吸着ノズルと、
前記吸着ノズルの先端に取り付けられ、前記第1指リンク部の指先側から指元側へ向かって収縮可能に形成されるパッドと、
を備え、
前記第1指リンク部の軸方向において、前記吸着ノズルの先端の位置が前記第1指リンク部の指先側の端部よりも指元側に位置するように、前記吸着機構が前記第1指リンク部に取り付けられる、
請求項1に記載のハンド機構。
【請求項3】
前記パッドが収縮していない状態にあるときに、前記第1指リンク部の軸方向における該パッドの先端面の位置が前記第1指リンク部の指先側の端部よりも指先方向に突出した位置となるように、前記吸着機構が前記第1指リンク部に取り付けられる、
請求項2に記載のハンド機構。
【請求項4】
対象物の吸着時とは異なる外力が前記パッドに加わった際に、前記第1指リンク部の軸方向における該パッドの先端面の位置が前記第1指リンク部の指先側の端部と同等の位置まで収縮するように、前記パッドが形成される、
請求項3に記載のハンド機構。
【請求項5】
前記ハンド機構は、前記所定の指部の前記吸着機構によって対象物を吸着してピックアップするための第一のモードと、複数の指部のうち少なくとも2本の指部によって対象物を把持してピックアップするための第二のモードと、を切替可能に構成される、
請求項1から4の何れか1項に記載のハンド機構。
【請求項6】
前記第一のモードにおいて、前記所定の指部が、前記パッドを対象物に接触させた上で該対象物を吸着するための吸着用指部として機能するとともに、前記所定の指部以外の指部のうち少なくとも1本の指部が、前記所定の指部によって吸着された対象物の姿勢を保持するための保持用指部として機能する、
請求項5に記載のハンド機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の指部により対象物をピックアップする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボットアーム等に取り付けられ、複数の指部によって対象物を把持するハンド機構が知られている。また、対象物を吸着するための吸着機構を、ハンド機構に組み合わせたものも知られている。例えば、特許文献1及び特許文献2には、複数の指部を支持するベース部に、吸着ロッドを進退自在に設ける構成が開示されている。特許文献3には、指部の腹部に、吸盤を取り付ける構成が開示されている。特許文献4には、指部における第1関節よりも指元側の部位に、吸着機構の吸盤を取り付ける構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-209458号公報
【特許文献2】特開2020-006490号公報
【特許文献3】特許第5525587号公報
【特許文献4】特許第6215029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来技術では、対象物の置き方等が制限される場合がある。例えば、特許文献1、2、及び4の構成においては、対象物が間口の狭い収容箱に収容されている場合、対象物の上方に壁が存在する場合、又は対象物が収容箱の角部分に置かれている場合等に、対象物の吸着に適した位置へ吸着機構をアプローチさせることが困難になる可能性がある。また、特許文献3の構成においては、厚さの薄い対象物を把持する場合等に、吸盤の一部のみが対象物と指部との間に挟まる可能性があり、対象物を安定した姿勢で把持することが困難になる可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、対象物の把持と対象物の吸着とを好適に両立することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、指先を含む第1指リンク部と、前記第1指リンク部の指元側の端部に設けられる第1関節部と、前記第1関節部を介して前記第1指リンク部に接続される第2指リンク部と、前記第2指リンク部の指元側の端部に設けられる第2関節部と、を含む指部を、複数備えるハンド機構である。該ハンド機構は、複数の前記指部のうち少なくとも一本の所定の指部における前記第1指リンク部の背面に設けられ、負圧を発生させることで対象物を吸着及び保持する吸着機構を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、対象物の把持と対象物の吸着とを好適に両立することができる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例に係るロボットアームの概略構成を示す図である。
図2】実施例に係るハンド機構の斜視図である。
図3】実施例に係るハンド機構の上面図である。
図4】実施例に係るハンド機構の指部の側面図である。
図5】実施例に係るハンド機構の指部の先端部側を図4の矢印Aの方向から見た図である。
図6】実施例に係るハンド機構の指部における第2関節部の可動範囲を示す図である。
図7】実施例に係るハンド機構の指部における第1関節部の可動範囲を示す図である。
図8】実施例に係る吸着機構の構成例を示す第1の図である。
図9】実施例に係る吸着機構の構成例を示す第2の図である。
図10】吸着機構と第1指リンク部との位置関係を示す第1の図である。
図11】吸着機構と第1指リンク部との位置関係を示す第2の図である。
図12】対象物を吸着する場合におけるハンド機構の基本的な動作例を説明するための図である。
図13】対象物を把持する場合におけるハンド機構の基本的な動作例を説明するための図である。
