(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119147
(43)【公開日】2022-08-16
(54)【発明の名称】機能性バイオニック繊維材料、その製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
D01F 6/90 20060101AFI20220808BHJP
D01F 2/28 20060101ALI20220808BHJP
D01D 10/00 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
D01F6/90 321A
D01F2/28 Z
D01D10/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054981
(22)【出願日】2021-03-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】202110152454.0
(32)【優先日】2021-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】520208111
【氏名又は名称】▲広▼西大学
(74)【代理人】
【識別番号】100104662
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智司
(74)【代理人】
【識別番号】100184631
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 隆
(72)【発明者】
【氏名】ホー ホイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン レイ
(72)【発明者】
【氏名】チュー ホンシアン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ショアンフェイ
(72)【発明者】
【氏名】チョウ ハン
【テーマコード(参考)】
4L035
4L045
【Fターム(参考)】
4L035AA04
4L035BB02
4L035FF05
4L035JJ03
4L035LC04
4L045AA01
4L045BA09
4L045BA56
4L045DA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】機能性バイオニック繊維材料、その製造方法及び使用を提供する。
【解決手段】多吸着部位(N、O、S)を豊富に含み、3種類の多機能基でそれぞれ修飾されたポリエチレンイミンポリマーをカルボキシル化ナノセルロース、酸化グラフェンとブレンドした後、蜘蛛紡糸原理を模した同軸紡糸法を用いて、後架橋技術により得るものであり、前記材料はナノセルロースを骨格、酸化グラフェンを外層、3種類の多機能基でそれぞれ修飾されたポリエチレンイミンポリマーを内層とした多層構造であり、各層間が化学結合を介して接続された機能性バイオニック繊維材料である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多吸着部位、即ち重金属イオンに対して吸着性能を示すN、O、S部位を豊富に含み、3種類の多機能基でそれぞれ修飾されたポリエチレンイミンポリマーをカルボキシル化ナノセルロース、酸化グラフェンとブレンドした後、蜘蛛紡糸原理を模した同軸紡糸法を用いて、後架橋技術により得るものであり、
ナノセルロースを骨格、酸化グラフェンを外層、3種類の多機能基でそれぞれ修飾されたポリエチレンイミンポリマーを内層とした多層構造であり、各層間が化学結合を介して接続され、
前記3種類の多機能基でそれぞれ修飾されたポリエチレンイミンポリマーはそれぞれ、N、S部位を含むエチレンジチオ二酢酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマー、N、O部位を含むハイパーブランチポリカルボン酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマー及びO、N部位を含むドーパミンで修飾されたポリエチレンイミンポリマーであり、O、N部位を含むドーパミンで修飾されたポリエチレンイミンポリマーはポリカルボン酸とドーパミンでポリエチレンイミンを修飾したものであり、
前記カルボキシル化ナノセルロースは、TEMPO/NaBr/NaClO酸化系でバイオマス繊維を酸化したものである、ことを特徴とする機能性バイオニック繊維材料。
【請求項2】
カルボキシル化ナノセルロースを製造し、すなわち、TEMPO/NaBr/NaClO酸化系を用いてバイオマス繊維を酸化し、反応条件を制御することにより酸化の程度を調整し、カルボキシル化ナノセルロースを製造するステップS1と、
N、S部位を含むエチレンジチオ二酢酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマーを製造し、すなわち、エチレンジチオ二酢酸とポリエチレンイミンとを高温でアミド化反応させ、N、S部位を含むエチレンジチオ二酢酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマーを得るステップS2と、
O、N部位を含むドーパミンで修飾されたポリエチレンイミンポリマーを製造し、すなわち、シュウ酸、クエン酸又は1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸であるポリカルボン酸とドーパミンを高温でアミド化反応させ、反応が完了したときに、ポリエチレンイミンをさらに加えてアミド化反応させ続け、O、N部位を含むドーパミンで修飾されたポリエチレンイミンポリマーを得るステップS3と、
N、O部位を含むハイパーブランチポリカルボン酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマーを製造し、すなわち、ハイパーブランチポリカルボン酸とポリエチレンイミンを高温でアミド化反応させ、前記N、O部位を含むハイパーブランチポリカルボン酸のポリエチレンイミンポリマーを得るステップS4と、
