(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119165
(43)【公開日】2022-08-16
(54)【発明の名称】フェムト秒パルスレーザーを用いたプランニング-ポリッシング装置及び方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/356 20140101AFI20220808BHJP
【FI】
B23K26/356
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021125056
(22)【出願日】2021-07-30
(31)【優先権主張番号】10-2021-0015534
(32)【優先日】2021-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】520355943
【氏名又は名称】トゥエンティファーストティーエイチ センチュリー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】21TH CENTURY CO., LTD
【住所又は居所原語表記】(Banggyo-dong)17,Dongtansandan 2-gil Hwaseong-si Gyeonggi-do 18487,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソン ファン
(72)【発明者】
【氏名】カン、ヒョン シク
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ドン ビン
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AB02
4E168AC02
4E168CA06
4E168CA13
4E168CB07
4E168CB22
4E168DA03
4E168DA32
4E168DA47
4E168EA20
4E168FB03
4E168FB05
4E168FC01
4E168JA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】大面積の平面加工物をフェムト秒パルスレーザーを用いてプランニング(planing)した後、表面粗さを向上させるためのポリッシングを行う装置を提供する。
【解決手段】被加工物が安着されるステージ110と、前記ステージ110上に前記被加工物を固定するための固定治具120と、前記ステージ110をX軸、Y軸に移動させるための移動手段130を備える位置固定部と、前記被加工物)の表面形状をデータ化して伝送する表面形状測定部と、表面形状データ(ZD)に基づいて前記フェムト秒パルスレーザーを加工領域のみに選択的に照射して平坦化するプランニング工程を行い、もう一つの所定出力のフェムト秒パルスレーザーを照射してさらに凹凸を低減させるためのポリッシングを行うレーザー加工部300、前記レーザー加工部300の駆動を制御する制御部400、を含んでなる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面加工物をフェムト秒パルスレーザーを用いてプランニング(planing)した後、表面粗さを向上させるためのポリッシングを行うフェムト秒パルスレーザーを用いたプランニング-ポリッシング装置(1)において、
被加工物(P)の表面を加工するために被加工物(P)が安着されるステージ110と、前記ステージ110上に前記被加工物(P)を固定するための固定治具120と、前記ステージ110をX軸、Y軸に移動させるための移動手段130を備える位置固定部100と;
前記被加工物(P)の表面平坦度を測定するために前記被加工物(P)の表面上に定められた多数の測定地点での高低を測定し、前記被加工物(P)の表面形状をデータ化して伝送する表面形状測定部200と;
前記表面形状測定部200から取得した表面形状データ(ZD)に基づいて、前記フェムト秒パルスレーザーを加工領域のみに選択的に照射して平坦化するプランニング加工を行い、前記プランニング加工以後に加工物の表面に形成された凹凸を減少させ、表面粗さを向上させるために、別の所定出力のフェムト秒パルスレーザーを照射して凹凸を減少させるためのポリッシングを行うレーザ加工部300;及び、
前記表面形状測定部200で測定した表面形状データ(ZD)は、多数の測定地点でのZ軸(高さ)上の変位データであって、前記表面形状データ(ZD)を前記多数の測定地点のうち高さが同じ点をつないで形成された仮想の断層面を高さ方向に一定間隔で配列した状態にし、前記断層面から同じ高さに突出した領域をプランニング加工領域として決定する面データ(SD)に変換し、前記面データ(SD)に基づいて前記プランニング処理のために入力された加工パラメータを前記レーザ加工部300に伝送し、前記レーザー加工部300の駆動を制御する制御部400;を含んでなるフェムト秒パルスレーザーを用いたプランニング-ポリッシング装置。
【請求項2】
前記表面形状測定部200は、レーザービームを前記被加工物(P)の表面の前記測定地点に照射して反射されるレーザービームの状態を読み取り、前記測定地点での高さを測定するレーザー変位センサであることを特徴とする請求項1に記載のフェムト秒パルスレーザーを用いたプランニング-ポリッシング装置。
【請求項3】
前記レーザー加工部300において、前記プランニング加工時に照射するレーザービームは、波長が580nm以下であり、パルスの長さが270fs~700fsであるフェムト秒パルスレーザーであることを特徴とする請求項1に記載のフェムト秒パルスレーザーを用いたプランニング-ポリッシング装置。
【請求項4】
前記プランニング加工は、最上層の面データ(SD)上の前記プランニング加工領域から最下層の面データ(SD)上の前記プランニング加工領域まで順次加工するが、前記レーザー加工部300が順次下降したり、前記ステージ110がZ軸方向に順次昇降しながら加工することを特徴とする請求項3に記載のフェムト秒パルスレーザーを用いたプランニング-ポリッシング装置。
【請求項5】
前記レーザー加工部300の一側には、前記位置固定部100に安着される前記被加工物(P)の整列状態と、前記レーザー加工部300から照射されるレーザービームによる加工状態をリアルタイムで肉眼確認できる光学カメラ(CA)がさらに備えられたことを特徴とする請求項1に記載のフェムト秒パルスレーザーを用いたプランニング-ポリッシング装置。
【請求項6】
前記被加工物(P)の上部には、前記レーザ加工部300によるレーザー加工時に用いられる工程ガスを制御して供給する工程ガス供給装置(G)がさらに備えられたことを特徴とする請求項1に記載のフェムト秒パルスレーザーを用いたプランニング-ポリッシング装置。
【請求項7】
