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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119213
(43)【公開日】2022-08-16
(54)【発明の名称】磁性物質および磁性微粒子
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/34 20060101AFI20220808BHJP
   H01F 1/11 20060101ALI20220808BHJP
   H01F 1/10 20060101ALI20220808BHJP
   H01F 1/36 20060101ALI20220808BHJP
   C01B 33/12 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
H01F1/34 120
H01F1/11
H01F1/10
H01F1/36
C01B33/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015235
(22)【出願日】2022-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2021054306
(32)【優先日】2021-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】522022465
【氏名又は名称】いちごSi株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092864
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100098154
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100226713
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】北澤 由紀
(72)【発明者】
【氏名】姉石 純
【テーマコード(参考)】
4G072
5E040
5E041
【Fターム(参考)】
4G072AA38
4G072BB05
4G072DD02
4G072DD03
4G072GG02
4G072HH39
4G072HH40
4G072MM36
4G072UU30
5E040AB03
5E040AB09
5E040AC05
5E040BC01
5E040CA05
5E040HB15
5E040NN01
5E040NN02
5E041AB12
5E041AB19
5E041AC05
5E041BC01
5E041HB15
5E041NN01
5E041NN02
(57)【要約】
【課題】鉱物資源に依存せずに自然界に由来する原料から磁性物質を提供する。
【解決手段】植物性バイオマスの焼却残渣からなり、二酸化ケイ素を主成分とし、金属元素を含有する磁性物質であって、前記金属元素の含有量が5~19質量%である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物性バイオマスの焼却残渣からなり、
二酸化ケイ素を主成分とし、金属元素を含有する磁性物質であって、
前記金属元素の含有量が5~19質量%であることを特徴とする磁性物質。
【請求項2】
植物性バイオマスの焼却残渣からなり、
二酸化ケイ素を主成分とし、金属元素を含有する磁性物質であって、
前記金属元素として3~49質量%の鉄を含有することを特徴とする磁性物質。
【請求項3】
植物性バイオマスの焼却残渣からなり、
二酸化ケイ素を主成分とし、金属元素を含有する磁性物質であって、
磁石に近接させた際に一方の磁極にのみ吸着することを特徴とする磁性物質。
【請求項4】
前記金属元素として、カリウムおよびマンガンを含有することを特徴とする請求項1,2または3記載の磁性物質。
【請求項5】
前記磁性物質を構成する構造体の表面および内部に前記金属元素が分散していることを特徴とする請求項1,2,3または4記載の磁性物質。
【請求項6】
前記金属元素の一部または全部が金属酸化物として含有されていることを特徴とする請求項1,2,3,4または5記載の磁性物質。
【請求項7】
