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特開2022-119086光硬化性樹脂組成物及びディスプレイ用部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119086
(43)【公開日】2022-08-16
(54)【発明の名称】光硬化性樹脂組成物及びディスプレイ用部材
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20220808BHJP
   C08G 59/66 20060101ALI20220808BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
C08F290/06
C08G59/66
G09F9/00 313
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021016079
(22)【出願日】2021-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】中川 理夢
(72)【発明者】
【氏名】中村 司
【テーマコード(参考)】
4J036
4J127
5G435
【Fターム(参考)】
4J036AJ08
4J036DD02
4J036HA02
4J036JA09
4J036KA01
4J127AA07
4J127BB031
4J127BB091
4J127BC021
4J127BC131
4J127BD411
4J127BE331
4J127BG281
4J127CB131
4J127CB354
4J127CB371
4J127DA26
4J127DA52
4J127FA17
5G435AA17
5G435HH20
5G435LL07
5G435LL08
(57)【要約】
【課題】本発明は、支持体から剥離したときの残留応力による反りの発生を抑制でき、光学特性、耐薬品性及びパターニング性の良好な光硬化性樹脂組成物及びディスプレイ用部材を目的とする。
【解決手段】ポリマー(A)と、ラジカル重合性モノマー(B)と、カチオン重合性モノマー(C)と、を含有し、前記ポリマー(A)100質量部に対する、前記ラジカル重合性モノマー(B)の含有量が、10質量部以上70質量部以下である、光硬化性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー(A)と、ラジカル重合性モノマー(B)と、カチオン重合性モノマー(C)と、を含有し、
前記ポリマー(A)100質量部に対する、前記ラジカル重合性モノマー(B)の含有量が、10質量部以上70質量部以下である、光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ラジカル重合性モノマー(B)が、分子骨格に環状構造を有する2官能以上の(メタ)アクリレートである、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記カチオン重合性モノマー(C)が、2官能以上のエポキシ基を有する化合物である、請求項1又は2に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
2官能以上のメルカプト基を有する化合物(D)をさらに含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記化合物(D)の前記メルカプト基の数が、前記ラジカル重合性モノマー(B)の有する官能基の数に対して、30モル%以上100モル%以下である、請求項4に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
ディスプレイ用である、請求項1~5のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物が硬化してなる機能層を有し、
樹脂フィルムの一方の面に前記機能層が位置する、ディスプレイ用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性樹脂組成物及びディスプレイ用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディスプレイ等の表示装置の基材として、ガラスが用いられてきた。近年、ディスプレイの薄型化、軽量化、フレキシブル化に伴い、割れやすく、重いガラスに代えて、ポリイミドやポリエチレンテレフタレート(PET)等の透明樹脂製のフィルムが基材として用いられている。ディスプレイ用のデバイスを製造する際には、支持体としてガラスを用い、その上にフィルム基材を積層し、フィルム基材上にデバイスを構成する樹脂組成物を積層していく。デバイスを形成した後に支持体を取り除く。支持体を除去されたデバイスを構成する積層体(積層膜)は、熱硬化によって膜が収縮し、残留応力が発生し、反りが生じる。
【0003】
反りの改善方法として、例えば、特許文献1には、(メタ)アクリレート末端基を有するデンドリマー化合物、多面体オリゴマーシルセスキオキサン化合物、光開始剤、及び溶剤を含む、ハードコーティング組成物が提案されている。特許文献1の発明によれば、ハードコーティングフィルムのカールの発生の抑制が図られている。特許文献2には、ポリイミド層と、無機化合物層と、硬化物層とがこの順に隣接して位置し、ポリイミド層が特定の貯蔵弾性率を有し、全光線透過率が特定の値である、表示装置用部材が提案されている。特許文献2の発明によれば、反りの発生の抑制が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-59062号公報
【特許文献2】特開2019-12165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、取出し用配線を取り付けるための綺麗なパターンを形成できない(パターニング性に劣る)。特許文献2の技術では、金属配線形成時に使用する酸に対する耐性(耐薬品性)に劣る。
【0006】
そこで、本発明は、支持体から剥離したときの残留応力による反りの発生を抑制でき、光学特性、耐薬品性及びパターニング性の良好な光硬化性樹脂組成物及びディスプレイ用部材を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
【0008】
[1]ポリマー(A)と、ラジカル重合性モノマー(B)と、カチオン重合性モノマー(C)と、を含有し、
前記ポリマー(A)100質量部に対する、前記ラジカル重合性モノマー(B)の含有量が、10質量部以上70質量部以下である、光硬化性樹脂組成物。