前記被加工物に対して前記レーザー加工部300によるレーザー加工時に発生する加工粉塵を除去するための粉塵除去装置(D)がさらに備えられたことを特徴とする請求項1に記載のフェムト秒パルスレーザーを用いたプランニング-ポリッシング装置。
【請求項8】
前記粉塵除去装置(D)は、前記ステージ110上の前記被加工物(P)の周辺に負圧を形成させる負圧発生装置(D1)と、前記負圧によって吸引される粉塵をフィルタリングするためのフィルター(D2)を含むことを特徴とする請求項7に記載のフェムト秒パルスレーザーを用いたプランニング-ポリッシング装置。
【請求項9】
前記ステージ110には、外部の振動を相殺させるための弾性を有する防振パッド(V)がさらに備えられたことを特徴とする請求項1に記載のフェムト秒パルスレーザーを用いたプランニング-ポリッシング装置。
【請求項10】
前記レーザーポリッシング加工にて用いられるレーザービームは、波長が580nm以下であり、パルスの長さが270fs~700fsであるフェムト秒パルスレーザーであることを特徴とする請求項3に記載のフェムト秒パルスレーザーを用いたプランニング-ポリッシング装置。
【請求項11】
平面加工物の表面をフェムト秒パルスレーザーを用いて平坦化するレーザープランニング以後に、表面粗さを向上するためのレーザーポリッシングを行うフェムト秒パルスレーザーを用いたプランニング-ポリッシング方法において、
被加工物の表面を加工するために前記被加工物をステージ上の加工原点に位置付かせて固定させる加工準備段階(S1)と;
前記被加工物の表面の平滑な程度である平坦度を測定するために、レーザ変位センサを用いて前記被加工物の表面のうち設定された多数地点の高低を測定してデータ化する表面形状測定段階(S2)と;
前記表面形状測定段階を経て取得した表面形状データに基づいて高さが同じ点をつないで形成される仮想の断層面を一定間隔を有するように配列した多数個の面データに変換し、それぞれの前記断層面から同じ高さに突出された部分をプランニング加工領域として決定し、プランニング処理のための加工パラメータを決定して入力する段階(S3)と;
前記面データに基づいて決定される前記プランニング加工領域に対してレーザー加工部から前記加工パラメータを適用して、所定のパターンでレーザービームを照射することにより、被加工物の表面を平坦化するレーザープランニング段階(S4);及び
前記レーザープランニング段階(S4)にて用いられたレーザービームに比べて低出力のレーザービームを照射して前記被加工物の表面に形成された凹凸を減少させ、表面粗さを向上させるレーザーポリッシング段階(S5);を含んでなるフェムト秒パルスレーザーを用いたプランニング-ポリッシング方法。
【請求項12】
前記加工準備段階、前記表面形状測定段階、前記レーザープランニング段階、及び前記レーザーポリッシング段階は、レーザービームが前記被加工物(P)に照射される状態を光学カメラを介して目視確認しながら行うことを特徴とする請求項11に記載のフェムト秒パルスレーザーを用いたプランニング-ポリッシング方法。
【請求項13】
前記レーザープランニング段階は、レーザー加工部が順次下降したり、前記ステージがZ軸(高さ)方向に順次昇降しながら前記多数個の面データにおいて、最上層の面データ上の前記プランニング加工領域から最下層の面データ上のプランニング加工領域まで順次行うことを特徴とする請求項11に記載のフェムト秒パルスレーザーを用いたプランニング-ポリッシング方法。
【請求項14】
前記レーザープランニング段階のレーザービームは、波長が580nm以下であり、パルスの長さは270fs~700fsであるフェムト秒パルスレーザーであることを特徴とする請求項11に記載のフェムト秒パルスレーザーを用いたプランニング-ポリッシング方法。
【請求項15】
前記レーザープランニング段階と、前記レーザーポリッシング段階は、レーザー加工時に発生する加工粉塵を負圧によって除去しながら行うことを特徴とする請求項11に記載のフェムト秒パルスレーザーを用いたプランニング-ポリッシング方法。
【請求項16】
前記被加工物が積層用電子セラミックス製造に用いられる精密金型であることを特徴とする請求項11に記載のフェムト秒パルスレーザーを用いたプランニング-ポリッシング方法。
【請求項17】
前記レーザープランニング段階と、前記レーザーポリッシング段階は、レーザー加工時に発生しうる被加工物の表面の機械的性質の変化及び表面残留応力の生成を防止するための工程ガスを供給しながら行うことを特徴とする請求項11に記載のフェムト秒パルスレーザーを用いたプランニング-ポリッシング方法。
【請求項18】
前記レーザーポリッシング段階にて用いられるレーザービームは、波長が580nm以下であり、パルスの長さは270fs~700fsであるフェムト秒パルスレーザーであることを特徴とする請求項11に記載のフェムト秒パルスレーザーを用いたプランニング-ポリッシング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェムト秒パルスレーザーを用いるプランニング-ポリッシング装置及び方法に関するものであって、さらに詳しくは、積層型電子セラミックス製造に用いられる精密金型のような大面積の平面加工物の平坦度を具現するプランニング工程を行った後、大面積の平面加工物の表面粗さ(surface roughness)を向上させるためのポリッシング工程を行う装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
広い意味での研削加工は、被加工物の表面形状を様々な方法で平滑にし、表面粗さを向上させる加工方法をいう。
【0003】
このうち、被加工物の表面を平滑にする研削は、微細砥粒の摩擦によるグラインディング(grinding)を介して行われ、表面粗さを向上させる方法としては、布、革、フェルトなどでできたバフ(buff)の研磨剤を用いるポリッシング(polishing)作業を介して行われるのが一般的である。
特に、ポリッシング作業は、機械的、電気的または化学的メカニズムにより行われる。
【0004】
機械的ポリッシング方法は、作業可能な被加工物の形状が制限的で、作業所要時間が長く、研削砥石のチップが詰まる目詰まり(loading)現象により、被加工物の表面粗さが不均一になり、用いられる加工油が原因で作業環境が悪化し、加工油の廃棄処理による環境汚染を起こすだけでなく、将来、環境問題による法的規制の強化などにより作業コストが大幅に増加する可能性が高い。
【0005】
機械的ポリッシング方法に加えて、電気的または化学的方法があるが、これらは選択的領域のみポリッシングすることができず、所望の表面粗さを得るための精密な作業においても制約が伴い、用いられる化学薬品が原因で作業環境が悪化し、環境汚染の問題が依然として発生するので、近来は精密な工程が可能で、作業時間も短縮できると同時に環境に優しいレーザーを用いたポリッシングシステムが注目を集めている。