ステップS1で製造されたカルボキシル化ナノセルロース、ステップS2で製造されたN、S部位を含むエチレンジチオ二酢酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマー、ステップS3で製造されたO、N部位を含むドーパミンで修飾されたポリエチレンイミンポリマー、ステップS4で製造されたN、O部位を含むハイパーブランチポリカルボン酸のポリエチレンイミンポリマー及び酸化グラフェンをブレンド法でブレンドし、紡糸液を製造し、蜘蛛紡糸原理を模した同軸紡糸法を用いて、後架橋技術により、多吸着部位、即ち重金属イオンに対してキレート性能を有するN、O、S部位を含む機能性バイオニック繊維材料を製造し、紡糸液中の各成分の割合を調整することで、各吸着部位の材料中の含有量をバランスよく調整するステップS5とを含む、ことを特徴とする機能性バイオニック繊維材料の製造方法。
【請求項3】
ステップS1の前記カルボキシル化ナノセルロースの製造は、具体的には、
バイオマス繊維を水中に分散させ、次にモル百分率が1~5mmol/g絶対乾燥繊維のNaBrとモル百分率が0.1~0.5mmol/g絶対乾燥繊維のTEMPOをバイオマス繊維混合液に順次加え、さらに質量百分率が10~30%のNaOH溶液を加えてpH=10に調整し、有効塩素のモル百分率が6~30mmol/g絶対乾燥繊維のNaClO溶液を混合液に加え、均一になるまで十分に混合し、4~8h反応させ、反応中にNaOH溶液を絶えずに補充してpH=10に維持し、pHが変化しなくなると、エタノールを加えて反応を停止し、カルボキシル化ナノセルロースを得るように行われる、ことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
ステップS2の前記N、S部位を含むエチレンジチオ二酢酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマーの製造は、具体的には、
エチレンジチオ二酢酸を水中に分散させ、エチレンジチオ二酢酸とポリエチレンイミンのモル比が10~20:1となるように分子量7000~70000のポリエチレンイミンを加え、高温で4~8h反応させ、分画分子量500~2000の透析バッグを用いて24~48h透析して未反応の小分子を除去し、過剰な水分を加熱により除去して反応生成物の濃度を50wt%~90wt%に調整し、前記N、S部位を含むエチレンジチオ二酢酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマーを得るように行われる、ことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
ステップS3の前記O、N部位を含むドーパミンで修飾されたポリエチレンイミンポリマーの製造は、具体的には、
ポリカルボン酸とドーパミンをモル比1~3:1で水中に加え、高温で4~8h反応させ、ポリカルボン酸で修飾されたドーパミンを製造し、その後、ポリエチレンイミンとポリカルボン酸のモル比が1:10~20となるように分子量7000~70000のポリエチレンイミンを反応系に加えて、さらに4~8h反応させ、分画分子量500~2000の透析バッグを用いて24~48h透析して未反応の小分子を除去し、過剰な水分を加熱により除去して反応生成物の濃度を50wt%~90wt%に調整し、前記O、N部位を含むドーパミンで修飾されたポリエチレンイミンポリマーを得るように行われる、ことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項6】
ステップS4の前記N、O部位を含むハイパーブランチポリカルボン酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマーの製造は、具体的には、
トリメチロールプロパンとクエン酸とのモル比を0.1mol:0.3~0.4molとし、p-トルエンスルホン酸の添加質量をトリメチロールプロパンとクエン酸の全質量の0.8%~1.5%として、トリメチロールプロパン、クエン酸、p-トルエンスルホン酸を混合し、135~150℃で撹拌しながら1.5~2.5h反応させ、ハイパーブランチポリカルボン酸を得て、分子量7000~70000のポリエチレンイミンとハイパーブランチポリカルボン酸を、質量比1:1~3の割合で、高温下4~8h反応させ、水分を加熱により蒸発させて反応生成物の濃度を50wt%~90wt%に調整し、前記N、O部位を含むハイパーブランチポリカルボン酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマーを得るように行われる、ことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項7】
前記ステップS5は、具体的には、
ステップS1で製造されたカルボキシル化ナノセルロース、ステップS2で製造されたN、S部位を含むエチレンジチオ二酢酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマー、ステップS3で製造されたO、N部位を含むドーパミンで修飾されたポリエチレンイミンポリマー、ステップS4で製造されたN、O部位を含むハイパーブランチポリカルボン酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマー、及び酸化グラフェンを1:1~10:1~10:1~10:1~10の質量比でブレンドし、蜘蛛紡糸原理を模した同軸紡糸法によって、1~4cm/sの速度で複数の機能基を持つ繊維を連続的に紡糸し、真空度0.01~0.04MPaの真空吸引濾過条件下で、繊維の全質量に対して5wt%~15wt%のエピクロロヒドリンを噴霧方式により繊維上へ噴霧して10~30min架橋させ、低真空を利用して架橋剤であるエピクロロヒドリンを繊維内部に含浸させ、24~48h凍結乾燥させて、前記機能性バイオニック繊維材料を得るように行われる、ことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の機能性バイオニック繊維材料又は請求項2~7に記載の製造方法により製造された機能性バイオニック繊維材料の、低濃度重金属イオン吸着における使用であって、
材料のN、O、S吸着部位の密度がすべて5mmol/gよりも高く、複数種の重金属イオンを同時に迅速に除去可能である使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスマート繊維の機能性材料に関し、具体的には、機能性バイオニック繊維材料、その製造方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
