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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022011896
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】コンタクト
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/24 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
H01R13/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020113308
(22)【出願日】2020-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000242231
【氏名又は名称】北川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】特許業務法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】中川 一路
(72)【発明者】
【氏名】中村 達哉
(57)【要約】      (修正有)
【課題】上部ブロックが下部ブロックに対して相対的に上下方向以外の前後方向及び/又は左右方向へ変位した場合であっても、インピーダンスの増加を抑制することが可能となるコンタクトを提供する。
【解決手段】下部ブロック10は、上部ブロック40の側面の左方向に向かう面を除く側面を囲む第1半周壁部13と、上部ブロック40の側面の右方向に向かう面を除く側面を囲む第2半周壁部15とを備え、第1半周壁部13と第2半周壁部15とにより、上部ブロック40の側面全体を囲む周壁を形成し、第1半周壁部13及び第2半周壁部15にはそれぞれ、周壁が上部ブロック40の側面全体を囲んだ状態を保持するためのロック機構が設けられ、ばね部30は、弾性変形することによって上部ブロック40を、少なくとも上方向へ付勢する状態にあり、上部ブロック40は、ばね部30により、下部ブロック10に対して相対的に上下方向へ変位可能に構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と第2部材とを電気的に接続可能なコンタクトであって、
前記第1部材に対してはんだ付けされる接合面を有する下部ブロックと、
前記第2部材に接触する上部ブロックと、
前記下部ブロックと前記上部ブロックとの間に設けられ、弾性変形可能に構成されるばね部と、
を備え、
x軸及びy軸が前記接合面に平行、かつz軸が前記接合面に垂直となり、前記接合面がz軸負方向に向けられる3次元直交座標系を規定した場合に、
前記下部ブロックは、前記上部ブロックの側面のうちのいずれかの面を除く側面を囲む第1半周壁部と、前記上部ブロックの側面のうちの前記いずれかの面に対向する面を除く側面を囲む第2半周壁部と、を備え、
前記第1半周壁部と前記第2半周壁部とにより、前記上部ブロックの側面全体を囲む周壁を形成し、
前記第1半周壁部及び第2半周壁部にはそれぞれ、前記周壁が前記上部ブロックの側面全体を囲んだ状態を保持するためのロック機構が設けられ、
前記ばね部は、弾性変形することによって前記上部ブロックを、少なくともz軸正方向へ付勢する状態にあり、
前記上部ブロックは、前記ばね部により、前記下部ブロックに対して相対的にz軸方向へ変位可能に構成されている、
コンタクト。
【請求項2】
前記ばね部は、弾性変形することによって前記上部ブロックを、z軸正方向に加え、x軸負方向へ付勢する状態にあり、
前記上部ブロックは、x軸負方向に向けられた突起を備え、
前記上部ブロックは、前記ばね部によってx軸負方向へ付勢されることにより、前記突起が前記周壁のx軸正方向へ向かう面に対して加圧接触する状態にあり、
前記上部ブロックは、前記突起が前記周壁のx軸正方向へ向かう面に対して加圧接触する状態を維持したまま、前記ばね部により、前記下部ブロックに対して相対的にz軸方向へ変位可能に構成されている、
請求項1に記載のコンタクト。
【請求項3】
前記上部ブロックは、y軸正方向及び負方向にそれぞれ向けられた各突起を備え、