【0006】
このような表面粗さを向上させるためのレーザーポリッシング方法として、特許文献1(韓国特許公報第10-1594688号 2016.02.17.公告)において、レーザーポリッシングによる電子素子用金属基板の表面処理方法が、特許文献2(韓国特許公報第10-1358332号 2014.02.06.公告)において、レーザーを用いた金属表面ポリッシング方法が、特許文献3(韓国特許公報第10-2094556号 2020.03.30.公告)において、レーザーポリッシングシステムが開示されている。
【0007】
特許文献1におけるレーザーポリッシング方法は、電子素子として用いられる基板の表面粗さを向上させるためにレーザーを用いる方法であって、圧延工程を経て製造された金属基板の表面粗さ(Rz)を測定する段階;並びに金属基板の表面に垂直方向にレーザーを10~500mm/secの進行速度で照射し、金属基板の表面を平坦化する段階を含み、レーザーは波長が100nm以上であり、測定した金属基板の表面粗さ未満であることを特徴とする。
【0008】
特許文献2におけるレーザーを用いた金属表面ポリッシング方法は、金属表面に酸化防止のためのコーティング膜を形成する段階;コーティング膜の形成後、前記コーティング膜を硬化する段階;コーティングされた金属表面に金属表面の溶融が起きるようにレーザービームを照射する段階;並びに金属表面の溶融後、金属表面から前記コーティング膜を除去する段階;を含み、酸化防止のために用いる不活性ガスを噴射するためのチャンバーを省略することができる長所がある。
【0009】
また、特許文献3におけるレーザーポリッシングシステムは、加熱手段によりガラス生産及び製造に適した適正温度で予熱されたガラス基板の温度を一定に制御し、ガラスエッジ面の研磨が可能なように加熱手段を備えたレーザーポリッシングシステムに関するものである。
【0010】
しかし、前記特許文献1~3における従来技術は、ポリッシングのためにレーザーを用いてはいるが、共通してレーザーが被加工物の表面に照射(irradiation)されると同時に発せられる熱により被加工物の表面凹凸を溶融させ、山と谷の高低差を小さくするメカニズムで表面粗さを向上させている。
【0011】
そこで、前記のような従来のレーザーポリッシングは、表面が熱により溶けるので、溶融(melting)された金属が再び再結晶化(recrystallization)すると同時に表面の微細組織と表面の硬度(hardness)が変化し、表面の残留応力が発生するので、高荷重を繰り返し印加する加圧金型には適用することができないという技術的な限界がある。
【0012】
特に、使用目的に合った硬度、強度、靭性、延性などを含む機械的性質を生成させた上、仕上げ工程として表面に対するポリッシング作業を行った場合であれば、表面の機械的性質及び表面の残留応力の生成は、使用上、致命的な欠陥とならざるを得ない。
【0013】
従来のレーザーポリッシング作業によれば、表面粗さの測定値であるRaやRy値などは、ある程度の向上は期待できるが、被加工物の表面に巨視的な屈曲があった場合、例えば、表面研削工程において機械的誤差により被加工物の表面形状が等高線のような山と谷からなる屈曲が形成された場合であれば、表面粗さのみをある程度向上させることができるだけであって、マイクロスケール程度の平坦度に対する向上は、全く期待し難いという限界がある。
【0014】
ただし、被加工物の表面に等高線のような屈曲があった場合でも、巨視的な山部分のみを選択的に高出力のレーザーで照射する方法が可能であるかもしれないが、照射されるレーザーの焦点を山部分のみに正確に集中させる焦点制御が現実的に難しいばかりでなく、これもまた高出力のレーザービームにより金属表面が溶融されることで熱変形が起こるので、機械的性質の変化、表面残留応力の生成などによるクラック発生及び寸法変化等、被加工物の性能に致命的な問題を引き起こしうる問題は、未だに解決されていない。
【0015】
特に、このような問題点は、積層型電子セラミックス部品を製造するために用いられるバキュームプレート(vacuum plate)金型のように、数十トン-数百トンの荷重が数十万-数百万回にわたって繰り返し加えられる大面積の平面加工物であれば、レーザーポリッシング過程において表面の機械的性質の変化及び表面残留応力が生成されてはならず、これと合わせて高度の平坦度及び表面粗さが求められるので、従来のレーザーポリッシング方法による表面粗さの向上だけでは到底対応することができないというのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】韓国特許公報第10-1594688号 2016.02.17.公告.
【特許文献2】韓国特許公報第10-1358332号 2014.02.06.公告.
【特許文献3】韓国特許公報第10-2094556号 2020.03.30.公告.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、前記のような技術的な問題点を解決すべく見出されたものであって、ピコ秒やフェムト秒パルスレーザーのようなフェムト秒を有するレーザーを用いて、比較的大面積の平面加工物の表面を平滑にするプランニング作業と、表面粗さを向上させるポリッシングを行う装置および方法を提供することを目的とする。
【0018】
また、本発明は、従来のレーザーポリッシングのように金属表面を溶融させて、表面粗さを向上させるのではなく、フェムト秒を有するレーザーを金属表面に照射することで、被加工物の表面に熱変形なしに表面粗さを向上させることができる装置および方法を提供することを目的とする。
【0019】
それだけでなく、表面の微視的な凹凸のみを加工して表面粗さのみを向上させるのではなく、金属表面に照射されるレーザーの出力を容易に制御することで巨視的な等高線のような屈曲も選択的に加工し、表面の平坦度を迅速に向上させることができる装置及び方法を提供することが、本発明のもう一つの目的である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記のような技術的目的を有する本発明によるフェムト秒パルスレーザーを用いたプランニング-ポリッシング装置は、大面積の平面加工物をフェムト秒パルスレーザーを用いてプランニング(planing)した後、表面粗さを向上させるためのポリッシングを行う装置であって、被加工物(P)の表面を加工するために被加工物(P)が安着されるステージ110と、前記ステージ110上に前記被加工物(P)を固定するための固定治具120と、前記ステージ110をX軸、Y軸に移動させるための移動手段130を備える位置固定部100と;前記被加工物(P)の表面平坦度を測定するために前記被加工物(P)の表面上に定められた多数の測定地点での高低を測定し、前記被加工物(P)の表面形状をデータ化して伝送する表面形状測定部200と;前記表面形状測定部200から取得した表面形状データ(ZD)に基づいて、前記フェムト秒パルスレーザーを加工領域のみに選択的に照射して平坦化するプランニング工程を行い、前記プランニング工程後に加工物の表面に形成された凹凸を減少させ、表面粗さを向上させるために、もう一つの所定出力のフェムト秒パルスレーザーを照射し、凹凸を減少させるためのポリッシングを行うレーザー加工部300;並びに、前記表面形状測定部200から取得した表面形状データ(ZD)を伝送してもらい、前記プランニング加工のための面データ(SD)に変換し、前記面データ(SD)によって決定された加工領域に対して入力された加工パラメータを適用し、前記レーザー加工部300がプランニングするように前記レーザー加工部300の駆動を制御する制御部400;を含んでなる。