水体中の重金属イオン汚染は人類の健康や生態系に深刻な危害をもたらしている。さらに、これらの重金属イオンは水中に同時に存在することが多く、したがって、汚水を排出する前の適切な処理が重要である。工業汚水中の金属含有量を低減する主な技術は膜ろ過、化学沈殿、吸着、イオン交換、電解方法、逆浸透及び溶媒抽出である。これらの技術のうち、吸着法は水溶液中の重金属イオンを除去する最も効果的な方法の1つと考えられており、吸着剤の性能が重要な役割を果たしている。セルロース系吸着剤はその環境保護、低コスト、改質し易さ、高効率などの利点から広く注目されている。アミノ基(-NH2)、カルボキシル基(-COOH)、水酸基(-OH)や硫黄含有基などの官能基は重金属イオンに必要な吸着部位を提供できることが多く報告されている。水体には多くのアニオンやカチオン型の重金属イオンが同時に存在しているが、現在の多吸着部位型セルロース系吸着材の製造過程は一般的に複雑であり、反応効率が低く、多吸着部位型セルロース系吸着材が有する機能性基の密度が一般的に低く、各機能性基の密度のバランスが悪いため、複数のアニオンやカチオン型の重金属イオンを低濃度で同時に迅速に除去することが困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする技術的課題は、上記技術に存在する欠点を解決し、複数の低濃度のアニオン型やカチオン型の重金属イオンを同時に迅速に除去することができ、良好な選択性及び高除去率を有する機能性バイオニック繊維材料、及びその製造方法を提供することである。
【0004】
本発明の目的は、機能性バイオニック繊維材料を提供することであり、
本発明の別の目的は、上記機能性バイオニック繊維材料の製造方法を提供することであり、
本発明のさらなる目的は、上記機能性バイオニック繊維材料の使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記目的は以下の技術案により実現される。
【0006】
機能性バイオニック繊維材料であって、多吸着部位、即ち重金属イオンに対して吸着性能を示すN、O、S部位を豊富に含み、3種類の多機能基でそれぞれ修飾されたポリエチレンイミンポリマーをカルボキシル化ナノセルロース、酸化グラフェンとブレンドした後、蜘蛛紡糸原理を模した同軸紡糸法を用いて、後架橋技術により得るものであり、
ナノセルロースを骨格、酸化グラフェンを外層、3種類の多機能基でそれぞれ修飾されたポリエチレンイミンポリマーを内層とした多層構造であり、各層間が化学結合を介して接続され、
前記3種類の多機能基でそれぞれ修飾されたポリエチレンイミンポリマーはそれぞれ、N、S部位を含むエチレンジチオ二酢酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマー、N、O部位を含むハイパーブランチポリカルボン酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマー及びO、N部位を含むドーパミンで修飾されたポリエチレンイミンポリマーであり、O、N部位を含むドーパミンで修飾されたポリエチレンイミンポリマーはポリカルボン酸とドーパミンでポリエチレンイミンを修飾したものであり、
前記カルボキシル化ナノセルロースは、TEMPO/NaBr/NaClO酸化系でバイオマス繊維を酸化したものである。
【0007】
上記機能性バイオニック繊維材料の製造方法は、
カルボキシル化ナノセルロースを製造し、すなわち、TEMPO/NaBr/NaClO酸化系を用いてバイオマス繊維を酸化し、反応条件を制御することにより酸化の程度を調整し、カルボキシル化ナノセルロースを製造するステップS1と、
N、S部位を含むエチレンジチオ二酢酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマーを製造し、すなわち、エチレンジチオ二酢酸とポリエチレンイミンとを高温でアミド化反応させ、N、S部位を含むエチレンジチオ二酢酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマーを得るステップS2と、
O、N部位を含むドーパミンで修飾されたポリエチレンイミンポリマーを製造し、すなわち、シュウ酸、クエン酸又は1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸であるポリカルボン酸とドーパミンを高温でアミド化反応させ、反応が完了したときに、ポリエチレンイミンをさらに加えてアミド化反応させ続け、O、N部位を含むドーパミンで修飾されたポリエチレンイミンポリマーを得るステップS3と、
N、O部位を含むハイパーブランチポリカルボン酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマーを製造し、すなわち、ハイパーブランチポリカルボン酸とポリエチレンイミンを高温でアミド化反応させ、前記N、O部位を含むハイパーブランチポリカルボン酸のポリエチレンイミンポリマーを得るステップS4と、
ステップS1で製造されたカルボキシル化ナノセルロース、ステップS2で製造されたN、S部位を含むエチレンジチオ二酢酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマー、ステップS3で製造されたO、N部位を含むドーパミンで修飾されたポリエチレンイミンポリマー、ステップS4で製造されたN、O部位を含むハイパーブランチポリカルボン酸のポリエチレンイミンポリマー及び酸化グラフェンをブレンド法でブレンドし、紡糸液を製造し、蜘蛛紡糸原理を模した同軸紡糸法を用いて、後架橋技術により、多吸着部位、即ち重金属イオンに対してキレート性能を有するN、O、S部位を含む機能性バイオニック繊維材料を製造し、紡糸液中の各成分の割合を調整することで、各吸着部位の材料中の含有量をバランスよく調整するステップS5とを含む。
【0008】
さらに、ステップS1の前記カルボキシル化ナノセルロースの製造は、具体的には、
バイオマス繊維を水中に分散させ、次にモル百分率が1~5mmol/g絶対乾燥繊維のNaBrとモル百分率が0.1~0.5mmol/g絶対乾燥繊維のTEMPOをバイオマス繊維混合液に順次加え、さらに質量百分率が10~30%のNaOH溶液を加えてpH=10に調整し、有効塩素のモル百分率が6~30mmol/g絶対乾燥繊維のNaClO溶液を混合液に加え、均一になるまで十分に混合し、4~8h反応させ、反応中にNaOH溶液を絶えずに補充してpH=10に維持し、pHが変化しなくなると、エタノールを加えて反応を停止し、カルボキシル化ナノセルロースを得るように行われる。
