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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118971
(43)【公開日】2022-08-16
(54)【発明の名称】読取装置
(51)【国際特許分類】
   G06K 7/00 20060101AFI20220808BHJP
   G06K 7/10 20060101ALI20220808BHJP
   G06K 7/14 20060101ALI20220808BHJP
   G07B 15/00 20110101ALI20220808BHJP
【FI】
G06K7/00 004
G06K7/10 148
G06K7/10 472
G06K7/14 017
G06K7/10 464
G06K7/10 184
G06K7/10 400
G07B15/00 B
G07B15/00 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021015853
(22)【出願日】2021-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 充広
(74)【代理人】
【識別番号】100181146
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 啓
(72)【発明者】
【氏名】千賀 敦夫
(72)【発明者】
【氏名】川崎 栄嗣
(72)【発明者】
【氏名】大橋 亨司
(72)【発明者】
【氏名】小川 智久
【テーマコード(参考)】
3E127
【Fターム(参考)】
3E127AA03
3E127CA02
3E127DA20
3E127DA30
3E127FA44
3E127FA53
(57)【要約】
【課題】2次元コードと非接触ICとの双方が反応し得る媒体について、的確な読取処理を可能とする読取装置を提供すること。
【解決手段】読取装置100は、2次元コード読取部10と、非接触IC通信部20とを備え、2次元コードが存在し得る範囲であって非接触IC通信部20の通信成立範囲(範囲A1)よりも広い2次元コード存在可能範囲(範囲A2)で、2次元コードが存在し得ることを2次元コード読取部10が検出した場合に、非接触IC通信部20の動作を停止させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元コード読取部と、
非接触IC通信部と
を備え、
2次元コードが存在し得る範囲であって前記非接触IC通信部の通信成立範囲よりも広い2次元コード存在可能範囲で、2次元コードが存在し得ることを前記2次元コード読取部が検出した場合に、前記非接触IC通信部の動作を停止させる、読取装置。
【請求項2】
前記2次元コード読取部による2次元コードの読取成立範囲が、前記非接触IC通信部の通信成立範囲よりも広い、請求項1に記載の読取装置。
【請求項3】
前記2次元コード読取部は、2次元コードの読取りを完了すると、読取完了信号を前記非接触IC通信部に伝送し、
前記非接触IC通信部は、前記読取完了信号を受信すると、自己の動作を停止する、請求項2に記載の読取装置。
【請求項4】
前記2次元コード読取部による2次元コードの存在確認可能範囲が、前記非接触IC通信部の通信成立範囲よりも広い、請求項1~3のいずれか一項に記載の読取装置。
【請求項5】
前記2次元コード読取部は、2次元コードの存在を確認すると、存在確認信号を前記非接触IC通信部に伝送し、
前記非接触IC通信部は、前記存在確認信号を受信すると、自己の動作を停止し、動作を停止した後、前記2次元コード読取部において2次元コードが不検出であるとされた場合、通信を再開する、請求項4に記載の読取装置。
【請求項6】
前記2次元コード読取部において、前記2次元コードの存在確認可能範囲で2次元コードが確認され、かつ、当該2次元コードの接近が検出された場合、前記非接触IC通信部の動作を停止させる、請求項4に記載の読取装置。
【請求項7】
前記2次元コード読取部による2次元コードを表示する表示媒体の存在確認可能範囲が、前記非接触IC読取範囲よりも広い、請求項1~6のいずれか一項に記載の読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次元コードと非接触ICとの双方について、読取りを可能とする読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数種類の非接触券媒体から情報を効率良く読取ることが可能な読取り装置として、例えば、ICカードのような無線通信部を有する第1券媒体と、2次元バーコードを有する第2券媒体とを読み取るもの(特許文献1参照)が知られている。
【0003】
しかしながら、上記特許文献1等に記載された読取り装置では、無線型のICについての媒体と2次元コード型の媒体とのそれぞれについては対処可能であっても、無線型のICと2次元コードとの双方が反応し得る媒体についての対処に関しては、考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-243223号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、2次元コードと非接触ICとの双方が反応し得る媒体について、的確な読取処理を可能とする読取装置を提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するための読取装置は、2次元コード読取部と、非接触IC通信部とを備え、2次元コードが存在し得る範囲であって非接触IC通信部の通信成立範囲よりも広い2次元コード存在可能範囲で、2次元コードが存在し得ることを2次元コード読取部が検出した場合に、非接触IC通信部の動作を停止させる。
【0007】
上記読取装置では、2次元コードが存在し得ることを2次元コード読取部において検出する範囲である2次元コード存在可能範囲が、非接触IC通信部の通信成立範囲よりも広くなっており、この上で、2次元コード読取部による検出がなされると、非接触IC通信部の動作が停止する。これにより、例えば読取装置の利用者が2次元コードによる読取りを行わせたいにもかかわらず、非接触IC通信部が動作してしまう、といったことが回避可能になり、2次元コードと非接触ICとの双方が反応し得る媒体において、適切な読取処理が可能となる。
【0008】
本発明の具体的な側面では、2次元コード読取部による2次元コードの読取成立範囲が、非接触IC通信部の通信成立範囲よりも広い。この場合、2次元コードの読取成立範囲が、通信成立範囲よりも広くなっていることで、2次元コードによる読取りに基づく処理を、非接触IC通信部の動作よりも優先して行うことができる。
【0009】
本発明の別の側面では、2次元コード読取部は、2次元コードの読取りを完了すると、読取完了信号を非接触IC通信部に伝送し、非接触IC通信部は、読取完了信号を受信すると、自己の動作を停止する。この場合、2次元コード読取部における読取り完了に応じて、非接触IC通信部の動作を停止させることができる。
【0010】