図14A】取り出し口が側面に設けられた収容箱から対象物をピックアップする場合におけるハンド機構の動作例を説明するための第1の図である。
図14B】取り出し口が側面に設けられた収容箱から対象物をピックアップする場合におけるハンド機構の動作例を説明するための第2の図である。
図15】収容箱内の壁際に置かれている対象物をピックアップする場合におけるハンド機構の動作例を説明するための図である。
図16A】収容箱内の角部分に置かれている対象物をピックアップする場合におけるハンド機構の動作例を説明するための第1の図である。
図16B】収容箱内の角部分に置かれている対象物をピックアップする場合におけるハンド機構の動作例を説明するための第2の図である。
図17A】斜めに傾いた状態で収容箱に収容されている対象物をピックアップする場合におけるハンド機構の動作例を説明するための第1の図である。
図17B】斜めに傾いた状態で収容箱に収容されている対象物をピックアップする場合におけるハンド機構の動作例を説明するための第2の図である。
図17C】斜めに傾いた状態で収容箱に収容されている対象物をピックアップする場合におけるハンド機構の動作例を説明するための第3の図である。
図18】球状の対象物をピックアップする場合におけるハンド機構の動作例を説明するための図である。
図19】2つの対象物を同時にピックアップする場合におけるハンド機構の動作例を説明するための図である。
図20】ハンド機構の他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係るハンド機構は、複数の指部を備える。複数の指部の各々は、指先を含む第1指リンク部、第1指リンク部の指元側の端部に設けられる第1関節部、第1関節部を介して第1指リンク部に接続される第2指リンク部、及び第2指リンク部の指元側の端部に設けられる第2関節部を含む。すなわち、複数の指部の各々は、少なくとも2つの関節部を有する。これにより、対象物の置かれている状況又は対象物の形状等に応じて、各指部の形態を柔軟に変更することができる。例えば、対象物の把持に適した位置へハンド機構をアプローチさせる場合に、対象物の周囲に存在する物体等に干渉しないように、各指部の形態を変更させることが容易となる。また、対象物の形状又は大きさ等に応じて、各指部の形態を変更することも容易となる。
【0010】
ところで、把持によるピックアップが適している対象物と、吸着によるピックアップが適している対象物とが混在する現場においては、把持と吸着とを両立可能な機構が望まれ
る。これに対し、ハンド機構に吸着機構を併設する方法が考えられる。しかしながら、対象物の把持又は吸着に適した位置へハンド機構をアプローチさせる際に、対象物の周囲に存在する物体等に干渉しないように、指部の形態を変更することが困難になったり、又はその際の制御が複雑になったりする可能性がある。また、対象物を把持する際に吸着機構が周囲の物体若しくは対象物と干渉したり、又は対象物を吸着する際に指部が周囲の物体若しくは対象物と干渉したりすることで、対象物を安定した姿勢で把持又は吸着することが困難になる可能性もある。
【0011】
そこで、本発明に係るハンド機構では、複数の指部のうち、少なくとも1本の指部(所定の指部)には、第1指リンク部の背面に吸着機構が設けられるようにした。すなわち、所定の指部における指先の背面に、吸着機構が設けられるようにした。吸着機構は、負圧を発生させることで対象物を吸着及び保持する機構である。ここで、所定の指部を含む複数の指部により対象物を把持する場合、所定の指部における第1指リンク部の腹面を対象物に接触させて把持を行うことができる。これにより、吸着機構を対象物に干渉させることなく、対象物を把持することが可能になる。また、所定の指部以外の指部を利用して対象物を把持することもできる。よって、対象物を安定した姿勢で把持することが可能になる。
【0012】
また、本発明に係る複数の指部は、少なくとも2つの関節部を有するため、対象物の把持又は吸着に適した位置へハンド機構をアプローチさせる際に、吸着機構又は指部が対象物の周囲に存在する物体等に干渉しないように、複数の指部の形態を変更することも容易である。例えば、間口の狭い収容箱に対象物が収容されている場合、所定の指部を略直線状の形態にして収容箱の内部へ挿入させることで、対象物の吸着に適した位置へ吸着機構をアプローチさせることができる。その際、所定の指部以外の指部については、収容箱の壁等に干渉せずに当該収容箱内に挿入可能な形態にすることもできるし、又は収容箱の壁等に干渉せずに当該収容箱内に挿入されない形態にすることもできる。これにより、間口の狭い収容箱に収容されている対象物を、安定した姿勢で吸着することが可能となる。また、収容箱の角部分に対象物が置かれている場合、例えば、所定の指部を略クランク状の形態にすることで、対象物の吸着に適した位置へ吸着機構をアプローチさせることができる。これにより、収容箱の角部分に置かれている対象物を、安定した姿勢で吸着することが可能となる。
【0013】
したがって、本発明に係るハンド機構によれば、対象物の把持と対象物の吸着とを好適に両立することができる。
【0014】
本発明に係る吸着機構は、所定の指部における第1指リンク部の指元側から指先側へ向かって延在する吸着ノズルと、吸着ノズルの先端に取り付けられ、第1指リンク部の指先側から指元側へ向かって収縮可能に形成されるパッドと、を含んで構成されてもよい。その際、第1指リンク部の軸方向において、吸着ノズルの先端の位置が第1指リンク部の指先側の端部よりも指元側に位置するように、吸着機構が第1指リンク部に取り付けられるようにしてもよい。