【0009】
さらに、ステップS2の前記N、S部位を含むエチレンジチオ二酢酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマーの製造は、具体的には、
エチレンジチオ二酢酸を水中に分散させ、エチレンジチオ二酢酸とポリエチレンイミンのモル比が10~20:1となるように分子量7000~70000のポリエチレンイミンを加え、高温で4~8h反応させ、分画分子量500~2000の透析バッグを用いて24~48h透析して未反応の小分子を除去し、過剰な水分を加熱により除去して反応生成物の濃度を50wt%~90wt%に調整し、前記N、S部位を含むエチレンジチオ二酢酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマーを得るように行われる。
【0010】
さらに、ステップS3の前記O、N部位を含むドーパミンで修飾されたポリエチレンイミンポリマーの製造は、具体的には、
ポリカルボン酸とドーパミンをモル比1~3:1で水中に加え、高温で4~8h反応させ、ポリカルボン酸で修飾されたドーパミンを製造し、その後、ポリエチレンイミンとポリカルボン酸のモル比が1:10~20となるように分子量7000~70000のポリエチレンイミンを反応系に加えて、さらに4~8h反応させ、分画分子量500~2000の透析バッグを用いて24~48h透析して未反応の小分子を除去し、過剰な水分を加熱により除去して反応生成物の濃度を50wt%~90wt%に調整し、前記O、N部位を含むドーパミンで修飾されたポリエチレンイミンポリマーを得るように行われる。
【0011】
さらに、ステップS4の前記N、O部位を含むハイパーブランチポリカルボン酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマーの製造は、具体的には、
トリメチロールプロパンとクエン酸とのモル比を0.1mol:0.3~0.4molとし、p-トルエンスルホン酸の添加質量をトリメチロールプロパンとクエン酸の全質量の0.8%~1.5%として、トリメチロールプロパン、クエン酸、p-トルエンスルホン酸を混合し、135~150℃で撹拌しながら1.5~2.5h反応させ、ハイパーブランチポリカルボン酸を得て、分子量7000~70000のポリエチレンイミンとハイパーブランチポリカルボン酸を、質量比1:1~3の割合で、高温下4~8h反応させ、水分を加熱により蒸発させて反応生成物の濃度を50wt%~90wt%に調整し、前記N、O部位を含むハイパーブランチポリカルボン酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマーを得るように行われる。
【0012】
さらに、前記ステップS5は、具体的には、
ステップS1で製造されたカルボキシル化ナノセルロース、ステップS2で製造されたN、S部位を含むエチレンジチオ二酢酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマー、ステップS3で製造されたO、N部位を含むドーパミンで修飾されたポリエチレンイミンポリマー、ステップS4で製造されたN、O部位を含むハイパーブランチポリカルボン酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマー、及び酸化グラフェンを1:1~10:1~10:1~10:1~10の質量比でブレンドし、蜘蛛紡糸原理を模した同軸紡糸法によって、1~4cm/sの速度で複数の機能基を持つ繊維を連続的に紡糸し、真空度0.01~0.04MPaの真空吸引濾過条件下で、繊維の全質量に対して5wt%~15wt%のエピクロロヒドリンを噴霧方式により繊維上へ噴霧して10~30min架橋させ、低真空を利用して架橋剤であるエピクロロヒドリンを繊維内部に含浸させ、24~48h凍結乾燥させて、前記機能性バイオニック繊維材料を得るように行われる。
【0013】
さらに、本発明の機能性バイオニック繊維材料は、低濃度重金属イオン吸着に適用でき、材料のN、O、S吸着部位の密度がすべて5mmol/gよりも高く、複数種の重金属イオンを同時に迅速に除去可能である。
【発明の効果】
【0014】
従来技術に比べて、本発明は以下の有益な効果を有する。
(1)本発明は、蜘蛛紡糸原理を模した同軸紡糸法を用いて、多吸着部位を豊富に含む多層構造のバイオニック繊維吸着材を製造し、この方法は、各吸着部位の密度をバランスよくすることができ、材料のN、O、S吸着部位の密度がすべて5mmol/gよりも高く、吸着部位のバランスと高密度は複数の重金属イオンを同時に迅速かつ完全に除去することに有利であるので、本発明で製造された材料は、多種類の低濃度の重金属イオンを同時に迅速かつ完全に除去することができる。この方法は、従来の繊維後処理技術と比較して、繊維の後処理技術において、同期又は段階的なグラフト法を用いて繊維機能材料を製造すると、各吸着部位の密度のバランスが取れず、高密度の機能基が修飾されると繊維が脆化し、材料内の重金属イオンの拡散物質移動抵抗が増大するという問題を解決する。
(2)本発明の材料では、蜘蛛紡糸原理を模した同軸紡糸法によりバイオニック繊維吸着材を製造することにより、製造過程において、使用する機能性試薬を吸着材に効率的に変換し、試薬の変換率が99%より高く、環境にやさしい吸着材の製造手段である。従来の繊維の後処理技術において試薬変換率が低いという問題を解決する。
(3)本発明では、同軸紡糸法を用いてバイオニック繊維を製造し、後架橋技術によりバイオニック繊維吸着材を製造し、このように、真空吸引ろ過条件(真空度0.01~0.04MPa)を巧みに利用し、架橋剤であるエピクロルヒドリンを噴霧方式によりバイオニック繊維へ噴霧し、低真空を利用して架橋剤を繊維内部に含浸させ、繊維のふわふわした構造を柔軟にコントロールし、さらに凍結乾燥方法によりふわふわした構造、多層、多吸着部位を有するバイオニック繊維吸着材を製造し、それにより、材料内での重金属イオンの拡散移動効率が大幅に向上し、各吸着部位に十分に接触することができるので、本発明で製造されたバイオニック繊維吸着材は、多種類の低濃度の重金属イオン(水中で陰イオン性を示すCr6+と陽イオン性を示すCu2+、Fe3+、Cd2+及びPb2+)を30min以内に同時に完全に除去することができる。
