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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118901
(43)【公開日】2022-08-16
(54)【発明の名称】抗ストレス用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/745 20150101AFI20220808BHJP
   A61K 35/74 20150101ALI20220808BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220808BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220808BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220808BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20220808BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20220808BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20220808BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
A61K35/745
A61K35/74 A
A61K35/74 D
A61P25/00
A61P43/00 111
A61P29/00
A61P3/04
A61P1/14
A23L33/135
C12N1/20 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021015721
(22)【出願日】2021-02-03
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 公益社団法人日本農芸化学会 2020年度(令和2年度)大会講演要旨集(オンライン)、表紙、目次、抄録、裏付、大会中止連絡、2020年3月5日公開
(71)【出願人】
【識別番号】591152584
【氏名又は名称】高梨乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 敏明
(72)【発明者】
【氏名】依田 一豊
(72)【発明者】
【氏名】何 方
(72)【発明者】
【氏名】豊田 淳
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LB10
4B018MD87
4B018ME14
4B018MF06
4B065AA21X
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA22
4B065CA24
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC59
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA69
4C087ZA70
4C087ZB11
4C087ZC41
(57)【要約】
【課題】
本発明の目的は、ストレスによる外面的な異常及び内面的な異常の両方の異常を改善し得る有効成分を含む組成物を提供することにある。
【解決手段】
上記目的は、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)の菌体、菌体成分及び培養物並びにこれらの処理物からなる群から選ばれる少なくとも1種の有効成分を含む、抗ストレス用組成物;ビフィドバクテリウム・ビフィダムの菌体、菌体成分及び培養物並びにこれらの処理物からなる群から選ばれる少なくとも1種の有効成分を含む、抗鬱用組成物又は抗不安用組成物などにより解決される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)の菌体、菌体成分及び培養物並びにこれらの処理物からなる群から選ばれる少なくとも1種の有効成分を含む、抗ストレス用組成物。
【請求項2】
ビフィドバクテリウム・ビフィダムの菌体、菌体成分及び培養物並びにこれらの処理物からなる群から選ばれる少なくとも1種の有効成分を含む、抗鬱用組成物又は抗不安用組成物。
【請求項3】
ビフィドバクテリウム・ビフィダムの菌体、菌体成分及び培養物並びにこれらの処理物からなる群から選ばれる少なくとも1種の有効成分を含む、体重減少、多飲、摂食障害及び炎症からなる群から選ばれる少なくとも1種の疾患及び/又は症状を改善又は抑制するための組成物。
【請求項4】
前記疾患及び症状は、ストレスに起因する疾患及び症状である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
ビフィドバクテリウム・ビフィダムの菌体、菌体成分及び培養物並びにこれらの処理物からなる群から選ばれる少なくとも1種の有効成分を含む、インターロイキン-6産生抑制用組成物又はTNF-α産生抑制用組成物。
