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特開2022-119164化合物、化合物を含有する液晶組成物、及び、液晶組成物を使用した液晶表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119164
(43)【公開日】2022-08-16
(54)【発明の名称】化合物、化合物を含有する液晶組成物、及び、液晶組成物を使用した液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   C07C 43/225 20060101AFI20220808BHJP
   C09K 19/30 20060101ALI20220808BHJP
   C09K 19/12 20060101ALI20220808BHJP
   C09K 19/20 20060101ALI20220808BHJP
   C09K 19/14 20060101ALI20220808BHJP
   C09K 19/16 20060101ALI20220808BHJP
   C09K 19/18 20060101ALI20220808BHJP
   C09K 19/38 20060101ALI20220808BHJP
   C09K 19/54 20060101ALI20220808BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20220808BHJP
   G02F 1/139 20060101ALI20220808BHJP
   G02F 1/1337 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
C07C43/225 C CSP
C09K19/30
C09K19/12
C09K19/20
C09K19/14
C09K19/16
C09K19/18
C09K19/38
C09K19/54 Z
G02F1/13 500
G02F1/139
G02F1/1337
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124114
(22)【出願日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2021015962
(32)【優先日】2021-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】521051842
【氏名又は名称】株式会社JACTAコラボレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002435
【氏名又は名称】特許業務法人井上国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077919
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100172638
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 隆治
(74)【代理人】
【識別番号】100153899
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100159363
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 淳子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼津 晴義
【テーマコード(参考)】
2H088
2H290
4H006
4H027
【Fターム(参考)】
2H088GA02
2H088JA04
2H088JA10
2H088JA11
2H088KA06
2H088KA08
2H088KA20
2H088KA27
2H088MA10
2H290AA33
2H290AA73
2H290BF54
2H290DA01
2H290DA03
4H006AA01
4H006AB91
4H006GP03
4H006GP22
4H027BA01
4H027BA12
4H027BB11
4H027BB13
4H027BD02
4H027BD03
4H027BD07
4H027BD11
