(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119082
(43)【公開日】2022-08-16
(54)【発明の名称】建設材料の製造方法及び焼却主灰の処理方法
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20220808BHJP
C04B 18/10 20060101ALI20220808BHJP
C04B 22/08 20060101ALI20220808BHJP
B09B 3/70 20220101ALI20220808BHJP
【FI】
C04B28/02 ZAB
C04B18/10 Z
C04B22/08 Z
B09B3/00 304G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021016073
(22)【出願日】2021-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤沼 智洋
(72)【発明者】
【氏名】久保田 洋
(72)【発明者】
【氏名】繁泉 恒河
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼地 春菜
(72)【発明者】
【氏名】藤倉 裕介
【テーマコード(参考)】
4D004
4G112
【Fターム(参考)】
4D004AA36
4D004AB03
4D004AC05
4D004BA02
4D004CA34
4D004CB13
4D004CB21
4D004CC01
4D004CC11
4G112MB00
4G112PA26
4G112PB05
4G112PC01
4G112PE01
(57)【要約】
【課題】鉛及び六価クロムの溶出を抑制すること。
【解決手段】建設材料の製造方法は、二価鉄を粉末化する粉末化工程S11と、焼却主灰に対して炭酸化処理を施す炭酸化工程S12と、粉末化工程S11及び炭酸化工程S12の後に炭酸化された焼却主灰、粉末状の二価鉄、及びセメントを混練する混練工程S13と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二価鉄を粉末化する粉末化工程と、
焼却主灰に対して炭酸化処理を施す炭酸化工程と、
前記粉末化工程及び前記炭酸化工程の後に炭酸化された前記焼却主灰、粉末状の前記二価鉄、及びセメントを混練する混練工程と、
を備える、建設材料の製造方法。
【請求項2】
二価鉄を粉末化する粉末化工程と、
前記粉末化工程の後に粉末状の前記二価鉄と焼却主灰とを混練して混合物を作成する第1混練工程と、
前記混合物に対して炭酸化処理を施す炭酸化工程と、
前記炭酸化工程の後に炭酸化された前記混合物、及びセメントを混練する第2混練工程と、
を備える、建設材料の製造方法。
【請求項3】
二価鉄を粉末化する粉末化工程と、
焼却主灰に対して炭酸化処理を施す炭酸化工程と、
前記粉末化工程の後に前記二価鉄と前記焼却主灰とを混練する混練工程と、
を備える、焼却主灰の処理方法。
【請求項4】
前記混練工程は、前記炭酸化工程の後に実施され、前記炭酸化処理を施された前記焼却主灰と前記二価鉄とを混練する、
請求項3に記載の焼却主灰の処理方法。
【請求項5】
前記炭酸化工程は、前記混練工程の後に実施され、前記焼却主灰と前記二価鉄との混合物に対して前記炭酸化処理を施す、
請求項3に記載の焼却主灰の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建設材料の製造方法及び焼却主灰の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
焼却施設で発生する焼却灰のうち粒径の大きな焼却主灰のリサイクル方法として、セメントを含む建設材料の原料として利用することが知られている。この際、焼却主灰に含有される六価クロム等の有害物質の建設材料からの溶出を抑制させる必要がある。例えば、特許文献1、2及び3には、還元剤の添加により六価クロムを三価クロムに還元することによって、焼却灰から六価クロムの溶出を抑制する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-195791号公報
【特許文献2】特開2002-086097号公報
