(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118916
(43)【公開日】2022-08-16
(54)【発明の名称】表面保護フィルムおよび表面保護用フィルムを用いた表示デバイス
(51)【国際特許分類】
B32B 3/14 20060101AFI20220808BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20220808BHJP
【FI】
B32B3/14
G02B1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021015744
(22)【出願日】2021-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 正大
(72)【発明者】
【氏名】平田 立
【テーマコード(参考)】
2K009
4F100
【Fターム(参考)】
2K009AA15
2K009CC03
2K009CC21
2K009CC24
2K009DD02
2K009DD03
2K009DD04
4F100AA01B
4F100AK25B
4F100AK51A
4F100AR00A
4F100AT00C
4F100BA02
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4F100BA10B
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4F100GB41
4F100JB14B
4F100JK04
4F100JK07B
4F100JK12
4F100JK12B
4F100JK17
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】高硬度で傷つきにくく、しかも丸めたり、折り曲げたりする仕様にも耐えることができる表面保護フィルムと前記フィルムを含むデバイスを提供する。
【解決手段】自己修復フィルムの少なくとも一方の面に、ハードコーティング層が点在し、柱状、上部に円弧部分を持つ柱状、上面が平面の多角柱状、もしくはそれらの組み合わせからなるランダムな形状であって、特には、フィルムを平面視した際、各ハードコーティング層は直径5μm~500μmの真円、または、前記真円の中心を重心とし且つ互いに外接するサイズの多角柱であって、前記真円の中心間距離は10μm~1000μmであることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己修復フィルムの少なくとも一方の面に、ハードコーティング層が点在し、前記ハードコーティング層の形状が柱状、上部に円弧部分を持つ柱状、上面が平面の多角柱状、もしくはそれらの組み合わせからなるランダムな形状であって、特には、フィルムを平面視した際、各ハードコーティング層は直径5μm~500μmの真円、または、前記真円の中心を重心とし且つ互いに外接するサイズの多角形であって、前記真円の中心間距離は10μm~1000μmであることを特徴とする表面保護用フィルム。
【請求項2】
前記ハードコートの厚みは1μm~20μmであることを特徴とする請求項1に記載の表面保護用フィルム。
【請求項3】
前記ハードコートは活性エネルギー線硬化性組成物、無機化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の表面保護用フィルム。
【請求項4】
前記自己修復フィルムは動的機械分析で測定された損失弾性率を貯蔵弾性率に分けた値であるtanδ曲線で、25℃におけるtanδが0.5以上1.5以下であることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の表面保護用フィルム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の表面保護用フィルムを用いた表示デバイス。
【請求項6】
前記表示デバイスが屈曲部位を有する、請求項5に記載の表示デバイス。
【請求項7】
前記表示デバイスが曲面を有する、請求項5又は6に記載の表示デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面保護フィルムおよびこれを用いた表示デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
反ったり曲げたりすることができる次世代ディスプレイに対する関心が高まるにつれ、ディスプレイ素子を保護するガラス基板を代替できる表面保護フィルムにおいては、高硬度、耐擦傷性などの表面保護特性ばかりではなく、耐屈曲性に優れる素材の開発が求められている。このような特性を満たす素材として透明ポリイミドや屈曲性PETが開発されている。所望の特性を満たすような素材にするためには樹脂設計に頼ることが多く、コスト面においても不利な状況になる。
