(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119041
(43)【公開日】2022-08-16
(54)【発明の名称】シール構造及びシール構造の組立方法
(51)【国際特許分類】
E21D 9/06 20060101AFI20220808BHJP
E21D 11/38 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
E21D9/06 301E
E21D9/06 311Z
E21D11/38 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021015998
(22)【出願日】2021-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】505398952
【氏名又は名称】中日本高速道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 篤徳
(72)【発明者】
【氏名】江嵜 智和
(72)【発明者】
【氏名】福田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】福田 勝仁
(72)【発明者】
【氏名】山本 宙生
【テーマコード(参考)】
2D054
2D155
【Fターム(参考)】
2D054AB05
2D054AC01
2D054AC18
2D054EA07
2D054FA06
2D155BA01
2D155BA04
2D155BB03
2D155LA02
(57)【要約】
【課題】シール性を損なうことなくシール構造の組立て労力を低減する。
【解決手段】シール構造100は、複数のシールユニット10を備え、シールユニット10は、ブラシ11と、第1遮蔽シート21と、第1付勢部材31と、を備え、第1付勢部材31は、ブラシ11に対して周方向にずらして配置されており、第1遮蔽シート21は、第1延出部21aと第2延出部21bとを有し、複数のシールユニット10が周方向に沿って並べて配置された状態において、隣り合って配置された2つのシールユニット10の一方のシールユニット10における第1遮蔽シート21の第1延出部21aは、他方のシールユニット10における第1遮蔽シート21の第2延出部21bに重なり、重なり合った第1及び第2延出部21a,21bは、一方のシールユニット10の第1付勢部材31により、他方のシールユニット10のブラシ11に付勢される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの坑口を形成する枠体と、前記枠体を通って地山内に推進されるトンネル構造体と、の間、又はトンネルを掘進する掘進機の枠体と、前記枠体内で構築されるトンネル構造体と、の間をシールするシール構造であって、
前記トンネルの周方向に沿って前記枠体に並べて配置される複数のシールユニットを備え、
前記シールユニットは、
前記トンネル構造体の外周面に摺接するブラシと、
前記周方向において前記ブラシに重ねて設けられ、前記トンネルの軸方向における流体の流れを遮る遮蔽シートと、
前記周方向において前記遮蔽シートに重ねて設けられ、前記遮蔽シートを前記ブラシに付勢する付勢部材と、を備え、
前記付勢部材は、前記周方向において一端側が前記ブラシの外側に位置し、他端側が前記ブラシの内側に位置するように前記ブラシに対して前記周方向にずらして配置されており、
前記遮蔽シートは、
前記周方向において前記ブラシから前記付勢部材の前記一端側へと前記付勢部材に沿って延出する第1延出部と、
前記周方向において前記付勢部材の前記他端側から前記ブラシに沿って延出する第2延出部と、を有し、
複数の前記シールユニットが前記周方向に沿って並べて配置された状態において、隣り合って配置された2つの前記シールユニットの一方の前記シールユニットにおける前記遮蔽シートの前記第1延出部は、他方の前記シールユニットにおける前記遮蔽シートの前記第2延出部に重なり、重なり合った前記第1及び第2延出部は、前記一方の前記シールユニットの前記付勢部材により、前記他方の前記シールユニットの前記ブラシに付勢される、
シール構造。
【請求項2】
前記遮蔽シートは、前記ブラシを間に挟んで設けられる第1及び第2遮蔽シートであり、
前記付勢部材は、前記第1及び前記第2遮蔽シートを前記ブラシにそれぞれ付勢する第1及び第2付勢部材である、
請求項1に記載のシール構造。
【請求項3】
前記第1及び第2付勢部材は、周方向において互いに反対の方向に前記ブラシに対してずらして配置されており、
複数の前記シールユニットが前記周方向に沿って並べて配置された状態において、前記一方の前記シールユニットにおける前記第1遮蔽シートの前記第1延出部は、前記他方の前記シールユニットにおける前記第1遮蔽シートの前記第2延出部に重なり、重なり合った前記第1遮蔽シートの前記第1及び第2延出部は、前記一方の前記シールユニットの前記第1付勢部材により、前記他方の前記シールユニットの前記ブラシに付勢され、前記他方の前記シールユニットにおける前記第2遮蔽シートの前記第1延出部は、前記一方の前記シールユニットにおける前記第2遮蔽シートの前記第2延出部に重なり、重なり合った前記第2遮蔽シートの前記第1及び第2延出部は、前記他方の前記シールユニットの前記第2付勢部材により、前記一方の前記シールユニットの前記ブラシに付勢される、
請求項2に記載のシール構造。
【請求項4】
前記シールユニットは、前記付勢部材を支持する支持プレートを更に備え、
前記支持プレートは、前記周方向において前記付勢部材と同じ方向に前記ブラシに対してずらして配置されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載のシール構造。
【請求項5】
前記シールユニットは、前記ブラシ、前記遮蔽シート及び前記付勢部材を連結する連結部材を更に備え、
前記連結部材は、前記ブラシ、前記遮蔽シート及び前記付勢部材を貫通して設けられる、
請求項1から4のいずれか1項に記載のシール構造。
【請求項6】
トンネルの坑口を形成する枠体と、前記枠体を通って地山内に推進されるトンネル構造体と、の間、又はトンネルを掘進する掘進機の枠体と、前記枠体内で構築されるトンネル構造体と、の間をシールするシール構造の組立方法であって、
前記シール構造は、複数のシールユニットを備え、
前記シールユニットは、
前記トンネル構造体の外周面に摺接するブラシと、
前記トンネルの周方向において前記ブラシに重ねて設けられ、前記トンネルの軸方向における流体の流れを遮る遮蔽シートと、
前記周方向において前記遮蔽シートに重ねて設けられ、前記遮蔽シートを前記ブラシに付勢する付勢部材と、を備え、