【特許文献3】特許第3176162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、焼却主灰には、六価クロムのみならず、有害物質である鉛も含有されている。したがって、セメントを含む建設材料の原料として焼却主灰を利用するためには、鉛及び六価クロムの両有害物質の溶出を抑制させる必要がある。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、鉛及び六価クロムの溶出を抑制することができる建設材料の製造方法及び焼却主灰の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様の建設材料の製造方法は、二価鉄を粉末化する粉末化工程と、焼却主灰に対して炭酸化処理を施す炭酸化工程と、前記粉末化工程及び前記炭酸化工程の後に炭酸化された前記焼却主灰、粉末状の前記二価鉄、及びセメントを混練する混練工程と、を備える。
【0007】
上記の目的を達成するため、本開示の別の一態様の建設材料の製造方法は、二価鉄を粉末化する粉末化工程と、前記粉末化工程の後に粉末状の前記二価鉄と焼却主灰とを混練して混合物を作成する第1混練工程と、前記混合物に対して炭酸化処理を施す炭酸化工程と、前記炭酸化工程の後に炭酸化された前記混合物、及びセメントを混練する第2混練工程と、を備える。
【0008】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様の焼却主灰の処理方法は、二価鉄を粉末化する粉末化工程と、焼却主灰に対して炭酸化処理を施す炭酸化工程と、前記粉末化工程の後に前記二価鉄と前記焼却主灰とを混練する混練工程と、を備える。
【0009】
焼却主灰の処理方法の望ましい態様として、前記混練工程は、前記炭酸化工程の後に実施され、前記炭酸化処理を施された前記焼却主灰と前記二価鉄とを混練する。
【0010】
焼却主灰の処理方法の望ましい態様として、前記炭酸化工程は、前記混練工程の後に実施され、前記焼却主灰と前記二価鉄との混合物に対して前記炭酸化処理を施す。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、鉛及び六価クロムの溶出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、第1実施形態の建設材料の製造方法を示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る建設材料の製造システムの一例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、第2実施形態の建設材料の製造方法を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、第2実施形態に係る建設材料の製造システムの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本開示につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本開示は、以下の実施形態の記載に限定されるものではない。また、以下の実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した実施形態における構成要素は、本開示の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。以下の実施形態では、本開示の実施形態を例示する上で、必要となる構成要素を説明し、その他の構成要素を省略する。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の建設材料100の製造方法を示すフローチャートである。
図2は、第1実施形態に係る建設材料100の製造システム1の一例を示す模式図である。第1実施形態の建設材料100の製造方法は、焼却主灰120を混入させたセメントを含む建設材料100の製造方法である。
図1に示すように、第1実施形態の建設材料100の製造方法は、粉末化工程S11と、炭酸化工程S12と、混練工程S13と、を備える。また、
図2に示すように、第1実施形態の建設材料100の製造システム1は、粉砕機10と、炭酸化処理装置20と、混練機30と、を含む。
【0015】
粉末化工程S11は、二価鉄(Fe2+)を粉末化する工程である。具体的には、粉末化工程S11では、硫酸鉄(II)又は塩化鉄(II)等の二価鉄化合物110の塊を微粉砕して、粒径が10μm以上150μm以下の粉末状にする。
【0016】
粉末化工程S11は、製造システム1の粉砕機10において実施される。
図2に示すように、二価鉄化合物110は、粉砕機10によって粉末化されて、粉末状の二価鉄化合物111として、混練機30へ搬送される。
【0017】