【0003】
また、樹脂フィルムではガラス水準の高硬度を示しかつ十分な屈曲耐性を満足させるものができていないのが現状であり、支持体にハードコーティング層をコーティングする組成物が提案されている。ハードコーティング層が厚いほど硬度は向上する傾向にあるが、屈曲性においては不利な状況になる。
【0004】
例えば特許文献1では、基材フィルム上にハードコーティング層をパターン状に積層することで硬度と屈曲性の両立を図っているが、実施例に開示されている方法では、支持体フィルムとして125μm厚PETフィルムを使用しており、硬度は下地の影響を受けることからハードコートを積層したとしても鉛筆硬度4Hにとどまり、ガラス水準の高硬度には及ばない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高硬度で傷つきにくく、しかも丸めたり、折り曲げたりする仕様にも耐えることができる表面保護フィルムと前記フィルムを含むデバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様に係る、自己修復フィルムの少なくとも一方の面に、ハードコーティング層が点在し、前記ハードコーティング層の形状が柱状、上部に円弧部分を持つ柱状、上面が平面の多角柱状、もしくはそれらの組み合わせからなるランダムな形状であって、特には、フィルムを平面視した際、各ハードコーティング層は直径5μm~500μmの真円、または、前記真円の中心を重心とし且つ互いに外接するサイズの多角形であって、前記真円の中心間距離は10μm~1000μmであることを特徴とする。
【0008】
また、前記ハードコートの厚みは1μm~20μmであることを特徴とする。
【0009】
また、前記ハードコートは活性エネルギー線硬化性組成物、無機化合物であることを特徴とする。
【0010】
また、前記自己修復フィルムは動的機械分析で測定された損失弾性率を貯蔵弾性率に分
けた値であるtanδ曲線で、25℃におけるtanδが0.5以上1.5以下であることを特徴とする。
【0011】
また、前記表面保護用フィルムを用いた表示デバイスであることを特徴とする。
【0012】
また、前記表示デバイスが屈曲部位を有することを特徴とする。
【0013】
また、前記表示デバイスが曲面を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の表面保護用フィルムは、自己修復フィルムの表面に、ハードコーティング層が点在しているため、本来の自己修復性による硬度と耐屈曲性を維持しつつ、且つ自己修復フィルムの耐擦傷性が改善されたことにより、ベンダブル(bendable)、フレキシブル(flexible)、ローラブル(rollable)、またはフォルダブル(foldable)モバイル機器、ディスプレイ機器、各種計器盤の前面板、表示部などに有用に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】支持体上に自己修復フィルムを設けた断面図。
【
図2】支持体から剥離した自己修復層(以下自己修復フィルム)上にハードコーティング層を設けた断面図。
【
図3】
図2の構成の表面保護フィルムを自己修復フィルムに対して垂直方向からみた概略図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照して、本発明の実施形態の表面保護フィルムおよびこれを含むデバイスについて説明する。ここで、図面は模式的なものであり、大きさや比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す各実施形態は、本発明の技術的思想を具現化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成する材質、形状、及び構造等が下記のものに特定されるものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0017】
図1は本発明の自己修復フィルム2を作製した時の断面図を示す。ここで、自己修復とは破損を元のように直す機能をコーティング材自身が有することを意味する。生じた破損を修復する方法として新たに化学結合を形成させる方法が構造材料分野等で検討されているが、本発明においては擦り傷をコーティング層の変形により修復する方法を意味する。一般的なハードコーティングは、架橋密度が高いため傷つきにくいが、一旦傷つくと傷ついたままになり回復しない。一方、自己修復フィルムは、外応力を加えると硬化膜自体が変形し、塗膜の弾性によって傷が回復する。