前記付勢部材は、前記周方向において一端側が前記ブラシの外側に位置し、他端側が前記ブラシの内側に位置するように前記ブラシに対して前記周方向にずらして配置されており、
前記遮蔽シートは、
前記周方向において前記ブラシから前記付勢部材の前記一端側へと前記付勢部材に沿って延出する第1延出部と、
前記周方向において前記付勢部材の前記他端側から前記ブラシに沿って延出する第2延出部と、を有し、
前記組立方法は、複数の前記シールユニットを前記周方向に沿って前記枠体に並べて配置する工程を備え、
前記工程において、隣り合って配置される2つの前記シールユニットの一方の前記シールユニットにおける前記遮蔽シートの前記第1延出部を、他方の前記シールユニットにおける前記遮蔽シートの前記第2延出部に重ね、重なり合った前記第1及び第2延出部を、前記一方の前記シールユニットの前記付勢部材により、前記他方の前記シールユニットの前記ブラシに付勢する、
シール構造の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠体とトンネル構造体との間をシールするシール構造及びその組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
推進工法又はシールド工法を用いてトンネルを構築する場合には、坑口又はシールド掘進機内への地下水の流入を防止するシール構造が用いられる。特許文献1には、シールド掘進機内への地下水の流入を防止するシール構造が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されたシール構造は、シールド掘進機のテールプレートの内側に環状に並べられる複数の外側シールユニットと、環状に並べられた外側シールユニットの内側に環状に並べられる複数の内側シールユニットと、を備えている。外側シールユニットは、外側ブラシと、外側ブラシの外側に配置される外側防護板と、外側ブラシの内側に配置される遮蔽シートと、を備え、内側シールユニットは、内側ブラシと、内側ブラシの内側に配置される内側防護板と、内側ブラシの外側に配置される遮蔽シートと、を備えている。外側シールユニットと内側シールユニットは千鳥状に配列され、内側シールユニットの遮蔽シートは、外側シールユニットの遮蔽シートに積層される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたシール構造では、テールプレートの内側にトンネルの周方向に並べられた複数の外側シールユニットの内側に、複数の内側シールユニットがトンネルの周方向に並べられる。そのため、多数のシールユニットが必要であり、シール構造の組立てに多大な労力を要する。組立て労力を低減するために、外側シールユニットだけでシール構造を構成した場合には、隣り合う外側シールユニットの遮蔽シートどうしの間に隙間が形成され、シール性が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、シール性を損なうことなくシール構造の組立て労力を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、トンネルの坑口を形成する枠体と、枠体を通って地山内に推進されるトンネル構造体と、の間、又はトンネルを掘進する掘進機の枠体と、枠体内で構築されるトンネル構造体と、の間をシールするシール構造であって、トンネルの周方向に沿って枠体に並べて配置される複数のシールユニットを備え、シールユニットは、トンネル構造体の外周面に摺接するブラシと、周方向においてブラシに重ねて設けられ、トンネルの軸方向における流体の流れを遮る遮蔽シートと、周方向において遮蔽シートに重ねて設けられ、遮蔽シートをブラシに付勢する付勢部材と、を備え、付勢部材は、周方向において一端側がブラシの外側に位置し、他端側がブラシの内側に位置するようにブラシに対して周方向にずらして配置されており、遮蔽シートは、周方向においてブラシから付勢部材の一端側へと付勢部材に沿って延出する第1延出部と、周方向において付勢部材の他端側からブラシに沿って延出する第2延出部と、を有し、複数のシールユニットが周方向に沿って並べて配置された状態において、隣り合って配置された2つのシールユニットの一方のシールユニットにおける遮蔽シートの第1延出部は、他方のシールユニットにおける遮蔽シートの第2延出部に重なり、重なり合った第1及び第2延出部は、一方のシールユニットの付勢部材により、他方のシールユニットのブラシに付勢される。
【0008】
また、本発明は、トンネルの坑口を形成する枠体と、枠体を通って地山内に推進されるトンネル構造体と、の間、又はトンネルを掘進する掘進機の枠体と、枠体内で構築されるトンネル構造体と、の間をシールするシール構造の組立方法であって、シール構造は、複数のシールユニットを備え、シールユニットは、トンネル構造体の外周面に摺接するブラシと、トンネルの周方向においてブラシに重ねて設けられ、トンネルの軸方向における流体の流れを遮る遮蔽シートと、周方向において遮蔽シートに重ねて設けられ、遮蔽シートをブラシに付勢する付勢部材と、を備え、付勢部材は、周方向において一端側がブラシの外側に位置し、他端側がブラシの内側に位置するようにブラシに対して周方向にずらして配置されており、遮蔽シートは、周方向においてブラシから付勢部材の一端側へと付勢部材に沿って延出する第1延出部と、周方向において付勢部材の他端側からブラシに沿って延出する第2延出部と、を有し、組立方法は、複数のシールユニットを周方向に沿って枠体に並べて配置する工程を備え、工程において、隣り合って配置される2つのシールユニットの一方のシールユニットにおける遮蔽シートの第1延出部を、他方のシールユニットにおける遮蔽シートの第2延出部に重ね、重なり合った第1及び第2延出部を、一方のシールユニットの付勢部材により、他方のシールユニットのブラシに付勢する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シール性を損なうことなくシール構造の組立て労力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)は、本発明の実施形態に係るシール構造が用いられる推進工法を説明するための断面図であり、(b)は、
図1(a)におけるIB-IB線に沿う断面図である。
【
図2】
図1(b)におけるII-II線に沿う拡大断面図である。
【
図3】(a)は、
図2に示されるシールユニットを単体でトンネル構造体から枠体に向かって(
図2に示す矢視IIIAの方向に)見た図であり、(b)は、
図2に示されるシールユニットを単体で枠体からトンネル構造体に向かって(
