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特開2022-119038眼屈折測定装置、および眼屈折測定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119038
(43)【公開日】2022-08-16
(54)【発明の名称】眼屈折測定装置、および眼屈折測定プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/103 20060101AFI20220808BHJP
【FI】
A61B3/103
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021015990
(22)【出願日】2021-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】花木 美和子
(72)【発明者】
【氏名】杉本 善彦
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA06
4C316AA13
4C316AB16
4C316FA04
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】 雲霧が適切に行われたか否かに関する客観的な情報を取得できる眼屈折測定装置、および眼屈折測定プログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】 被検眼の屈折特性を他覚的に測定する眼屈折測定装置であって、前記被検眼に呈示する固視標を光軸方向に移動させることで、前記被検眼に雲霧を掛ける固視標投影手段と、雲霧時における前記被検眼の前眼部を複数回撮影する撮影手段と、前記撮影手段によって取得された複数の前眼部画像に基づいて、雲霧時における瞳孔サイズの経時変化を検出する演算制御手段と、を備えることを特徴とする。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の屈折特性を他覚的に測定する眼屈折測定装置であって、
前記被検眼に呈示する固視標を光軸方向に移動させることで、前記被検眼に雲霧を掛ける固視標投影手段と、
雲霧時における前記被検眼の前眼部を複数回撮影する撮影手段と、
前記撮影手段によって取得された複数の前眼部画像に基づいて、雲霧時における瞳孔サイズの経時変化を検出する演算制御手段と、
を備えることを特徴とする眼屈折測定装置。
【請求項2】
前記演算制御手段は、前記経時変化に基づいて、雲霧時における前記瞳孔の動きが散瞳か否かを判定することを特徴とする請求項1の眼屈折測定装置。
【請求項3】
前記演算制御手段は、前記経時変化に基づいて、雲霧時における前記被検眼の縮瞳または散瞳の速さを算出することを特徴とする請求項1または2の眼屈折測定装置。
【請求項4】
正常眼の縮瞳または散瞳の速さを記憶するデータベースをさらに備え、
前記演算制御手段は、前記被検眼の縮瞳または散瞳の速さと、前記データベースに記憶された正常眼の縮瞳または散瞳の速さを比較して、前記被検眼の縮瞳または散瞳の速さの適否を判定することを特徴とする請求項3の眼屈折測定装置。
【請求項5】
前記演算制御手段は、前記経時変化に基づいて、前記屈折特性の測定値の信頼度の高低を判定することを特徴とする請求項1~4のいずれかの眼屈折測定装置。
【請求項6】
被検眼の屈折特性を他覚的に測定する眼屈折測定装置において実行される眼屈折測定プログラムであって、前記眼屈折測定装置の制御手段によって実行されることで、
前記被検眼に呈示する固視標を光軸方向に移動させることで、前記被検眼に雲霧を掛ける固視標投影ステップと、
雲霧時における前記被検眼の前眼部を複数回撮影する撮影ステップと、
前記撮影ステップにおいて取得された複数の前眼部画像に基づいて、雲霧時における瞳孔サイズの経時変化を検出する演算制御ステップと、
