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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119191
(43)【公開日】2022-08-16
(54)【発明の名称】治療装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/285 20060101AFI20220808BHJP
   A61B 18/14 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
A61B17/285
A61B18/14
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008907
(22)【出願日】2022-01-24
(31)【優先権主張番号】63/145,237
(32)【優先日】2021-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/542,641
(32)【優先日】2021-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】304050923
【氏名又は名称】オリンパスメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 章
(72)【発明者】
【氏名】大沼 龍
(72)【発明者】
【氏名】北村 央士朗
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160FF02
4C160GG08
4C160KK19
4C160KK39
4C160KL01
(57)【要約】
【課題】上下の顎部を円滑に開閉すること。
【解決手段】治療装置は、第1顎部402の第1チャネル406及び第2顎部404の第2チャネル408であって、第1顎部402及び第2顎部404が閉じた状態において、第1チャネル406及び第2チャネル408が、可動ハンドルを含む本体における第1入力に応答して、切断ブレード410を第1顎部402及び第2顎部404の基端と遠位端との間で長手方向に前後に移動させるための経路を形成する第1チャネル406及び第2チャネル408と、本体への第2入力に応じて、第1顎部402を第2顎部404から遠ざけるように移動させる力を加えるための力付与機構606とを含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動ハンドルを含む本体と、
近位端が前記本体に連結された長手方向に延びるシャフトと、
前記シャフトの遠位端に枢動可能に結合された治療端とを具備する治療装置であって、
前記治療端は、
切断ブレードと、
第1顎部及び第2顎部を有する顎構造であって、前記第1顎部及び前記第2顎部が関節構造により基端において連結され、前記第2顎部に対して前記第1顎部を枢動させて前記顎構造を開閉する前記顎構造と、
前記第1顎部の第1チャネル及び前記第2顎部の第2チャネルであって、前記顎構造が閉じた状態において、前記第1チャネル及び前記第2チャネルが、前記本体における第1入力に応答して、前記切断ブレードを前記顎構造の基端と遠位端との間で長手方向に前後に移動させるための経路を形成する第1及び第2チャネルと、
前記本体への第2入力に応じて、前記第1顎部を前記第2顎部から遠ざけるように移動させる力を加えるための力付与機構とを含む、
ことを特徴とする治療装置。
【請求項2】
前記力付与機構は、前記第1顎部または前記第2顎部の一方に連結されたワイヤである、
請求項1記載の治療装置。
【請求項3】
前記力付与機構は、前記切断ブレードから突出するフック部材であり、前記切断ブレードが後退する際に、前記フック部材は前記第1顎部または前記第2顎部の一方から突出する突出部材に接触して前記第1顎部を前記第2顎部から遠ざけるように力を加える、
請求項1記載の治療装置。
【請求項4】
前記力付与機構は、前記切断ブレードの背面であり、前記切断ブレードが後退する際に、前記切断ブレードの背面は前記第1顎部または前記第2顎部の一方から突出する突出部材に接触して前記第1顎部を前記第2顎部から遠ざけるように力を加える、
請求項1記載の治療装置。
【請求項5】