図2に示す矢視IIIBの方向に)見た図である。
【
図4】(a)は、
図3(a)に示すIVA-IVA線に沿う断面図であり、(b)は、
図2に示すIVB-IVB線に沿う断面図であり、隣り合って配置された2つのシールユニットを
図4(a)に対応して示す。
【
図5】(a)は、
図3(a)に示すVA-VA線に沿う断面図であり、(b)は、
図2に示すVB-VB線に沿う断面図であり、隣り合って配置された2つのシールユニットを
図5(a)に対応して示す。
【
図6】(a)は、枠体の湾曲部に配置されるシールユニットを、
図4(a)に対応して示す断面図であり、(b)は、枠体の湾曲部に隣り合って配置された2つのシールユニットを、
図4(b)に対応して示す断面図である。
【
図7】本発明の実施形態における第1変形例に係るシール構造の拡大断面図であり、
図2に対応して示す。
【
図8】(a)は、本発明の実施形態における第2変形例に係るシール構造が用いられるシールド工法を説明するための断面図であり、(b)は、
図8(a)におけるVIIIB-VIIIB線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係るシール構造100及びその組立方法について、図面を参照して説明する。シール構造100及びその組立方法は、いわゆる推進工法において用いられる。
【0012】
図1(a)は、推進工法の概略を説明するための図であり、
図1(b)は、
図1(a)におけるIB-IB線に沿う断面図である。シールド工法では、
図1(a)に示す推進機1を用いてトンネルT1を立坑Hから掘進する。立坑Hの内壁は、例えばコンクリートで形成される。
【0013】
推進機1は、地山の内壁W1を支持可能な胴体2と、胴体2に回転可能に装着されたカッタ3と、を備えている。胴体2の内部には、カッタ3を回転させる不図示のモータが設けられる。カッタ3には、トンネルT1の軸方向に突出するカッタビット3aが複数設けられている。カッタ3が地山に押付けられた状態で回転すると、地山がカッタビット3aにより軸方向に掘削される。地山の掘削により生じる泥土は、胴体2の内部に設けられる不図示のスクリュコンベアを用いて排出される。
【0014】
立坑Hには、ジャッキ5が設けられる。ジャッキ5は、立坑Hの内壁から反力を得て推進機1をトンネルT1の軸方向に推進する。推進機1の前進に伴って、推進機1とジャッキ5の間に推進管(トンネル構造体)4が順次設けられる。推進機1とジャッキ5の間に推進管4が設けられた状態では、ジャッキ5の推進力は、推進管4を通じて推進機1に伝達される。推進管4に代えて、セグメントリングが用いられてもよい。
【0015】
トンネルT1の坑口P1は、地山を支持する支持管体(枠体)8によって形成される。推進管4は、トンネルT1の掘進に伴って、支持管体8を通って地山内にジャッキ5により推進される。支持管体8は、例えば鋼製の中空部材である。支持管体8は、立坑Hの内壁のコンクリートであってもよい。
【0016】
推進工法では、支持管体8の内周面が推進管4の外周面と間隔を空けて対向する。支持管体8の内周面と推進管4の外周面との間がシールされていないと、地山の地下水が立坑Hに流入するおそれがある。シール構造100は、支持管体8と推進管4の間をシールするために用いられる。
【0017】
シール構造100は、支持管体8の内周面に軸方向に互いに間隔を空けて複数設けられる。本実施形態では軸方向に間隔を空けて配置される3つのシール構造100によって、支持管体8の内周面と推進管4の外周面との間に2つのシール室8aが形成される。シール室8aには、グリース8bが充填される。
【0018】
図1(b)に示すように、シール構造100は、トンネルT1の周方向に沿って支持管体8の内周に並べて配置される複数のシールユニット10を備えている。
図1(b)では、支持管体8及び推進管4の断面は、略矩形状であるが、支持管体8及び推進管4の断面は略円形状であってもよい。
【0019】
図2は、
図1(b)におけるII-II線に沿う拡大断面図である。
図2に示すように、シールユニット10は、ブラシ11と、周方向においてブラシ11に重ねて設けられる第1及び第2遮蔽シート21,22と、周方向において第1及び第2遮蔽シート21,22に重ねてそれぞれ設けられる第1及び第2付勢部材31,32と、第1及び第2付勢部材31,32を支持する第1及び第2支持プレート41,42と、ブラシ11、第1及び第2遮蔽シート21,22、並びに第1及び第2付勢部材31,32を束ね連結する連結部材50と、を備えている。
図2及び後述の
図3ないし
図6では、説明の便宜上、第1及び第2遮蔽シート21,22の厚さ、並びに第1及び第2付勢部材31,32の厚さを、ブラシ11の厚さに比して誇張して描いている。
【0020】
ブラシ11は、束ねられた複数の金属製、ゴム製又は樹脂製の線材(ワイヤ)をくの字状に曲げて形成されている。本実施形態では、線材は金属製である。線材を束ねる結束バンド(不図示)は、ブラシ11の基端11aと曲部11cとの間に配置され、ブラシ11は、結束バンドから先端11bに向かうにつれ広がっている。シールユニット10が支持管体8の内周に配置された状態では、ブラシ11における基端11aと曲部11cとの間の部分がトンネルT1の軸方向に略平行に延び、曲部11cと先端11bとの間の部分が推進管4に向かって斜めに延び先端11bが推進管4の外周面に摺接する。ブラシ11には、シール性を高めるために発泡ウレタンやシリコン等の止水材が吹付けられていてもよい。
【0021】
第1及び第2遮蔽シート21,22は、ブラシ11と同様にくの字状に曲げられた金網である。第1及び第2遮蔽シート21,22の一部は、軸方向に対して斜めに延びており、軸方向における地下水及びグリース8b(
図1(a)参照)の流れを遮る。第1及び第2遮蔽シート21,22の網目は、同じであっても良いし異なっていてもよい。第1及び第2遮蔽シート21,22は、水やグリースを完全に遮断する必要はない。例えば、メッシュの寸法が便宜設定され、グリースが浸潤した金網が好ましい。また、第1及び第2遮蔽シート21,22は、金網に限られず、金属製シート、塩化ビニルシート又はポリカーボネートシートであってもよい。
【0022】
第1及び第2遮蔽シート21,22は、ブラシ11を間に挟んで設けられている。具体的には、第1遮蔽シート21は、くの字状に曲げられたブラシ11の内側に配置されており、第2遮蔽シート22は、ブラシ11の外側に配置されている。
【0023】