前記上部ブロックは、y軸正方向に向けられた突起が前記周壁のy軸負方向へ向かう面に対して接触するとともに、y軸負方向に向けられた突起が前記周壁のy軸正方向へ向かう面に対して接触する状態を維持したまま、前記ばね部により、前記下部ブロックに対して相対的にz軸方向へ変位可能に構成されている、
請求項2に記載のコンタクト。
【請求項4】
前記下部ブロックは、
前記接合面を有する底板と、前記第1半周壁部と、前記第2半周壁部と、
を備え、
前記第1半周壁部は、
前記底板のy軸正方向の端部からz軸正方向へと延び出る第1側壁部と、
前記第1側壁部のx軸正方向の端部からy軸負方向へと延び出る第1前壁部と、
前記第1側壁部のx軸負方向の端部からy軸負方向へと延び出る第1後壁部と、
を備え、
前記第2半周壁部は、
前記底板のy軸負方向の端部からz軸正方向へと延び出る第2側壁部と、
前記第2側壁部のx軸正方向の端部からy軸正方向へと延び出る第2前壁部と、
前記第2側壁部のx軸負方向の端部からy軸正方向へと延び出る第2後壁部と、
を備え、
前記第1前壁部と前記第2前壁部とが重なるととともに、前記第1後壁部と前記第2後壁部とが重なり、
前記ロック機構は、前記第1前壁部及び前記第1後壁部と、前記第2前壁部及び前記第2後壁部とにそれぞれ設けられ、
前記上部ブロックは、
z軸正方向に向けられた箇所で前記第2部材に接触する天板と、
前記天板のx軸正方向の端部からz軸負方向へと延び出る第1垂設部と、
前記天板のx軸負方向の端部からz軸負方向へと延び出る第2垂設部と、
前記天板のy軸正方向の端部からz軸負方向へと延び出る第3垂設部と、
前記天板のy軸負方向の端部からz軸負方向へと延び出る第4垂設部と、
を備え、
x軸負方向に向けられた前記突起は、前記第2垂設部のx軸負方向に向けられた面に設けられ、
y軸正方向に向けられた前記突起は、前記第3垂設部のy軸正方向に向けられた面に設けられ、
y軸負方向に向けられた前記突起は、前記第4垂設部のy軸負方向に向けられた面に設けられ、
前記ばね部は、一端が前記底板のx軸正方向の端部に連設され、他端が前記第2垂設部のz軸負方向の端部に連設されて、前記一端と前記他端との間が弾性変形可能に構成されている、
請求項3に記載のコンタクト。
【請求項5】
前記ロック機構は、
前記第1前壁部に設けられた第1爪と、前記第1爪が引っ掛かる、前記第2前壁部に設けられた第1孔とにより形成されるとともに、前記第1後壁部に設けられた第2爪と、前記第2爪が引っ掛かる、前記第2後壁部に設けられた第2孔とにより形成される、
請求項4に記載のコンタクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンタクトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1部材と第2部材とを電気的に接続可能なコンタクトであって、基部、接触部及びばね部を備えたものが記載されている。具体的には、ばね部は、弾性変形することによって接触部をx軸正方向及びz軸正方向へ付勢する状態にある。接触部は、x軸正方向に向けられた摺動部を備えている。基部は、x軸負方向に向けられた被摺動部を備えている。接触部は、ばね部によってx軸正方向へ付勢されることにより、摺動部が被摺動部に対して加圧接触する状態にある。接触部は、摺動部が被摺動部に対して加圧接触する状態を維持したまま、基部に対して相対的にz軸方向へ摺動可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-125479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のコンタクトでは、接触部が基部に対して相対的にz軸方向以外のx軸方向及び/又はy軸方向へ変位した場合、z軸方向のみに変位した場合と比較して、インピーダンスが増加することがあった。これは、x軸方向及び/又はy軸方向への変位によって、コンタクトを構成する各要素の相対位置が変化する、又は/及び(弾性的に)変形することによって、導電経路の電気的接触点(面積)が減少することであると考えられる。
【0005】