【0021】
このとき、前記表面形状測定部200は、レーザービームを前記被加工物(P)の表面における前記測定地点に照射して反射されるレーザービームの状態を読み取り、前記測定地点での高低を測定するレーザー変位センサであることが好ましい。
【0022】
また、前記表面形状測定部200にて測定した表面形状データ(ZD)は、多数の測定地点でのZ軸(高さ)上の変位データであって、前記制御部400は、前記表面形状データ(ZD)を前記多数の測定地点のうち、高さが同じ点をつないで形成される仮想の断層面を高さ方向であるZ軸方向に一定間隔で配列した状態にし、前記断層面から同じ高さに突出した領域を前記プランニング加工領域として決定する面データ(SD)に変換し、前記面データ(SD)に基づいて前記プランニング処理のために入力された前記加工パラメータを前記レーザー加工部300に伝送し、駆動を制御する。
【0023】
ここで、前記レーザー加工部300において、前記プランニング工程の際に照射するレーザービームは、波長が580nm以下であり、パルス長さが270fs~700fsであるフェムト秒パルスレーザーであることが好ましい。
【0024】
また、前記プランニング加工は、最上層の面データ(SD)上の前記プランニング加工領域から最下層の面データ(SD)上の前記プランニング加工領域まで順に加工するが、前記レーザー加工部300が順次下降したり、前記ステージ110がZ軸(高さ)方向に順次昇降しながら加工するのが好ましい。
【0025】
また、前記レーザー加工部300の一側には、前記位置固定部100に安着される前記被加工物(P)の整列状態と、前記レーザー加工部300において照射されるレーザービームによる加工状態を、リアルタイムで目視確認することができる光学カメラ(CA)がさらに備えられることができ、前記被加工物(P)の上部には、前記レーザー加工部300によるレーザー加工時に用いられる工程ガスを制御し、供給する工程ガス供給装置(G)がさらに備えられることができる。
【0026】
これだけでなく、前記被加工物に対して前記レーザー加工部によるレーザー加工時に発生する加工粉塵を除去するための粉塵除去装置(D)がさらに備えられることが好ましく、前記粉塵除去装置(D)は、前記ステージ110上の前記被加工物(P)の周辺に負圧を形成させる負圧発生装置(D1)と、前記負圧によって吸引される粉塵をフィルタリングするためのフィルター(D2)を含むものであることができる。
さらに、前記ステージ110には、外部の振動を相殺させるための弾性を有する防振パッド(V)がさらに備えられることができる。
【0027】
また、前記レーザーポリッシング加工にて用いられるレーザービームは、波長が580nm以下であり、パルスの長さが270fs~700fsであるフェムト秒パルスレーザーであることが好ましい。
【0028】
もう一つの一例による本発明のフェムト秒パルスレーザーを用いたプランニング-ポリッシング方法として、大面積の被加工物の表面をフェムト秒パルスレーザーを用いて平坦化するレーザープランニングの後に、表面粗さを向上させるためのレーザーポリッシングを行う方法において、大面積の被加工物の表面を加工するために前記被加工物をステージ上の加工原点に位置付かせ、固定させる加工準備段階(S1)と;前記被加工物の表面の平滑な程度である平坦度を測定するためにレーザー変位センサを用い、前記被加工物の表面中、設定された多数の地点の高低を測定してデータ化する表面形状測定段階(S2)と;前記表面形状測定段階を経て取得した前記表面形状データに基づいて高さが同じ点をつないで形成される仮想の断層面を一定間隔を有するように配列した多数個の面データに変換し、それぞれの前記断層面から同じ高さに突出した部分をプランニング加工領域として決定し、前記プランニング加工のための加工パラメータを決定して入力する段階(S3)と;前記面データに基づいて決定される前記プランニング加工領域に対して前記加工パラメータを適用し、所定のパターンでレーザービームを照射することにより、被加工物の表面を平坦化するレーザープランニング段階(S4);並びに前記レーザープランニング段階(S4)で用いられたレーザービームに比べて低出力のレーザービームを照射して前記被加工物の表面に形成された凹凸を減少させ、表面粗さを向上させるレーザーポリッシング段階(S5);を含んでなる。
【0029】
前記加工準備段階、前記表面形状測定段階、前記レーザープランニング段階及び前記レーザーポリッシング段階は、レーザービームが前記被加工物(P)に照射される状態を光学カメラを介してリアルタイムで目視確認しながら行うことが好ましい。
【0030】
この時、前記レーザープランニング段階は、前記レーザー加工部が順次下降したり、前記ステージがZ軸(高さ)方向に順次昇降しながら前記多数個の面データにおいて、最上層の面データ上の前記プランニング加工領域から最下層の面データ上のプランニング加工領域まで順次行うことが好ましく、前記レーザープランニング段階のレーザービームは、波長が580nm以下であり、パルスの長さは270fs~700fsであるフェムト秒パルスレーザーであることが好ましい。
【0031】
この時、前記レーザープランニング段階と前記レーザーポリッシング段階は、レーザー加工時に発生する加工粉塵を負圧によって除去しながら行うことができ、前記被加工物が積層用電子セラミックス製造に用いられる精密金型であることができる。
【0032】
前記レーザープランニング段階と前記レーザーポリッシング段階は、レーザー加工時に発生しうる被加工物の表面の機械的性質の変化及び表面残留応力の生成を防止するための工程ガスを供給しながら行うことができ、前記レーザーポリッシング段階で用いられるレーザービームは、波長が580nm以下であり、パルスの長さは270fs~700fsであるフェムト秒パルスレーザーであることができる。
【発明の効果】
【0033】