第1及び第2付勢部材31,32は、ブラシ11と同様にくの字状に曲げられた鋼製のばね板であり、第1及び第2遮蔽シート21,22をブラシ11にそれぞれ付勢する。そのため、第1及び第2遮蔽シート21,22は、第1及び第2付勢部材31,32によりブラシ11にそれぞれ押付けられる。したがって、第1及び第2遮蔽シート21,22がブラシ11から離間することを軽減することができ、シールユニット10のシール性を向上させることができる。
【0024】
また、第1及び第2付勢部材31,32は、ブラシ11を間に挟んで設けられている第1及び第2遮蔽シート21,22をブラシ11にそれぞれ付勢するため、軸方向における地下水及びグリース8b(
図1(a)参照)の流れは、軸方向におけるブラシ11の両側で遮られる。したがって、シールユニット10のシール性をより向上させることができる。
【0025】
第1及び第2支持プレート41,42は、互いに間隔を空けて設けられる。第1及び第2支持プレート41,42の間に、第1付勢部材31、第1遮蔽シート21、ブラシ11、第2遮蔽シート22及び第2付勢部材32がこの順で設けられる。第2支持プレート42は、支持管体8に溶接により接合される。符号43は、第2支持プレート42を支持管体8に溶接することによって形成される溶接ビードを示している。図示を省略するが、シールユニット10が周方向に沿って並べて配置された状態では、隣り合うシールユニット10の第1支持プレート41どうしが溶接により接合される。
【0026】
シールユニット10は、支持管体8に取り付けられる場合に一つの単位を構成している。なお、支持管体8がコンクリートの場合には、コンクリートに便宜、鋼製のアンカー等を設け、アンカーに第2支持プレート42を溶接により接合してもよい。
【0027】
推進管4と支持管体8(枠体)の間で、第1支持プレート41、第1付勢部材31、第1遮蔽シート21は、ブラシ11よりトンネル構造体(推進管4)側に近く配置され、第2支持プレート42、第2付勢部材32、第2遮蔽シート22は、ブラシ11より支持管体(枠体)8側に近く配置される。
【0028】
連結部材50は、第1及び第2支持プレート41,42の間に渡って設けられており、第1支持プレート41が第2支持プレート42に向かって押えられた状態でかしめられている。そのため、第1付勢部材31、第1遮蔽シート21、ブラシ11、第2遮蔽シート22及び第2付勢部材32は、第1及び第2支持プレート41、42によって挟持される。
【0029】
ところで、周方向に隣り合うシールユニット10の第1遮蔽シート21どうし及び第2遮蔽シート22どうしが離れていると、シールユニット10どうしの間におけるシール性が低下する。シール性を向上させるために、周方向に隣り合うシールユニット10に別のシールユニット10を重ねて第1遮蔽シート21どうしの間及び第2遮蔽シート22どうしの間を塞ぐことが考えられるが、この場合には、多数のシールユニット10が必要になり、シール構造の組立てに多大な労力を要することになる。
【0030】
シール構造100では、後述する構成により、複数のシールユニット10を周方向に並べて配置するだけで、隣り合うシールユニット10における第1遮蔽シート21どうしが密着すると共に第2遮蔽シート22どうしが密着する。したがって、シール性を損なうことなくシール構造の組立て労力を低減することができる。
【0031】
シール構造100は、
図2に示すように、主に、第1付勢部材31、第1遮蔽シート21、ブラシ11、第2遮蔽シート22及び第2付勢部材32における先端11bと曲部11cとの間の部分からなり推進管4に擦接して止水機能を発揮するシール構造擦接部101と、主に、第1付勢部材31、第1遮蔽シート21、ブラシ11、第2遮蔽シート22及び第2付勢部材32における基端11aと曲部11cとの間の部分、並びに第1支持プレート41及び第2支持プレート42からなり支持管体8(枠体)に固定されるシール構造固縛部102と、からなる。
【0032】
シール構造100の構成について、
図2ないし
図6を参照して詳述する。
図2に示すVB-VB線に沿う断面図は、シール構造擦接部101を代表する断面図であり、IVB-IVB線に沿う断面図は、シール構造固縛部102を代表する断面である。
図3(a)は、
図2に示されるシールユニット10を単体で推進管4から支持管体8に向かって(
図2に示す矢視IIIAの方向に)見た図である。
図3(b)は、
図2に示されるシールユニット10を単体で支持管体8から推進管4に向かって(
図2に示す矢視IIIBの方向に)見た図である。
図4(a)は、
図3(a)に示すIVA-IVA線に沿う断面図である。
【0033】
図3(a)及び
図4(a)に示すように、IVA-IVA線に沿う断面(シール構造固縛部102)において、周方向における第1付勢部材31の寸法は、周方向におけるブラシ11の寸法と略等しい。第1付勢部材31は、ブラシ11に対して周方向にずらして配置されており、周方向において一端31a側がブラシ11の外側に位置し他端31b側がブラシ11の内側に位置している。
【0034】
IVA-IVA線に沿う断面において、周方向における第1遮蔽シート21の寸法は、周方向におけるブラシ11及び第1付勢部材31の寸法よりも大きく、第1遮蔽シート21の一方側は、ブラシ11から延出し、他方側は第1付勢部材31から延出している。つまり、第1遮蔽シート21は、ブラシ11と第1付勢部材31との間に位置する中間部21cと、周方向においてブラシ11から第1付勢部材31の一端31a側へと第1付勢部材31に沿って延出する第1延出部21aと、周方向において第1付勢部材31の他端31b側からブラシ11に沿って延出する第2延出部21bと、を有している。
【0035】
本実施形態では、第2延出部21bの端部はブラシ11の他方側の端部と一致しているが、必ずしも周方向に端部が一致する必要はなく、第2延出部21bはブラシ11の端部から内側に位置してもよく、好ましくは、第2延出部21bの端部はブラシ11の端部から外側に位置して(延出して)もよい。
【0036】
IVA-IVA線に沿う断面において、周方向における第1支持プレート41の寸法は、周方向における第1付勢部材31と略等しく、第1支持プレート41は、第1付勢部材31と同じ方向にブラシ11に対してずらして配置されている。
【0037】
図4(b)は、
図2に示すIVB-IVB線に沿う断面図であり、隣り合って配置された2つのシールユニット10を
図4(a)に対応して示す。
図4(b)において、2つのシールユニット10のうち、紙面右側のシールユニット10を「右側ユニット10a」とも称し、紙面左側のシールユニット10を「左側ユニット10b」とも称する。
【0038】