【0015】
ここで、所定の指部を含む複数の指部により対象物を把持する場合には、対象物の把持に適した位置へ所定の指部をアプローチさせる途中で、対象物の置かれている床等にパッドが干渉する可能性がある。これに対し、第1指リンク部の指先側から指元側へ向かって収縮可能にパッドが形成されていれば、上記したアプローチの途中でパッドが床等に干渉しても、当該パッドを収縮させることで、上記したアプローチを適正に継続させることができる。さらに、吸着ノズルの先端の位置が、第1指リンク部の指先側の端部よりも指元方向に引っ込んでいるため、上記したアプローチの途中で吸着ノズルの先端が床等に干渉することも抑制される。これにより、所定の指部を含む複数の指部により対象物を把持す
る場合であっても、対象物の把持に適した位置へ所定の指部をアプローチさせることが可能となる。
【0016】
なお、上記したパッドが収縮していない状態にあるときに、第1指リンク部の軸方向における該パッドの先端面の位置が第1指リンク部の指先側の端部よりも指先方向に突出した位置となるように、上記した吸着機構が第1指リンク部に取り付けられるようにしてもよい。これにより、吸着機構により対象物を吸着する場合に、第1指リンク部の先端よりも先に、パッドの先端面を対象物に接触させることができる。すなわち、対象物の吸着に適した位置へ吸着機構をアプローチさせる場合に、所定の指部の指先部分(第1指リンク部における指先側の端部)が対象物に干渉することを抑制することができる。その結果、対象物をより確実に安定した姿勢で吸着することが可能となる。
【0017】
ここで、パッドが収縮していない状態にあるときに、第1指リンク部の軸方向における該パッドの先端面の位置が第1指リンク部の指先側の端部よりも指先方向に突出した位置となるように、吸着機構が第1指リンク部に取り付けられる場合において、対象物の吸着時とは異なる外力がパッドに加わった際には、第1指リンク部の軸方向におけるパッドの先端面の位置が第1指リンク部の指先側の端部と同等の位置まで収縮するように、パッドが形成されてもよい。これにより、所定の指部を含む複数の指部により対象物を把持する場合において、対象物の把持に適した位置へ所定の指部をアプローチさせる途中で、パッドが当該アプローチを阻害することが抑制される。
【0018】
ここで、本発明に係るハンド機構は、所定の指部の吸着機構によって対象物を吸着してピックアップするための第一のモードと、複数の指部のうち、少なくとも2本の指部によって対象物を把持してピックアップするための第二のモードと、を切替可能に構成されてもよい。これにより、把持によるピックアップが適している対象物と、吸着によるピックアップが適している対象物とが混在する現場においても、それらの対象物を効率的にピックアップすることが可能となる。
【0019】
なお、上記した第一のモードにおいては、所定の指部が吸着機構のパッドを対象物に接触させた上で該対象物を吸着するための吸着用指部として機能するとともに、所定の指部以外の指部のうち少なくとも1本の指部が、所定の指部によって吸着された対象物の姿勢を保持するための保持用指部として機能するようにしてもよい。これにより、吸着機構により吸着された対象物の姿勢を安定させることができる。その結果、対象物を持ち上げる工程、及び持ち上げられた対象物を所定のプレイス位置へ移動させる工程等において、対象物の姿勢が不安定になることが抑制される。
【0020】
<実施例>
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に記載がない限りは発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0021】
ここでは、本発明に係るハンド機構をロボットアームに適用した場合について説明する。図1は、本実施形態に係るロボットアームの概略構成を示す図である。ロボットアーム1は、ハンド機構2、アーム機構3、及び台座部4を備えている。ハンド機構2は、アーム機構3の一端に取り付けられる。また、アーム機構3の他端は、台座部4に取り付けられる。ハンド機構2は、アーム機構3に接続されたベース部20と、該ベース部20により可動自在に支持された複数の指部21(図1に示す例では、4本の指部21)と、を備えている。なお、ハンド機構2の詳細な構成については後述する。
【0022】
(アーム機構)
アーム機構3は、第1アームリンク部31、第2アームリンク部32、第3アームリンク部33、第4アームリンク部34、第5アームリンク部35、及び接続部材36を備えている。そして、ハンド機構2のベース部20が、アーム機構3の第1アームリンク部31の一端側に形成された第1関節部30aに接続されている。第1関節部30aには、第1アームリンク部31に対してハンド機構2を該第1アームリンク部31の軸周りに回転させるためのモータ(図示略)が設けられている。第1アームリンク部31の他端側は、第2関節部30bで第2アームリンク部32の一端側に接続されている。第1アームリンク部31と第2アームリンク部32とはその中心軸が垂直に交わるように接続されている。そして、第2関節部30bには、第2アームリンク部32に対して、第1アームリンク部31を、その他端側を中心に該第2アームリンク部32の軸周りに回転させるためのモータ(図示略)が設けられている。また、第2アームリンク部32の他端側は、第3関節部30cで第3アームリンク部33の一端側に接続されている。第3関節部30cには、第3アームリンク部33に対して第2アームリンク部32を相対的に回転させるためのモータ(図示略)が設けられている。
