(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119024
(43)【公開日】2022-08-16
(54)【発明の名称】運動補助装置
(51)【国際特許分類】
A63B 23/00 20060101AFI20220808BHJP
A63B 23/04 20060101ALI20220808BHJP
A61H 1/02 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
A63B23/00 F
A63B23/04
A61H1/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021015961
(22)【出願日】2021-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100177644
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 和樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 英一
【テーマコード(参考)】
4C046
【Fターム(参考)】
4C046AA27
4C046AA42
4C046AA45
4C046BB07
4C046CC04
4C046DD08
4C046DD12
(57)【要約】
【課題】立ち上がりに必要な筋力の向上を図ると共に、立ち上がる際のバランス感覚等を反復してトレーニングすることができる運動補助装置を提供する。
【解決手段】
運動補助装置1は、支持体10に座面軸21を介して揺動可能に設けられる座面部11と、座面軸21よりも後方において座面部11に回動可能に接続され、座面部11に吊設される伝達部12と、支持体10に踏面軸23を介して揺動可能に設けられる踏面部13と、支持体10に梃子軸27を介して揺動可能に設けられ、踏面部13の後部と伝達部12の下部とに回動可能に接続される梃子部14と、を備え、使用者99が踏面部13の後部を踏み込むと、梃子部14は梃子軸27を支点に前方に回動することで踏面部13を踏み込む力を増幅し、伝達部12は押し上げられ、座面部11は伝達部12の押し上げに伴って座面軸21を支点に回動して前傾姿勢にされる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
起立動作のトレーニングに使用される運動補助装置であって、
支持体に座面軸を介して揺動可能に設けられ、使用者が着座する座面部と、
前記座面軸よりも後方において前記座面部に回動可能に接続され、前記座面部に吊設される伝達部と、
前記支持体に踏面軸を介して揺動可能に設けられ、前記使用者が足を載せる踏面部と、
前記支持体に梃子軸を介して揺動可能に設けられ、前記踏面部の後部と前記伝達部の下部とに回動可能に接続され、前記踏面部と前記伝達部との間に架設される梃子部と、を備え、
前記梃子軸は、前記梃子部の前後方向の中央よりも後方に設けられ、
前記使用者が前記踏面部の後部を踏み込んで前記踏面部を後方に回動させると、前記梃子部は前記梃子軸を支点に前方に回動することで前記踏面部を踏み込む力を増幅し、前記伝達部は前記梃子部の回動に伴って押し上げられ、前記座面部は前記伝達部の押し上げに伴って前記座面軸を支点に回動して前傾姿勢にされることを特徴とする運動補助装置。
【請求項2】
前記踏面部と前記梃子部との接続部分は、
前記踏面部と前記梃子部のいずれか一方に穿設され、前後方向に長い長穴と、
前記踏面部と前記梃子部のいずれか他方に突設され、前記長穴に移動可能に係合する可動軸と、を有し、
前記踏面部と前記梃子部とは、前記可動軸を前記長穴に沿って移動させながら互いに揺動することを特徴とする請求項1に記載の運動補助装置。
【請求項3】
前記梃子軸は、前記支持体および前記梃子部に対して前後方向の位置を変更可能に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の運動補助装置。
【請求項4】
前記踏面軸は、前記支持体および前記踏面部に対して位置を変更可能に設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の運動補助装置。
【請求項5】
前記座面軸は、前記支持体に対して位置を変更可能に設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の運動補助装置。