4H027CG05
4H027CM05
4H027CN05
4H027CQ05
4H027CR05
4H027CT01
4H027CT05
4H027CW01
4H027CW02
(57)【要約】
【課題】従来の液晶化合物よりも強い負の誘電率異方性と低い回転粘性を有する化合物、その化合物を用いた液晶組成物および液晶表示素子の提供。
【解決手段】この化合物は、1分子中に2つ以上の炭素数をもつメチレンスペーサーによって区切られた2つの部位から成り、各々の部位に2つ以上のフルオロ基があり、各々の部位の双極子モーメントのベクトル和が分子軸に対して垂直方向に向いている、-4より強い負の誘電率異方性を有する化合物であって、一般式(1)で表され、前述の2つの部位は、連結基Xが含むメチレンスペーサーの一端と結合する原子からRを末端とする一連の部位と、連結基Xが含むメチレンスペーサーの他端と結合する原子からRを末端とする一連の部位とから成り、メチレンスペーサーを含む連結基Xは、-(CH)n-を表し、nは2から10を表す。
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも炭素原子をもつ所定のスペーサーによって区切られた2つの部位から成り、前記スペーサーおよび各々の前記部位の結合部から、各々の前記部位の末端へ向かう方向に沿った分子軸がそれぞれ規定され、所定の負の誘電率異方性を有する化合物であって、
前記スペーサーは、
1分子中に2つ以上の炭素数をもつメチレンスペーサーであり、
各々の前記部位は、
少なくとも2つ以上のフルオロ基を備え、各々の前記部位の双極子モーメントのベクトル和が、各々の前記分子軸に対して垂直方向に向かうよう構成され、
前記負の誘電率異方性は、-4より強い化合物において、
下記の一般式(1)
【化1】

(式中、RおよびRは炭素原子数1から9のアルキル基又はアルコキシ基又は炭素原子数2から9のアルケニル基又はアルケニルオキシ基を表し、aおよびdは0、1、又は2を表し、bおよびcは0または1を表し、環Aおよび環Bは、下記の構造式(a-1)から構造式(a-4)のうちのいずれかを表し、
【化2】
およびZは各々独立して-CHO-、-OCH-、-COO-、-OCO-、-CHCH-、-CFCF-、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、又は単結合を表わす。)で表され、
2つの前記部位は、
前記一般式(1)において、前記連結基Xが含む前記メチレンスペーサーの一端と結合する原子から前記Rを末端とする一連の部位と、前記連結基Xが含む前記メチレンスペーサーの他端と結合する原子から前記Rを末端とする一連の部位と、から成り、
前記一般式(1)における前記メチレンスペーサーを含む前記連結基Xは、
-(CH)n-を表し、nは2から10を表すことを特徴とする化合物。
【請求項2】
前記一般式(1)における前記メチレンスペーサーを含む前記連結基Xは、
-(CH)n-に代えて、-O-(CH)n-O-を表し、nは2を表す請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記一般式(1)における前記メチレンスペーサーを含む前記連結基Xは、
-(CH)n-に代えて、-O-(CH)n-O-を表し、nは3から10を表す請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記一般式(1)における前記メチレンスペーサーを含む前記連結基Xは、
-(CH)n-に代えて、-O-(CH)n-を表し、nは2から10を表す請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記一般式(1)における前記メチレンスペーサーを含む前記連結基Xは、
-(CH)n-に代えて、-(CH)n-O-を表し、nは2から10を表す請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
前記一般式(1)における前記bおよび前記cは、
それぞれ1および0である請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
前記一般式(1)における前記Zおよび前記Zは、
各々独立して-CHO-、-OCH-、-COO-、-OCO-、-C≡C-、又は単結合である請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