【0023】
同様に、第3アームリンク部33の他端側は、第4関節部30dで第4アームリンク部34の一端側に接続されている。また、第4アームリンク部34の他端側は、第5関節部30eで第5アームリンク部35に接続されている。そして、第4関節部30dには、第4アームリンク部34に対して第3アームリンク部33を相対的に回転させるためのモータ(図示略)が設けられている。また、第5関節部30eには、第5アームリンク部35に対して第4アームリンク部34を相対的に回転させるためのモータ(図示略)が設けられている。さらに、第5アームリンク部35は、台座部4から垂直に配置された接続部材36に第6関節部30fで接続されている。第5アームリンク部35と接続部材36とは、それぞれの中心軸が同軸となるように接続されている。そして、第6関節部30fには、第5アームリンク部35を、該第5アームリンク部35及び接続部材36の軸回りに回転させるためのモータ(図示略)が設けられている。斯様な構成によれば、例えば、アーム機構3を6自由度の自由度を有する機構とすることができる。
【0024】
(ハンド機構)
次に、ハンド機構2の構成について図2から図11に基づいて説明する。本例におけるハンド機構2は、ワーク等の対象物を把持してピックアップするモード(第一のモード)と、対象物を吸着してピックアップするモード(第二のモード)と、を切替可能に構成される。
【0025】
図2は、ハンド機構2の斜視図である。図3は、ハンド機構2の上面図である。なお、図3中の矢印は、各指部21の回転可動範囲を示している。図2及び図3に示すように、ハンド機構2においては、ベース部20に4本の指部21が、ハンド機構2の長手方向(図3において紙面に垂直な方向)の軸を中心とした円周上に、等角度間隔(すなわち90deg間隔)に配置されている。本例においては、4本の指部21のうち、2本の指部21(所定の指部)には、吸着機構600が設けられている。なお、吸着機構600以外の構造は、4本の指部21の全てにおいて共通である。ただし、4本の指部21の動作は、それぞれ独立して制御される。
【0026】
図4から図7は、指部21の構成を説明するための図である。図4から図7では、4本の指部21のうち、所定の指部21の構成が記載されている。図4は、所定の指部21の側面図である。なお、図4では、ベース部20が透過された状態で記載されている。また、図5は、指部21の先端部側を図4の矢印Aの方向から見た図である。また、図4及び図5では、後述する指部21の第2指リンク部212の一部が透過された状態で記載されており、該第2指リンク部212の内部構造も示されている。
【0027】
図2及び図4に示すように、各指部21は、第1指リンク部211、第2指リンク部212、及び基端部213を有している。第1指リンク部211と第2指リンク部212との間には、屈曲及び伸展可能に形成された第1関節部22が設けられている。第2指リンク部212と基端部213との間には、屈曲及び伸展可能に形成された第2関節部23が設けられている。指部21の基端部213は、該指部21の長手方向(図3において紙面に垂直な方向)の軸回りに回転自在な状態でベース部20に接続されている。
【0028】
ベース部20には、図4に示すように、第2モータ52と第3モータ53とが内蔵されている。第2モータ52は、図6に示すように、第2関節部23を屈曲及び伸展させるためのモータである。第3モータ53は、図3中の矢印で示す範囲において指部21全体を回転駆動させるためのモータである。また、第2指リンク部212には、図5に示すように、第1モータ51が内蔵されている。この第1モータ51は、図7に示すように、第1関節部22を屈曲及び伸展させるためのモータである。
【0029】
ここまでに述べた構造は、所定の指部21に固有のものではなく、4本の指部21に共通するものである。
【0030】
次に、図8から図11は、所定の指部21に設けられる吸着機構600の構成を説明するための図である。図8及び図9は、吸着機構600の側面図である。なお、図8では、後述するノズルボディ601が透過された状態で記載されている。また、図9では、ノズルボディ601に加え、後述するパッド603も透過された状態で記載されている。
【0031】
吸着機構600は、図4に示すように、所定の指部21における指先の背面(第1指リンク部211の背面216)に取り付けられている。これにより、所定の指部21を含む複数の指部21により対象物の把持を行う場合には、所定の指部21における指先の腹面(第1指リンク部211の腹面215)を利用して対象物を把持することが可能である。吸着機構600は、負圧を利用して対象物を吸着するための機構である。斯様な吸着機構600は、図8及び図9に示すように、ノズルボディ601、吸着ノズル602、及びパッド603を含んで構成される。ノズルボディ601は、内部に負圧通路601Aが形成された筐体であり、第1指リンク部211の背面216に取り付けられる。吸着ノズル602は、ノズルボディ601に突設される円筒状のノズルであり、該吸着ノズル602の内部が負圧通路601Aと連通している。本例における吸着ノズル602は、第1指リンク部211の軸方向に沿って、指元側から指先側へ向かって延在するように形成される。吸着ノズル602は、ノズルボディ601と一体的に成形されてもよく、又はネジ機構等によってノズルボディ601に固定されてもよい。また、吸着ノズル602には、パッド603が被せられている。パッド603は、ベローズ状に形成された筒体であり、シリコーンゴム等のように可撓性を有する材料により製造される。これにより、吸着機構600により対象物を吸着する際に、パッド603の先端面を対象物に密着させることができる。斯様なパッド603は、図8に示すように、吸着ノズル602から着脱可能である。