本発明のさらに別の側面では、2次元コード読取部による2次元コードの存在確認可能範囲が、非接触IC通信部の通信成立範囲よりも広い。この場合、2次元コードの存在確認可能範囲が、通信成立範囲よりも広くなっていることで、2次元コードの存在確認がなされたことに応じて、非接触IC通信部の動作を停止させる、という態様とすることが可能になる。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、2次元コード読取部は、2次元コードの存在を確認すると、存在確認信号を非接触IC通信部に伝送し、非接触IC通信部は、存在確認信号を受信すると、自己の動作を停止し、動作を停止した後、2次元コード読取部において2次元コードが不検出であるとされた場合、通信を再開する。この場合、2次元コードの存在確認がなされたことに応じて、非接触IC通信部の動作を停止させた後において、2次元コードが不検出であれば、非接触IC通信部による通信を再開させることができるので、2次元コードの読取りを優先させつつも、非接触ICについての読取り動作を的確に保ち、円滑な読取処理が維持可能となる。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、2次元コード読取部において、2次元コードの存在確認可能範囲で2次元コードが確認され、かつ、当該2次元コードの接近が検出された場合、非接触IC通信部の動作を停止させる。この場合、2次元コード読取部において確認された2次元コードが接近していることを、利用者が2次元コードを利用したいという意思を持っていることの判断基準にできる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、2次元コード読取部による2次元コードを表示する表示媒体の存在確認可能範囲が、非接触IC読取範囲よりも広い。この場合、2次元コードを表示する表示媒体(例えばスマートフォン等)の存在確認可能範囲が、通信成立範囲よりも広くなっていることで、当該表示媒体の存在確認がなされたことに応じて、非接触IC通信部の動作を停止させる、という態様とすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係る読取装置に関して説明するための概念図である。
図2】読取装置による読取りの範囲について説明するための概念図である。
図3】2次元コード及び非接触ICの読取りについての処理動作の一例を示す説明図である。
図4】(A)及び(B)は、図3に示す一例の読取処理の動作を説明するためのフローチャートである。
図5】(A)及び(B)は、比較例の読取装置に関して説明するための概念図である。
図6】第2実施形態に係る読取装置による2次元コード及び非接触ICの読取りについての処理動作の一例を示す説明図である。
図7】非接触IC読取の再開(復帰)について説明するための説明図である。
図8】(A)及び(B)は、図6及び図7に示す一例の読取処理の動作を説明するためのフローチャートである。
図9】第3実施形態に係る読取装置による2次元コード及び非接触ICの読取りについての処理動作の一例を示す説明図である。
図10】非接触IC読取の再開(復帰)について説明するための説明図である。
図11】(A)~(C)は、図9及び図10に示す一例の読取処理の動作を説明するためのフローチャートである。
図12】(A)及び(B)は、読取りの対象の接近について説明するための概念的な画像図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔第1実施形態〕
以下、図1等を参照して、第1実施形態に係る読取装置について一例を説明する。図1として示す概念図にあるように、本実施形態に係る読取装置100は、2次元コードの読取りを行う2次元コード読取部10と、非接触ICの読取りを行う非接触IC通信部20と、2次元コード読取部10及び非接触IC通信部20における読取りに関する処理結果を受け取り、受け取った情報に基づく各種処理を行う上位装置50とを備える。読取装置100は、例えば駅の自動改札装置に組み込まれ、改札における利用者USの通過の許否を判断するために用いられる。
【0016】
読取装置100のうち、2次元コード読取部10は、QRコード(登録商標)等の2次元コードを読み取るリーダーとしてのカメラCAと、電子回路等で構成され、カメラCAに接続されてカメラCAから受け付けた信号に基づく処理を行う2次元コード処理部30とを備える。
【0017】
読取装置100のうち、非接触IC通信部20は、Suica(登録商標)等の非接触型のICカードに組み込まれたICチップ等で構成される非接触ICとの通信を行うべく電波を送受信するアンテナATと、電子回路等で構成され、アンテナATに接続されてアンテナATから受け付けた信号に基づく処理を行う非接触IC処理部40とを備える。
【0018】
上位装置50は、電子回路等で構成され、2次元コード読取部10の2次元コード処理部30と、非接触IC通信部20の非接触IC処理部40とに接続され、これらにおける処理結果に基づいて各種処理を行う。例えば、読取装置100が上記のように駅の自動改札装置に組み込まれるものであれば、2次元コード読取部10や非接触IC通信部20で受け付けた情報から通過の許可が可能であるか否かを判断し、判断結果を自動改札装置の開閉動作を制御する制御装置(図示略)に対して判断結果を出力する。つまり、非接触ICと2次元コードのそれぞれの読み取り動作は独立したプロセスによるものとなっており、上位装置50は、2次元コード読取部10と非接触IC通信部20とから個別に情報を受け取っている。
【0019】
以上のような構成により、読取装置100は、2次元コードと非接触ICとの双方について、読取りが可能となっている。特に、図示の一例では、上記各構成のうち、カメラCAとアンテナATとは、1か所に集約されており、この箇所が2次元コードや非接触ICの読取りを行う受付位置PSとして機能している。つまり、利用者USは、受付位置PSに自己が有する2次元コードや非接触ICをかざす、あるいは近づけることで、情報の読取りがなされることになる。
【0020】
ここで、図1に例示するように、利用者USが所持する読取媒体が、例えばスマートフォン等で構成される携帯端末MIである場合、1つの携帯端末MIにおいて、2次元コードの表示機能と、非接触ICの通信機能との双方を有している、という事態が生じ得る。より具体的には、携帯端末MIの表示部DSにおいて2次元コードを表示させた状態では、表示させた2次元コードを2次元コード読取部10において読み取ることで、読取装置100は、読み取った情報に基づき通過の許否等の各種判断が可能となる。また、一方で、携帯端末MIが、モバイルSuica(登録商標)等のように、ICチップCHが内蔵されて自動改札の通過のための非接触IC機能(通信機能)を有するもの等である場合、ICチップCHの情報を非接触IC通信部20において読み取ることでも、読取装置100は、読み取った情報に基づき通過の許否等の各種判断が可能となる。
【0021】