図4(b)に示すように、シールユニット10が周方向に沿って並べて配置された状態でシール構造100は構成され、右側ユニット10aのブラシ11と、左側ユニット10bのブラシ11とは、周方向に隣り合う。右側ユニット10aにおける第1遮蔽シート21の第1延出部21aは、左側ユニット10bにおける第1遮蔽シート21の第2延出部21bに重なる。重なり合った第1延出部21a及び第2延出部21bは、右側ユニット10aの第1付勢部材31により、左側ユニット10bのブラシ11に付勢される。そのため、右側及び左側ユニット10a,10bを周方向に並べて配置するだけで、右側ユニット10aにおける第1遮蔽シート21の第1延出部21aと、左側ユニット10bにおける第1遮蔽シート21の第2延出部21bとが、右側ユニット10aの第1付勢部材31により互いに密着する。したがって、右側及び左側ユニット10a,10bに別のシールユニット10を重ねることなく、右側及び左側ユニット10a,10bの間をシールすることができる。これにより、シール性を損なうことなくシール構造100の組立て労力を低減することができる。
【0039】
なお、左側ユニット10bにおける第1遮蔽シート21の第2延出部21bが左側ユニット10bにおけるブラシ11の端部から延出している場合には、重なり合った第1延出部21a及び第2延出部21bは、右側ユニット10aの第1付勢部材31により、右側ユニット10aのブラシ11と左側ユニット10bのブラシ11とに付勢される。
【0040】
また、第1支持プレート41が第1付勢部材31と同じ方向にブラシ11に対してずらして配置されている。そのため、右側及び左側ユニット10a,10bを周方向に並べて配置するだけで、右側ユニット10aにおける第1遮蔽シート21の第1延出部21aが、左側ユニット10bにおける第1遮蔽シート21の第2延出部21bに重なり、右側ユニット10aの第1付勢部材31は、重なり合った第1延出部21a及び第2延出部21bを左側ユニット10bのブラシ11に付勢する。したがって、シール構造100の組立て労力をより低減することができる。
【0041】
左側ユニット10bにおけるブラシ11の紙面右側端部は、右側ユニット10aにおける第1遮蔽シート21の第1延出部21aが左側ユニット10bにおける第1遮蔽シート21の第2延出部21bに重なる分、圧縮される。なお、
図4(b)では、ブラシ11が圧縮されているかのように誇張して描かれているが、実際には、第1遮蔽シート21の厚さはブラシ11の厚さの1/10以下であり、ブラシ11の圧縮はほとんど生じていない。
【0042】
図3(b)及び
図4(a)に示すように、IVA-IVA線に沿う断面において、周方向における第2付勢部材32の寸法は、周方向におけるブラシ11の寸法と略等しい。第2付勢部材32は、周方向において第1付勢部材31とは反対の方向にブラシ11に対してずらして配置されており、周方向において一端32a側がブラシ11の外側に位置し他端32b側がブラシ11の内側に位置している。
【0043】
IVA-IVA線に沿う断面において、周方向における第2遮蔽シート22の寸法は、周方向におけるブラシ11及び第2付勢部材32の寸法よりも大きく、第2遮蔽シート22の一方側は、ブラシ11から延出し、他方側は第2付勢部材32から延出している。つまり、第2遮蔽シート22は、第1遮蔽シート21と反対方向に同様に、ブラシ11と第2付勢部材32との間に位置する中間部22cと、周方向においてブラシ11から第2付勢部材32の一端32a側へと第2付勢部材32に沿って延出する第1延出部22aと、周方向において第2付勢部材32の他端32b側からブラシ11に沿って延出する第2延出部22bと、を有している。
【0044】
本実施形態では、第2延出部22bの端部はブラシ11の他方側の端部と一致しているが、必ずしも周方向に端部が一致する必要はなく、第2延出部21bはブラシ11の端部から内側に位置してもよく、好ましくは、第2延出部21bの端部はブラシ11の端部から外側に位置して(延出して)もよい。
【0045】
IVA-IVA線に沿う断面において、周方向における第2支持プレート42の寸法は、周方向における第2付勢部材32と略等しく、第2支持プレート42は、第2付勢部材32と同じ方向にブラシ11に対してずらして配置されている。
【0046】
図4(b)に示すように、左側ユニット10bにおける第2遮蔽シート22の第1延出部22aは、右側ユニット10aにおける第2遮蔽シート22の第2延出部22bに重なる。重なり合った第1延出部22a及び第2延出部22bは、左側ユニット10bの第2付勢部材32により、右側ユニット10aのブラシ11に付勢される。そのため、右側及び左側ユニット10a,10bを周方向に並べて配置するだけで、左側ユニット10bにおける第2遮蔽シート22の第1延出部22aと、右側ユニット10aにおける第2遮蔽シート22の第2延出部22bとが、左側ユニット10bの第2付勢部材32により互いに密着する。したがって、右側及び左側ユニット10a,10bの間における地下水及びグリース8b(
図1(a)参照)の流れを二重に遮ることができ、シール構造100のシール性をより向上させることができる。
【0047】
なお、右側ユニット10aにおける第2遮蔽シート22の第2延出部22bが右側ユニット10aにおけるブラシ11の端部から延出している場合には、重なり合った第1延出部22a及び第2延出部22bは、左側ユニット10bの第2付勢部材32により、左側ユニット10bのブラシ11と右側ユニット10aのブラシ11とに付勢される。
【0048】
第2支持プレート42が第2付勢部材32と同じ方向にブラシ11に対してずらして配置されているため、右側及び左側ユニット10a,10bを周方向に並べて配置するだけで、左側ユニット10bにおける第2遮蔽シート22の第1延出部22aが、右側ユニット10aにおける第2遮蔽シート22の第2延出部22bに重なる。したがって、シール構造100の組立て労力をより低減することができる。
【0049】
右側ユニット10aにおけるブラシ11の紙面左側端部は、左側ユニット10bにおけるブラシ11の紙面右側端部と同様に、圧縮される。なお、
図4(b)では、ブラシ11が圧縮されているかのように誇張して描かれているが、実際には、第2遮蔽シート22の厚さはブラシ11の厚さの1/10以下であり、ブラシ11の圧縮はほとんど生じていない。
【0050】
連結部材50は、ブラシ11、第1及び第2遮蔽シート21,22、並びに第1及び第2付勢部材31,32を貫通して設けられる。そのため、右側及び左側ユニット10a,10bを周方向に並べて配置するときに、右側ユニット10aにおける連結部材50が左側ユニット10bと干渉することを防ぐことができると共に左側ユニット10bにおける連結部材50が右側ユニット10aと干渉することを防ぐことができる。したがって、シール構造100の組立て労力をより低減することができる。