【0018】
図2、3は、支持体1から剥離した自己修復フィルム2上の少なくとも一方の表面に、ハードコーティング層3が点在していること示す断面図および平面視図である。なお、上記構成を備えていれば他の層を備えていてもよい。自己修復フィルム2は、単層構造を有している透明な自立膜である。ここで使用する用語「自立膜」とは、基板などの支持体によって支持されなくとも、それ自体を単独で取り扱うことができるフィルムを意味している。また、ここで使用する用語「フィルム」は、薄層形状及び可撓性を有している物品を意味し、厚さの概念は含まない。
【0019】
自己修復フィルム2は、後述する樹脂組成物の硬化物からなる。即ち、自己修復フィルムは、ガラス、金属、炭素、タンパク質、セルロース、及び合成樹脂等の各種材料からな
る織布又は不織布や、そのような材料からなる多孔質層を含んでいない。
【0020】
本発明に使用する自己修復フィルムとしては、使用環境下で必要十分な修復を得ることができれば自己修復材料を構成する高分子架橋体の樹脂種は本質的に限定されないが、安価に製造することができ、光学的特性、耐候性、耐薬品性に優れているという点から、二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物からなるフィルムが好ましく用いられる。
【0021】
二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物は、ポリオール化合物(A)と、イソシアネート化合物(B)とを含んでいる。以下に、各成分について説明する。
【0022】
<ポリオール化合物(A)>
前記ポリオール化合物(A)としては、例えばポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオールまたはアクリルポリオール等を使用することができ、これらを併用して使用してもよい。特に、芳香族環式構造を有さない、脂肪族ポリエーテルポリオール、脂肪族ポリカーボネートポリオールまたは脂肪族ポリエステルポリオールを使用することが耐変色性や透明性の観点から好ましい。
【0023】
ポリオール化合物(A)に好適なポリエーテルポリオールとしては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの1種または2種以上を、2個以上の活性水素を有する化合物に付加重合せしめた生成物や、テトラヒドロフランを開環重合して得られるポリテトラメチレングリコール、テトラヒドロフランとアルキル置換テトラヒドロフランを共重合させた変性ポリテトラメチレングリコールや、ネオペンチルグリコールとテトラヒドロフランを共重合させた変性ポリテトラメチレングリコールが挙げられる。また、これら以外にも脂肪族環式構造を有するポリエーテルポリオールでもよい。
【0024】
ポリオール化合物(A)に使用可能なポリカーボネートポリオールとしては、例えば、炭酸エステル及び/またはホスゲンと、後述するポリオールとを反応させて得られるものを使用することができる。また、これら以外にも脂肪族環式構造を有するポリカーボネートポリオールでもよい。
【0025】
ポリオール化合物(A)に使用可能なポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子量のポリオールとポリカルボン酸とをエステル化反応して得られる脂肪族ポリエステルポリオールや、ε-カプロラクトン、γ-バレロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステルや、これらの共重合ポリエステル等を使用することができる。また、これら以外にも脂肪族環式構造を有するポリエステルポリオールでもよい。
【0026】
ポリオール化合物(A)の水酸基価は、ポリウレタン硬化物の自己修復性の観点から、好ましくは70mgKOH/g~500mgKOH/g、更に好ましくは200mgKOH/g~450mgKOH/gである。この範囲外の場合、自己修復性と指標となる25℃におけるtanδが0.5以上1.5以下から外れ、粘性もしくは弾性が極端に強く自己修復性のないフィルムとなる。
【0027】
<イソシアネート化合物(B)>