炭酸化工程S12は、焼却主灰120に対して炭酸化処理を施す工程である。焼却主灰120は、焼却灰のうち焼却炉等の底部から回収される焼却残留物を示し、燃焼ガスと共に巻き上がり集塵装置で回収される焼却飛灰とは区別される。焼却主灰120の成分は、主に、酸化カルシウム(CaO)、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)等を含む。なお、実施形態では、粒径が600μm以上5mm以下の焼却主灰120を用いる。炭酸化工程S12における炭酸化処理は、焼却主灰120に炭酸ガス(二酸化炭素(CO2))を触れさせる処理である。炭酸化工程S12で用いる炭酸ガスは、例えば、石炭、石油、天然ガス等を燃料とする火力発電所から排出される炭酸ガスである。
【0018】
炭酸化工程S12は、製造システム1の炭酸化処理装置20において実施される。
図2に示すように、焼却施設から排出された焼却主灰120が、炭酸化処理装置20に搬入される。炭酸化処理装置20には、炭酸ガスが導入される。
【0019】
炭酸化工程S12では、炭酸化処理装置20の容器(炭酸化処理槽)に焼却主灰120が配置される。容器は、例えば略直方体状の可搬式コンテナである。可搬式コンテナは、例えば車両の荷台に載せることができる。容器は、内部空間を鉛直方向に分割する隔壁を備える。隔壁は、容器の底面と平行な板状部材であって、複数の通気口を備える。焼却主灰120は、隔壁の上に置かれる。
【0020】
隔壁の上に焼却主灰120が載った状態で、隔壁の下側の空間に炭酸ガスが導入される。炭酸ガスは、隔壁の通気口を通って焼却主灰120に接触する。焼却主灰120は、炭酸ガスを吸収することで炭酸化する。具体的には、焼却主灰120に含有される酸化カルシウム等のカルシウム成分が炭酸化し、炭酸カルシウム(CaCO3)が生成される。炭酸化工程S12によって、二酸化炭素が焼却主灰120に吸収される。すなわち、二酸化炭素が、炭酸塩として焼却主灰120に固定化される。また、炭酸化工程S12によって、焼却主灰120に含有される鉛(Pb)等の重金属が難溶化する。炭酸化処理を施された焼却主灰121は、混練機30へ搬送される。
【0021】
混練工程S13は、炭酸化処理を施された焼却主灰121と粉末状の二価鉄化合物111とセメントとを混練する工程である。より具体的には、混練工程S13では、炭酸化工程S12で炭酸化処理を施された焼却主灰121と、粉末化工程S11で粉末化された二価鉄化合物111と、セメントと、を含む混合物を混練して、セメントを含む建設材料100を作成する。セメントを含む建設材料100は、例えばコンクリート、モルタル、ペースト、及び煉瓦等である。以下の説明では、セメントを含む建設材料100がコンクリートである場合について説明する。
【0022】
混練工程S13は、製造システム1の混練機30において実施される。
図2に示すように、炭酸化処理装置20から搬出された焼却主灰121と、粉砕機10から搬出された粉末状の二価鉄化合物111と、セメントとが、混練機30に搬入される。混練工程S13では、例えば、まず、炭酸化処理を施された焼却主灰121と、セメントと、細骨材及び粗骨材と、を含む混合物を混練し、次いで、混練した混合物と、粉末状の二価鉄化合物111と、水と、混和剤と、を混練してもよい。
【0023】
混練工程S13では、セメント又は細骨材の一部が焼却主灰121に置換される。焼却主灰121を使用した分だけ、セメント又は細骨材の量が減少する。混練工程S13において、焼却主灰121、セメント、細骨材及び粗骨材は、それぞれ計量された後、混練機30に投入される。混練機30に投入された混合物は、例えば30秒以上混練される。混練工程S13において、粉末状の二価鉄化合物111、水及び混和剤は、それぞれ計量された後、混合物の入った混練機30に投入される。混和剤は、コンクリート等の空気量及び流動性を調整するための薬剤である。混合物、粉末状の二価鉄化合物111、水、及び混和剤は、例えば90秒以上混練される。これにより、セメントを含む建設材料100が作成される。
【0024】
六価クロム(Cr6+)は、焼却主灰120から溶出していない状態では還元されにくい。第1実施形態では、炭酸化工程S12において焼却主灰120に炭酸ガスを供給して炭酸化処理を施すことで、焼却主灰120に含有される六価クロムが焼却主灰121から溶出しやすくなる。また、混練工程S13において、粉末状の二価鉄化合物111を混練させることによって、焼却主灰121から溶出された六価クロムは、三価クロム(Cr3+)に還元される。すなわち、第1実施形態の建設材料100の製造方法は、焼却主灰120に含まれる六価クロムが、炭酸化工程S12の焼却主灰120に含有される鉛等の重金属を難溶化させるための炭酸化処理で焼却主灰121から溶出し、混練工程S13で三価クロムに還元される。以上の結果、建設材料100から六価クロムが溶出することを抑制できる。
【0025】
