(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119019
(43)【公開日】2022-08-16
(54)【発明の名称】棒状化粧材繰出容器
(51)【国際特許分類】
A45D 40/20 20060101AFI20220808BHJP
A45D 40/06 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
A45D40/20 G
A45D40/20 F
A45D40/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021015951
(22)【出願日】2021-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000252090
【氏名又は名称】鈴野化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大庭 淳
(57)【要約】 (修正有)
【課題】棒状化粧材の欠損を抑える棒状化粧材繰出容器を提供する。
【解決手段】棒状化粧材繰出容器1は、棒状化粧材3が進退可能である貫通孔11を有する先筒10と、先筒10に組み付けられる基筒20と、基筒20内に設けられる螺旋筒40と、棒状化粧材3を進退させる芯チャック部材30と、先筒10と螺旋筒40との間に介在するバネ部41と、を備え、バネ部41は、螺旋筒40と樹脂によって一体的に形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状化粧材を繰出す棒状化粧材繰出容器であって、
前記棒状化粧材が進退可能である貫通孔を有する先筒と、
前記先筒に相対回転可能に組み付けられる基筒と、
前記基筒内に相対回転不能に設けられる雌ねじ部材と、
前記雌ねじ部材の内周面に形成された雌ねじと螺合する雄ねじを有し、前記先筒と前記基筒との相対回転によって前記先筒の前記貫通孔の先端開口から前記棒状化粧材を進退させる芯チャック部材と、
前記先筒と前記雌ねじ部材との間に介在するバネ部材と、を備え、
前記バネ部材は、前記先筒及び前記雌ねじ部材の何れか一方と樹脂によって一体的に形成されることを特徴とする棒状化粧材繰出容器。
【請求項2】
前記バネ部材は、前記先筒及び前記雌ねじ部材の何れか一方の外縁から他方の外縁に向かって延びる線状部を有し、
前記線状部は、前記先筒または前記雌ねじ部材の中心を通る中心軸に直交する方向から見て前記中心軸と交差し、前記中心軸方向視において円弧状に形成されることを特徴とする請求項1に記載の棒状化粧材繰出容器。
【請求項3】
前記バネ部材は、前記線状部の先端に設けられた環状シート部をさらに有し、
前記バネ部材は、前記環状シート部を介して前記先筒及び前記雌ねじ部材の何れか他方と接することを特徴とする請求項2に記載の棒状化粧材繰出容器。
【請求項4】
前記バネ部材は、前記線状部を複数有し、
複数の前記線状部の先端部が、前記先筒及び前記雌ねじ部材の何れか他方にそれぞれ接することを特徴とする請求項2に記載の棒状化粧材繰出容器。
【請求項5】
前記バネ部材が最も圧縮された状態における前記バネ部材の軸線方向長さは自然長の半分以下であることを特徴とする請求項1から4の何れか1つに記載の棒状化粧材繰出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状化粧材繰出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、先筒と螺旋筒との間に圧縮バネを介在させた繰出容器であって、容器が外部から衝撃を受けたときに、圧縮バネの伸縮によって化粧料に伝わる衝撃を緩和する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の技術革新によって、アイライナー等の化粧料は、より柔らかく、より極細に製造可能となっている。極細に形成され軽くなった棒状化粧材を収容保持する容器が落下等により外部から衝撃を受けると、化粧材の折れや抜けが生じやすいため、このような化粧材に適した繰出容器が求められている。例えば、化粧材が極細の棒状であって軽量である場合、衝撃を緩和するために設けられるバネ等の弾性部材の弾発力が大きいと、ほとんど衝撃が緩和されず、化粧材の折れ等を抑制することが難しいため、弾性部材の弾発力を相当弱められることが望まれる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の繰出容器では、化粧材に伝わる衝撃を緩和するために設けられた圧縮バネは剛性が高い金属製であることから、弾発力を弱めに調整することが難しく、また、所望の弾発力が得られたとしても圧縮バネが必須構成となることで部品点数が増え、結果として容器の製造コストが増大するおそれがある。
【0006】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたものであり、棒状化粧材の折れや抜けを抑制可能であるとともに、容器の製造コストを低減可能な棒状化粧材繰出容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、棒状化粧材を繰出す棒状化粧材繰出容器であって、前記棒状化粧材が進退可能である貫通孔を有する先筒と、前記先筒に相対回転可能に組み付けられる基筒と、前記基筒内に相対回転不能に設けられる雌ねじ部材と、前記雌ねじ部材の内周面に形成された雌ねじと螺合する雄ねじを有し、前記先筒と前記基筒との相対回転によって前記先筒の前記貫通孔の先端開口から前記棒状化粧材を進退させる芯チャック部材と、前記先筒と前記雌ねじ部材との間に介在するバネ部材と、を備え、前記バネ部材は、前記先筒及び前記雌ねじ部材の何れか一方と樹脂によって一体的に形成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、棒状化粧材の折れや抜けを抑制することができるとともに、容器の製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る棒状化粧材繰出容器の断面図であり、(a)は、芯チャック部材が後退限に位置した状態を示し、(b)は、