【請求項6】
前記伝達部は、上接続軸を介して前記座面部に回動可能に接続され、
前記上接続軸は、前記座面部に対して前後方向の位置を変更可能に設けられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の運動補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起立動作のトレーニングに使用される運動補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
座板が可傾自在とされた肘掛け椅子が知られている。この肘掛け椅子では、使用者が肘掛け部を横方向に押し開くことで、てこ作用によって座板が押し上げられ、使用者がてこ踏板の先端に体重をかけることで、座板が更に押し上げられていた。これにより、使用者(病人や高齢者)が、腰かけた椅子から他人の力を借りることなく自力で容易に立ち上がることができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した肘掛け椅子は、着座した使用者が立ち上がりに必要な筋力を備えていることが使用の前提であり、脚力が衰えた高齢者や下肢等に障害をもつ者が、立ち上がりに必要な筋力の向上を図ることはできなかった。また、上記した肘掛け椅子は、使用者の起立動作を補助することを目的としているため、立ち上がる際に下肢に力を入れるタイミングやバランス感覚を反復してトレーニングすることはできなかった。
【0005】
本発明は、上記事情を考慮し、立ち上がりに必要な筋力の向上を図ると共に、立ち上がる際のバランス感覚等を反復してトレーニングすることができる運動補助装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、起立動作のトレーニングに使用される運動補助装置であって、支持体に座面軸を介して揺動可能に設けられ、使用者が着座する座面部と、前記座面軸よりも後方において前記座面部に回動可能に接続され、前記座面部に吊設される伝達部と、前記支持体に踏面軸を介して揺動可能に設けられ、前記使用者が足を載せる踏面部と、前記支持体に梃子軸を介して揺動可能に設けられ、前記踏面部の後部と前記伝達部の下部とに回動可能に接続され、前記踏面部と前記伝達部との間に架設される梃子部と、を備え、前記梃子軸は、前記梃子部の前後方向の中央よりも後方に設けられ、前記使用者が前記踏面部の後部を踏み込んで前記踏面部を後方に回動させると、前記梃子部は前記梃子軸を支点に前方に回動することで前記踏面部を踏み込む力を増幅し、前記伝達部は前記梃子部の回動に伴って押し上げられ、前記座面部は前記伝達部の押し上げに伴って前記座面軸を支点に回動して前傾姿勢にされる。
【0007】
この場合、前記踏面部と前記梃子部との接続部分は、前記踏面部と前記梃子部のいずれか一方に穿設され、前後方向に長い長穴と、前記踏面部と前記梃子部のいずれか他方に突設され、前記長穴に移動可能に係合する可動軸と、を有し、前記踏面部と前記梃子部とは、前記可動軸を前記長穴に沿って移動させながら互いに揺動してもよい。
【0008】
この場合、前記梃子軸は、前記支持体および前記梃子部に対して前後方向の位置を変更可能に設けられてもよい。
【0009】
この場合、前記踏面軸は、前記支持体および前記踏面部に対して位置を変更可能に設けられてもよい。
【0010】
この場合、前記座面軸は、前記支持体に対して位置を変更可能に設けられてもよい。
【0011】
この場合、前記伝達部は、上接続軸を介して前記座面部に回動可能に接続され、前記上接続軸は、前記座面部に対して前後方向の位置を変更可能に設けられてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、使用者が立ち上がりに必要な筋力の向上を図ると共に、立ち上がる際のバランス感覚等を反復してトレーニングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る運動補助装置を示す側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る運動補助装置を示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る運動補助装置を示す正面