【0032】
上記したように構成される吸着機構600は、図4に示すように、バキュームパイプ610を介してバキュームポンプと接続される。詳細には、ノズルボディ601の負圧通路601Aが、バキュームパイプ610を介してバキュームポンプに接続される。バキュームポンプは、気体を吸引するためのポンプである。バキュームポンプは、ロボットアーム1とは別途に設けられてもよく、又は台座部4等に設けられてもよい。斯様なバキュームポンプが作動されると、負圧通路601A、吸着ノズル602の内部、及びパッド603の内部の空気を、バキュームパイプ610を介してバキュームポンプに吸引させることができる。その結果、パッド603の先端に負圧を発生させることができる。よって、パッド603の先端面を対象物に密着させた状態で、パッド603の先端に負圧を発生させることにより、パッド603の先端に対象物を吸着させることができる。なお、バキューム
パイプ610の途中には、該バキュームパイプ610の内部通路を導通(開)又は遮断(閉)するための電磁弁(以下、「負圧電磁弁」と記す場合もある。)620が設けられるようにしてもよい。これにより、バキュームポンプを作動させた状態に維持しつつ、負圧電磁弁620を開閉させることで、パッド603の先端における負圧の発生と負圧のキャンセルとを速やかに切り替えることができる。
【0033】
図10及び図11は、吸着機構600の各部と第1指リンク部211との位置関係を説明するための図である。図10は、吸着機構600のパッド603が収縮していない状態にある場合を示す図である。図11は、吸着機構600のパッド603が所定の収縮状態にある場合を示す図である。ここでいう「パッド603が収縮していない状態」とは、パッド603に外力が作用していない状態であり、パッド603の軸方向の長さが自由長となる状態である。また、ここでいう「所定の収縮状態」とは、対象物を吸着及び保持させる際にパッド603が最も収縮し得る状態であり、パッド603の物性に応じた限界まで収縮した状態よりも収縮度合いが小さい状態である。なお、図10及び図11中のC1は、第1指リンク部211を前述した図7に示したように屈曲方向及び伸展方向を回動させる際の中心である。また、図10及び図11中のPc1は、C1を中心とし且つC1から第1指リンク部211の先端(指先側の端部)までの距離を半径とする仮想の円である。
【0034】
図10及び図11に示すように、本例における吸着機構600の各部のサイズおよびまたは第1指リンク部211への取付位置は、吸着ノズル602の先端が円Pc1の内側に位置するように定められる。これにより、第1指リンク部211の軸方向における吸着ノズル602の先端の位置は、第1指リンク部211の先端よりも指元側へ引っ込んだ位置となる。また、図10に示すように、本例における吸着機構600の各部のサイズおよびまたは第1指リンク部211への取付位置は、パッド603が収縮していない状態にあるときの該パッド603の先端面が円Pc1の外側に位置するように定められる。これにより、パッド603が収縮していない状態にあるときは、第1指リンク部211の軸方向における該パッド603の先端面の位置が、第1指リンク部211の先端よりも突出した位置となる。さらに、図11に示すように、本例における吸着機構600の各部のサイズおよびまたは第1指リンク部211への取付位置は、パッド603が所定の収縮状態にあるときの該パッド603の先端面が円Pc1の円周上又は円Pc1の外側に位置するように定められる。これにより、パッド603が所定の収縮状態にあるときは、第1指リンク部211の軸方向における該パッド603の先端面の位置が、第1指リンク部211の先端と同等の位置又は指先方向に突出した位置となる。なお、ここでいう「所定の収縮状態」は、前述したように、パッド603の物性に応じた限界まで収縮した状態よりも収縮度合いが小さい状態である。そのため、パッド603が所定の収縮状態にあるときの該パッド603の先端面が円Pc1の外側に位置するように、吸着機構600の各部のサイズおよびまたは第1指リンク部211への取付位置が定められた場合であっても、対象物の吸着時とは異なる外力がパッド603に加わった際には、パッド603の先端面の位置が円Pc1の円周上の位置(第1指リンク部211の軸方向におけるパッド603の先端面の位置が第1指リンク部211の先端と同等になる位置)になるまで、パッド603が収縮可能である。
【0035】
(台座部)
台座部4は、アーム機構3を支持するための台座である。台座部4には、アーム機構3を制御するための制御装置、ハンド機構2を制御するための制御装置、及び吸着機構600を制御するための制御装置等の各種の制御装置が内蔵されている。これらの制御装置により、アーム機構3の各関節部を駆動するためのモータ、ハンド機構2の各関節部を駆動するためのモータ、ハンド機構2の負圧電磁弁620等が制御される。なお、台座部4には、前述したバキュームポンプが内蔵されてもよい。
【0036】
(本実施形態の作用効果)