ここで、上記携帯端末MIのように、2次元コードと非接触ICとの双方が反応し得る媒体については、有効な状態で同時に読取りが行われ、結果的に利用者USの意図しない処理がなされてしまうおそれがある。例えば、上記携帯端末MIでの態様では、非接触ICについては、読取装置100のアンテナATに近づけば、無条件に反応する態様となっているのに対して、2次元コードについては、利用者USが自ら携帯端末MIを操作して表示部DSに2次元コードを表示させた状態としておかないと、読取りができない。すなわち、2次元コードを利用する場合は、これを予め表示させるための準備をしておくことが、読取りを読取装置100のカメラCAにおいて行わせるための前提条件となる。したがって、携帯端末MIにおいて2次元コードが表示されている場合には、2次元コードを利用した改札の通過を行いたい、というのが利用者USの意図であると推定される。しかしながら、例えば上記態様において、携帯端末MIと読取装置100との間で2次元コードの認識よりも先に非接触ICの読取通信が成立してしまう可能性もある。本実施形態の読取装置100では、かかる事態を回避し、的確な読取処理を可能とすべく、読取装置100による読取りの範囲について考慮した構成となっている。
【0022】
以下、図2として示す概念図を参照して、読取装置100による読取りの範囲について一例を説明する。図示の一例においては、非接触IC通信部20の通信成立範囲を範囲A1としており、2次元コードが存在し得る範囲である2次元コード存在可能範囲を範囲A2としており、範囲A2は、範囲A1よりも広くなっている。
【0023】
まず、非接触IC通信部20の通信成立範囲(範囲A1)については、非接触IC通信部20と携帯端末MIのICチップCH等の各種非接触ICとが通信可能な範囲を意味しており、これは、例えば図1のアンテナATから発信する電波を適宜調整することで、設定される。NFC(Near Field Communication)すなわち近距離無線通信であれば、最長十数cm程度までの至近距離で無線通信が行われる態様となる。
【0024】
一方、2次元コード存在可能範囲(範囲A2)については、種々の態様が考えられ、例えば、2次元コード読取部10における2次元コードの読取成立範囲が範囲A2であるとする態様が考えられる。2次元コードの読取成立範囲については、2次元コード読取部10によって、例えば携帯端末MIの表示部DSに表示された画像TCとしての2次元コードを読み取ることが可能な範囲を意味しており、これは、例えば図1のカメラCAにおける読取性能等に応じて、設定される。例えば、カメラCAから数十cm程度で2次元コードが読取可能となるようにしておけば、アンテナATから最長十数cm程度となる範囲A1よりも、範囲A2を広くすることができる。
【0025】
2次元コードの読取成立範囲(範囲A2)を、非接触IC通信部の通信成立範囲(範囲A1)よりも広くしておくことで、2次元コードによる読取りに基づく処理を、非接触IC通信部20の動作よりも優先して行うことができる。すなわち、図示の例のように、携帯端末MIが、範囲A1の外側でかつ範囲A2の内側の領域にある場合、読取装置100を構成する2次元コード読取部10と非接触IC通信部20とのうち、2次元コード読取部10のみが、携帯端末MIの存在に対して反応する。
【0026】
なお、2次元コード存在可能範囲(範囲A2)については、一例として示した上記2次元コードの読取成立範囲のほかにも、種々の態様が考えられる。例えば、2次元コード読取部10による2次元コードの存在確認可能範囲を2次元コード存在可能範囲(範囲A2)としてもよい。なお、2次元コードの存在確認可能範囲とは、2次元コード読取部10において2次元コードとして表示されている認識パターンが存在していることがカメラCAにより検出可能となる範囲を意味しており、2次元コードを読み取ることまではできない場合も範囲として含まれ得る。
【0027】
あるいは、2次元コード読取部10による2次元コードを表示する表示媒体の存在確認可能範囲を2次元コード存在可能範囲(範囲A2)とすることも考えられる。具体的には、上記携帯端末MIが読取りの対象となる場合であれば、携帯端末MIの表示部DSが2次元コードを表示する表示媒体であり、2次元コード読取部10において表示部DSが存在していることが検出可能となる範囲が、表示媒体の存在確認可能範囲を意味する。
【0028】
なお、2次元コード存在可能範囲については、上述した2次元コードの読取成立範囲等の各種範囲のうちいずれかの範囲とすることも可能であるが、これらの全体を包含する範囲をもって2次元コード存在可能範囲とすることも考えられる。
【0029】
上記のように、2次元コード存在可能範囲(範囲A2)を、非接触IC通信部20の通信成立範囲(範囲A1)よりも広いものとした上で、読取装置100は、範囲A2において2次元コードが存在し得ることを、2次元コード読取部10が検出した場合に、非接触IC通信部20の動作を停止させる態様となっている。具体的には、図示のように読取りの対象となる携帯端末MIの表示部DSにおいて2次元コードが画像TCとして表示されている場合には、範囲A2の内側であって範囲A1の外側にある携帯端末MIが、非接触IC通信部20の通信成立範囲である範囲A1に到達する前に、非接触IC通信部20による通信がなされないことになる。これにより、例えば読取装置100の利用者USが2次元コードによる読取りを行わせたいにもかかわらず、非接触IC通信部20が動作してしまう、といったことが回避可能になり、スマートフォン等で構成される携帯端末MIのような2次元コードと非接触ICとの双方が反応し得る媒体において、適切な読取処理が可能となる。また、以上について見かたを変えると、2次元コード存在可能範囲を設けることで、2次元コードが存在し得ることを2次元コード読取部が検出した場合に非接触IC通信部の動作を停止させる通信停止範囲が、非接触IC通信部の通信成立範囲よりも広くなるようにしている、と捉えることもできる。
【0030】
以下、図3を参照して、2次元コードの読取成立範囲を、2次元コード存在可能範囲(範囲A2)として捉える場合、すなわち、範囲A2としての2次元コードの読取成立範囲が、非接触IC通信部の通信成立範囲(範囲A1)よりも広い場合について、読取装置100における2次元コード及び非接触ICの読取りについての処理動作の一例を説明する。図示のうち、説明図α1は、読取装置100に携帯端末MIを近づけていく様子を示しており、説明図β1は、携帯端末MIが近づくにつれて、読取装置100の各部において時系列でなされる各種処理について示している。
【0031】
まず、図示において、範囲A1を定めるにあたっての読取装置100の基準位置を、カメラCAやアンテナATを配置した受付位置PSとし、受付位置PSからの距離で、非接触ICの通信成立範囲(範囲A1)等に相当する範囲を規定する。具体的には、受付位置PSの地点を距離0[単位:mm]として、範囲A1すなわち非接触ICの通信成立範囲(距離)を、0~h1[mm]とし、範囲A2すなわち2次元コードの読取成立範囲を0~h2[mm]とする。この場合、距離h1と距離h2との関係は、h1<h2となっている。
【0032】