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る運動補助装置を示す平面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る運動補助装置であって、座面部を除去した状態を示す平面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る運動補助装置であって、座面部および座面フレームを除去した状態を示す平面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る運動補助装置の使用方法を説明する側面図である。
【
図8】本発明の一実施形態の第1変形例に係る運動補助装置を示す断面図である。
【
図9】本発明の一実施形態の第2変形例に係る運動補助装置を示す断面図である。
【
図10】本発明の一実施形態の第3変形例に係る運動補助装置を示す側面図である。
【
図11】本発明の一実施形態の第4変形例に係る運動補助装置を示す断面図である。
【
図12】本発明の一実施形態の他の変形例に係る運動補助装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。なお、図面に示すFr、Rr、L、R、U、Dは、前、後、左、右、上、下を示している。本明細書では方向や位置を示す用語を用いるが、それらの用語は説明の便宜のために用いるものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、本明細書では方向や位置を示す用語は、使用者を基準にした方向や位置としている。
【0015】
[運動補助装置]
図1ないし
図6を参照して、運動補助装置1について説明する。
図1は運動補助装置1を示す側面図である。
図2は運動補助装置1を示す断面図である。
図3は運動補助装置1を示す正面図である。
図4は運動補助装置1を示す平面図である。
図5は座面部11を除去した運動補助装置1を示す平面図である。
図6は座面部11および座面フレーム17を除去した運動補助装置1を示す平面図である。
【0016】
運動補助装置1は、例えば、脚力が衰えた者や下肢(脚)等に障害をもつ者(使用者99)が起立動作のトレーニングに使用される。運動補助装置1は、椅子としても使用可能に構成されている。
【0017】
図1に示すように、運動補助装置1は、支持体10と、座面部11と、伝達部12と、踏面部13と、梃子部14と、を備えている。
【0018】
<支持体>
図2ないし
図6に示すように、支持体10は、4本の支持脚15と、背板16と、座面フレーム17と、一対の軸フレーム18と、を有している。支持体10は、例えば、鉄やアルミ合金等の金属製または木製で、一般的な椅子のような外形に構成されている。なお、一対の軸フレーム18は同一形状であるため、以下の説明では、一対であることを明記した場合を除き、1つの軸フレーム18について説明する。
【0019】
4本の支持脚15は、床面GL上に立設され、平面から見て前後方向および左右方向に離間して配置されている(
図6参照)。後方の2本の支持脚15は、前方の2本の支持脚15よりも上方に延設され、後方の2本の支持脚15の上部には背板16が架設されている(
図2参照)。なお、4本の支持脚15は全て同じ長さ(高さ)であってもよく、背板16は省略されてもよい。
【0020】
座面フレーム17は、4本の支持脚15に支持されている。座面フレーム17は、前方の支持脚15の上端と後方の支持脚15の中間部との間に架設されている。座面フレーム17は、平面から見て四角形の枠状(格子状、梯子状)に形成されている(
図5参照)。軸フレーム18は、前後一対の支持脚15の間に架設され、前後一対の支持脚15の内面に固定されている。軸フレーム18は、前方の支持脚15よりも前方に延設されている。軸フレーム18の前端下部は、下方に延設されて床面GLに当接している(
図2参照)。なお、軸フレーム18の前端下部以外は、床面GLから上方に離間しているが、床面GLに接していてもよい(図示せず)。また、軸フレーム18の前端下部が床面GLから上方に離間していてもよい(図示せず)。
【0021】
<座面部>
座面部11は、例えば、金属製、木製または合成樹脂製で、使用者99が着座する(臀部99Aが接する)平板状の部位である(
図2参照)。
図2ないし