を前記眼屈折測定装置に実行させることを特徴とする眼屈折測定プログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼の眼屈折特性を他覚的に測定する眼屈折測定装置、および眼屈折測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来において、被検眼の眼屈折測定を他覚的に測定するための眼屈折測定装置が知られている(特許文献1参照)。眼屈折特性を測定する場合、例えば、被検眼に呈示する固視標を光軸方向に移動させて雲霧を掛け、被検眼の調節が解除された状態で測定が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-346997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の眼屈折測定装置において、雲霧が適切に掛けられていない場合、測定値が不適正な値となってしまうが、雲霧が適切に掛けられているか否かは検者の主観的な判断に委ねられていた。
【0005】
本開示は、従来の問題点に鑑み、雲霧が適切に行われたか否かに関する客観的な情報を取得できる眼屈折測定装置、および眼屈折測定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0007】
(1) 被検眼の屈折特性を他覚的に測定する眼屈折測定装置であって、前記被検眼に呈示する固視標を光軸方向に移動させることで、前記被検眼に雲霧を掛ける固視標投影手段と、雲霧時における前記被検眼の前眼部を複数回撮影する撮影手段と、前記撮影手段によって取得された複数の前眼部画像に基づいて、雲霧時における瞳孔サイズの経時変化を検出する演算制御手段と、を備えることを特徴とする。
(2) 被検眼の屈折特性を他覚的に測定する眼屈折測定装置において実行される眼屈折測定プログラムであって、前記眼屈折測定装置の制御手段によって実行されることで、前記被検眼に呈示する固視標を光軸方向に移動させることで、前記被検眼に雲霧を掛ける固視標投影ステップと、雲霧時における前記被検眼の前眼部を複数回撮影する撮影ステップと、前記撮影ステップにおいて取得された複数の前眼部画像に基づいて、雲霧時における瞳孔サイズの経時変化を検出する演算制御ステップと、を前記眼屈折測定装置に実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、雲霧が適切に行われたか否かに関する客観的な情報を取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】眼屈折測定装置の概略構成を示す図である。
図2】眼屈折測定装置の内部構成を示す図である。
図3】眼屈折測定装置の制御動作を示すフローチャートである。
図4】前眼部画像の一例を示す図である。
図5】測定結果の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態>
本開示に係る実施形態について説明する。本実施形態の眼屈折測定装置(例えば、眼屈折測定装置1)は、被検眼の屈折特性を他覚的に測定する。眼屈折測定装置は、例えば、固視標投影部(例えば、固視標光学系300)と、撮影部(例えば、観察光学系500)と、演算制御部(例えば、制御部70)を備える。固視標投影部は、例えば、被検眼に呈示する固視標を光軸方向に移動させることで、被検眼に雲霧を掛ける。撮影部は、雲霧時における被検眼の前眼部を複数回撮影する。雲霧時とは、例えば、固視標を被検眼の焦点が合う位置(雲霧開始位置d2)に移動させてから所定の雲霧量だけ遠ざけた位置(例えば、雲霧完了位置d3)に移動させるまでの間の時点を少なくとも含む。演算制御部は、例えば、撮影部によって取得された撮影タイミングの異なる複数の前眼部画像に基づいて、雲霧時における瞳孔サイズ(瞳孔径、または瞳孔面積など)の経時変化を検出する。本実施形態の眼屈折測定装置は、上記のような構成を備えることによって、被検眼の雲霧が適切に行われたか否かに関する客観的な情報を取得できる。
【0011】
なお、演算制御部は、瞳孔サイズの経時変化に基づいて、雲霧時における瞳孔の動きが散瞳か否か(または散瞳か縮瞳か)を判定してもよい。例えば、演算制御部は、時間経過によって瞳孔サイズが小さくなった場合に散瞳していない(または縮瞳した)と判定し、時間経過によって瞳孔サイズが大きくなった場合に散瞳したと判定してもよい。これによって、固視標の動きに対して被検眼が適切に反応しているかを容易に判定できる。
【0012】
なお、演算制御部は、瞳孔サイズの経時変化に基づいて、雲霧時における被検眼の縮瞳または散瞳の速さ(散瞳速度または縮瞳速度)を算出してもよい。これによって、雲霧時に縮瞳が速やかに回復(散瞳)しているか否かの客観的な情報を取得できる。
【0013】
