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特開2022-119192電気的性能を改良したJBS装置及び該JBS装置の製造方法
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  • 特開-電気的性能を改良したJBS装置及び該JBS装置の製造方法 図1
  • 特開-電気的性能を改良したJBS装置及び該JBS装置の製造方法 図2
  • 特開-電気的性能を改良したJBS装置及び該JBS装置の製造方法 図3
  • 特開-電気的性能を改良したJBS装置及び該JBS装置の製造方法 図4
  • 特開-電気的性能を改良したJBS装置及び該JBS装置の製造方法 図5
  • 特開-電気的性能を改良したJBS装置及び該JBS装置の製造方法 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119192
(43)【公開日】2022-08-16
(54)【発明の名称】電気的性能を改良したJBS装置及び該JBS装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/872 20060101AFI20220808BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20220808BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20220808BHJP
   H01L 21/329 20060101ALI20220808BHJP
   H01L 29/47 20060101ALI20220808BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
H01L29/86 301F
H01L29/86 301D
H01L29/91 F
H01L29/91 K
H01L29/86 301M
H01L29/86 301E
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
H01L29/86 301P
H01L29/48 D
H01L29/48 M
H01L21/265 F
H01L21/265 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009413
(22)【出願日】2022-01-25
(31)【優先権主張番号】102021000002333
(32)【優先日】2021-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】591002692
【氏名又は名称】エスティーマイクロエレクトロニクス エス.アール.エル.
【氏名又は名称原語表記】STMicroelectronics S.r.l.
(74)【代理人】
【識別番号】100076185
【弁理士】
【氏名又は名称】小橋 正明
(72)【発明者】
【氏名】シモーネ ラスクーナ
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエレ ベッロッキ
(72)【発明者】
【氏名】マルコ サントロ
【テーマコード(参考)】
4M104
【Fターム(参考)】
4M104AA03
4M104BB14
4M104CC01
4M104CC03
4M104FF02
4M104GG03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】改良した電気的特性を有するジャンクションバリアショットキーJBS装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】JBS装置(50)は、第1導電型を有するSiCの半導体ボディ(68)と、半導体ボディの上部表面(52a)において半導体ボディ内に延在する第2導電型の注入領域(59’)と、注入領域に対して横方向で上部表面と直接電気的コンタクトをしており、且つ、注入領域とオーミックコンタクトしている電気的端子(58)と、を有している。注入領域は、上部表面を横断する整合軸(55)に沿って整合しており、且つ、互いに直接的に電気的に接続されている第1部分(63’)及び第2部分(63”)によって形成されている。整合軸に対して直交して、第1部分は第1最大幅(d)を有しており、且つ、第2部分は第1最大幅よりも一層大きな第2最大幅(d)を有している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジャンクションバリアショットキーJBS装置(50)において、
第1型の電気的導電度を有しているシリコンカーバイドの半導体ボディ(68)と、
該第1型の電気的導電度と反対の第2型の電気的導電度を有しており且つ該半導体ボディ(68)と第1ジャンクションバリアダイオード(59)を形成するために該半導体ボディ(68)の上部表面(52a)において該半導体ボディ(68)内に延在する第1注入領域(59’)と、
該半導体ボディ(68)とショットキーダイオード(62)を形成するために、該第1注入領域(59’)に対して横方向で該半導体ボディ(68)の該上部表面(52a)と直接に電気的コンタクトしており且つ該第1注入領域(59’)とオーミックコンタクトしている第1電気的端子(58)と、
を有しており、
該第1注入領域(59’)が、互いに直接的に電気的に接続されており且つ該半導体ボディ(68)の該上部表面(52a)に対して横断する第1整合軸(55)に沿って互いに整合されている第1部分(63’)及び第2部分(63”)によって形成されており、該第1注入領域(59’)の該第1部分(63’)が該第1注入領域(59’)の該第2部分(63”)と該第1電気的端子(58)との間において該第1整合軸(55)に沿って延在しており、
該第1注入領域(59’)の該第1部分(63’)は、該第1整合軸(55)と直交する方向に、第1値(d)を有する最大幅を有しており、
該第1注入領域(59’)の該第2部分(63”)は、該第1整合軸(55)に対して直交する方向に、該第1値(d)よりも一層大きな第2値(d)を有している夫々の最大幅を有している、
JBS装置。
【請求項2】