前記のような構成を有する本発明によるプランニング-ポリッシング装置によれば、ピコ秒やフェムト秒パルスレーザーのようなフェムト秒のパルスの長さを有するレーザーを用い、比較的大面積の平面加工物の表面を平滑にするプランニング作業と、表面粗さを向上させるポリッシングを共に行うため、加工誤差を画期的に減らしながらも生産性を極大化させることができる。
【0034】
また、本発明は、従来のレーザーポリッシングのように金属表面を溶融させて表面粗さを向上させるものではなく、フェムト秒のパルスの長さを有するレーザーを金属表面に照射することにより、被加工物の表面に熱的変形なしに表面粗さを向上させることができる。
【0035】
それだけでなく、表面の微視的な凹凸のみを加工して表面粗さのみを向上させるのではなく、金属表面に照射されるレーザーの出力を容易に制御することで巨視的な等高線のような屈曲度の高い部分のみを選択的に加工して表面の平坦度を迅速に向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】従来のレーザーポリッシング装置により具現されるポリッシング前後の断面状態を示す模式図である。
【
図2】
図1と対比される本発明によるプランニング-ポリッシング装置により具現される工程前後の断面状態を示す模式図である。
【
図3】本発明によるフェムト秒パルスレーザーを用いたプランニング-ポリッシング方法を説明するためのフローチャートである。
【
図4】
図3のフローチャートに沿った処理工程を示す模式図である。
【
図5】本発明のプランニング-ポリッシング装置に用いられるレーザー加工部の斜視図である。
【
図6】本発明のプランニング-ポリッシング装置の全体構成の連結状態を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を好ましい実施例を通じて添付された図面に基づいてより詳細に説明する。
【0038】
本発明にて用いられるプランニング(planing)とは、巨視的な等高線のような高低を平坦化する過程を意味するものであって、本出願人がポリッシング工程と区別されるように造った造語的用語であり、微視的観点での凹凸に対するRa値及びRy値を減少させるポリッシングとは別の意味で用いられることを明らかにする。
【0039】
通常、精密研削の精度を基準にしてみると、本発明のプランニング工程での加工精度は10μm内外であり、ポリッシング工程は0.8μm内外の加工精度を有するものであり、両工程は厳密に区別して使用されている。
【0040】
図1は、従来のレーザーポリッシング作業による工程前後の素材断面の状態を示す模式図であり、
図2は、本発明によるフェムト秒パルスレーザーを用いたプランニング-ポリッシング装置による加工前後の素材断面の状態を
図1と対比して示す模式図である。
図1の(a)は、大面積の平面を有する被加工物の形状を示しており、一部分を点線で表した。
【0041】
点線部分を誇張して拡大してみると、
図1の(b)のように、中央部分が高く形成されているので、巨視的に屈曲が形成されていることを表す。このような場合を本出願では、平坦度が低下した状態であるとする。
【0042】
図1の(b)には、任意の二つの地点(A)での微視的な表面状態を誇張して示した。すなわち、A部分を拡大してみると、表面粗さを決定する微視的な観点での凹凸が形成されていることを示す。
【0043】
このA部分に形成された凹凸は、
図1の(b)に示した等高線のような高低に関係なく被加工物の表面全体にわたって形成されており、機械的研削工程では必然と発生せざるを得ない。
図1の(c)は、従来のレーザーポリッシング工程を経た以後にA部分に形成された凹凸が大きく減少した状態をA’で示している。
【0044】
レーザーポリッシング工程以前のA部分における凹凸の山部分がレーザービームの照射による熱溶融により溶けることで、谷部分が埋められ、全体として山と谷の高低差が減り、表面粗さを決定するRa値とRy値が小さくなる。
【0045】
しかし、
図1の(c)に示すように、従来のレーザーポリッシングにより表面粗さは大幅に改善されたものの、巨視的観点での等高線のような高低は、ほとんど変わらないので、平坦度は依然低下した状態であることを知ることができる。
【0046】
図1の(d)は、従来のレーザーポリッシング工程前後のA部分の変化のみを端的に比較して示しており、実線で表した箇所がレーザーポリッシングにより凹凸が減少した状態を示すものであり、点線で表した箇所がレーザーポリッシング以前に存在していた凹凸部分である。
【0047】
図1の(d)に示すように、従来のレーザーポリッシング工程は、微視的な観点での凹凸(A)中の山部分が溶融されると同時に谷部分を埋めるメカニズムで凹凸を減少させ、表面粗さを向上させているので、凹凸の内、山部分と谷部分が緩やかな曲線状(A’)に変わることが確認され、溶融による被加工物の表面が熱的変形により硬度と強度の変化及び表面の残留応力を発生させることは、前で説明したとおりである。
【0048】
図2の(a)ないし(d)は、
図1と対比されるように示した本発明のフェムト秒パルスレーザーを用いたプランニング-ポリッシング装置及び方法によって達成される大面積の平面被加工物の表面の変化を示した図である。
図2の(a)と(b)は、
図1の(a)及び(b)のように、加工以前の状態を示したので、重複説明は省略する。
【0049】
図2の(c)は、
図1の(c)とは異なり、巨視的な観点での等高線のような高低を本発明によるプランニング加工により平坦化しており、プランニング加工による平坦化以後には、微視的な観点での凹凸部分に対するレーザーポリッシングにより表面粗さを向上させることを知ることができる。
【0050】
図2の(c)におけるB’部分は、
図1の(c)におけるA’部分とは異なり、山部分が熱溶融によって溶けて谷部分を埋めるのではなく、山部分が削られることを確認することができる。
【0051】
すなわち、本発明によるレーザーポリッシングは、フェムト秒パルスレーザーを照射するため、熱の発生が最小化し、物理的な打撃によって山部分が切り取られるメカニズムという点で、従来のレーザーポリッシング工程とは確実に区別される。
【0052】
このようなメカニズムは、
図2の(d)に端的に表現されているように、山部分が熱溶融によって谷を埋めるのではなく、山部分が削られた形状であることを示す。
【0053】
したがって、熱発生が最小化するので、被加工物の表面に熱的変形がほとんど起こらず、被加工物の機械的性質にほぼ変化がないだけでなく、熱による残留応力が発生しないというのが、本発明の最大の特徴である。
【0054】
以下において、
図2に示す被加工物の表面変化を達成するための本発明のフェムト秒パルスレーザーを用いたプランニング-ポリッシング方法を、便宜上、一先ず説明した上、装置の構成について説明する。
【0055】