前記一般式(1)における前記Zおよび前記Zは、
単結合である請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
前記一般式(1)における前記環Aおよび前記環Bは、
前記構造式(a-1)のシクロヘキサン環、又は、前記構造式(a-2)のベンゼン環である請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
少なくとも、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の化合物を一種又は二種以上含有する液晶組成物。
【請求項11】
下記の構造式(2-1)から構造式(2-6)
【化3】
(式中、Rは炭素原子数1から9のアルキル基又は炭素原子数2から9のアルケニル基を表わし、Rは炭素原子数1から9のアルキル基又はアルコキシ基又は炭素原子数3から9のアルケニル基を表す。)の化合物のうちの一種又は二種以上、および、
下記の構造式(3-1)から構造式(3-6)
【化4】
(式中、Rは炭素原子数1から5のアルキル基又は炭素原子数2から5のアルケニル基を表わし、Rは炭素原子数1から5のアルキル基を表す。)の化合物のうちの一種又は二種以上を、
更に含有する請求項10の液晶組成物。
【請求項12】
前記構造式(2-1)から前記構造式(2-6)における前記Rは、
エチル基、プロピル基、エテニル基、又はプロペニル基であり、
前記構造式(2-1)から前記構造式(2-6)における前記Rは、
炭素原子数1から5のアルキル基、又はアルコキシ基であり、
前記構造式(3-1)から前記構造式(3-6)における前記Rは、
エチル基、プロピル基、エテニル基、又はプロペニル基であり、
前記構造式(3-1)から前記構造式(3-6)における前記Rは、
メチル基、又はエチル基である請求項11の液晶組成物。
【請求項13】
官能基を複数有するUV硬化型モノマーを、
0.2%から0.5%の割合で更に含有する請求項10から請求項12のいずれか一項の液晶組成物。
【請求項14】
前記UV硬化型モノマーは、前記官能基を2つ又は3つ有し、
2つ又は3つの前記官能基は、
メタクリロイル基、アクリロイル基、及び、シンナモイル基のうちの少なくとも1つを含む請求項13の液晶組成物。
【請求項15】
前記UV硬化型モノマーとして下記の構造式(5-1)から構造式(5-5)の化合物のうちの一種又は二種以上を含有する請求項14に記載の液晶組成物。
【化5】
【請求項16】
請求項10から請求項15のいずれか一項に記載の液晶組成物を使用した液晶表示素子。
【請求項17】
MVA(マルチドメイン・バーティカル・アライメント)型、PSA(ポリマー・サステインド・アライメント)型、IPS(イン・プレーン・スイッチング)型、又はFFS(フリンジ・フィールド・スイッチング)型である請求項16の液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負の誘電率異方性をもつ化合物、当該化合物を含有する液晶組成物、及び、当該液晶組成物を使用した液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、自動車用パネル、ワードプロセッサー、電子手帳、プリンター、コンピューター、携帯電話、テレビ、広告表示板等に用いられるようになっている。液晶表示方式としては、その代表的なものにTN(ツイステッド・ネマチック)型、STN(スーパー・ツイステッド・ネマチック)型、TFT(薄膜トランジスタ)を用いたMVA(マルチドメイン・バーティカル・アライメント)型、PSA(ポリマー・サステインド・アライメント)型、IPS(イン・プレーン・スイッチング)型、FFS(フリンジ・フィールド・スイッチング)型等がある。これらの液晶表示素子に用いられる液晶組成物は水分、空気、熱、光などの外的要因に対して安定であること、また、室温を中心としてできるだけ広い温度範囲で液晶相を示し、低粘性であることが求められている。さらに液晶組成物は個々の表示素子に対して誘電率異方性(Δε)または屈折率異方性(Δn)等を要求される値とするなどの観点で、下記特許文献1に示すように、数種類から二十種類程度の化合物から構成されている。
【0003】