該第1注入領域(59’)の該第1部分(63’)は該第1整合軸(59’)に対して横断する第1軸(X)に沿って互いに反対側の側壁(59a,59b)を有しており、該第1注入領域(59’)の該第1部分(63’)の該側壁(59a,59b)は該第1値(d)を有している相互最大距離を有しており、及び
該第1注入領域(59’)の該第2部分(63”)は該第1軸(X)に沿って互いに反対側にあり且つ該第2値(d)を有する夫々の相互最大距離を有している端部を有している、
請求項1記載のJBS装置。
【請求項3】
該半導体ボディ(68)が、基板(53)と、該基板(53)に対して重畳されているドリフト層(52)であって該ドリフト層(52)に関して該基板(53)と反対側で該半導体ボディ(68)の前記上部表面(52a)を画定している該ドリフト層(52)と、を有しており、該第1注入領域(59’)が該ドリフト層(52)内に延在している請求項1又は2記載のJBS装置。
【請求項4】
該第2値(d)と該第1値(d)との間の比(R)が1より大きく且つ2以下である請求項1乃至3の内のいずれか1項記載のJBS装置。
【請求項5】
更に、該半導体ボディ(68)と夫々の第2ジャンクションバリアJBダイオード(59)を形成するために該第2型の電気的導電度を有しており且つ該第1注入領域(59’)に対して横方向で該半導体ボディ(68)の該上部表面(52a)において該半導体ボディ(68)内に延在している少なくとも1個の第2注入領域(59’)を有しており、
該第1電気的端子(58)が該少なくとも1個の第2注入領域(59’)とオーミックコンタクトしており、
該少なくとも1個の第2注入領域(59’)が、互いに直接的に電気的に接続されており且つ該半導体ボディ(68)の該上部表面(52a)に対して横断する第2整合軸(55)に沿って互いに整合されている夫々の第1部分(63’)及び夫々の第2部分(63”)によって形成されており、該第2注入領域(59’)の該第1部分(63’)が、該第2注入領域(59’)の該第2部分(63”)と該第1電気的端子(58)との間で該第1整合軸(55)に沿って延在しており、
該第2注入領域(59’)の該第1部分(63’)が、該第2整合軸(55)に対して直交して、該第1値(d)を有している夫々の最大幅を有しており、
該第2注入領域(59’)の該第2部分(63”)が、該第2整合軸(55)に対して直交して、該第2値(d)を有している夫々の最大幅を有している、
請求項1乃至4の内のいずれか1項記載のJBS装置。
【請求項6】
該少なくとも1個の第2注入領域(59’)の該夫々の第1部分(63’)が該第1及び該第2整合軸(55)に対して横断し該第1軸(X)に沿って互いに反対側の夫々の側壁(59a,59b)を有しており、該少なくとも1個の第2注入領域(59’)の該第1部分(63’)の該側壁(59a,50b)が該第1値(d)を有している夫々の相互最大距離を有しており、
該少なくとも1個の第2注入領域(59’)の該第2部分(63”)が該第2値(d)を有している夫々の相互最大距離を有しており且つ該第1軸(X)に沿って互いに反対側の夫々の端部を有しており、
互いに対面している、該第1注入領域(59’)の該第1部分(63’)の及び該少なくとも1個の第2注入領域(59’)の該第1部分(63’)の該側壁(59a,59b)が第3値(d)を有している夫々の相互最小距離を有しており、
互いに対面している、該第1注入領域(59’)の該第2部分(63”)の及び該少なくとも1個の第2注入領域(59’)の該第2部分(63”)の該端部が該第3値(d)よりも一層小さな第4値(d)を有している夫々の相互最小距離を有している、
請求項2及び5記載のJBS装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の内のいずれか1項に記載の少なくとも1個のジャンクションバリアショットキーJBS装置(50)を有している電気的/電子的機器。
【請求項8】
ジャンクションバリアショットキーJBS装置(50)の製造方法において、
第1型の電気的導電度を有しているシリコンカーバイドの半導体ボディ(68)内に該第1型の電気的導電度とは反対の第2型の電気的導電度を有しており該半導体ボディ(68)と共に第1ジャンクションバリアJBダイオード(59)を形成するために該半導体ボディ(68)の上部表面(52a)において該半導体ボディ(68)内に延在する第1注入領域(59’)を形成するステップ、及び
該半導体ボディ(68)とショットキーダイオード(62)を形成するために該第1注入領域(59’)に対して横方向に該半導体ボディ(68)の該上部表面(52a)と直接電気的コンタクトをしており且つ該第1注入領域(59’)とオーミックコンタクトしている第1電気的端子(58)を形成するステップ、
を有しており、
該第1注入領域(59’)を形成するステップが、該半導体ボディ(68)の該上部表面(52a)に対して横断して第1整合軸(55)に沿って互いに整合しており且つ互いに直接的に電気的に接続している該第1注入領域(59’)の該第1部分(63’)及び第2部分(63”)を該半導体ボディ(68)内に形成することを包含しており、該第1注入領域(59’)の該第1部分(63’)は該第1注入領域(59’)の該第2部分(63”)と該第1電気的端子(58)との間を該第1整合軸(55)に沿って延在しており、
該第1注入領域(59’)の該第1部分(63’)は該第1整合軸(55)に対して直交して第1値(d)を有している最大幅を有しており、
該第1注入領域(59’)の該第2部分(63”)は該第1整合軸(55)に対して直交して該第1値(d)よりも一層大きな第2値(d)を有している夫々の最大幅を有している、
製造方法。
【請求項9】
該第1注入領域(59’)の該第1部分(63’)及び該第2部分(63”)を形成する該ステップが、
該上部表面(52a)の1領域(71”)を露出させるハードマスク(71)を該半導体ボディ(68)の該上部表面(52a)上に形成すること、
該第1注入領域(59’)の該第2部分(63”)を形成するために前記領域(71”)において該半導体ボディ(68)内にドーパント種の第1注入(70)を実施すること、及び
該第1注入領域(59’)の該第1部分(63’)を形成するために前記領域(71”)において該半導体ボディ(68)内にドーパント種の第2注入(72)を実施すること、
を包含しており、
該第1注入(70)が該第1整合軸(55)に関して角度(α)を形成する注入方向に沿って実施され且つ該第2注入(72)が該第1整合軸(55)と平行に実施される、