上記態様の読取装置100に対して、説明図α1に示すように、利用者US(図1参照)が、矢印AAに示す方向について、対象媒体である携帯端末MIをかざす(近づけていく)と、携帯端末MIが距離h2の地点に達した(距離h1の地点には未到達)時に、読取可能範囲が広い2次元コードの読取動作が、非接触ICの読取動作よりも先行して開始される。すなわち、説明図β1に示すように、2次元コード読取部10(又は2次元コード処理部30)による2次元コードの読取動作が、非接触IC通信部20(又は非接触IC処理部40)による動作よりも優先的に処理されることになる。具体的には、携帯端末MIが距離h2から距離h1の間に存在している時間内に、2次元コード読取部10の2次元コード処理部30による2次元コードの読取動作が完了し、処理結果が上位装置50に伝送される。これとともに、説明図β1に示すように、2次元コード読取部10は、2次元コード読取の成立についての情報を、非接触IC通信部20に対して信号(読取完了信号)として伝送する。非接触IC通信部20は、当該信号を受信した時点で、非接触ICの読取通信の動作を停止し、かつ、上位装置50に対する出力動作を併せて停止する。
【0033】
以上をまとめると、本実施形態に係る読取装置100では、2次元コード読取部10が、2次元コードの読取りを完了すると、読取完了信号を非接触IC通信部20に伝送し、非接触IC通信部20は、上記読取完了信号を受信すると、自己の動作を停止する、という態様になっており、これら一連の動作が、携帯端末MIが距離h1の地点に到達する前までになされる。言い換えると、携帯端末MIが距離h1の地点に到達するまでに上記各処理がなされるように、h1からh2までの距離を十分にとる、あるいは、読取装置100における処理速度を十分に速くする等しておくことで、上記のような態様が可能となる。また、これにより、携帯端末MIが距離h1の地点に到達しても、この時点ではすでに非接触IC通信部20は、動作せず、非接触ICの読取りはなされないものとなる。上記一連の動作により、対象媒体としての携帯端末MIからは、確実に2次元コードの情報のみが読取られる。
【0034】
以下、図4(A)及び図4(B)のフローチャートを参照して、図3に示す一例における2次元コード読取部10及び非接触IC通信部20の読取処理の動作について説明する。
【0035】
まず、図4(A)を参照して、2次元コード読取部10による2次元コードの読取処理の動作について説明する。読取装置100による読取動作が開始されると、2次元コード読取部10は、2次元コードの検索及び読取りを開始する(ステップS101)。2次元コード読取部10の2次元コード処理部30は、ステップS101における読取りがなされたか否かを確認し(ステップS102)、読取りがなされていなければ(ステップS102:No)、ステップS101の動作を繰り返す。
【0036】
一方、2次元コード処理部30は、ステップS102において、読取りがなされたことを確認した場合(ステップS102:Yes)、読取完了信号に相当する読み取った結果(処理結果)としての2次元コードの情報を、上位装置50に対して伝送する(ステップS103)。
【0037】
さらに、2次元コード処理部30は、非接触IC通信部20の非接触IC処理部40に対して、読取完了信号に相当する信号として、非接触ICの読取動作に停止を実行させる旨の信号(停止制御信号)を伝送し(ステップS104)、一連の処理を終える。
【0038】
なお、上記のうち、ステップS104における停止制御信号の伝送については、図中において、破線の矢印で示している。
【0039】
次に、図4(B)を参照して、非接触IC通信部20による非接触ICの読取処理の動作について説明する。読取装置100による読取動作が開始されると、非接触IC通信部20は、破線の矢印で示す2次元コード読取部10からの停止制御信号(読取完了信号)があるか否かを確認し(ステップS151)、停止制御信号が無ければ(ステップS151:No)、非接触ICの検索及び読取りを開始する(ステップS152)。非接触IC通信部20の非接触IC処理部40は、ステップS152における読取りがなされたか否かを確認し(ステップS153)、読取りがなされていなければ(ステップS153:No)、ステップS151からの動作を繰り返す。
【0040】
一方、非接触IC処理部40は、ステップS153において、読取りがなされたことを確認した場合(ステップS153:Yes)、読み取った結果(処理結果)としての非接触ICの情報を、上位装置50に対して伝送して(ステップS154)一連の処理を終える。
【0041】
また、非接触IC処理部40は、ステップS151において、2次元コード読取部10からの停止制御信号があった場合(ステップS151:Yes)、自己の動作を停止する、すなわち、非接触ICの読取通信の動作を停止し、これとともに、上位装置50に対する出力動作を停止させ(ステップS155)、非接触ICの読取りを行うことなく、一連の処理を終える。
【0042】
なお、上記2次元コード読取部10又は非接触IC通信部20の読取処理の結果が上位装置50に対して伝送され、さらに、上位装置50における動作(例えば改札における通過の許否判断等)がなされて、読取装置100全体としての読取に関する一連の動作処理が完了すると、読取装置100は、新たな読取動作を開始する。すなわち、2次元コード読取部10は、ステップS101からの動作を再び開始し、非接触IC通信部20は、ステップS151からの動作を再び開始する。
【0043】
以下、図5(A)及び図5(B)に示す比較例の読取装置100Xに関して説明する。図5(A)及び図5(B)は、図1に対応する概念図であり、読取装置100Xは、構成において図1等に示す読取装置100と同様であるが、図2等を参照して説明した2次元コードに関する読取りの範囲と非接触ICに関する読取りの範囲との関係について考慮されていない点において、異なっている。この場合、図5(A)に示すように、読取装置100Xは、2次元コードによる読取のみを行う媒体MEaや、非接触ICによる読取のみを行う媒体MEbについては、対応可能となる。しかし、図5(B)に示すように、携帯端末MIのように、2次元コードと非接触ICとの双方が反応し得る媒体については、2次元コードに関する処理結果としての情報IAと非接触ICに関する処理結果としての情報IBとの双方が、上位装置50に伝送されてしまい、読取以後において適切な処理ができなくなってしまう可能性がある。これに対して、本実施形態に係る読取装置100は、上記のように、2次元コードの読取りの範囲及び非接触ICの読取りの範囲に関して適切に設定するとともに、条件に応じた動作停止を行う態様としていることで、かかる事態を回避可能にしている。
【0044】
なお、本実施形態に係る読取装置100は、例えば図5(A)に示した媒体MEaや媒体MEbについても、的確に処理が可能となっている。例えば、媒体MEaの場合には、2次元コードを検出してこれに対する処理が行われるが、この際、併せて非接触ICの読取りの停止動作もなされることになる。一方、媒体MEbの場合には、2次元コードが検出されないので、非接触ICの読取りの停止はなされることなく、媒体MEbに関する非接触ICの通信(情報の読取り)についての処理がなされることになる。
【0045】