本開示は、上部ブロックが下部ブロックに対して相対的にz軸方向以外のx軸方向及び/又はy軸方向へ変位した場合であっても、インピーダンスの増加を抑制することが可能となるコンタクトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示のコンタクトは、第1部材と第2部材とを電気的に接続可能なコンタクトであって、第1部材に対してはんだ付けされる接合面を有する下部ブロックと、第2部材に接触する上部ブロックと、下部ブロックと上部ブロックとの間に設けられ、弾性変形可能に構成されるばね部と、を備え、x軸及びy軸が接合面に平行、かつz軸が接合面に垂直となり、接合面がz軸負方向に向けられる3次元直交座標系を規定した場合に、下部ブロックは、上部ブロックの側面のうちのいずれかの面を除く側面を囲む第1半周壁部と、上部ブロックの側面のうちのいずれかの面に対向する面を除く側面を囲む第2半周壁部とを備え、第1半周壁部と第2半周壁部とにより、上部ブロックの側面全体を囲む周壁を形成し、第1半周壁部及び第2半周壁部にはそれぞれ、周壁が上部ブロックの側面全体を囲んだ状態を保持するためのロック機構が設けられ、ばね部は、弾性変形することによって上部ブロックを、少なくともz軸正方向へ付勢する状態にあり、上部ブロックは、ばね部により、下部ブロックに対して相対的にz軸方向へ変位可能に構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、上部ブロックが下部ブロックに対して相対的にz軸方向以外のx軸方向及び/又はy軸方向へ変位した場合であっても、上部ブロックと下部ブロックとの間で、相対位置が変化する、又は/及び(弾性的に)変形することが抑制されるので、導電経路の電気的接触点(面積)が減少することが抑制され、これにより、上記インピーダンスの増加を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1Aは、本開示の一実施形態に係るコンタクトの平面図である。図1Bは、図1Aのコンタクトを右前上方から見た斜視図である。図1Cは、図1Aのコンタクトを左前上方から見た斜視図である。
図2図2Aは、図1Aのコンタクトに前方向あるいは後方向から力を加えた様子を示す図である。図2Bは、図1Aのコンタクトに右方向あるいは左方向から力を加えた様子を示す図である。
図3図3Aは、本開示の一実施形態に係るコンタクトの平面図である。図3Bは、図3Aの領域Aの部分拡大図である。
図4図4Aは、本開示の一実施形態に係るコンタクトと従来のコンタクトについてインピーダンス測定した測定結果を示す図である。図4Bは、コンタクトの熱伝導効果を測定するための測定器の概略構成を示す図である。図4Cは、図4Bの測定器を用いてコンタクトの熱伝導効果を測定した測定結果を示す図である。
図5図5Aは、従来のコンタクトを右前上方から見た斜視図である。図5Bは、従来のコンタクトを左前上方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
図1A図1Cは、本開示の一実施形態に係るコンタクト1を示している。なお、図面において方向に言及する場合には、図中に示される矢印の方向を用いるものとする。また、上下方向及び左右方向に直交する方向を前後方向という。但し、これらの方向は、コンタクト1を構成する各部の相対的な位置関係を説明するために規定したに過ぎない。したがって、コンタクト1を実際に使用する際に、コンタクト1を向ける方向は、図示例の方向に限らない。例えば、図中に示す上下方向が重力の方向とは一致しない状態でコンタクト1を使用してもかまわない。
【0011】
コンタクト1は、第1部材と第2部材とを電気的に接続可能な部品である。第1部材の例としては、例えば電子回路基板を挙げることができる。この場合、コンタクト1は、電子回路基板が備える導体パターンに対してはんだ付けされる。第2部材の例としては、電子回路基板とは別の導電性部材を挙げることができる。例えば、電子機器が備える金属製ケース、金属製パネル、金属製フレーム、金属めっきが施された各種部品等を挙げることができる。
【0012】