請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
該第1注入領域(59’)の該第1部分(63’)及び該第2部分(63”)を形成する該ステップが、
該上部表面(52a)の第1領域(81”)を露出させる第1ハードマスク(81)を該半導体ボディ(68)の該上部表面(52a)上に形成すること、
該第1注入領域(59’)の該第2部分(63”)を形成するために前記第1領域(81”)において該半導体ボディ(68)内にドーパント種の第1注入(70)を実施すること、
該第1領域(81”)内に含まれている該上部表面(52a)の第2領域(83”)を露出させる第2ハードマスク(83)を該半導体ボディ(68)の該上部表面(52a)上に形成すること、及び
該第1注入領域(59’)の該第1部分(63’)を形成するために前記第2領域(83”)において該半導体ボディ(68)内にドーパント種の第2注入(72)を実施すること、
を包含しており、該第1領域(81”)が、該第1整合軸(55)に対して直交して、第3値(L)を有する夫々の最大幅を有しており、且つ該第2領域(83”)が、該第1整合軸(55)に対して直交して、該第3値(L)よりも一層小さい第4値(L)を有している夫々の最大幅を有している、
請求項8記載の製造方法。
【請求項11】
200keVと500keVとの間の注入エネルギで且つ1×1012原子数/cm乃至1×1016原子数/cmの間のドーズで、前記ドーパント種の一つ又はそれ以上の注入を介して該第1注入(70)を実施し、及び30keVと200keVとの間の注入エネルギで且つ1×1012原子数/cm乃至1×1016原子数/cmの間のドーズで前記ドーパント種の一つ又はそれ以上の注入を介して該第2注入(72)を実施する、
請求項9又は10記載の製造方法。
【請求項12】
該第1注入領域(59’)の該第1部分(63’)及び該第2部分(63”)を形成する該ステップが、
該第1型の電気的導電度を有しているシリコンカーバイドのウエハ(90)の第1表面(90a)上に該第1表面(90a)の第1領域(81”)を露出させる第1ハードマスク(81)を形成すること、
該第1注入領域(59’)の該第2部分(63”)を形成するために前記第1領域(81”)において該ウエハ(90)内にドーパント種の第1注入(94)を実施すること、
該ウエハ(90)の該第1表面(90a)上に該第1型の電気的導電度を有しており且つ該ウエハ(90)と共に該半導体ボディ(68)を画定するシリコンカーバイドのエピタキシャル層(95)を形成すること、
該半導体ボディ(68)の該上部表面(52a)の第2領域(83”)であって該第1領域(81”)内に包含される該第2領域(83”)を露出させる第2ハードマスク(83)を該エピタキシャル層(95)上に形成すること、及び
該第1注入領域(59’)の該第1部分(63’)を形成するために前記第2領域(83”)において該エピタキシャル層(95)内にドーパント種の第2注入(96)を実施すること、
を包含しており、該第1領域(81”)が、該第1整合軸(55)に対して直交して、第3値(L)を有している夫々の最大幅を有しており、且つ該第2領域(83”)が、該第1整合軸(55)に対して直交して、該第3値(L)よりも一層小さな第4値(L)を有している夫々の最大幅を有している、
請求項8記載の製造方法。
【請求項13】
該第1注入(94)及び該第2注入(96)が、30keVと200keVとの間の注入エネルギで且つ1×1012原子数/cmと1×1016原子数/cmとの間のドーズで、前記ドーパント種の一つ又はそれ以上の注入を介して実施される請求項12記載の製造方法。
【請求項14】
該エピタキシャル層(95)を形成する該ステップが、5×1015原子数/cmと5×1016原子数/cmとの間のドーパント濃度でのエピタキシャル成長を実施することを包含している請求項12又は13記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的特性を改良したジャンクションバリアショットキーJBS装置及び該JBS装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
知られているように、ワイドバンドギャップ(例えば、1.1eVより大きなバンドギャップのエネルギ値Egを有するもの)と、低オン状態抵抗(RON)と、熱伝導度の高い値と、高い動作周波数と、電荷キャリアの高い飽和速度とを有している半導体物質は、特にパワー適用例用のダイオード又はトランジスタ等の電子部品を製造するのに理想的である。前記特性を有しており且つ電子部品を製造するために使用すべく考慮される物質は、シリコンカーバイド(SiC)である。特に、その異なるポリタイプ(例えば、3C-SiC、4H-SiC、6H-SiC)におけるシリコンカーバイドは、前述した特性に関する限り、シリコンよりも好適である。
【0003】
シリコン基板上に設けられる同様の装置と比較して、シリコンカーバイド基板上に設けられる電子装置は、導通における低い出力抵抗、低リーク電流、高い動作温度、及び高い動作周波数等の多数の利点を有している。
【0004】
特に、SiCショットキーダイオードは一層高いスイッチング性能を示しており、そのことは該ダイオードを特に高周波数適用例に対して望ましいものとさせている。しかしながら、これらのショットキーダイオード(以後、「ショットキーバリアダイオード」、SBD、とも言及する)は、リーク電流が高いために(例えば、数十又は数百μA程度)、逆バイアス(又は逆導通状態)において使用される場合に幾らかの制限がある。更に、SBDが逆バイアスで使用される場合に、良く知られている現象であるショットキーバリアハイト(SBH)低下が、バイアス電圧が増加するにつれてリーク電流において迅速な増加を発生させ、このことが良く知られた「ソフトブレークダウン」現象となる場合がある。該SBDが例えば150℃よりも一層高い高温で動作する場合には特に不所望なことである。何故ならば、このリーク電流における増加は該SBDの温度における更なる増加を発生させ、そのことは該SBDを損傷させる場合があるからである。
【0005】
これらの制限の両方を解消するための最も一般的な解決方法はSiCを基礎としたジャンクションバリアショットキー(JBS)ダイオードを使用することである。特に、JBSダイオード(以後、JBS装置とも言及する)は、互いに並置された少なくとも1個のショットキーダイオードと少なくとも1個のPNダイオード(即ち、半導体接合)とを有している。