図4に示すように、座面部11は、座面フレーム17上に配置され、平面から見て座面フレーム17よりも一回り小さな四角形状に形成されている。座面部11の後部の左右両側には、一対の上支持部11Aが後方に向かって突設されている。また、座面部11は、支持体10に座面軸21を介して揺動可能に設けられている。座面軸21は、座面部11の前部の左右両端面に一対突設されている。一対の座面軸21は、座面フレーム17の左右両端の前端部に立設された一対の座面支持部17Aに回転可能に支持されている。座面部11は、座面軸21周りに揺動可能であり、座面フレーム17上に配置された水平姿勢から座面軸21を中心に後部を跳ね上げられることで前傾姿勢(後方から前方に向かって下方に傾斜した姿勢)になる(
図7参照)。なお、座面部11の表面(上面)には、布、革または合成樹脂等が貼られていてもよいし、スポンジ、綿または羽毛等を含むクッションが設けられていてもよい(図示せず)。
【0022】
<伝達部>
図2ないし
図4に示すように、伝達部12は、座面部11の後部(座面軸21よりも後方)において吊設されている。伝達部12は、後方の支持脚15の前側において起立姿勢で配置されている。伝達部12は、例えば、金属製、木製または合成樹脂製で、正面から見て四角形の枠状(格子状、梯子状)に形成されている。伝達部12は、座面部11よりも左右方向に幅狭く形成されている。伝達部12は、座面部11に上接続軸22を介して回動可能に接続されている。
図3ないし
図5に示すように、上接続軸22は、伝達部12の上部の左右両端面に一対突設されている。伝達部12の上部は座面部11の一対の上支持部11Aの間に配置され、一対の上接続軸22は一対の上支持部11Aに回転可能に支持されている。
【0023】
<踏面部>
踏面部13は、使用者99が足99Bを載せる平板状の部位である(
図1参照)。踏面部13は、例えば、金属製、木製または合成樹脂製で、平面から見て四角形状に形成されている(
図4参照)。踏面部13の後部の左右両側には、一対の踏面支持部13Aが後方に向かって突設されている(
図5および
図6参照)。なお、踏面部13の表面(上面)には、布、革または合成樹脂等で構成された滑り止めシート等が貼られていてもよい(図示せず)。
【0024】
また、
図2ないし
図4に示すように、踏面部13は、支持体10の前方下部に配置され、支持体10に踏面軸23を介して揺動可能に設けられている。具体的には、踏面部13は、前方の2本の支持脚15の前側において一対の軸フレーム18の間に配置されている。踏面軸23は、踏面部13の左右両端面の略中央に一対突設され、一対の軸フレーム18に回転可能に支持されている。踏面軸23よりも前側に位置する踏面部13は、軸フレーム18の前端よりも前方に延設されている。また、軸フレーム18には、水平姿勢となった踏面部13の下面が当接し、踏面部13が前方に回動することを規制する回転止め部18Aが突設されている(
図2参照)。
【0025】
<梃子部>
図2、
図3および
図6に示すように、梃子部14は、座面部11の下方で、伝達部12と踏面部13との間に架設されている。梃子部14は、水平姿勢となった踏面部13の後部から伝達部12の下部に向かって下方に傾斜した後傾姿勢となるように設けられている。梃子部14は、例えば、金属製、木製または合成樹脂製で、平面から見て四角形の枠状(格子状、梯子状)に形成されている。梃子部14は、踏面部13よりも左右方向に幅狭く、且つ伝達部12よりも左右方向に幅広く形成されている。梃子部14の後部の左右両側には、一対の下支持部14Aが後方に向かって突設されている。
【0026】
梃子部14は、踏面部13の後部と伝達部12の下部とに回動可能に接続されている。具体的には、
図2および
図6に示すように、梃子部14の前部の左右両端面には一対の可動軸24が突設され、踏面部13の一対の踏面支持部13Aには前後方向に長い長穴25が穿設されている。梃子部14の前部は踏面部13の一対の踏面支持部13Aの間に配置され、一対の可動軸24は一対の長穴25に移動可能に係合している。また、伝達部12の下部の左右両端面には、一対の下接続軸26が突設されている。伝達部12の下部は梃子部14の一対の下支持部14Aの間に配置され、一対の下接続軸26は一対の下支持部14Aに回転可能に支持されている。
【0027】
図2、
図3および