イソシアネート化合物(B)としては、例えば、脂肪族、脂環族または芳香族の各種公知のポリイソシアネート化合物が挙げられる。例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、及びダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1-メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1-メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及び1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンなどの脂環族ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、及びm-テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリイソシアネートは、芳香族基を有さないことが耐変色性や透明性の観点から好ましい。
【0028】
ポリオール化合物(A)とイソシアネート化合物(B)の配合は、ポリオール化合物(A)の水酸基とイソシアネート化合物(B)のイソシアネート基の当量比がOH/NCOが0.7~1.3の範囲内となるように調整するのが好ましく、より好ましくは、0.8~1.2の範囲内である。上記の範囲外であるとポリオール化合物(A)とイソシアネート化合物(B)を配合して出来たフィルムが硬化不良となるため、好ましくない。
【0029】
<その他の成分(C)>
樹脂組成物は、必要に応じて、他の成分(C)を更に含有することができる。樹脂組成物は、その他の成分、例えば、表面調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤(HALS等)、つや消し剤(シリカ、ガラス粉、金属酸化物等)、着色剤(染料、顔料等)、光拡散剤、低収縮剤、沈降防止剤、消泡剤、帯電防止剤、防曇剤、分散剤、増粘剤、タレ止め剤、乾燥剤、レベリング剤、カップリング剤、付着促進剤、防錆顔料、熱安定剤、皮膜物質改質剤、スリップ剤、スリキズ剤、可塑剤、防菌剤、防カビ剤、防汚剤、難燃剤、重合防止剤、光重合促進剤、増感剤、熱開始剤(熱カチオン重合開始剤、熱ラジカル重合開始剤)、及び離型剤等の添加剤の1つ以上を更に含有していてもよい。
【0030】
成分(C)の量は、ポリオール化合物(A)とイソシアネート化合物(B)との合計量100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましい。
<二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物の調製>
ポリオール成分及びポリイソシアネート成分としては、いずれも常温(23℃)で液体のものを用いることができ、溶剤を用いずに熱硬化ポリウレタンを得ることができる。上記の樹脂組成物は、上述した成分を均一に混合することにより得る。この混合には、例えば、特に限定されないが、ディスパーミキサ、ウルトラミキサ、ホモジナイザ、及び遊星攪拌脱泡機等の攪拌機を用いることができる。
【0031】
<自己修復フィルムの製造>
上記の二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物からなる塗膜を支持体上に形成し、塗膜を加熱し硬化させ、その後、硬化した膜を支持体から剥離することにより得る。
【0032】
二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物の塗工には、例えば、ダイコート法、ディッピング法、ワイヤーバーを使用する方法、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、カーテン法、スクリーン印刷法、スプレーコ
ート法、及びグラビアオフセット法等の周知の方法を用いることができる。
【0033】
二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物からなる塗膜の硬化後の厚さ、即ち、自己修復フィルムの厚さは、100μm~1000μmの範囲内にあることが好ましい。薄すぎる場合、フィルムの強度が低く、荷重をかけてスクラッチした際に破断してしまう可能性が高い。厚すぎる場合、屈曲時にフィルムにかかる応力が大きくなり破断してしまう可能性がある。
自己修復フィルムは、単層構成であっても、多層構成であってもよい。
【0034】
次に、ハードコーティング層の構成材料となる硬化性組成物について説明する。ハードコーティング層の構成材料としての硬化性組成物は、加工速度の速さ、支持体への熱のダメージの少なさから、特に活性エネルギー線(紫外線や電子線)硬化型樹脂を用いることが好ましい。ラジカル重合型の硬化樹脂としては、例えば、多価アルコールのアクリル酸エステル、又はメタクリル酸エステルのような多官能性のアクリレート樹脂、ジイソシアネート、多価アルコール及びアクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステル等から合成されるような多官能性のウレタンアクリレート樹脂などを挙げることができる。さらにアクリロイル基、メタクリロイル基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等も必要に応じて好適に使用することができる。