【0006】
図1(A)-(C)は、夫々の既知の実施例に基づく夫々のJBS装置10を示している。詳細に説明すると、ショットキーダイオード12とPNダイオード14との間の並置は、電気的導電度の第1型(N型)を有しているSiCの半導体ボディ16内に該電気的導電度の第1型と反対の電気的導電度の第2型を有する注入領域18を形成することによって実施される(即ち、該注入領域18はP型である)。該注入領域18は、図1(A)に示したように、半導体ボディ16の上部表面16aから;図1(B)に示したように、注入領域18が半導体ボディ16内深くに延在するように上部表面16aから半導体ボディ16内に形成した夫々のトレンチ内に(即ち、上部表面16aのレベルにおいてでは無く);又は、図1(C)に示したように、フローティング態様で、即ち半導体ボディ16によって完全に取り囲まれるように半導体ボディ16内部に延在して、半導体ボディ16内に延在することが可能である。更に、JBS装置10は、上部表面16a上を延在するアノードメタリゼーション(不図示)を有している。注入領域18及び半導体ボディ16はPNダイオード14を形成し、一方該アノードメタリゼーションと半導体ボディ16とが互いに直接的に物理的及び電気的コンタクトしている領域はショットキーダイオード12を形成する。
【0007】
JBS装置10が順方向バイアス(即ち順方向導通状態)で動作する場合に、ショットキーダイオード12は導通状態にある。一方、JBS装置10が逆バイアスで動作している場合には、ショットキーダイオード12を介しての導通はPN装置14の「ピンチオフ」効果によって阻止され、且つJBS装置10の挙動はPN接合のものに類似している。
【0008】
その結果、図1(B)及び(C)に示した解決手段は図1(A)のものよりも好適である。何故ならば、前者においては、図1(A)の場合と比較してピンチオフ効果が上部表面16aから一層大きな距離において発生するからである。このことは上部表面16aにおける電界の減少を発生させ、従ってリーク電流の減少を発生させる。しかしながら、これらの解決手段の各々において、注入領域18は相互距離Dを有しており、それは、JSB装置10の設計段階期間中に、距離Dに対して逆比例する順方向導通状態におけるスレッシュホールド電圧Vと距離Dに対して直接的に比例する逆導通状態におけるリーク電流との間のトレードオフを考慮に入れて適切に選択されることを必要とする。特に、該リーク電流は、距離Dを減少させることによって、上部表面16aと直交する半導体ボディ16内の注入領域18の延長を増加させることによって、又はフローティングタイプの注入領域18(図1(C))を使用することによって、制限される場合がある。
【0009】
JBS装置10におけるリーク電流を最小化させることは、パワー回路及びモジュールの全体的なエネルギ消費を減少させるために必要なことである。しかしながら、現在知られている解決手段では、順方向バイアス導通状態を最適化することに向けられており且つそのことはショットキーバリアハイト値の減少を介してショットキーダイオード12の電圧降下Vを減少させることによって実施されている。
【0010】
このトレードオフに起因して、順方向バイアス導通状態が最適化されるこれらの解決手段は全体的なエネルギ消費の観点からは非効率的である。実際に、SBH値(現在のところ約1eVに等しい下限に到達している)の減少はスレッシュホールド電圧Vの夫々の減少を発生するが、逆バイアスにおいてのリーク電流の著しい増加も発生する。その結果、特に高温において使用される場合にそのようなトレードオフによって制限されることの無いJBS装置を開発することが必要とされている。即ち、電圧降下Vの減少と低リーク電流とを同時に達成するJBS装置を開発することの必要性が存在している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的とするところは、従来技術の欠点を解消するJBS装置、該JBS装置を有する機器、及び該JBS装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、特許請求の範囲に定義されるように、JBS装置、該JBS装置を有する機器、及び該JBS装置の製造方法が提供される。本発明をより良く理解するために、添付の図面を参照して、純粋に非制限的例としての好適実施例について以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(A)乃至(C)は既知のタイプの夫々の実施例に基づくJBS装置の各断面図。
図2】本発明の1実施例に基づくJBS装置の断面図。
図3】(A)はJBS装置が順方向導通状態にある場合に印加電圧が変化する場合の既知のタイプのJBS装置によって発生される電流と図2のJBS装置によって発生される電流との間の比較を示すグラフ図、(B)はJBS装置が逆導通状態にある場合に印加電圧が変化する場合の既知のタイプのJBS装置によって発生される電流と図2のJBS装置によって発生される電流との間の比較を示すグラフ図。
図4】(A)乃至(D)は本発明製造方法の1実施例に基づく図2のJBS装置の夫々の製造段階における状態を示した各断面図。
図5】(A)乃至(D)は本発明製造方法の別の実施例に基づく図2のJBS装置の夫々の製造段階における状態を示した各断面図。
図6】(A)乃至(E)は本発明製造方法の更なる実施例に基づく図2のJBS装置の夫々の製造段階における状態を示した各断面図。
【0014】
尚、以下に説明する本発明の異なる実施例に共通の要素には同様の参照番号を付すこととする。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図2は、本発明の1実施例に基づくジャンクションバリアショットキー(JBS)装置50を軸X,Y,Zからなる(3軸)カーテシアン座標系における横断面図で示している。特に、JBS装置50は、図2において、軸X及びZによって定義されるXZ面内に示されており且つ電気的/電子的機器(不図示であるがノートブック、モバイル電話、サーバー、TV、自動車、自動車充電ステーション、又は太陽電池パネル変換システム等)内に設けられている。
【0016】