[2]前記ラジカル重合性モノマー(B)が、分子骨格に環状構造を有する2官能以上の(メタ)アクリレートである、[1]に記載の光硬化性樹脂組成物。
[3]前記カチオン重合性モノマー(C)が、2官能以上のエポキシ基を有する化合物である、[1]又は[2]に記載の光硬化性樹脂組成物。
[4]2官能以上のメルカプト基を有する化合物(D)をさらに含有する、[1]~[3]のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
[5]前記化合物(D)の前記メルカプト基の数が、前記ラジカル重合性モノマー(B)の有する官能基の数に対して、30モル%以上100モル%以下である、[4]に記載の光硬化性樹脂組成物。
[6]ディスプレイ用である、[1]~[5]のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
【0009】
[7][1]~[6]のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物が硬化してなる機能層を有し、樹脂フィルムの一方の面に前記機能層が位置する、ディスプレイ用部材。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光硬化性樹脂組成物によれば、支持体から剥離したときの残留応力による反りの発生を抑制でき、光学特性、耐薬品性及びパターニング性を良好にできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るディスプレイ用部材の断面図である。
図2図1のディスプレイ用部材を支持体とフレキシブルデバイス用部材とに分けた断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[ディスプレイ用部材]
以下、本発明の一実施形態に係るディスプレイ用部材について、図1に基づき詳細に説明する。
【0013】
図1に示すように、ディスプレイ用部材100は、ガラス基材1と、剥離層2と、樹脂フィルム3と、機能層10とを有する。すなわち、ディスプレイ用部材100は、樹脂フィルム3の一方の面に機能層10が位置し、ガラス基材1、剥離層2、樹脂フィルム3、機能層10が、この順で積層された積層体である。
機能層10は、密着層4と、タッチセンサ層12とから構成される。タッチセンサ層12は、第一金属配線5と、絶縁層6と、第二金属配線7と、平坦化層8と、引出配線部9とから構成される。
【0014】
ディスプレイ用部材100の厚さは、例えば、5μm~50mmが好ましく、10μm~10mmがより好ましく、50μm~3mmがさらに好ましい。ディスプレイ用部材100の厚さが上記下限値以上であると、ディスプレイ用部材100の強度をより高められる。ディスプレイ用部材100の厚さが上記上限値以下であると、薄型ディスプレイへの応用が可能となる。
ディスプレイ用部材100の厚さは、例えば、デジタルノギス等を用いて測定できる。
以下、ディスプレイ用部材100を構成する各層について説明する。
【0015】
≪ガラス基材≫
ガラス基材1は、樹脂フィルム3及び機能層10を支持する。
ガラス基材1の材料は、光透過性、剛性、耐久性等に応じて適宜選択できる。ガラス基材1の材料としては、一般的なディスプレイに用いられる材料を挙げることができる。ガラス基材1の材料としては、例えば、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス等のアルカリガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。
【0016】
ガラス基材1の厚さは、例えば、1μm~10mmが好ましく、2μm~5mmがより好ましく、10μm~2mmがさらに好ましい。ガラス基材1の厚さが上記下限値以上であると、ディスプレイ用部材100の強度をより高められる。ガラス基材1の厚さが上記上限値以下であると、薄型ディスプレイへの応用が可能となる。
ガラス基材1の厚さは、例えば、デジタルノギス等を用いて測定できる。
【0017】
≪剥離層≫
剥離層2は、ガラス基材1の上に位置する。図2に示すように、ガラス基材1と剥離層2とで、支持体200が形成される。樹脂フィルム3と機能層10とで、フレキシブルデバイス用部材300が形成される。
ディスプレイ用部材100は、剥離層2と樹脂フィルム3との間で、支持体200と、フレキシブルデバイス用部材300とに分けられる。剥離層2を有することで、支持体200と、フレキシブルデバイス用部材300とを分けやすくできる。
【0018】
剥離層2の材料は、特に限定されず、例えば、アモルファスシリコンや、モリブデン、クロム、タングステン、チタン等の金属が挙げられる。剥離層2の材料としては、レーザーでの剥離の場合に、レーザー光が透過しやすく、剥離性が良好なことから、チタンが好ましい。剥離層2としては、例えば、アモルファスシリコンの膜、上述した金属によって形成された膜、上述した金属の酸化物の膜、又は上述した金属の合金によって形成された膜等が挙げられる。
【0019】
剥離層2の厚さは、例えば、5~5000nmが好ましく、10~2000nmがより好ましく、20~1000nmがさらに好ましい。剥離層2の厚さが上記下限値以上であると、支持体200と、フレキシブルデバイス用部材300とを分けやすくできる。剥離層2の厚さが上記上限値以下であると、レーザーでの剥離の場合に、レーザー光が透過せず、剥離しにくくなることを抑制できる。加えて、剥離層2の厚さが上記上限値以下であると、剥離層2を形成する時間を短くできるため、生産時間の短縮が可能となる。
剥離層2の厚さは、例えば、支持体200の厚さ方向の断面を顕微鏡等で観察することにより求められる。
【0020】
≪樹脂フィルム≫
樹脂フィルム3は、機能層10を支持する。
樹脂フィルム3の材料は、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等)、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリウレタン・塩化ビニル共重合体、ポリアミド、ポリイミド等が挙げられる。樹脂フィルム3の材料としては、強度と柔軟性とに優れることから、PET、PEN、ポリアミド、ポリイミドが好ましく、PET、ポリイミドがより好ましい。
【0021】
樹脂フィルム3の厚さは、例えば、1.0~1000μmが好ましく、2.0~500μmがより好ましく、3.0~200μmがさらに好ましい。樹脂フィルム3の厚さが上記下限値以上であると、フレキシブルデバイス用部材300の強度をより高められる。樹脂フィルム3の厚さが上記上限値以下であると、フレキシブルデバイス用部材300を柔軟にでき、取り扱いやすくなる。