特に近年においては、高速応答性の液晶組成物が求められている。目的とする物性を達成する為には種々の方法が考えられるが、有効な手段として液晶組成物の低粘性化が挙げられる。液晶組成物の粘性を低下させる為には、粘度(η)の低い化合物を添加する事が極めて有効である。特に回転粘度(γ)の低い化合物の添加が有効である。しかしながら、従来の粘性の非常に低い化合物は、誘電異方性が0付近の非極性の化合物がほとんどであり、これを多く使用すると誘電異方性が低下してしまう。したがって、所望する誘電異方性を達成するためには、さほど多くは使用できなかった。このことが、特に低粘性の負の誘電率異方性の液晶組成物を作製する際に課題となっていた。
【0004】
このため、液晶特性のさらなる向上のために、従来の化合物に比べてより強い負の誘電率異方性を有する化合物の開発が求められている。強い負の誘電率異方性の化合物を少量して、低粘性の非極性化合物を多量使用することにより、所望の負の誘電率異方性をもつ低粘性の液晶組成物が作製できる。例えば、下記特許文献2には、アルキンを含む連結基によって区切られた2つの部位から成り、負の誘電率異方性を有する化合物が開示されている。しかしながら、上述した何れの特許文献に記載の技術によっても、要求される特性は達成されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-99038号公報
【特許文献2】特表2006-520098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、従来の化合物に比べて、より強い負の誘電率異方性と低い回転粘度を有する化合物と、その化合物を用いた液晶組成物と、その液晶組成物を用いた液晶表示素子の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために、少なくとも炭素原子をもつ所定のスペーサーによって区切られた2つの部位から成り、スペーサーおよび各々の部位の結合部から、各々の部位の末端へ向かう方向に沿った分子軸がそれぞれ規定され、所定の負の誘電率異方性を有する化合物であって、スペーサーが、1分子中に2つ以上の炭素数をもつメチレンスペーサーであり、各々の部位が、少なくとも2つ以上のフルオロ基を備え、各々の部位の双極子モーメントのベクトル和が、各々の分子軸に対して垂直方向に向かうよう構成され、負の誘電率異方性が-4より強い化合物を提供する。
【0008】
本発明の特徴は、下記一般式(1)で表される化合物であって、下記一般式(1)において、前述の2つの部位は、連結基Xが含むメチレンスペーサーの一端と結合する原子からRを末端とする一連の部位と、連結基Xが含むメチレンスペーサーの他端と結合する原子からRを末端とする一連の部位とから成り、下記一般式(1)におけるメチレンスペーサーを含む連結基Xは、-(CH)n-を表し、nは2から10を表すことにある。
【0009】
【化1】
(式中、RおよびRは炭素原子数1から9のアルキル基又はアルコキシ基又は炭素原子数2から9のアルケニル基又はアルケニルオキシ基を表し、aおよびdは0、1、又は2を表し、bおよびcは0または1を表し、環Aおよび環Bは、下記の構造式(a-1)から構造式(a-4)のうちのいずれかを表し、
【0010】
【化2】
およびZは各々独立して-CHO-、-OCH-、-COO-、-OCO-、-CHCH-、-CFCF-、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、又は単結合を表わす。)
【0011】
また、本発明の化合物においては、好ましくは、前記一般式(1)におけるメチレンスペーサーを含む連結基Xは、-(CH)n-に代えて、-O-(CH)n-O-を表し、nは2を表す。
【0012】
また、本発明の化合物においては、好ましくは、前記一般式(1)におけるメチレンスペーサーを含む連結基Xは、-(CH)n-に代えて、-O-(CH)n-O-を表し、nは3から10を表す。
【0013】
また、本発明の化合物においては、好ましくは、前記一般式(1)におけるメチレンスペーサーを含む連結基Xは、-(CH)n-に代えて、-O-(CH)n-を表し、nは2から10を表す。
【0014】
また、本発明の化合物においては、好ましくは、前記一般式(1)におけるメチレンスペーサーを含む連結基Xは、-(CH)n-に代えて、-(CH)n-O-を表し、nは2から10を表す。
【0015】