【請求項6】
前記ビフィドバクテリウム・ビフィダムは、受託番号がNITE P-03300であるビフィドバクテリウム・ビフィダム TMC3115株である、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレスによって生じる身体の状態変化を改善又は抑制するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現代病ともいえる心理的ストレス及び社会的ストレスは、生体において種々の疾患及び症状を引き起こすとされる。特に、これらのストレスは、中枢神経及び脳機能の障害をもたらし得る。
【0003】
ストレスを要因とする疾患及び症状としては、鬱病、躁病、食欲低下、意欲低下、心身症、不安神経症(パニック障害)、適応障害、気分障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、ASD(急性ストレス障害)、摂食障害、飲水障害、アルコール依存症、薬物依存症、炎症、不眠症、アルツハイマー病、認知障害、記憶障害、言語障害、脳卒中、脳梗塞、パーキンソン病、過敏性腸症候群、胃潰瘍、喘息、アトピー皮膚炎、蕁麻疹、脱毛症、高血圧、生活習慣病、頭痛、リウマチなど、数多く挙げられる。
【0004】
例えば、ストレスなどに起因した精神的及び神経的な問題により、食事摂取が不安定になること、過活動となりエネルギー消費が亢進することなどにより、体重減少が生じる。特に、児童思春期において鬱病が発現した場合、体重の減少のみならず、期待される体重増加が見られないことがある。非特許文献1には、鬱病患者において、不眠症及び倦怠感の増大とともに、体重及び食欲の著しい低下が見られたことが記載されている。
【0005】
また、ストレス又は緊張から、喉が渇き、過剰に水分を取り多尿になる症状がみられる疾患を心因性多飲症とよぶ。なかには、飲水量が1日15Lに及ぶ重度の心因性多飲症の臨床知見も得られている。
【0006】
一方、ストレスにより鬱病、認知症などの疾患が発症する要因の一つに、脳組織などにおける炎症反応が挙げられる。そして、炎症反応には炎症性サイトカインが関与する。炎症性サイトカインとしては、インターロイキン(IL)-6、IL-1、TNF-αなどが挙げられる。このうち、IL-6は、鬱病、不安症などのストレス関連疾患と関連性があるという報告がある(非特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Psychiatry Journal, Volume 2015, Article ID 575931
【非特許文献2】Neurobiology of Stress 4 (2016) 15-22
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したように、ストレスによって、身体及び行動などにおいて外面的に異常を来す場合もあれば、神経組織学的及び精神的な内面的な異常が生じる場合がある。
【0009】
そこで、ストレスによる外面的な異常及び内面的な異常の両方の異常を改善し得る有効成分があれば、ストレスによる心身の異常を改善することができる。しかし、これまでにこのような有効成分についてほとんど知られていない。
【0010】
そこで、本発明は、ストレスによる外面的な異常及び内面的な異常の両方の異常を改善し得る有効成分を含む組成物を提供することを、発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討し、種々の生理活性成分について、ストレスによる心身の異常への改善作用を確認すべく試行錯誤した結果、驚くべきことに、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)は、摂食量の低下を抑制する作用、体重増加の抑制を緩和する作用、飲水量の増加を抑制する作用といったストレスによる外面的な異常を改善する作用とともに、炎症性サイトカインの増加を抑制する作用といったストレスによる内面的な異常を改善する作用を有することを見出した。そして、このような知見を基に、本発明者らは遂に、本発明の課題を解決し得るものとして、ビフィドバクテリウム・ビフィダム及びその成分を有効成分として含む、抗ストレス用組成物などを創作することに成功した。本発明は、本発明者らによって初めて見出された知見及び成功例に基づいて完成されたものである。
【0012】
従って、本発明によれば、以下の各態様の組成物及び方法が提供される。
[1]ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)の菌体、菌体成分及び培養物並びにこれらの処理物からなる群から選ばれる少なくとも1種の有効成分を含む、抗ストレス用組成物。
[2]ビフィドバクテリウム・ビフィダムの菌体、菌体成分及び培養物並びにこれらの処理物からなる群から選ばれる少なくとも1種の有効成分を含む、抗鬱用組成物又は抗不安用組成物。