樹脂フィルム3の厚さは、例えば、デジタルノギス等を用いて測定できる。
【0022】
≪機能層≫
機能層10は、ディスプレイ用部材100に種々の機能を付与する層である。本実施形態の機能層10は、密着層4と、タッチセンサ層12とが、この順に積層されてなる。タッチセンサ層12は、絶縁層6と、平坦化層8とを有する。
【0023】
<密着層>
密着層4は、樹脂フィルム3とタッチセンサ層12との密着性を向上する層である。
密着層4は、本発明の光硬化性樹脂組成物が硬化してなる。
【0024】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、ポリマー(A)と、ラジカル重合性モノマー(B)と、カチオン重合性モノマー(C)と、を含有する。
【0025】
(ポリマー(A))
ポリマー(A)としては、例えば、(メタ)アクリルポリマー、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリルポリマー」とは、アクリルポリマー及びメタクリルポリマーのいずれか一方又は双方を意味する。「ウレタン(メタ)アクリレート」とは、ウレタンアクリレート及びウレタンメタクリレートのいずれか一方又は双方を意味する。「(メタ)アクリル」等についても同様である。
【0026】
ポリマー(A)の(メタ)アクリル当量は、600~2000g/eqが好ましく、700~1750g/eqがより好ましく、800~1500g/eqがさらに好ましい。ポリマー(A)の(メタ)アクリル当量が上記下限値以上であると、密着層4に生じる応力を低減しやすい。ポリマー(A)の(メタ)アクリル当量が上記上限値以下であると、粘度を低減でき、取り扱いやすい。
ここで、「ポリマー(A)の(メタ)アクリル当量」とは、ポリマー(A)を構成する単量体単位の分子量を1分子中の(メタ)アクリロイル基の数で除した値をいう。「単量体単位」とは、ポリマー(A)の原料となるモノマー((メタ)アクリレート)のビニル基が開裂した繰り返し単位をいう。
ポリマー(A)の(メタ)アクリル当量は、例えば、赤外線吸収分光法(IR)により測定できる。
【0027】
ポリマー(A)の質量平均分子量は、7000~25000が好ましく、8000~20000がより好ましく、9000~15000がさらに好ましい。ポリマー(A)の質量平均分子量が上記下限値以上であると、密着層4に生じる応力を低減しやすい。ポリマー(A)の質量平均分子量が上記上限値以下であると、硬化性をより高められる。
ポリマー(A)の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレンを標準物質として求められる。
【0028】
ポリマー(A)のガラス転移温度(Tg)は、70~120℃が好ましく、70~110℃がより好ましく、75~100℃がさらに好ましい。ポリマー(A)のガラス転移温度が上記数値範囲内であると、密着層4に生じる応力を低減しやすい。
ポリマー(A)のガラス転移温度は、示差走査熱量(DSC)測定により求められる。
【0029】
ウレタン(メタ)アクリレートは、多価アルコール、ポリイソシアネート及びヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートの3者を反応させることによって得られる。
【0030】
多価アルコールとしては、例えば、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール及び1,6-ヘキサンジオール等の炭素数1~10のアルキレングリコール;トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトール等のトリオール;トリシクロデカンジメチロール及びビス-〔ヒドロキシメチル〕-シクロヘキサン等の環状骨格を有するアルコール等;及び、これら多価アルコールと多塩基酸(例えば、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸及びテトラヒドロ無水フタル酸等)との反応によって得られるポリエステルポリオール;多価アルコールとε-カプロラクトンとの反応によって得られるカプロラクトンアルコール;ポリカーボネートポリオール(例えば1,6-ヘキサンジオールとジフェニルカーボネートとの反応によって得られるポリカーボネートジオール等);又は、ポリエーテルポリオール(例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール及びエチレンオキサイド変性ビスフェノールA等)等が挙げられる。ポリマー(A)中の他の成分との相溶性の観点から、多価アルコールとしては、ポリプロピレングリコールが好ましく、樹脂フィルム3との密着性の観点から、質量平均分子量が2000以上のポリプロピレングリコールが特に好ましい。ポリプロピレングリコールの質量平均分子量の上限値は特に限定されないが、例えば、10000以下が好ましく、5000以下がより好ましい。
ポリプロピレングリコールの質量平均分子量は、GPCを用いて、ポリスチレンを標準物質として求められる。
【0031】
ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート又はジシクロペンタニルイソシアネート等が挙げられる。
【0032】
ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシC2~C4アルキル(メタ)アクリレート;ジメチロールシクロヘキシルモノ(メタ)アクリレート;ヒドロキシカプロラクトン(メタ)アクリレート;及び、ヒドロキシ基末端ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0033】
ウレタン(メタ)アクリレートを得るための反応は、例えば、以下のようにして行う。即ち、多価アルコールの水酸基1当量に対するポリイソシアネートのイソシアネート基が好ましくは1.1~2.0当量、さらに好ましくは1.1~1.5当量になるように、多価アルコールとポリイソシアネートを混合し、好ましくは70~90℃で、反応させることにより、ウレタンオリゴマーを合成する。次いで、得られたウレタンオリゴマーのイソシアネート基1当量に対してヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物の水酸基が、好ましくは1~1.5当量となるように、得られたウレタンオリゴマーとヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物を混合し、70~90℃で反応させることにより、目的とするウレタン(メタ)アクリレートを得ることができる。