前記力付与機構は、弾性部材を用いて前記第1顎部または前記第2顎部の一方の内側天井に連結された変位部材であり、前記切断ブレードが後退する際に、前記切断ブレード上に形成された第1傾斜面は前記第1顎部または前記第2顎部の一方からの突起と係合して、前記第1顎部を前記第2顎部から遠ざけるように力を加える、
請求項1記載の治療装置。
【請求項6】
前記弾性部材がバネである、
請求項5記載の治療装置。
【請求項7】
前記第2入力は前記可動ハンドルの動きである、
請求項1記載の治療装置。
【請求項8】
前記切断ブレードはその表面に第1傾斜面を含む、
請求項1記載の治療装置。
【請求項9】
前記可動ハンドルと前記第1及び前記第2顎部との間に摺動子が配置される、
請求項1記載の治療装置。
【請求項10】
前記本体は前記治療装置で高周波治療を実施する電力を供給する電源に接続し、前記第1顎部及び前記第2顎部のうちの少なくとも一方は高周波電極として機能する、
請求項1記載の治療装置。
【請求項11】
前記切断ブレードは前記第1及び前記第2顎部の少なくとも一方とは異極の電極である、
請求項1記載の治療装置。
【請求項12】
前記シャフトと前記第1及び前記第2顎部との間に前記関節構造が配置される、
請求項1記載の治療装置。
【請求項13】
前記関節構造は少なくとも滑車またはリンクを含む、
請求項12記載の治療装置。
【請求項14】
可動ハンドルを含む本体と、
近位端が前記本体に連結された長手方向に延びるシャフトと、
前記シャフトの遠位端に枢動可能に結合された治療端とを具備する治療装置であって、
前記治療端は、
切断ブレードと、
第1顎部及び第2顎部を有する顎構造であって、前記第1顎部及び前記第2顎部が関節構造により基端において連結され、前記第2顎部に対して前記第1顎部を枢動させて前記顎構造を開閉する前記顎構造とを含み、
前記切断ブレードは、
遠位側に向かって移動しながら、前記第1顎部及び前記第2顎部を挟むことにより前記顎構造を閉じる下向き押し部及び上向き押し部と、
前記第1顎部を前記第2顎部から引き離す力を加えるための顎引っ張りワイヤとを含む、
ことを特徴とする治療装置。
【請求項15】
前記切断ブレードは駆動力を伝達して前記顎構造を閉じる切断ブレード部材に連結されている、
請求項14記載の治療装置。
【請求項16】
前記顎引っ張りワイヤ及び前記切断ブレード部材は摺動子に連結され、前記摺動子は前記可動ハンドルにリンクされている、
請求項15記載の治療装置。
【請求項17】
可動ハンドルを含む本体と、
近位端が前記本体に連結された長手方向に延びるシャフトと、
前記シャフトの遠位端に枢動可能に結合された治療端とを具備する治療装置であって、
前記治療端は、
切断ブレードと、
第1顎部及び第2顎部を有する顎構造であって、前記第1顎部と前記第2顎部が関節構造により基端において連結され、前記第2顎部に対して前記第1顎部を枢動させて前記顎構造を開閉する前記顎構造とを含み、
前記切断ブレードは、
遠位側に向かって移動しながら、前記第1顎部及び前記第2顎部を挟むことにより前記顎構造を閉じる下向き押し部及び上向き押し部を含み、
前記第1顎部は、前記切断ブレードが近位方向に動かされたときに前記切断ブレードと接触する接触部分を有する、
ことを特徴とする治療装置。
【請求項18】
前記切断ブレードは前記接触部分と接触するフック部材を含む、
請求項17記載の治療装置。
【請求項19】
前記第1顎部には前記下向き押し部に接触する第2傾斜面が設けられる、
請求項17記載の治療装置。
【請求項20】
前記切断ブレードは駆動力を伝達して前記顎構造を開閉する切断ブレード部材に連結されている、
請求項17記載の治療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、開閉可能な第1及び第2顎部を有する治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
開閉可能な顎部は、封止及び切断のために組織をクランプするために役立つ。顎部を閉じるためにはブレードが使用され、また顎部を開くことを補助するさまざまな機構が開示されていて、これらは組織を剥離する手技に役立つ。
【0003】