【0051】
図5(a)は、
図3(a)に示すVA-VA線に沿う断面図である。
図5(b)は、
図2に示すVB-VB線に沿う断面図であり、隣り合って配置された2つのシールユニット10を、
図5(a)に対応して示す。
【0052】
図3(a)に示すVA-VA線に沿う断面(シール構造擦接部101)では、ブラシ11における複数の線材が束ねられていない。そのため、シールユニット10が周方向に沿って並べて配置されていない状態では、
図5(a)に示すように、ブラシ11は広がっており、周方向における第1付勢部材31の寸法は、周方向におけるブラシ11の寸法よりも小さくなっている。第1付勢部材31は、周方向において一端31a側及び他端31bの両方がブラシ11の内側に位置するように配置されている。第1遮蔽シート21は、周方向において第1付勢部材31の他端31b側からブラシ11に沿って延出しているが、周方向においてブラシ11から第1付勢部材31の一端31a側へと第1付勢部材31に沿って延出してはいない。
【0053】
しかし、シールユニット10が周方向に沿って並べて配置された状態では、隣り合うシールユニット10のブラシ11どうしが押し合い(
図5(b)参照)、ブラシ11は、破線で示される位置まで収縮する。そのため、VA-VA線に沿う断面での周方向におけるブラシ11の寸法は、IVA-IVA線に沿う断面での周方向におけるブラシ11の寸法(
図4(a)参照)と略等しくなる。その結果、第1付勢部材31は、周方向において一端31a側がブラシ11の外側に位置(外側に延出)することになる。また、第1遮蔽シート21は、周方向においてブラシ11から第1付勢部材31の一端31a側へと第1付勢部材31に沿って延出する第1延出部21aを形成することになる。一方、第1付勢部材31は、周方向において、他端31bは、ブラシ11の内側に位置したままであり、また、第1遮蔽シート21には、周方向において第1付勢部材31の他端31b側からブラシ11に沿って延出する第2延出部21bが形成される。なお、第1遮蔽シート21の第2延出部21bの端面は、収縮したブラシ11の他端側の端面と略同一になるが、ブラシ11に沿って外側に位置(外側に延出)していてもよい。
【0054】
図5(b)に示すように、シールユニット10が周方向に沿って並べて配置された状態でシール構造100は構成され、VA-VA線に沿う断面においても、右側ユニット10aにおける第1遮蔽シート21の第1延出部21aは、左側ユニット10bにおける第1遮蔽シート21の第2延出部21bに重なる。重なり合った第1延出部21a及び第2延出部21bは、右側ユニット10aの第1付勢部材31により、左側ユニット10bのブラシ11に付勢される。そのため、VA-VA線に沿う断面においても、右側及び左側ユニット10a,10bを周方向に並べて配置するだけで、右側ユニット10aにおける第1遮蔽シート21の第1延出部21aと、左側ユニット10bにおける第1遮蔽シート21の第2延出部21bとが、右側ユニット10aの第1付勢部材31により互いに密着する。したがって、シール性を損なうことなくシール構造100の組立て労力を低減することができる。
【0055】
なお、左側ユニット10bにおける第1遮蔽シート21の第2延出部21bが左側ユニット10bにおける収縮したブラシ11の端部から延出している場合には、重なり合った第1延出部21a及び第2延出部21bは、右側ユニット10aの第1付勢部材31により、右側ユニット10aのブラシ11と左側ユニット10bのブラシ11とに付勢される。
【0056】
図3(b)に示すように、ブラシ11の先端11b近傍での周方向における第2遮蔽シート22の寸法は、ブラシ11の基端11a近傍での周方向における第2遮蔽シート22寸法よりも大きい。具体的には、VA-VA線に沿う断面での周方向における第2遮蔽シート22の寸法は、IVA-IVA線に沿う断面での周方向における第2遮蔽シート22の寸法よりも大きい。そのため、
図5(b)に示すように、シールユニット10が周方向に沿って並べて配置された状態では、右側ユニット10aの第2遮蔽シート22と左側ユニット10bの第2遮蔽シート22とがより広い範囲で重なる。したがって、右側及び左側ユニット10a,10bの第2遮蔽シート22どうしの間のシール性をより向上させることができ、シール構造100のシール性をより向上させることができる。
【0057】
図3(b)に示すように、VA-VA線に沿う断面での周方向における第2付勢部材32の寸法は、IVA-IVA線に沿う断面での周方向における第2付勢部材32の寸法よりも大きい。
図5(b)に示すように、シールユニット10が周方向に沿って並べて配置された状態では、右側ユニット10aの第2付勢部材32と左側ユニット10bの第2付勢部材32が互いに重なる。そのため、重なり合った第2遮蔽シート22は、右側及び左側ユニット10a,10bの第2付勢部材32により付勢され、より強固に互いに密着する。したがって、右側及び左側ユニット10a,10bの第2遮蔽シート22どうしの間のシール性をより向上させることができ、シール構造100のシール性をより向上させることができる。
【0058】
なお、
図5(b)では、説明の便宜上、右側及び左側ユニット10a,10bにおけるブラシ11どうしの境界を直線状に描いている。実際には、VA-VA線に沿う断面では、ブラシ11における複数の線材が束ねられていないため、右側及び左側ユニット10a,10bにおけるブラシ11の線材どうしが絡み合い、ブラシ11どうしの境界は明確に定められるものではない。
【0059】
図6(a)は、支持管体8(
図1(b)参照)の湾曲部に配置されるシールユニット10を、
図4(a)に対応して示す断面図である。
図6(b)は、支持管体8の湾曲部に隣り合って配置された2つのシールユニット10を、
図4(b)に対応して示す断面図(
図1(b)におけるVIB部の断面図)である。
【0060】
図6(a)に示すように、支持管体8の湾曲部に配置されるシールユニット10では、ブラシ11、第1及び第2遮蔽シート21,22、第1及び第2付勢部材31,32、並びに第1及び第2支持プレート41,42は、支持管体8の内周に沿って湾曲して形成される。
【0061】
支持管体8の湾曲部に配置されるシールユニット10においても、第1付勢部材31は、ブラシ11に対して周方向にずらして配置されており、周方向において一端31a側がブラシ11の外側に位置し他端31b側がブラシ11の内側に位置している。第2付勢部材32は、周方向において第1付勢部材31とは反対の方向にブラシ11に対してずらして配置されており、周方向において一端32a側がブラシ11の外側に位置し他端32b側がブラシ11の内側に位置している。第1遮蔽シート21は、第1延出部21aと第2延出部21bとを有しており、第2遮蔽シート22は、第1延出部22aと第2延出部22bとを有している。
