(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119013
(43)【公開日】2022-08-16
(54)【発明の名称】照明用器具及び照明装置
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20220808BHJP
F21V 9/08 20180101ALI20220808BHJP
F21V 9/12 20060101ALI20220808BHJP
F21V 9/40 20180101ALI20220808BHJP
F21V 23/00 20150101ALI20220808BHJP
H01L 33/58 20100101ALI20220808BHJP
F21Y 101/00 20160101ALN20220808BHJP
F21Y 103/00 20160101ALN20220808BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20220808BHJP
【FI】
F21S2/00 670
F21V9/08 400
F21V9/12
F21V9/40 400
F21V23/00 140
H01L33/58
F21Y101:00 100
F21Y103:00
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021015935
(22)【出願日】2021-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】神崎 武彦
(72)【発明者】
【氏名】矢野 雄一
(72)【発明者】
【氏名】浅野 由希子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大倫
【テーマコード(参考)】
3K014
5F142
【Fターム(参考)】
3K014AA01
5F142CD02
5F142DA12
5F142DB17
(57)【要約】
【課題】照明装置の表現機能を向上させる。
【解決手段】照明装置10は、LED素子22から照射される光の光路を塞ぐように配置され、DEA32により構成される透光性の可動膜31と、DEA32に電圧を印加する駆動制御部35とを備えている。可動膜31におけるLED素子22から照射される光が透過する光透過部32aは、電圧印加時に、相対的に厚さが大きく変化する部分A2と厚さが小さく変化する部分A1とを形成可能に構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から照射される光の光路上に配置されて、光源から照射される光に変化を与える照明用器具であって、
前記光路を塞ぐように配置され、印加電圧に応じて面方向及び厚さ方向に伸縮するシート状の誘電エラストマーアクチュエータにより構成される透光性の可動膜と、
前記誘電エラストマーアクチュエータに電圧を印加する駆動制御部とを備え、
前記可動膜における前記光が透過する光透過部は、電圧印加時に、相対的に厚さが大きく変化する部分と厚さが変化しない又は小さく変化する部分とを形成可能に構成されていることを特徴とする照明用器具。
【請求項2】
前記光路における前記可動膜の下流側に配置され、前記可動膜を透過した透過光に陰影による模様を付与する陰影部材を備えている請求項1に記載の照明用器具。
【請求項3】
前記陰影部材は、前記可動膜の動作に基づいて可動膜上を動く可動体である請求項2に記載の照明用器具。
【請求項4】
前記可動膜を底面とする容器部を備え、
前記可動体は、前記容器部に収容される液体である請求項3に記載の照明用器具。
【請求項5】
前記可動膜は、前記誘電エラストマーアクチュエータに対する前記液体の付着を抑制する防水層を備える請求項4に記載の照明用器具。
【請求項6】
前記誘電エラストマーアクチュエータは、誘電エラストマーからなる誘電層と、導電エラストマーからなり、前記誘電層を挟む複数の電極層とを備え、
前記電極層は、透光性の異なる2種類以上の電極層を含む請求項1~5のいずれか一項に記載の照明用器具。
【請求項7】
前記光透過部には、透光性の高い高透光領域と、高透光領域よりも透光性の低い低透光領域とが設けられている請求項1~6のいずれか一項に記載の照明用器具。
【請求項8】