図3は、本発明のフェムト秒パルスレーザーを用いたプランニング-ポリッシング方法を段階別に記載したフローチャートであり、
図4は、各段階別のプロセッサを模式的に示す図である。
【0056】
まず、大面積の被加工物(P)の表面を加工するために被加工物(P)をステージ110上の加工原点に位置付かせて固定することにより、加工を準備(S1)する。
ステージ110は、被加工物(P)が安着されることができる長方形であって、内角が直角であるため、加工原点を設定し易い。
【0057】
ステージ110上の加工原点に被加工物を安着させ、固定治具120(図示せず)を用いて、被加工物の位置を固定することにより、加工中に被加工物の位置がずれないようにする。
【0058】
また、ステージ110をX軸、Y軸、および/またはZ軸(高さ)方向に移動させることができる移動手段130があるが、本出願の実施例では、ステージ110を移動させる代わりに、レーザー加工部300がX軸、Y軸、および/またはZ軸(高さ)方向に移動する場合を例として説明する。
固定治具120は、ステージ110上に被加工物の位置を固定させることができる手段であれば、具体的な形状や材質などは、特に制限されない。
【0059】
ステージ110は、高度の平坦度を有する平面加工物であって、強度と硬度の高い金属材料であるが、セラミックス材料のように、温度などに影響されない材質であれば特に制限されない。
【0060】
実質的な加工の第一段階として、被加工物(P)の表面の平坦な程度である平坦度を測定するためにレーザー変位センサを用いて、前記被加工物(P)の表面の高低を測定してデータ化する表面形状測定段階(S2)から始める。
【0061】
図4の(a)に示すように、表面形状測定段階(S2)は、被加工物(P)の表面全体に亘って任意に決定された多数の測定地点での高低を測定し、この測定値をデータ化して表面形状に対するデータを取得する段階である。
図4の(a)では、横軸上で8箇所と縦軸に3箇所として、計24箇所の地点を任意に指定し、その時点でのZ軸上の高さを測定する。
【0062】
Z軸上の高さは、レーザー変位センサによってレーザービームを被加工物の表面に照射して反射されるレーザービームを観測して高さを測定し、その結果、右図のような表面形状データ値を取得する。
この表面形状データ(ZD)値 は、Z軸(高さ方向軸)上の座標と類似する概念であって、0、1、3、5、9などのような単純なZ軸上の高さを示す。
【0063】
このデータ値は、加工量や精度などの条件に応じて、予め設定された範囲で四捨五入、切り捨て、切り上げなどの演算により単純なデジタル数値に換算したものである。
【0064】
本発明の理解を助けるべく被加工物の中央部分が多少誇張して凸な表面形状を取得したことを示したが、実際には機械的研削工程の精度を考慮すれば、10マイクロ内外という微細な差の高さである。
本発明では、このような表面形状を巨視的観点での等高線のような高低で表し、表面粗さを決定する微視的観点での凹凸とは全く異なる概念である。
【0065】
本発明の重要な特徴の一つが、巨視的観点での等高線のような高低を平坦化する工程と、表面粗さを決定する微視的観点での凹凸を緩和する工程が、同じ装置により順次行われるという点である。
【0066】
次は、上述した表面形状データ(ZD)に基づいて大面積の平面被加工物の表面に対する巨視的観点での等高線のような高低を平坦化するためのプランニング加工領域決定段階(S3)とレーザープランニング工程(S4)について具体的に説明する。
【0067】
図4の(b)に示すように、前記表面形状測定段階(S2)を経て取得した前記表面形状データ(ZD)に基づいてZ軸上の高さが同じ2つ以上の点を含む仮想の断層面を一定間隔を有するように配列する。
本発明では、この断層面を面データと称する。
この仮想の断層面間の間隔は、被加工物の必要精度に応じて設定することができ、仮想の断層面自体の厚みも任意に設定することができる。
【0068】
多数個に積層配列された面データに変換した後、それぞれの前記断層面において同じ高さに突出した部分が巨視的観点での等高線のような高低を平坦化するためのプランニング加工領域となるものであり、プランニング加工領域の大きさや厚みなどの諸般の事情を考慮し、レーザー加工のためのパラメータを決定する。
【0069】
前記加工パラメータの例としては、レーザー波長、繰り返し率、平均出力、レーザー重畳率ビーム焦点の距離、ビームの直径、焦点の品質、スキャン速度、被加工物の移送速度などである。
【0070】
前記プランニング加工領域は、前記多数個の面データ上に突出された領域として制御部の入力プログラムにより自動に決定され、これらの情報は、プランニング加工を直接行うレーザー加工部に伝送される。
【0071】
制御部400は、上述の通り、生成された面データを基準にプランニング加工領域を決定し、決定されたプランニング加工領域にレーザー加工部300が移動できるようにプランニング加工領域をX軸、Y軸上の座標で計算し、当該位置にレーザー加工部300を移動させる駆動を制御する。
【0072】
ここで、各面データ上のプランニング加工領域は、それぞれ異なりうるので、各面データ上の加工領域となるX軸、Y軸上の座標は、制御部400によってそれぞれ計算して変わりうるものである。
【0073】
本実施例では、加工パラメータを決定して入力すると、その情報と加工領域を制御部からレーザー加工部に伝送するもことを例として挙げているが、初期の加工条件に関する事項を入力すれば、制御部自体のプログラムによって、最適の加工パラメータを自ら決め、調整することもできる。
【0074】
図4の(c)に示すように、前記レーザ加工部は、前記段階(S3)で決定されるプランニング加工領域に対して所定の加工パラメータを適用し、レーザービームを一定のパターンで照射することで、被加工物の表面に対する等高線のような高低を平坦化するレーザープランニング工程(S4)を行う。
【0075】
図4の(c)の左図は、レーザープランニング工程(S4)の際、多数の面データのうちのいずれかの面データを基準に当該領域にレーザー加工部300を駆動させ、ラインパターンでレーザーを照射して加工する様態を示すものである。
レーザービームの照射パターンは、多様に変更することができ、最高側の面データから最下側の面データに至るまで順次プランニング工程を行う。
【0076】
このとき、各面データ間の設定された一つの面の厚みだけずつZ軸上に移動しながらプランニング工程が行われるように設定することもでき、各面データ間の間隔だけ移動しながら行われるようにレーザー加工部300が下降したりステージ110が上昇する。
本実施例は、レーザーの焦点距離が一定に維持される場合であって、レーザー加工部がデータ間の間隔だけ下降する場合である。
【0077】
図4の(c)の右図は、レーザープランニング工程(S4)が完了し、表面形状が削除されることで、巨視的観点での等高線のような高低が平坦化された状態を模式的に示している。