[3]ビフィドバクテリウム・ビフィダムの菌体、菌体成分及び培養物並びにこれらの処理物からなる群から選ばれる少なくとも1種の有効成分を含む、体重減少、多飲、摂食障害及び炎症からなる群から選ばれる少なくとも1種の疾患及び/又は症状を改善又は抑制するための組成物。
[4]前記疾患及び症状は、ストレスに起因する疾患及び症状である、[3]に記載の組成物。
[5]ビフィドバクテリウム・ビフィダムの菌体、菌体成分及び培養物並びにこれらの処理物からなる群から選ばれる少なくとも1種の有効成分を含む、インターロイキン-6産生抑制用組成物又はTNF-α産生抑制用組成物。
[6]前記ビフィドバクテリウム・ビフィダムは、受託番号がNITE P-03300であるビフィドバクテリウム・ビフィダム TMC3115株である、[1]~[5]のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、有効成分によるストレスに起因する疾患及び症状の改善作用を通じて、生物個体に対してストレスによる心身の異常を改善又は抑制し、心身ともに健康な状態を達成することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A図1Aは、受託番号NITE P-03300(ビフィドバクテリウム・ビフィダムTMC3115株)の受託証の写しである。
図1B図1Bは、受託番号NITE P-03300(ビフィドバクテリウム・ビフィダムTMC3115株)の生存に関する証明書の写しである。
図2図2は、sCSDSモデルの概要を試験計画とともに模式的に表した図である。
図3図3は、社会性行動試験に使用したオープンフィールドにおけるケージを模式的に表した図である。
図4図4は、後述する実施例に記載があるとおりの、増体量の測定結果を示した図である。
図5図5は、後述する実施例に記載があるとおりの、飲水量の測定結果を示した図である。
図6図6は、後述する実施例に記載があるとおりの、IL-6の測定結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の各態様について詳細に説明するが、本発明はその目的を達成する限りにおいて種々の態様をとり得る。
【0016】
本明細書における各用語は、別段の定めがない限り、食品、医薬品、化粧品などの分野における当業者により通常用いられている意味で使用され、不当に限定的な意味を有するものとして解釈されるべきではない。また、本明細書においてなされている推測及び理論は、本発明者らのこれまでの知見及び経験によってなされたものであることから、本発明はこのような推測及び理論のみによって拘泥されるものではない。
【0017】
「組成物」は、通常用いられている意味のものとして特に限定されないが、例えば、2種以上の成分が組み合わさってなる物である。
「及び/又は」との用語は、列記した複数の関連項目のいずれか1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせ若しくは全ての組み合わせを意味する。
「含む」は、含まれるものとして明示されている要素以外の要素を付加できることを意味する(「少なくとも含む」と同義である)が、「からなる」及び「から本質的になる」を包含する。すなわち、「含む」は、明示されている要素及び任意の1種若しくは2種以上の要素を含み、明示されている要素からなり、又は明示されている要素から本質的になることを意味し得る。要素としては、成分、工程、条件、パラメーター等の制限事項等が挙げられる。
【0018】
「抗ストレス作用」は、ストレスに曝されることによって生じる、外面的な異常及び内面的な異常からなる群から選ばれる少なくとも1種の異常を改善又は抑制することをいう。なお、異常な状態を「改善又は抑制すること」は、異常な状態を健常な状態とすること、異常な状態を健常な状態に近付けること、健常な状態を維持すること、及び健常な状態から異常な状態になるのを緩和乃至妨げることを包含する。
「抗鬱作用」及び「抗不安作用」は、それぞれ鬱症状及び不安症状を改善又は抑制することをいう。なお、鬱症状には、日本うつ病学会治療ガイドラン「II.うつ病(DSM-5)/大うつ病性障害 2016」に記載されているうつ病の症状などが挙げられる。鬱症状には意欲の低下、気分障害なども含まれる。
「体重減少」、「多飲」、「摂食障害」及び「炎症」について、体重減少は体重が減少すること及び期待される体重増加が見られないことを包含し;多飲は飲水の量及び回数が多いこと並びに尿の量及び回数が多いことを包含し;摂食障害は摂食の量及び回数が少ないことを包含し;炎症は細胞学的かつ組織学的所見により炎症が確認されること及び炎症性サイトカインの量が増大することを包含する。これらについては、ストレスに起因しないものであってもよいが、ストレスに起因するものであることが好ましい。
「インターロイキン-6産生抑制作用」は、インターロイキン(IL)-6の量を減じること、IL-6の産生増加を抑制すること、及びIL-6の量を維持することを包含する。ある有効成分について、インターロイキン-6産生抑制作用を有するか否かの評価は、後述する実施例に記載の方法によって試験及びIL-6を測定することにより評価できる。
【0019】