前記磁性物質が磁性微粒子であることを特徴とする請求項1,2,3,4,5または6記載の磁性微粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物性バイオマスの焼却残渣からなる磁性物質および磁性微粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
磁性微粒子は、従来から、磁気テープ等の磁気記録用途や電子複写機のトナー用途等に幅広く利用されてきた。近年では、ライフサイエンス分野における診断や治療用途、工業分野における塗装、分離、画像形成用途等、さらに種々の用途に使用されている。
【0003】
従来の磁性微粒子としては、例えば特開2010-1555号公報(特許文献1)が知られており、この特許文献1に記載された磁性微粒子は、平均粒径6nmのFePtコア部の周りに約10nmの厚みでSiO2シェルが被覆された構成のものである。
【0004】
磁性微粒子の新たな製造方法に関する先行技術も近年多数開示されている。代表的なものとして、例えば、特開2011-236086号公報(特許文献2)や特開2016-32052号公報(特許文献3)を挙げることができる。
【0005】
近年、環境問題が叫ばれる中、自然界に由来する原料から種々の機能性材料を創出しようとする試みが行われてきているが、上述した従来発明の磁性微粒子や、その他従来周知の磁性微粒子について、その原料については当然に鉱物資源に依るものと考えられており、鉱物以外の自然界に由来する原料を用いるという考えは存在しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-1555号公報
【特許文献2】特開2011-236086号公報
【特許文献3】特開2016-32052号公報
【特許文献4】特許第6728516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、鉱物資源に依存せずに自然界に由来する原料から磁性微粒子を含む磁性物質を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、自然界に由来する原料として、毎年大量に生産される植物性バイオマスの有効利用方法について、従来から検討を積み重ねてきた。籾殻等の植物性バイオマスを高温で長時間自己燃焼させると、有機系可燃物はほぼすべて焼却されて、焼却残渣が残る。本発明者らは、この焼却残渣の有効利用方法に着目した。
【0009】
植物性バイオマスの焼却残渣は、二酸化ケイ素を主成分とするものが多い。また、二酸化ケイ素以外の成分として、炭素元素や金属元素等を含有している。
【0010】
本発明者らは、植物性バイオマスの焼却残渣の微粒子の特性として発熱性を有することを見出して以前特許出願を行った(特許第6728516号公報,特許文献4)。この特許文献4に示した発熱性微粒子は、二酸化ケイ素を主成分とし、炭素元素と金属元素を含有する発熱性微粒子であって、炭素元素の含有量が3~28質量%であり、金属元素の含有量が1~7質量%であり、マイクロ波を照射することによって発熱することを特徴とする発熱性微粒子である。
【0011】
この発熱性微粒子による発熱現象は、炭素元素と金属元素等の少量成分がマイクロ波の照射によって誘導加熱や誘電加熱等を引き起こすためと推測されており、金属元素としては、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、アルミニウム、ナトリウム、マンガン、亜鉛、クロム、チタン、ニッケル等が挙げられている。
【0012】
本発明者らは、製造条件を変化させつつ更に植物性バイオマスの焼却残渣の微粒子の特性を種々検討するうちに、驚くべきことに、植物性バイオマスの焼却残渣の微粒子のうち特定のものは磁性を示すことを見出した。本発明はこのような発見に基づいてなされたものである。すなわち、本発明は以下のような構成を有している。
【0013】
本発明は、植物性バイオマスの焼却残渣からなり、二酸化ケイ素を主成分とし、金属元素を含有する磁性物質であって、前記金属元素の含有量が5~19質量%であることを特徴とする磁性物質である。
【0014】
あるいは、本発明は、植物性バイオマスの焼却残渣からなり、二酸化ケイ素を主成分とし、金属元素を含有する磁性物質であって、前記金属元素として3~49質量%の鉄を含有することを特徴とする磁性物質である。