図1(a)におけるIB-IB線に沿う断面を示した断面図であり、芯チャック部材が前進限に位置した状態を示す。
【
図2】
図1に示す先筒の図であり、(a)は、正面図であり、(b)は、
図2(a)に対応する正面の断面図であり、(c)は、底面を拡大して示した底面拡大図であり、(d)は、
図2(b)におけるIID-IID線に沿う断面を拡大して示した拡大断面図である。
【
図3】
図1に示す基筒の図であり、(a)は、軸方向に沿って切断したときの断面図であり、(b)は、
図3(a)におけるIIIB-IIIB線に沿う断面を拡大して示した拡大断面図である。
【
図4】
図1に示す芯チャック部材の図であり、(a)は、正面図であり、(b)は、側面図であり、(c)は、
図4(b)におけるIVC-IVC線に沿う断面を拡大して示した拡大断面図であり、(d)は、
図4(b)におけるIVD-IVD線に沿う断面を拡大して示した拡大断面図であり、(e)は、
図4(b)におけるIVE-IVE線に沿う断面を拡大して示した拡大断面図である。
【
図5】
図1に示す雌ねじ部材及びバネ部材の図であり、(a)は、正面図であり、バネ部材が自然長となっている状態を示し、(b)は、
図5(a)に対応する正面の断面図であり、(c)は、側面図であり、バネ部材が自然長となっている状態を示し、(d)は、
図5(c)に対応する側面の断面図であり、(e)は、平面を拡大して示した平面拡大図であり、(f)は、底面を拡大して示した底面拡大図であり、(g)は、
図5(c)に対応する図であり、バネ部材が最も圧縮された状態を示し、(h)は、
図5(d)に対応する図であり、バネ部材が最も圧縮された状態を示し、(i)は、中心軸から見たバネ部材を周方向に沿って展開した展開図である。
【
図6】
図1に示す雌ねじ部材及びバネ部材の変形例を示す図であり、(a)は、正面図であり、バネ部材が自然長となっている状態を示し、(b)は、
図6(a)に対応する正面の断面図であり、(c)は、側面図であり、バネ部材が自然長となっている状態を示し、(d)は、
図6(c)に対応する側面の断面図であり、(e)は、平面を拡大して示した平面拡大図であり、(f)は、底面を拡大して示した底面拡大図であり、(g)は、
図6(c)に対応する図であり、バネ部材が最も圧縮された状態を示し、(h)は、
図6(d)に対応する図であり、バネ部材が最も圧縮された状態を示し、(i)は、中心軸から見たバネ部材を周方向に沿って展開した展開図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る棒状化粧材繰出容器の断面図であり、(a)は、芯チャック部材が後退限に位置した状態を示し、(b)は、
図7(a)におけるVIIB-VIIB線に沿う断面を示した断面図であり、芯チャック部材が前進限に位置した状態を示す。
【
図8】
図7に示す雌ねじ部材の図であり、(a)は、正面図であり、(b)は、平面を拡大して示した平面拡大図であり、(c)は、
図8(a)に対応する正面の断面図である。
【
図9】
図7に示す先筒及びバネ部材の図であり、(a)は、正面図であり、バネ部材が自然長となっている状態を示し、(b)は、
図9(a)に対応する正面の断面図であり、(c)は、側面図であり、バネ部材が自然長となっている状態を示し、(d)は、
図9(c)に対応する側面の断面図であり、(e)は、底面を拡大して示した底面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
<第1実施形態>
まず、
図1から
図5を参照して、本発明の第1実施形態に係る棒状化粧材繰出容器1(以下、「繰出容器1」という)について説明する。
【0012】
図1に示すように、繰出容器1は、断面形状が略円形の棒状化粧材3を繰出し可能な容器である。棒状化粧材3は、例えばアイブロウ、アイライナー及びリップライナー等として用いられるものであり、その外径は1.5mm程度に形成されている。なお、棒状化粧材3の断面形状は、円形に限定されず、例えば、短軸と長軸とを有する楕円形であってもよい。
【0013】
図1の(a)は、繰出容器1の断面図であり、後述の芯チャック部材30が後退限に位置した状態を示し、
図1の(b)は、
図1の(a)のIB-IB線に沿う断面図であり、芯チャック部材30が前進限に位置した状態を示す。なお、
図1の(b)では、後述のキャップ2を省略して示している。
【0014】
繰出容器1は、棒状化粧材3が進退可能である貫通孔11を有する先筒10と、先筒10に相対回転可能に組み付けられる基筒20と、棒状化粧材3を保持する芯チャック部材30と、基筒20内に基筒20に対して相対回転不能に設けられる螺旋筒40と、貫通孔11の先端開口14を覆い棒状化粧材3を保護するキャップ2と、を備える。以下では、先筒10における貫通孔11の中心軸に沿う方向を「軸方向」と称し、貫通孔11の中心軸周りの方向を「周方向」と称し、貫通孔11の中心軸を中心とする放射方向を「径方向」と称する。
【0015】