【0035】
また、これらの樹脂の反応性希釈剤としては、比較的低粘度である1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の2官能以上のモノマー及びオリゴマー並びに単官能モノマー、例えばN-ビニルピロリドン、エチルアクリレート、プロピルアクリレート等のアクリル酸エステル類、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ノニルフェニルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類、及びそのカプロラクトン変成物などの誘導体、スチレン、α-メチルスチレン、アクリル酸等及びそれらの混合物、などを使用することができる。
【0036】
また、カチオン重合型の硬化樹脂も必要に応じて利用することができ、この樹脂は付加重合型と開環重合型に大きく分類できる。付加重合型の化合物として、電子密度の高いビニル基を有するビニルエーテル化合物、スチレン誘導体等を、開環重合型の化合物として、多様なヘテロ環状化合物、例えばエポキシ化合物、ラクトン化合物、4員環の環状エーテルであるオキセタン化合物等を使用することができる。
【0037】
本発明において、活性エネルギー線が紫外線である場合には、光増感剤(光重合開始剤)を添加する必要があり、ラジカル発生型の光重合開始剤としてベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルメチルケタールなどのベンゾインとそのアルキルエーテル類、アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、などのアセトフェノン類、メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-アミルアントラキノンなどのアントラキノン類、チオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン類、アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類、ベンゾフェノン、4,4-ビスメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類及びアゾ化合物などがある。これらは単独または2種以上の混合物として使用でき、さらにはトリエタノールアミン、メチルジエタノールアミンなどの第3級アミン、2-ジメチルアミノエチル安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸エチルなどの安息香酸誘導体等の光開始助剤などと組み合わせて使用することができる。
【0038】
また、カチオン重合開始剤として使用できる光酸発生剤は、イオン性の化合物と非イオン性の化合物に大別できる。イオン性の化合物としてはアリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩及びトリアリールホスホニウム塩等があり、対イオンとしてBF4
-、PF6
-、AsF6
-、SbF6
-などが用いられる。このようなオニウム塩系の光酸発生剤には必要に応じてアンスラセンや、チオキサントンのような光増感剤を併用することができる。非イオン性の光酸発生剤としては、光照射によってカルボン酸、スルホン酸、リン酸、ハロゲン化水素等を生成するものが使用でき、具体的にはスルホン酸の2-ニトロベンジルエステル、イミノスルホナート、1-オキソ-2-ジアゾナフトキノン-4-スルホナート誘導体、N-ヒドロキシイミドスルホナート、トリ(メタンスルホニルオキシ)ベンゼン誘導体等が利用でき、さらにカルボン酸o-ニトロベンジルエステル、1-オキソ-2-ジアゾナフトキノン-5-アリールスルホナート、トリアリールリン酸エステル誘導体等が使用できる。
【0039】
上記光重合開始剤の使用量は、ラジカル重合型樹脂分に対してはラジカル光重合開始剤を、カチオン重合型樹脂分にはカチオン光重合開始剤をそれぞれの重合性樹脂成分100質量部に対して0.5質量部~20質量部、好ましくは1質量部~15質量部である。
【0040】
その他、必要に応じて、紫外線吸収剤、表面調整剤、レベリング剤、重合禁止剤、油、酸化防止剤、難燃剤、帯電防止剤、充填剤、安定剤、補強剤、艶消し剤、研削剤、有機微粒子、無機粒子等を含有してもよい。