図14Aないし図14Cは、関連技術(例えば、特許文献1参照)に開示された治療装置の図である。図14Aは、外向き表面262A及び262Bとエネルギー供給面265A及び265Bとを備えた、開位置にある顎部222a及び222bを備えた作業端210を示している。顎部内のチャネル242は、例えば、鋭い遠位縁を有することによる組織切断要素を含み得る往復運動部材240の動きに適合する。エネルギー供給面265A及び265Bの縁部268は、組織の切開を防ぐために丸くしてもよい。図14Bは、顎部222a及び222bが閉位置にある作業端210を示している。図14Bからは、往復運動部材240が前後に移動するように設計されているチャネル242と、エネルギー供給面の間の寸法Dとを確認することができる。図14Cは、上下フランジまたは「c」字形部分250A及び250Bを有する往復運動部材240の遠位端を示す。フランジ250A及び250Bはそれぞれ、顎部222a及び222bの外向き表面262A及び262Bと摺動可能に係合する、内側カム表面252A及び252Bを規定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0076506号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この関連技術の治療装置の欠点は、以下の通りである。
往復運動部材240は、チャネル242を通って漸進的に前方へと摺動することにより顎部222a及び222bを閉じる。一方、往復運動部材240を後方に動かす際、抵抗があるときには顎部222a及び222bを開くために十分な力を与えることができない可能性がある。何らかの抵抗物体の抵抗にもかかわらず、剥離手技中にオペレータが治療装置の顎を開く必要がある場合に、当該関連技術の治療装置は、顎部222a及び222bを開くための力が不足しているため、その作業を達成できない。
【0006】
したがって、治療端の顎を開くために加えることができる力を増加させるように改善された構造を備えた治療装置を設計することが必要とされており、これは、関連技術の治療装置の制限及び欠点による1つまたは複数の問題を実質的に取り除く。
【0007】
本開示の目的は、上下の顎部を円滑に開閉することができる治療装置を提供することである。この目的の少なくとも1つまたは幾つかは、本明細書に開示される治療装置により達成される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る治療装置は、可動ハンドルを含む本体と、近位端が前記本体に連結された長手方向に延びるシャフトと、前記シャフトの遠位端に枢動可能に結合された治療端とを具備する治療装置であって、前記治療端は、切断ブレードと、第1顎部及び第2顎部を有する顎構造であって、前記第1顎部及び前記第2顎部が関節構造により基端において連結され、前記第2顎部に対して前記第1顎部を枢動させて前記顎構造を開閉する前記顎構造と、前記第1顎部の第1チャネル及び前記第2顎部の第2チャネルであって、前記顎構造が閉じた状態において、前記第1チャネル及び前記第2チャネルが、前記本体における第1入力に応答して、前記切断ブレードを前記顎構造の基端と遠位端との間で長手方向に前後に移動させるための経路を形成する第1及び第2チャネルと、前記本体への第2入力に応じて、前記第1顎部を前記第2顎部から遠ざけるように移動させる力を加えるための力付与機構とを含む、ことを特徴とする。
【0009】
また、本開示に係る治療装置は、可動ハンドルを含む本体と、近位端が前記本体に連結された長手方向に延びるシャフトと、前記シャフトの遠位端に枢動可能に結合された治療端とを具備する治療装置であって、前記治療端は、切断ブレードと、第1顎部及び第2顎部を有する顎構造であって、前記第1顎部及び前記第2顎部が関節構造により基端において連結され、前記第2顎部に対して前記第1顎部を枢動させて前記顎構造を開閉する前記顎構造とを含み、前記切断ブレードは、遠位側に向かって移動しながら、前記第1顎部及び前記第2顎部を挟むことにより前記顎構造を閉じる下向き押し部及び上向き押し部と、前記第1顎部を前記第2顎部から引き離す力を加えるための顎引っ張りワイヤとを含む、ことを特徴とする。
【0010】