また、本発明の化合物においては、好ましくは、前記一般式(1)におけるbおよびcは、それぞれ1および0である。もしくは、前記一般式(1)におけるbおよびcは、ともに0であってもよい。
【0016】
また、本発明は前述の化合物を一種又は二種以上含有する液晶組成物を提供する。本発明にかかる液晶組成物は、好ましくは、UV硬化型モノマーを、0.2%から0.5%の割合で更に含有する。
【0017】
さらに、本発明は、前記液晶組成物を使用した液晶表示素子を提供する。本発明にかかる液晶表示素子は、好ましくは、MVA型、PSA型、IPS型、又はFFS型である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の化合物は、1分子中に2つ以上の炭素数をもつメチレンスペーサーによって区切られた2つの部位から成り、各々の部位に各々の部位に2つ以上のフルオロ基があり、各々の部位における双極子モーメントのベクトル和が分子軸に対して垂直方向に向かう。メチレンスペーサーは自由回転が可能であるので、各々の部位は印加した電場に対してある程度独立して応答する。したがって、本発明の化合物は強い負の誘電率異方性と低い回転粘度を示す。このことにより、要求される液晶組成物の誘電率異方性を達成すべく組成設計する際に、誘電率異方性が0付近の低粘性で低い回転粘度を有する化合物をより多く使用でき、さらに低粘性で低い回転粘度を有する高速応答性の液晶組成物を作製できる。そして、本発明の液晶組成物を使用した液晶表示素子は、特に、高速の応答が要求される液晶テレビや液晶モニター用の液晶表示素子の提供に適している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明のより好ましき化合物の例として、前記一般式(1)に対応する下記の構造式(1-1)から構造式(1-30)をあげる。
【0020】
【化3】
(式中、RおよびRは前記一般式(1)のRおよびRと同じものを表す。)
【0021】
前記Rの好ましきは炭素数1~5のアルキル基又はアルケニル基であり、より好ましくはエチル基又はプロピル基又はエテニル基またはプロペニル基であり、前記Rの好ましきは炭素数1~5のアルキル基又はアルコキシ基又は3-ブテニル基又は3-ペンテニル基又は2-プロペニルオキシ基又は2-ブテニルオキシ基であり、より好ましきはメチル基又はエチル基又はプロピル基又はメトキシ基又はエトキシ基である。
【0022】
本発明の液晶組成物は、前述の本発明にかかる化合物を一種又は二種以上含有し、前記化合物に加えて、誘電率異方性(以下、単に「Δε」とも称呼する。)が0付近(概ね-2から+2程度)の従来公知の液晶化合物およびΔεが-3より強い負のΔεを有する従来公知の液晶化合物を含有することが好ましい。
【0023】
本発明の液晶組成物に含有されるΔεが0付近(概ね-2から+2程度)の従来公知の好ましき液晶化合物の例として、下記の構造式(2-1)から構造式(2-6)をあげる。このうち一種又は二種以上含有されることが好ましい。
【0024】
【化4】
(式中、Rは炭素原子数1から9のアルキル基又は炭素原子数2から9のアルケニル基を表わし、Rは炭素原子数1から9のアルキル基又はアルコキシ基又は炭素原子数3から9のアルケニル基を表し、さらに好ましきは、Rはエチル基又はプロピル基又はエテニル基又はプロペニル基を表し、Rは炭素原子数1から5のアルキル基又はアルコキシ基を表す。)
【0025】
本発明の液晶組成物に含有される-3より強い負のΔεを有する化合物の従来公知の好ましき液晶化合物の例として、下記の構造式(3-1)から構造式(3-6)をあげる。このうち一種又は二種以上含有されることが好ましい。
【化5】
(式中、Rは炭素原子数1から5のアルキル基又は炭素原子数2から5のアルケニル基を表わし、Rは炭素原子数1から5のアルキル基を表し、さらに好ましきは、Rはエチル基又はプロピル基又はエテニル基又はプロペニル基を表し、Rはメチル基又はエチル基を表す。)
【0026】
本発明の液晶組成物を使用した液晶表示素子としては、MVA型、PSA型、IPS型またはFFS型が好ましい。特に、二枚の基板の間に液晶材料を挟持して液晶を基板に略垂直に配向し、基板に略垂直な電界を印加することにより光学素子や表示素子として使用する垂直配向型のMVA型とPSA型が好ましく、液晶を基板に略平行で電極に略垂直に配向するIPS型とFFS型にも好ましい。