ここで、本実施形態の作用効果について、図12から図19に基づいて説明する。図12は、対象物を吸着する場合におけるハンド機構2の基本的な動作例を説明するための図である。図12に示す例では、矩形の断面を有する対象物10が、収容箱80の底70に置かれている。斯様な場合、先ず、2本の所定の指部21の各々におけるパッド603の先端面が対象物10の上面と平行になるように、各指部21の第1モータ51、第2モータ52、及び第3モータ53が制御される。次に、対象物10の吸着に適した位置(例えば、パッド603の先端面が対象物10の上面に密着する位置)まで吸着機構600が下降するように、アーム機構3が制御される。これらの制御が行われた場合、図12に示すように、吸着機構600のパッド603の先端面が、所定の指部21よりも先に対象物10の上面に接触する。これは、前述の図10に示したとおり、パッド603が収縮していない状態におけるパッド603の先端面の位置が、第1指リンク部211の先端よりも指先方向に突出した位置にあるためである。そして、対象物10の吸着に適した位置に吸着機構600が移動すると、負圧電磁弁620が開かれる。これにより、パッド603の内部の空気が、吸着ノズル602内の負圧通路601A及びバキュームパイプ610を通じてバキュームポンプに吸引される。その結果、パッド603の先端に負圧が発生する。パッド603の先端に負圧が発生すると、対象物10が第1指リンク部211の指元側へ吸引され、それに伴ってパッド603が収縮するが、斯様な吸引動作が所定の指部21によって阻害されることはない。これは、前述の図11に示したとおり、パッド603が所定の収縮状態あるときのパッド603の先端面の位置が、第1指リンク部211の先端と同等の位置又は指先方向に突出した位置になるためである。その結果、対象物10の吸着に適した位置へ吸着機構600をアプローチさせることができる。よって、対象物10を安定した姿勢で吸着及び保持することが可能となる。
【0037】
次に、対象物を把持する場合におけるハンド機構2の基本的な動作例について、図13に基づいて説明する。図13に示す例では、矩形の断面を有する対象物10が、収容箱80の底70に置かれている。斯様な場合、先ず、2本の所定の指部21の指先における腹面(第1指リンク部211の腹面215)の間隔が対象物10の幅よりも広くなり、且つそれら指先の高さが同じになるように、2本の所定の指部21の各々における第1モータ51、第2モータ52、及び第3モータ53が制御される。次に、2本の所定の指部21の指先の位置が対象物10の把持に適した位置まで下降するように、アーム機構3が制御される。そして、2本の所定の指部21の指先の位置が対象物10の把持に適した位置まで下降すると、2本の所定の指部21の指先の間隔が狭められるように、各指部21の第1モータ51、第2モータ52、及び第3モータ53が制御される。これらの制御が行われた場合、図13に示すように、2本の所定の指部21における指先の腹面(第1指リンク部211の腹面215)が対象物10の対向する側面に各々接触する。ここで、本例における吸着機構600は、所定の指部21における指先の背面(第1指リンク部211の背面216)に取り付けられている。そのため、上記した把持動作において、吸着機構600が対象物10と干渉することはない。なお、対象物10の厚さが薄い場合等には、当該対象物10の把持に適した位置へハンド機構2を下降させる途中で、吸着機構600のパッド603が収容箱の底70に接触する可能性がある。しかしながら、本例におけるパッド603は、第1指リンク部211の軸方向におけるパッド603の先端面の位置が第1指リンク部211の先端と同等になる位置まで収縮可能に構成されているため、当該パッド603が上記の下降動作を阻害することはない。また、前述の図10及び図11に示したとおり、吸着ノズル602の先端の位置が、第1指リンク部211の先端よりも指元方向に引っ込んだ位置にあるため、吸着ノズル602が収容箱の底70に干渉することもない。その結果、吸着機構600が取り付けられている所定の指部21を利用して対象物10を把持する場合であっても、対象物10の把持に適した位置へ指部21をアプローチさせることができる。よって、対象物10を安定した姿勢で把持することが可能となる。
【0038】
次に、取り出し口が側面に設けられた収容箱から対象物をピックアップする場合におけるハンド機構2の動作例について、図14Aに基づいて説明する。図14Aに示す例では、対象物10は、側面に取り出し口が設けられた収容箱80に収容されている。斯様な場合、先ず、ベース部20が横向き(水平)になるように、アーム機構3が制御される。また、第2指リンク部212が水平となり、且つ第1指リンク部211が垂直方向下向きとなるように、所定の指部21の第1モータ51、第2モータ52、及び第3モータ53が制御される。すなわち、所定の指部21が略L字型の形態となるように、第1モータ51、第2モータ52、及び第3モータが制御される。続いて、ハンド機構2を水平に移動するように、アーム機構3が制御される。これにより、所定の指部21の指先が収容箱80の内部へ挿入され、パッド603の先端面が対象物10の上方へ移動させられる。パッド603の先端面を対象物10の上方へ移動させた後は、ハンド機構2が垂直方向に沿って下降するように、アーム機構3が制御される。これらの制御が行われた場合、図14Aに示すように、対象物10の吸着に適した位置(パッド603の先端面が対象物10の上面に密着する位置)に吸着機構600が移動させられる。パッド603の先端面が対象物10の上面に密着する位置に移動すると、負圧電磁弁620が開かれる。これにより、対象物10を吸着機構600に吸着させることができる。その後、ハンド機構2が上昇するようにアーム機構3が制御され、次いで上記とは逆方向へ向かってハンド機構2が水平に移動するようにアーム機構3が制御されることで、対象物10が収容箱80から取り出される。よって、取り出し口が側面に設けられる収容箱80に対象物10が収容されている場合であっても、対象物10の吸着に適した位置へ吸着機構600をアプローチさせることができる。