また、本開示に係る治療装置は、可動ハンドルを含む本体と、近位端が前記本体に連結された長手方向に延びるシャフトと、前記シャフトの遠位端に枢動可能に結合された治療端とを具備する治療装置であって、前記治療端は、切断ブレードと、第1顎部及び第2顎部を有する顎構造であって、前記第1顎部と前記第2顎部が関節構造により基端において連結され、前記第2顎部に対して前記第1顎部を枢動させて前記顎構造を開閉する前記顎構造とを含み、前記切断ブレードは、遠位側に向かって移動しながら、前記第1顎部及び前記第2顎部を挟むことにより前記顎構造を閉じる下向き押し部及び上向き押し部を含み、前記第1顎部は、前記切断ブレードが近位方向に動かされたときに前記切断ブレードと接触する接触部分を有する、ことを特徴とする。
【0011】
以下の図及び詳細な説明を検討することにより、他のシステム、方法、特徴、及び利点が当業者には明らかであるか、または明らかになるであろう。そのような全ての追加のシステム、方法、機能、及び利点がこの記述には含まれており、本開示の範囲内にあり、以下の特許請求の範囲により保護されることが意図されている。この節での内容は、これら特許請求の範囲を制限するものと見なされるべきではない。本開示のさらなる態様及び利点は、開示された治療装置の実施形態と併せて以下で説明される。開示された治療装置の前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明の両方が例及び説明であり、特許請求の範囲に記載の開示された治療装置のさらなる説明を提供することが意図されていることを理解されたい。
【発明の効果】
【0012】
本開示に係る治療装置によれば、上下の顎部を円滑に開閉することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本体、シャフト及び治療端を含んだ治療装置を示している。
図2図2は、図1に示した治療端の拡大図を示しており、上顎部及び下顎部を開いた形態で示している。
図3A図3Aは、上顎部及び下顎部の関節構造と、治療端及びシャフトの間の関節構造とを示している。
図3B図3Bは、上顎部及び下顎部の関節構造と、治療端及びシャフトの間の関節構造とを示している。
図4図4は、治療端の上顎部及び下顎部、ならびにその内部構造の断面図を示している。
図5図5は、I字形の切断ブレードを動かすために使用される上顎部及び上部チャネルの特徴を示している。
図6図6は、閉じた状態での治療端における上顎部及び下顎部の断面図を示している。
図7A図7Aは、治療端の上顎部及び下顎部とその内部構造とを断面図で示している。
図7B図7Bは、治療端の上顎部及び下顎部とその内部構造とを断面図で示している。
図8A図8Aは、I字形の切断ブレードを動かすために使用される上顎部及び上部チャネルの内面図の特徴を示している。
図8B図8Bは、上顎部及び下顎部の特徴、ならびに上顎部を開くために使用される構造を背面斜視図で示している。
図9A図9Aは、開いた状態での治療端の上顎部及び下顎部を断面図で示している。
図9B図9Bは、上顎部及び下顎部の特徴、ならびに上顎部を開くために使用される構造を示している。
図10図10は、上顎部及び下顎部の特徴と、上顎部を開くために使用される構造とを示している。
図11A図11Aは、開位置及び閉位置にある上顎部及び下顎部、ならびに上顎部を閉じるために使用される構造を示す。
図11B図11Bは、開位置及び閉位置にある上顎部及び下顎部、ならびに上顎部を閉じるために使用される構造を示す。
図11C図11Cは、開位置及び閉位置にある上顎部及び下顎部、ならびに上顎部を閉じるために使用される構造を示す。
図12図12は、閉じた状態での治療端の上顎部及び下顎部の断面図を示している。
図13A図13Aは、閉位置及び開位置にある上顎部及び下顎部、ならびに上顎部を開くために使用される構造を示す。
図13B図13Bは、閉位置及び開位置にある上顎部及び下顎部、ならびに上顎部を開くために使用される構造を示す。
図13C図13Cは、閉位置及び開位置にある上顎部及び下顎部、ならびに上顎部を開くために使用される構造を示す。
図14A図14Aは、関連技術に開示された治療装置の図である。
図14B図14Bは、関連技術に開示された治療装置の図である。
図14C図14Cは、関連技術に開示された治療装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本体302、シャフト304、及び治療端306を含む治療装置300の図である。本体302は、可動ハンドル308及びグリップ310を含んでいる。可動ハンドル308は、治療端306の機能を駆動及び操作するために使用される。グリップ310は、治療装置300の高周波治療のために使用される電力を供給する電源に接続される。なお、グリップ310は、有線または無線によって電源と接続される。シャフト304の内部には、治療端306の機能部を操作するために必要なワイヤ及び部材が挿通される。