【0015】
あるいは、本発明は、植物性バイオマスの焼却残渣からなり、二酸化ケイ素を主成分とし、金属元素を含有する磁性物質であって、磁石に近接させた際に一方の磁極にのみ吸着することを特徴とする磁性物質である。
【0016】
また、本発明は、前記金属元素としてカリウムおよびマンガンを含有することを特徴とする。
【0017】
更に、前記磁性物質を構成する構造体の表面および内部に前記金属元素が分散していることを特徴とする。
【0018】
また、前記金属元素の一部または全部が金属酸化物として含有されていることを特徴とする。
【0019】
更に、前記磁性物質が磁性微粒子である場合、表面積が大きく、取り扱い性にも優れる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の磁性物質によれば、自然界に由来する原料のうち、鉱物資源に頼らない持続可能な資源である植物性バイオマスを原料としたことで廃棄物問題と資源問題とを同時に解決可能とした磁性材料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】シリカ系微粒子の初磁化曲線(M-H曲線)。
図2】シリカ系微粒子の初磁化曲線(σ-H曲線)。
図3】シリカ系微粒子のヒステリシス曲線(M-H曲線)。
図4】シリカ系微粒子のヒステリシス曲線(σ-H曲線)。
図5】製造条件を変えて製造した種々のシリカ系微粒子の成分測定結果。
図6】エネルギー分散型X線分光法によってシリカ系微粒子(実施例1)を解析した写真。
図7】シリカ系微粒子(実施例3)およびシリカ系粒体の永久磁石への吸着を確認する実験結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体的に説明する。本発明の磁性物質は、微粒子状、粉末状、粒状、顆粒状、固体状など、あらゆる大きさ・形状・性状のものを含むが、以下に微粒子状(磁性微粒子)としての実施の形態を説明する。これらの実施形態は一例であり、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。
【0023】
本実施形態の磁性微粒子は、植物性バイオマスの焼却残渣からなり、二酸化ケイ素を主成分とし、金属元素を含有している。以下、磁性微粒子の内容について説明する。
【0024】
(植物性バイオマス)
本実施形態の植物性バイオマスは、ケイ素を含有するものである。具体的には、穎果(籾)、籾殻、稲わら、麦わら、木材、樹皮、竹、バガス、ヤシ殻等が挙げられる。これらの中でも、取扱いや入手のし易さ等の観点からイネに関連する材料(穎果(籾)、籾殻、稲わらなど)が好ましく、特に籾殻が好ましい。以下では、代表的な植物性バイオマスである籾殻を例にとって説明を進める。
【0025】
籾殻は、その約70~90質量%がセルロースを主体とする有機成分であり、残りの約10~30質量%が無機成分である。その無機成分は主として二酸化ケイ素(シリカ)であり、微量のミネラル成分を含有している。二酸化ケイ素は、種々の用途に展開できる可能性を有しているため、籾殻を空気中で燃焼させて、有機系可燃物をほぼ完全に除去することを試みた。
【0026】
(連続式焼却炉)
籾殻を大量に連続的に燃焼させるため、連続式燃焼炉を製作した。この連続式燃焼炉は、植物性バイオマスを大気圧下の空気中で自己燃焼させて、焼却残渣を連続的に製造する燃焼炉である。植物性バイオマスを貯蔵する貯蔵タンクと、植物性バイオマスを空気によって搬送するための搬送用配管と、搬送用配管内に空気を送り込むためのブロアと、植物性バイオマスを自己燃焼させるための燃焼炉と、焼却残渣を集積するための集積タンクと、燃焼後の排ガス中に存在する焼却残渣を集積するための集塵機と、燃焼後の排ガスを排出するための排出装置とを備えている。
【0027】
籾殻を空気とともに連続式燃焼炉に連続して投入すると、燃焼開始時には外部からの着火源を必要とするが、着火後は自己燃焼によって、空気中で、継続的で定常的な燃焼を開始した。籾殻および空気の投入スピードを適宜調整することによって、燃焼温度は1000~1900℃の範囲となった。
【0028】
(焼却残渣)