なお、本実施形態の眼屈折測定装置は、データベースをさらに備えてもよい。データベースは、例えば、正常眼の縮瞳または散瞳の速さが記憶された記憶部などによって実現される。例えば、演算制御部は、被検眼の縮瞳または散瞳の第一の速さと、データベースに記憶された正常眼の縮瞳または散瞳の第二の速さを比較して、第一の速さの適否を判定してもよい。これによって、被検眼の雲霧が適切に行われたかに関する統計的に有用な情報を取得できる。
【0014】
なお、演算制御部は、瞳孔サイズの経時変化に基づいて、屈折特性の測定値の信頼度の高低を判定してもよい。例えば、演算制御部は、雲霧時における被検眼が縮瞳状態から散瞳状態に戻った場合に測定値の信頼度が高いと判定し、雲霧時における被検眼が縮瞳状態のままであったり、最初から散瞳状態のままであったりした場合は測定値の信頼度が低いと判定してもよい。また、演算制御部は、雲霧時における被検眼の散瞳速度(または縮瞳速度)が基準値に対して遅いか適切か(または速いか)に基づいて測定値の信頼度を判定してもよい。
【0015】
なお、演算制御部70は、記憶部(例えば、記憶部72)に記憶された眼屈折測定プログラムを眼屈折測定装置に実行させてもよい。眼屈折測定プログラムは、例えば、固視標投影ステップと、撮影ステップと、演算制御ステップとを含む。固視標投影ステップは、例えば、被検眼に呈示する固視標を光軸方向に移動させることで、被検眼に雲霧を掛けるステップである。撮影ステップは、雲霧時における被検眼の前眼部を複数回撮影するステップである。演算制御ステップは、撮影ステップにおいて取得された複数の前眼部画像に基づいて、雲霧時における瞳孔サイズの経時変化を検出するステップである。
【0016】
<実施例>
以下、本開示に係る実施例について説明する。図1は眼屈折測定装置1の外観構成図である。眼屈折測定装置1は、例えば、基台2、顔支持部3、駆動部4、表示部75、操作部76、および測定部100等を備える。顔支持部3は、基台2に固定され、被検者の顔を支持する。駆動部4は、測定部100を基台2に対してXYZ方向に駆動させる。表示部75は、各種の情報(例えば、被検眼の観察像、被検眼の測定結果、等)を表示する。操作部76は、各種の設定を行う。本実施例では、タッチパネル付きの表示部75が操作部76を兼用する。測定部100は、後述する光学系を収納する。なお、本実施例では、図2のように眼屈折測定装置1の左右方向をX方向、上下方向をY方向、前後方向をZ方向として表す。
【0017】
図2は眼屈折測定装置1の光学系及び制御系の概略構成図である。例えば、測定部100は、測定光学系200、固視標光学系300、指標投影光学系400、観察光学系500、等を備える。測定光学系200は、被検眼Eの眼屈折力(例えば、球面度数、円柱度数、乱視軸角度、等)を他覚的に測定する。固視標光学系300は、被検眼Eに対して固視標を呈示する。指標投影光学系400は、被検眼EのZ方向を検出するためのアライメント指標を投影する。観察光学系500は、被検眼Eの前眼部を撮像する。
【0018】
<測定光学系>
例えば、測定光学系200は、投光光学系210と、受光光学系220と、を備える。投光光学系210は、被検眼Eにおける瞳孔の中心部を介して、被検眼Eの眼底Efにスポット状の測定光束を投影する。受光光学系220は、眼底Efにより反射された測定光束の反射光束を、瞳孔を介してリング状に取り出す。
【0019】
例えば、投光光学系210は、光源211、リレーレンズ212、ホールミラー213、プリズム214、駆動部215、対物レンズ216、等を備える。光源211は、測定光学系200の光軸N1上に配置され、眼底Efと光学的に共役な位置関係となっている。例えば、光源211としては、LED(Light Emitting Diode)、SLD(Superluminescent Diode)、等を用いることができる。ホールミラー213の開口部は、瞳孔と光学的に共役な位置関係となっている。プリズム214は瞳孔と共役な位置から外れた位置に配置され、プリズム214を通過する光束を光軸N1に対して偏心させる。なお、プリズム214に代えて、光軸N1上に平行平面板を斜めに配置してもよい。駆動部215は、光軸N1を中心として、プリズム214を回転駆動させる。
【0020】
測定光源211は、瞳孔を介して眼底Efにスポット状の測定指標を投影するために利用される。光源211は、被検者に眩しさを感じさせにくい赤外域の光を発することが望ましい。但し、必ずしもこれに限られるものではない。また、本実施例において、光源211は、被検眼Eの徹照像を撮影するための照明光源としても用いられる。即ち、光源211から出射された光束(照明光)の眼底反射光によって、被検眼Eの瞳孔内が照明される。