【0039】
なお、図14Aに示したような収容箱80から対象物10が取り出された後に、所定の指部21以外の指部21を、対象物10の姿勢を安定させるための保持用指部として機能させてもよい。例えば、図14Bに示すように、所定の指部21以外の指部21の指先(第1指リンク部211)を、対象物10の下面に接触させるようにしてもよい。これにより、ピックアップされた対象物10をプレイス位置へ移動させる途中で、対象物10の姿勢が不安定になることが抑制される。
【0040】
次に、収容箱内の壁際に置かれている対象物をピックアップする場合におけるハンド機構2の動作例について、図15に基づいて説明する。図15に示す例では、対象物10は、収容箱80内の側壁面に接触した状態で収容されている。斯様な場合、先ず、パッド603の先端面が水平となり、且つ所定の指部21が略V字型の形態となるように、所定の指部21の第1モータ51、第2モータ52、及び第3モータ53が制御される。続いて、パッド603の先端面が対象物10の上方へ移動するように、アーム機構3が制御される。パッド603の先端面を対象物10の上方へ移動させた後は、ハンド機構2が垂直方向に沿って下降するようにアーム機構3が制御される。これらの制御が行われた場合、図15に示すように、対象物10の吸着に適した位置(パッド603の先端面が対象物10の上面に密着する位置)に吸着機構600が移動させられる。パッド603の先端面が対象物10の上面に密着する位置に移動すると、負圧電磁弁620が開かれる。これにより、対象物10を吸着機構600に吸着させることができる。その後、ハンド機構2が上昇するようにアーム機構3が制御されることで、収容箱80の壁際に置かれていた対象物10が、収容箱80から取り出される。よって、収容箱80内の壁際に対象物10が置かれている場合であっても、対象物10の吸着に適した位置へ吸着機構600をアプローチさせることができる。なお、対象物10が収容箱80から取り出された後に、図14Bと同様に、所定の指部21以外の指部21を、対象物10の姿勢を安定させるための保持用指部として機能させてもよい。
【0041】
次に、収容箱内の角部分に置かれている対象物をピックアップする場合について、図16A及び図16Bに基づいて説明する。図16Aは、対象物10をピックアップする際の
ハンド機構2の状態を側方から見た図である。図16Bは、対象物10をピックアップする際のハンド機構2の状態を上方から見た図である。なお、図16A及び図16B中の対象物10は、比較的広い面積の上面を持つものとする。また、図16A及び図16B中の対象物10は、円形の断面を有しているが、矩形の断面を有していてもよい。
【0042】
図16A及び図16Bに示す例では、対象物10は、収容箱80内の角部分に置かれている。斯様な場合、先ず、2本の所定の指部21の各々について、前述の図15に示した例と同様に、パッド603の先端面が水平となり、且つ所定の指部21が略V字型の形態となるように、各々の指部21の第1モータ51、第2モータ52、及び第3モータ53が制御される。続いて、2本の所定の指部21のパッド603の先端面が対象物10の上方へ移動するように、アーム機構3が制御される。2つのパッド603の先端面を対象物10の上方へ移動させた後は、ハンド機構2が垂直方向に沿って下降するように、アーム機構3が制御される。これらの制御が行われた場合、図16Aに示すように、対象物10の吸着に適した位置(2つのパッド603の双方の先端面が対象物10の上面に密着する位置)に、2本の所定の指部21の吸着機構600が移動させられる。2つのパッド603の双方が対象物10の上面に密着する位置へ移動すると、負圧電磁弁620が開かれる。これにより、2本の所定の指部21に取り付けられた2つの吸着機構600によって対象物10を吸着することができる。その後、ハンド機構2が上昇するようにアーム機構3が制御されることで、収容箱80の角部分に置かれていた対象物10が、収容箱80から取り出される。よって、収容箱80内の角部分に対象物10が置かれている場合であっても、対象物10の吸着に適した位置へ吸着機構600をアプローチさせることができる。
【0043】
次に、収容箱内に斜めに置かれている対象物をピックアップする場合におけるハンド機構2の動作例について、図17Aから図17Cに基づいて説明する。図17Aは、吸着機構600に対象物10を吸着させた状態を示す図である。図17Bは、収容箱から取り出された対象物10が吸着機構600のみで保持されている状態を示す図である。図17Cは、収容箱から取り出された対象物10が吸着機構600と保持用指部とにより保持されている状態を示す図である。
【0044】