コンタクト1は、下部ブロック10、上部ブロック40及びばね部30により構成されている。本実施形態において、下部ブロック10、上部ブロック40及びばね部30は、金属の薄板(例えば、リフロー処理が施されたすずめっき付きのばね用ベリリウム銅の、厚さ0.15mmの薄板である)によって一体成形されている。下部ブロック10は、第1部材に対してはんだ付けされる部分である。上部ブロック40は、第2部材に接触する部分である。上部ブロック40は、下部ブロック10に対して相対的に変位可能に構成される。ばね部30は、下部ブロック10と上部ブロック40との間に設けられた部分である。ばね部30は、上部ブロック40が第2部材に接触した際に弾性変形し、上部ブロック40を第2部材に向かって付勢する。
【0013】
下部ブロック10は、底板11、第1半周壁部13及び第2半周壁部15を備えている。底板11の下面は、第1部材に対してはんだ付けされる接合面となる。第1半周壁部13は、上部ブロック40の側面の左方に向かう面(第4垂設部45の表面)を除く側面を囲む周壁を構成する。第2半周壁部15は、上部ブロック40の側面の右方に向かう面(第3垂設部44の表面)を除く側面を囲む周壁を構成する。
【0014】
第1半周壁部13は、図1Aに示すように、平面視コ字状をなし、第1側壁部13A、第1前壁部13B及び第1後壁部13Cを備えている。第1側壁部13Aは、底板11の右端部から上方へと延び出る。第1前壁部13Bは、第1側壁部13Aの前端から左方に向かって延び出る。第1後壁部13Cは、第1側壁部13Aの後端から左方に向かって延び出る。第1側壁部13Aには、左右方向に貫通する第1貫通孔13A1が設けられている。また、第1前壁部13B及び第1後壁部13C上にはそれぞれ、ロック機構を構成する爪13B1,13C1が設けられている。
【0015】
第2半周壁部15も、図1Aに示すように、平面視コ字状をなし、第2側壁部15A、第2前壁部15B及び第2後壁部15Cを備えている。第2側壁部15Aは、底板11の左端部から上方へと延び出る。第2前壁部15Bは、第2側壁部15Aの前端から右方に向かって延び出る。第2後壁部15Cは、第2側壁部15Aの後端から右方に向かって延び出る。第2側壁部15Aには、左右方向に貫通する第2貫通孔15A1が設けられている。また、第2前壁部15B及び第2後壁部15Cにはそれぞれ、上記ロック機構を構成する孔15B1,15C1が設けられている。
【0016】
図3A及び図3Bに示すように、第1半周壁部13の第1前壁部13Bの前面と第2半周壁部15の第2前壁部15Bの後面とは、相対して重なり、第1前壁部13Bの前面に設けられた爪13B1が第2前壁部15Bに設けられた孔15B1に嵌まり込んで、ロックされる。同様にして、第1半周壁部13の第1後壁部13Cの後面と第2半周壁部15の第2後壁部15Cの前面とは、相対して重なり、第1後壁部13Cの後面に設けられた爪13C1が第2後壁部15Cに設けられた孔15C1に嵌まり込んで、ロックされる。このようにして、上部ブロック40の側面全体は、第1半周壁部13及び第2半周壁部15によって形成される周壁で囲まれ、その周壁が上部ブロック40の側面全体を囲んだ状態は、ロック機構によって保持される。
【0017】
上部ブロック40は、天板41、第1垂設部42、第2垂設部43、第3垂設部44及び第4垂設部45を備えている。天板41には、上向きに突出する突起41Aが設けられている。突起41A及び天板41の上面の一部が、第2部材に接触する接点となる。第1垂設部42は、天板41の前端部から下方へと延び出る。第2垂設部43は、天板41の後端部から下方へと延び出る。第2垂設部43には、後向きに突出する突起43Aが設けられている。突起43Aは、第1後壁部13Cの前面に接触する接点となる。第3垂設部44は、天板41の右端部から下方へと延び出る。第3垂設部44には、右向きに突出する突起44Aが設けられている。突起44Aは、第1側壁部13Aの左面に接触する接点となる。第4垂設部45は、天板41の左端部から下方へと延び出る。第4垂設部45には、左向きに突出する突起45Aが設けられている。突起45Aは、第2側壁部15Aの右面に接触する接点となる。
【0018】
第3垂設部44の下端には、右方へ突出する第1突出部44Bが設けられている。第1突出部44Bは、第1半周壁部13が有する第1貫通孔13A1に入り込んでいる。第4垂設部45の下端には、左方へ突出する第2突出部45Bが設けられている。第2突出部45Bは、第2半周壁部15が有する第2貫通孔15A1に入り込んでいる。