【0078】
レーザープランニング工程(S4)に照射されるレーザービームは、本発明が被加工物を溶融させるメカニズムでないフェムト秒パルスレーザーによる物理的脱落を引き起こすメカニズムの加工であるため、フェムト秒パルスレーザーを主に用いる。
【0079】
本実施例で用いられるレーザービームは、被加工物の表面に熱的変形を最小化するため、IR領域を除いた580nm以下である515nmの波長を有しており、270fs~700fsのパルス長さを有するフェムト秒パルスレーザー中に700fsであるフェムト秒パルスレーザーが用いられた。
【0080】
また、繰り返し率は250kHz~450kHzであり、ビームサイズは2.5mm~3.5mmの直径を有し、パルス当たりのエネルギーは、200μJ~500μJの加工パラメータを適用した。
【0081】
このとき、レーザー加工部の一側に取り付けられた光学カメラ(CA)を介してレーザープランニング工程が進行される間、リアルタイムで加工状態を目視観察することができ、必要に応じて加工の精度や加工パラメータなどの加工条件を調節することができるようになる。
【0082】
図4の(d)に示すように、レーザープランニング工程(S4)以後に、前記被加工物の表面粗さを向上させるために、微視的観点での凹凸を減少させるためのレーザーポリッシング段階(S5)を行う。
【0083】
本発明でのレーザーポリッシング段階(S5)もまたレーザー加工部のレーザービームの照射により行われ、レーザーポリッシング段階(S5)で用いられるレーザービームは、レーザープランニング段階(S4)にて用いられるレーザービームとは同じではない。
【0084】
すなわち、レーザーポリッシングに用いられるレーザービームは、プランニング工程で用いられるレーザービームとは、出力と繰り返し率を変更することことで加工量がはるかに少なく、精密な作業のものである。
通常ポリッシング工程は、Ra値として0.8μm以下の表面粗さを具現する工程をいう。
【0085】
このレーザーポリッシング段階(S5)は、前記プランニング工程により表面の平坦化がすでに行われた状態で、後工程として進められる精密仕上げ工程であるので、加工の精度が非常に微細である。
【0086】
本発明の特徴のうち、もう一つ重要な特徴が、微視的観点での凹凸を減少させる工程でありながらも、凹凸の内、山部分のみを選択的に削る(エッチング)ことで行われるのが、従来のレーザーポリッシングとは区別される点である。
【0087】
これにより、巨視的観点での高低を平坦化し、微視的視点での凹凸の山部分のみを選択的に除去する工程により被加工物の機械的性質を変化させずに、且つ平坦度及び表面粗さをいずれも画期的に向上させることができるようになる。
以下において、本発明のフェムト秒パルスレーザーを用いたプランニング-ポリッシング装置について好ましい実施例を通じて詳細に説明する。
【0088】
図5は、本発明の好ましい実施例によるフェムト秒パルスレーザーを用いたプランニング-ポリッシング装置の構成を示す図であり、
図6は、
図5の装置の連結構造を示す系統図である。
【0089】
図5に示すように、本発明のフェムト秒パルスレーザーを用いたプランニング-ポリッシング装置は、被加工物(P)の位置を固定するための位置固定部100によって強固に固定されたままレーザー加工され、移送される。
【0090】
前記位置固定部100は、被加工物(P)が安着されるステージ110と、前記ステージ110上に前記被加工物(P)を固定するための固定治具120(図示せず)と、前記ステージ110をX軸、Y軸に移動させるための移動手段130(図示せず)からなる。
【0091】
本実施例における移動手段130は、X軸、Y軸方向に移動させることができるように各軸に沿って移動させるリニアモータを用い、Z軸(高さ)方向にはサーボモータが用いられるが、移動手段130の具体的な仕様や種類は、いくらでも変形可能である。
前記移動手段130は、レーザー加工部300を移動させることもでき、場合によってはステージ110を移動させることもできる。
本実施例における被加工物(P)は、大面積の表面を有する六面体形状として積層型電子セラミックス、例えば、MLCC積層用の金型を示したものである。
被加工物(P)の上側には、レーザービームを照射するレーザー加工部300が位置している。
【0092】
レーザー加工部300は、レーザービームを発生させるジェネレータ310と、ビームエキスパンダー320、第1反射鏡330a、第2反射鏡330bは、前記反射鏡330a、330bの間に配置されたビームシャッター340及びレーザービームを被加工物(P)に照射するスキャナ350で構成されている。
【0093】
ジェネレーター310は、レーザービームを発生させる構成であって、本実施例におけるレーザービームの波長帯は、被加工物(P)への熱吸収率を最大限に抑制することができる515nmであるグリーン領域の波長帯を有している。
【0094】
現在一般的に用いられるレーザービームは、1064nm程度の波長を有する近赤外線(NIR)領域のレーザーであるが、熱的影響が高いので、本発明にて用いられるレーザーは、前記近赤外線領域に該当するレーザー波長の1/2程度である530nm内外の波長を有する。
【0095】
したがって、本出願人は580nm以下の波長帯を有するレーザーが熱的影響が画然と少ないことを確認しており、今後のレーザー技術の発展次第ではこれより短い波長のレーザーを用いることがより有利であると予測している。 レーザービームは、ジェネレーター310からビームエキスパンダー320へ出射されるが、ビームエキスパンダー320は、レーザービームの大きさを拡大または縮小することができる調節が可能であり、ビームエキスパンダー320を介して大きさが調節されたレーザービームは、第1反射鏡330aと第2反射鏡330bを介して直角方向に反射され、スキャナ350に出射される。
【0096】
スキャナ350の内部には交換式fレンズが備えられており、Z軸(高さ)上に移動しながらΔf値(焦点係数)を補償することにより、鮮明なレーザービームを出射することができるようになる。
【0097】
一方、第1反射鏡330aと第2反射鏡330bとの間には、オン/オフ機能を有するビームシャッター340が備えられており、第1反射鏡330aを介して出射されるレーザービームを遮断したり、通過させる機能を行うことによりレーザービームを整列させることができる。
【0098】
スキャナ350の一側には、前記被加工物(P)の表面平坦度を測定するために前記被加工物(P)の表面上に定められた多数の測定地点での高低を測定し、前記被加工物(P)の表面形状をデータ化して伝送する表面形状測定部200であるレーザー変位センサが備えられている。
【0099】