【0034】
ポリマー(A)の含有量は、光硬化性樹脂組成物の総質量に対して、20~80質量%が好ましく、25~75質量%がより好ましく、30~70質量%がさらに好ましい。ポリマー(A)の含有量が上記下限値以上であると、密着層4に生じる応力を低減しやすい。ポリマー(A)の含有量が上記上限値以下であると、硬化性をより高められる。
ウレタン(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
(ラジカル重合性モノマー(B))
ラジカル重合性モノマー(B)としては、(メタ)アクリレートが挙げられ、熱収縮による残留応力をより低減できることから、分子骨格に環状構造を有する2官能以上の(メタ)アクリレートが好ましい。
分子骨格に環状構造を有する2官能以上の(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の各種アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル等が挙げられる。
熱収縮による残留応力をより低減できる観点から、分子骨格に環状構造を有する2官能以上の(メタ)アクリレートとしては、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが好ましい。(メタ)アクリレートの官能基の数の上限は特に限定されないが、例えば、6個である。
【0036】
ラジカル重合性モノマー(B)の含有量は、ポリマー(A)100質量部に対して、10質量部以上70質量部以下が好ましく、15質量部以上60質量部以下がより好ましく、20質量部以上50質量部以下がさらに好ましい。ラジカル重合性モノマー(B)の含有量が上記下限値以上であると、熱収縮による残留応力をより低減できる。ラジカル重合性モノマー(B)の含有量が上記上限値以下であると、耐薬品性をより向上できる。
光硬化性樹脂組成物の硬化物の熱収縮による残留応力は、ラジカル重合性モノマー(B)の種類、含有量及びこれらの組合せによって調整できる。
【0037】
(カチオン重合性モノマー(C))
カチオン重合性モノマー(C)としては、エポキシ基を有する化合物が挙げられ、熱収縮による残留応力をより低減できることから、2官能以上のエポキシ基を有する化合物が好ましい。
2官能以上のエポキシ基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
熱収縮による残留応力をより低減できる観点から、2官能以上のエポキシ基を有する化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテルが好ましい。2官能以上のエポキシ基を有する化合物の官能基の数の上限は特に限定されないが、例えば、4個である。
【0038】
カチオン重合性モノマー(C)の含有量は、ポリマー(A)100質量部に対して、0.01~10質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましく、1~10質量部がさらに好ましい。カチオン重合性モノマー(C)の含有量が上記下限値以上であると、熱収縮による残留応力をより低減できる。カチオン重合性モノマー(C)の含有量が上記上限値以下であると、耐薬品性をより向上できる。
光硬化性樹脂組成物の硬化物の熱収縮による残留応力は、カチオン重合性モノマー(C)の種類、含有量及びこれらの組合せによって調整できる。
【0039】
本実施形態の光硬化性樹脂組成物は、ポリマー(A)、ラジカル重合性モノマー(B)及びカチオン重合性モノマー(C)以外の成分(任意成分)を含有してもよい。任意成分としては、例えば、2官能以上のメルカプト基を有する化合物(D)、ビニル化合物、アリル化合物、光重合開始剤、溶剤、アルカリ剤等が挙げられる。
【0040】
・2官能以上のメルカプト基を有する化合物(D)
本実施形態の光硬化性樹脂組成物は、熱収縮による残留応力をより低減し、耐薬品性、透明度等の光学物性をより向上するために、2官能以上のメルカプト基を有する化合物(D)を含有してもよい。
2官能以上のメルカプト基を有する化合物(D)としては、例えば、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)等が挙げられる。
耐薬品性をより向上できる観点から、2官能以上のメルカプト基を有する化合物(D)としては、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)が好ましい。
【0041】
2官能以上のメルカプト基を有する化合物(D)の含有量は、ポリマー(A)100質量部に対して、20~60質量部が好ましく、25~55質量部がより好ましく、30~50質量部がさらに好ましい。2官能以上のメルカプト基を有する化合物(D)の含有量が上記下限値以上であると、耐薬品性をより向上できる。2官能以上のメルカプト基を有する化合物(D)の含有量が上記上限値以下であると、熱収縮による残留応力をより低減できる。
【0042】
2官能以上のメルカプト基を有する化合物(D)のメルカプト基の数は、ラジカル重合性モノマー(B)の有する官能基(不飽和炭化水素を有する官能基)の数に対して、30モル%以上100モル%以下が好ましく、35モル%以上95モル%以下がより好ましく、40モル%以上90モル%以下がさらに好ましい。2官能以上のメルカプト基を有する化合物(D)のメルカプト基の数が上記下限値以上であると、耐薬品性をより向上できる。2官能以上のメルカプト基を有する化合物(D)のメルカプト基の数が上記上限値以下であると、透明度(ヘイズ値)をより向上できる。
2官能以上のメルカプト基を有する化合物(D)のメルカプト基の数は、例えば、イールマン試薬を用いた呈色試験や、酸化還元滴定法等により測定できる。
【0043】
光硬化性樹脂組成物の硬化物の熱収縮による残留応力、耐薬品性、透明度は、2官能以上のメルカプト基を有する化合物(D)の種類、含有量及びこれらの組合せによって調整できる。
【0044】
・ビニル化合物
本実施形態の光硬化性樹脂組成物は、メルカプト基との反応性を高め、メルカプト基との反応により、柔軟性のある架橋構造を形成するビニル化合物、アリル化合物等の炭素-炭素二重結合を有する重合性化合物を含有してもよい。