以上のように、本実施形態に係る読取装置100は、2次元コード読取部10と、非接触IC通信部20とを備え、2次元コードが存在し得る範囲であって非接触IC通信部20の通信成立範囲(範囲A1)よりも広い2次元コード存在可能範囲(範囲A2)で、2次元コードが存在し得ることを2次元コード読取部10が検出した場合に、非接触IC通信部20の動作を停止させる。これにより、例えば読取装置100の利用者が2次元コードによる読取りを行わせたいにもかかわらず、非接触IC通信部20が動作してしまう、といったことが回避可能になり、例えばスマートフォン等で構成される携帯端末MIのように、2次元コードと非接触ICとの双方が反応し得る媒体において、適切な読取処理が可能となる。
【0046】
〔第2実施形態〕
以下、図6等を参照しつつ、第2実施形態に係る読取装置100について一例を説明する。本実施形態では、第1実施形態の場合と比較して、2次元コード存在可能範囲(範囲A2)と、一度停止させた非接触IC通信部20の動作を条件によって再開(復帰)させる点とが異なっている。なお、読取装置100の全体構成等については、第1実施形態の場合と同様であるので、全体構成についての詳細な図示や説明を省略し、必要に応じて、適宜他の図面等を援用するものとする。
【0047】
図6は、本実施形態に係る読取装置100による2次元コード及び非接触ICの読取りについての処理動作の一例を示す説明図であり、図3に対応し、説明図α1に対応する説明図α2と、説明図β1に対応する説明図β2とで構成されている。
【0048】
本実施形態では、2次元コード読取部10において、対象の範囲としての2次元コードの存在確認可能範囲を、非接触IC通信部20の通信成立範囲(範囲A1)よりも広い2次元コード存在可能範囲(範囲A2)としている。すなわち、画像TC(図2参照)として示されるような2次元コードの形状や模様等で構成される認識パターンを、2次元コード読取部10のカメラCAで捉えられる範囲を、2次元コードの存在確認可能範囲(範囲A2)としている。なお、2次元コードの存在確認可能範囲は、既述のように、2次元コードとして表示されている認識パターンが存在していることが検出可能となる範囲を意味し、2次元コードの読取成立範囲よりも広い範囲となる。
【0049】
図6のうち、説明図α2を参照して、より詳細に説明すると、図示の一例では、受付位置PSの地点を距離0[単位:mm]として、範囲A1すなわち非接触ICの通信成立範囲(距離)を、0~h1[mm]としており、2次元コードの読取成立範囲を0~h2[mm]としている。さらに、範囲A2すなわち2次元コードの存在確認可能範囲を0~h3[mm]としている。この場合、距離h1と距離h2と距離h3との関係は、h1<h2<h3となっている。
【0050】
上記態様の読取装置100に対して、説明図α2に示すように、利用者US(図1参照)が、矢印AAに示す方向について、対象媒体である携帯端末MIをかざす(近づけていく)と、携帯端末MIが距離h3の地点に達した(距離h1,h2の地点には未到達)時に、読取可能範囲が広い2次元コードの存在確認動作が、非接触ICの読取動作よりも先行して開始される。すなわち、説明図β2に示すように、2次元コード読取部10(又は2次元コード処理部30)による2次元コードの認識パターンを基にした2次元コードの存在検出が、非接触IC通信部20(又は非接触IC処理部40)による動作よりも優先的に処理されることになる。具体的には、携帯端末MIが距離h3から距離h2の間に存在している時間内に、2次元コードの存在検出の成立についての情報を、非接触IC通信部20に対して存在検出信号(存在確認信号)として伝送する。非接触IC通信部20は、当該信号を受信した時点で、非接触ICの読取通信の動作を停止し、かつ、上位装置50に対する出力動作を併せて停止する。
【0051】
その後、携帯端末MIがさらに矢印AAの方向に進んで距離h2の地点に到達すると、2次元コード読取部10において、2次元コードの読取動作が開始され、2次元コードの読取動作が完了すると、処理結果が上位装置50に伝送されるとともに、2次元コード読取の成立についての情報としての読取完了信号が非接触IC通信部20に対して伝送される。
【0052】
さらに、本実施形態では、上記存在検出信号(存在確認信号)の伝送に伴う非接触IC通信部20の動作停止後において、一定条件を満たした場合には、非接触IC通信部20の動作を再開(復帰)させる態様となっている。
【0053】
ここでは、一例として、上記非接触IC通信部20の動作停止後に、2次元コード読取部10において、2次元コードが存在不検出となった場合、すなわち2次元コードの認識パターンの検出が継続されず、ロストした場合に、非接触IC通信部20の動作を再開(復帰)させる。より具体的には、図6の説明図β2に対応する図7の説明図γ1,γ2に例示するように、例えば、説明図γ1に示す時間T1において、2次元コード読取部10から非接触IC通信部20に対して存在検出信号が伝送された後、説明図γ2に示す時間T2(>T1)において、2次元コード読取部10での認識パターンが不検出となると、2次元コード読取部10は、その旨の信号(存在不検出信号)を、非接触IC通信部20に対して伝送する。非接触IC通信部20は、当該信号を受信した時点で、非接触ICの読取通信の動作を再開し、かつ、上位装置50(図6参照)に対する出力動作を併せて再開することで、動作の復帰が図られる。
【0054】
以上をまとめると、本実施形態に係る読取装置100では、2次元コードの存在を確認すると、存在確認信号(存在検出信号)を非接触IC通信部20に伝送し、非接触IC通信部20は、存在確認信号を受信すると、自己の通信動作を停止する。ただし、非接触IC通信部20は、通信動作を停止した後、2次元コード読取部10において2次元コードが不検出であるとされた場合、つまり、上記一例での2次元コード読取部10から存在不検出信号が伝送された場合、通信を再開する。すなわち、再び、非接触IC通信部20は、非接触ICの読取通信を再開するとともに、上位装置50に対する出力動作を併せて再開する。
【0055】
以下、図8(A)及び図8(B)のフローチャートを参照して、図6及び図7に示す一例における2次元コード読取部10及び非接触IC通信部20の読取処理の動作について説明する。
【0056】
まず、図8(A)を参照して、2次元コード読取部10による2次元コードの読取処理の動作について説明する。読取装置100による読取動作が開始されると、2次元コード読取部10は、2次元コードの検索を開始する(ステップS201)。2次元コード読取部10の2次元コード処理部30は、ステップS201における検索から2次元コードの認識パターンが検出されたか否かを確認し(ステップS202)、検出がなされていなければ(ステップS202:No)、ステップS201の動作を繰り返す。
【0057】
一方、2次元コード処理部30は、ステップS202において、認識パターンの検出がなされたことを確認した場合(ステップS202:Yes)、非接触IC通信部20の非接触IC処理部40に対して、存在検出信号(存在確認信号)に相当する信号として、非接触ICの読取動作に停止を実行させる旨の信号(停止制御信号)を伝送する(ステップS203)。
【0058】
なお、上記のうち、ステップS203における停止制御信号の伝送については、図中において、破線の矢印で示している。
【0059】