本発明の一態様の抗ストレス用組成物は、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)の菌体、菌体成分及び培養物並びにこれらの処理物からなる群から選ばれる少なくとも1種の有効成分を含む。そして、本発明の一態様の抗ストレス用組成物は、有効成分を含むことにより、抗ストレス作用を発揮する。
【0020】
本発明の一態様の抗ストレス用組成物が有する抗ストレス作用は、後述する実施例に記載があるとおりに、本発明の一態様の抗ストレス用組成物をB6マウスに少なくとも3日間適用した場合に、本発明の一態様の抗ストレス用組成物を適用しない場合と比べて、ストレスによる、体重への影響を低減すること、飲水量の増加を抑制すること、摂食量の低下を抑制すること、並びにIL-6及びTNF-αの増加を抑制することからなる群から選ばれる少なくとも1種のストレスによる異常の改善又は抑制を評価することにより確認することができる。
【0021】
ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)は、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに分類される微生物であればよい。ビフィドバクテリウム・ビフィダムを入手する方法は特に限定されないが、例えば、市販又は寄託されているものを利用する方法、天然又は市販の乳製品などから分離して利用する方法などが挙げられる。ビフィドバクテリウム・ビフィダムの寄託されているものとしては、ビフィドバクテリウム・ビフィダム TMC3115株(寄託番号:NITE P-03300)などがある。TMC3115株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)(〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)から入手することができる。ビフィドバクテリウム・ビフィダムとしては、優れた抗ストレス作用を有することから、TMC3115株が好ましい。
【0022】
ビフィドバクテリウム・ビフィダムは、いずれか1種の株を単独で、又は2種以上の株を組み合わせて使用できる。
【0023】
本発明の一態様の抗ストレス用組成物における有効成分は、ビフィドバクテリウム・ビフィダムそれ自体、すなわち、ビフィドバクテリウム・ビフィダムの菌体に加えて、ビフィドバクテリウム・ビフィダムの菌体成分及びビフィドバクテリウム・ビフィダムの培養物であってもよい。また、本発明の一態様の抗ストレス用組成物における有効成分は、ビフィドバクテリウム・ビフィダムの菌体、菌体成分及び/又は培養物を処理したものであってもよい。
【0024】
ビフィドバクテリウム・ビフィダムの菌体は、例えば、ビフィドバクテリウム・ビフィダムの培養物を遠心分離などの通常知られている固液分離手段を用いて培地を除去することにより得られる菌体などが挙げられる。菌体成分は、例えば、ビフィドバクテリウム・ビフィダムの菌体内に存在する、又は菌体外に分泌する精製又は非精製の成分などが挙げられる。ビフィドバクテリウム・ビフィダムの培養物は、例えば、ビフィドバクテリウム・ビフィダムを培養して得た培養液そのものなどが挙げられる。
【0025】
ビフィドバクテリウム・ビフィダムの菌体、菌体成分及び培養物は、それらのいずれか1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。ビフィドバクテリウム・ビフィダムの菌体、菌体成分及び培養物を入手する方法は特に限定されないが、例えば、ビフィドバクテリウム・ビフィダムの菌体を入手する方法としては、ビフィドバクテリウム・ビフィダムの増殖に適した培地、好ましくは改変FG培地に植菌し、ビフィドバクテリウム・ビフィダムの増殖に適した温度、好ましくは約37℃にて、数時間~数十時間、好ましくは18時間~30時間、嫌気培養することにより、ビフィドバクテリウム・ビフィダムの培養物を得て、次いで遠心分離などの通常の菌体回収手段を用いて菌体を回収する方法などが挙げられる。ビフィドバクテリウム・ビフィダムの菌体成分は、例えば、細胞外の成分については菌体回収後の培養物(培養液)から入手することができ、細胞内の成分については回収した菌体をホモジナイズすることなどにより菌体を破砕することにより入手することができる。
【0026】
ビフィドバクテリウム・ビフィダムの菌体、菌体成分及び培養物の処理物としては、例えば、ビフィドバクテリウム・ビフィダムの菌体の乾燥処理物などが挙げられ、安定した抗ストレス作用を得るという観点から、ビフィドバクテリウム・ビフィダムの凍結乾燥処理物であることが好ましい。凍結乾燥処理の条件は、微生物の凍結乾燥粉末が得られるような、通常の微生物の凍結乾燥処理の条件であればよい。
【0027】
ビフィドバクテリウム・ビフィダムは食経験があり、安全性が確認されていることから、本発明の一態様の抗ストレス用組成物は、実用性が高く、そのままで、又は加工することにより、経口的又は非経口的な形態で種々の用途に適用可能である。非経口的な適用としては、皮内、皮下、静脈内、筋肉内などへ投与することによる注射及び注入;経皮;鼻、咽頭などの粘膜からの吸入などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
