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  • 特開-マイクロホンユニット 図1
  • 特開-マイクロホンユニット 図2
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  • 特開-マイクロホンユニット 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118886
(43)【公開日】2022-08-16
(54)【発明の名称】マイクロホンユニット
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/00 20060101AFI20220808BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20220808BHJP
   H04R 1/04 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
H04R1/00 321
H04R1/02 106
H04R1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021015695
(22)【出願日】2021-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000194918
【氏名又は名称】ホシデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】松下 勉
(72)【発明者】
【氏名】原野 博之
(72)【発明者】
【氏名】粟村 竜二
(72)【発明者】
【氏名】中西 賢介
【テーマコード(参考)】
5D017
【Fターム(参考)】
5D017BC15
5D017BC19
5D017BD04
(57)【要約】
【課題】車載用IP(K)試験の最高レベルIPX9Kに対応し、小型かつ低コストなマイクロホンユニットを提供する。
【解決手段】上面と下面が開口した筒形状のケースと、厚さ0.01mm以上0.05mm以下、硬度100HV以上、耐力70N/mm以上、引張強さ350N/mm以上であって、ケースの下面の開口部を塞ぐようにケースの下面に固着された金属製の防水膜と、ケース内に配置された基板と、基板に実装されたマイクロホンと、ケースの上面の開口部を封止する封止部材を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と下面が開口した筒形状のケースと、
厚さ0.01mm以上0.05mm以下、硬度100HV以上、耐力70N/mm以上、引張強さ350N/mm以上であって、前記ケースの下面の開口部を塞ぐように前記ケースの下面に固着された金属製の防水膜と、
前記ケース内に配置された基板と、
前記基板に実装されたマイクロホンと、
前記ケースの上面の開口部を封止する封止部材を含む
マイクロホンユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のマイクロホンユニットであって、
前記基板と前記防水膜との距離が0.01mm以上0.5mm以下となるように、前記基板と前記防水膜との間に空隙を設けた
マイクロホンユニット。
【請求項3】
請求項2に記載のマイクロホンユニットであって、
前記基板と前記防水膜に挟持され、前記基板のGNDに接続される導電性材料のスペーサを含む
マイクロホンユニット。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載のマイクロホンユニットであって、
スポット溶接により前記防水膜を前記ケースの下面に固着させた
マイクロホンユニット。
【請求項5】
請求項1から3の何れかに記載のマイクロホンユニットであって、
シーム溶接により前記防水膜を前記ケースの下面に固着させた
マイクロホンユニット。
【請求項6】
請求項1から3の何れかに記載のマイクロホンユニットであって、
前記防水膜を前記ケースの下端の内周に設けられた溝に嵌め合わせることにより固着させた
マイクロホンユニット。
【請求項7】
請求項1から6の何れかに記載のマイクロホンユニットであって、
前記基板に電子回路として増幅回路、フィルタ回路、イコライザ回路を実装した
マイクロホンユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロホンユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
防水機構を有するマイクロホンの従来例として特許文献1がある。特許文献1のマイクロホンは、振動板と、内部を半球面もしくは放物曲面もしくは円錐面状に加工した筐体と、音圧を電気信号へ変換する音響変換器と、音響変換器から電気信号を外部へ伝送する配線とを有し、音響変換器の音圧入力面が、筐体内部の半球面もしくは放物曲面もしくは円錐面の底面部分に配置されるとともに、振動板と筐体および筐体と配線が水の浸入を防ぐ防水機構を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/056443号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の防水機構は、車載用IP(K)試験にある最高レベルIPX9K(ISO20653、JISD5020)の耐水試験に耐える性能を備えるものは多くなかった。またそのような性能を満たすマイクロホンを小型かつ低コストで実現する方法も知られていなかった。
【0005】