認識パターンの検出がなされる(つまり、携帯端末MIが距離h3に到達する。)と、2次元コード読取部10の2次元コード処理部30は、2次元コードの読取りを開始する(ステップS204)。ここで、2次元コード読取部10は、認識パターンが不検出となったか否かを確認しつつ(ステップS205)、ステップS204における読取りがなされたか否かを確認する(ステップS206)。すなわち、ステップS205において、認識パターンが検出された状態が継続していれば(ステップS205:No)、さらに、ステップS206でステップS204における読取りがなされたか否かを確認し、読取りがなされていなければ(ステップS206:No)、つまり、携帯端末MIが距離h2に到達していなければ、ステップS204からの動作を繰り返す。
【0060】
一方、ステップS205において、認識パターンが不検出となった場合(ステップS205:Yes)、2次元コード処理部30は、非接触IC通信部20における通信を再開させる処理を行う(ステップS207)。すなわち、図7を参照して説明したように、2次元コード処理部30は、非接触IC通信部20の非接触IC処理部40に対して、存在不検出信号(通信再開信号あるいは停止解除信号)を伝送する。
【0061】
なお、上記のうち、ステップS207における存在不検出信号(通信再開信号)の伝送については、図中において、破線の矢印で示している。
【0062】
また、ステップS207の処理がなされた場合、すなわち2次元コードの認識パターンの検出が継続されずロストした場合、2次元コード読取部10は、再びステップS201からの動作を開始する。
【0063】
一方、ステップS206において、2次元コードの読取りがなされたことを確認した場合(ステップS206:Yes)、すなわち、2次元コード読取部10が2次元コードの認識パターンをロストすることなく携帯端末MIが距離h2に到達し、2次元コード読取部10において2次元コードの読取りが成立した場合、2次元コード読取部10は、読取完了信号に相当する読み取った結果(処理結果)としての2次元コードの情報を、上位装置50に対して伝送する(ステップS208)。
【0064】
さらに、2次元コード処理部30は、非接触IC通信部20の非接触IC処理部40に対して、読取完了信号に相当する信号として、非接触ICの読取動作に停止を実行させる旨の信号(停止制御信号)を伝送し(ステップS209)、一連の処理を終える。
【0065】
なお、上記のうち、ステップS209における読取完了信号(停止制御信号)の伝送については、図中において、破線の矢印で示している。
【0066】
次に、図8(B)を参照して、非接触IC通信部20による非接触ICの読取処理の動作について説明する。読取装置100による読取動作が開始されると、非接触IC通信部20は、破線の矢印で示す2次元コード読取部10からの停止制御信号(存在検出信号)があるか否かを確認する(ステップS251)。すなわち、2次元コード処理部30において2次元コードの認識パターンの検出がなされたことに伴う存在検出信号(存在確認信号)の伝送があったか否かを確認する。
【0067】
ステップS251において、停止制御信号が無ければ(ステップS251:No)、非接触IC通信部20は、非接触ICの検索及び読取りを開始する(ステップS252)。非接触IC通信部20の非接触IC処理部40は、ステップS252における読取りがなされたか否かを確認し(ステップS253)、読取りがなされていなければ(ステップS253:No)、ステップS251からの動作を繰り返す。
【0068】
一方、非接触IC処理部40は、ステップS253において、読取りがなされたことを確認した場合(ステップS253:Yes)、読み取った結果(処理結果)としての非接触ICの情報を、上位装置50に対して伝送して(ステップS254)一連の処理を終える。
【0069】
また、非接触IC処理部40は、ステップS251において、2次元コード読取部10からの停止制御信号があった場合(ステップS251:Yes)、自己の通信動作を停止する、すなわち、非接触ICの読取通信の動作を停止し、これとともに、上位装置50に対する出力動作を停止させ(ステップS255)、通信再開信号(停止解除信号)があるか否か、すなわち2次元コード読取部10からの存在不検出信号があるか否かを確認する(ステップS256)。見方を変えると、ステップS255は、通信再開信号が確認されるまでの一時的な通信動作の停止と捉えることができる。
【0070】
ステップS256において、通信再開信号があった場合(ステップS256:Yes)、非接触IC処理部40は、非接触IC通信部20による非接触ICの読取通信及び上位装置50に対する出力動作を再開する、すなわち復帰動作を行う(ステップS257)。
【0071】
一方、ステップS256において、通信再開信号が無かった場合(ステップS256:No)、非接触IC処理部40は、さらに、2次元コード読取部10からの読取完了信号に対応する停止制御信号の伝送を待って(ステップS258)、当該信号の伝送を受けると(ステップS258:Yes)、自己の動作を停止する、すなわち、非接触ICの読取通信の動作を停止し、これとともに、上位装置50に対する出力動作を停止させ(ステップS259)、非接触ICの読取りを行うことなく、一連の処理を終える。
【0072】
なお、ステップS255が、一時的な通信動作の停止と捉えられるのに対して、ステップS259は、一連の動作の完全な終了の一態様と捉えることができる。また、ステップS256における確認処理については、例えば携帯端末MIが距離h3から距離h2に到達するまでの時間等を考慮して、適宜時間的な幅を設ける等、種々の態様とすることができる。
【0073】
上記2次元コード読取部10又は非接触IC通信部20の読取処理の結果が上位装置50に対して伝送され、さらに、上位装置50における動作(例えば改札における通過の許否判断等)がなされて、読取装置100全体としての読取に関する一連の動作処理が完了すると、読取装置100は、新たな読取動作を開始する。すなわち、2次元コード読取部10は、ステップS201からの動作を再び開始し、非接触IC通信部20は、ステップS251からの動作を再び開始する。
【0074】
本実施形態においても、読取装置100は、2次元コードと非接触ICとの双方が反応し得る媒体において、適切な読取処理が可能となる。特に本実施形態では、2次元コードの存在確認可能範囲を、2次元コード存在可能範囲(範囲A2)としていることで、2次元コードの存在確認がなされたことに応じて、非接触IC通信部20の動作を停止させる、という態様とすることが可能になっている。さらに、本実施形態では、非接触IC通信部20の動作を停止した後、2次元コード読取部10において2次元コードが不検出であるとされた場合、通信を再開することで、2次元コードの読取りを優先させつつも、非接触ICについての読取り動作を的確に保ち、円滑な読取処理が維持可能となっている。
【0075】
〔第3実施形態〕
以下、図9等を参照しつつ、第3実施形態に係る読取装置100について一例を説明する。本実施形態では、第1実施形態等の場合と比較して、表示媒体の存在確認を行う点が異なっており、これに伴って、2次元コード存在可能範囲(範囲A2)が異なっており、その後の処理も異なっている。ただし、読取装置100の全体構成等については、表示媒体の存在確認を行うための画像処理を行う構成となっていることを除いて、第1実施形態の場合と同様であるので、全体構成についての詳細な図示や説明を省略し、必要に応じて、適宜他の図面等を援用するものとする。