【0021】
例えば、受光光学系220は、対物レンズ216、プリズム214、ホールミラー213、リレーレンズ221、全反射ミラー222、受光絞り223、コリメータレンズ224、リングレンズ225、撮像素子226、等を備える。対物レンズ216、プリズム214、及びホールミラー213は、投光光学系210と共用される。リレーレンズ221及び全反射ミラー222は、ホールミラー213の反射方向に配置される。受光絞り223、コリメータレンズ224、リングレンズ225、及び撮像素子226は、全反射ミラー222の反射方向に配置される。受光絞り223は、眼底Efと光学的に共役な位置関係となっている。リングレンズ225は、瞳孔と光学的に共役な位置関係となっている。例えば、リングレンズ225は、円筒レンズがリング状に形成されたレンズ部と、レンズ部以外に遮光用のコーティングが施された遮光部と、から構成される。撮像素子226は、眼底Efと光学的に共役な位置関係となっている。例えば、撮像素子226としては、CCD(Charged-Coupled Devices)、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)、等を用いることができる。例えば、撮像素子226からの出力信号は、制御部70に入力される。
【0022】
なお、被検眼Eと対物レンズ216との間には、ビームスプリッタ230が配置されている。ビームスプリッタ230は、固視標光学系300からの測定光束を被検眼Eへと導き、被検眼Eの前眼部からの反射光束を観察光学系500へと導く。
【0023】
上記の構成において、光源211から出射された測定光束は、リレーレンズ212、ホールミラー213、プリズム214、対物レンズ216、及びビームスプリッタ230を経て、眼底Ef上にスポット状の測定光束を投影する。これによって、眼底Ef上に点光源像が形成される。このとき、プリズム214が光軸N1周りに回転され、ホールミラー213の開口部の瞳投影像(瞳上での投影光束)は高速に偏心回転される。眼底Efにて測定光束が反射された反射光束は、ビームスプリッタ230、対物レンズ216、及びプリズム214を介して、ホールミラー213に反射される。反射光束は、さらに、リレーレンズ221を介して全反射ミラー222に反射され、受光絞り223の位置に集光する。コリメータレンズ224及びリングレンズ225によって、リング状の像が撮像素子226に結像する。
【0024】
なお、測定光学系200は上記の構成に限らず、被検眼Eの眼底Efに測定光束を投影する投光光学系と、眼底Efにより反射された測定光束の反射光束を受光する受光光学系と、を有する測定光学系であればよい。例えば、測定光学系200は、眼底Efにスポット指標を投影し、シャックハルトマンセンサを用いて、眼底Efにおけるスポット指標の反射光束を検出する測定光学系であってもよい。
【0025】
<固視標光学系>
固視標光学系300は、被検眼Eに固視標を投影する。固視標は、例えば、被検眼Eを測定する際に固視を誘導するために用いられる。例えば、固視標光学系300は、光源301、固視標板302、投光レンズ303、全反射ミラー304、ハーフミラー305、対物レンズ306、駆動部307、等を備える。光源301は光軸N2上に配置される。固視標板302には、固視標が形成され、光源301によって照明されることで被検眼Eに固視標を呈示する。駆動部307は、光源301及び固視標板302の位置を光軸N2方向へ移動させることによって、被検眼Eに呈示する固視標の呈示位置を移動させることができる。また、駆動部307は、光源301及び固視標板302を光軸N2方向へ移動させることで、被検眼Eに雲霧を掛けることができる。例えば、駆動部307としては、アクチュエータ(例えば、ステッピングモータ等)と、基準位置となるフォトインタラプタと、が併用されてもよい。なお、駆動部307は、固視標板302に対して投光レンズ303の位置を移動させることによって固視標の呈示位置を変更してもよい。したがって、投光レンズ303の位置を移動させることによって被検眼Eに雲霧を掛けてもよい。光源301からの光束は、光軸N2に沿って固視標板302および投光レンズ303を通過し、全反射ミラー304で反射され、ハーフミラー305、対物レンズ306を通過した後、ビームスプリッタ230によって反射され、光軸N1に沿って被検眼に投影される。
【0026】