繰出容器1では、螺旋筒40と芯チャック部材30とにより棒状化粧材3を軸方向に繰出す繰出機構が構成されており、先筒10と基筒20とを相対回転させると先筒10及び基筒20内で芯チャック部材30が軸方向に進退し、芯チャック部材30の進退に応じて棒状化粧材3も進退する。
【0016】
具体的には、使用者が先筒10と基筒20とを順方向に相対回転させたときには、芯チャック部材30が先筒10の先端開口14に向かって軸方向に移動して棒状化粧材3を前進させる。これにより、先端開口14から棒状化粧材3が繰出される。一方、使用者が先筒10と基筒20とを逆方向に相対回転させたときには、芯チャック部材30が逆方向に移動して棒状化粧材3を後退させる。これにより、棒状化粧材3が繰戻される。
【0017】
ここで、芯チャック部材30に保持されるアイライナー等の棒状化粧材3は、近年の技術革新によって、より柔らかく、より極細に製造することが可能となっている。このため、極細且つ軽量に形成された棒状化粧材3を収容する繰出容器1が落下等により外部から衝撃を受けると、棒状化粧材3が容器内で折れたり抜けたりするおそれがある。
【0018】
本実施形態に係る繰出容器1では、後述する構成により、落下等による衝撃や振動が棒状化粧材3に伝達されることが抑制され、結果として、棒状化粧材3が容器内で折れたり抜けたりすることを抑制することができる。
【0019】
以下、繰出容器1の構成について詳述する。
【0020】
先筒10は、
図2に示すように、軸方向に貫通する貫通孔11が形成された筒状部材であり、使用者が摘む摘部15と、摘部15と軸方向において連続して形成され基筒20内に嵌入される嵌入部18と、を有する。摘部15は、嵌入部18側から先端に向かって徐々に外径が小さくなるように軸方向にテーパ状に形成されている。
【0021】
嵌入部18の外周面には、基筒20に形成された後述の嵌合凹部21(
図3参照)に嵌合する環状の嵌合凸部16と、Oリング4が装着されるOリング溝17が形成される。Oリング4は、使用者の操作感を向上させるために設けられるものであって、先筒10と基筒20との間に圧縮された状態で設けられることで、先筒10と基筒20とを相対回転させる際に適度な抵抗を生じさせる。
【0022】
また、先筒10の内周面には、
図2に示すように、径方向内側に向かって突出する凸条13が軸方向に沿って延設されている。凸条13は、周方向に等間隔で4箇所に形成されており、隣り合う凸条13間には、芯チャック部材30を軸方向においてガイドする案内溝12が軸方向に沿って延設される。凸条13及び案内溝12は、先筒10の後端面19まで形成されており、凸条13の端部13aは後端面19と同一平面上に位置している。
【0023】
基筒20は、
図3に示すように、芯チャック部材30及び螺旋筒40を収容するとともに先筒10の嵌入部18が嵌合される収容孔20aを有する有底筒状に形成された部材である。収容孔20aには、先筒10の嵌合凸部16が嵌合される環状の嵌合凹部21と、螺旋筒40の外周面に形成される後述の縦リブ46が係合するローレット24と、底面へ向かう螺旋筒40の移動を規制する段部25と、が開口端側から順に設けられる。
【0024】
また、基筒20の外周面には、
図1に示されるキャップ2の嵌合凸部2aが嵌合される環状の嵌合凹部22と、Oリング5が装着されるOリング溝23が形成される。Oリング5は、キャップ2が基筒20に取り付けられた際に、キャップ2と基筒20とにより圧縮された状態となり、棒状化粧材3が設けられる空間を密封する。これにより棒状化粧材3から揮発成分等が蒸発し、棒状化粧材3が劣化してしまうことが防止される。
【0025】
芯チャック部材30は、
図4に示すように、棒状化粧材3を保持する4つの爪片31と、4つの爪片31から軸方向に延設された棒軸部32と、を有する。
【0026】
4つの爪片31は、
図4(c)に示すように、棒状化粧材3を囲むように周方向に等間隔で配置されている。爪片31の基端部に囲まれた棒軸部32の端面32aには、円環状の平面が形成されており、ここには棒状化粧材3の底面が載置される。
【0027】
また、爪片31の先端には径方向外側に僅かに突出して形成された突起31aが設けられる。後述のように、芯チャック部材30が組み付けられた先筒10内において、爪片31間に棒状化粧材3が差し込まれると、先筒10の案内溝12の底面に突起31aが当接することにより爪片31が径方向内側に僅かに変形することによって、棒状化粧材3は、爪片31により確実に保持された状態となる。
【0028】
棒軸部32には、
図4(a)及び(b)に示すように、先筒10の案内溝12に係合する条部33が形成される部分と、螺旋筒40(
図5参照)に形成された後述の螺旋溝47に係合する雄ねじ突起36が形成された部分と、が爪片31側から順に設けられる。
【0029】
条部33は、爪片31の基端部に連続して軸方向に沿って形成された突出部であり、棒軸部32に所定の範囲に渡って形成される。条部33は、爪片31と同様に、周方向に等間隔で4箇所に形成される。隣り合う条部33間には、先筒10の凸条13の断面形状に合わせた断面形状の凹溝34が軸方向に沿って延設される。
【0030】
条部33の断面形状は、先筒10の案内溝12の断面形状と略同じか僅かに小さく形成される。このため、先筒10に挿入された芯チャック部材30は、条部33が先筒10の案内溝12に摺接することによって、先筒10により軸方向に案内される一方、先筒10に対して回転不能な状態となる。
【0031】