光源と、請求項1~7のいずれか一項に記載の照明用器具とを備える照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明用器具及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、光源と、光源上に設けられた液体アクチュエータとを備え、液体アクチュエータの動作に基づいて任意の色温度を実現する光照射装置を開示する。液体アクチュエータは、波長変換粒子が均一分散された液体層を備え、電圧を印加することにより、液体層の厚さが変化するように構成されている。液体層が厚くなるように液体アクチュエータを動作させると、光が液体層を透過する距離が長くなる。これにより、より多くの光が波長変換粒子により波長変換されて、光照明装置から出射する光は、より低色温度の領域の光へと変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の光照射装置から照射される光は、動きのない単調な光である。そのため、特許文献1の光照射装置は、照射される光の表現機能の観点において改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する照明用器具は、光源から照射される光の光路上に配置されて、光源から照射される光に変化を与える照明用器具であって、前記光路を塞ぐように配置され、印加電圧に応じて面方向及び厚さ方向に伸縮するシート状の誘電エラストマーアクチュエータにより構成される透光性の可動膜と、前記誘電エラストマーアクチュエータに電圧を印加する駆動制御部とを備え、前記可動膜における前記光が透過する光透過部は、電圧印加時に、相対的に厚さが大きく変化する部分と厚さが変化しない又は小さく変化する部分とを形成可能に構成されている。
【0006】
上記構成によれば、電圧印加時において、可動膜の光透過部の伸縮に基づいて光透過部に相対的に薄い部分と厚い部分とが形成されるとともに、薄い部分と厚い部分との差が連続的に変化する。具体的には、電圧印加が大きくなるにしたがって、薄い部分と厚い部分との差が大きくなる。光透過部における相対的に厚い部分を透過した透過光は、相対的に薄い部分を透過した透過光よりも暗い光になる。そのため、電圧印加時には、光透過部における部分な厚さの違いに基づいて透過光に光の濃淡が生じるとともに、その濃淡が連続的に変化する。したがって、光透過部を透過した光をスクリーンなどの被照射部に投射した場合に、被照射部に投射された透過光の中に、光の濃淡に基づく陰影が付与されるとともに、陰影の強度が連続的に変化する。よって、上記構成の照明用器具は、被照射部に投射された透過光の中に連続的に形を変える模様を形成することのできる点において表現機能に優れている。
【0007】
上記照明用器具において、前記光路における前記可動膜の下流側に配置され、前記可動膜を透過した透過光に陰影による模様を付与する陰影部材を備えていることが好ましい。
上記構成によれば、被照射部に投射された透過光の中に陰影部材に基づく模様を形成することができる。これにより、照明用器具の表現機能が更に向上する。
【0008】
上記照明用器具において、前記陰影部材は、前記可動膜の動作に基づいて可動膜上を動く可動体であることが好ましい。
上記構成によれば、陰影部材に基づく模様を連続的に動かすことができる。これにより、照明用器具の表現機能が更に向上する。また、陰影部材を動かすための駆動手段を別途設ける必要が無い。
【0009】
上記照明用器具において、前記可動膜を底面とする容器部を備え、前記可動体は、前記容器部に収容される液体であることが好ましい。
上記構成によれば、印加電圧に応じた誘電エラストマーアクチュエータの面方向及び厚さ方向の伸縮に基づいて可動膜が振動する。この振動が容器部に収容される液体に伝わることにより液体に揺れが生じる。したがって、被照射部に投射された透過光の中に、連続的に形を変えるように動く波の模様を形成することができる。これにより、照明用器具の表現機能が更に向上する。
【0010】
上記照明用器具において、前記可動膜は、前記誘電エラストマーアクチュエータに対する前記液体の付着を抑制する防水層を備えることが好ましい。
上記構成によれば、可動体としての液体が誘電エラストマーアクチュエータに付着して誘電エラストマーアクチュエータの電気回路が短絡することを抑制できる。
【0011】