【0076】
図9は、本実施形態に係る読取装置による2次元コード及び非接触ICの読取りについての処理動作の一例を示す説明図であり、図3等に対応し、説明図α1等に対応する説明図α3と、説明図β1等に対応する説明図β3とで構成されている。
【0077】
本実施形態では、2次元コード読取部10において、2次元コードの存在確認可能範囲を、非接触IC通信部20の通信成立範囲(範囲A1)よりも広い2次元コードを表示する表示媒体の存在確認可能範囲(範囲A2)としている。すなわち、2次元コード読取部10は、検出対象の範囲としての範囲A2を、2次元コードを表示する表示媒体としての携帯端末MIの表示部DS(図2等参照)が検出可能となる範囲としている。なお、2次元コードを表示する表示媒体の存在確認可能範囲は、2次元コードの読取成立範囲よりも広い範囲となる。
【0078】
図9のうち、説明図α3を参照して、より詳細に説明すると、図示の一例では、受付位置PSの地点を距離0[単位:mm]として、範囲A1すなわち非接触ICの通信成立範囲(距離)を、0~h1[mm]としており、2次元コードの読取成立範囲を0~h2[mm]としている。さらに、範囲A2すなわち2次元コードを表示する表示媒体の存在確認可能範囲を0~h4[mm]としている。この場合、距離h1と距離h2と距離h4との関係は、h1<h2<h4となっている。
【0079】
また、図示のように、読取装置100のうち、2次元コード読取部10は、カメラCAと、2次元コード処理部30とに加え、画像処理部60を備える。画像処理部60は、電子回路等で構成され、カメラCAで取得される画像情報を解析する。特に、ここでは、表示媒体としての携帯端末MIの表示部DS(図2等参照)について抽出すべく各種処理を行う。ここでの一例では、表示部DSが発光体である、つまり、表示部DSが発光している面状のものであることから、2次元コード読取部10は、画像処理部60での画像処理の結果から発光する位置や範囲、大きさ等の情報を抽出することで、表示媒体である表示部DSの存在確認を可能にしている。
【0080】
上記態様の読取装置100に対して、説明図α3に示すように、利用者US(図1参照)が、矢印AAに示す方向について、対象媒体である携帯端末MIをかざす(近づけていく)と、携帯端末MIが距離h4の地点に達した(距離h1,h2の地点には未到達)時に、読取可能範囲が広い2次元コードを表示する表示媒体の存在確認動作が、非接触ICの読取動作よりも先行して開始される。すなわち、説明図β3に示すように、2次元コード読取部10による画像処理(発光体検出)を基にした2次元コードを表示する表示媒体の存在検出が、非接触IC通信部20(又は非接触IC処理部40)による動作よりも優先的に処理されることになる。具体的には、携帯端末MIが距離h4から距離h2の間に存在している時間内に、2次元コードを表示する表示媒体の存在検出の成立についての情報を、2次元コード読取部10の画像処理部60から非接触IC通信部20に対して存在検出信号(存在確認信号)として伝送する。非接触IC通信部20は、当該信号を受信した時点で、非接触ICの読取通信の動作を停止し、かつ、上位装置50に対する出力動作を併せて停止する。
【0081】
その後、携帯端末MIがさらに矢印AAの方向に進んで距離h2の地点に到達すると、2次元コード読取部10の2次元コード処理部30において、2次元コードの読取動作が開始され、2次元コードの読取動作が完了すると、処理結果が上位装置50に伝送されるとともに、2次元コード読取の成立についての情報としての読取完了信号が非接触IC通信部20に対して伝送される。
【0082】
さらに、本実施形態においても、第2実施形態の場合と同様、上記存在検出信号(存在確認信号)の伝送に伴う非接触IC通信部20の動作停止後において、一定条件を満たした場合には、非接触IC通信部20の動作を再開(復帰)させる態様となっている。すなわち、図9の説明図β3に対応する図10の説明図δ1,δ2に例示するように、時間T1において、2次元コード読取部10から非接触IC通信部20に対して存在検出信号が伝送された後、説明図δ2に示す時間T2(>T1)において、2次元コード読取部10の画像処理部60での発光体が不検出となると、画像処理部60は、その旨の信号(存在不検出信号)を、非接触IC処理部40に対して伝送する。非接触IC通信部20は、当該信号を受信した時点で、非接触ICの読取通信の動作を再開し、かつ、上位装置50(図9参照)に対する出力動作を併せて再開することで、動作の復帰が図られる。
【0083】
以上をまとめると、本実施形態に係る読取装置100では、2次元コードを表示する表示媒体の存在を確認すると、存在確認信号(存在検出信号)を非接触IC通信部20に伝送し、非接触IC通信部20は、存在確認信号を受信すると、自己の通信動作を停止する。ただし、非接触IC通信部20は、通信動作を停止した後、2次元コード読取部10において表示媒体が不存在であることに相当する発光体が不検出であるとされた場合、つまり、上記一例での2次元コード読取部10から存在不検出信号が伝送された場合、通信を再開する。すなわち、再び、非接触IC通信部20は、非接触ICの読取通信を再開するとともに、上位装置50に対する出力動作を併せて再開する。
【0084】
以下、図11(A)、図11(B)及び図11(C)のフローチャートを参照して、図9及び図10に示す一例における2次元コード読取部10及び非接触IC通信部20の読取処理の動作について説明する。
【0085】
ここでは、2次元コード読取部10のうち、2次元コード処理部30は、2次元コードの読取動作を行い、2次元コードの読取動作が完了すると、処理結果を上位装置50に伝送するとともに、2次元コード読取の成立についての情報としての読取完了信号を非接触IC通信部20に対して伝送するものとなっている。一方、2次元コード読取部10のうち、画像処理部60は、2次元コードを表示する表示媒体の存在確認可能範囲(範囲A2)において、当該表示媒体が存在するか否かを検出し、検出結果(存在検出信号及び存在不検出信号)を、非接触IC通信部20に対して伝送するものとなっている。
【0086】
まず、図11(A)を参照して、2次元コード読取部10の2次元コード処理部30による2次元コードの読取処理の動作について説明する。読取装置100による読取動作が開始されると、2次元コード処理部30は、2次元コードの検索及び読取りを開始し(ステップS301)、ステップS301における読取りがなされていなければ(ステップS302:No)、ステップS301の動作を繰り返す。一方、読取りがなされたことを確認した場合(ステップS302:Yes)、2次元コード処理部30は、読取完了信号に相当する読み取った結果(処理結果)としての2次元コードの情報を、上位装置50に対して伝送する一方(ステップS303)、非接触IC通信部20の非接触IC処理部40に対して、読取完了信号に相当する信号として、非接触ICの読取動作に停止を実行させる旨の信号(停止制御信号)を伝送し(ステップS304)、一連の処理を終える。
【0087】