このレーザー変位センサは、レーザービームの直進性を用いて、出射されたレーザービームと反射されたレーザービームの状態変化を、認識して基準点から測定地点までの距離を測定する構成であって、本実施例にて用いられたレーザー変位センサの距離精度は0.1μm程度である。
【0100】
このレーザー変位センサは、被加工物の表面の巨視的観点での等高線のような高低を測定する構成であって、既に設定された多数個の測定地点でのZ軸上の相対的な高さとしてデジタル化して制御部400に伝送する。
【0101】
制御部400は、前記表面形状測定部200から取得した表面形状データ(ZD)の伝送を受け、そのデータ(ZD)上の同じ高さの二つ以上の点を含む多数個の面データ(SD)を生成するようになり、これらの面データ(SD)から突出した領域をプランニング加工領域として決定する。
面データ(SD)の個数は、表面形状データ(ZD)の値に基づいてその偏差と加工の精度、加工の程度などによって多様に設定することができる。
【0102】
例えば、測定された表面形状データ(ZD)上において最下点と最高点の間が10μmと仮定すると、1μmずつ10等分して10個の面データ(SD)を生成することもでき、2μmずつ5個の面データ(SD)を生成することもできる。
【0103】
したがって、制御部400は、面データ(SD)により同じ突出高さを有する多数個のプランニング加工領域を決定するようになり、この加工領域に対する情報をレーザー加工部300に伝送するとともに、既に入力された加工パラメータをレーザー加工部300に伝送することにより、プランニング工程が行われるようにレーザー加工部300の駆動を制御する。
【0104】
制御部400は、上述の通り、生成された面データを基準にプランニング加工領域を決定し、決定されたプランニング加工領域にレーザー加工部が移動できるようにプランニング加工領域をX軸、Y軸上の座標で計算して当該位置にレーザー加工部を移動させる駆動を制御する。
【0105】
ここで、各面データ上のプランニング加工領域は、それぞれ異なりうるので、各面データ上の加工領域となるX軸、Y軸上の座標は、制御部400によってそれぞれ計算して変わりうるものである。
【0106】
本実施例におけるレーザープランニング工程に用いられるレーザービームは、波長が515nm程度であって、金属への熱吸収率が高く、共振周波数帯域である近赤外(NIR)領域を回避し、その中で515nmの波長を有するグリーン領域の可視光線であり、270fs~700fsのパルス長さを有するフェムト秒パルスレーザーが用いられた。
本発明の目的を達成するためのレーザービームの波長帯は、上限が580nmであり、波長が短いほど有利なものと予想される。
【0107】
前記表面形状測定部200から取得した表面形状データ(ZD)に基づいて生成された面データ(SD)で決定されるプランニング加工領域のみにフェムト秒パルスレーザービームを選択的に所定のパターンで照射することにより、被加工物(P)の表面を平坦化するプランニング工程を行うものである。
前記レーザープランニング工程は、最上層の面データから最下層の面データに至るまで、定められた加工深さで順次行われる。
【0108】
Z軸に沿って順次前記レーザープランニング工程が行われるため、レーザー加工部300が順次下降したり、ステージ110が順次昇降する場合が全部可能であるが、本実施例ではレーザー加工部300が下降しながら進められる。
【0109】
このレーザー加工部300によってプランニング工程が完了すると、巨視的観点での等高線のような高低が平坦化された状態で、微視的観点での凹凸を減少させ、表面粗さを向上させるレーザーポリッシング工程が続く。
【0110】
これもまた、レーザー加工部300から照射されるレーザービームによってなるが、前記レーザープランニング工程に比べて加工の程度が非常に微細なため、照射されるレーザービームのパルス当たりのエネルギー及び出力は画然と小さい。
【0111】
本発明のレーザーポリッシングは、従来のレーザーポリッシングとは異なり、熱溶融により酸を溶かして谷を埋めるメカニズムではなく、金属表面の粒子を熱溶融させるのではなく、物理的に脱落させるフェムト秒パルスレーザーを用いるため、山部分のみを選択的にエッチングすることにより、凹凸を減少させるメカニズムである。
【0112】
被加工物(P)が、例えば、MLCC積層用精密金型のように大きな荷重が繰り返し加えられた場合には、被加工物の表面の熱的変形や機械的性質の変化は、使用上、致命的な欠陥となりうるので、本発明に係る装置は、当業界で非常に画期的に認められるはずである。
図6の本発明に係るフェムト秒パルスレーザーを用いたプランニング-ポリッシング装置の全体構成の連結状態を示す構成図である。
前述の構成に関連し、重複説明は省略することとする。
【0113】
図6に示すように、位置固定部100のステージ110をX軸、Y軸、Z軸にそれぞれ移動させることができるように、2つのリニアモータ(LM)と1つのサーボモータが連結されており、外部からの振動を相殺させるためのゴム製の防振パッド(V)が連結されている。
防振パッド(V)は、必ずゴム製である必要はなく、エアサスペンションのように振動を吸収し、相殺させることができれば差し支えない。
【0114】
また、被加工物(P)の上側には、レーザー加工時に発生しうる化学的変化を防止するためにヘリウムやアルゴンなどの不活性気体や、窒素、酸素および空気のような工程ガスを供給するための供給ガス供給装置(G)がさらに備えられており、この供給ガス供給装置(G)は、ガスをブローするブローと供給ガスの供給を制御するためのバルブを含む。
【0115】
そればかりでなく、ステージ110の下部には、加工時に発生しうる粉塵を除去するための粉塵除去装置(D)が備えられており、本実施例では、被加工物(P)の周辺に負圧を形成して粉塵を吸入することができる真空ポンプの負圧発生装置(D1)と、真空ポンプによって吸引される粉塵をフィルタリングするための粉塵フィルター(D2)を含み、真空ポンプによる負圧を制御するためのバルブも含まれている。
【0116】
一方、
図6に示すレーザー加工部300は、ビームシャッター340が第2反射鏡330bとスキャナ350との間に配置されたものであり、
図5とは多少異なるが、ビームシャッター340は、レーザービームを遮断または通過させるための構成であって、反射鏡の使用有無および位置によっていくらでも変形可能なものである。
【0117】
以上、本発明のフェムト秒パルスレーザーを用いたプランニング-ポリッシング装置及び方法を好ましい実施例を通じて説明したが、これは本発明の理解を助けるだけのものであり、本発明の技術的範囲を限定しようとするものではない。
【0118】
本発明の技術的範囲は、唯一特許請求の範囲によってのみ決まるものであり、本発明の技術的範囲を逸脱しなくても、当業者の立場から様々な変形や改造が可能であり、このような変形や改造もまた本発明の技術的範囲内にあることはもちろんである。