(4)本発明の材料は多吸着部位(N、O、S)を豊富に含み、フェノール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基及び硫黄含有基を含み、かつ分岐構造(ハイパーブランチポリカルボン酸及び分岐ポリエチレンイミン)を有し、重金属イオンが材料の分子内で拡散して物質を移動するのに有利であり、かつ多機能基の協同作用により、Cu2+、Fe3+、Cd2+、Cr6+及びPb2+の高効率吸着作用を実現する。そのため、本発明の材料は低濃度のCu2+、Fe3+、Cd2+、Cr6+及びPb2+を国家飲用水基準(US EPA)によるそれらの濃度に対する要求まで10min以内に迅速に除去することができる。
(5)本発明でバイオニック繊維吸着材は、ふわふわした多層構造を有し、各層間の接続方式が化学結合による接続であり、材料が吸着過程中にふわふわ構造を良好に維持するのに有利であり、しかも良好な再生性能があり、20回再生した後にも、材料は低濃度のCu2+、Fe3+、Cd2+、Cr6+及びPb2+を国家飲用水基準(US EPA)によるそれらの濃度に対する要求まで10min以内に迅速に除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、実施例を参照しながら本発明をさらに説明するが、本発明を限定するものとして理解されるべきではない。本発明の精神及び本質から逸脱することなく、本発明の方法、ステップ又は条件に対する単純な修正又は置換は、本発明の範囲に属する。特別な説明がなければ、実施例で用いられる技術的手段は当業者が熟知している通常の手段である。
【0016】
特に断らない限り、本発明で使用される試薬、方法及び装置は、当技術分野における従来の試薬、方法及び装置である。特に断らない限り、以下の実施例で使用される試薬及び材料は市販品である。
【0017】
実施例1
ステップS1
カルボキシル化ナノセルロースの製造:絶対乾燥バガスパルプ繊維3gを500mL三口フラスコに秤量し、蒸留水300mLを加えて、モル百分率が5mmol/g絶対乾燥バガスパルプ繊維のNaBrとモル百分率が0.5mmol/g絶対乾燥バガスパルプ繊維のTEMPOをバガスパルプ繊維混合液に順次加え、さらに質量百分率が10%のNaOH溶液を滴下してpH=10に調整し、有効塩素モル百分率が6mmol/g絶対乾燥バガスパルプ繊維のNaClO溶液を混合液に加え、均一になるまで十分に混合し、4h反応させ、反応中にNaOH溶液を絶えずに補充してpH=10に維持し、pHが変化しなくなると、エタノール10mLを加えて反応を停止した。反応生成物を取り出して、溶液を中性まで遠心分離して洗浄し、塩素イオンが検出できなくなると、製品を4℃で保存して使用に備えた。
ステップS2
N、S部位を含むエチレンチオ二酢酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマーの製造:エチレンチオ二酢酸1gを蒸留水50mLに分散させ、エチレンチオ二酢酸とポリエチレンイミンとのモル比が20:1となるように分子量7000のポリエチレンイミンを加え、105℃に加熱して4hアミド化反応させ、反応を室温に冷却して、分画分子量500の透析バッグを用いて24h透析して、未反応の小分子を除去し、過剰な水分を加熱により除去して反応生成物の濃度を90wt%に調整し、4℃で低温保存した。
ステップS3
O、N部位を含むドーパミンで修飾されたポリエチレンイミンポリマーの製造:クエン酸とドーパミンとを1:2のモル比で脱イオン水50mLに溶解し、105℃で4h反応させ、ポリカルボン酸で修飾されたドーパミンを製造し、その後、ポリエチレンイミンとクエン酸とのモル比が1:10となるように分子量7000のポリエチレンイミンを反応系に加え、さらに4h反応させ、生成物を分画分子量500の透析バッグに投入して24h透析し、未反応の小分子を除去し、過剰な水分を加熱により除去して反応生成物の濃度を90wt%に調整し、4℃で低温保存した。
ステップS4
N、O部位を含むハイパーブランチポリカルボン酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマーの製造:まず、トリメチロールプロパン(13.4g)0.1mol、クエン酸(57.6g)0.3mol及びp-トルエンスルホン酸(0.71g)を250mL三口フラスコに投入し、三口フラスコを油浴鍋に入れて、機械撹拌装置に接続して、中間口に撹拌翼を取り付けて回転数を250r/minとし、左側口をゴム栓で塞いで、右側出口に凝結エルボを接続し、ぼろきれでボトルの上部を覆い、反応中に水蒸気が容易にエルボから流出するようにし、油浴を140℃に設定して2h反応させ、反応が終了したときに、水蒸気の少ない側口から生成物としてのハイパーブランチポリカルボン酸を小ビーカーに注入して、ラップフィルムでシールし、室温で冷却して、最後に乾燥器に入れて保存し、分子量7000のポリエチレンイミンとハイパーブランチポリカルボン酸とを質量比1:1の割合で105℃にて4h反応させ、過剰な水分を加熱により除去して反応生成物の濃度を90wt%に調整し、4℃で低温保存した。
ステップS5
ステップS1で製造されたカルボキシル化ナノセルロース、ステップS2で製造されたN、S部位を含むエチレンジチオ二酢酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマー、ステップS3で製造されたO、N部位を含むドーパミンで修飾されたポリエチレンイミンポリマー、ステップS4で製造されたN、O部位を含むハイパーブランチポリカルボン酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマー、及び酸化グラフェンを、1:5:5:5:5の質量比でブレンドし、蜘蛛紡糸原理を模した同軸紡糸法によって1cm/sの速度で複数の機能基を持つ繊維を連続的に紡糸し、真空度0.01MPaの真空吸引濾過条件下で、繊維の全質量に対して5wt%のエピクロロヒドリンを噴霧方式により繊維上へ噴霧して30min架橋させ、低真空を利用して架橋剤であるエピクロロヒドリンを繊維内部に含浸させ、24h凍結乾燥させ、前記機能性バイオニック繊維材料を得た。
【0018】
実施例2
ステップS1