また、凹溝34は、条部33が設けられている部分だけではなく、雄ねじ突起36が形成される部分に及んで延設されている。上述のように凹溝34は、先筒10の凸条13の形状に合わせた断面形状を有することから、芯チャック部材30が先筒10内を先端開口14に向かって前進する際、凹溝34の端面35が凸条13の端部13aに当接することにより、芯チャック部材30の前進が制限されることになる。つまり、雄ねじ突起36が形成される部分に設けられた凹溝34の端面35は、芯チャック部材30の前進限を規定する当接部として機能する。
【0032】
雄ねじ突起36は、例えばピッチP=0.5mm、リードL=0.5mmの一条ねじの雄ねじの一部分が軸方向に沿って間隔をあけて列状に配置された複数の突起であって、棒軸部32の中心を挟んで対向して設けられる。雄ねじ突起36のピッチ等の大きさは、棒状化粧材3を微量ずつ繰り出すことが可能であれば、これに限定されず、ピッチP=1.0mm、リードL=1.0mmの一条ねじやピッチP=1.0mm、リードL=2.0mmの二条ねじに基づいて形成されたものであってもよい。
【0033】
なお、条部33は、雄ねじ突起36よりも径方向外側に突出して形成されている。このため、芯チャック部材30が後退する際、条部33が螺旋筒40に当接することにより、芯チャック部材30の後退が制限されることになる。つまり、条部33の端面33aは、芯チャック部材30の後退限を規定する当接部として機能する。
【0034】
螺旋筒40は、
図5に示すように、軸方向に圧縮されることによって弾発力(復元力)を生じるバネ部材としてのバネ部41と、芯チャック部材30の雄ねじ突起36が係合する螺旋溝47が軸方向に貫通して形成された雌ねじ部材としての螺旋筒部42と、が一体的に形成された樹脂製部材である。
【0035】
螺旋筒部42は、基筒20内に螺旋筒40が挿入された際に基筒20の段部25に当接する後端面45と、バネ部41が形成される前端面44と、を有する筒状に形成された部分であり、その外周面には、軸方向に延びる4つの縦リブ46が周方向に等間隔で形成されている。縦リブ46は、基筒20の内周面に形成されたローレット24と係合し、螺旋筒40が基筒20に対して回転することを防止する回転止めとして機能する。
【0036】
螺旋筒部42に形成された螺旋溝47に芯チャック部材30の雄ねじ突起36が螺合した状態で螺旋筒40と芯チャック部材30とを相対回転させると、芯チャック部材30は螺旋筒40に対して軸方向に相対移動する。つまり、芯チャック部材30の雄ねじ突起36と螺旋筒部42の螺旋溝47とによって、繰出機構が形成される。
【0037】
バネ部41は、螺旋筒部42の前端面44から螺旋状に延出する一対の線状部としての螺条柱41a,41bと、繰出容器1内に螺旋筒40が組み込まれた際に先筒10の後端面19に当接する円環状に形成された環状シート部43と、を有する。
【0038】
一対の螺条柱41a,41bは、繰出容器1内に螺旋筒40が組み込まれた状態において、螺旋筒部42の前端面44の外縁から先筒10の後端面19の外縁に向かってそれぞれ螺旋状に延びて形成されている。
【0039】
具体的には、
図5(c)に示すように、一対の螺条柱41a,41bは、螺旋筒部42と環状シート部43との間において、螺旋筒部42の中心を通る中心軸C1に直交する方向から見て中心軸C1と交差し、中心軸C1方向視において互いに重なり合わないように約半周の円弧状にそれぞれ形成されている。なお、中心軸C1は、先筒10の貫通孔11の中心を通る中心軸と一致する。
【0040】
また、別の見方をすれば、中心軸C1から径方向外側に向かってバネ部41を見たときのバネ部41の形状を周方向に沿って展開した展開図である
図5(i)に示すように、一対の螺条柱41a,41bは、螺旋筒部42と環状シート部43との間において、所定の角度で斜めに延び、軸方向において互いに重ならないようにそれぞれ形成されている。
【0041】
バネ部41の弾発力の大きさは、螺条柱41a,41bの太さ、すなわち、螺条柱41a,41bの断面面積の大きさを適宜変更することによって容易に変更することが可能である。
【0042】
また、一対の螺条柱41a,41bは、軸方向において互いに重ならないようにそれぞれ形成されているため、バネ部41が最も圧縮したとき圧縮高さであるバネ部41の軸線方向長さL2を自然長L1の半分以下とすることが可能であり、伸縮距離Xを大きくすることができる。
【0043】
したがって、螺条柱41a,41bの断面面積を小さくし、且つ、伸縮距離Xを大きくすることによって、バネ部41の弾発力を大幅に小さく、すなわち、バネ部41を軟らかくして変形し易くすることが可能である。
【0044】
螺旋筒40は、
図1に示すように、繰出容器1内に組み込まれた状態において、上記形状のバネ部41を介して先筒10に接している。このため、螺旋筒40や芯チャック部材30に慣性力等が作用した場合、慣性力等に応じてバネ部41が伸縮することにより、螺旋筒40は、基筒20内を軸方向において変位することとなる。
【0045】
次に、繰出容器1の組み立て手順について、主に
図1を参照して説明する。
【0046】
まず、螺旋筒40に芯チャック部材30が組み付けられる。具体的には、芯チャック部材30の棒軸部32を螺旋筒40に挿入し、螺旋筒40の螺旋溝47から芯チャック部材30の雄ねじ突起36が抜け出てしまわない程度に、螺旋溝47と雄ねじ突起36とを螺合させる。これにより、螺旋筒40と芯チャック部材30とは一体的な状態となる。
【0047】
次に、Oリング溝17にOリング4が装着された先筒10に、螺旋筒40と一体的な状態となった芯チャック部材30が挿入される。具体的には、先筒10の嵌入部18側から芯チャック部材30の爪片31及び条部33が先筒10の案内溝12に挿入されるように、先筒10の凸条13の位置と芯チャック部材30の凹溝34の位置とを一致させた状態で芯チャック部材30が先筒10に挿入される。