<指標投影光学系>
指標投影光学系400は、第1指標投影光学系と、第2指標投影光学系と、を備える。第1指標投影光学系は、被検眼Eの角膜に無限遠のアライメント指標を投影する。第2指標投影光学系は、被検眼Eの角膜に有限遠のアライメント指標を投影する。
【0027】
例えば、第1指標投影光学系は、点光源401a及び401b、コリメータレンズ402a及び402b、等を有する。なお、便宜上、図2では第1指標投影光学系の一部のみを図示している。点光源401a及び401bは、近赤外光を発する光源であってもよい。コリメータレンズ402a及び402bは、点光源から発せられた光束を平行光束(略平行光束)にする。これらの点光源及びコリメータレンズは、光軸N1を中心とした同心円上に45度間隔で複数個が配置され、光軸N1を通る垂直平面を挟んで左右対称となっている。これによって、被検眼Eの角膜に無限遠のアライメント指標が投影される。
【0028】
例えば、第2指標投影光学系は、点光源403a及び403bを有する。なお、便宜上、図2では第2指標投影光学系の一部のみを図示している。点光源403a及び403bは、近赤外光を発する光源であってもよい。例えば、これらの点光源は、第1指標投影光学系が有する点光源とは異なる位置に配置される。これによって、被検眼Eに有限遠のアライメント指標が投影される。
【0029】
なお、本実施例においては、第1指標投影光学系及び第2指標投影光学系の光源として点状の光源を用いる構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、光源はリング状の光源やライン状の光源を用いるようにしてもよい。また、第2指標投影光学系は、被検眼Eの前眼部を照明する前眼部照明、被検眼Eの角膜形状を測定する指標、等としても用いることができる。
【0030】
<観察光学系>
例えば、観察光学系500は、対物レンズ306、ハーフミラー305、撮像レンズ501、撮像素子502、等を備える。対物レンズ306及びハーフミラー305は、固視標光学系300と共用される。撮像レンズ501及び撮像素子502は、ハーフミラー305の反射方向に配置される。撮像素子502は、被検眼Eの前眼部と光学的に共役な位置関係となっている。この撮像素子502によって、被検眼Eの前眼部の正面画像が撮像される。前眼部画像の一種である徹照像も、撮像素子502によって撮像される。例えば、撮像素子502からの出力は、制御部70及び表示部75に入力される。なお、観察光学系500は、指標投影光学系400によって被検眼Eの角膜に形成されたアライメント指標像を検出する光学系を兼ね、制御部70によってアライメント指標像の位置を検出する。
【0031】
<制御部>
例えば、制御部70は、CPU(プロセッサ)71、記憶部(不揮発性メモリなど)72等を備える。CPU71は、眼屈折測定装置1の制御を司る。記憶部72は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、および着脱可能なUSBメモリ等を記憶部72として使用してもよい。本実施例では、後述する眼屈折測定処理(図3参照)を実行するための眼屈折測定プログラム等のCPU71が実行する各種プログラムが、記憶部72に記憶される。
【0032】
制御部70には、駆動部4、表示部75(操作部76)等が電気的に接続される。また、制御部70には、測定部100が備える各光源、各撮像素子、各駆動部等が電気的に接続される。
【0033】
<制御動作>
続いて、本実施例の眼屈折測定装置1を用いて被検眼の眼屈折力を測定するときの制御動作を説明する。本実施例の眼屈折測定装置1は、雲霧および眼屈折力測定と並行して前眼部画像を撮影し、瞳孔径の算出を行う。そして、眼屈折測定装置1は、瞳孔径の経時変化に基づいて瞳孔が縮瞳したか散瞳したかを判定し、判定結果を瞳孔状態として表示する。以下、図3に示すフローチャートの各処理について説明する。
【0034】
(ステップS1:アライメント)
まず、制御部70は、被検眼に対する装置のアライメントを行う。例えば、制御部70は、指標投影光学系400が備える点光源を点灯させる。これによって、被検眼Eの角膜にアライメント指標像が投影される。検者は、顔支持部3に被検者の顔を固定させて、固視標光学系300によって投影された固視標を観察するよう被検者に指示する。被検眼Eの前眼部には、無限遠と有限遠のアライメント指標像が投影される。被検眼Eの前眼部は、観察光学系500が備える撮像素子502により検出され、前眼部画像が表示部75に表示される。制御部70は、前眼部画像から検出されたアライメント指標の位置関係に基づいて、被検眼Eに対する測定部100のアライメントのずれ量を検出する。制御部70は、検出したずれ量に基づいて駆動部4を制御し、測定部100を3次元的に駆動させて被検眼Eに対するアライメントを行う。もちろん、検者が操作部76を操作することによって、手動でアライメントを行ってもよい。