カルボキシル化ナノセルロースの製造:絶対乾燥バガスパルプ繊維3gを500mL三口フラスコに秤量し、蒸留水300mLを加えて、モル百分率が3mmol/g絶対乾燥バガスパルプ繊維のNaBrとモル百分率が0.3mmol/g絶対乾燥バガスパルプ繊維のTEMPOをバガスパルプ繊維混合液に順次加え、さらに質量百分率が20%のNaOH溶液を滴下してpH=10に調整し、有効塩素モル百分率が18mmol/g絶対乾燥バガスパルプ繊維のNaClO溶液を混合液に加え、均一になるまで十分に混合し、6h反応させ、反応中にNaOH溶液を絶えずに補充してpH=10に維持し、pHが変化しなくなると、エタノール10mLを加えて反応を停止した。反応生成物を取り出して、溶液を中性まで遠心分離して洗浄し、塩素イオンが検出できなくなると、製品を4℃で保存して使用に備えた。
ステップS2
N、S部位を含むエチレンチオ二酢酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマーの製造:エチレンチオ二酢酸1gを蒸留水100mLに分散させ、エチレンチオ二酢酸とポリエチレンイミンとのモル比が10:1となるように分子量18000のポリエチレンイミンを加え、105℃に加熱して6hアミド化反応させ、反応を室温に冷却して、分画分子量1000の透析バッグを用いて36h透析し、未反応の小分子を除去し、過剰な水分を加熱により除去して反応生成物の濃度を70wt%に調整し、4℃で低温保存した。
ステップS3
O、N部位を含むドーパミンで修飾されたポリエチレンイミンポリマーの製造:シュウ酸とドーパミンとを1:1のモル比で脱イオン水50mLに溶解し、105℃で6h反応させ、ポリカルボン酸で修飾されたドーパミンを製造し、その後、ポリエチレンイミンとシュウ酸とのモル比が1:15となるように分子量18000のポリエチレンイミンを反応系に加え、さらに6h反応させ、分画分子量1000の透析バッグを用いて36h透析し、未反応の小分子を除去し、過剰な水分を加熱により除去して反応生成物の濃度を70wt%に調整し、4℃で低温保存した。
ステップS4
N、O部位を含むハイパーブランチポリカルボン酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマーの製造:まず、トリメチロールプロパン(13.4g)0.1mol、クエン酸(67.2g)0.35mol及びp-トルエンスルホン酸(0.64g)を250mL三口フラスコに投入し、三口フラスコを油浴鍋に入れて、機械撹拌装置に接続して、中間口に撹拌翼を取り付けて回転数を250r/minとし、左側口をゴム栓で塞いで、右側出口に凝結エルボを接続し、ぼろきれでボトルの上部を覆い、反応中に水蒸気が容易にエルボから流出するようにし、油浴を135℃に設定して1.5h反応させ、反応が終了したときに、水蒸気の少ない側口から生成物としてのハイパーブランチポリカルボン酸を小ビーカーに注入して、ラップフィルムでシールし、室温で冷却して、最後に乾燥器に入れて保存し、分子量18000のポリエチレンイミンとハイパーブランチポリカルボン酸とを質量比1:2の割合で105℃にて6h反応させ、過剰な水分を加熱により除去して反応生成物の濃度を70wt%に調整し、4℃で低温保存した。
ステップS5
ステップS1で製造されたカルボキシル化ナノセルロース、ステップS2で製造されたN、S部位を含むエチレンジチオ二酢酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマー、ステップS3で製造されたO、N部位を含むドーパミンで修飾されたポリエチレンイミンポリマー、ステップS4で製造されたN、O部位を含むハイパーブランチポリカルボン酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマー、及び酸化グラフェンを、1:1:1:1:1の質量比でブレンドし、蜘蛛紡糸原理を模した同軸紡糸法によって2cm/sの速度で複数の機能基を持つ繊維を連続的に紡糸し、真空度0.02MPaの真空吸引濾過条件下で、繊維の全質量に対して10wt%のエピクロロヒドリンを噴霧方式により繊維へ噴霧して20min架橋させ、低真空を利用して架橋剤であるエピクロロヒドリンを繊維内部に含浸させ、36h凍結乾燥させ、前記機能性バイオニック繊維材料を得た。
【0019】
実施例3
ステップS1
カルボキシル化ナノセルロースの製造:絶対乾燥竹パルプ繊維3gを500mL三口フラスコに秤量し、蒸留水300mLを加えて、モル百分率が1mmol/g絶対乾燥竹パルプ繊維のNaBrとモル百分率が0.1mmol/g絶対乾燥竹パルプ繊維のTEMPOを竹パルプ繊維混合液に順次加え、さらに質量百分率が30%のNaOH溶液を滴下してpH=10に調整し、有効塩素モル百分率が30mmol/g絶対乾燥竹パルプ繊維のNaClO溶液を混合液に加え、均一になるまで十分に混合し、8h反応させ、反応中にNaOH溶液を絶えずに補充してpH=10に維持し、pHが変化しなくなると、エタノール10mLを加えて反応を停止した。反応生成物を取り出して、溶液を中性まで遠心分離して洗浄し、塩素イオンが検出できなくなると、製品を4℃で保存して使用に備えた。
ステップS2
N、S部位を含むエチレンチオ二酢酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマーの製造:エチレンチオ二酢酸1gを蒸留水100mLに分散させ、エチレンチオ二酢酸とポリエチレンイミンとのモル比が15:1となるように分子量70000のポリエチレンイミンを加え、105℃に加熱して8hアミド化反応させ、反応を室温に冷却して、分画分子量2000の透析バッグを用いて48h透析し、未反応の小分子を除去し、過剰な水分を加熱により除去して反応生成物の濃度値を50wt%に調整し、4℃で低温保存した。
ステップS3
O、N部位を含むドーパミンで修飾されたポリエチレンイミンポリマーの製造:1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸とドーパミンとを1:3のモル比で脱イオン水50mLに溶解し、105℃で8h反応させ、ポリカルボン酸で修飾されたドーパミンを製造し、その後、ポリエチレンイミンと1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸とのモル比が1:20となるように分子量70000のポリエチレンイミンを反応系に加え、さらに8h反応させ、生成物を分画分子量2000の透析バッグに投入して48h透析し、未反応の小分子を除去し、過剰な水分を加熱により除去して反応生成物の濃度を50wt%に調整し、4℃で低温保存した。
ステップS4