JBS装置50は、表面53aと反対側に表面53bとが設けられており、例えば50μmと350μmとの間でより特定的には160μmと200μmとの間で例えば180μmに等しい表面53aと表面53bとの間の厚さを有しており、第1ドーパント濃度を有する第1型(詳細には、N型)の導電度を具備するSiCからなる基板53と;該第1ドーパント濃度よりも一層低い第2ドーパント濃度を有しており且つ互いに反対側の上部表面52a及び底部表面52bを有しているN型SiCからなるドリフト層(オプションであり、エピタキシャル態様で成長されている)52であって基板53の表面53a上を延在しており(詳細には、表面53aと52bとが互いにコンタクトしている)且つ例えば5μmと15μmと間の表面52aと表面53bとの間の厚さを有しているドリフト層52と;基板53の表面53b上を延在しているオーミックコンタクト領域又は層56(オプションであり、例えばニッケルシリサイドからなる)と;オーミックコンタクト領域56上を延在している例えばTi/NiV/Ag又はTi/NiV/Auからなるカソードメタリゼーション57(オプション)と;ドリフト層52の上部表面52a上を延在している例えばTi/AlSiCu又はNi/AlSiCuからなるアノードメタリゼーション58と;アノードメタリゼーション58を保護するためにアノードメタリゼーション58上を延在しているパッシベーション層69(オプション)と;ドリフト層52の上部表面52aに面してドリフト層52における第2型の導電度(第1型の導電度と異なり且つ詳細にはP型)を具備する少なくとも1個の注入領域59’及び、各注入領域59’に対して、各注入領域59’が基板53と夫々のジャンクションバリア(JB)要素(即ちダイオード)59を形成するような夫々のオーミックコンタクト59”と;JB要素59を完全に取り囲んでいる特にP型の注入領域における端部終端領域即ち保護リング60(オプションである)と;及びJB要素59を完全に取り囲んでおり保護リング60に対して少なくとも部分的に重畳しており且つアノードメタリゼーション58を横方向に境界を画定している態様でドリフト層52の上部表面52a上に延在している絶縁層61(オプション)とを包含している。特に、基板53及びドリフト層52はJBS装置50の半導体ボディ68を形成している。
【0017】
1個又はそれ以上のショットキーダイオード62が、注入領域59’の横方向で、ドリフト層52とアノードメタリゼーション58との間の界面に形成されている。特に、(半導体-金属)ショットキー接合が、アノードメタリゼーション58の夫々の部分と直接電気的コンタクトをしているドリフト層52の部分によって形成されている。
【0018】
特に、図2は、基板53と夫々のJB要素59を形成している2個の注入領域59’を例示的に示している。より詳細には、JB要素59は、注入領域59’によって、ドリフト層52によって及び基板53によって形成されているP-i-Nダイオードである。図2は2個の注入領域59’を示しているが、注入領域59’の数は異なるものとすることが可能であり、例えば2個を越える数とすることが可能である。
【0019】
JB要素59とショットキーダイオード62とを包含する領域(即ち、保護リング60によって取り囲まれている領域)は、JBS装置50の活性区域54である。各オーミックコンタクト59”は、それを収容している注入領域59’の電気的固有抵抗値よりも一層低い電気的固有抵抗値を有している電気的接続を形成している。オーミックコンタクト59”は既知の技術に基づいて形成され、且つドリフト層52と直接物理的コンタクトをしているものではないが夫々の注入領域59’を介してドリフト層52から物理的に且つ電気的に分離されている。
【0020】
各注入領域59’は、互いに電気的に直接的に接続されている第1部分63’と第2部分63”とを有している。詳細に説明すると、第1部分63’と第2部分63”とは電気的に且つ物理的に互いに直接的に接続されている。第1部分63’はドリフト層52の上部表面52aに面しており且つ該上部表面52aから半導体ボディ68内に延在している。第2部分63”は、ドリフト層52の上部表面52aに関して第1部分63’の反対側において半導体ボディ68内を延在している。即ち、Z軸と平行に、第1部分63’はドリフト層52の上部表面52a(従って、アノードメタリゼーション58)と第2部分63”との間に介在されている。より詳細に説明すると、各注入領域59’の第1及び第2部分63’、63”は、Z軸に対して平行な整合軸55に沿って互いに整合されており且つドリフト層52の上部表面52aに対して横断方向(即ち、直交)である。従って、第1及び第2部分63’、63”は相互に接続されてその注入領域59’を形成している。
【0021】
各第1部分63’は、第1値を有しているX軸と平行に(従って整合軸55に対して横断方向)測定した第1最大幅dを有している。各第2部分63”は、該第1値よりも一層大きい第2値を有しているX軸と平行に測定した第2最大幅dを有している(即ち、d>d)。その結果、図2の2個の注入領域59’の第1部分63’は、それらの間に、第3値を有するX軸と平行に測定した第1最小距離dを有しており、且つ図2の2個の注入領域59’の第2部分63”は、それらの間に、第3値よりも一層小さい第4値を有しているX軸と平行に測定した第2最小距離d(即ち、d<d)を有している。
【0022】
詳細には、第1及び第2最大幅d,dは、X軸と平行に測定可能な第1及び、夫々、第2部分63’、63”の幅の全ての中で最大である第1及び、夫々、第2部分63’、63”の幅である。更に、第1及び第2最小距離d,dは、互いに近い2個のJB要素59の第1及び、夫々、第2部分63’、63”の間のX軸に平行に測定可能な相互距離の全ての中で最小である互いに近い2個のJB要素59の第1及び、夫々、第2部分63’、63”の間の相互距離である。
【0023】
更により詳細には、図2の実施例において、各第1部分63’は、ドリフト層52の上部表面52aに隣接しておりX軸に沿って互いに反対側の第1及び第2側部表面59a,59bを有している。同じJB要素59の側部表面59a,59bは、第1最大幅dだけ、例えば、アノードメタリゼーション58において互いに離れている。互いに近い2個のJB要素59は、互いに面しており且つ、例えば、アノードメタリゼーション58において、第1最小距離dだけ互いに離れている第2側部表面59b(又は、代替的に、夫々の第1側部表面59a)を有している。更に、各第2部分63”は、第3側部壁59cによって外部の境界が画定されており且つ、XZ面において、第2最大幅dに等しい直径/主軸を有する実質的に円形/楕円形の形状を有している。即ち、各第2部分63”は、X軸に沿って互いに反対側にあり且つ第2最大幅dに等しい夫々の相互最大距離を有している端部を有している。互いに近い2個のJB要素59は、第2最小距離dだけ互いに離れている夫々の第3側部表面59cを有しており;即ち、互いに近い2個のJB要素59の第2部分63”の互いに対面している端部は第2最小距離dだけ互いに離れている。