【0015】
図2は、上顎部402及び下顎部404を含む治療端306の図である。上顎部402は、本発明に係る第1顎部に相当する。また、下顎部404は、本発明に係る第2顎部に相当する。上顎部402及び下顎部404は、本体302からシャフト304を介して供給される電力を電気的に導通させる電極として機能し得る。上顎部402と下顎部404が閉位置にある場合、高周波電流が上顎部402及び下顎部404の間に伝導され、上顎部402及び下顎部404の間に把持され物体は、導通された高周波電流を使用して切開または封止される。
【0016】
上顎部402及び下顎部404の両者は、上顎部402及び下顎部404の少なくとも一方とは異極の高周波電極としても機能し得る切断ブレード410を動かすためのチャネルを含んでいる。上部チャネル406は、本発明に係る第1チャネルに相当する。また、下部シャネル408は、本発明に係る第2チャネルに相当する。上部チャネル406及び下部チャネル408は、上顎部402及び下顎部404の基端、すなわち上顎部402を枢動させて開閉するために連結される端部と、上顎部402及び下顎部404の遠位端との間で、切断ブレード410を長手方向で前後に移動させるための経路として使用される。また、チャネル内で切断ブレード410を前後に動かすことは、治療端306の本体に静止状態で取り付けられ得る下顎部404に対して上顎部402を変位させるなど、上顎部402及び下顎部404を開閉するために役立つ。操作部材412は、シャフト304を貫通し、治療端306の機能を操作するために使用される。操作部材412は、ケーブル及びプーリーまたは他の連結システムのような適切な任意の形態をとることができ、これは治療装置300の機能部、治療端306に関連付けられた特定の機能部の動作を制御する力を伝達するものである。
【0017】
図3A及び図3Bは、シャフト304と治療端306との間に形成される関節構造502を示す。関節構造502は、治療端306の角度操作を可能にし、治療装置300の使い易さを高めるのに役立つ。関節構造502を有することの欠点は、構造における追加の複雑さが、操作部材412が通過して操作運動を治療端306に効果的に伝達する障害として機能することである。また、図3A及び3Bは、動作中に上顎部402及び下顎部404を開閉することを可能にする、上顎部402及び下顎部404の関節構造504の特徴を示している。
【0018】
図4は、治療端306の上顎部402及び下顎部404、ならびに上顎部402及び下顎部404を開閉する機構を含むその内部構造を断面図で示している。切断ブレード410は、シャフト304を通過して摺動子604に連結する切断ブレード部材602に結合される。摺動子604は、可動ハンドル308またはモーター機構などの他の動作構造を介して動作可能である。可動ハンドル308への第1操作(本体302への第1入力)に応答して上顎部402及び下顎部404が閉じられると、上部チャネル406及び下部チャネル408は、摺動子604の動作により切断ブレード部材602が漸進的に押されるときに切断ブレード410が移動する空間を形成する。切断ブレード410はこの空間内を移動し、上顎部402及び下顎部404の基端に隣接する第1位置と、上顎部402及び下顎部404の遠位端の第2位置との間で前後に移動することができる。上顎部402と下顎部404との間の前記空間に物体が位置する場合、上部チャネル406及び下部チャネル408を横切る切断ブレード410は、その遠位端に形成されたブレードを使用して、そのような物体を切断するのに役立つ。また、切断ブレード410は、上部チャネル406及び下部チャネル408の特徴と協働して、本明細書でさらに説明する上部チャネル406の構造設計を使用して、上顎部402を閉じるように動作する構造を有する。上顎部402は、上顎引っ張りワイヤ606に結合されており、これはまた摺動子604にも連結されている。可動ハンドル308への第2操作(本体302への第2入力)に応じた上顎引っ張りワイヤ606を引っ張る摺動子604の動作に応答して、上顎部402は、上顎部402の基端に配置された回転支点608を使用して下顎部404から引き離される。上顎引っ張りワイヤ606は、本発明に係る力付与機構及び顎引っ張りワイヤに相当する。摺動子604は、上顎引っ張りワイヤ606を引っ張ると、切断ブレード410を引き戻す切断ブレード部材602を同時に引っ張る。