ビニル化合物としては、例えば、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンメタノールジビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、ビス(4-ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル)グルタレート、ビス(4-ビニロキシブチル)イソフタレート、トリメチロールメタントリビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等が挙げられる。
2官能以上のメルカプト基を有する化合物(D)と反応し、柔軟性のある架橋構造を形成しやすいことから、ビニル化合物としては、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテルが好ましい。
【0045】
ビニル化合物の含有量は、ポリマー(A)100質量部に対して、10~40質量部が好ましく、15~35質量部がより好ましく、20~30質量部がさらに好ましい。ビニル化合物の含有量が上記下限値以上であると、熱収縮による残留応力をより低減できる。ビニル化合物の含有量が上記上限値以下であると、耐薬品性をより向上できる。
【0046】
・アリル化合物
アリル化合物としては、例えば、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
2官能以上のメルカプト基を有する化合物(D)と反応し、柔軟性のある架橋構造を形成しやすいことから、アリル化合物としては、ジアリルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートが好ましい。
【0047】
アリル化合物の含有量は、ポリマー(A)100質量部に対して、10~40質量部が好ましく、15~35質量部がより好ましく、20~30質量部がさらに好ましい。アリル化合物の含有量が上記下限値以上であると、熱収縮による残留応力をより低減できる。アリル化合物の含有量が上記上限値以下であると、耐薬品性をより向上できる。
【0048】
・光重合開始剤
本実施形態の光硬化性樹脂組成物は、塗布する膜厚の条件等により充分に光硬化性を発現しない場合には、光硬化性の感度を高めて、光照射により硬化物を得るために、光重合開始剤を含有してもよい。
光重合開始剤としては、例えば、オキシムエステル系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、トリアジン系化合物、ホスフィン系化合物、キノン系化合物、ボレート系化合物、カルバゾール系化合物、イミダゾール系化合物、チタノセン系化合物等が挙げられる。
これらの光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
光重合開始剤の含有量は、ポリマー(A)100質量部に対して、0.01~10質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましく、1~10質量部がさらに好ましい。光重合開始剤の含有量が上記下限値以上であると、硬化性をより高められる。光重合開始剤の含有量が上記上限値以下であると、熱収縮による残留応力をより低減できる。
【0050】
・溶剤
本実施形態の光硬化性樹脂組成物は、粘度を低減し、膜厚の調整を容易にするために、溶剤を含有してもよい。
溶剤としては、例えば、シクロヘキサノン、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、1-メトキシ-2-プロピルアセテート、酢酸2-メトキシ-1-メチルエチル(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルベンゼン、エチレングリコールジエチルエーテル、キシレン、エチルセロソルブ、メチル-n-アミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルトルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルケトン、石油系溶剤等が挙げられる。
ポリマー(A)との相溶性に優れることから、溶剤としては、シクロヘキサノン、酢酸2-メトキシ-1-メチルエチル、ジエチレングリコールジメチルエーテルが好ましい。
これらの溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
溶剤の含有量は、ポリマー(A)100質量部に対して、800~4000質量部が好ましく、850~3000質量部がより好ましく、900~2000質量部がさらに好ましい。溶剤の含有量が上記下限値以上であると、粘度をより低減し、取り扱いやすくなる。溶剤の含有量が上記上限値以下であると、硬化性をより高められる。
【0052】
・アルカリ剤
本実施形態の光硬化性樹脂組成物は、パターニング形成のための現像液として用いられるアルカリ剤を含有してもよい。
アルカリ剤としては、例えば、炭酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、ジメチルベンジルアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
これらの現像液には、アルカリ剤以外に、消泡剤や界面活性剤を配合してもよい。
【0053】
密着層4の厚さは、例えば、0.1~200μmが好ましく、0.5~150μmがより好ましく、1.0~100μmがさらに好ましい。密着層4の厚さが上記下限値以上であると、樹脂フィルム3とタッチセンサ層12との密着性をより向上できる。密着層4の厚さが上記上限値以下であると、熱収縮による残留応力をより低減できる。
密着層4の厚さは、例えば、ディスプレイ用部材100の厚さ方向の断面を顕微鏡等で観察することにより求められる。
【0054】
<タッチセンサ層>
タッチセンサ層12は、タッチパネルにおけるタッチセンサの役割を果たす層である。タッチセンサ層12は、第一金属配線5と、絶縁層6と、第二金属配線7と、平坦化層8と、引出配線部9とから構成される。
【0055】
タッチセンサ層12の厚さは、例えば、0.2~500μmが好ましく、1.0~400μmがより好ましく、2.0~300μmがさらに好ましい。タッチセンサ層12の厚さが上記下限値以上であると、タッチセンサ層12の強度をより高められる。タッチセンサ層12の厚さが上記上限値以下であると、タッチセンサの感度をより高められる。
タッチセンサ層12の厚さは、例えば、フレキシブルデバイス用部材300の厚さ方向の断面を顕微鏡等で観察することにより求められる。
【0056】
(第一金属配線)
第一金属配線5は、タッチセンサ層12に通電する配線である。