【0048】
続いて、先筒10の嵌入部18を基筒20に挿入し、嵌入部18の嵌合凸部16と基筒20の嵌合凹部22とを嵌合させて基筒20に先筒10が組み付けられる。このとき、螺旋筒40も螺旋筒部42の縦リブ46が基筒20の内周面に形成されたローレット24と係合するようにして基筒20内に挿入される。つまり、先筒10と基筒20とは、螺旋筒40を基筒20のローレット24に係合させながら、互いに組み付けられることになる。また、芯チャック部材30の棒軸部32のうち、螺旋筒40から突出した部分も、先筒10と基筒20とが組付けられることで、基筒20内に挿入される。なお、螺旋筒40は、バネ部41の弾発力により、螺旋筒部42の後端面45が基筒20の段部25に押し付けられた状態となっている。
【0049】
このように先筒10と基筒20とが組付けられた後、先筒10と基筒20とを順方向に相対回転させ、芯チャック部材30を前進限まで繰り上げる。この状態で先筒10の先端開口14側から棒状化粧材3を挿入し、芯チャック部材30の爪片31間に棒状化粧材3が差し込まれる。そして、棒状化粧材3が差し込まれた芯チャック部材30を後退限まで繰り戻した後、基筒20にキャップ2が装着される。
【0050】
以上により、繰出容器1の組み立てが完了する。
【0051】
このように組み立てられた繰出容器1は、
図1(a)に示すように、芯チャック部材30の条部33の端面33aが螺旋筒40の螺旋筒部42の前端面44に当接することで、芯チャック部材30が後退限に位置した状態となる。
【0052】
この状態から、使用者が先筒10と基筒20とを順方向に相対回転させると、芯チャック部材30の雄ねじ突起36と螺旋筒40の螺旋溝47との螺合によって、芯チャック部材30が前進する。これにより、棒状化粧材3が先筒10の先端開口14から繰出され、化粧可能な状態となる。
【0053】
さらに先筒10と基筒20とを順方向に相対回転させて、芯チャック部材30を前進させると、先筒10の凸条13の端部13aに芯チャック部材30の凹溝34の端面35が当接する。これにより、芯チャック部材30は、
図1(b)に示すように、前進限に位置した状態となる。
【0054】
また、このように組み立てられたキャップ2付きの繰出容器1が、ある程度の高さから落とされたり、バッグの中で振動が加えられたりすると、棒状化粧材3、芯チャック部材30及び螺旋筒40に対して、繰出容器1が外部から受けた衝撃に応じた慣性力が作用することになるが、このような慣性力は、螺旋筒40に設けられたバネ部41によって吸収される。
【0055】
具体的には、棒状化粧材3、芯チャック部材30及び螺旋筒40に対して、これらを軸方向に移動させるような慣性力が作用すると、これらの移動を許容するようにバネ部41が収縮し、バネ部41は慣性力に応じた弾発力(復元力)を生じた状態となる。このように、繰出容器1が受けた衝撃によって生じた慣性力がバネ部41により吸収されるため、慣性力に起因して棒状化粧材3が繰出容器1内で折れたり抜けたりすることを抑制することができる。バネ部41は、特に、繰出容器1がキャップ2側から落下した際の衝撃を吸収することに優れている。
【0056】
また、バネ部41は、螺旋筒部42とともに樹脂により一体的に形成されているため、バネ部を金属製とした場合と比較し、部品点数を減らすことができることから、繰出容器1の製造コストを低減することも可能である。
【0057】
また、バネ部41を樹脂製とした場合、バネ部を金属製とした場合と比較し、弾発力を大幅に小さくすることも容易に行うことが可能である。このため、棒状化粧材3が極細且つ軽量に形成されている場合のように、僅かな衝撃でも棒状化粧材3が折れてしまうおそれがあっても、バネ部41の弾発力を大幅に小さく設定しておくことで、芯チャック部材30及び螺旋筒40を介してバネ部41に作用する棒状化粧材3の僅かな慣性力をもバネ部41によって吸収させることが可能となり、結果として、棒状化粧材3の折れや抜けを確実に抑制することができる。
【0058】
以上の第1実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0059】
繰出容器1では、芯チャック部材30及び螺旋筒40を介して作用する棒状化粧材3の慣性力を吸収可能なバネ部41が、螺旋筒部42と樹脂によって一体的に形成されている。
【0060】
このようにバネ部41を、弾発力を大幅に小さく設定することが容易に可能な樹脂製とすることで、棒状化粧材3が極細且つ軽量に形成されている場合であっても棒状化粧材3の折れや抜けを抑制することができるとともに、バネ部41を螺旋筒部42と一体的に形成することで部品点数が減るため、繰出容器1の製造コストを低減させることができる。
【0061】
なお、次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0062】
上記第1実施形態では、バネ部41は、環状シート部43を介して先筒10の後端面19に当接している。このように円環状の環状シート部43を介して荷重を伝達させることでバネ部41は安定して変形することになるが、一対の螺条柱41a,41bは、環状シート部43を介して互いに連結されているため、各螺条柱41a,41bが個々に自由に変形することはできない状態となっている。このため、
図6に示す変形例のように、環状シート部43を設けない構成としてもよい。
【0063】