図6に示すように、梃子部14は、支持体10に梃子軸27を介して揺動可能に設けられている。具体的には、梃子部14は一対の軸フレーム18の間に配置され、梃子軸27は梃子部14の左右両端面に一対突設されている。一対の梃子軸27は、梃子部14の前後方向の中央よりも後方に設けられ、一対の軸フレーム18に回転可能に支持されている。なお、各々の軸フレーム18の梃子軸27を支持する位置には、補強凸部18Bが内側に向かって突設されている。
【0028】
図2に示すように、可動軸24から梃子軸27までの距離(D1)は、下接続軸26から梃子軸27までの距離(D2)よりも長く設定されている(
図2参照)。したがって、梃子部14は、梃子軸27を支点とし、可動軸24付近(踏面部13の後端付近)を力点とし、下接続軸26付近(伝達部12の下端付近)を作用点とする所謂第1種梃子として機能する。
【0029】
[運動補助装置の使用方法]
図1、
図2および
図7を参照して、運動補助装置1の使用方法(起立動作のトレーニング)について説明する。
図7は運動補助装置1の使用方法を説明する側面図である。なお、運動補助装置1の初期状態として、座面部11および踏面部13は床面GL(座面フレーム17)と平行となる水平姿勢とされ、伝達部12は略垂直な起立姿勢とされ、梃子部14は前方から後方に向かって下方に傾斜した後傾姿勢とされている(
図2参照)。
【0030】
図1および
図2に示すように、使用者99は、座面部11に着座した状態から起立動作のトレーニングを開始する。ここで、「起立動作」とは、座面部11に着座した使用者99が、重心を座面部11から踏面部13に移動させ、自身の脚で立ち上がる直前までの動作である。なお、立ち上がる直前の姿勢(起立姿勢)としては、膝が伸びている必要はなく、膝が曲がり前かがみとなる姿勢でもよい。また、起立姿勢としては、使用者99の臀部99Aは、座面部11から僅かに離間してもよいし、座面部11に接触した状態でもよい。また、「起立動作のトレーニング」とは、上記した起立動作と再び着座する動作とを繰り返し、下肢(脚)の筋力を向上させると共に、立ち上がる際に下肢に力を入れるタイミングやバランス感覚を習得することを指す。
【0031】
まず、
図1および
図2に示すように、使用者99は、水平姿勢とされた座面部11に着座し、足99Bを踏面部13の上面に載せる。使用者99は、座面部11に浅く腰を掛け、上半身の姿勢を正し、両手を膝の上に載せる。
【0032】
次に、
図7に示すように、使用者99は、足99Bの踵に体重を掛けるようにして踏面部13の後部を踏み込み、起立動作を開始する。すると、運動補助装置1の各部は、以下のように動作する。
【0033】
踏面部13は、踏面軸23を支点にして後方(
図7で時計回り)に回動し、水平姿勢から後傾姿勢に姿勢変更される。すると、梃子部14は、梃子軸27を支点に前方(
図7で反時計回り)に回動し、後傾姿勢から前傾姿勢に姿勢変更される。つまり、梃子部14の前部が押し下げられ、梃子部14の後部が跳ね上げられる。この際、踏面部13と梃子部14とは、可動軸24を長穴25に沿って移動させながら回動する。また、梃子軸27は梃子部14の前後方向の中央よりも後方にずれているため、梃子部14は、所謂第1種梃子として作用する。したがって、梃子部14は、前方に回動することで踏面部13を踏み込む力(踏力)を増幅する。伝達部12は、梃子部14の回動に伴って押し上げられる。座面部11は、伝達部12の押し上げに伴って座面軸21を支点に回動して水平姿勢から前傾姿勢に姿勢変更される。
【0034】
使用者99は、踏面部13を踏み込むことで下肢(脚)に力を入れる。また、踏面部13の踏み込みに連動して座面部11の後部が押し上げられるため、使用者99の臀部99A(上半身)は斜め上前方に押し出される。使用者99は、着座した姿勢から下肢(脚)に力を入れた状態で前傾姿勢となる(
図7参照)。以上によって、使用者99の起立動作が完了する。
【0035】
その後、使用者99は、再び座面部11に体重を掛けて着座する(
図1および
図2参照)。座面部11は、前傾姿勢から水平姿勢に戻るように回動し、伝達部12を押し下げる。伝達部12の押し下げに伴って、梃子部14は前傾姿勢から後傾姿勢に戻るように回動し、踏面部13は後傾姿勢から水平姿勢に戻るように回動する。つまり、運動補助装置1の各部は初期状態に戻る。
【0036】
以降、使用者99は、起立動作と着座動作とを交互に繰り返す。
【0037】