第一金属配線5の材料は、特に限定されず、例えば、金、銀、銅、クロム、プラチナ、アルミニウム、パラジウム、モリブデン等の金属、これら金属の任意の合金が挙げられる。
第一金属配線5の線幅は、例えば、1.0~500μmが好ましく、2.0~400μmがより好ましく、3.0~300μmがさらに好ましい。第一金属配線5の線幅が上記下限値以上であると、第一金属配線5の電気抵抗を低減できる。第一金属配線5の線幅が上記上限値以下であると、ディスプレイとしての視認性を向上できる。加えて、第一金属配線5の線幅が上記上限値以下であると、画像領域の面積を充分に確保できる。
第一金属配線5の線幅は、例えば、デジタルノギス等で測定できる。
【0057】
第一金属配線5の厚さは、例えば、50~1000nmが好ましく、100~800nmがより好ましく、200~600nmがさらに好ましい。第一金属配線5の厚さが上記下限値以上であると、第一金属配線5の電気抵抗を低減できる。第一金属配線5の厚さが上記上限値以下であると、後述する平坦化層8をより平坦にできる。
第一金属配線5の厚さは、例えば、厚さ方向の断面を顕微鏡等で観察することにより測定できる。
【0058】
(絶縁層)
絶縁層6は、第一金属配線5を絶縁して短絡を防止する層である。絶縁層6は、第一金属配線5を被覆するように設けられている。
絶縁層6の材料は、所望の絶縁性を有する材料であることが好ましく、タッチセンサに一般的に用いられるものを使用できる。絶縁層6の材料としては、例えば、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、カルド樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン樹脂等の絶縁性樹脂材料等が挙げられる。
絶縁層6の材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
絶縁層6の厚さは、例えば、0.1~250μmが好ましく、0.5~200μmがより好ましく、1.0~150μmがさらに好ましい。絶縁層6の厚さが上記下限値以上であると、絶縁性をより高められる。絶縁層6の厚さが上記上限値以下であると、フレキシブルデバイス用部材300として取り扱いやすくなる。
なお、後述する引出配線部9を除き、第一金属配線5は、絶縁層6から露出しないものとする。
絶縁層6の厚さは、例えば、フレキシブルデバイス用部材300の厚さ方向の断面を顕微鏡等で観察することにより求められる。
絶縁層6の層構造は、1層であってもよく、2層以上を含む多層であってもよい。
【0060】
絶縁層6は、本実施形態の光硬化性樹脂組成物を含有してもよい。絶縁層6が本実施形態の光硬化性樹脂組成物を含有することで、フレキシブルデバイス用部材300の熱収縮による残留応力をより低減できる。
【0061】
(第二金属配線)
第二金属配線7は、タッチセンサ層12に通電する配線である。第二金属配線7は、絶縁層6の上に設けられ、平坦化層8で被覆されている。
第二金属配線7の材料は、第一金属配線5の材料と同様である。
第二金属配線7の線幅は、第一金属配線5の線幅と同様である。
第二金属配線7の厚さは、第一金属配線5の厚さと同様である。
【0062】
(平坦化層)
平坦化層8は、タッチセンサ層12の表面に位置し、タッチセンサ層12の表面を平坦にする層である。平坦化層8は、第二金属配線7を被覆するように設けられている。
平坦化層8は、例えば、第二金属配線7を被覆するように感光性樹脂を塗布し、硬化させることにより形成できる。感光性樹脂としては、例えば、アクリレート系、メタクリレート系、ポリ桂皮酸ビニル系又は環化ゴム系等の反応性ビニル基を有する感光性樹脂が挙げられる。
これらの感光性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
平坦化層8は、本実施形態の光硬化性樹脂組成物を含有してもよい。平坦化層8が本実施形態の光硬化性樹脂組成物を含有することで、フレキシブルデバイス用部材300の熱収縮による残留応力をより低減できる。
【0063】
平坦化層8の厚さは、タッチセンサ層12の表面が平坦面となるように適宜設定することができ、例えば、0.1~250μmが好ましく、0.5~200μmがより好ましく、1.0~150μmがさらに好ましい。平坦化層8の厚さが上記下限値以上であると、タッチセンサ層12の表面をより平坦にできる。平坦化層8の厚さが上記上限値以下であると、フレキシブルデバイス用部材300として取り扱いやすくなる。
なお、後述する引出配線部9を除き、第二金属配線7は、平坦化層8から露出しないものとする。
平坦化層8の厚さは、例えば、フレキシブルデバイス用部材300の厚さ方向の断面を顕微鏡等で観察することにより求められる。
【0064】
(引出配線部)
引出配線部9は、タッチセンサ層12の表面から、第一金属配線5又は第二金属配線7が露出するように設けられた空隙部である。引出配線部9を備えることで、外部配線(不図示)を第一金属配線5又は第二金属配線7に接続でき、タッチ位置の静電容量の変化を検出し、検出した信号(検出信号)を外部回路(不図示)に伝達できる。
引出配線部9の深さは、特に限定されず、例えば、0.05~400μmが好ましく、0.1~300μmがより好ましく、0.5~200μmがさらに好ましい。引出配線部9の深さが上記下限値以上であると、外部配線を第一金属配線5又は第二金属配線7に確実に接続できる。引出配線部9の深さが上記上限値以下であると、タッチセンサ層12の強度の低下を抑制できる。
引出配線部9の深さは、例えば、フレキシブルデバイス用部材300の厚さ方向の断面を顕微鏡等で観察することにより求められる。
【0065】
引出配線部9の幅は、第一金属配線5の線幅と同様である。
【0066】
[ディスプレイ用部材の製造方法]
ディスプレイ用部材100は、従来公知の方法により製造できる。
例えば、ガラス基材1上に、剥離層2、樹脂フィルム3、密着層4、第一金属配線5、絶縁層6、第二金属配線7、平坦化層8をこの順に積層し、その後、引出配線部9を設けることにより製造できる。
【0067】
ガラス基材1上に形成した剥離層2には、樹脂フィルム3を積層する前に、例えば、けん化処理、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線処理、火炎処理等の表面処理を施してもよい。
【0068】
密着層4は、例えば、本実施形態の光硬化性樹脂組成物を樹脂フィルム3上に塗布し、光照射及び加熱の少なくとも1つを行うことにより形成できる。