【0019】
図5は、上顎部402及び下顎部404の内面図である。I字型切断ブレード410は、切断ブレード部材602に結合された下向き押し部702及び上向き押し部704を有する。下向き押し部702及び上向き押し部704は、切断ブレード410が上部チャネル406及び下部チャネル408を通過するときに、それぞれ、上部チャネル406及び下部チャネル408の対応する上面706及び下面708と接触する。下向き押し部702は、最初に、上面706の近位端に配置された傾斜面710と接触し、傾斜面710を越えて徐々に摺動し、それにより上顎部402を下顎部404に向かって徐々に押し下げて、上顎部402を下顎部404に向かって動かす。傾斜面710は、本発明に係る第2傾斜面に相当する。本明細書では上向き、下向き、上及び下が使用されるが、これらの用語は図面に示される向きに関連していること、また向きの変化はそのように説明される特徴部の位置、操作及び相互動作性を変えないことが容易に理解される。
【0020】
図6は、上顎部402及び下顎部404が閉じた状態にある上顎部402及び下顎部404の断面図である。I字型切断ブレード410におけるブレード部分Bの高さHは、上顎部402及び下顎部404がそれらの閉位置にあるときの、上部チャネル406の上面706と下部チャネル408の下面708との間の距離に等しい(製造公差内で)。上顎部402及び下顎部404を開いた状態で開始する場合、上部チャネル406及び下部チャネル408により形成される空間を通して、切断ブレード410を治療端306の遠位端に向かって押すと、下向き押し部702は上面706に対して下方向、すなわち矢印Dで示される方向に力を加える。これに関連して、上向き押し部704は下面708に対して上方向、すなわち矢印Uで示される方向に力を加える。I字型切断ブレード410におけるブレード部分Bの両側にある矢印D及びUは、これらの力が中央部分の両側に加えられ得ることを示している。幾つかの実施形態において、下顎部404は、治療端306の本体及びシャフト304の少なくとも一方に対して固定され且つ移動不能であり、また上顎部402は、上顎部402の基端に配置された回転支点608を使用して、上顎部402及び下顎部404が一緒に閉じられるまで下顎部404に向かって下向きに押される。他の実施形態において、上顎402は、治療端306の本体及びシャフト304の少なくとも一方に対して固定され且つ移動不能であり、下顎404は、下顎404の基端に配置された回転支点608を使用して、上顎部402及び下顎部404が一緒に閉じられるまで上顎402に向かって上方に押される。
【0021】
図7A及び図7Bは、下顎部404に対する上顎部402の開閉の機構をさらに示している。図7Aに示されるように、摺動子604が切断ブレード部材602を押すと、切断ブレード410は、治療端306の近位端から遠位端に向かって(矢印で示されるように)上部チャネル406及び下部チャネル408を通って前方に押され、上顎部402及び下顎部404を閉じる。下向き押し部702は先ず傾斜面710に接触し、上顎部402を下顎部404に向かって下向きに押すことにより、傾斜面710及び上面706を通って徐々に摺動する。また、上顎引っ張りワイヤ606も、摺動子604を使用して同時にシャフト304に押し込まれ、上顎引っ張りワイヤ606に緩い張力を形成する。図7Bに示すように、摺動子604が切断ブレード部材602を引き戻すとき、切断ブレード410は、上部チャネル406及び下部チャネル408を通って治療端306の遠位端から近位端に向かって引き戻され、引っ込められる(矢印Rで示される)。上顎引っ張りワイヤ606は、摺動子604により同時に引き戻され、上顎部402の基端に配置された回転支点608を使用して上顎部402を開く。上顎引っ張りワイヤ606を介した継続的な引き戻し力により、上顎部402の十分な開放強度が実現され、治療プロセスの際にオペレータが必要とする剥離機能を可能にする。
【0022】