連続式燃焼炉を用いて籾殻を燃焼させることにより、焼却残渣を得た。得られた焼却残渣は、二酸化ケイ素を主成分とする構造体に金属元素等を含有する微粒子であった。ここで、二酸化ケイ素を主成分とするとは、微粒子に対する二酸化ケイ素の含有量が50質量%を超えることを意味する。二酸化ケイ素の含有量は、籾殻の原料の稲の産地や品種等によって異なるが、実質的には、60~96質量%の範囲である。以下、当該籾殻の焼却残渣の微粒子をシリカ系微粒子と記載することとする。
【0029】
本発明者らは、このシリカ系微粒子が磁性を有することを見出した。すなわち、ガラス瓶の中に入れたシリカ系微粒子に永久磁石を近付けると、永久磁石の近傍にびっしりとシリカ系微粒子が吸着した。そして、永久磁石を遠ざけると、シリカ系微粒子はばらばらの元の状態に戻った。
【0030】
シリカ系微粒子がこのような特異な現象を示すのは、シリカ系微粒子が含有する微量成分に起因するものと推定された。そこで、製造条件を変えて製造した種々のシリカ系微粒子の微量成分の定性分析と定量分析を行った。金属元素類の分析装置として、波長分散型蛍光X線分析装置(リガク社製、ZsX PrimusIV)を用いた。
【0031】
その結果、二酸化ケイ素の含有量58~92質量%、金属の含有量5~19質量%、炭素の含有量1~9質量%、その他の元素の含有量2~14質量%であった。磁性のレベルから、より好ましくは、二酸化ケイ素の含有量70~85質量%、金属の含有量12~19質量%、炭素の含有量1~6質量%、その他の元素の含有量2~5質量%である。
【0032】
ここで、金属元素とは、鉄、クロム、ニッケル、カリウム、マンガン、カルシウム、モリブデン、マグネシウム、銅、アルミニウム、亜鉛、等である。
【0033】
上記金属元素のうち、磁性を発揮する金属元素として鉄、クロム、ニッケルが挙げられるが、これらのうち、シリカ系微粒子100質量%に対して、鉄は、3~12質量%が好ましく、5~11質量%がより好ましい。また、クロムは1~4質量%が好ましく、ニッケルは0.5~1.5質量%が好ましい。
【0034】
次に、本発明者らは、前記シリカ系微粒子のサンプルを用いて磁性的特性についての分析を行った。
磁性的特性の分析には、理研電子(株)製振動試料型磁力計(VSM)BHV-5型を用いた。シリカ系微粒子を測定容器に充填したものを測定に供した。
測定速度:5分/1ループ、印加磁場:±15kOe、測定温度:室温。
評価項目:初磁化曲線、ヒステリシス曲線(M-H曲線、σ-H曲線)
ここで、H[Oe]は外部印加磁場であり、M[emu]は全磁気モーメントであり、σ[emu/g]は質量磁化である。
【0035】
図1は、シリカ系微粒子の初磁化曲線(M-H曲線)であり、図2は、シリカ系微粒子の初磁化曲線(σ-H曲線)である。また、図3は、シリカ系微粒子のヒステリシス曲線(M-H曲線)であり、図4は、シリカ系微粒子のヒステリシス曲線(σ-H曲線)である。初磁化曲線の始点がM=0(σ=0)より正側になっているのは、測定試料を設置した際に、装置磁極の残留磁化によって試料が磁化したことによる。
【0036】
これらの測定結果から、最大質量磁化σmが14.06[emu/g]であり、σ-H曲線における残留質量磁化σrが1.87[emu/g]であり、保磁力Hcが138.25[Oe]であることが判明した。これらの値は、ヒステリシス曲線における正側と負側の平均値を採用し、Hcはグラフより読み取った値より算出した。
【0037】
最大質量磁化σmが14.06[emu/g]であるが、金属元素の含有量が少ないことを考慮すれば、磁性材料としては比較的高い数値であると解される。また、保磁力Hcが約140[Oe]であることから、シリカ系微粒子は、軟質磁性体と硬質磁性体の中間的な位置付けの磁性体と解することができる。
【0038】
以上のことから、シリカ系微粒子は、磁性微粒子であり、磁性的特性において特徴を有するものであることが分かった。
【0039】
図5は、製造条件を変えて製造した種々のシリカ系微粒子の成分測定結果を表にまとめたものであり、磁性を有するシリカ系微粒子を実施例1,実施例2,実施例3とし、磁性を有しなかったシリカ系微粒子を比較例1,比較例2とした。いずれのシリカ系微粒子も、籾殻を原料として、前記連続式燃焼炉を用いて製造したものである。温度の項目は、燃焼時の温度を示すものである。
【0040】
その結果、磁性を有するシリカ系微粒子である実施例1,実施例2,実施例3は、二酸化ケイ素を構成する酸素の含有量35~54質量%、珪素の含有量18~35質量%、炭素の含有量2~9質量%、金属元素の含有量8~41質量%、その他の元素の含有量0~2質量%であった。