【0041】
ハードコーティング層は、例えば、ダイレクトグラビアコーテイング、パウダーコーティング、インクジェット、オフセット印刷、スクリーン印刷などの塗工方式を採用することができる。活性エネルギー線硬化性組成物の粘度、パターンサイズ、パターン形状等に応じて、塗工方式を適宜選択すればよい。
【0042】
本発明において、ハードコーティング層に無機薄膜を用いる際の材料としては、酸化物、硫化物、フッ化物、窒化物などが使用可能であり、具体的には、酸化マグネシウム、二酸化珪素、フッ化カルシウム、フッ化セリウム、フッ化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、硫化亜鉛、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化インジウムが挙げられる。
【0043】
また、無機薄膜層の製造方法については、いかなる成膜方法でも良く、なかでも薄膜の生成には乾式法が優れている。これには、真空蒸着法等の物理的気相析出法やCVD法のような化学的気相析出法を用いることができる。
【0044】
ハードコーティング層の形状が柱状、円弧部分を持つ円状、直線部位を持つ多角状、もしくはそれらの組み合わせからなるランダムな形状であってもよい。ハードコーティング層の配置は、縦横に規則的に、例えば格子状に配置してもよいし、同心円状に規則的に配置してもよいし、その他規則的に配置してもよいし、ランダムに配置してもよい。
【0045】
ハードコーティング層の平面視野サイズは、直径5μm~500μmの真円もしくは前記真円の中心を重心とし且つ内接するサイズが好ましい。これよりも大きくなると、押し込んだ際に割れが発生する傾向にあり、小さくなりすぎると、フィルム基材の接着強度が不十分となって、耐擦傷性が低下する傾向にある。
【0046】
ハードコーティング層間のピッチは、任意の層を基準とし、当該層から最も近接して存在する他のハードコーティング層迄の距離を意味する。ハードコーティング層の形状が真円の場合は中心間の距離をピッチとし、それ以外の形状の場合は、直径5μm~500μmの真円が外接したとき、真円の中心間の距離をピッチとする。ピッチは10μm~1000μmであるのが好ましい。ハードコーティング層のサイズが大きい場合はピッチが大きいほど耐屈曲性に有利である。ピッチが小さくなりすぎると、個々のハードコーティング層のサイズにもよるが、隣接する層が近づきすぎて、各層の独立性を保持することが困難になる傾向がある。ピッチが大きくなりすぎると、個々のハードコーティング層のサイズにもよるが、自己修復フィルムの露出面積が増えるため、耐擦傷性の効果が低下する傾向がある。但し、ハードコーティング層は上記のピッチの範囲内であればランダムに配置されていてもよいし、規則性を持って配置されてもよい。
【0047】
ハードコーティング層の厚みは、1μm~20μmであるのが好ましい。1μm未満の場合、押し込まれて割れが発生する。一方、20μm以上でも耐擦傷性の効果は変わらないため、コスト的に不利となる。
【0048】
上記の通り、本表面保護フィルムは、自己修復性により優れた硬度と耐屈曲性を備えており、さらには、耐擦傷性を改善できたことから、表面保護フィルム、中でもディスプレイ用の表面保護フィルム、その中でも、フレキシブルディスプレイ用の表面保護フィルムとして好適に用いることができる。但し、本積層フィルムの用途をこれらの用途に限定するものではない。
【実施例0049】
以下に、本発明の実施例を記載する。但し、本発明は、以下に記載する事項に限定されるわけではない。
【0050】
[実施例1]
自己修復フィルムを以下の手順で作製した。先ず、ポリオール化合物(A)の水酸基とイソシアネート化合物(B)のイソシアネート基の当量比がOH/NCO=1.0となるように調製し、ポリオール(A)とイソシアネート化合物(B)との合計量100質量部に対して0.05質量部の表面調整剤(C)を加え、遊星攪拌脱泡機(マゼルスターKK5000、KURABO社製)を用いて15分間攪拌して、塗液を調製した。ここで、ポリオール化合物(A)としては、XU-19939A-2(ペルノックス社製)を使用した。また、イソシアネート化合物(B)としては、XU-19923B(ペルノックス社製)を使用した。そして、表面調整剤(C)としては、BYK-3700(ビックケミー・ジャパン社製)を使用した。
【0051】
次に、この塗液を用いて、ダイコート法により、厚さが200μmのフィルムを製造した。キャリアフィルムとして用いた厚さが100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)製離型フィルム(パナピールPET100TP03、パナック社製)から剥離して自立フィルムとした。