図8A及び図8Bは、下顎部404に対する上顎部402の開閉の機構を示す別の実施形態を示している。図8Aに示されるように、切断ブレード部材602が治療端306の遠位端に向かって前方に押されると、切断ブレード410の下向き押し部702は上面706を下向きに押すことにより、上顎部402が開いた状態にあるときには、上顎部402を下顎部404に向かって閉じる。下向き押し部702は、最初に傾斜面710と接触し、上顎部402を下顎部404に向かって下向きに押すことにより、傾斜面710及び上面706を通って徐々に摺動する。一方、切断ブレード410から突出しているフック部材802は、上面706の下に形成されたチャネルを通過するが、当該チャネルは上部チャネル406の一部である。フック部材802は、本発明に係る力付与機構に相当する。図8Bに示すように、切断ブレード410が切断ブレード部材602により後方に引っ張られると、上顎部402の一部である突出部材804がフック部材802と接触するようになる。突出部材804は、本発明に係る接触部分に相当する。切断ブレード410の引き戻す力は、下顎部404に配置された回転支点806により達成される回転運動と共に、上顎部402を回転させて開状態にするために役立つであろう。切断ブレード部材602を介した継続的な引き戻し力により、上顎部402の十分な開放強度が実現され、治療プロセスの際にオペレータが必要とする剥離機能を可能にする。また、フック部材802は、突出部材804と接触することにより、切断ブレード410がシャフト304の中へと過度に引き戻されるのを阻止するであろう。可動アーム308を通して感じられる突出部材804の抵抗は、切断ブレード410がその引き戻しの終点に到達したことをオペレータに通知し、また、上顎部402の開放が開始されることをオペレータに通知する。
【0023】
図9A及び図9Bは、下顎部404に対する上顎部402の開閉機構をさらに示す別の実施形態を示している。図9Aに示されるように、切断ブレード部材602が治療端306の近位端に向かって後方に押されると、切断ブレード410の上部(切断ブレード410の背面)は突出部材902と接触するであろう。切断ブレード410の背面は、本発明に係る力付与機構に相当する。突出部材902は、本発明に係る接触部分に相当する。切断ブレード410をさらに後方に引っ張ることは、下顎部404に配置された回転支点806により達成される回転運動と共に、上顎部402を回転させて開状態にするために役立つであろう。切断ブレード部材602を介した継続的な引き戻し力により、上顎部402の十分な開放強度が実現され、治療プロセスの際にオペレータに必要な剥離機能を可能にする。
【0024】
図10は、下顎部404に対する上顎部402の開閉機構を示す別の実施形態を示している。切断ブレード410は、切断ブレード部材602により変位可能な上部チャネル1004及び下部チャネル408を通って前方に押される。変位可能な上部チャネル1004は、本発明に係る力付与機構及び変位部材に相当する。切断ブレード410の下向き押し部702は、傾斜面1002に接触し、変位可能な上部チャネル1004を徐々に押し下げる。傾斜面1002は、本発明に係る第2傾斜面に相当する。変位可能な上部チャネル1004は上顎部404に連結されているので、下向きの力は、回転支点1006の回転運動と一緒になって、上顎部402をその閉じた状態に向けて下向きに押すであろう。ストッパー1008は、以下でさらに説明するように、切断ブレード410が上顎部402を開くために引き戻されるときに、変位可能な上部チャネル1004が治療端306の近位方向に向けて引き戻されるのを阻止するために役立つ。
【0025】
図11Aないし図11Cは、上顎部402及び下顎部404の断面図、ならびに変位可能な上部チャネル1004を使用して上顎部402を下顎部404に対して閉じる機構を示す。図11Aに示されるように、切断ブレード410の下向き押し部702が傾斜面1002に接触して下向きに押すとき、変位可能な上部チャネル1004は下向きの力を受ける。変位可能な上部チャネル1004は、弾性部材1104を介して上顎部402の天井1102に連結されているので、回転支点1006の回転運動を使用して、上顎部402の全体が下向きに動かされる。変位可能な上部チャネル1004は、天井1102から分離された弾性部材1104の膨張性を使用して、上顎部402内で下向きに引っ張られる。