上記照明用器具において、前記誘電エラストマーアクチュエータは、誘電エラストマーからなる誘電層と、導電エラストマーからなり、前記誘電層を挟む複数の電極層とを備え、前記電極層は、透光性の異なる2種類以上の電極層を含むことが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、誘電エラストマーアクチュエータの透光性を任意の値に調整することが容易である。
上記照明用器具において、前記光透過部には、透光性の高い高透光領域と、高透光領域よりも透光性の低い低透光領域とが設けられていることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、光透過部を透過した透過光には、高透光領域及び低透光領域のいずれの領域を透過したかに基づいて濃淡が生じ、その濃淡は、陰影として被照射部に投影される。印加電圧に応じた誘電エラストマーアクチュエータの面方向及び厚さ方向の伸縮に基づいて可動膜が振動することにより、光透過部の形状が連続的に変形する。光透過部の変形に伴って高透光領域及び低透光領域の位置や形状が変化することにより、被照射部に投射された透過光の中に形成された、高透光領域及び低透光領域の形状に基づく模様も連続的に変化する。したがって、被照射部に投射された透過光の中に、高透光領域及び低透光領域の形状に基づく動く模様を形成することができる。これにより、照明用器具の表現機能が更に向上する。
【0014】
上記課題を解決する照明装置は、光源と、上記照明用器具とを備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、照明用器具及び照明装置の表現機能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、照明装置の第1実施形態を説明する。
図1に示すように、第1実施形態の照明装置10は、光を照射する光源部20、及び光源部20から照射される光の光路上に配置されて、光源部20から照射される光Lに変化を与える光調整部30を備えている。
【0018】
光源部20は、上部に開口部21aを有する箱状のケーシング21を備えている。ケーシング21内の空間S1には、光源としてのLED素子22が実装された照明用の回路基板23が収容されている。回路基板23は、ケーシング21の底壁の内面に固定されている。LED素子22から照射される光の色である光源色は、特に限定されるものではなく、例えば、青色や紫色等の公知の照明に用いられる色を適宜、選択できる。
【0019】
LED素子22の表面には、LED素子22から照射された光を波長変換する蛍光体層24が形成されている。蛍光体層24は、例えば、蛍光体粒子を含む樹脂により構成されている。蛍光体層24は、例えば、LED素子22から照射された光の少なくとも一部を、黄、赤、緑、青等の任意の色の光に変換する。蛍光体層24により変換される光の色は、特に限定されない。また、蛍光体層24は必要に応じて省略してもよい。
【0020】
光調整部30は、ケーシング21の開口部21aを塞ぐようにしてケーシング21に取り付けられている。光調整部30は、光透光性を有するシート状の可動膜31を備えている。可動膜31は、印加電圧に応じて面方向及び厚さ方向に伸縮するシート状の誘電エラストマーアクチュエータ32(DEA:Dielectric Elastomer Actuator)により構成されている。
【0021】
図2に示すように、DEA32は、誘電エラストマーからなるシート状の誘電層40と、誘電層40の厚さ方向の両側に配置された電極層としての正極電極41及び負極電極42とが複数、積層された多層構造体である。DEA32の最外層には絶縁層43が積層されている。DEA32は、正極電極41と負極電極42との間に直流電圧が印加されると、印加電圧の大きさに応じて、誘電層40が厚さ方向に圧縮されるとともに誘電層40の面に沿った方向(DEA32の面方向)に伸張するように変形する。
【0022】
誘電層40を構成する誘電エラストマーは特に限定されるものではなく、公知のDEAに用いられる誘電エラストマーを用いることができる。上記誘電エラストマーとしては、例えば、架橋されたポリロタキサン、シリコーンエラストマー、アクリルエラストマー、ウレタンエラストマーが挙げられる。これら誘電エラストマーのうちの一種を用いてもよいし、複数種を併用してもよい。誘電層40の厚さは、例えば、20~200μmである。
【0023】