本発明の一態様の抗ストレス用組成物を適用する生物個体は特に限定されず、例えば、動物、中でも哺乳類が挙げられ、哺乳類としてはヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジなどが挙げられ、これらの中でもヒトであることが好ましい。生物個体は、健常な個体であってもよいが、現にストレスを受けている個体、ストレスを受け易い個体及びストレスによる異常が発現する危険性のある個体であることが好ましい。
【0029】
本発明の一態様の抗ストレス用組成物は、抗ストレス作用を有する限り、用途に応じて、その他の成分を含む。このように、本発明の一態様の抗ストレス用組成物は、有効成分に加えて、本発明の目的を達成し得る限り、種々のその他の成分を含み得る。その他の成分の含有量は、本発明の課題解決を妨げない限り、当業者により適宜設定し得る。
【0030】
その他の成分は特に限定されないが、例えば、本発明の一態様の抗ストレス用組成物を飲食品用組成物として用いる場合は、食品及び調味料に使用される成分などが挙げられ、具体的には、ヨーグルト、ドリンクヨーグルトなどの発酵乳、乳飲料、アイスクリーム類、乳等を主要原料とする食品などの乳製品が挙げられる。また、固形成分としては、食塩、糖類(砂糖、ぶどう糖、果糖、水飴、異性化液糖など)、穀類成分(パン粉、小麦粉、オートミールなど)、香辛料(生姜、唐辛子、こしょう、バジル、オレガノ、ジンジャー、ミックススパイスなど)、増粘剤(カラギーナンなどの増粘多糖類、でん粉、加工でん粉、ガム類など)、食肉加工成分(チキンパウダー、ミートパウダー、フィッシュパウダーなど)、化学調味料(グルタミン酸ナトリウム、グリシン、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウムなど)、フレーバー、味噌、カレー粉などが挙げられ;液体成分としては、水、アルコール、甘味成分(みりん、液糖、水飴など)、酸味成分(食酢、りんご、ゆず、レモンといった香酸柑橘など)、油脂成分(ごま油、オリーブオイル、サラダ油、大豆油、ラー油、バター、牛脂、ラードなど)、酒類成分(ワイン、清酒など)、果汁(りんご果汁など)などが挙げられる。この場合、その他の成分は、魚介類エキス、海藻エキス、肉エキス、野菜エキス、酵母エキス、タンパク質加水分解物などのエキス;魚節類、海藻類、キノコ類などを、熱水、エタノールなどの溶媒で抽出して得られるダシ汁;野菜類、香辛野菜類、キノコ類、果実類、肉類、魚介類、海藻類などの食材であってもよい。
【0031】
また、その他の成分は、例えば、本発明の一態様の抗ストレス用組成物を化粧品用組成物又は医薬品用組成物として用いる場合は、通常の化粧品及び医薬品に使用される成分などが挙げられ、具体的には水などの基剤、油性成分、保湿剤、清涼剤、防腐剤、キレート剤、pH調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、増粘剤、美白剤、乳化剤、ビタミン類、その他各種薬効成分、粉体、香料、色材、賦形剤、結合剤、滑沢剤などが挙げられる。
【0032】
本発明の一態様の抗ストレス用組成物は、通常用いられる形態であれば特に限定されず、例えば、固形状、液状、ゲル状、懸濁液状、クリーム状、シート状、スティック状、粉状、粒状、顆粒状、錠状、棒状、板状、ブロック状、ペースト状、カプセル状、カプレット状などの各形態をとり得る。
【0033】
有効成分の含有量は、抗ストレス作用が認められる量であれば特に限定されないが、例えば、組成物の全体量に対して、1.0×10CFU/g~1.0×1012CFU/g、好ましくは1.0×10CFU/g~1.0×1010CFU/g、より好ましくは1.0×10CFU/g~1.0×10CFU/gであり;又は0.01質量%~99.9質量%、好ましくは0.05質量%~99質量%、より好ましくは0.1質量%~90質量%である。
【0034】
本発明の一態様の抗ストレス用組成物の1回の使用量、1日の使用量、使用期間、使用間隔などの用法及び用量は特に限定されず、使用態様、適用する生物個体の状態などに応じて適宜設定され得る。
【0035】
1回の使用量は、例えば、有効成分の使用量が、好ましくは0.01mg~10,000mg、より好ましくは0.1mg~1,000mg、さらに好ましくは1mg~500mgになるような量である。1日の使用量は、生物個体の症状及び体格に合わせて適宜設定すればよいが、例えば、100mg/体重60kg/日~10g/体重60kg/日であることが好ましい。
【0036】
使用間隔は、例えば、1日に1回、2回、3回又は数回を、一定期間、すなわち1日以上、好ましくは2日以上、3日以上、4日以上、5日以上、1週間以上、2週間以上、1ヶ月以上、6ヶ月以上又は1年以上にわたって継続的に適用することなどが挙げられる。本発明の一態様の抗ストレス用組成物の適用は、毎日行うことが好ましいが、期間中継続的に適用する限り、本発明の一態様の抗ストレス用組成物を毎日適用しなくてもよい。
【0037】