弾性部材1104は、バネ、輪ゴム、または伸長及び収縮を可能にする他の弾性部材であり得る。図11Bに示すように、変位可能な上部チャネル1004は、切断ブレード410の下向き押し部702により下向きに押され、その間、弾性部材1104は、変位可能な上部チャネル1004に対して上向きのバイアスを伝える収縮力を維持する。図11Cに示すように、切断ブレード410の下向き押し部702が治療端306の遠位端及び変位可能な上部チャネル1004の開口部1108に到達すると、下向き押し部702が開口部1108に入り込み、変位可能な上部チャネル1004は、弾性部材1104の収縮により天井1102に向けて上方に引っ張られる。
【0026】
図12は、閉状態での上顎部402及び下顎部406の断面図を示している。I型切断ブレード410におけるブレード部Bの高さHは、上顎部402及び下顎部404がそれらの閉位置にあるときに、上部チャネル406の上面706と下部チャネル408の下面708との間の距離に(製造公差内で)等しい。I字型切断ブレード410の下向き押し部702は、変位可能な上部チャネル1004を押し下げ、それを上顎部402の天井1102から分離させる。弾性部材1104は膨張するが、変位可能な上部チャネル1004を天井1102の方向に上向きに引っ張る収縮力を維持する。
【0027】
図13Aないし図13Cは、変位可能な上部チャネル1004を使用して、下顎部404に対して上顎部402を開く機構を示している。図13Aに示すように、切断ブレード410は、治療端306の遠位端から後方に引っ張られると、下向き押し部702の上面に形成された切断ブレード傾斜面1302を使用して、開口部1108から下向き押し部702が抜け出て変位可能な上部チャネル1004の下を摺動する。この切断ブレード傾斜面1302は、本発明に係る第1傾斜面に相当する。次に、切断ブレード410は、切断ブレード傾斜面1302が変位可能な上部チャネル1004の一部である曲面1304と接触するまで、変位可能な上部チャネル1004の下を摺動する。曲面1304は、本発明に係る突起及び接触部分に相当する。また、曲面1304は、半円形、楕円形または卵形などの任意の適切な湾曲形状を有することができ、部分的及び完全な形状の半円形、楕円形及び卵形の両方を使用することができる。図13Bに示すように、切断ブレード傾斜面1302は、曲面1304に接触して力を加え、それにより、変位可能な上部チャネル1004を上方に押し上げる。上顎部402の全体は、そのような上向きの力の適用及び回転支点1006を中心とする回転運動の結果として上向きに開く。図13Cに示すように、切断ブレード410を近位方向且つ後方に引っ張り続けると、切断ブレード傾斜面1302は、変位可能な上部チャネル1004の曲面1304を越えて摺動する。変位可能な上部チャネル1004及び切断ブレード410の位置は、図10に記載された状態に戻る。切断ブレード部材602の継続的な動きから生じる力により、十分な開放力が上顎部402に加えられ、治療プロセスの際にオペレータが必要とする剥離機能を可能にする。
【0028】
本発明を、その好ましい実施形態に関連して説明してきたが、当業者は、具体的に説明されていない追加、削除、修正、及び置換が、添付の特許請求の範囲で定義されている本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行われ得ることを理解するであろう。
【符号の説明】
【0029】
300 治療装置
302 本体
304 シャフト
306 治療端
308 可動ハンドル
402 上顎部
404 下顎部
406 上部チャネル
408 下部チャネル
410 切断ブレード
502,504 関節構造
602 切断ブレード部材
604 摺動子
606 上顎引っ張りワイヤ
702 下向き押し部
704 上向き押し部
710 傾斜面
802 フック部材
804,902 突出部材
1002 傾斜面
1102 天井
1104 弾性部材
1302 切断ブレード傾斜面
1304 曲面
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図11C
図12
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図14C