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  • 特開-坩堝及び遠心鋳造装置 図1
  • 特開-坩堝及び遠心鋳造装置 図2
  • 特開-坩堝及び遠心鋳造装置 図3
  • 特開-坩堝及び遠心鋳造装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119090
(43)【公開日】2022-08-16
(54)【発明の名称】坩堝及び遠心鋳造装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 41/02 20060101AFI20220808BHJP
   B22D 13/06 20060101ALI20220808BHJP
   F27B 14/10 20060101ALI20220808BHJP
   F27D 11/08 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
B22D41/02 B
B22D13/06 W
F27B14/10
F27D11/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021016084
(22)【出願日】2021-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】595176674
【氏名又は名称】株式会社ウェイナ総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100166958
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 喜代造
(72)【発明者】
【氏名】中村 精三
【テーマコード(参考)】
4E014
4K046
4K063
【Fターム(参考)】
4E014BA02
4K046AA03
4K046BA03
4K046CB05
4K046CD04
4K063AA04
4K063AA12
4K063BA03
4K063CA03
4K063FA64
(57)【要約】
【課題】内坩堝の側面の面積を小さくして溶湯の接触を抑制することにより、溶湯が内坩堝の側面に溶着して坩堝から出なくなる溶解不良を低減できる、坩堝、及び、遠心鋳造装置を提供する。
【解決手段】遠心鋳造装置1が備える坩堝10は、上面中央部に収容凹部11aが形成された外坩堝11と、外坩堝11の収容凹部11aに収容されるカーボン製の内坩堝12と、を備え、内坩堝12は、底面部12aと、底面部12aの外周縁から上方に立ち上がる側面部12bと、を備え、内坩堝12の側面部12bの上端部は、外坩堝11の収容凹部11aの内側面の上端部よりも低くなるように形成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面中央部に収容凹部が形成された外坩堝と、前記外坩堝の前記収容凹部に収容されるカーボン製の内坩堝と、を備える坩堝であって、
前記内坩堝は、底面部と、該底面部の外周縁から上方に立ち上がる側面部と、を備え、
前記側面部の上端部は、前記外坩堝の前記収容凹部の内側面の上端部よりも低くなるように形成される、坩堝。
【請求項2】
前記外坩堝はカーボン製である、請求項1に記載の坩堝。
【請求項3】
前記内坩堝には電極部材が連結され、
前記内坩堝に配置された金属がアーク放電により溶解される、請求項1又は請求項2に記載の坩堝。
【請求項4】
請求項3に記載の坩堝と、前記坩堝から溶湯が流し込まれる鋳型と、前記坩堝に配置された金属に対してアーク放電を行う電極トーチと、前記坩堝及び前記鋳型を回転させる回転機構と、前記回転機構の回転軸を挟んで前記坩堝及び前記鋳型の反対側に設けられるバランスウェイトと、を備える、遠心鋳造装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン等の金属を溶解させる際に用いる坩堝、及び、この坩堝を備える遠心鋳造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チタン等の金属を溶解させて鋳造を行う技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1には、坩堝で溶解されたチタン溶湯を遠心鋳造法で鋳造室に鋳込む技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平3-42989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術においては、坩堝の内側面に溶湯が接触して溶着し、遠心鋳造の際に坩堝から溶湯が出なくなる溶解不良が問題となっていた。そこで、本開示は、上記に関する課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下では、上記課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