以上で説明したように、第1実施形態の建設材料100の製造方法は、二価鉄(二価鉄化合物110)を粉末化する粉末化工程S11と、焼却主灰120に対して炭酸化処理を施す炭酸化工程S12と、粉末化工程S11及び炭酸化工程S12の後に炭酸化された焼却主灰121、粉末状の二価鉄(二価鉄化合物111)、及びセメントを混練する混練工程S13と、を備える。
【0026】
焼却主灰120に対して炭酸化処理を施すことによって、二酸化炭素が焼却主灰120に吸収されて炭酸塩として焼却主灰120に固定化されるとともに、焼却主灰120に含有される鉛(Pb)等の重金属が難溶化する。ここで、六価クロムは、焼却主灰120から溶出していない状態では還元されにくいが、焼却主灰120に対して炭酸化処理を施すことによって、焼却主灰121から溶出しやすくなる。また、第1実施形態では、炭酸化処理を施した焼却主灰121に粉末状の二価鉄化合物111を混練させることによって、焼却主灰121から溶出された六価クロムを、三価クロムに還元させることができる。以上により、鉛及び六価クロムのいずれの溶出も抑制することができる。
【0027】
このように、炭酸化工程S12で焼却主灰120に鉛等の重金属を難溶化させるための炭酸化処理を施したことによって溶出した六価クロムは、混練工程S13において三価クロムに還元させることができる。また、塊状の二価鉄化合物110に比べて粉末状の二価鉄化合物111は、比表面積が大きい。したがって、二価鉄化合物110を炭酸化された焼却主灰121に混練させる前に予め粉末化して、粉末状の二価鉄化合物111を混練させることによって、焼却主灰121に含有される六価クロムと二価鉄との反応性をより向上させることができる。このように、焼却主灰120に含有される鉛及び六価クロムの溶出を抑制することができるので、焼却主灰120を混入させたセメントを含む建設材料100の製造工程において、鉛及び六価クロムの溶出を抑制することができる。
【0028】
また、第1実施形態の焼却主灰120の処理方法は、二価鉄(二価鉄化合物110)を粉末化する粉末化工程S11と、焼却主灰120に対して炭酸化処理を施す炭酸化工程S12と、粉末化工程S11の後に二価鉄(二価鉄化合物111)と焼却主灰121とを混練する混練工程S13と、を備える。炭酸化処理によって鉛等の重金属が難溶化するとともに、六価クロムの溶出が促進される。また、二価鉄が混錬されることにより、六価クロムから三価クロムへの還元反応が起こる。六価クロムは、焼却主灰120から溶出していない状態では還元されにくいが、焼却主灰121から溶出した状態では容易に三価クロムに還元される。また、二価鉄を粉末状にして比表面積を増加させてから混練することによって、反応性を向上させることができるので、溶出した六価クロムから三価クロムへの還元反応を促進させることができる。これにより、鉛及び六価クロムの溶出を抑制することができる。
【0029】
また、第1実施形態の焼却主灰120の処理方法において、混練工程S13は、炭酸化工程S12の後に実施され、炭酸化処理を施された焼却主灰121と二価鉄(二価鉄化合物111)とを混練する。ここで、六価クロムは、焼却主灰120から溶出していない状態では還元されにくいが、焼却主灰120に対して炭酸化処理を施すことによって、焼却主灰121から溶出しやすくなる。また、焼却主灰121から溶出された六価クロムは、二価鉄による還元反応によって三価クロムへ還元させることができる。以上により、鉛及び六価クロムのいずれの溶出も抑制することができる。
【0030】
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態の建設材料100の製造方法を示すフローチャートである。
図4は、第2実施形態に係る建設材料100の製造システム2の一例を示す模式図である。第2実施形態の建設材料100の製造方法は、焼却主灰120を混入させたセメントを含む建設材料100の製造方法である。
図3に示すように、第2実施形態の建設材料100の製造方法は、粉末化工程S21と、第1混練工程S22と、炭酸化工程S23と、第2混練工程S24と、を備える。また、
図4に示すように、第2実施形態の建設材料100の製造システム2は、粉砕機10と、第1混練機40と、炭酸化処理装置50と、第2混練機60と、を含む。
【0031】
粉末化工程S21は、第1実施形態の粉末化工程S11と同様であるため、説明を省略する。粉末化工程S21は、製造システム2の粉砕機10において実施される。
図4に示すように、二価鉄化合物110は、粉砕機10によって粉末化されて、粉末状の二価鉄化合物111として、第1混練機40へ搬送される。
【0032】
第1混練工程S22は、粉末状の二価鉄化合物111と焼却主灰120とを混練して混合物130を作成する工程である。第1混練工程S22は、製造システム2の第1混練機40において実施される。