図6に示される螺旋筒240のバネ部241は、螺旋筒部42の前端面44から螺旋状に延出する一対の線状部としての螺条柱41a,41bのみを有する。つまり、一対の螺条柱41a,41bの先端部243はそれぞれ自由端となっている。なお、螺旋筒240が繰出容器1内に組み付けられた状態において、一対の螺条柱41a,41bの先端部243はそれぞれ先筒10の後端面19に直接当接する。
【0064】
このため、一対の螺条柱41a,41bは、互いに拘束されることなく、それぞれ別個に伸縮可能となるため、バネ部241の弾発力をさらに小さくすることができる。また、環状シート部43が設けられないことで、自然長L1に対してバネ部241が最も圧縮したとき圧縮高さであるバネ部241の軸線方向長さL2をさらに小さくすることが可能であり、伸縮距離Yを環状シート部43が設けられた場合の伸縮距離Xよりも大きくすることができる。
【0065】
このように
図6に示される変形例では、バネ部241の弾発力をさらに小さく設定すること、すなわち、バネ部241をさらに軟らかくして変形し易くすることが可能となることで、芯チャック部材30及び螺旋筒240を介してバネ部241に作用する棒状化粧材3の非常に僅かな慣性力をもバネ部241によって吸収させることができる。
【0066】
また、上記第1実施形態では、バネ部41は、軸方向に沿って一つだけ設けられているが、例えば、螺旋筒40の螺旋筒部42と先筒10との間の軸方向における間隔を大きくしたり、螺旋筒部42の軸方向長さを短くしたりすることにより、バネ部41が挿入される軸方向スペースを拡張することによって、バネ部41を軸方向に沿って複数配置可能な構成としてもよい。この場合、例えば、バネ部41の環状シート部43の上端面から別の一対の螺条柱を新たに延出して形成するとともに、新たに形成された一対の螺条柱の端部に別の環状シート部を設けることによって、別のバネ部41が形成される。
【0067】
軸方向に沿って複数のバネ部41が設けられる場合、要求される弾発力に応じてバネ部41の数を変えてもよい。また、各バネ部41の螺条柱41a,41bの太さを異ならせることによってバネ部41全体の弾発力を調整してもよい。また、軸方向において隣り合うバネ部41の螺条柱41a,41bの傾斜方向を互いに異ならせてもよい。
【0068】
また、上記第1実施形態では、バネ部41の一対の螺条柱41a,41bは、中心軸C1方向視において互いに重なり合わないように約半周の円弧状にそれぞれ形成されている。これに代えて、一対の螺条柱41a,41bは、中心軸C1を中心に約1周、すなわち、中心軸C1方向視において、互いに約半周だけ重なり合うように螺旋状に形成されていてもよい。
【0069】
また、上記第1実施形態では、バネ部41の螺条柱41a,41bは、
図5(i)の展開図に示されるように、周方向に沿って斜めに直線的に延びる形状に形成されている。これに代えて、螺条柱は、例えば、軸方向に延びる部分と周方向に延びる部分とが組み合わされ、周方向に沿って階段状に形成されてもよい。
【0070】
また、上記第1実施形態では、バネ部41の螺条柱41a,41bは一対設けられている。これに代えて、螺条柱41a,41bは1つだけであってもよい。なお、螺条柱41a,41bを3つ以上設けてもよいが、バネ部241の弾発力を小さく設定するためには、2つ以下とすることが好ましい。
【0071】
また、上記第1実施形態では、螺旋筒40が繰出容器1内に組み込まれた状態において、環状シート部43が先筒10の後端面19に当接し、後端面45が基筒20の段部25に当接し、バネ部41は僅かに圧縮された状態となっている。これに代えて、繰出容器1が外部から受けた衝撃によって生じた慣性力をバネ部41が吸収できれば、環状シート部43と先筒10の後端面19との間、または、後端面45と基筒20の段部25との間には、僅かな隙間が設けられていてもよい。この場合、螺旋筒40が繰出容器1内に組み込まれた状態において、バネ部41は自然長L1となっている。
【0072】
<第2実施形態>
次に、
図7から
図9を参照して、本発明の第2実施形態に係る棒状化粧材繰出容器101について説明する。なお、以下に示す各実施形態では、前述した実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0073】
第1実施形態では、バネ部41が、螺旋筒部42と樹脂によって一体的に形成されている。これに対して本実施形態では、
図7及び
図9に示すように、バネ部110bが、先筒部110aと樹脂によって一体的に形成されている。
【0074】
棒状化粧材繰出容器101(以下、「繰出容器101」という)は、
図7に示すように、上記第1実施形態に係る繰出容器1と同様に、棒状化粧材3が進退可能である貫通孔11を有する先筒110と、先筒110に相対回転可能に組み付けられる基筒20と、棒状化粧材3を保持する芯チャック部材30と、基筒20内に基筒20に対して相対回転不能に設けられる雌ねじ部材としての螺旋筒140と、貫通孔11の先端開口14を覆い棒状化粧材3を保護するキャップ2と、を備える。
【0075】
図7の(a)は、繰出容器101の断面図であり、芯チャック部材30が後退限に位置した状態を示し、
図7の(b)は、
図7の(a)のVIIB-VIIB線に沿う断面図であり、芯チャック部材30が前進限に位置した状態を示す。なお、
図7の(b)では、キャップ2を省略して示している。
【0076】
次に、繰出容器101の構成について、詳述する。なお、繰出容器101のキャップ2、基筒20及び芯チャック部材30は、上記第1実施形態に係る繰出容器1のものと略同じであるため、それらの説明及び図を省略する。
【0077】