本発明に係る坩堝は、上面中央部に収容凹部が形成された外坩堝と、前記外坩堝の前記収容凹部に収容されるカーボン製の内坩堝と、を備える坩堝であって、前記内坩堝は、底面部と、該底面部の外周縁から上方に立ち上がる側面部と、を備え、前記側面部の上端部は、前記外坩堝の前記収容凹部の内側面の上端部よりも低くなるように形成される。
【0007】
また、本発明に係る坩堝において、前記外坩堝はカーボン製であることが好ましい。
【0008】
また、本発明に係る坩堝において、前記内坩堝には電極部材が連結され、前記内坩堝に配置された金属がアーク放電により溶解されることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る遠心鋳造装置は、前記坩堝と、前記坩堝から溶湯が流し込まれる鋳型と、前記坩堝に配置された金属に対してアーク放電を行う電極トーチと、前記坩堝及び前記鋳型を回転させる回転機構と、前記回転機構の回転軸を挟んで前記坩堝及び前記鋳型の反対側に設けられるバランスウェイトと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る坩堝によれば、内坩堝の側面の面積を小さくして溶湯の接触を抑制することにより、溶湯が内坩堝の側面に溶着する溶解不良を低減できる。
【0011】
また、本発明に係る坩堝によれば、成形時の寸法精度、高い離型性、低い伝熱性、高寿命性、及び、耐火性を備える外坩堝を備えることができる。
【0012】
また、本発明に係る坩堝によれば、アーク放電により溶解した溶湯が内坩堝の側面に溶着する溶解不良を低減できる。
【0013】
また、本発明に係る遠心鋳造装置によれば、内坩堝の側面の面積を小さくして溶湯の接触を抑制することにより、遠心鋳造時において溶湯が内坩堝の側面に溶着する溶解不良を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】遠心鋳造装置を示す正面図。
図2】遠心鋳造装置の内部構造を示す正面図。
図3】(a)及び(b)は坩堝を示す正面図及び平面図。
図4】(a)は坩堝を示す分解図、(b)は鋳造時の坩堝を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[遠心鋳造装置1]
以下では図1及び図2を用いて、本発明の一実施形態に係る坩堝10を用いた遠心鋳造装置1について説明する。遠心鋳造装置1は、例えば歯科用の義歯床を鋳造する際に、主にチタン合金(Ti-6Al-4V等)を用いて遠心鋳造を行う場合に用いられる。特に、歯科用の義歯床を鋳造する場合は、破折等が発生しやすい純チタンよりもチタン合金を採用することが好ましい。遠心鋳造装置1は、回転機構を備える本体部2を主として構成される。本体部2は、正面に中空の鋳造室2aが形成される。本体部2の下端部はベース2bで支持される。
【0016】
鋳造室2aはアーム2cを介してベース2bに連結された蓋部3で開閉可能とされる。本体部2の上部には、使用者が遠心鋳造装置1をタッチパネル及び各種スイッチにより操作するための操作部2dが設けられる。本体部2には図示しない減圧ポンプが接続されている。蓋部3で鋳造室2aを密閉した状態で減圧ポンプを作動させることにより、鋳造室2aの内部が真空状態に減圧される。
【0017】
蓋部3には外部から鋳造室2aの内部を視認できるように窓部3aが形成されている。また、蓋部3には後述する電極トーチ6の位置を調節するための調節部3bが設けられている。具体的には、調節部3と電極トーチ6とは磁石を介して連結されており、使用者が調節部3の位置を操作することにより、電極トーチ6の位置を調節することができる。
【0018】
鋳造室2aの内部には、回転軸4に支持された状態で電極トーチ6、バランスウェイト7、鋳型9、及び、坩堝10が回転可能に設けられる。坩堝10は坩堝支持部5を介して回転軸4に支持される。また、鋳型9は鋳型支持部8を介して回転軸4に支持される。鋳型9には鋳造品(義歯床)の形状である鋳込室9aが形成されている。バランスウェイト7は回転機構の回転軸4を挟んで坩堝10及び鋳型9の反対側に設けられている。図3及び図4に示す如く、坩堝10には電極部材13が連結されている。電極トーチ6及び電極部材13は本体部2における図示しない電源装置に接続されている。
【0019】
遠心鋳造装置1において遠心鋳造を行う際には、坩堝10の内部に金属(チタン合金のインゴット)を載置し、蓋部3で鋳造室2aを密閉した状態で、鋳造室2aの内部を真空状態に減圧する。そして、本体部2の電源装置が電極トーチ6及び電極部材13に電圧を印加することにより、電極トーチ6から坩堝10に配置された金属に対してアーク放電を行う。坩堝10内の金属はアーク放電により溶解し、溶湯Mとなる(図4(b)を参照)。
【0020】