正極電極41及び負極電極42である電極層を構成する材料としては、例えば、絶縁性高分子及び導電性フィラーを含有する導電エラストマーが挙げられる。上記絶縁性高分子としては、例えば、架橋されたポリロタキサン、シリコーンエラストマー、アクリルエラストマー、ウレタンエラストマーが挙げられる。これら絶縁性高分子のうちの一種を用いてもよいし、複数種を併用してもよい。上記導電性フィラーとしては、例えば、カーボンナノチューブ、ケッチェンブラック(登録商標)、カーボンブラック、銅や銀等の金属粒子が挙げられる。これら導電性フィラーのうちの一種を用いてもよいし、複数種を併用してもよい。電極層の厚さは、例えば、1~100μmである。
【0024】
絶縁層43を構成する絶縁エラストマーは特に限定されるものではなく、公知のDEAの絶縁部分に用いられる公知の絶縁エラストマーを用いることができる。上記絶縁エラストマーとしては、例えば、架橋されたポリロタキサン、シリコーンエラストマー、アクリルエラストマー、ウレタンエラストマーが挙げられる。これら絶縁エラストマーのうちの一種を用いてもよいし、複数種を併用してもよい。絶縁層43の厚さは、例えば、10~100μmである。また、DEA32全体の厚さは、柔軟性及び強度の確保の観点から、例えば、0.3~3mmであることが好ましい。
【0025】
DEA32は、厚さ方向に光を透過する透光性を有する。本実施形態において、透光性を有するとは、可視光領域の波長の光などの目的に応じた任意の波長の光の透過率が、例えば、20%以上であることを意味する。上記透過率は、好ましくは30%以上であり、より好ましくは70%以上である。
【0026】
上記透過率は、例えば、DEA32を構成する正極電極41、負極電極42、及び絶縁層43に含有される添加材の種類や配合量を変化させることにより調整できる。例えば、導電性フィラーとして、カーボンナノチューブを含有する導電エラストマーは、導電性フィラーとして、ケッチェンブラックを含有する導電エラストマーよりも比較して透過率が高い。
【0027】
本実施形態では、電極層として、相対的に透過率の高い高透過導電エラストマーにより構成される高透過電極層と、相対的に透過率の低い低透過導電エラストマーにより構成される低透過電極層とを組み合わせて用いている。そして、高透過電極層及び低透過電極層の層数を調整することによってDEA32の透過率を上記範囲に調整している。具体的には、正極電極41を高透過電極層とし、負極電極42を低透過電極層としている。正極電極41を構成する高透過導電エラストマーは、カーボンナノチューブを含有する導電エラストマーであり、負極電極42を構成する低透過導電エラストマーは、ケッチェンブラックを含有する導電エラストマーである。
図2においては、低透過電極層である負極電極42にドットを付加している。
【0028】
図1に示すように、光調整部30は、DEA32を厚さ方向の両側から挟む態様にてDEA32の周縁部を支持する枠状の支持部材33,34を備えている。支持部材33,34は、DEA32の厚さ方向に見た平面視(以下、平面視という。)における中央部分に透過孔33a,34aを有する平板状の部材であり、DEA32の両主面の周縁部の全周に対して接着剤を用いて固定されている。光源部20側に位置する支持部材34は、ケーシング21の開口部21a側の端面に対して固定されている。
【0029】
平面視において、DEA32における支持部材33,34の透過孔33a,34aと重なる部分は、DEA32における光源部20からの光を透過させる光透過部32aである。また、DEA32における支持部材33,34と重なる部分は、支持部材33,34が接着されることにより、面方向及び厚さ方向の伸縮が規制されている。DEA32は、透過孔33a,34aと重なる部分である光透過部32aにおいて面方向及び厚さ方向に伸縮可能である。
【0030】
ここで、光透過部32aの周縁部分A1は、DEA32における支持部材33,34が接着されて伸縮が規制されている部分に近いことから、光透過部32aの中央部分A2と比較して、印加電圧に基づく厚さ方向の伸縮量が小さくなる。したがって、電圧印加時において、光透過部32aの中央部分A2は、相対的に厚さが大きく変化し、光透過部32aの周縁部分A1は、相対的に厚さが小さく変化する。
【0031】
光調整部30は、バッテリー等の電源(図示略)からDEA32に印加される印加電圧を制御する駆動制御部35を備えている。DEA32に所定周波数の直流電圧が印加されると、DEA32の光透過部32aは、面方向及び厚さ方向の伸縮に基づいて振動する。駆動制御部35は、予め設定された振動パターンが得られるように、印加電圧の大きさ、印加電圧の継続時間、前後の印加電圧の間隔等が調整された印加電圧をDEA32に印加するように構成されている。