N、O部位を含むハイパーブランチポリカルボン酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマーの製造:まず、トリメチロールプロパン(13.4g)0.1mol、クエン酸(76.8g)0.4mol及びp-トルエンスルホン酸(1.35g)を250mL三口フラスコに投入し、三口フラスコを油浴鍋に入れて、機械撹拌装置に接続して、中間口に撹拌翼を取り付けて回転数を250r/minとし、左側口をゴム栓で塞いで、右側出口に凝結エルボを接続し、ぼろきれでボトルの上部を覆い、反応中に水蒸気が容易にエルボから流出するようにし、油浴を150℃に設定して2.5h反応させ、反応が終了したときに、水蒸気の少ない側口から生成物としてのハイパーブランチポリカルボン酸を小ビーカーに注入して、ラップフィルムでシールし、室温で冷却して、最後に乾燥器に入れて保存し、分子量70000のポリエチレンイミンとハイパーブランチポリカルボン酸とを質量比1:3の割合で105℃にて8h反応させ、過剰な水分を加熱により除去して反応生成物の濃度を50wt%に調整し、4℃で低温保存した。
ステップS5
ステップS1で製造されたカルボキシル化ナノセルロース、ステップS2で製造されたN、S部位を含むエチレンジチオ二酢酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマー、ステップS3で製造されたO、N部位を含むドーパミンで修飾されたポリエチレンイミンポリマー、ステップS4で製造されたN、O部位を含むハイパーブランチポリカルボン酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマー、及び酸化グラフェンを、1:10:10:10:10の質量比でブレンドし、蜘蛛紡糸原理を模した同軸紡糸法によって4cm/sの速度で複数の機能基を持つ繊維を連続的に紡糸し、真空度0.04MPaの真空吸引濾過条件下で、繊維の全質量に対して15wt%のエピクロロヒドリンを噴霧方式により繊維上へ噴霧して10min架橋させ、低真空を利用して架橋剤であるエピクロロヒドリンを繊維内部に含浸させ、48h凍結乾燥させ、前記機能性バイオニック繊維材料を得た。
【0020】
実施例1、2、3で製造された機能性バイオニック繊維材料について水体中の重金属イオン吸着性能を試験し、試験結果を下記表に示し、試験結果から明らかなように、本発明の機能性バイオニック繊維材料は、すべて低濃度(3g/mL)のアニオンやカチオン型の重金属イオンを同時に迅速に除去することができ、10min内には、溶液中の重金属イオンを飲用水基準(US EPA)まで除去し、30min内には、溶液中の重金属イオンを100%除去することができる。
【0021】
【手続補正書】
【提出日】2021-09-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多吸着部位、即ち重金属イオンに対して吸着性能を示すN、O、S部位を含み、3種類の多機能基でそれぞれ修飾されたポリエチレンイミンポリマーをカルボキシル化ナノセルロース、酸化グラフェンとブレンドした後、後架橋技術により得るものであり、
ナノセルロースを内層骨格、酸化グラフェンを外層、3種類の多機能基でそれぞれ修飾されたポリエチレンイミンポリマーを内層とした多層構造であり、各層間が化学結合を介して接続され、
前記3種類の多機能基でそれぞれ修飾されたポリエチレンイミンポリマーはそれぞれ、N、S部位を含むエチレンジチオ二酢酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマー、N、O部位を含むハイパーブランチポリカルボン酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマー及びO、N部位を含むドーパミンで修飾されたポリエチレンイミンポリマーであり、O、N部位を含むドーパミンで修飾されたポリエチレンイミンポリマーはポリカルボン酸とドーパミンでポリエチレンイミンを修飾したものであり、
前記カルボキシル化ナノセルロースは、TEMPO/NaBr/NaClO酸化系でバイオマス繊維を酸化したものである、ことを特徴とする機能性バイオニック繊維材料。
【請求項2】
カルボキシル化ナノセルロースを製造し、すなわち、TEMPO/NaBr/NaClO酸化系を用いてバイオマス繊維を酸化し、反応条件を制御することにより酸化の程度を調整し、カルボキシル化ナノセルロースを製造するステップS1と、
N、S部位を含むエチレンジチオ二酢酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマーを製造し、すなわち、エチレンジチオ二酢酸とポリエチレンイミンとをアミド化反応させ、N、S部位を含むエチレンジチオ二酢酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマーを得るステップS2と、
O、N部位を含むドーパミンで修飾されたポリエチレンイミンポリマーを製造し、すなわち、シュウ酸、クエン酸又は1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸であるポリカルボン酸とドーパミンをアミド化反応させ、反応が完了したときに、ポリエチレンイミンをさらに加えてアミド化反応させ続け、O、N部位を含むドーパミンで修飾されたポリエチレンイミンポリマーを得るステップS3と、
N、O部位を含むハイパーブランチポリカルボン酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマーを製造し、すなわち、ハイパーブランチポリカルボン酸とポリエチレンイミンをアミド化反応させ、前記N、O部位を含むハイパーブランチポリカルボン酸のポリエチレンイミンポリマーを得るステップS4と、
ステップS1で製造されたカルボキシル化ナノセルロース、ステップS2で製造されたN、S部位を含むエチレンジチオ二酢酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマー、ステップS3で製造されたO、N部位を含むドーパミンで修飾されたポリエチレンイミンポリマー、ステップS4で製造されたN、O部位を含むハイパーブランチポリカルボン酸のポリエチレンイミンポリマー及び酸化グラフェンをブレンド法でブレンドし、紡糸液を製造し、後架橋技術により、多吸着部位、即ち重金属イオンに対してキレート性能を有するN、O、S部位を含む機能性バイオニック繊維材料を製造し、紡糸液中の各成分の割合を調整することで、各吸着部位の材料中の含有量をバランスよく調整するステップS5とを含む、ことを特徴とする機能性バイオニック繊維材料の製造方法。