そして、本体部2の回転機構は図2中の矢印に示す如く、坩堝10、鋳型9、及びバランスウェイト7を、回転軸4を中心として時計回りに回転させる。回転機構の遠心力により、坩堝10から鋳型9に溶湯Mが流し込まれ、鋳込室9aの内部に鋳造品(義歯床)が形成される。
【0021】
[坩堝10]
次に、図3及び図4を用いて、本発明の一実施形態に係る坩堝10について詳細に説明する。図3及び図4に示す如く、坩堝10は外坩堝11と内坩堝12とを組み合わせて構成している。
【0022】
外坩堝11はカーボン製の角柱状の部材であり、上面中央部には内坩堝12を収容するための収容凹部11aが形成されている。外坩堝11の一側面には溶湯Mを流出させるために収容凹部11aの内側と外側とを連通する溝部11bが形成されている。また、収容凹部11aの底面には電極部材13を挿通するための挿通孔11cが形成されている。
【0023】
本実施形態において、外坩堝11は平面視で一辺が50mm程度の矩形に形成されている。また、外坩堝11は高さが60mm程度で形成されている。また、収容凹部11aは、内径寸法が45mm程度、深さが24mm程度の大きさに形成されている。なお、外坩堝11の形状及び大きさは限定されるものではなく、他の構成を採用することも可能である。
【0024】
なお、外坩堝11をカーボン以外の金属(銅など)やセラミック等の他の素材で形成することも可能である。但し、他の素材と比較して、成形時の寸法精度、高い離型性、低い伝熱性、高寿命性、及び、耐火性等の観点より、外坩堝11をカーボンで形成することが好ましい。
【0025】
内坩堝12はカーボン製の円形皿形状の部材であり、外坩堝11の収容凹部11aの内部に収容される。図3及び図4に示す如く、内坩堝12は、底面部12aと、底面部12aの外周縁から上方に立ち上がる側面部12bと、を備えている。遠心鋳造装置1において遠心鋳造を行う際には、内坩堝12における底面部12aに金属が載置され、内坩堝12の上で金属が溶解される。
【0026】
本実施形態において、内坩堝12は平面視で外径寸法が45mm程度、側面部12b
の高さが10mm程度の大きさに形成されている。即ち、内坩堝12の外径寸法は収容凹部11aの内径寸法に対してほぼ同じ大きさで形成されている。なお、内坩堝12の形状及び大きさは限定されるものではなく、他の構成を採用することも可能である。
【0027】
本実施形態に係る坩堝10においては、内坩堝12をカーボンで形成することにより、他の素材を用いた場合と比較して、内坩堝12が成形時の寸法精度、高い離型性、低い伝熱性、高寿命性、及び、耐火性等を備える構成としている。詳細には、外坩堝11及び内坩堝12で用いる素材は、炭素をCIP(Cold Isostatic Pressing、冷間静水圧加圧)成形することにより高密度、高強度で高固有抵抗にした高密度炭素製品を採用することがより好ましい。
【0028】
内坩堝12の下面には雌ねじ部12cが形成されている。雌ねじ部12cには電極部材13の上端部に形成された雄ねじ部13aが螺入され、内坩堝12と電極部材13とが連結される。電極部材13の素材には、タングステンやステンレス等の高融点金属が採用される。電極部材13は外坩堝11の挿通孔11cに挿通され、外坩堝11の下面からは電極部材13の下端部に形成された雄ねじ部13aが延出される。電極部材13の下部は本体部2の電源装置に接続される。
【0029】
本実施形態に係る坩堝10においては図3(a)に示す如く、内坩堝12の側面部12bの上端部は、外坩堝11の収容凹部11aの内側面の上端部よりも低くなる(内坩堝12の側面部12bの高さが外坩堝11の収容凹部11aの深さよりも小さくなる)ように形成されている。これにより、図4(b)に示す如く、アーク放電により溶解した溶湯Mが内坩堝12の内側面において接触する面積を低減させることができる。
【0030】
即ち、本実施形態に係る坩堝10を用いた遠心鋳造装置1によれば、内坩堝12の側面の面積を小さくして溶湯Mの接触を抑制することにより、溶湯Mが内坩堝12の内側面に溶着して坩堝10から出なくなる溶解不良を低減させることが可能となる。また、内坩堝12の側面への溶湯Mの接触を抑制することにより、坩堝10内での溶湯Mの残量を低減させることも可能となる。
【0031】
特に、本実施形態に係る遠心鋳造装置1の如く、純チタンと比較して高い電流値でアーク放電を行うチタン合金を用いて鋳造を行う場合には、溶湯Mの溶着がより発生しやすくなるため、上記の如く内坩堝12の側面の面積を小さくして溶湯Mの接触を抑制することがより好適となる。
【符号の説明】
【0032】
1 遠心鋳造装置 2 本体部(回転機構)
2a 鋳造室 2b ベース
2c アーム 2d 操作部
3 蓋部 3a 窓部
3b 調節部 4 回転軸
5 坩堝支持部 6 電極トーチ
7 バランスウェイト 8 鋳型支持部
9 鋳型 9a 鋳込室
10 坩堝 11 外坩堝
11a 収容凹部 11b 溝部
11c 挿通孔 12 内坩堝
12a 底面部 12b 側面部
12c 雌ねじ部 13 電極部材
13a 雄ねじ部
図1
図2
図3
図4