【0062】
図6(b)に示すように、シールユニット10が支持管体8の湾曲部に周方向に沿って並べて配置された状態において、右側ユニット10aのブラシ11と、左側ユニット10bのブラシ11とは、周方向に隣り合う。右側ユニット10aにおける第1遮蔽シート21の第1延出部21aは、左側ユニット10bにおける第1遮蔽シート21の第2延出部21bに重なる。重なり合った第1延出部21a及び第2延出部21bは、右側ユニット10aの第1付勢部材31により、左側ユニット10bのブラシ11に付勢される。そのため、支持管体8の湾曲部においても、右側及び左側ユニット10a,10bに別のシールユニット10を重ねることなく、右側及び左側ユニット10a,10bの間をシールすることができる。したがって、シール性を損なうことなくシール構造100の組立て労力を低減することができる。
【0063】
図示を省略するが、支持管体8及び推進管4の断面が略円形状である場合においても、ブラシ11、第1及び第2遮蔽シート21,22、第1及び第2付勢部材31,32、並びに第1及び第2支持プレート41,42は、支持管体8の内周に沿って湾曲して形成される。
【0064】
次に、シール構造100の組立方法について、
図4(b)及び
図5(b)を参照して説明する。
【0065】
まず、左側ユニット10bを支持管体8の内周面に配置する(第1配置工程)。次に、左側ユニット10bの第2支持プレート42を支持管体8に溶接により接合する(第1溶接工程)。次に、右側ユニット10aを周方向に左側ユニット10bに並べて配置する(第2配置工程)。
【0066】
第2配置工程では、右側ユニット10aにおける第1遮蔽シート21の第1延出部21aを左側ユニット10bにおける第1遮蔽シート21の第2延出部21bに重ねる。重なり合った第1延出部21a及び第2延出部21bを、右側ユニット10aにおける第1付勢部材31により、左側ユニット10bにおけるブラシ11に付勢する。そのため、右側ユニット10aにおける第1遮蔽シート21の第1延出部21aと、左側ユニット10bにおける第1遮蔽シート21の第2延出部21bとが、右側ユニット10aの第1付勢部材31により互いに密着する。したがって、右側及び左側ユニット10a,10bに別のシールユニット10を重ねることなく、右側及び左側ユニット10a,10bの間をシールすることができる。これにより、シール性を損なうことなくシール構造100の組立労力を低減することができる。
【0067】
また、第2配置工程では、左側ユニット10bにおける第2遮蔽シート22の第1延出部22aを右側ユニット10aにおける第2遮蔽シート22の第2延出部22bに重ねる。重なり合った第1延出部22a及び第2延出部22bを、左側ユニット10bにおける第2付勢部材32により、右側ユニット10aにおけるブラシ11に付勢する。そのため、左側ユニット10bにおける第2遮蔽シート22の第1延出部22aと、右側ユニット10aにおける第2遮蔽シート22の第2延出部22bとが、左側ユニット10bの第2付勢部材32により互いに密着する。したがって、右側及び左側ユニット10a,10bの間における地下水及びグリース8b(
図1(a)参照)の流れを二重に遮ることができ、シール構造100のシール性をより向上させることができる。
【0068】
第2配置工程後、右側ユニット10aの第2支持プレート42を支持管体8に溶接により接合すると共に、右側及び左側ユニット10a,10bにおける第1支持プレート41どうしを溶接により接合する(第2溶接工程)。シールユニット10の配置と溶接とを繰り返すことにより、シール構造100の組立てが完了する。
【0069】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0070】
本実施形態では、シールユニット10が周方向に沿って並べて配置された状態において、右側ユニット10aのブラシ11と、左側ユニット10bのブラシ11とは、周方向に隣り合う。右側ユニット10aにおける第1遮蔽シート21の第1延出部21aは、左側ユニット10bにおける第1遮蔽シート21の第2延出部21bに重なる。重なり合った第1延出部21a及び第2延出部21bは、右側ユニット10aの第1付勢部材31により、左側ユニット10bのブラシ11に付勢される。そのため、右側及び左側ユニット10a,10bを周方向に並べて配置するだけで、右側ユニット10aにおける第1遮蔽シート21の第1延出部21aと、左側ユニット10bにおける第1遮蔽シート21の第2延出部21bとが、右側ユニット10aの第1付勢部材31により互いに密着する。したがって、右側及び左側ユニット10a,10bに別のシールユニット10を重ねることなく、右側及び左側ユニット10a,10bの間をシールすることができる。これにより、シール性を損なうことなくシール構造100の組立て労力を低減することができる。
【0071】
また、本実施形態では、第1及び第2遮蔽シート21,22は、ブラシ11を間に挟んで設けられており、第1及び第2付勢部材31,32は、第1及び第2遮蔽シート21,22をブラシ11にそれぞれ付勢する。そのため、軸方向における地下水及びグリース8bの流れは、軸方向におけるブラシ11の両側で遮られる。したがって、シールユニット10のシール性をより向上させることができる。
【0072】
また、本実施形態では、第1及び第2付勢部材31,32は、周方向において互いに反対の方向にブラシ11に対してずらして配置されている。シールユニット10が周方向に沿って並べて配置された状態において、左側ユニット10bにおける第2遮蔽シート22の第1延出部22aは、右側ユニット10aにおける第2遮蔽シート22の第2延出部22bに重なる。重なり合った第1延出部22a及び第2延出部22bは、左側ユニット10bの第2付勢部材32により、右側ユニット10aのブラシ11に付勢される。そのため、右側及び左側ユニット10a,10bを周方向に並べて配置するだけで、左側ユニット10bにおける第2遮蔽シート22の第1延出部22aと、右側ユニット10aにおける第2遮蔽シート22の第2延出部22bとが、左側ユニット10bの第2付勢部材32により互いに密着する。したがって、右側及び左側ユニット10a,10bの間における地下水及びグリース8b(
図1(a)参照)の流れを二重に遮ることができ、シール構造100のシール性をより向上させることができる。
【0073】