【0035】
(ステップS2:予備測定)
アライメントが完了すると、制御部70は、予備測定を開始する。制御部70は、予備測定において、被検眼Eに対して光学的に十分な遠方の初期位置d1(図2参照)に固視標板302を配置して固視標を呈示する。例えば、被検眼Eが近視眼であると、被検眼Eの焦点は固視標に合わず、固視標がぼやけて観察される。制御部70は、光源211から測定光束を照射させ、測定光束の反射光束をリング像として撮像素子226に撮像させる。撮像素子226によって撮影されたリング像は、記憶部72に記憶される。
【0036】
制御部70は、記憶部72に記憶されたリング像に基づいて、予備測定における眼屈折力を算出する。例えば、被検眼Eが正視眼(つまり、球面度数が0D)であれば、眼底Efからの反射光束はリングレンズ225に平行光束(略平行光束)として入射する。このため、撮像素子226には、リングレンズ225と同じ大きさのリング像が結像する。一方、例えば、被検眼Eが遠視眼(例えば、球面度数が+3D、等)であれば、撮像素子226には、球面度数に応じて拡大されたリング像が結像する。また、例えば、被検眼Eが近視眼(例えば、球面度数が-3D、等)であれば、撮像素子226には、球面度数に応じて縮小されたリング像が結像する。なお、例えば、被検眼Eが乱視眼(例えば、円柱度数が-2Dであり乱視軸角度が45度、等)であれば、撮像素子226には、円柱度数に応じて楕円形状となり、乱視軸角度に応じて傾斜したリング像が結像する。
【0037】
制御部70は、リング像の画像データを細線化し、各経線方向におけるリング像の位置を特定する。例えば、リング像の位置は、輝度信号を検出して、そのピーク値や重心位置等を求めることにより特定してもよい。続いて、制御部70は、特定したリング像の位置に基づいて、最小二乗法等によりリング像を近似し、近似されたリング像の形状から各経線方向の眼屈折力を求める。また、制御部70は、この眼屈折力に対して所定の処理を行うことで、被検眼Eの他覚的に測定された眼屈折力を取得する。
【0038】
(ステップS3:雲霧)
続いて、制御部70は、雲霧動作を行う。被検眼Eの予備測定の眼屈折力は、被検眼Eに調節が働いた状態で測定された可能性がある。すなわち、被検眼Eの予備測定の眼屈折力は、被検眼Eが水晶体の厚み(つまり、水晶体の屈折力)を変化させた状態で測定された可能性がある。このため、制御部70は、被検眼Eに対して雲霧を掛け、被検眼Eの調節を解除させる。
【0039】
まず、制御部70は、予備測定で得られた被検眼Eの眼屈折力に基づいて被検眼Eの焦点が合う雲霧開始位置d2に、固視標板302を移動させる。これによって、被検眼Eには固視標がはっきりと観察されるようになる。次に、制御部70は、固視標板302を、所定の雲霧量Δdに相当する雲霧完了位置d3まで移動させる。このとき、固視標板302は、雲霧開始位置d2から雲霧完了位置d3に向けて被検眼Eから光学的に遠ざかる(離れる)方向に移動される。固視標板302が雲霧完了位置d3に到達すると、被検眼Eに対する雲霧が完了する。これによって、被検眼Eに雲霧が掛けられ、被検眼Eの焦点は再び固視標板302に合わなくなる。被検眼Eの眼屈折力は、予備測定にて得られた眼屈折力から真値へと近づき、被検眼Eの調節が解除される。
【0040】
(ステップS4:本測定)
制御部70は、被検眼Eに雲霧を行った状態で、本測定を開始する。例えば、制御部70は、所定のタイミング毎にリング像を撮像して解析し、被検眼Eの眼屈折力を取得する。制御部70は、本測定における眼屈折力を記憶部72に記憶させる。
【0041】
(ステップS5:前眼部撮影)
前述のように、制御部70は、ステップS2~S4と並行して前眼部を撮影する。例えば、制御部70は、ステップS2の予備測定開始と同時に前眼部の撮影を開始し、ステップS4の本測定終了までの間に一定の時間間隔で繰り返し前眼部の撮影を行う。
【0042】
(ステップS6:瞳孔径算出)