【0024】
本発明の一つの側面によれば、第2最大幅dと第1最大幅dとの間の第1比Rは、1より大きく且つ約2以下であり、即ち、R=d/dで例えば1<R≦2である。更に、オプションとして、第1最小距離dと第2最小距離dとの間の第2比Rは1より大きく且つ約6以下であり、即ち、R=d/dで例えば1<R≦6である。例えば、第1最大幅dは約1μmと約2μmとの間であり、且つ第2最大幅dは約1.1μmと約4μmとの間である。更に、第1最小距離dは約2μmと約3μmとの間であり、且つ第2最小距離dは約0.5μmと約1,9μmとの間である。
【0025】
図3(A)は、JBS装置50が順方向バイアス(即ち順方向導通状態)にある場合にアノードメタリゼーション58とカソードメタリゼーション57との間に電圧Vを印加した場合にJBS装置50によって発生される電流I(詳細には、アノードとカソードとの間で測定)の挙動を示している。特に、電流Iは既知のタイプの夫々のJBS装置によって発生された電流I及びIと比較してあり、その場合に、電流Iに対応するJBS装置は電流Iに対応するJBS装置のショットキーバリアハイトよりも一層高いショットキーバリアハイトを有している。電圧Vが同じ場合に、電流Iは電流I及びIよりも一層高い。その結果、JBS装置50のスレッシュホールド電圧Vは既知のタイプのJBS装置のものよりも一層低い。
【0026】
図3(B)は、JBS装置50が逆バイアス(即ち逆導通状態)にある場合の電圧V(線形目盛)に基づくJBS装置50の電流I(対数目盛)の挙動を示している。注意すべきことは、電流I(この場合には、JBS装置50のリーク電流を表している)の増加が、JBS装置50の動作電圧範囲全体にわたって(例えば、V<1200V)、電流I及びIにおける増加よりも著しく少ないことである。例えば、約50Vと約1200V(JBS装置50の最大動作電圧の1例)との間の電圧Vの範囲において、電流Iにおける増加は約1×10-10Aと約1×10-8Aとの間で変化しており、一方電流Iにおける増加は約1×10-14Aと約1×10-6Aとの間で変化しており且つ電流Iにおける増加は約1×10-10Aと約1×10-3Aとの間で変化している。
【0027】
JBS装置50は、その異なる実施例に基づいて以下に説明する製造方法に従って製造される。図4(A)-(D)を参照して、JBS装置50の製造ステップについて本製造プロセスの1実施例に基づいて以下に説明する。
【0028】
図4(A)を参照すると、SiCからなる半導体ボディ68を包含している第1ウエハ80を用意する。特に、図4(A)には示されていないが、第1ウエハ80はSiC(特に、4H-SiCであるが、これらに制限するものではないが2H-SiC、3C-SiC、6H-SiC等のその他のポリタイプを使用することも可能)からなる基板53を有しており、その表面53a上には、例えば、エピタキシャル成長を介してドリフト層52が形成されている。例えば、基板53は、1×1019原子数/cmと1×1022原子数/cmとの間のN型ドーパント濃度を有しており、且つ50μmと360μmとの間で且つ特に約180μmに等しく表面53aと53bとの間でZ軸に沿って測定した厚さを有しており;及びドリフト層52(4H-SiCであるが、2H、6H、3C又は15R等のその他のSiCのポリタイプを使用することも可能)は、基板53のドーピングレベルよりも一層低いN型ドーパント濃度を有しており、5μmと15μmとの間の第3Z軸に沿っての厚さを有している。例えば、フォトレジスト、又はTEOS、又はその目的のために適切な別の物質を付着させることにより、半導体ボディ68の上部表面52a上に第1ハードマスク71を形成する。第1ハードマスク71は、0.5μmと2μmとの間の厚さか又は、いずれにしても、図4(B)及び(D)を参照した後述する注入を遮蔽するような厚さを有している。第1ハードマスク71は、相次ぐステップにおいて、JBS装置50の活性区域54が形成される第1ウエハ80の領域内に延在している。X軸及びY軸によって画定されるXY面上の平面図において、第1ハードマスク71は、ショットキーダイオード62を形成する半導体ボディ68の上部表面52aの第1領域71’を被覆し、且つ注入領域59’を形成する半導体ボディ68の上部表面52aの第1領域71’に隣接する第2領域71”を露出させたままとさせる。
【0029】
図4(B)を参照すると、第1ハードマスク71を使用して、第2型の導電度(ここではP)を有するドーパント種(例えば、ボロン又はアルミニウム)の第1注入ステップを実施する(第1注入は矢印70によって図中に示されている)。注入領域59’の第2部分63”は第1注入70を介して形成される。第1注入70は半導体ボディ68の上部表面52aに対して直交的に実施されるものではなくそれに対して傾斜されている。1例示的実施例によれば、第1注入70は、Z軸に関して(従って、整合軸55に関して)角度αを形成する注入方向に沿って実施される。詳細に説明すると、図4(B)は一つの注入方向のみを示すにすぎないが、第1注入70は、Z軸に関して互いに対称的であり且つZ軸に関して夫々の角度+α及び-αを形成する夫々の注入方向を有する夫々の注入で互いに相次ぐ2つのステップで実施され、即ち、第1注入70は2つの象限(クワドラント)において実施される。より詳細には、角度αは0とは異なるものであり、且つ、より詳細には、それは、絶対値において、0°よりも大きく且つ約20°以下である。
【0030】
1例示的実施例において、第1注入70のステップはP型ドーパント種の一つ又はそれ以上の注入を有しており、注入エネルギが約200keVと約500keVとの間であって且つドーズが約1×1012原子数/cmと約1×1016原子数/cmとの間であって、約1×1018原子数/cmよりも一層高いドーパント濃度を有する注入領域59’の第2部分63”を形成する。従って、第2部分63”は、半導体ボディ68の上部表面52aから測定して0.4μmと1μmとの間の深さを有するように形成される。図4(C)は第1注入70の終わりにおける第1ウエハ80を示しており、注入領域59’の第2部分63”が形成されている。