また、本実施形態では、第1及び第2支持プレート41、42が第1及び第2付勢部材31,32と同じ方向にブラシ11に対してずらしてそれぞれ配置されている。そのため、右側及び左側ユニット10a,10bを周方向に並べて配置するだけで、右側ユニット10aにおける第1遮蔽シート21の第1延出部21aが、左側ユニット10bにおける第1遮蔽シート21の第2延出部21bに重なり、右側ユニット10aの第1付勢部材31は、重なり合った第1延出部21a及び第2延出部21bを左側ユニット10bのブラシ11に付勢する。また、右側及び左側ユニット10a,10bを周方向に並べて配置するだけで、左側ユニット10bにおける第2遮蔽シート22の第1延出部22aが、右側ユニット10aにおける第2遮蔽シート22の第2延出部22bに重なり、左側ユニット10bの第2付勢部材32は、重なり合った第1延出部22a及び第2延出部22bを右側ユニット10aのブラシ11に付勢する。したがって、シール構造100の組立て労力をより低減することができる。
【0074】
また、本実施形態では、連結部材50は、ブラシ11、第1及び第2遮蔽シート21,22、並びに第1及び第2付勢部材31,32を貫通して設けられる。そのため、右側及び左側ユニット10a,10bを周方向に並べて配置するときに、右側ユニット10aにおける連結部材50が左側ユニット10bと干渉することを防ぐことができると共に左側ユニット10bにおける連結部材50が右側ユニット10aと干渉することを防ぐことができる。したがって、シール構造100の組立て労力をより低減することができる。
【0075】
<第1変形例>
上記実施形態では、シールユニット10がトンネルT1の周方向に沿って支持管体8の内周に並べて配置されているが、
図7に示すように、シールユニット10は、トンネルT1の周方向に沿って支持管体8の端面に並べて配置されていてもよい。
図7は、第1変形例に係るシール構造200の拡大断面図であり、
図2に対応して示す。
【0076】
第1変形例においても、上記実施形態と同様に、シール性を損なうことなくシール構造200の組立て労力を低減することができる。
【0077】
<第2変形例>
上記実施形態では、いわゆる推進工法において用いられるシール構造100及びその組立方法について説明したが、本発明は、いわゆるシールド工法においても用いることができる。
図8を参照して、シールド工法において用いられるシール構造300について説明する。
【0078】
図8(a)は、第2変形例に係るシール構造300が用いられるシールド工法を説明するための断面図である。
図8(b)は、
図8(a)におけるVIIIB-VIIIB線に沿う断面図である。
【0079】
図8(a)に示すように、シールド工法では、シールド掘進機301を用いてシールドトンネルT2を構築する。シールド掘進機301は、地山の内壁W2を支持可能な中空の胴体(枠体)302と、胴体302に回転可能に装着されたカッタ303と、を備えている。胴体302の内部では、シールド掘進機301の前進に伴ってセグメントリング(トンネル構造体)304が順次構築される。
【0080】
胴体302には、ジャッキ305が固定される。ジャッキ305は、セグメントリング304から反力を得て胴体302をシールドトンネルT2の軸方向に推進し、カッタ303を地山に軸方向に押付ける。胴体302が推進されてセグメントリング304が胴体302から出ると、セグメントリング304の外周面と地山の内壁W2との間に裏込め材(図示省略)が充填される。
【0081】
カッタ303は、モータ306の駆動により胴体302に対して回転する。カッタ303には、シールドトンネルT2の軸方向に突出するカッタビット303aが複数設けられている。カッタ303が地山に押付けられた状態で回転すると、地山がカッタビット303aにより軸方向に掘削される。地山の掘削により生じる泥土は、胴体302内に形成されるチャンバ302aに取り込まれ、スクリュコンベア307を用いて排出される。
【0082】
シールド工法では、胴体302の内周面がセグメントリング304の外周面と間隔を空けて対向する。胴体302の内周面とセグメントリング304の外周面との間がシールされていないと、地山の地下水が胴体302の内部に流入するおそれがある。シール構造300は、胴体302とセグメントリング304の間をシールするために用いられる。
【0083】
シール構造300は、胴体302の内周面に軸方向に互いに間隔を空けて複数設けられる。軸方向に間隔を空けて配置される2つのシール構造300によって、胴体302の内周面とセグメントリング304の外周面との間にシール室308aが形成される。シール室308aには、グリース308bが充填される。
【0084】
図8(b)に示すように、シール構造300は、シールドトンネルT2の周方向に沿って胴体302の内周に並べて配置された複数のシールユニット310で形成されている。
図8(b)では、胴体302及びセグメントリング304の断面は、略円形状であるが、胴体302及びセグメントリング304の断面は略矩形状であってもよい。
【0085】
シールユニット310の構造は、シールユニット10の構造と略同じである。また、シール構造300の組立方法は、シール構造100の組立方法と略同じである。そのため、ここではそれらの詳細な説明を省略する。
【0086】
第2変形例においても、上記実施形態と同様に、シール性を損なうことなくシール構造300の組立て労力を低減することができる。
【0087】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0088】
シールユニット10,310は、第1及び第2遮蔽シート21,22のいずれか一方のみを備える形態であってもよい。シールユニット10,310が第1遮蔽シート21を備えていない場合には、第1付勢部材31はなくてもよく、シールユニット10,310が第2遮蔽シート22を備えていない場合には、第2付勢部材32はなくてもよい。
【符号の説明】
【0089】
100,200,300・・・シール構造
4・・・推進管(トンネル構造体)
8・・・支持管体(枠体)
10,310・・・シールユニット
11・・・ブラシ
21・・・第1遮蔽シート
21a・・・第1延出部
21b・・・第2延出部
22・・・第2遮蔽シート
22a・・・第1延出部
22b・・・第2延出部
31・・・第1付勢部材
31a・・・一端
31b・・・他端
32・・・第2付勢部材
32a・・・一端
32b・・・他端
41・・・第1支持プレート
42・・・第2支持プレート
50・・・連結部材
301・・・シールド掘進機(掘進機)
302・・・胴体(枠体)
304・・・セグメントリング(トンネル構造体)
P1・・・坑口
T1・・・トンネル
T2・・・シールドトンネル