【0019】
上部ブロック40が上下方向に変位する際、第1突出部44Bの可動範囲は第1貫通孔13A1の範囲内に規制され、第2突出部45Bの可動範囲は第2貫通孔15A1の範囲内に規制される。これにより、上部ブロック40は所定の範囲内で上下及び前後に変位可能となっている。ばね部30は、下端が底板11の前端部に連設され、上端が第1垂設部42の下端部に連設されている。
【0020】
ばね部30は、上部ブロック40を上方及び後方へ付勢している。ばね部30が上部ブロック40を後方へと付勢することにより、第2垂設部43の後側は、第1半周壁部13の第1後壁部13Cの前側を加圧接触する。但し、第2垂設部43には、上述のように後向きに突出する突起43Aが設けられているので、第2垂設部43の後側と第1後壁部13Cの前側とは、突起43Aを介して確実な接触状態になっている。
【0021】
上部ブロック40が上下方向に変位する際、第2垂設部43の突起43Aは、第1後壁部13Cの前面に加圧接触する状態を保持したまま摺動する。さらに、第3垂設部44の突起44Aは、第1側壁部13Aの左面に接触したまま摺動するとともに、第4垂設部45の突起45Aは、第2側壁部15Aの右面に接触したまま摺動する。これは、第1半周壁部13と第2半周壁部15とが、爪13B1,13C1及び孔15B1,15C1からなるロック機構によってロックされることで形成される周壁内に、上部ブロック40が嵌まり込んだ状態で、上部ブロック40が上下方向に変位するからである。
【0022】
上部ブロック40は、上下方向だけでなく、左方向又は右方向及び/又は前方向又は後方向に変位する場合がある。図2Aは、上部ブロック40に対して左方向又は右方向に力が加わった様子を示している。図2A中、矢印A1が左方向に加わった力を示し、矢印A2が右方向に加わった力を示している。また、図2Bは、上部ブロック40に対して前方向又は後方向に力が加わった様子を示している。図2B中、矢印A3が前方向に加わった力を示し、矢印A4が後方向に加わった力を示している。
【0023】
図2Aに示すように、上部ブロック40に対して矢印A1の力が加わると、第4垂設部45の突起45Aが第2半周壁部15の第2側壁部15Aを左方へ押圧する。これにより、第2側壁部15Aは左方へ変位するので、第2半周壁部15の第2前壁部15B及び第2後壁部15Cも左方へ変位する。このとき、第2前壁部15B及び第2後壁部15Cにそれぞれ設けられた孔15B1,15C1も左方へ変位するが、孔15B1,15C1のそれぞれの右端には、爪13B1,13C1が引っ掛かっているので、爪13B1,13C1によって第1半周壁部13全体が左方へ変位する。つまり、第1半周壁部13と第2半周壁部15とで形成される周壁が上部ブロック40の側面全体を囲んだ状態が保持されたまま、左方へ変位する。この結果、突起43A~45Aと第1後壁部13C、第1側壁部13A及び第2側壁部15Aとの接触状態は保持されるので、導電経路を確実に確保することができる。
【0024】
一方、上部ブロック40に対して矢印A2の力が加わると、矢印A1の力が加わった場合とは逆に、爪13B1,13C1のそれぞれが孔15B1,15C1のそれぞれの右端を押圧するため、孔15B1,15C1によって第2半周壁部15全体が右方へ変位する。つまり、第1半周壁部13と第2半周壁部15とで形成される周壁が上部ブロック40の側面全体を囲んだ状態が保持されたまま、右方へ変位する。この結果、突起43A~45Aと第1後壁部13C、第1側壁部13A及び第2側壁部15Aとの接触状態は保持されるので、導電経路を確実に確保することができる。
【0025】
図2Bに示すように、上部ブロック40に対して矢印A3の力が加わると、第1垂設部42の前面が第1半周壁部13の第1前壁部13Bの後面を押圧する。この押圧により、第1前壁部13Bの前面が第2半周壁部15の第2前壁部15Bの後面を押圧する。この結果、第2前壁部15Bは左方へ開こうとし、第1前壁部13Bは右方へ開こうとする。つまり、ハ字状に開こうとする。これにより、第1半周壁部13及び第2半周壁部15に歪みが生じ、応力緩和が生ずる。このとき、爪13B1と孔15B1とのロック状態は保持されるので、突起43A~45Aと第1後壁部13C、第1側壁部13A及び第2側壁部15Aとの接触状態は保持される。したがって、このときでも、導電経路を確実に確保することができる。