そこで本発明では、車載用IP(K)試験の最高レベルIPX9Kに対応し、小型かつ低コストなマイクロホンユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のマイクロホンユニットは、上面と下面が開口した筒形状のケースと、厚さ0.01mm以上0.05mm以下、硬度100HV以上、耐力70N/mm以上、引張強さ350N/mm以上であって、ケースの下面の開口部を塞ぐようにケースの下面に固着された金属製の防水膜と、ケース内に配置された基板と、基板に実装されたマイクロホンと、ケースの上面の開口部を封止する封止部材を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車載用IP(K)試験の最高レベルIPX9Kに対応し、小型かつ低コストなマイクロホンユニットを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1、変形例1のマイクロホンユニットの平面図。
図2】実施例1のマイクロホンユニットの図1の2-2切断線と矢印が示す投影方向に基づく断面図。
図3】基板の底面図。
図4】変形例1のマイクロホンユニットの図1の2-2切断線と矢印が示す投影方向に基づく断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【実施例0010】
以下、図1図2を参照して実施例1のマイクロホンユニットの構造を説明する。図2に示すように、本実施例のマイクロホンユニット1は、上面と下面が開口した筒形状のケース11と、ケース11の下面の開口部を塞ぐようにケース11の下面に固着された金属製の防水膜12と、基板14と防水膜12に挟持される導電性材料のスペーサ13と、ケース11内に配置された基板14と、基板14に実装されたマイクロホン15と、ケース11の上面の開口部を封止する封止部材16を含む。基板14には、孔145が、封止部材16には孔165が形成されている。基板14には、特性調整用の電子回路として増幅回路、フィルタ回路、イコライザ回路が実装されている。本実施例では、MEMSマイクを想定しているが、これをECMやダイナミックマイクに置き換えることができる。ECMやダイナミックマイクを使用する場合には耐熱温度が変わるため、その点に注意して設計する必要がある。
【0011】
ケース11は、高水圧(例えば10MPa)に耐えうる素材であって、振動膜との素材の相性の良い素材を選別する。例えばSUSケースなどでよい。ケース11の厚さ(図のt)は、0.2mm~3.0mm程度とすれば好適である。
【0012】
防水膜12の素材として、空気透過度がなく、バネ性があり、押されて変形しても元の形状に戻る素材が好適であり、腐食しにくい金属の薄膜、例えばSUS膜でよい。これにより、耐水性、防水性が向上する。防水膜12を樹脂製の薄膜としても同様の性能を実現できる。
【0013】
さらに防水膜12を、厚さ(図のt)0.01mm以上0.05mm以下、硬度100HV以上、耐力70N/mm以上、引張強さ350N/mm以上とすることで、車載用IP(K)試験の最高レベルIPX9Kを満たす防水構造を実現できる。付加的な条件として、伸び:10%以上を加えてもよい。これにより、本実施例のマイクロホンユニット1は、高圧洗浄にも耐える防水構造を実現できるため、車外マイクとして使用可能である。
【0014】
防水膜12は、スポット溶接またはシーム溶接によりケース11の下面に固着させればよい。また、防水膜12は、接着剤、強力な両面粘着テープによりケース11の下面に接合させてもよい。防水膜12とケース11の結合を強固に行うことにより、高水圧(例えば10MPa)下であっても結合部が破損しない。
【0015】
基板14と防水膜12との距離は、感度調節のためのパラメータであって、構造、振動径によっても最適な値が変動する。例えば防水膜12(SUS膜)の膜厚:30μm、外径:Φ14(振動径:Φ12)の場合、基板14と防水膜12の距離は0.01mm~0.5mmとすれば好適である。本実施例では、スペーサ13の高さ(図のt)を0.1mm以上0.5mm以下として基板14と防水膜12との間に空隙を設け、基板14と防水膜12との距離を0.1mm以上0.5mm以下とした。
【0016】
また基板14と防水膜12との距離を調整することで、高水圧(例えば10MPa)下であっても基板14で防水膜12を支える構造となり、防水膜12の耐力限界を超えにくく、防水膜12の復元時間を短縮することができる。
【0017】
マイクロホンユニット1の径を小さくし、防水膜12の膜厚をより薄くすることにより、さらに小型化することも可能である。
【0018】
基板14とケース11とを接合する際には、弾性の高い接着剤やキャップなどの構造で上から押さえて接合してもよい。防水膜12のバネ性と基板14の固定方法(弾性の高い接着剤を使用する方法)により、105°C~-40°Cの温度下で起こる気圧変動に対応できる。
【0019】
図3に示すように、基板14の底面の外縁にGNDパターン147を設け、GNDパターン147とスペーサ13(導電性材料)とを接触(接続)することにより、ケース11や防水膜12をシールドとして使用することができ、静電気や電磁ノイズへの耐性が向上する。
【0020】
<変形例1>
図4に示すように、ケース11の下端の内周に設けられた溝111に、ワッシャ17とともに防水膜12を圧入して嵌め合わせる(加締める)ことにより、防水膜12を固着させてもよい。実施例1のようにスポット溶接またはシーム溶接により固着するか、本変形例のように、ワッシャ17とともに加締めることにより、10Mpaの圧力、水中下での水圧にも耐える構造となる。
【0021】
<実施例1、変形例1のマイクロホンユニットの使用用途>
実施例1、変形例1のマイクロホンユニットは、例えば以下のような物品に使用できる。
【0022】
1)防水マイク、屋外マイク、車外マイク
2)自動販売機(音声認識マイク)
3)防犯カメラ
4)玄関ドア(音声認識マイク、インターホンなど)
5)車両後退警報ブザー制御用マイク
6)キーレス開錠/施錠用アンサーバック音制御用マイク
7)重機、ロボットの故障検知
図1
図2
図3
図4