螺旋筒140は、
図8に示すように、芯チャック部材30の雄ねじ突起36が係合する螺旋溝147が軸方向に貫通して形成された筒状部材であり、基筒20内に螺旋筒140が挿入された際に基筒20の段部25に当接する後端面145と、先筒110の後端面19に対向する前端面144と、を有する。
【0078】
また、螺旋筒140の外周面には、軸方向に延びる4つの縦リブ146が周方向に等間隔で形成されている。縦リブ146は、基筒20の内周面に形成されたローレット24と係合し、螺旋筒140が基筒20に対して回転することを防止する回転止めとして機能する。
【0079】
螺旋筒140に形成された螺旋溝147に芯チャック部材30の雄ねじ突起36が螺合した状態で螺旋筒140と芯チャック部材30とを相対回転させると、芯チャック部材30は螺旋筒140に対して軸方向に相対移動する。つまり、芯チャック部材30の雄ねじ突起36と螺旋筒140の螺旋溝147とによって、繰出機構が形成される。
【0080】
先筒110は、
図9に示すように、軸方向に圧縮されることによって弾発力(復元力)を生じるバネ部材としてのバネ部110bと、棒状化粧材3が進退可能である貫通孔11が設けられた先筒としての先筒部110aと、が一体的に形成された樹脂製部材である。
【0081】
先筒部110aは、上記第1実施形態に係る繰出容器1の先筒10と同形状であるため、その説明を省略する。
【0082】
バネ部110bは、先筒部110aの後端面19から螺旋状に延出する一対の線状部としての螺条柱111a,111bと、繰出容器101に先筒110が組み込まれた際に螺旋筒140の前端面144に当接する円環状に形成された環状シート部112と、を有する。
【0083】
一対の螺条柱111a,111bは、繰出容器101に先筒110が組み込まれた状態において、先筒部110aの後端面19の外縁から螺旋筒140の前端面144の外縁に向かってそれぞれ螺旋状に延びて形成されている。
【0084】
具体的には、
図9(c)に示すように、一対の螺条柱111a,111bは、先筒部110aと環状シート部112との間において、先筒部110aの貫通孔11の中心を通る中心軸C1に直交する方向から見て中心軸C1と交差し、中心軸C1方向視において互いに重なり合わないように約半周の円弧状にそれぞれ形成されている。
【0085】
また、別の見方をすれば、中心軸C1から径方向外側に向かってバネ部110bを見たとき、一対の螺条柱111a,111bは、上記第1実施形態におけるバネ部41の形状を周方向に沿って展開した展開図である
図5(i)と同じように、先筒部110aと環状シート部112との間において、所定の角度で斜めに延び、軸方向において互いに重ならないようにそれぞれ形成されている。
【0086】
このようにバネ部110bは、上記第1実施形態におけるバネ部41と同じように形成されていることから、上記第1実施形態におけるバネ部41と同様に、弾発力の大きさを容易に変更することが可能であるとともに、バネ部110bの軸線方向長さを自然長の半分以下とすることが可能であり、バネ部110bの弾発力を大幅に小さく、すなわち、バネ部110bを軟らかくして変形し易くすることができる。
【0087】
上述の螺旋筒140は、繰出容器101内に組み込まれた状態において、上記形状のバネ部110bに接している。このため、螺旋筒140や芯チャック部材30に慣性力等が作用した場合、慣性力等に応じてバネ部110bが伸縮することにより、螺旋筒140は、基筒20内を軸方向において変位することとなる。
【0088】
繰出容器101の組み立て手順については、第1実施形態に係る繰出容器1の組み立て手順と略同じであるため、ここではその説明を省略する。
【0089】
組み立てられたキャップ2付きの繰出容器101が、ある程度の高さから落とされたり、バッグの中で振動が加えられたりすると、棒状化粧材3、芯チャック部材30及び螺旋筒140に対して、繰出容器101が外部から受けた衝撃に応じた慣性力が作用することになるが、このような慣性力は、先筒110に設けられたバネ部110bによって吸収される。
【0090】
具体的には、棒状化粧材3、芯チャック部材30及び螺旋筒140に対して、これらを軸方向に移動させるような慣性力が作用すると、これらの移動を許容するようにバネ部110bが収縮し、バネ部110bは慣性力に応じた弾発力(復元力)を生じた状態となる。このように、繰出容器101が受けた衝撃によって生じた慣性力がバネ部110bにより吸収されるため、慣性力に起因して棒状化粧材3が繰出容器101内で折れたり抜けたりすることを抑制することができる。バネ部110bは、特に、繰出容器101がキャップ2側から落下した際の衝撃を吸収することに優れている。
【0091】
また、バネ部110bは、先筒部110aとともに樹脂により一体的に形成されているため、バネ部を金属製とした場合と比較し、部品点数を減らすことができることから、繰出容器101の製造コストを低減することも可能である。
【0092】
また、バネ部110bを樹脂製とした場合、バネ部を金属製とした場合と比較し、弾発力を大幅に小さくすることも容易に行うことが可能である。このため、棒状化粧材3が極細且つ軽量に形成されている場合のように、僅かな衝撃でも棒状化粧材3が折れてしまうおそれがあっても、バネ部110bの弾発力を大幅に小さく設定しておくことで、芯チャック部材30及び螺旋筒140を介してバネ部110bに作用する棒状化粧材3の僅かな慣性力をもバネ部110bによって吸収させることが可能となり、結果として、棒状化粧材3の折れや抜けを確実に抑制することができる。
【0093】