【0027】
本発明の液晶組成物をPSA型液晶表示素子に使用する場合、本発明の液晶組成物に、0.2%から0.5%の割合でUV硬化型モノマーが含有されていると好ましい。ここにおいて、「0.2%から0.5%の割合」は、複数の化合物が含有された液晶組成物の総重量に対する、当該液晶組成物に含有されるUV硬化型モノマーの重量の割合である。液晶表示素子作製時に、UV硬化型モノマーを含有する液晶組成物に対して、電圧を印加させながらUVを照射することで、重合相を分離して僅かな傾斜配向を安定化する。
【0028】
このUV硬化型モノマーは、反応性メソゲンとも呼ばれ、官能基を複数(二つ以上)有する多官能モノマーであることが好ましい。特に、UV硬化型モノマーが、官能基を2つ又は3つ有し、2つ又は3つの官能基は、メタクリロイル基、アクリロイル基、及び、シンナモイル基のうちの少なくとも1つを含むとより好ましい。
【0029】
UV硬化型モノマーの従来公知の好ましき例として、下記の構造式(5-1)から構造式(5-5)をあげる。このうち一種又は二種以上含有されることが好ましい。
【化6】
【0030】
また、本液晶組成物を使用した液晶表示素子は、高速応答を要求される液晶テレビや液晶モニターや低温で高速の応答が要求される車載用ディスプレイやPID(パブリック・インフォメーション・ディスプレイ)への応用に適している。
【実施例0031】
(実施例1)
式(1-1)においてR=C-、R=-OCの化合物の合成
【0032】
【化7】
(上記式中、DIADはアゾジカルボン酸ジイソプロピルを表し、TPPはトリフェニルホスフィンを表す。)
【0033】
2,3-ジフルオロ-4-(trans-4-プロピルシクロヘキシル)フェノール(5.04g)、2-(4-エトキシ-2,3-ジフルオロフェニルオキシ)エタノール(2.16g)及びトリフェニルホスフィン(6.0g)をTHF(25mL)に溶解させ、-10℃に冷却した。DIAD(4.4g)を、内温が15℃以上とならない速度で加え、室温にてさらに2時間撹拌した。水(1mL)を加えて10分撹拌し、反応液を減圧下濃縮した。ヘキサン(60mL)、トルエン(20mL)及び70%ターシャリーブチルヒドロぺルオキシド水溶液(0.8g)を加えて、室温にて1時間撹拌した。析出物を除去し、溶媒を減圧留去した。続いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらにエタノールから再結晶する事で、式(1-1-1)の化合物を白色固体として5.1g得た。
【0034】
式(1-1-1)の化合物は、温度に応じて、結晶相、等方性液体、及び、ネマチック液晶相の何れかの相を呈する。相転移する際の温度が、相転移温度である。式(1-1-1)の各相転移温度は、測定の結果、下記式の通りであった。ここにおいて、Cは結晶相、Iは等方性液体、Nはネマチック液晶相を表す。
【0035】
【化8】
【0036】
(実施例2)
式(1-2)においてR=C-、R=-OCの化合物の合成
【0037】
(実施例1)と同様にして、式(1-2-1)の化合物を4.9g得た。
【化9】
【0038】
式(1-2-1)の化合物も、温度に応じて、結晶相、等方性液体、及び、ネマチック液晶相の何れかの相を呈する。式(1-2-1)の各相転移温度は、測定の結果、下記式の通りであった。
【0039】
【化10】
【0040】
(実施例3)
式(1-26)においてR=C-、R=-OCの化合物の合成
【0041】
(実施例1)と同様にして、式(1-26-1)の化合物を5.3g得た。
【化11】
【0042】
式(1-26-1)の化合物も、温度に応じて、結晶相、等方性液体、及び、ネマチック液晶相の何れかの相を呈する。式(1-26-1)の各相転移温度は、測定の結果、下記式の通りであった。
【0043】
【化12】
【0044】
(実施例4)
式(1-1-1)および式(1-2-1)の本発明の化合物を用いて、表1の液晶組成物(1)(以下、単に「組成物(1)」とも称呼する。)を作製した。表1は、液晶組成物が含有する化合物における組成比率を示している。
【0045】
液晶組成物(1)の物性値は以下の通りであった。誘電率異方性(Δε)および屈折率異方性(Δn)は25℃で測定し、粘度(η20)および回転粘度(γ)は20℃で測定した。
ネマチック相上限温度(Tn-i):80.2℃
誘電率異方性(Δε):-3.3