【0032】
次に、本実施形態の作用について説明する。
光源部20のLED素子22を点灯させた状態とする。LED素子22から照射された光は、蛍光体層24にて所定の色に変換されてケーシング21内の空間S1に放出される。空間S1に放出された光は、ケーシング21の開口部21aを塞ぐ可動膜31を透過する。可動膜31を透過した透過光は、照明装置10の外部に配置されたスクリーン等の被照射部(図示略)に投射される。
【0033】
この状態において、可動膜31であるDEA32に電圧を印加すると、DEA32は、印加電圧に応じてDEA32の光透過部32aの面方向及び厚さ方向に伸縮する。このとき、光透過部32aの中央部分A2は、相対的に厚さが大きく変化し、DEA32における支持部材33,34が接着されている部分に近い光透過部32aの周縁部分A1は、相対的に厚さが小さく変化する。したがって、電圧印加時には、光透過部32aの伸縮に基づいて、光透過部32aに相対的に薄い部分と厚い部分とが形成されるとともに、薄い部分と厚い部分との差が連続的に変化する。具体的には、電圧印加が大きくなるにしたがって、薄い部分と厚い部分との差が大きくなる。
【0034】
光透過部32aにおける相対的に厚い部分を透過した透過光は、DEA32を透過する際の光路長が長くなるため、相対的に薄い部分を透過光よりも暗い光になる。そのため、電圧印加時には、光透過部32aの部分な厚さの違いに基づいて透過光に光の濃淡が生じるとともに、その濃淡が連続的に変化する。また、電圧印加時には、印加電圧に応じたDEA32の面方向及び厚さ方向の伸縮に基づいて光透過部32aが振動する。これにより、光透過部32aの形状が連続的に変形し、それに伴って、透過光に生じる光の濃淡の境界の位置が連続的に変化する。したがって、被照射部に投射された透過光の中に、光の濃淡に基づく陰影が付与されるとともに陰影の強度が連続的に変化する。また、光透過部32aの振動に合わせて透過光に生じる陰影が連続的に揺れ動く。このように、本実施形態の照明装置10によれば、被照射部に投射された透過光の中に、連続的に形を変える模様を形成できる。
【0035】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)照明装置10は、LED素子22から照射される光の光路を塞ぐように配置され、DEA32により構成される透光性の可動膜31と、DEA32に電圧を印加する駆動制御部35とを備えている。可動膜31におけるLED素子22から照射される光が透過する光透過部32aは、電圧印加時に、相対的に厚さが大きく変化する部分(中央部分A2)と厚さが小さく変化する部分(周縁部分A1)とを形成可能に構成されている。
【0036】
上記構成の照明装置10は、可動膜31の光透過部32aを透過して被照射部に投射された透過光の中に、連続的に形を変える模様を形成できる。LED素子22から照射される光に動きのある変化が付与されることにより、自然現象のゆらぎ、生命感、生物感を感じさせるような光を投影することが可能になり、照明装置の表現機能が向上する。
【0037】
(2)DEA32は、誘電エラストマーからなる誘電層40と、導電エラストマーからなり、誘電層40を挟む複数の電極層を備えている。電極層は、透光性の異なる2種類の電極層を備えている。2種類の電極層は、高透過電極層である正極電極41と、低透過電極層である負極電極42である。上記構成によれば、DEA32の透光性を任意の値に調整することが容易である。
【0038】
(第2実施形態)
以下、照明装置の第2実施形態を説明する。
第2実施形態の照明装置10は、光調整部30の可動膜31を構成するDEA32の電極構造が第1実施形態と相違しており、以下では、第1実施形態との相違点を中心に説明する。なお、上記実施形態と同一又は対応する構成については、同一の符号を付すことにより重複する説明を省略する。
【0039】
図3に示すように、第2実施形態の照明装置10の可動膜31を構成するDEA32の正極電極41及び負極電極42は、DEA32の面方向において、高透過導電エラストマーにより構成される高透過部分B1と、低透過導電エラストマーにより構成される低透過部分B2とを有している。そして、正極電極41における高透過部分B1及び低透過部分B2の配置と、負極電極42における高透過部分B1及び低透過部分B2の配置はそれぞれ異なっている。これにより、DEA32は、DEA32の面方向に広がる領域として、透過率の異なる複数の領域R1~R4を有している。