図4に示すように、粉砕機10から搬出された粉末状の二価鉄化合物111と、焼却施設から排出された焼却主灰120とが、第1混練機40によって混練された混合物130は、炭酸化処理装置50へ搬送される。
【0033】
炭酸化工程S23は、混合物130に対して炭酸化処理を施す工程である。炭酸化工程S23における炭酸化処理は、混合物130に炭酸ガス(二酸化炭素(CO2))を触れさせる処理である。炭酸化工程S23で用いる炭酸ガスは、例えば、石炭、石油、天然ガス等を燃料とする火力発電所から排出される炭酸ガスである。
【0034】
炭酸化工程S23は、製造システム2の炭酸化処理装置50において実施される。
図4に示すように、第1混練機40から搬出された混合物130が、炭酸化処理装置50に搬入される。炭酸化処理装置50には、炭酸ガスが導入される。
【0035】
炭酸化工程S23における混合物130に対する炭酸化処理の方法、及び製造システム2の炭酸化処理装置50は、第1実施形態の炭酸化工程S12における焼却主灰120に対する炭酸化処理の方法、及び製造システム1の炭酸化処理装置20と同様であるため、説明を省略する。炭酸化工程S23によって、混合物130に含有される鉛(Pb)等の重金属が難溶化する。
【0036】
炭酸化工程S23において焼却主灰120を含む混合物130に炭酸ガスを供給して炭酸化処理を施すことで、焼却主灰120に含有される六価クロム(Cr6+)が、混合物131から溶出しやすくなる。ここで、第1混練工程S22において予め粉末状の二価鉄化合物111を焼却主灰120に混錬しているため、混合物131に含有される二価鉄(二価鉄化合物111)によって六価クロムから三価クロム(Cr3+)への還元反応が起こる。すなわち、第2実施形態の建設材料100の製造方法は、焼却主灰120を含む混合物130に含まれる六価クロムが、炭酸化工程S23の混合物130に含有される鉛等の重金属を難溶化させるための炭酸化処理で混合物132から溶出するとともに、三価クロムに還元される。炭酸化処理を施された混合物131は、第2混練機60へ搬送される。
【0037】
第2混練工程S24は、炭酸処理を施された混合物131とセメントとを混練する工程である。より具体的には、第2混練工程S24では、炭酸化工程S23で炭酸化処理を施された焼却主灰120及び二価鉄化合物111の混合物131と、セメントと、を含む混合物を混練して、セメントを含む建設材料100を作成する。以下の説明では、セメントを含む建設材料100がコンクリートである場合について説明する。
【0038】
第2混練工程S24は、製造システム2の第2混練機60において実施される。
図4に示すように、炭酸化処理装置50から搬出された混合物131と、セメントとが、第2混練機60に搬入される。第2混練工程S24では、例えば、まず、炭酸化処理を施された混合物131と、セメントと、細骨材及び粗骨材と、を含む混合物を混練し、次いで、混練した混合物と、水と、混和剤と、を混練してもよい。
【0039】
第2混練工程S24では、セメント又は細骨材の一部が混合物131に置換される。混合物131を使用した分だけ、セメント又は細骨材の量が減少する。第2混練工程S24において、混合物131、セメント、細骨材及び粗骨材は、それぞれ計量された後、第2混練機60に投入される。第2混練機60に投入された混合物131は、例えば30秒以上混練される。
【0040】
第2混練工程S24において、水及び混和剤は、それぞれ計量された後、混合物131の入った第2混練機60に投入される。混合物131、水、及び混和剤は、例えば90秒以上混練される。これにより、セメントを含む建設材料100が作成される。
【0041】
以上で説明したように、第2実施形態の建設材料100の製造方法は、二価鉄(二価鉄化合物110)を粉末化する粉末化工程S21と、粉末化工程S21の後に粉末状の二価鉄(二価鉄化合物111)と焼却主灰120とを混練して混合物130を作成する第1混練工程S22と、混合物130に対して炭酸化処理を施す炭酸化工程S23と、炭酸化工程S23の後に炭酸化された混合物131、及びセメントを混練する第2混練工程S24と、を備える。
【0042】
焼却主灰120を含有する混合物130に対して炭酸化処理を施すことによって、二酸化炭素が焼却主灰120に吸収されて炭酸塩として焼却主灰120に固定化されるとともに、焼却主灰120に含有される鉛(Pb)等の重金属が難溶化する。ここで、六価クロムは、混合物130から溶出していない状態では還元されにくいが、焼却主灰120を含む混合物130に対して炭酸化処理を施すことによって、焼却主灰120に含有される六価クロム(Cr6+)が、混合物131から溶出しやすくなる。また、第1混練工程S22において予め粉末状の二価鉄化合物111を焼却主灰120に混錬しているため、混合物130から溶出された六価クロムは、混合物131に含有される二価鉄化合物111によって三価クロムに還元される。以上により、鉛及び六価クロムのいずれの溶出も抑制することができる。