以上の第2実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0094】
繰出容器101では、芯チャック部材30及び螺旋筒140を介して作用する棒状化粧材3の慣性力を吸収可能なバネ部110bが、先筒部110aと樹脂によって一体的に形成されている。
【0095】
このようにバネ部110bを、弾発力を大幅に小さく設定することが容易に可能な樹脂製とすることで、棒状化粧材3が極細且つ軽量に形成されている場合であっても棒状化粧材3の折れや抜けを抑制することができるとともに、バネ部110bを先筒部110aと一体的に形成することで部品点数が減るため、繰出容器101の製造コストを低減させることができる。
【0096】
なお、次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0097】
上記第2実施形態では、バネ部110bは、環状シート部112を介して螺旋筒140の前端面144に当接している。このように円環状の環状シート部112を介して荷重を伝達させることでバネ部110bは安定して変形することになるが、一対の螺条柱111a,111bは、環状シート部112を介して互いに連結されているため、各螺条柱111a,111bが個々に自由に変形することはできない状態となっている。このため、バネ部110bの構成を、上記第1実施形態において変形例として
図6に示された構成と同様に、環状シート部112が設けられない構成としてもよい。この場合、一対の螺条柱111a,111bの先端部は、それぞれ螺旋筒140の前端面144に直接当接し、一対の螺条柱111a,111bは、互いに拘束されることなく、それぞれ別個に伸縮可能となる。
【0098】
これにより、バネ部110bの弾発力をさらに小さく設定すること、すなわち、バネ部110bをさらに軟らかくして変形し易くすることが可能となることで、芯チャック部材30及び螺旋筒140を介してバネ部110bに作用する棒状化粧材3の非常に僅かな慣性力をもバネ部110bによって吸収させることができる。
【0099】
また、上記第2実施形態では、バネ部110bは、軸方向に沿って一つだけ設けられているが、例えば、螺旋筒140の軸方向長さを短くし、螺旋筒140と先筒部110aとの間の軸方向における間隔を大きくすることにより、バネ部110bが挿入される軸方向スペースを拡張することによって、バネ部110bを軸方向に沿って複数配置可能な構成としてもよい。この場合、例えば、バネ部110bの環状シート部112の下端面から別の一対の螺条柱を新たに延出して形成するとともに、新たに形成された一対の螺条柱の端部に別の環状シート部を設けることによって、別のバネ部110bが形成される。
【0100】
軸方向に沿って複数のバネ部110bが設けられる場合、要求される弾発力に応じてバネ部110bの数を変えてもよい。また、各バネ部110bの螺条柱111a,111bの太さを異ならせることによってバネ部110b全体の弾発力を調整してもよい。また、軸方向において隣り合うバネ部110bの螺条柱111a,111bの傾斜方向を互いに異ならせてもよい。
【0101】
また、上記第2実施形態では、バネ部110bの一対の螺条柱111a,111bは、中心軸C1方向視において互いに重なり合わないように約半周の円弧状にそれぞれ形成されている。これに代えて、一対の螺条柱111a,111bは、中心軸C1を中心に約1周、すなわち、中心軸C1方向視において、互いに約半周だけ重なり合うように螺旋状に形成されていてもよい。
【0102】
また、上記第2実施形態では、バネ部110bの螺条柱111a,111bは、上記第1実施形態のバネ部41の螺条柱41a,41bと同様に、周方向に沿って斜めに延びる形状に形成されている。これに代えて、螺条柱111a,111bは、例えば、軸方向に延びる部分と周方向に延びる部分とが組み合わされ、周方向に沿って階段状に形成されてもよい。
【0103】
また、上記第2実施形態では、バネ部110bの螺条柱111a,111bは一対設けられている。これに代えて、螺条柱111a,111bは1つだけであってもよい。なお、螺条柱111a,111bを3つ以上設けてもよいが、バネ部110bの弾発力を小さく設定するためには、2つ以下とすることが好ましい。
【0104】
また、上記第2実施形態では、先筒110が繰出容器101に組み込まれた状態において、環状シート部112が螺旋筒140の前端面144に当接し、バネ部110bは僅かに圧縮された状態となっている。これに代えて、繰出容器101が外部から受けた衝撃によって生じた慣性力をバネ部110bが吸収できれば、環状シート部112と螺旋筒140の前端面144との間には、僅かな隙間が設けられていてもよい。この場合、先筒110が繰出容器101に組み込まれた状態において、バネ部110bは自然長となっている。
【0105】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0106】
1,101・・・棒状化粧材繰出容器
3・・・棒状化粧材
10,110・・・先筒
11・・・貫通孔
14・・・先端開口
20・・・基筒
30・・・芯チャック部材
36・・・雄ねじ突起(雄ねじ)
40,240・・・螺旋筒
41,241・・・バネ部(バネ部材)
41a,41b・・・螺条柱(線状部)
42・・・螺旋筒部(雌ねじ部材)
47・・・螺旋溝(雌ねじ)
110a・・・先筒部(先筒)
110b・・・バネ部(バネ部材)
111a,111b・・・螺条柱(線状部)
140・・・螺旋筒(雌ねじ部材)
147・・・螺旋溝(雌ねじ)
243・・・先端部
C1・・・中心軸