以上説明した本実施形態に係る運動補助装置1では、使用者99が足99Bの踵に体重を掛けることで、座面部11の後部が押し上げられ、座面部11が後部から前部に向かって下り勾配となり、使用者99は自然に前かがみとなる姿勢をとっていた。したがって、使用者99の下肢(脚)には自然に力が入り、使用者99は前かがみでバランスをとる。また、前かがみとなった使用者99が座面部11に再び体重を掛けることで、座面部11および踏面部13が水平姿勢となり、踏面部13の踏み込みが解除される。以降、使用者99は起立動作と着座動作とを交互に繰り返すことで立ち上がりに必要な(下肢の)筋力の向上を図ることができる。また、使用者99は立ち上がる際に下肢に力を入れるタイミングやバランス感覚を反復してトレーニングすることができる。
【0038】
また、本実施形態に係る運動補助装置1では、踏面部13と梃子部14との接続部分が、踏面部13に穿設された長穴25と、梃子部14に突設されて長穴25に移動可能に係合する可動軸24と、を有していた。踏面部13と梃子部14とが可動軸24を長穴25に沿って移動させながら互いに揺動することで、踏面部13と梃子部14とを円滑に揺動させることができる。
【0039】
[変形例]
次に、
図8ないし
図11を参照して、本実施形態の各種変形例に係る運動補助装置1について簡単に説明する。
図8は第1変形例に係る運動補助装置1を示す断面図である。
図9は第2変形例に係る運動補助装置1を示す断面図である。
図10は第3変形例に係る運動補助装置1を示す側面図である。
図11は第4変形例に係る運動補助装置1を示す断面図である。なお、以下の説明では、上記した運動補助装置1と同一または対応する構成には同一の符号を付し、同様の説明は省略する。
【0040】
<第1変形例>
上記した運動補助装置1では、梃子部14に対する梃子軸27の位置が固定されていたが、本発明はこれに限定されない。第1変形例に係る運動補助装置1では、
図8に示すように、梃子軸37が、支持体10(軸フレーム18)および梃子部14に対して前後方向の位置を変更可能に設けられている。例えば、梃子軸37は、一対の軸フレーム18に架け渡すことができる程度の長さに形成されている(図示せず)。各軸フレーム18には複数の遊挿穴(図示せず)が穿設され、梃子部14の左右両側部には複数の遊挿穴に対応するように複数の調整穴30が穿設されている。複数(例えば3つ)の調整穴30および遊挿穴(以下、「調整穴30等」と呼ぶ。)は、前後方向(正確には前方から後方に向かって下方に傾斜する方向)に所定間隔で並設されている。各調整穴30等には梃子軸37が貫通する。使用者99は、複数の調整穴30等から選択した1つの調整穴30等(
図8では最前部の調整穴30等)に梃子軸37を差し込み、梃子部14を軸フレーム18に支持させる。なお、梃子軸37の両端部には、抜け止め用のピンやC形リングが嵌合している(図示せず)。
【0041】
以上説明した本実施形態の第1変形例に係る運動補助装置1によれば、梃子軸27(梃子の支点)の位置を変更することで、踏面部13の踏み込みに必要な負荷(踏力)を変更することができる。例えば、可動軸24付近(力点)から梃子軸37(支点)までの距離(D1)を長く設定することで、小さな踏力で踏面部13を踏み込むことができる。一方で、当該距離(D1)を短く設定することで、踏面部13の踏み込みに大きな踏力が必要になる。これにより、使用者99の筋力や障害の程度に応じて、踏面部13に踏み込みに必要な負荷(踏力)を調整することができる。
【0042】
<第2変形例>
上記した運動補助装置1では、支持体10(軸フレーム18)に対する踏面軸23の位置が固定されていたが、本発明はこれに限定されない。第2変形例に係る運動補助装置1では、
図9に示すように、踏面軸23が、支持体10(軸フレーム18)および踏面部13に対して位置を変更可能に設けられている。例えば、踏面軸33は、一対の軸フレーム18に架け渡すことができる程度の長さに形成されている(図示せず)。各軸フレーム18には複数の遊挿穴(図示せず)が穿設され、踏面部13の左右両側部には複数の遊挿穴に対応するように複数の調整穴31が穿設されている。複数(例えば3つ)の調整穴31および遊挿穴(以下、「調整穴31等」と呼ぶ。)は、前後方向に所定間隔で並設されている。各調整穴31等には踏面軸33が貫通する。使用者99は、複数の調整穴31等から選択した1つの調整穴31等(
図9では最前部の調整穴31等)に踏面軸33を差し込み、踏面部13を軸フレーム18に支持させる。なお、踏面軸33の両端部には、抜け止め用のピンやC形リングが嵌合している(図示せず)。