制御部70は、ステップS5において撮影された前眼部画像に基づいて瞳孔径を算出する。例えば、制御部70は、前眼部画像の解析によって瞳孔のエッジを検出し、瞳孔径を算出する。瞳孔径の算出については、特開2013-052048号公報等に記載されるような種々の画像処理方法を用いることができる。制御部70は、ステップS5およびS6の処理をステップS4の本測定終了まで複数回繰り返す。
【0043】
(ステップS7:瞳孔の動き判定)
制御部70は、ステップS6において算出された瞳孔径の経時変化に基づいて、瞳孔の動きが縮瞳か散瞳かを判定する。例えば、制御部70は、図4に示すように、ある時間t1において撮影された前眼部画像(図4(a))の瞳孔径P1と、時間t1から所定時間経過した時間t2において撮影された前眼部画像(図4(b))の瞳孔径P2を比較する。そして制御部70は、瞳孔径P2が瞳孔径P1に対して小さくなっている場合に縮瞳と判定し、瞳孔径P2が瞳孔径P1に対して大きくなっている場合に散瞳と判定する。
【0044】
(ステップS8:結果表示)
制御部70は、眼屈折力の測定結果と、瞳孔の動きの判定結果を表示部75に表示する。図5の例では、球面度数、円柱度数、乱視軸が眼屈折力の測定結果が表示され、瞳孔状態として雲霧時の瞳孔の動きの判定結果が表示される。
【0045】
被検眼Eの瞳孔は、通常、輻輳反射(焦点を合わせる際に両眼が内転あるいは外転する輻輳運動に伴って瞳孔径が変化する反応のこと)によって、近くを見るときには縮瞳し、遠くを見るときには散瞳する。したがって、雲霧が適切に掛けられる場合は、予備測定時に固視標が十分遠方の初期位置d1に配置されているときは瞳孔が散瞳し、固視標が焦点の合う雲霧開始位置d2に移動されたときは瞳孔が縮瞳し、固視標が雲霧完了位置d3に遠ざけられたときは瞳孔が散瞳する。つまり、検者は、表示部75に表示された瞳孔状態を確認し、雲霧時の瞳孔状態が縮瞳であるときは雲霧が適切に掛けられていないと判断でき、雲霧時の瞳孔状態が散瞳であるときは雲霧が適切に掛けられていると判断できる。
【0046】
なお、制御部70は、瞳孔状態に基づいて測定値の信頼度を判定してもよい。例えば、測定中の瞳孔状態が散瞳の場合は信頼度が高いと判定し、測定中の瞳孔状態が縮瞳の場合は信頼度が低いと判定してもよい。制御部70は、図5に示すように、瞳孔状態に基づく測定値の信頼度の判定結果を表示部75に表示させてもよい。また、制御部70は、瞳孔径が安定しているか否かの判定結果を信頼度の判定に加味してもよい。例えば、制御部70は、瞳孔径の変化量が所定以内に収まっているときに瞳孔径が安定していると判定し、測定値の信頼度を高く評価してもよい。また、制御部70は、瞳孔径の変化量が所定以内に収まっていないときは瞳孔径が不安定だと判定し、測定値の信頼度を低く評価してもよい。
【0047】
以上のように、雲霧動作時における瞳孔の動きを判定することによって、雲霧が適切に掛けられているか(つまり、被検眼の調節が解除されているか)について客観的な情報を提供することができる。これによって、従来のように、検者が装置を操作しながら雲霧作動後の縮瞳が回復(散瞳)するかどうか被検眼の状態を細かく観察して主観で判断する場合に比べ、検者の負担軽減、人為的判断ミスの軽減、または処方される眼鏡やコンタクトレンズの安定性向上などを図ることができる。
【0048】
<変容例>
なお、制御部70は、単位時間当たりの瞳孔径の変化量(瞳孔の散瞳速度または縮瞳速度)を算出してもよい。例えば図4の場合において、制御部70は、時間t2の瞳孔径P2から時間t1の瞳孔径P1を差し引いた瞳孔径の変化量を、時間t1から時間t2までの時間間隔(t2-t1)で除算することによって、散瞳速度または縮瞳速度を算出してもよい。雲霧作動後の縮瞳が速やかに回復(散瞳)していれば、被検眼の調節が適正に解除され、測定値の信頼度が高いと言える。したがって、制御部は、算出された散瞳速度が基準値より速い(または近い)場合、測定値の信頼度が高いと判定するようにしてもよい。
【0049】
なお、制御部70は、算出した散瞳速度または縮瞳速度を記憶部72に記憶されたデータベースと比較することによって、被検眼の雲霧が適切に行われたか否かを判定してもよい。これによって、被検眼の眼屈折力の信頼性を統計的、客観的に評価することができる。なお、データベースには、散瞳完了後の経過時間とそのときの散瞳速度(または縮瞳速度)などの情報が蓄積されてもよい。また、瞳孔は加齢に伴って縮瞳し、焦点深度を深めて収差を減少させることにより調節力を補うが、若年者では輻輳と調節により調節力を得ている。つまり、瞳孔の挙動や散瞳速度(または縮瞳速度)は年齢によって異なる可能性があるため、制御部70は、データベースに記憶された正常眼のデータにおいて、被検者の年齢と近いデータを比較するようにしてもよい。