【0031】
図4(D)を参照すると、次いで、第1ハードマスク71を使用して、ドーパント種(詳細には、第1注入70と同じ)の第2注入のステップを実施する(該第2注入は図中に矢印72で示してある)。注入領域59’の第1部分63’が第2注入72を介して形成される。図4(D)のステップ期間中に、保護リング60が存在する場合にはそれも形成される。
【0032】
1例示的実施例において、第2注入72は半導体ボディ68の上部表面52aに対して直交的(即ち、Z軸に対して実質的平行)に実施され、且つP型ドーパント種の一つ又はそれ以上の注入を有しており、注入エネルギは約30keVと約200keVとの間であってドーズが約1×1012原子数/cmと約1×1016原子数/cmとの間であって約1×1018原子数/cmよりも一層高いドーパント濃度を有する注入領域59’の第1部分63’を形成する。従って、半導体ボディ68の上部表面52aから測定して最大で約0.6μmまでの深さを有する第1部分63’が形成される。
【0033】
第1ハードマスク71は第1注入70と第2注入72との両方に共通であり第1注入70は傾斜されており且つ第2注入72は傾斜されていないので、第1及び第2部分63’及び63”は、既知の三角法考慮に起因して、X軸に沿っての互いに異なる幅を有することとなり、特に、第1最大幅dは第2最大幅dよりも一層小さい。
【0034】
不図示の相次ぐステップにおいて、第1ハードマスク71を除去し、且つ半導体ボディ68の上部表面52aにおいて熱アニーリングステップを実施して図4(B)及び(D)のステップで注入したドーパント種を活性化させる。この熱アニーリングは、例えば、1500℃よりも一層高い温度(例えば、1700℃と1900℃との間)で実施される。
【0035】
それ自身知られた技術に従って、次いで、オーミックコンタクト59”及び存在する場合には絶縁層61を形成する。絶縁層61は少なくとも部分的に保護リング60に重畳され、且つ該保護リング60はJBS装置50の活性区域54を画定する。
【0036】
次いで、基板53の表面53bからのオーミックコンタクト層56、オーミックコンタクト層56からのカソードメタリゼーション57、及び半導体ボディ68の上部表面52a上のアノードメタリゼーション58を互いに相次いで形成される。例えば、アノードメタリゼーション58がドリフト層52及びJB要素59とコンタクトするような態様で半導体ボディ68の上部表面52a上にTi/AlSiCu又はNi/AlSiCuを付着させる。
【0037】
次いで、アノードメタリゼーション58上及び絶縁層61上にパッシベーション層69を形成し、図2に示したJBS装置50を得る。
【0038】
図5(A)-(D)を参照して、図4(A)-(D)を参照して説明したものとは異なる製造プロセスの1実施例に基づくJBS装置50の製造ステップについて以下に説明する。
【0039】
図5(A)を参照すると、SiCからなる半導体ボディ68を有する第1ウエハ80を前述した如くに用意する。
【0040】
例えば、フォトレジスト、又はTEOS、又はその目的のために適切な別の物質を付着させることによって半導体ボディ68の上部表面52a上に第2ハードマスク81を形成する。第2ハードマスク81は、0.5μmと2μmとの間の厚さ、又は、いずれにおいても、それが図5(B)を参照して後述する注入を遮蔽するような厚さ、を有している。XY面上の平面図において、第2ハードマスク81は、ショットキーダイオード62を形成する半導体ボディ68の上部表面52aの第3領域81’を被覆し、且つ注入領域59’とショットキーダイオード62の一部を形成する半導体ボディ68の上部表面52aの第3領域81’に隣接した第4領域81”を露出させたままとさせる。特に、各第4領域81”は、例えば、半導体ボディ68の上部表面52aにおいてX軸に沿って測定した夫々の第1幅Lを有している。
【0041】
図5(B)を参照すると、次いで、第2ハードマスク81を使用して、ドーパント種の第1注入70のステップが実施される。注入領域59’の第2部分63”が第1注入70を介して形成される。本実施例においては、第1注入70は半導体ボディ68の上部表面52aに対して直交して実施され、従って前述した如くに傾斜されたものではない。第1注入70の終わりにおいて、第2ハードマスク81を除去する。
【0042】
図5(C)を参照すると、例えばフォトレジスト、又はTEOS、又はその目的のために適切なその他の物質を付着させることによって、半導体ボディ68の上部表面52a上に第3ハードマスク83を形成する。第3ハードマスク83は0.5μmと2μmとの間の厚さ、又は、いずれにおいても、図5(D)を参照して後述する注入を遮蔽するような厚さ、を有している。XY面上の平面図において、第3ハードマスク83は、ショットキーダイオード62を形成する半導体ボディ68の上部表面52aの第5領域83’を被覆し、且つ注入領域59’を形成する半導体ボディ68の上部表面52aの第5領域83’に隣接した第6領域83”を露出されたままとさせる。特に、第3ハードマスク83は前述した第1ハードマスク71と同じであり、従って、第5及び第6領域83’及び83”は、第1及び第2領域71’及び71”と一致する。より詳細に説明すると、各第6領域83”は、例えば、半導体ボディ68の上部表面52aにおいてX軸に沿って測定した夫々の第2幅Lを有している。第2幅Lは第1幅Lよりも一層小さい。
【0043】
図5(D)を参照すると、次いで、第3ハードマスク83を使用して、ドーパント種の第2注入72のステップを実施する。図4(D)を参照して説明したことと同様に、注入領域59’の第1部分63’が第2注入72を介して形成される。
【0044】
第2及び第3ハードマスク81及び83は互いに異なるので(詳細には、L<Lなので)、第1及び第2部分63’及び63”は互いに異なるX軸に沿っての幅を有しており、特に、第1最大幅dは第2最大幅dよりも一層小さい。
【0045】
前述したことと同様に、次いで更なる不図示のステップが続いて行われて図2のJBS装置50となる。
【0046】
図6(A)-(E)を参照して、図4(A)-5(D)を参照して説明したものと異なる製造プロセスの1実施例にもとづいてJBS装置50の製造ステップについて以下に説明する。
【0047】