図17Aに示す例では、板状の対象物10が斜めに傾いた状態で収容箱80に収容されている。斯様な場合、先ず、所定の指部21におけるパッド603の先端面が対象物10の上面と平行になる状態で、該先端面が対象物10の上面に接触するように、アーム機構3及びハンド機構2(所定の指部21の第1モータ51、第2モータ52、及び第3モータ53)が制御される。このような制御が行われた場合、図17Aに示すように、対象物10の吸着に適した位置(パッド603の先端面が対象物10の上面に密着する位置)に吸着機構600が移動させられる。パッド603の先端面が対象物10の上面に密着する位置に移動すると、負圧電磁弁620が開かれる。これにより、対象物10を吸着機構600に吸着させることができる。その後、ハンド機構2が上昇するようにアーム機構3が制御されることで、図17Bに示すように、対象物10が収容箱80から取り出される。対象物10が収容箱80から取り出された後は、図17Cに示すように、対象物10におけるパッド603の吸着面とは反対側の面に、所定の指部21以外の指部21の指先(第1指リンク部211)を接触させるように、ハンド機構2が制御される。これにより、吸着機構600による吸着と、所定の指部21以外の指部21とパッド603とによる把持と、によって対象物10を保持することができる。その結果、対象物10が斜めに傾いた状態で収容箱80に収容されている場合であっても、対象物10の吸着に適した位置へ吸着機構600をアプローチさせることができるとともに、収容箱80から取り出された対象物10をより確実に保持し続けることができる。
【0045】
次に、球状の対象物をピックアップする場合について、図18に基づいて説明する。図18に示す例では、対象物10は、球状の形状を有している。斯様な場合、2本の所定の
指部21の各々が略V字型の形態となるように、各指部21の第1モータ51、第2モータ52、及び第3モータ53が制御される。その際、一方の指部21の指先(第1指リンク部211)が他方の指部21へ向かって屈曲し、且つ他方の指部21の指先(第1指リンク部211)が一方の指部21へ向かって屈曲するように、各指部21の第1モータ51、第2モータ52、及び第3モータ53が制御される。上記した形態に制御された状態で、所定の指部21のパッド603を対象物10の表面に接触させると、2つのパッド603を対象物10の表面に密着させることができる。そして、2つのパッド603が対象物10の表面に密着した状態で、各々の指部21の負圧電磁弁620が開かれると、2本の所定の指部21の吸着機構600によって対象物10が吸着される。これにより、球状の対象物10であっても、安定した姿勢でピックアップすることが可能となる。
【0046】
次に、2つの対象物10を同時にピックアップする場合について、図19に基づいて説明する。図19に示す例では、2つの対象物10が並んで置かれている。斯様な場合、先ず、2本の所定の指部21のうち、一方の指部21のパッド603が一方の対象物10の上方に位置し、且つ他方の指部21のパッド603が他方の対象物10の上方に位置するように、アーム機構3及びハンド機構2が制御される。次に、一方のパッド603の先端面が一方の対象物10の上面に密着し、且つ他方のパッド603の先端面が他方の対象物10の上面に密着する位置へハンド機構2が下降するように、アーム機構3が制御される。2つのパッド603の各々の先端面が吸着対象となる対象物10の上面に密着すると、各々の指部21の負圧電磁弁620が開かれる。これにより、2本の所定の指部21の吸着機構600が、互いに異なる対象物を吸着することができる。その結果、2つの対象物10を同時にピックアップすることが可能となる。
【0047】
以上述べた各種の動作は、前述の図10及び図11に示したように吸着機構600のサイズ及び取付位置が決定されることに加え、所定の指部21が2自由度以上の自由度を持つことで実現される。
【0048】
したがって、本実施形態におけるハンド機構2によれば、対象物の把持と対象物の吸着とを好適に両立することができる。
【0049】
<他の実施例>
前述した実施形態では、ハンド機構2が備える4本の指部21のうち、2本の所定の指部21に吸着機構600が設けられる例について述べたが、図20に示すように、4本の指部21の全てに吸着機構600が設けられてもよい。これにより、対象物を吸着する際の自由度を高めることができる。例えば、比較的重量の大きな対象物をピックアップする場合に、3本以上の指部21の吸着機構600を利用して、対象物10をピックアップすることも可能になる。その際、4本の指部21のうち、一部の指部21の吸着機構600を対象物10の上面に吸着させ、残りの指部21の吸着機構600を対象物10の側面に吸着させることも可能である。また、3つ以上の対象物10を、同時にピックアップすることも可能となる。よって、上記した例を含めた様々な条件に応じて、対象物10のピックアップ方法を柔軟に変更することができる。
【0050】
なお、前述した実施形態では、4本の指部を備えたハンド機構を例示したが、指部の本数は4本に限定されるものではなく、2本以上であれば、ハンド機構の使用条件等に応じて適宜変更可能である。また、前述した実施形態では、4本の指部のうちの2本の指部に吸着機構が設けられる構成を例示したが、吸着機構が設けられる指部の本数は、1本以上であれば、ハンド機構の使用条件等に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0051】
1・・・ロボットアーム、2・・・ハンド機構、20・・・ベース部、21・・・指部、
22・・・第1関節部、23・・・第2関節部、211・・・第1指リンク部、212・・・第2指リンク部、213・・・基端部、215・・・腹面、216・・・背面、3・・・アーム機構、4・・・台座部、51・・・第1モータ、52・・・第2モータ、53・・・第3モータ、600・・・吸着機構、601・・・ノズルボディ、601A・・・負圧通路、602・・・吸着ノズル、603・・・パッド、610・・・バキュームパイプ、620・・・負圧電磁弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15
図16A
図16B
図17A
図17B
図17C
図18
図19
図20