本発明の一態様の抗ストレス用組成物は、それ自体単独で、又は飲食品、化粧品、医薬品などに添加して使用することができる。本発明の具体的な態様は、特定保健用飲食品、機能性表示飲食品、栄養機能飲食品、保健機能飲食品、特別用途飲食品、栄養補助飲食品、健康補助飲食品、サプリメント、美容飲食品などのいわゆる健康飲食品;乳児用飲食品、妊産婦用飲食品、高齢者用飲食品などの特定者用飲食品;化粧品;医薬品;医薬部外品;動物飼料;及びこれらの製品を製造するための原料などである。
【0038】
本発明の一態様の抗ストレス用組成物は、容器に詰めて密封した容器詰組成物とすることができる。容器は特に限定されないが、例えば、アルミなどの金属、PETやPTPなどのプラスチック、1層又は積層(ラミネート)のフィルム、ガラスなどを素材とするパウチ、小袋、ボトル、缶、瓶などの包装容器が挙げられる。容器詰組成物は、製造して得られた抗ストレス用組成物を、分注、充填及び/又は個装して、それ自体で独立して、流通におかれて市販され得るものであることが好ましい。
【0039】
ビフィドバクテリウム・ビフィダムは、ストレスを受けることによる様々な身体及び精神に対する外面的及び内面的な異常を改善又は抑制することができる。ストレスを受けることにより、鬱症状及び不安症状が発現することはよく知られている。そこで、本発明の別の一態様は、ビフィドバクテリウム・ビフィダムの菌体、菌体成分及び培養物並びにこれらの処理物からなる群から選ばれる少なくとも1種の有効成分を含む、抗鬱用組成物及び抗不安用組成物である。
【0040】
ストレスに曝されると、及びストレスを受けて鬱症状及び不安症状を発現するようになると、認知障害、記憶障害、アルツハイマー病、言語障害、脳卒中、脳梗塞といった脳機能障害に関連する疾患及び症状を発症することがこれまでに知られている。そこで、本発明の一態様の組成物は、抗ストレス作用、抗鬱作用及び抗不安作用を有することにより、脳機能障害に関連する疾患及び症状を改善又は抑制するために用いることができる。
【0041】
後述する実施例に記載のとおり、ストレスを受けた生物個体は、期待される体重の増加が抑制されること、飲水量が増加すること、摂食量が低下すること、IL-6及びTNF-αといった炎症性サイトカインが増加することといった異常が発現する。それに対して、ビフィドバクテリウム・ビフィダムは、これらの異常を改善又は抑制することができる。そこで、本発明の別の一態様は、ビフィドバクテリウム・ビフィダムの菌体、菌体成分及び培養物並びにこれらの処理物からなる群から選ばれる少なくとも1種の有効成分を含む、体重減少、多飲、摂食障害及び炎症からなる群から選ばれる少なくとも1種の疾患及び症状を改善又は抑制するための組成物である。これらの疾患及び症状は、ストレスとの関係性については特に限定されないが、ストレスに起因する疾患及び症状であることが好ましい。
【0042】
また、ビフィドバクテリウム・ビフィダムは、炎症性サイトカインの一種であるIL-6及びTNF-αの産生を抑制することができ、特にIL-6の産生抑制作用は顕著である。そこで、本発明の別の一態様は、ビフィドバクテリウム・ビフィダムの菌体、菌体成分及び培養物並びにこれらの処理物からなる群から選ばれる少なくとも1種の有効成分を含む、インターロイキン-6産生抑制用組成物及びTNF-α産生抑制用組成物である。
【0043】
本発明の一態様の組成物の製造方法は特に限定されないが、例えば、有効成分とその他の成分とを混合すること、及び得られた混合物を所望の形態に成形することを含む方法などが挙げられる。
【0044】
本発明の別の一態様は、有効成分又は該有効成分を含む組成物を生物個体に適用することにより、ストレスに曝されることによって生じる、外面的な異常及び内面的な異常からなる群から選ばれる少なくとも1種の異常を改善又は抑制する方法、鬱症状及び不安症状を改善又は抑制する方法、体重減少、多飲、摂食障害及び炎症からなる群から選ばれる少なくとも1種の疾患及び症状を改善又は抑制する方法、インターロイキン-6及びTNF-αの産生を抑制する方法である。
【0045】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の課題を解決し得る限り、本発明は種々の態様をとることができる。
【実施例0046】
1.試験材料
(1-1)菌株
ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum) TMC3115株(以下、単にTMC3115とよぶ。)は、本願出願人である高梨乳業株式会社の微生物コレクション(Takanashi Microorganisms Collection)に保存されているものを使用した。なお、TMC3115は、微生物の識別の表示を「TMC3115」とし、かつ、受託番号を「NITE P-03300」として、独立行政法人製品評価技術基盤機構の特許微生物寄託センター(〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に2020年10月6日付けの受託日により寄託されている。受託証の写しを図1Aに示し、生存に関する証明書を図1Bに示す。
【0047】