光照射する場合の積算露光量は、例えば、50~3000mJ/cmが好ましく、100~2000mJ/cmがより好ましく、100~1000mJ/cmがさらに好ましい。積算露光量が上記下限値以上であると、光硬化性樹脂組成物を充分に硬化できる。積算露光量が上記上限値以下であると、光硬化性樹脂組成物の劣化を抑制できる。
加熱する場合の温度(加熱温度)は、例えば、100~280℃が好ましく、120~250℃がより好ましく、150~230℃がさらに好ましい。加熱温度が上記下限値以上であると、光硬化性樹脂組成物を充分に硬化できる。加熱温度が上記上限値以下であると、光硬化性樹脂組成物の劣化を抑制できる。
光照射又は加熱する時間(処理時間)は、例えば、5~60分間が好ましく、10~45分間がより好ましく、20~30分間がさらに好ましい。処理時間が上記下限値以上であると、光硬化性樹脂組成物を充分に硬化できる。処理時間が上記上限値以下であると、ディスプレイ用部材100の生産効率をより高められる。
光照射及び加熱の少なくとも1つを行うことにより、重合反応が起こり、光硬化性樹脂組成物が硬化して密着層4が得られる。
【0069】
絶縁層6は、例えば、密着層4の表面に第一金属配線5を配置した後、絶縁層6の材料となる組成物を塗布し、光照射及び加熱の少なくとも1つを行うことにより形成できる。
光照射する場合の積算放射量、加熱温度、処理時間は、密着層4を形成する場合と同様である。
光照射及び加熱の少なくとも1つを行うことにより、重合反応が起こり、絶縁層6の材料となる組成物が硬化して絶縁層6が得られる。
【0070】
平坦化層8は、例えば、絶縁層6の表面に第二金属配線7を配置した後、平坦化層8の材料となる組成物を塗布し、光照射及び加熱の少なくとも1つを行うことにより形成できる。
光照射する場合の積算放射量、加熱温度、処理時間は、密着層4を形成する場合と同様である。
光照射及び加熱の少なくとも1つを行うことにより、重合反応が起こり、平坦化層8の材料となる組成物が硬化して平坦化層8が得られる。
【0071】
引出配線部9は、平坦化層8を形成した後、パターニングを行うことにより形成できる。パターニングの方法としては、現像液を塗布する方法、レーザー光を照射する方法、プラズマエッチングを行う方法等が挙げられる。
パターニングは、剥離層2と樹脂フィルム3とを剥離して、ディスプレイ用部材100を支持体200とフレキシブルデバイス用部材300とに分けてから行ってもよい。
【0072】
剥離層2と樹脂フィルム3とを剥離する方法は、特に限定されず、外力の付与や光線の照射等の物理的方法、又は、薬品の塗布等の化学的方法等が挙げられる。
支持体200とフレキシブルデバイス用部材300とに分けるときに、支持体200から剥離されることにより、フレキシブルデバイス用部材300に内在する残留応力が解放され、反りが生じる。
本実施形態のフレキシブルデバイス用部材300は、密着層4を含む機能層10が本実施形態の光硬化性樹脂組成物を含有するため、残留応力を低減でき、反りの発生を抑制できる。
【0073】
本実施形態の光硬化性樹脂組成物は、残留応力による反りの発生を抑制でき、光学特性、耐薬品性及びパターニング性が良好である。このため、本実施形態の光硬化性樹脂組成物は、ディスプレイ用の樹脂組成物として好適に用いられる。
【0074】
本実施形態のディスプレイ用部材100は、本実施形態の光硬化性樹脂組成物の硬化物である機能層10を備える。機能層10は、支持体200から剥離したときの残留応力による反りの発生を抑制でき、光学特性、耐薬品性及びパターニング性が良好である。このため、ディスプレイ用部材100は、画像表示装置として好適に用いられる。
画像表示装置の具体例としては、例えば、携帯電話、携帯型ゲーム機器、携帯情報端末、パーソナルコンピュータ、電子書籍、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、ヘッドマウントディスプレイ、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、デジタルオーディオプレイヤ等)、複写機、ファクシミリ、プリンター、プリンター複合機、自動販売機、現金自動預け入れ払い機(ATM)、個人認証機器、光通信機器、ICカード等が挙げられる。
ディスプレイ用部材100は、タッチパネル用部材として用いられてもよい。
【0075】
ディスプレイ用部材100から支持体200を剥離したフレキシブルデバイス用部材300は、柔軟性に優れる。このため、フレキシブルデバイス用部材300は、フレキシブルディスプレイとして好適に用いられる。
【0076】
以上、本実施形態のディスプレイ用部材100について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ等も含まれる。
【0077】
例えば、本実施形態のディスプレイ用部材100は、剥離層2を備えるが、ディスプレイ用部材は、剥離層を備えていなくてもよい。
ディスプレイ用部材100は、ガラス基材1を備えるが、ディスプレイ用部材は、ガラス基材1に代えて、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂)等の剛性のある樹脂を材料とする樹脂基材を用いてもよい。
ディスプレイ用部材100は、引出配線部9を備えるが、ディスプレイ用部材は、引出配線部を備えていなくてもよい。
【実施例0078】
以下に、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0079】
以下の実施例では、次の材料を使用した。
≪ポリマー(A)≫
P1:ウレタンアクリレート(質量平均分子量10,000、アクリル当量1,250g/eq、Tg78℃)。
P2:ウレタンアクリレート(質量平均分子量12,000、アクリル当量900g/eq、Tg88℃)。
【0080】
≪ラジカル重合性モノマー(B)≫
M1:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製、KAYARAD(登録商標) DPHA)。
M2:ジシクロペンタニルジアクリレート(日本化薬(株)製、KAYARAD(登録商標) R-684)。
【0081】
≪カチオン重合性モノマー(C)≫
E1:水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)製、デナコール(登録商標)EX-252)。
【0082】
<2官能以上のメルカプト基を有する化合物(D)>
T1:トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)(昭和電工(株)製、カレンズMT(登録商標)TPMB)。
【0083】
<アリル化合物>