【0041】
反面、磁性を有しないシリカ系微粒子である比較例1,比較例2は、二酸化ケイ素を構成する酸素の含有量48~57質量%、珪素の含有量30~41質量%、炭素の含有量0~18質量%、金属元素の含有量2~3質量%、その他の元素の含有量0~2質量%であった。
【0042】
ここで、金属元素とは、鉄、クロム、ニッケル、カリウム、マンガン、カルシウム、モリブデン、マグネシウム、銅、アルミニウム、亜鉛、等である。
【0043】
上記金属元素のうち、磁性を発揮する金属元素として鉄、クロム、ニッケルが挙げられるが、これらのうち、シリカ系微粒子100質量%に対して、鉄は、3~49質量%が好ましく、4~29質量%がより好ましく、更に5~11質量%が好ましい。また、クロムは1~4質量%が好ましく、ニッケルは0.5~1.5質量%が好ましい。
【0044】
鉄とニッケルは強磁性体であり、クロムは常磁性体である。また、これらの金属は、シリカ系微粒子中において一部または全部が金属酸化物として存在していると推定される。これらの金属または金属酸化物の存在が、上記のシリカ系微粒子の磁性的挙動に関係しているものと推定される。
【0045】
本実施の形態における実施例1,実施例2,実施例3のいずれのシリカ系微粒子においても、カリウムおよびマンガンが含まれていることが分かり、これは本発明の特徴の一つであると考えられる。
【0046】
前記各シリカ系微粒子は、平均粒径が10~300μm程度であったが、シリカ系微粒子の粒径は上記範囲に限定されない。シリカ系微粒子の形状は特に限定されない。また、二酸化ケイ素は非晶質であっても結晶質であってもよく、限定されない。
【0047】
図6は、エネルギー分散型X線分光法によってシリカ系微粒子(実施例1)を解析した写真であり、この図に示すように、炭素元素や金属元素が二酸化ケイ素を主成分とする構造体の表面および内部に適度に分散されて存在していることが分かる。
【0048】
また、本発明者らは、微粒子状のシリカ系微粒子(実施例3)と、粒状のシリカ系粒体のサンプルを用いて永久磁石への吸着を確認する実験を行った。前記シリカ系粒体の含有成分は、前記磁性を有するシリカ系微粒子の含有成分の範囲内である。
【0049】
図7はシリカ系微粒子(実施例3)および粒状の前記シリカ系粒体の試料と、比較例である砂鉄および籾殻の試料とを用意して、C字型のネオジム磁石に接触させる実験結果を示す写真である。なお、このネオジム磁石は、内側がN極、外側がS極である径方向磁化がされている。
【0050】
前記図7に示すように、磁性を有するシリカ系微粒子(実施例3),前記シリカ系粒体および砂鉄は、磁性を有しない物体である籾殻と比較してネオジム磁石に吸着していることが明らかである。なお、籾殻がネオジム磁石にごく微量吸着しているように見えるのは、糠や微細紛が静電気や粘着性成分によって付着しているためと推測される。
【0051】
ここでシリカ系微粒子(実施例3)および前記シリカ系粒体と砂鉄の実験後の写真を比較すると、砂鉄はネオジム磁石の全面、すなわちネオジム磁石のN極およびS極の両方に吸着しているが、シリカ系微粒子(実施例3)および前記シリカ系粒体はネオジム磁石の外側、すなわちネオジム磁石のS極にしか吸着していない様子が観察できる。
【0052】
これは、本実験に用いたネオジム磁石におけるより強い磁界である外側のS極側にのみシリカ系微粒子(実施例3)および前記シリカ系粒体が吸着したものであると推測され、この磁性的挙動においても特徴を有するものであると考えられる。
【0053】
(産業上の利用可能性)
本発明である磁性物質は、自然界に由来する原料のうち、鉱物資源に頼らない持続可能な資源である植物性バイオマスを原料としたことで廃棄物問題と資源問題とを同時に解決可能としたものであって、その構造としては、二酸化ケイ素を主成分とし、金属元素を含有するものであり、化学的に安定であり、耐熱性にも優れている。また、微粒子形態とした場合、表面積が大きく、取り扱い性にも優れている。そのため、化学工業分野における各種工業用途に適性を有している。更に、磁石に近接させた際に一方の磁極のみに吸着するという特異な磁性的挙動を示し、この特性も各種工業用途などの産業上の利用可能性を有する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7