TMC3115は、改変FG培地(グルコース 3質量%、ペプトン 3質量%、酵母エキス0.5質量%、酢酸ナトリウム 0.5質量%、リン酸水素二アンモニウム 0.2質量%、リン酸水素二カリウム 0.2質量%、硫酸マグネシウム 0.05質量%、ポリソルベート80 0.1質量%、水 残部)を用い、37℃、18時間の条件にて、嫌気培養した。培養後の培養液を、遠心分離処理(8,000g、8分、4℃)に供して菌体を回収し、滅菌水で2回洗浄した。洗浄後の菌体を凍結乾燥し、使用時まで-80℃で保管した。凍結乾燥菌体粉末の生菌数は、1×1010CFU/gであった。
【0048】
(1-2)マウス
7週齢の雄のC57BL/6JJcl(B6)マウスは日本クレア社から購入し、繁殖リタイアの雄のICRマウスは日本エスエルシー社からそれぞれ購入した。
【0049】
マウスを、一頭毎に、木製床敷きを敷いたケージに入れ、12時間の明暗周期で管理した飼育室にて、水及び餌を自由摂取できる環境で飼育した。
【0050】
B6マウスには、AIN-93G飼料(粉末タイプ;オリエンタル酵母工業社製)(以下、標準飼料とよぶ。)又はAIN-93G 2.4gに対してTMC3115凍結乾燥菌体粉末 10mgを混合した被験飼料(4.2×10CFU/g)をローデンカフェに入れて給餌した。餌は毎日交換した。
【0051】
ICRマウスには、MF飼料(ペレットタイプ;オリエンタル酵母工業社製)を通常の餌入れで給餌した。
【0052】
B6マウスの体重、摂餌量及び飲水量は毎日測定した。また、購入後、飼育環境に慣らすために1週間馴致した。
【0053】
2.試験方法
(2-1)sCSDSモデル
馴致終了時の体重に基づき、B6マウスを、ストレス無対照群(非ストレス負荷;n=15)、ストレス有対照群(ストレス負荷;n=24)及びTMC3115群(n=25)の3群に分けた。全試験期間(事前投与期間10日間(Day0-9)、ストレス負荷期間10日間(Day10-19)、行動試験1日間(Day20)及び試験終了日(Day21))を通して、両対照群にはAIN-93Gである標準飼料を与え、TMC3115群にはAIN-93GにTMC3115凍結乾燥菌体粉末を混合した被験飼料を与えた。
【0054】
マウスに対するストレス負荷は、亜慢性社会的敗北ストレス(subchronic and mild social defeat stress;sCSDS)(後藤ら、2014; Goto T, Kubota Y, Tanaka Y, Iio W, Moriya N, Toyoda A, "Subchronic and mild social defeat stress accelerates food intake and body weight gain with polydipsia-like features in mice.", Behav Brain Res 270:339-348(2014))モデルで実施した。sCSDSモデルの概要を試験計画とともに模式的に表したものを図2とした。概要として、sCSDSモデルは、あらかじめ選抜した攻撃性の高い居住者(ICRマウス)のケージに、侵入者としてB6マウスを入れ、居住者のICRマウスに一定時間、B6マウスを直接的に攻撃させる試験モデルである。
【0055】
ストレス有対照群及びTMC3115群のB6マウスについて、ストレス負荷期間を10日間とし、直接攻撃の時間は、初日は5分間、その後は毎日30秒ずつ減らした時間とした。直接攻撃の後、1日の残りの時間は、ICRマウスとB6マウスとを小さい孔の開いた透明アクリル板の仕切りで隔離した。これにより、B6マウスは、ICRマウスからの直接的な攻撃は受けないが、攻撃を受けたICRマウスの姿及び匂いなどの感覚的な刺激に曝された。各B6マウスに刺激を与えるICRマウスは毎日交換して、日々異なるICRマウスからの直接攻撃及び間接的な刺激を10日間暴露させることにより、各試験群のB6マウスにストレスを負荷した。
【0056】
ストレス無対照群のB6マウスは、同じケージを上記と同様のアクリル板で仕切り、その両側に1頭ずつ飼育した。したがって、ストレス無対照群のB6マウスはICRマウスからの直接攻撃及び間接的な刺激に曝されなかった。
【0057】
(2-2)社会性行動試験(Social interaction test)
10日間のsCSDSモデルによるストレス負荷が終了した翌日(Day20)に、社会性行動試験を実施した。オープンフィールド(縦400mm、横400mm、高さ300mmの蓋の無いボックス)の一方の壁の中央付近に金網を張ったプラスチック製のケージ(縦100mm、横100mm、高さ130mm)を設置した。ケージの周り約7cmの範囲を社交ゾーンと定義した。また、ケージを設置した壁と反対側の壁における角部2箇所をコーナーゾーンと定義した。オープンフィールドにおけるケージ、社交ゾーン及びコーナーゾーンの関係を模式的に図示したものを図3とした。
【0058】
まず、ケージにICRマウスを入れずに、各試験群のB6マウスをコーナーゾーンからオープンフィールド内へ放し、2分30秒間、自由に探索させた。探索後、一度マウスを回収し、臭いなどを消すために消毒用エタノールでオープンフィールド内を清浄な空間となるように清掃した。