図6(A)を参照すると、基板53とドリフト層52の少なくとも一部とを有しており且つZ軸に沿って互いに反対側である上部表面90aと底部表面90bとを有しておりSiCからなる第2ウエハ90が用意される。前述したように、第2ウエハ90の上部表面90a上に第2ハードマスク81を形成する。
【0048】
図6(B)を参照すると、第2ハードマスク81を使用して、ドーパント種の第3注入(詳細には、第1注入70と同じ)のステップを実施する。第3注入94を介して、注入領域59’の第2部分63”を形成する。第3注入94の終わりにおいて、第2ハードマスク81を除去する。
【0049】
1例示的実施例において、第3注入94は、第2ウエハ90の上部表面90aに対して直交して(即ち、Z軸と実質的に平行に)実施され、且つP型ドーパント種の一つ又はそれ以上の注入を包含しており、注入エネルギが約30keVと約200keVとの間であって且つドーズが約1×1012原子数/cmと約1×1016原子数/cmとのあいだであって、約1×1018原子数/cmよりも一層高いドーパント濃度で注入領域59’の第2部分63”を形成する。従って、第2部分63”は、第2ウエハ90の上部表面90aから測定された最大約0.6μmの深さを有して形成される。
【0050】
図6(C)を参照すると、第2ウエハ90の上部表面90a上に、例えばエピタキシャル成長を介して、SiCのエピタキシャル層95を形成する。エピタキシャル層95は、第2層90と共に、半導体ボディ68を形成し、その結果、半導体ボディ68の上部表面52a(それは、エピタキシャル層95に関して第2ウエハ90の上部表面90aの反対側)を画定する。詳細には、エピタキシャル層95は、ドリフト層52の一部とするか又は、ドリフト層52及び基板53と共に、半導体ボディ68を形成するためにドリフト層52上に配置させることが可能である。例えば、エピタキシャル層95は、ドリフト層52のものと等しいか又はそれより一層大きなN型ドーパント濃度(例えば、約5×1015原子数/cmと約5×1016原子数/cmとの間)を有しており且つ表面53aと53bとの間のZ軸に沿って測定した約0.5μmと約2μmとの間で特に約1μmに等しい厚さを有している。
【0051】
図6(D)を参照すると、前述した如く、半導体ボディ68の上部表面52a上(即ち、エピタキシャル層95上)に第3ハードマスク83を形成する。その結果、各第6領域83”は、各第5領域83’の第1幅Lよりも一層小さな夫々の第2幅Lを有している。
【0052】
図6(E)を参照すると、第3ハードマスク83を使用して、第2注入72と同様の第4注入96のステップを実施する。図4(D)を参照して既に説明したように、注入領域59’の第1部分63’が第4注入96を介して形成される。第2及び第3ハードマスク81及び83は互いに異なるものであるから(詳細には、L<Lであるから)、第1及び第2部分63’及び63”は互いに異なるX軸に沿っての幅を有しており、特に、第1最大幅dは第2最大幅dよりも一層小さい。前述したことと同様に、更なる不図示のステップが続いて行われて図2のJBS装置50となる。
【0053】
本発明に基づいて構成された本発明の特徴を吟味すれば、それにより得られる利点は明らかである。特に、JBS装置50は、順方向導通状態における性能に著しい影響を与えること無しに、逆導通状態におけるリーク電流を減少させることが可能であることが検証されている。何故ならば、リーク電流の量は、既知のタイプのJBS装置の場合に関してのショットキーダイオード62の面積に対する関連性はより少ないからである。実際に、第2最大幅dは第1最大幅dよりも一層大きいので、注入領域59’を過剰に互いに近く移動させる(即ち、第1最小距離dを過剰に減少させる)ことの必要性無しに、従ってショットキーダイオード62の面積を減少させ且つその結果順方向導通状態における電流の流れを減少させることの必要性無しに、ピンチオフ効果が増加する(第2部分63”に起因して)。より詳細に説明すると、互いに近い注入領域59’の間の距離が同一であるとして、同じ効果で半導体ボディ68の上部表面52aにおける電界を制限するために、JBS装置50は既知のタイプのJBS装置に対して必要とされるものと比較して一層低いピンチオフで十分である。
【0054】
更に、半導体ボディ68の上部表面52aから或る距離においてピンチオフを実施することは半導体ボディ68の上部表面52aにおける電界をより一層効果的に減少させることを可能とする。何故ならば、2つの物体の間の距離が増加するに従い該2つの物体の間の電界が減少することは既知であるからである。その結果、逆導通状態におけるリーク電流はより一層顕著に減少する。換言すると、第1及び第2部分63’及び63”の合体したピンチオフ効果は、JBS装置50のリーク電流を効果的に減少させることを可能とし、特にJBS装置50の高動作温度においてそうである。
【0055】
更に、前述した製造プロセスは、簡単且つ経済的な態様で、JBS装置50を製造することを可能としている。特に、図4(A)-(D)を参照して説明した製造プロセスの実施例は、単一のハードマスクを使用することを可能としており、一方、図6(A)―(E)を参照して説明した製造プロセスの実施例は低エネルギにおける注入ステップのみを使用することを可能としている。更に、エピタキシャル層95がドリフト層52のものよりも一層高いドーパント濃度を有している場合には、順方向導通状態におけるJBS装置50のスレッシュホールド電圧Vは更に減少される。
【0056】
最後に、特許請求の範囲に定義される本発明の範囲を逸脱すること無しに、本書に記載し且つ例示した本発明に対して種々の修正及び変形を行うことが可能であることは勿論である。特に、電気的/電子的機器は複数個のJBS装置50を包含することが可能である。JBS装置50は、アレイ又はマトリックスを形成するために互いに交互にXY面内に配置させた夫々のショットキーダイオード62及びJB要素59を画定する複数個の注入領域59’を有することが可能である。更に、注入領域59’は、最大幅dとdとの間の相互関係(d<d)が有効である限り、前述したものと比較して異なる形状を有することが可能である。例えば、各第2部分63”は実質的に多角形(例えば、正方形又は台形)の形状を有することが可能であり、且つ各第1部分63’は実質的に円形状、又は楕円形状、又は台形状の形状を有することが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6