【請求項3】
ステップS1の前記カルボキシル化ナノセルロースの製造は、具体的には、
バイオマス繊維を水中に分散させ、次にモル百分率が1~5mmol/g絶対乾燥繊維のNaBrとモル百分率が0.1~0.5mmol/g絶対乾燥繊維のTEMPOをバイオマス繊維混合液に順次加え、さらに質量百分率が10~30%のNaOH溶液を加えてpH=10に調整し、有効塩素のモル百分率が6~30mmol/g絶対乾燥繊維のNaClO溶液を混合液に加え、均一になるまで十分に混合し、4~8h反応させ、反応中にNaOH溶液を絶えずに補充してpH=10に維持し、pHが変化しなくなると、エタノールを加えて反応を停止し、カルボキシル化ナノセルロースを得るように行われる、ことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
ステップS2の前記N、S部位を含むエチレンジチオ二酢酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマーの製造は、具体的には、
エチレンジチオ二酢酸を水中に分散させ、エチレンジチオ二酢酸とポリエチレンイミンのモル比が10~20:1となるように分子量7000~70000のポリエチレンイミンを加え、105℃で4~8h反応させ、分画分子量500~2000の透析バッグを用いて24~48h透析して未反応の小分子を除去し、過剰な水分を加熱により除去して反応生成物の濃度を50wt%~90wt%に調整し、前記N、S部位を含むエチレンジチオ二酢酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマーを得るように行われる、ことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
ステップS3の前記O、N部位を含むドーパミンで修飾されたポリエチレンイミンポリマーの製造は、具体的には、
ポリカルボン酸とドーパミンをモル比1~3:1で水中に加え、105℃で4~8h反応させ、ポリカルボン酸で修飾されたドーパミンを製造し、その後、ポリエチレンイミンとポリカルボン酸のモル比が1:10~20となるように分子量7000~70000のポリエチレンイミンを反応系に加えて、さらに4~8h反応させ、分画分子量500~2000の透析バッグを用いて24~48h透析して未反応の小分子を除去し、過剰な水分を加熱により除去して反応生成物の濃度を50wt%~90wt%に調整し、前記O、N部位を含むドーパミンで修飾されたポリエチレンイミンポリマーを得るように行われる、ことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項6】
ステップS4の前記N、O部位を含むハイパーブランチポリカルボン酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマーの製造は、具体的には、
トリメチロールプロパンとクエン酸とのモル比を0.1mol:0.3~0.4molとし、p-トルエンスルホン酸の添加質量をトリメチロールプロパンとクエン酸の全質量の0.8%~1.5%として、トリメチロールプロパン、クエン酸、p-トルエンスルホン酸を混合し、135~150℃で撹拌しながら1.5~2.5h反応させ、ハイパーブランチポリカルボン酸を得て、分子量7000~70000のポリエチレンイミンとハイパーブランチポリカルボン酸を、質量比1:1~3の割合で、105℃で4~8h反応させ、水分を加熱により蒸発させて反応生成物の濃度を50wt%~90wt%に調整し、前記N、O部位を含むハイパーブランチポリカルボン酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマーを得るように行われる、ことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項7】
前記ステップS5は、具体的には、
ステップS1で製造されたカルボキシル化ナノセルロース、ステップS2で製造されたN、S部位を含むエチレンジチオ二酢酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマー、ステップS3で製造されたO、N部位を含むドーパミンで修飾されたポリエチレンイミンポリマー、ステップS4で製造されたN、O部位を含むハイパーブランチポリカルボン酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマー、及び酸化グラフェンを1:1~10:1~10:1~10:1~10の質量比でブレンドし、1~4cm/sの速度で複数の機能基を持つ繊維を連続的に紡糸し、真空度0.01~0.04MPaの真空吸引濾過条件下で、繊維の全質量に対して5wt%~15wt%のエピクロロヒドリンを噴霧方式により繊維上へ噴霧して10~30min架橋させ、低真空を利用して架橋剤であるエピクロロヒドリンを繊維内部に含浸させ、24~48h凍結乾燥させて、前記機能性バイオニック繊維材料を得るように行われる、ことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
機能性バイオニック繊維材料であって、多吸着部位、即ち重金属イオンに対して吸着性能を示すN、O、S部位を含み、3種類の多機能基でそれぞれ修飾されたポリエチレンイミンポリマーをカルボキシル化ナノセルロース、酸化グラフェンとブレンドした後、後架橋技術により得るものであり、
ナノセルロースを骨格、酸化グラフェンを内層外層、3種類の多機能基でそれぞれ修飾されたポリエチレンイミンポリマーを内層とした多層構造であり、各層間が化学結合を介して接続され、
前記3種類の多機能基でそれぞれ修飾されたポリエチレンイミンポリマーはそれぞれ、N、S部位を含むエチレンジチオ二酢酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマー、N、O部位を含むハイパーブランチポリカルボン酸で修飾されたポリエチレンイミンポリマー及びO、N部位を含むドーパミンで修飾されたポリエチレンイミンポリマーであり、O、N部位を含むドーパミンで修飾されたポリエチレンイミンポリマーはポリカルボン酸とドーパミンでポリエチレンイミンを修飾したものであり、
前記カルボキシル化ナノセルロースは、TEMPO/NaBr/NaClO酸化系でバイオマス繊維を酸化したものである。