屈折率異方性(Δn):0.11
粘度(η20):20.1mPa・s
回転粘度(γ):122mPa・s
【0046】
(実施例5)
(実施例4)と同様にして、式(1-2-1)および式(1-26-1)の本発明の化合物を用いて、表1の液晶組成物(2)(以下、単に「組成物(2)」とも称呼する。)を作製した。
【0047】
液晶組成物(2)の物性値は以下の通りであった。
ネマチック相上限温度(Tn-i):80.1℃
誘電率異方性(Δε):-3.3
屈折率異方性(Δn):0.11
粘度(η20):17.3mPa・s
回転粘度(γ):105mPa・s
【0048】
(実施例6)
(実施例5)と同様にして、式(1-2-1)および式(1-26-1)の本発明の化合物を用いて、表1の液晶組成物(3)(以下、単に「組成物(3)」とも称呼する。)を作製した。
【0049】
液晶組成物(3)の物性値は以下の通りであった。
ネマチック相上限温度(Tn-i):80.3℃
誘電率異方性(Δε):-3.3
屈折率異方性(Δn):0.11
粘度(η20):18.0mPa・s
回転粘度(γ):103mPa・s
【0050】
(比較例1)
(実施例4)の比較例として従来の液晶化合物から成る表1の液晶組成物(4)(以下、単に「組成物(4)」とも称呼する。)を作製した。
【0051】
液晶組成物(4)の物性値は以下の通りであった。
ネマチック相上限温度(Tn-i):80.1℃
誘電率異方性(Δε):-3.3
屈折率異方性(Δn):0.11
粘度(η20):23.2mPa・s
回転粘度(γ):145mPa・s
【0052】
(比較例2)
(実施例5)の比較例として従来の液晶化合物から成る表1の液晶組成物(5)(以下、単に「組成物(5)」とも称呼する。)を作製した。
【0053】
液晶組成物(5)の物性値は以下の通りであった。
ネマチック相上限温度(Tn-i):80.3℃
誘電率異方性(Δε):-3.3
屈折率異方性(Δn):0.11
粘度(η20):20.8mPa・s
回転粘度(γ):140mPa・s
【0054】
(比較例3)
(実施例6)の比較例として従来の液晶化合物から成る表1の液晶組成物(6)(以下、単に「組成物(6)」とも称呼する。)を作製した。
【0055】
液晶組成物(6)の物性値は以下の通りであった。
ネマチック相上限温度(Tn-i):80.0℃
誘電率異方性(Δε):-3.3
屈折率異方性(Δn):0.11
粘度(η20):19.8mPa・s
回転粘度(γ):114mPa・s
【0056】
液晶組成物(1)から(6)は、いずれも液晶テレビ用のPSA型あるいはMVA型液晶表示装置に使用される液晶組成物に典型的に要求される特性のうち、ネマチック相上限温度(Tn-i)=80℃、誘電率異方性(Δε)=-3.3、屈折率異方性(Δn)=0.11に合わせたものである。さらに、実施例(4)の組成物(1)と比較例(1)の組成物(4)は本発明の化合物以外は同じ液晶化合物から構成されている。同様に、実施例(5)の組成物(2)と比較例(2)の組成物(5)、および実施例(6)の組成物(3)と比較例(3)の組成物(6)もそれぞれ本発明の化合物以外は同じ液晶化合物から構成されている。
【0057】
【表1】
【0058】
表1の式(2-1-1)、式(2-1-2)、式(2-1-3)、式(2-1-4)、式(2-1-5)、式(2-6-1)、および、式(2-3-1)の化合物は下記の化合物を示す。
【化13】
【0059】
表1の式(3-1-1)、式(3-1-2)、式(3-5-1)、式(3-5-2)、式(3-3-1)、式(3-3-2)、式(3-4-1)、式(3-4-2)、式(3-4-3)、式(3-6-1)、および、式(3-6-2)の化合物は下記の化合物を示す。
【化14】
【0060】
表1の式(4-1-1)および(4-1-2)の化合物は下記の化合物を示す。
【化15】
【0061】
実施例(4)の組成物(1)の回転粘度(γ)は122mPa・sと比較例(1)の組成物(4)の回転粘度(γ)145mPa・sより明らかに低くなっている。同様に、実施例(5)の組成物(2)の回転粘度は105mPa・sと比較例(2)の140mPa・sより低くなっており、実施例(6)の組成物(3)の回転粘度も103mPa・sと比較例(3)の114mPa・sより低くなっている。これらのことから、本発明の液晶化合物およびその液晶組成物は高速応答性に有効であることは明白である。