図3においては、低透過部分B2にドットを付加している。
【0040】
領域R1は、DEA32の厚さ方向において、正極電極41の低透過部分B2と負極電極42の低透過部分B2とが重なる低透光領域である。領域R2は、DEA32の厚さ方向において、正極電極41の高透過部分B1と負極電極42の低透過部分B2とが重なる中透光領域である。領域R3は、DEA32の厚さ方向において、正極電極41の低透過部分B2と負極電極42の高透過部分B1とが重なる中透光領域である。領域R4は、DEA32の厚さ方向において、正極電極41の高透過部分B1と負極電極42の高透過部分B1とが重なる高透光領域である。なお、透過率の異なる複数の領域R1~R4のうち、透過率が最も低い低透光領域R1については、透過率が0%であってもよい。
【0041】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図1に示すように、光源部20のLED素子22を点灯させた状態とする。LED素子22から照射された光は、蛍光体層24にて所定の色に変換されてケーシング21内の空間S1に放出される。空間S1に放出された光は、ケーシング21の開口部21aを塞ぐ可動膜31を透過する。可動膜31を透過した透過光は、照明装置10の外部に配置された被照射部に投射される。
【0042】
図3に示すように、DEA32の光透過部32aは、DEA32の面方向に、透過率の異なる領域R1~R4を有している。そのため、光透過部32aを透過した透過光には、領域R1~R4の中のいずれの領域を透過したかに基づいて濃淡が生じる。具体的には、低透光領域である領域R1を透過した透過光は暗い光になり、高透光領域である領域R4を透過した透過光は明るい光になり、中透光領域である領域R2、R3を透過した透過光は、それらの中間の明るさの光になる。そして、透過光に生じた濃淡は、陰影として被照射部に投影される。したがって、被照射部に投射された透過光の中に、透過率の異なる領域R1~R4の形状に基づく模様が形成される。
【0043】
この状態において、DEA32に電圧を印加すると、印加電圧に応じたDEA32の面方向及び厚さ方向の伸縮に基づいて光透過部32aが振動する。これにより、光透過部32aの形状が連続的に変形する。可動膜31の連続的な変形に伴って領域R1~R4の位置や形状が変化することにより、被照射部に投射された透過光の中に形成された、領域R1~R4の形状に基づく模様も連続的に変化する。したがって、被照射部に投射された透過光の中に、第1実施形態にて形成される模様に重ねて、連続的に形を変える模様が更に形成される。
【0044】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(3)DEA32の光透過部32aには、透光性の高い高透光領域R4と高透光領域R4よりも透光性の低い低透光領域R1とが設けられている。
【0045】
上記構成によれば、被照射部に投射された透過光の中に、高透光領域R4及び低透光領域R1の形状に基づく動く模様を形成することができる。これにより、照明装置10の表現機能が更に向上する。
【0046】
(第3実施形態)
以下、照明装置の第3実施形態を説明する。
第3実施形態の照明装置10は、光調整部30の構成が第1実施形態と相違しており、以下では、第1実施形態との相違点を中心に説明する。なお、上記実施形態と同一又は対応する構成については、同一の符号を付すことにより重複する説明を省略する。
【0047】
図4に示すように、第3実施形態の照明装置10の光調整部30に設けられる可動膜31は、シート状のDEA32と、DEA32の片側の表面に設けられる防水層36とを備えている。
【0048】
防水層36は、DEA32に対する水などの液体の付着を抑制するための層であり、DEA32における光源部20と反対側の表面に設けられている。防水層36としては、透明又は半透明な層を用いる。防水層36を構成する材料としては、例えば、シリコーン樹脂、アクリル樹脂等の防水層として用いられる公知の材料を適用できる。なお、防水層36は、DEA32の伸縮を妨げない。DEA32及び防水層36を備える可動膜31全体の可視光透過率は、例えば、30%以上であり、70%以上であることが好ましい。