【0026】
一方、上部ブロック40に対して矢印A4の力が加わると、矢印A3の力が加わった場合とは逆に、第2垂設部43の後面、つまり突起43Aが第1半周壁部13の第1後壁部13Cの前面を押圧する。この押圧により、第1後壁部13Cの後面が第2半周壁部15の第2後壁部15Cの前面を押圧する。この結果、第2後壁部15Cは左方へ開こうとし、第1後壁部13Cは右方へ開こうとする。つまり、ハ字状に開こうとする。これにより、第1半周壁部13及び第2半周壁部15に歪みが生じ、応力緩和が生ずる。このとき、爪13C1と孔15C1とのロック状態は保持されるので、突起43A~45Aと第1後壁部13C、第1側壁部13A及び第2側壁部15Aとの接触状態は保持される。したがって、このときでも、導電経路を確実に確保することができる。
【0027】
図4Aは、本実施形態のコンタクト1と従来形状のコンタクト100(図5A及び図5B参照)に対して行ったインピーダンス測定の測定結果を示している。インピーダンス測定は、次のようにして行った。すなわち、2枚のステンレス板の間に上記コンタクト1,100を挟み込んで圧縮した。2枚のステンレス板の間にはコンタクト1,100とともに樹脂スペーサを挟み込み、コンタクト1,100の上下方向の寸法が1mmだけ圧縮されたところで、それ以上はコンタクト1,100が圧縮されないようにした。そして、2枚のステンレス板間のインピーダンスを、市販のインピーダンスアナライザーを用いて測定した。
【0028】
図5A及び図5Bは、従来形状のコンタクト100の一例を示している。コンタクト100は、新規形状のコンタクト1、つまり本実施形態のコンタクト1と同様に、下部ブロック110、上部ブロック140及びばね部130により構成されている。下部ブロック110は、コンタクト1と同様に、第1側壁部113及び第2側壁部115を備えているが、コンタクト1と異なり、第1側壁部113の左端部と第2側壁部115の右端部との間には隙間が形成されている。
【0029】
図4Aに戻り、新規形状のコンタクト1では、周波数100MHzで0.64Ω、500MHzで2.94Ωであるのに対して、従来形状のコンタクト100では、周波数100MHzで1.48Ω、500MHzで6.38Ωである。このように、新規形状のコンタクト1は、従来形状のコンタクト100と比較して、インピーダンスが大きく低減することを示す結果となった。
【0030】
図4Bは、コンタクト1の熱伝導効果を測定する測定器300の一例を示している。測定器300は、測定対象のサンプルを載せる下基板302と、下基板302を載せる台座304と、下基板302上のサンプルを挟み込む上基板306と、上基板306を保持しつつ、上下方向に移動させる保持部308とにより、主として構成されている。例えば、下基板302は、ガラスエポキシ基板からなり、上基板306は、アルミプレートからなる。そして、上基板306の表面には、黒PETフィルム307が積載されている。また、下基板302の裏面には、マイクロセラミックヒータ310が設置され、マイクロセラミックヒータ310により下基板302に熱が加えられる。間隙量dは、下基板302の表面と、この表面に対向する上基板306の面との間の距離を意味する。本実施形態では、間隙量dとして、3.5mmを採用している。この間隙量d=3.5mmは、サンプル、つまり新規形状のコンタクト1及び従来形状のコンタクト100の上下方向の寸法がそれぞれ4.5mmであるので、上部ブロック40,140をそれぞれ1mmだけ下方に変位させた状態を示している。
【0031】
図4Cは、マイクロセラミックヒータ310に15.5Vの電圧を印加してから30分経過した後の下基板302と上基板306の各表面温度を測定した結果を示している。図4C中、熱対策部材「無し」とは、基板302上にサンプルが載っていない状態を示している。つまり、下基板302上にサンプルが載っていない状態で、マイクロセラミックヒータ310に15.5Vの電圧を印加し、その印加を30分間継続させると、下基板302の表面温度が106.3°Cになることを示している。