【0052】
上記自己修復フィルム上に、ハードコーティング層を以下の手順で作製した。
先ず、以下の処方に示す紫外線硬化型のクリア塗料組成物を調製した。
・ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート 30質量部
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 20質量部
・Omnirad 1173(IGM Japan社製) 25質量部
・酢酸エチル 30質量部
次に自己修復フィルム上に、上記組成のハードコーティング層をインクジェット装置(富士フイルム社製、DMP-2850)によって、平面視した際に直径5μmの真円状ドットが10μmのピッチで配列されてなるパターンを形成し、乾燥後の膜厚が20μmになるように25℃で塗布した。塗布乾燥後、塗膜側より高圧水銀UV[ランプ(120W/cm)の紫外線を積算光量約300mJ/m2の条件で照射し、硬化処理することによって、自己修復フィルムとハードコーティング層が点在するフィルムを得た。
【0053】
[実施例2]
ハードコーティング層の乾燥後の膜厚を1μmに変更した以外は実施例1と同様の方法によりフィルムを作製した。
【0054】
[実施例3]
ハードコーティング層を直径500μmの真円状ドットにし、ピッチを1000μmに変更した以外は実施例1と同様の方法によりフィルムを作製した。
【0055】
[比較例1]
ハードコーティング層の膜厚を0.5μmに変更した以外は実施例1と同様の方法によりフィルムを作製した。
【0056】
[比較例2]
ハードコーティング層間のピッチを1500μmに変更した以外は実施例1と同様の方法によりフィルムを作製した。
【0057】
[比較例3]
基材フィルムを125μm厚PETにしたこと以外は実施例1と同様の方法によりフィルムを作製した。
【0058】
[比較例4]
実施例1と同等の方法により自己修復フィルムを作製し、その上にハードコーティング層をバーコーティングにより乾燥後の膜厚が20μmとなるように全面塗工しフィルムを作製した。
【0059】
[比較例5]
ハードコート層を設けないこと以外は、実施例1と同様の方法によりフィルムを作製した。
【0060】
<評価方法>
(鉛筆硬度)
JIS K-5600-5-4に準拠して、フィルム表面に750gの荷重をかけ、速度1.0mm/sで硬度2Hから9Hの鉛筆(三菱UNI)を用いて試験を行い、ハードコーティング層の割れを光学顕微鏡で評価した。また、基材フィルムの凹みは反射光を用いて目視で評価した。
◎:鉛筆硬度6H~9Hでハードコーティング層の割れなし。基材フィルムの凹みなし。〇:鉛筆硬度6H~9Hでハードコーティング層の割れ発生。鉛筆硬度2H~5Hでハードコーティング層の割れがなく且つ基材フィルムの凹みなし。
×:鉛筆硬度2H~5Hで割れなし。基材フィルムの凹みあり。
××:鉛筆硬度2H~5Hで割れが発生又は基材フィルムの凹みあり。
【0061】
(屈曲耐性)
フィルムを30mm×80mmの大きさに切り出したフィルムを、無負荷U字伸縮試験機(ユアサシステム機器社製)に、フィルムの短辺(30mm)側を固定部でそれぞれ固定し、対向する2つの辺部の最小の間隔が2mmとなるようにして調整し、1回/秒の速
度でフィルムの表面を180°折り畳む連続屈曲試験を20万回行い、基材フィルムの折り目及びハードコーティング層の割れを光学顕微鏡で評価した。
〇:基材に折り目がなく、ハードコーティング層の割れなし。
×:基材に折目が残存
××:基材に折目が残存、ハードコーティング層に割れ発生。
【0062】
(耐擦傷性)
スチールウール#0000上に1000g/cm2の荷重を掛けて10往復させ、基材フィルムの傷とハードコーティング層の割れの状況を光学顕微鏡で評価した。
〇:基材に傷がなく且つハードコーティング層の割れなし。
×:基材に傷がない。ハードコーティング層に割れ発生。
××:基材に傷がある。
【0063】
以下の表1に、評価結果を纏める。
【0064】
【0065】
実施例1~3のフィルムは、自己修復性により硬度と耐屈曲性を両立し、表面にハードコーティング層を点在することで耐擦傷性も改善された。一方で、比較例1、2のように膜厚が薄い場合やピッチが広い場合は、耐擦傷性の改善は見られない。また、比較例3のように基材フィルムにPETを用いた場合は、硬度が乏しく、屈曲後に折り目が残る。比較例4のように自己修復フィルムのみの場合は耐擦傷性がなく、比較例5のようにハードコーティング層を全面ベタで製膜した場合は押し込んだ際に割れが発生することがわかる。