【0049】
光源部20と反対側である上側に位置する支持部材33の上面には、平面視において、透過孔33aを囲む環状の周壁37aが支持部材33と一体に形成されている。周壁37a及び可動膜31によって、可動膜31を底面とする容器部38が構成されている。容器部38の内側の収容空間S2には、水などの透光性を有する液体39が収容されている。また、容器部38には、収容空間S2を複数の空間に分割する仕切壁37bが設けられている。
【0050】
次に、本実施形態の作用について説明する。
光源部20のLED素子22を点灯させた状態とする。LED素子22から照射された光は、蛍光体層24にて所定の色に変換されてケーシング21内の空間S1に放出される。空間S1に放出された光は、ケーシング21の開口部21aを塞ぐ可動膜31を透過する。可動膜31を透過した透過光は、照明装置10の外部に配置された被照射部に投射される。
【0051】
この状態において、DEA32に電圧を印加すると、印加電圧に応じたDEA32の面方向及び厚さ方向の伸縮に基づいて光透過部32aが振動する。光透過部32aの振動は、可動膜31を底面とする容器部38の収容空間S2に収容されている液体39へと伝わり、液体39に揺れを生じさせる。容器部38の中で揺れる液体39に生じる波紋により、被照射部に投射された透過光の中に、光の濃淡に基づく陰影が付与されるとともに、その陰影が液体39に合わせて揺れ動く。つまり、被照射部に投射された透過光の中に、連続的に形を変えるように動く波の模様が形成される。したがって、被照射部に投射された透過光の中に、第1実施形態にて形成される模様に重ねて、連続的に形を変えるように動く波の模様が更に形成される。
【0052】
本実施形態において、液体39は、可動膜31の動作に基づいて可動膜31上を動く可動体に該当する。また、液体39は、光源部20から照射される光の光路におけるDEA32の下流側に配置され、DEA32を透過した透過光に陰影による模様を付与する陰影部材に該当する。
【0053】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(4)光源部20から照射される光の光路における可動膜31の下流側に配置され、可動膜31を透過した透過光に陰影による模様を付与する陰影部材としての液体39を備えている。
【0054】
上記構成によれば、被照射部に投射された透過光の中に陰影部材に基づく模様を形成することができる。これにより、照明装置10の表現機能が更に向上する。
(5)陰影部材としての液体39は、可動膜31の動作に基づいて可動膜上を動く可動体である。
【0055】
上記構成によれば、陰影部材に基づく模様を連続的に動かすことができる。これにより、照明装置10の表現機能が更に向上する。また、陰影部材を動かすための駆動手段を別途設ける必要が無い。
【0056】
(6)光調整部30は、可動膜31を底面とする容器部38を備えている。可動体は、容器部38に収容される液体39である。
上記構成によれば、被照射部に投射された透過光の中に、連続的に形を変えるように動く波の模様を形成することができる。これにより、照明装置10の表現機能が更に向上する。
【0057】
(7)可動膜31は、DEA32に対する液体39の付着を抑制する防水層36を備えている。
上記構成によれば、液体39がDEA32に付着することにより、DEA32の電気回路が短絡することを抑制できる。
【0058】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0059】
・DEA32の光透過部32aに対して、電圧印加時に、厚さが相対的に大きく変化する部分と、厚さが変化しない又は相対的に小さく変化する部分を形成可能とする構成は、第1実施形態の構成に限定されない。例えば、光透過部32aに位置する電極層に部分的に導電性の低い部分を設ける。この場合、誘電層40における導電性の低い部分の電極層に挟まれる部分は、電圧印加時の圧縮量が相対的に小さくなる。したがって、電極層における導電性の低い部分の位置する部分が、光透過部32aにおける厚さが相対的に小さく変化する部分になる。
【0060】
また、光透過部32aに位置する電極層の一部に、導電性フィラーが含まれておらず電極として機能しない非電極部分を設ける。この場合、電極層における非電極部分に挟まれる部分は、電圧印加時に圧縮されない。したがって、光透過部32aにおける非電極部分の位置する部分が、光透過部32aにおける厚さが相対的に小さく変化する部分になる。