【0032】
熱低減温度は、下基板302上にサンプルが載っている状態における下基板302の表面温度から、下基板302上にサンプルが載っていない状態における下基板302の表面温度を減算した結果であり、サンプルの熱伝導効果を示している。熱低減温度は、低減幅が大きいほど、熱伝導効果が高いことを示している。したがって、新規形状のコンタクト1の熱伝導効果の方が、従来形状のコンタクト100のそれより高いことが測定結果から示された。
【0033】
以上説明したように、本実施形態のコンタクト1は、第1部材と第2部材とを電気的に接続可能なコンタクトであって、第1部材に対してはんだ付けされる接合面を有する下部ブロック10と、第2部材に接触する上部ブロック40と、下部ブロック10と上部ブロック40との間に設けられ、弾性変形可能に構成されるばね部30と、を備えている。
【0034】
下部ブロック10は、上部ブロック40の側面のうちの左方向に向かう面を除く側面を囲む第1半周壁部13と、上部ブロック40の側面のうちの右方向に向かう面を除く側面を囲む第2半周壁部15とを備え、第1半周壁部13と第2半周壁部15とにより、上部ブロック40の側面全体を囲む周壁を形成し、第1半周壁部13及び第2半周壁部にはそれぞれ、周壁が上部ブロック40の側面全体を囲んだ状態を保持するためのロック機構が設けられ、ばね部30は、弾性変形することによって上部ブロック40を、少なくとも上方向へ付勢する状態にあり、上部ブロック40は、ばね部30により、下部ブロック10に対して相対的に上下方向へ変位可能に構成されている。
【0035】
このように、本実施形態のコンタクト1では、上部ブロック40が下部ブロック10に対して相対的に上下方向以外の前後方向及び/又は左右方向へ変位した場合であっても、ロック機構によって周壁が上部ブロック40の側面全体を囲んだ状態は保持され、導電経路が確実に確保されるので、インピーダンスの増加を抑制することが可能となる。つまり、上部ブロック40と下部ブロック10との間で、相対位置が変化する、又は/及び(弾性的に)変形することが抑制されるので、導電経路の電気的接触点(面積)が減少することが抑制され、これにより、上記インピーダンスの増加を抑制することが可能となる。
【0036】
なお、上部ブロック40と下部ブロック10とを溶接等で固定すれば、上記インピーダンスの増加を抑制することが可能となる。しかし、この構成を採った場合、第1部材と第2部材の動きにより、上下方向以外の前後方向及び/又は左右方向の動きが上部ブロック40及び/又は下部ブロック10に加わると、動きを許容する構造的な余裕がないため、歪が発生、蓄積し、最悪の場合、コンタクトが破損する虞がある。
【0037】
ちなみに、本実施形態において、前後方向は、「x軸方向」の一例である。左右方向は、「y軸方向」の一例である。左方向は、「y軸負方向」の一例である。右方向は、「y軸正方向」の一例である。上下方向は、「z軸方向」の一例である。上方向は、「z軸正方向」の一例である。左方向に向かう面は、「いずれかの面」の一例である。右方向に向かう面は、「いずれかの面に対向する面」の一例である。
【0038】
また、ばね部30は、弾性変形することによって上部ブロック40を、上方向に加え、後方向へ付勢する状態にあり、上部ブロック40は、後方向に向けられた突起43Aを備え、上部ブロック40は、ばね部30によって後方向へ付勢されることにより、突起43Aが周壁の前方向へ向かう面に対して加圧接触する状態にあり、上部ブロック40は、突起43Aが周壁の前方向へ向かう面に対して加圧接触する状態を保持したまま、ばね部30により、下部ブロック10に対して相対的に上下方向へ変位可能に構成されている。
【0039】
これにより、導電経路が確実に確保されるので、インピーダンスの増加を抑制することが可能となる。さらに、突起43Aと周壁の前方向へ向かう面とが点接触した状態で、突起43Aは周壁の前方向へ向かう面に対して摺動するので、摺動時に生ずる摩擦の影響を低減することができる。
【0040】
ちなみに、後方向は、「x軸負方向」の一例である。前方向は、「x軸正方向」の一例である。
【0041】