【0059】
次いで、ICRマウスをケージに入れ、再度同じB6マウスをコーナーゾーンからオープンフィールド内へ放して探索させた。ICRマウスが存在しない際の社交ゾーン滞在時間に対して、ICRマウス存在時の社交ゾーン滞在時間を社会性スコアとした。ICRマウスの不存在時の社交ゾーン滞在時間とICRマウス存在時の社交ゾーン滞在時間が等しい場合は社会性スコアを100とした。社会性スコアが100%未満(社会性スコアが100未満)の場合をストレス感受性個体とした。一方で、社会性スコアが100以上の個体はストレス耐性個体(「レジリエント」)とした。
【0060】
(2-3)血清中の炎症性サイトカイン濃度の測定
腹部大静脈より採血するために、社会性行動試験の翌日(Day21)のB6マウスを解剖した。具体的には、B6マウスを解剖3時間前に絶食させ、3%イソフルランで麻酔した後に、開腹することにより、腹部大静脈から血液を採取した。
【0061】
採取した血液を、37℃で20分間保温した後、4℃で2時間静置して冷却した。冷却後の血液を遠心分離(1,000g、15分間、4℃)によって血清を分離及び回収した。血清は分析するまで-80℃で保管した。
【0062】
血清中のインターロイキン6(IL-6)及び腫瘍壊死因子(TNF-α)の濃度は、それぞれに対応するELISAキット(IL-6については#BMS607HS、Invitrogen社;TNF-αについては#BMS603HS、Invitrogen社)を用いて、キットのマニュアルに従って測定した。
【0063】
(2-4)統計解析
増体量(試験開始時からの体重の変化量)、摂餌量及び飲水量は、繰り返しのある二元配置分散分析を行った。3群間の群間比較はTukey-HSD検定を行い、P<0.05を統計的有意とした。
【0064】
3.試験結果及び評価
増体量の測定結果を図4に示す。図4に示すとおり、増体量は、ストレス期間において、ストレス有対照群は、ストレス無対照群及びTMC3115群と比べて有意に低下した。しかし、TMC3115群では増体量の低下が抑制され、ストレス無対照群と有意差はなかった。このことより、TMC3115には、ストレスによる体重への影響を低減する作用を有することがわかった。
【0065】
飲水量の測定結果を図5に示す。図5に示すとおり、飲水量は、ストレス期間において、ストレス有対照群は、ストレス無対照群と比べて有意に増加した。しかし、TMC3115群では、飲水量の増加が抑制された。このことより、TMC3115には、ストレスによる飲水量の増加を抑制する作用を有することがわかった。
【0066】
摂餌量について、ストレス期間の平均摂餌量は、ストレス無対照群は3.13g、ストレス有対照群は3.04g及びTMC3115群は3.11gであった。統計解析の結果から、ストレス有対照群は、ストレス無対照群と比べて有意に低下した。しかし、TMC3115群はストレス無対照群に対して有意差はなかった。このことより、TMC3115には、ストレスによる摂食量の低下を抑制する作用を有することがわかった。
【0067】
社会性スコアの測定結果を表1に示す。表1に示すとおり、ストレス有対照群は、ストレス無対照群と比べて、ストレス感受性個体の割合が大きかった。しかし、TMC3115群は、ストレス感受性個体の割合がストレス無対照群と同程度までに少なかった。このことより、TMC3115には、社会性スコアの改善作用及びストレス耐性作用を有することがわかった。
【0068】
【表1】
【0069】
IL-6の測定結果を図6に示す。図6に示すとおり、IL-6は、ストレス有対照群は、ストレス無対照群及びTMC3115群と比べて有意に増加した。しかし、TMC3115群ではIL-6の増加が抑制され、ストレス無対照群と有意差はなかった。このことより、TMC3115には、ストレスによるIL-6の増加を抑制する作用を有することがわかった。
【0070】
TNF-αの測定結果を表2に示す。表2に示すとおり、ストレス無対照群に比べて、ストレス有対照群及びTMC3115群のTNF-αは増加した。しかし、TMC3115群は、ストレス有対照群に比べて、TNF-αの増加が僅かに抑制された。このことより、TMC3115には、TNF-αの増加を抑制する作用を有することがわかった。
【0071】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の一態様の組成物は、経口的及び非経口的のいずれの態様においても適用可能な有効成分を含むものであり、ストレスによる、体重への影響を低減する作用、飲水量の増加を抑制する作用、摂食量の低下を抑制する作用、炎症性サイトカインの増加を抑制する作用を通じて抗ストレス活性、抗鬱活性、抗不安活性、抗意欲低下活性、抗気分障害活性を期待する生物個体、さらには中枢神経機能の改善、脳機能の改善を期待する生物個体にとって有用なものであり、このような生物個体の健康及び福祉に資する飲食品、医薬品、医薬部外品、化粧品などとして利用可能なものである。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6