【0043】
以上説明した本実施形態の第2変形例に係る運動補助装置1によれば、踏面軸33(梃子の支点)の位置を変更することで、踏面部13の踏み込みに必要な踏力を調整することができる。例えば、力点側となる可動軸24から踏面軸33までの距離(D3)を(踏面部13の前端から踏面軸33までの距離(D4)よりも)長く設定することで、小さな踏力で踏面部13を回動させることができる。一方で、当該距離(D3)を短く設定することで、踏面部13の回動に大きな踏力が必要になる。これにより、使用者99の筋力や障害の程度に応じて、踏面部13に踏み込みに必要な負荷を変更することができる。
【0044】
なお、上記の説明では、軸フレーム18に対する踏面軸23の位置が前後方向に変更可能とされていたが、これに代えて/加えて、踏面軸23の位置が上下方向に変更可能とされてもよい(図示せず)。踏面軸23の上下方向の位置を変更することで、使用者99の身長や脚長に応じて踏面部13の高さを調整することができる。
【0045】
<第3変形例>
上記した運動補助装置1では、支持体10(座面フレーム17)に対する座面軸21の位置が固定されていたが、本発明はこれに限定されない。第3変形例に係る運動補助装置1では、
図10に示すように、座面軸21が、支持体10(座面フレーム17)に対して位置を変更可能に設けられている。例えば、座面フレーム17の上前部には、複数(例えば3つ)の調整溝35が凹設された座面支持部34が立設されている。複数の調整溝35は、前後方向に所定間隔で並設されている。使用者99は、複数の調整溝35から選択した1つの調整溝35(
図10では中央の調整溝35)に座面軸21を嵌め込み、座面部11を座面フレーム17に支持させる。なお、座面フレーム17には、調整溝35に嵌め込まれた座面軸21の離脱を防止するための離脱防止部材(図示せず)が設けられることが好ましい。
【0046】
以上説明した本実施形態の第2変形例に係る運動補助装置1によれば、座面軸21の前後方向の位置を変更することで、使用者99の脚(膝)の折り曲げ角度を、使用者99の好みに応じて調整することができる。
【0047】
なお、上記の説明では、座面フレーム17に対する座面軸21の位置が前後方向に変更可能とされていたが、これに代えて/加えて、座面軸21の位置が上下方向に変更可能とされてもよい(図示せず)。座面軸21の上下方向の位置を変更することで、使用者99の身長や脚長に応じて座面部11の高さを調整することができる。
【0048】
<第4変形例>
上記した運動補助装置1では、座面部11に対する上接続軸22の位置が固定されていたが、本発明はこれに限定されない。第4変形例に係る運動補助装置1では、
図11に示すように、上接続軸22が、座面部11に対して前後方向の位置を変更可能に設けられている。例えば、座面部11の下後部には、複数(例えば3つ)の調整溝36が凹設されている。複数の調整溝36は、前後方向(正確には後方から前方に向かって下方に傾斜する方向)に所定間隔で並設されている。使用者99は、複数の調整溝36から選択した1つの調整溝36(
図11では中央の調整溝36)に上接続軸22を嵌め込み、伝達部12を座面部11に接続する。なお、座面部11には、調整溝36に嵌め込まれた上接続軸22の離脱を防止するための離脱防止部材(図示せず)が設けられることが好ましい。
【0049】
以上説明した本実施形態の第4変形例に係る運動補助装置1によれば、上接続軸22の位置を変更することで、座面部11の傾斜角度を調整することができる。例えば、脚力が著しく衰えた者や重度の障害をもつ者等は、上接続軸22の前方に位置させることで、座面部11の傾斜角度を大きく設定する。一方で、脚力が僅かに衰えた者や軽度の障害をもつ者等は、上接続軸22の後方に位置させることで、座面部11の傾斜角度を小さく(水平に近く)設定する。これにより、使用者99の脚力や障害の程度(レベル)に応じて起立動作のトレーニングを行うことができる。
【0050】
なお、上記した第1~第4変形例に係る構成(特徴)は、自由に組み合わされてもよい(図示せず)。また、座面軸21、上接続軸22、踏面軸33および梃子軸37の移動に伴って、座面部11、伝達部12、踏面部13および梃子部14の長さを伸縮させてもよい(図示せず)。
【0051】