A1:トリアリルイソシアヌレート(三菱ケミカル(株)製、TAIC(登録商標))。
【0084】
<光重合開始剤>
I1:光重合開始剤1(BASF社製、Irgacure(登録商標)OXE02)。
I2:光重合開始剤2(日本化薬(株)製、KAYACURE(登録商標)DETX-S)。
【0085】
<溶剤>
S1:酢酸2-メトキシ-1-メチルエチル(関東化学(株)製)。
S2:シクロヘキサノン(関東化学(株)製)。
【0086】
[実施例1~3、比較例1~5]
ディスプレイ用部材のサンプルは、次のようにして作製した。
ガラス基材(AGC(株)製、AN100、サイズ100mm×100mm、厚さ0.5mm)上に、チタン(Ti)スパッタ膜20nmからなる剥離層を形成し、支持体とした。支持体の剥離層の上に厚さ5μmのポリイミド樹脂(樹脂フィルム)を積層した。各材料を、表1に示す組成で配合し、混合することにより、光硬化性樹脂組成物を調製した。得られた光硬化性樹脂組成物を樹脂フィルム上に塗布し、超高圧水銀ランプ(200mJ/cm)で紫外線を照射し、炭酸ナトリウム水溶液による現像を行い、230℃で30分間乾燥させて、光硬化性樹脂組成物が硬化した厚さ1.0μmの密着層を形成した。密着層の上に、銅(Cu)スパッタ膜をパターニングすることにより、第一金属配線を設けた。次いで、得られた光硬化性樹脂組成物を第一金属配線を設けた密着層の上に塗布し、密着層と同様の方法で硬化し、厚さ1.5μmの絶縁層を形成した。絶縁層の上に、銅(Cu)スパッタ膜をパターニングすることにより、第一金属配線と同様に第二金属配線を設けた。次いで、得られた光硬化性樹脂組成物を第二金属配線を設けた絶縁層の上に塗布し、密着層及び絶縁層と同様の方法で硬化し、厚さ1.5μmの平坦化層を形成し、図1と同様の層構成(機能層(密着層1.0μm/絶縁層1.5μm/平坦化層1.5μm))を有するディスプレイ用部材のサンプルを得た。得られた各例のサンプルについて、以下の試験による物性を評価した。結果を表2に示す。
【0087】
<応力測定試験>
薄膜ストレス測定装置(Tencor Instruments, FLX-2320)を用いて、4インチシリコンウェハの残留応力を測定した。このシリコンウェハ上に、各例の光硬化性樹脂組成物を用いて機能層(密着層1.0μm/絶縁層1.5μm/平坦化層1.5μm)を製膜し、前述の薄膜ストレス測定装置を用いて応力を測定した。シリコンウェハの応力との比較により、シリコンウェハと機能層との間に生じた残留応力を評価した。硬化の際にかかる熱収縮を抑え、支持体から機能層を剥離したときの残留応力による反りの発生を抑制するためには、残留応力は5MPa以下が好ましい。
【0088】
<耐薬品性試験>
有機スルホン酸基含有化合物と過酸化水素との混合溶液を液温35℃にし、各例のディスプレイ用部材のサンプルを2分間含侵し、含侵前後の色差と機能層の厚さの変化率を測定した。下記評価基準に基づいてサンプルの耐薬品性を評価した。
《評価基準》
◎:剥離が見られず、かつ、機能層の厚さの変化率が3%未満。
○:剥離が見られず、かつ、機能層の厚さの変化率が3%以上5%未満。
×:剥離している箇所が見られる、又は、機能層の厚さの変化率が5%以上。
【0089】
<耐光性試験>
キセノンウェザーメーター(スガ試験機、X75)を用いて、放射照度60W/m、ブラックパネル温度63℃の条件で各例のディスプレイ用部材のサンプルに、紫外線を56時間連続して照射した。下記評価基準に基づいてサンプルの耐光性を評価した。色差は、顕微分光測定装置(大塚電子(株)製、LCF-1100M)を用いて測定を行った。
《評価基準》
◎:色差が1.0未満。
○:色差が1.0以上2.0未満。
×:色差が2.0以上。
【0090】
<光学特性試験>
各例のディスプレイ用部材のサンプルについて光学特性試験を行った。
(全光線透過率の測定)
JIS K7361-1:1997に準拠して、ヘイズメーター(日本電色工業(株)製、NDH7000SP)を用いて、全光線透過率(380nm~780nmにおける平均透過率)を測定した。
【0091】
(ヘイズ値の測定)
JIS K7136:2000に準拠して、ヘイズメーター(日本電色工業(株)製、NDH7000SP)を用いて、ヘイズ値を測定した。
【0092】
<パターニング性評価試験>
実施例1の機能層の製造において、紫外線を照射する際に、開口50μm四方のマスクパターンを用い、下記評価基準に基づいて機能層のパターニング性(ビアパターニング性)を評価した。
《評価基準》
◎:未露光部が溶解することで開口50μm四方のビアパターンを得ることができる。
○:未露光部が溶解することで開口50μm四方のビアパターンを得ることができるが、一部、開口50μm四方になっていないビアパターンがある。
△:露光部の全溶解又は未露光部の不溶により、開口はするが、開口50μm四方のビアパターンは得られない。
×:露光部の全溶解又は未露光部の不溶により、開口したビアパターンを全く得ることができない。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
表2に示すように、本発明を適用した実施例1~3は、残留応力が5.0MPa以下で、残留応力による反りの発生を抑制できていることが分かった。また、本発明を適用した実施例1~3は、耐薬品性の評価、耐光性の評価、パターニング性の評価が「◎」又は「○」で、光学特性、耐薬品性及びパターニング性が良好であることが分かった。加えて、本発明を適用した実施例1~3は、全光線透過率が90%以上、ヘイズ値が0.4以下で、光学特性が良好であることが分かった。
一方、カチオン重合性モノマー(C)を含有せず、ラジカル重合性モノマー(B)の含有量が本発明の範囲外である比較例1~2は、残留応力が18MPa以上で、耐薬品性の評価が「×」だった。カチオン重合性モノマー(C)を含有しない比較例3は、残留応力が8MPa超で、耐薬品性の評価、耐光性の評価及びパターニング性の評価が「×」だった。ラジカル重合性モノマー(B)の含有量が本発明の範囲外である比較例4~5は、残留応力が5MPa超で、耐薬品性の評価が「×」だった。
【0096】
本発明の光硬化性樹脂組成物を用いたディスプレイ用部材によれば、支持体から剥離したときの残留応力による反りの発生を抑制でき、光学特性、耐薬品性及びパターニング性を良好にできることが分かった。
【符号の説明】
【0097】
1 ガラス基材
2 剥離層
3 樹脂フィルム
4 密着層
5 第一金属配線
6 絶縁層
7 第二金属配線
8 平坦化層
9 引出配線部
10 機能層
12 タッチセンサ層
100 ディスプレイ用部材
200 支持体
300 フレキシブルデバイス用部材
図1
図2