【0043】
このように、炭酸化工程S23で混合物130に含有される鉛等の重金属を難溶化させるための炭酸化処理を施したことによって混合物131から溶出した六価クロムは、第1混練工程S22において予め混錬した二価鉄(二価鉄化合物111)によって三価クロムに還元させることができる。また、塊状の二価鉄化合物110に比べて粉末状の二価鉄化合物111は、比表面積が大きい。したがって、二価鉄化合物110を焼却主灰120に混練させる前に予め粉末化して、粉末状の二価鉄化合物111を混練させることによって、焼却主灰120に含有される六価クロムと二価鉄との反応性を向上させることができる。このように、焼却主灰120に含有される鉛及び六価クロムの溶出を抑制することができるので、焼却主灰120を混入させたセメントを含む建設材料100の製造工程において、鉛及び六価クロムの溶出を抑制することができる。
【0044】
また、第2実施形態の焼却主灰120の処理方法は、二価鉄(二価鉄化合物110)を粉末化する粉末化工程S21と、焼却主灰120に対して炭酸化処理を施す炭酸化工程S23と、粉末化工程S21の後に二価鉄(二価鉄化合物111)と焼却主灰120とを混練する混練工程(第1混練工程S22)と、を備える。炭酸化処理によって鉛等の重金属が難溶化するとともに、六価クロムの溶出が促進される。また、二価鉄が混錬されることにより、六価クロムから三価クロムへの還元反応が起こる。六価クロムは、焼却主灰120から溶出していない状態では還元されにくいが、焼却主灰120を含む混合物131から溶出した状態では容易に三価クロムに還元される。また、二価鉄を粉末状にして比表面積を増加させてから混練することによって、反応性を向上させることができるので、溶出した六価クロムから三価クロムへの還元反応を促進させることができる。これにより、鉛及び六価クロムの溶出を抑制することができる。
【0045】
また、第2実施形態の焼却主灰120の処理方法において、炭酸化工程S23は、混練工程(第1混練工程S22)の後に実施され、焼却主灰120と二価鉄(二価鉄化合物111)との混合物130に対して炭酸化処理を施す。ここで、六価クロムは、焼却主灰120から溶出していない状態では還元されにくいが、混合物130に対して炭酸化処理を施すことによって、混合物131から溶出しやすくなる。また、混合物131から溶出された六価クロムは、第1混練工程S22において予め混練した二価鉄(二価鉄化合物111)による還元反応によって三価クロムへ還元させることができる。以上により、鉛及び六価クロムのいずれの溶出も抑制することができる。
【0046】
なお、各実施形態において説明した各構成は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施形態内の他の構成と組み合わせてもよい。また、これらの各構成は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施形態とは異なる他の実施形態内の構成と組み合わせてもよい。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の改変を行ってもよい。
【0047】
例えば、炭酸化工程S12、S23で用いる炭酸ガスは、必ずしも石炭、石油、天然ガス等を燃料とする火力発電所から排出される炭酸ガスでなくてもよい。炭酸ガスは、例えば、セメントの製造工場等の工場、化学プラント、焼却施設等から排出される炭酸ガスであってもよい。炭酸ガスは、炭酸化工程S12、S23に用いるために生成されたガスであってもよい。
【0048】
混練工程S13又は第2混練工程S24において、混練する混合物は、必ずしも細骨材及び粗骨材を含んでいなくてもよい。例えば、建設材料100がモルタルである場合、混練工程S13又は第2混練工程S24において混練する混合物は、粗骨材を含まない。また、建設材料100がペーストである場合、混練工程S13又は第2混練工程S24において混練する混合物は、粗骨材及び細骨材を含まない。
【符号の説明】
【0049】
1、2 製造システム
10 粉砕機
20、50 炭酸化処理装置
30 混練機
40 第1混練機
60 第2混練機
100 建設材料
110、111 二価鉄化合物
120、121 焼却主灰
130、131 混合物
S11、S21 粉末化工程
S12、S23 炭酸化工程
S13 混練工程
S22 第1混練工程
S24 第2混練工程