なお、本実施形態(第1~第4変形例を含む。以下同じ。)に係る運動補助装置1では、踏面部13に長穴25が穿設され、梃子部14に可動軸24が突設されていたが、本発明はこれに限定されない。これとは逆に、踏面部13に可動軸24が突設され、梃子部14に長穴25が穿設されてもよい(図示せず)。
【0052】
また、本実施形態に係る運動補助装置1では、座面軸21が座面部11に突設されていたが、これに限らず、座面軸21が座面フレーム17(座面支持部17A)に突設されていてもよい。これと同様に、上接続軸22および下接続軸26が伝達部12に突設されていたが、これに限らず、上接続軸22が座面部11に突設され、上接続軸22が梃子部14に突設されてもよい(図示せず)。
【0053】
また、本実施形態に係る運動補助装置1では、座面軸21が座面部11の前端部に設けられていたが、これに限らず、座面軸21は座面部11の前端から後方にずれた位置に設けられてもよい(図示せず)。また、上接続軸22が座面部11の後端部に接続されていたが、これに限らず、座面部11の後端から前方にずれた位置に接続されてもよい(図示せず)。
【0054】
また、本実施形態に係る運動補助装置1では、踏面部13と梃子部14とが可動軸24を介して接続されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図12に示すように、踏面部13と梃子部14とは接続されていなくてもよく、梃子部14の前端部が踏面部13の後部下面に接触していてもよい。また、上記と同様に、伝達部12と梃子部14とは接続されていなくてもよく、伝達部12の下端が梃子部14の後部上面に接触していてもよい。さらに、座面部11と伝達部12とは接続されていなくてもよく、伝達部12の上端が座面部11の後部に接触していてもよい。この場合、座面部11、踏面部13および梃子部14を初期状態(初期の姿勢)に戻す方向に付勢する捩りコイルばね等が、座面軸21、踏面軸23および梃子軸27に巻回されてもよい(図示せず)。また、伝達部12の上端部は、前後方向にずれないように座面部11に凹設された窪みに嵌合していてもよい。
【0055】
また、本実施形態に係る運動補助装置1では、初期状態において、踏面部13が水平姿勢とされ、伝達部12が起立姿勢とされ、梃子部14が後傾姿勢とされていたが、本発明はこれに限定されない。踏面部13や伝達部12は、僅かに前傾姿勢とされてもよいし、僅かに後傾姿勢とされてもよい(図示せず)。また、梃子部14は、僅かに前傾姿勢とされてもよいし、水平姿勢とされてもよい(図示せず)。
【0056】
また、本実施形態に係る運動補助装置1では、初期状態において伝達部12の下端(梃子部14の後端)が床面GLに接し(または僅かな隙間を介して対向し)、踏面部13を踏み込んだ状態で踏面部13の後端(梃子部14の前端)が床面GLに接していた(または僅かな隙間を介して対向していた)(
図2および
図7参照)。そこで、伝達部12の下端部、踏面部13の後端部および梃子部14の前後両端部には、床面GLに傷がつくことを防ぐためのクッション材(例えば、ゴムやスポンジ等)が取り付けられてもよい(図示せず)。
【0057】
また、本実施形態に係る運動補助装置1では、座面フレーム17が枠状に形成されていたが、これに限らず、例えば平板状に形成されてもよい(図示せず)。また、伝達部12および梃子部14は、枠状に限らず、例えば平板状や棒状に形成されてもよい(図示せず)。また、座面部11および踏面部13は、平板状に限らず、例えば格子状に形成されてもよい(図示せず)。また、座面部11および踏面部13の形状は、四角形状に限らず、四角形以外の多角形状や円形状(楕円形状)に形成されてもよい(図示せず)。
【0058】
なお、上記実施形態の説明は、本発明に係る運動補助装置における一態様を示すものであって、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明は技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよく、特許請求の範囲は技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様を含んでいる。
【符号の説明】
【0059】
1 運動補助装置
10 支持体
11 座面部
12 伝達部
13 踏面部
14 梃子部
21 座面軸
22 上接続軸
23、33 踏面軸
24 可動軸
25 長穴
27、37 梃子軸
99 使用者
99B 足