また、上部ブロック40は、右方向及び負方向にそれぞれ向けられた各突起44A,45Aを備え、上部ブロック40は、右方向に向けられた突起44Aが周壁の左方向へ向かう面に対して接触するとともに、左方向に向けられた突起45Aが周壁の右方向へ向かう面に対して接触する状態を保持したまま、ばね部30により、下部ブロック10に対して相対的に上下方向へ変位可能に構成されている。
【0042】
これにより、突起44Aと周壁の左方向へ向かう面とが点接触した状態で、突起44Aは周壁の左方向へ向かう面に対して摺動するとともに、突起45Aと周壁の右方向へ向かう面とが点接触した状態で、突起45Aは周壁の右方向へ向かう面に対して摺動するので、摺動時に生ずる摩擦の影響を低減することができる。
【0043】
また、下部ブロック10は、接合面を有する底板11と、第1半周壁部13と、第2半周壁部15と、を備え、第1半周壁部13は、底板11の右方向の端部から上方向へと延び出る第1側壁部13Aと、第1側壁部13Aの前方向の端部から左方向へと延び出る第1前壁部13Bと、第1側壁部13Aの後方向の端部から左方向へと延び出る第1後壁部13Cと、を備え、第2半周壁部15は、底板11の左方向の端部から上方向へと延び出る第2側壁部15Aと、第2側壁部15Aの前方向の端部から右方向へと延び出る第2前壁部15Bと、第2側壁部15Aの後方向の端部から右方向へと延び出る第2後壁部15Cと、を備え、第1前壁部13Bと第2前壁部15Bとが重なるととともに、第1後壁部13Cと第2後壁部15Cとが重なり、ロック機構は、第1前壁部13B及び第1後壁部13Cと、第2前壁部15B及び第2後壁部15Cとにそれぞれ設けられ、上部ブロック40は、上方向に向けられた箇所で第2部材に接触する天板41と、天板41の前方向の端部から下方向へと延び出る第1垂設部42と、天板41の後方向の端部から下方向へと延び出る第2垂設部43と、天板41の右方向の端部から下方向へと延び出る第3垂設部44と、天板41の左方向の端部から下方向へと延び出る第4垂設部45と、を備え、後方向に向けられた突起43Aは、第2垂設部43の後方向に向けられた面に設けられ、右方向に向けられた突起44Aは、第3垂設部44の右方向に向けられた面に設けられ、左方向に向けられた突起45Aは、第4垂設部45の左方向に向けられた面に設けられ、ばね部30は、一端が底板11の前方向の端部に連設され、他端が第2垂設部43の下方向の端部に連設されて、一端と他端との間が弾性変形可能に構成されている。
【0044】
ちなみに、下方向は、「z軸負方向」の一例である。
【0045】
また、ロック機構は、第1前壁部13Bに設けられた第1爪13B1と、第1爪13B1が引っ掛かる、第2前壁部15Bに設けられた第1孔15B1とにより形成されるとともに、第1後壁部13Cに設けられた第2爪13C1と、第2爪13C1が引っ掛かる、第2後壁部15Cに設けられた第2孔15C1とにより形成される。
【0046】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0047】
(1)本実施形態では、第1垂設部42には、前向きに突出する突起を設けていないが、これに限らず、設けるようにしてもよい。また、突起は、第1~第4垂設部42~45上に設けるのではなく、第1及び第2半周壁部13,15上、つまり、第1半周壁部13と第2半周壁部15とで形成される周壁が上部ブロック40の側面全体を囲んだ状態のときに、第1~第4垂設部42~45の各表面と対向する、第1及び第2半周壁部13,15の各面上に設けるようにしてもよい。
【0048】
(2)本実施形態では、第1及び第2貫通孔13A1,15A1の各下端は、底板11まで到達しているが、これに限らず、従来形状のコンタクト100のように、第1及び第2側壁部13A,15Aの範囲内に設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…コンタクト、10…下部ブロック、11…底板、13…第1半周壁部、15…第2半周壁部、13A…第1側壁部、13B…第1前壁部、13C…第1後壁部、15A…第2側壁部、15B…第2前壁部、15C…第2後壁部、30…ばね部、40…上部ブロック、41…天板、42…第1垂設部、43…第2垂設部、44…第3垂設部、45…第4垂設部、43A,44A,45A…突起、15B1,15C1…孔。
図1
図2
図3
図4
図5