【0050】
なお、制御部70は、瞳孔の状態を示す指標として縮瞳または散瞳の速度だけでなく、例えば、瞳孔径が安定するまでの時間を計測してもよい。また、瞳孔径が縮瞳または散瞳する前の元の大きさ(初期瞳孔径)に戻るまでの時間を計測してもよい。これらの情報を測定値の信頼度の判定に用いることで、瞳孔径の個人差の影響を抑えることができる。
【0051】
なお、以上の実施例において、測定中の前眼部を一定間隔で撮影し、その度に瞳孔径を算出するようにしたが、これに限らない。例えば、制御部70は、固視標板302が初期位置d1、雲霧開始位置d2、雲霧完了位置d3に移動したときの少なくとも3パターンの瞳孔径を測定するようにしてもよい。この場合、制御部70は、固視標板302が初期位置d1にあるときと雲霧開始位置d2にあるときとで瞳孔径を比較し、被検眼Eが縮瞳していれば測定値の信頼度が高いと判定してもよい。また、制御部70は、固視標板302が雲霧開始位置d2にあるときと雲霧完了位置d3にあるときとで瞳孔径を比較し、被検眼Eが散瞳していれば測定値の信頼度が高いと判定してもよい。
【0052】
なお、被検者が高齢である場合、調節ができず、固視ができないため、瞳孔が縮瞳しないままであることがある。このような場合、雲霧を行っても瞳孔径が変化しないため、制御部70は、測定中に瞳孔径が変化(縮瞳)しなかったことを表示部75に表示させるようにしてもよい。これによって、検者は、測定中の瞳孔状態が散瞳であったとしても、測定値の信頼度が低い可能性があることを認識できる。また、固視標の固視ができず調節刺激を適切に把握できない場合、アデュー症候群など神経系の異常等のため瞳孔が変化しなかったり、縮瞳すべきどころで散瞳したりすることがある。このような場合、制御部70は、瞳孔の挙動に異常があることを表示部75に表示させてもよい。これによって、検者は被検眼の瞳孔の挙動に異常があることを認識できる。
【0053】
なお、以上の実施例において、制御部70は、前眼部画像から算出した瞳孔径に基づいて瞳孔の動きを判定したが、これに限らない。例えば、制御部70は、前眼部画像から算出した瞳孔面積に基づいて瞳孔の動きを判定してもよい。このように、瞳孔サイズ(瞳孔の大きさ)として、瞳孔径以外の数値を用いて瞳孔の動きを判定してもよい。
【0054】
なお、以上の実施例において、眼屈折測定装置1は、眼屈折力を測定したが、他の屈折特性を測定する装置にも適用できる。例えば、屈折度数分布または波面収差などの他の屈折特性を測定する装置において、雲霧時の瞳孔サイズの経時変化を検出してもよい。これによって、他の屈折特性の測定値の信頼性を客観的に評価することができる。
【0055】
なお、必ずしも図3のような制御動作でなくてもよい。例えば、図3のフローチャートの順番は変更してもよい。例えば、以上の実施例では、ステップS5とS6を複数回繰り返した後でステップS7の瞳孔の動き判定を実行するという説明をしたが、ステップS5とS6において瞳孔サイズを算出する度にリアルタイムで瞳孔の動き判定を行ってもよい。また、この場合、制御部70は、リアルタイムの瞳孔状態を表示部75に表示するようにしてもよい。
【0056】
なお、制御部70は、瞳孔の動きが適正でなかった場合、眼屈折力の測定を自動でやり直すようにしてもよい。例えば、予備測定または雲霧動作からやり直すようにしてもよい。このように、制御部70は、瞳孔の動きの判定結果に基づいて測定動作の制御を切り換えるようにしてもよい。また、リアルタイムで瞳孔の動きを判定している場合は、瞳孔の動きが異常であると判定した時点で測定をやり直すようにしてもよい。
【0057】
本開示は上述した実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施例に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施例についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
70 制御部
72 記憶部
75 表示部
76 操作部
100 測定部
200 測定光学系
300 固視標光学系
400 指標投影光学系
500 観察光学系
図1
図2
図3
図4
図5