なお、上記のうち、ステップS304における停止制御信号の伝送については、図中において、破線の矢印で示している。
【0088】
次に、図11(B)を参照して、2次元コード読取部10の画像処理部60による画像解析に関する処理の動作について説明する。
【0089】
読取装置100による読取動作が開始されると、画像処理部60は、2次元コードを表示する表示媒体の存在確認する動作に相当するものとして、自発光物体の検索を開始する(ステップS331)。画像処理部60は、ステップS331における検索から自発光物体の画像が検出されたか否かを確認し(ステップS332)、検出がなされていなければ(ステップS332:No)、ステップS331の動作を繰り返す。
【0090】
一方、画像処理部60は、ステップS332において、自発光物体の検出がなされたことを確認した場合(ステップS332:Yes)、非接触IC通信部20の非接触IC処理部40に対して、表示媒体の存在検出信号(存在確認信号)に相当する信号として、非接触ICの読取動作に停止を実行させる旨の信号(停止制御信号)を伝送する(ステップS333)。
【0091】
なお、上記のうち、ステップS333における停止制御信号の伝送については、図中において、破線の矢印で示している。
【0092】
自発光物体の検出がなされる(つまり、携帯端末MIが距離h4に到達する。)と、画像処理部60は、これの追跡を開始する(ステップS334)。つまり、画像処理部60は、表示媒体が不検出となったか否かの確認(ステップS335)を継続し、表示媒体が不検出となった場合(ステップS335:Yes)、非接触IC通信部20における通信を再開させる処理を行う(ステップS336)。すなわち、図10を参照して説明したように、画像処理部60は、非接触IC通信部20の非接触IC処理部40に対して、存在不検出信号(通信再開信号あるいは停止解除信号)を伝送する。
【0093】
なお、上記のうち、ステップS336における存在不検出信号(通信再開信号)の伝送については、図中において、破線の矢印で示している。
【0094】
また、ステップS336の処理がなされた場合、すなわち表示媒体の検出が継続されずロストした場合、画像処理部60は、再びステップS331からの動作を開始する。
【0095】
最後に、図11(C)を参照して、非接触IC通信部20による非接触ICの読取処理の動作について簡単に説明する。図11(C)に示す非接触IC通信部20の動作は、図8(B)に示した動作と同様となっている。すなわち、図11(C)における各ステップS351~S359は、図8(B)における各ステップS251~S259にそれぞれ対応する。ただし、ステップS351における存在検出信号(存在確認信号)の確認及びステップS356における通信再開信号(停止解除信号)の確認に際して、伝送元が2次元コード読取部10の画像処理部60である点において、図8(B)のステップS251及びステップS256の場合と異なっている。なお、ステップS358における読取完了信号に対応する停止制御信号の伝送については、図8(B)のステップS258と同様、2次元コード読取部10の2次元コード処理部30から伝送される。
【0096】
本実施形態においても、読取装置100は、2次元コードと非接触ICとの双方が反応し得る媒体において、適切な読取処理が可能となる。特に本実施形態では、2次元コードを表示する表示媒体の存在確認可能範囲を、2次元コード存在可能範囲(範囲A2)としていることで、2次元コードを表示する表示媒体の存在確認がなされたことに応じて、非接触IC通信部20の動作を停止させる、という態様とすることが可能になっている。さらに、本実施形態では、非接触IC通信部20の動作を停止した後、2次元コード読取部10の画像処理部60において2次元コードを表示する表示媒体が不検出であるとされた場合、通信を再開することで、2次元コードの読取りを優先させつつも、非接触ICについての読取り動作を的確に保ち、円滑な読取処理が維持可能となっている。
【0097】
なお、上記のうち、図9に示す一例では、1つのカメラCAからの画像情報によって、表示媒体の存在確認と2次元コードの読取りとの双方を行っているが、これに限らず、表示媒体の存在確認を行なうためのカメラが、2次元コードを読み取るためのカメラとは別体であってもよい。
【0098】
〔その他〕
この発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0099】
まず、上記態様において、さらに、2次元コードや2次元コードを表示する表示媒体の接近を検出することを考慮してもよい。例えば、カメラCAにより2次元コードやその表示部の画像を捉え、その変化を捉えることが考えられる。具体的には、図12(A)に例示するように、2次元コードの画像TCについて、時間の経過とともに、画像TC1から画像TC2へと大きくなっていくことを検出することで、2次元コードが近づいていることが把握できる。すなわち、利用者が、2次元コードを、読取装置100に近づけてかざそうとしていると捉えることができる。同様に、図12(B)に例示するように、表示媒体としての表示部DSについての画像DS1,DS2の変化から、表示媒体の接近を捉えることも考えられる。上述してきた2次元コードの存在検出と合わせて、このように、2次元コードが読取装置100に、接近していることを認識する処理を加えそれを条件とすることで、より的確な判断処理が可能となる。
【0100】
すなわち、以上の場合に、例えば、2次元コード読取部10において、2次元コードの存在可能範囲(2次元コードの存在確認可能範囲や2次元コードを表示する表示媒体の存在確認可能範囲)で2次元コード等が確認され、その上で、さらに、上述のようにして、当該2次元コード等の接近が検出された場合に、非接触IC通信部20の動作を停止させるという態様とすることが考えられる。この場合、2次元コード読取部10において確認された2次元コード等が接近していることをもって、利用者が2次元コードを利用したいという意思を持っていることの判断基準とすることができる。
【0101】
また、上記では、読取装置100を駅の自動改札装置に組み込む場合について説明しているが、読取装置100は、これに限らず、イベント会場の出入り口等、種々のものに適用可能である。
【0102】
また、上記各実施形態について、適宜組み合わせた態様とすることも考えられる。
【0103】
また、範囲A1,A2の広さ、あるいは、距離h1~h4の値については、種々の者が考えられ、読取の速度や使用態様等に応じて、種々の設定が可能である。
【符号の説明】
【0104】
10…2次元コード読取部、20…非接触IC通信部、30…2次元コード処理部、40…非接触IC処理部、50…上位装置、60…画像処理部、100…読取装置、100X…読取装置、A1,A2…範囲、AA…矢印、AT…アンテナ、CA…カメラ、CH…ICチップ、DS…表示部、DS1,DS2…画像、IA,IB…情報、MEa,MEb…媒体、MI…携帯端末、PS…受付位置、T1,T2…時間、TC,TC1,TC2…画像、US…利用者、h1-h4…距離、α1-α3,β1-β3,γ1,γ2,δ1,δ2…説明図
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図12