【0061】
また、光透過部32aに位置する電極層に、それぞれ独立して電圧を印加可能な複数の電極部分を設けるとともに、そのうちの少なくとも一つの電極部分を、他の電極部分よりも小さい電圧が印加される電極部分とする。この場合、誘電層40における、小さい電圧が印加される電極部分に挟まれる部分は、電圧印加時の圧縮量が相対的に小さくなる。したがって、電極層における小さい電圧が印加される電極部分の位置する部分が、光透過部32aにおける厚さが相対的に小さく変化する部分になる。
【0062】
・第1実施形態及び第2実施形態において、光源部20から照射される光の光路における可動膜31の下流側に、可動膜31を透過した透過光に陰影による模様を付与する陰影部材を配置してもよい。陰影部材としては、例えば、被照射部に投射された透過光の中に影絵を投影させる切り絵などの非透光性の物体又は光を部分的に透過させる半透光性の物体が挙げられる。
【0063】
・第3実施形態において、液体39は、無色透明の液体であってもよいし、着色された半透明の液体であってもよい。
・第3実施形態において、可動体は、液体39に限定されるものではなく、可動膜31の動作に基づいて可動膜31上を動く物体であればよい。その他の可動体としては、例えば、ゼリーや寒天等のゲル状の物質、球体、粒状物、ぬいぐるみ、羽毛、毛皮が挙げられる。可動体は、非透光性の物体及び半透光性の物体のいずれでもよいが、可動体がDEA32の光透過部32aの全体を覆うような形状である場合、例えば、上記第3実施形態のような構成の場合、可動体として半透光性の物体を用いる。
【0064】
・光源部20に設けられる光源は、LED素子22に限定されるものではなく、蛍光灯、白熱電球等の公知の照明装置に用いられる光源を用いることができる。
・上記各実施形態の照明装置10における光調整部30を、光源を備えない照明用器具として適用することもできる。当該照明用器具は、別途、用意された光源から照射される光や太陽光を光源とする自然光の光路上に配置されて、光源から照射される光に変化を与える器具として用いられる。
【0065】
・第1実施形態の電極層は、高透過電極層である正極電極41と、低透過電極層である負極電極42の透光性の異なる2種類の電極層を備えていたが、透光性の異なる3種類以上の電極層を備えていてもよい。また、全ての電極層を透光性が同じ層としてもよい。
【0066】
・第2実施形態において、DEA32の光透過部32aに設けられる透過率の異なる領域の数は、2、3、又は5以上であってもよい。また、透過率の異なる複数の領域の各形状及び各配置は特に限定されるものではない。
【0067】
・第2実施形態及び第3実施形態の照明装置10の場合、DEA32の光透過部32aに対して、電圧印加時に、厚さが相対的に大きく変化する部分と、厚さが変化しない又は相対的に小さく変化する部分を形成可能とする構成を省略した場合にも、課題を解決することが可能である。
【0068】
次に、上記実施形態及び変更から把握できる技術的思想を以下に記載する。
(イ)光源から照射される光の光路上に配置されて、光源から照射される光に変化を与える照明用器具であって、前記光路を塞ぐように配置され、印加電圧に応じて伸縮するシート状の誘電エラストマーアクチュエータにより構成される透光性の可動膜と、前記誘電エラストマーアクチュエータに電圧を印加する駆動制御部と、前記光路における前記可動膜の下流側に配置され、前記可動膜の動作に基づいて可動膜上を動く可動体とを備えることを特徴とする照明用器具。
【0069】
(ロ)光源から照射される光の光路上に配置されて、光源から照射される光に変化を与える照明用器具であって、前記光路を塞ぐように配置され、印加電圧に応じて伸縮するシート状の誘電エラストマーアクチュエータにより構成される透光性の可動膜と、前記誘電エラストマーアクチュエータに電圧を印加する駆動制御部とを備え、前記可動膜における前記光が透過する光透過部には、透光性の高い高透光領域と、高透光領域よりも透光性の低い低透光領域とが設けられていることを特徴とする照明用器具。
【0070】
(ハ)光源と、(イ)又は(ロ)に記載の照明用器具とを備える照明装置。
【符号の説明】
【0071】
10…照明装置
20…光源部
22…LED素子
30…光調整部
31…可動膜
32…DEA
35…駆動制御部
36…防水層
38…容器部
39…液体