IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ モンテフィブレ マエ テクノロジーズ エス.アール.エル.の特許一覧

特開2022-119216アクリル繊維の製造のための統合及び改善されたプロセス
<>
  • 特開-アクリル繊維の製造のための統合及び改善されたプロセス 図1
  • 特開-アクリル繊維の製造のための統合及び改善されたプロセス 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119216
(43)【公開日】2022-08-16
(54)【発明の名称】アクリル繊維の製造のための統合及び改善されたプロセス
(51)【国際特許分類】
   D01F 6/18 20060101AFI20220808BHJP
   C08F 220/42 20060101ALI20220808BHJP
   C08F 4/40 20060101ALI20220808BHJP
   C08F 2/18 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
D01F6/18 E
C08F220/42
C08F4/40
C08F2/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015770
(22)【出願日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】102021000002324
(32)【優先日】2021-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】518090672
【氏名又は名称】モンテフィブレ マエ テクノロジーズ エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フランコ フランカランチ
(72)【発明者】
【氏名】ルカ ベラルディ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィットーリア ブローニ
【テーマコード(参考)】
4J011
4J015
4J100
4L035
【Fターム(参考)】
4J011AA05
4J011JB08
4J011JB11
4J011JB12
4J011JB14
4J011JB26
4J015CA02
4J100AB07Q
4J100AG04Q
4J100AJ02Q
4J100AJ08Q
4J100AL03Q
4J100AM02P
4J100AM15Q
4J100BA56Q
4J100CA04
4J100DA01
4J100JA11
4L035AA04
4L035AA06
4L035BB03
4L035BB04
4L035BB07
4L035BB15
4L035FF01
4L035GG02
4L035GG04
4L035HH01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】アクリル繊維の製造のための統合及び改善されたプロセスを提供する。
【解決手段】本発明は、アクリロニトリルから開始するポリマー、又は主にアクリロニトリル(ポリマーの総重量に対して90重量%~99重量%)とポリマーの総重量に対して通常1重量%~10重量%の量の1種類又は複数種類のその他のコモノマーとから構成されるコポリマーの調製を提供する、アクリル繊維の製造のためのプロセスである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)水性懸濁液中でコモノマーを、前記水性懸濁液の総重量に対して3重量%~25重量%、好ましくは5重量%~10重量%の量の溶媒の存在下で重合するステップであって、ここで、前記溶媒は、以下のステップii)~vi)において使用される溶媒と同じ溶媒であり、前記水性懸濁液を構成する水は、紡糸ステップの最後の洗浄ステップからの再利用水を、前記水性懸濁液の水の総重量に対して10重量%~40重量%、好ましくは20重量%~30重量%の量で含み、重合反応は、触媒量の硫酸鉄の存在下で酸化還元過硫酸アンモニウム/重亜硫酸アンモニウムのペアにより触媒され、続いて、未反応のモノマーの除去、前記水性懸濁液の濾過及び洗浄により、ポリマーと痕跡量の溶媒を含む水とを40/60~60/40の重量比で含む濾過ケーキを得る、前記ステップ、
ii)ステップi)で得られた第一の濾過ケーキを、前記ケーキの重量の2倍~10倍の重量比の溶媒/水混合液中又は純溶媒中で、好ましくは7℃以下の温度で5分間~15分間、撹拌下で、分散するステップ、
iii)ポリマー分散物の固体相/液体相を濾過又は遠心分離により分離し、ポリマー、及び溶媒と水の重量比が60/40~85/15である溶媒/水混合液を含む第二のケーキを得るステップ、
iv)ステップiii)で得られた前記第二のケーキを、前記ケーキ中のポリマーの重量の2倍~10倍の重量比のステップii)と同じ溶媒又は水/溶媒混合液中で、室温又は室温より低い温度で5分間~20分間再分散して、溶媒/ポリマーの重量比が90/10~70/30である均質な分散物又は「スラリー」を得るステップ、
v)ステップiv)で得られた前記均質な分散物又はスラリーを、好ましくは前記スラリーを熱交換器を通過させることにより、前記ポリマーが完全に溶解するまで加熱して均質な紡糸溶液を得るステップ、
vi)ステップv)の最後に得られた前記均質な紡糸溶液を前記紡糸ステップに供給するステップ
を含む、アクリル繊維の製造のための統合及び改善されたプロセス。
【請求項2】
前記紡糸ステップが、湿式紡糸プロセス又は乾式ジェット湿式紡糸プロセスにより行われ、ここで、水と溶媒の混合液から構成される凝固浴槽中での凝固ステップの後、得られたフィラメントの束は、初期長の約8倍~12倍の長さまで、好ましくは9倍~10倍の長さまで伸張され、続いて洗浄され、次いで、水による最終洗浄段階に供されて残存する痕跡量の溶媒が除去され、洗浄水は0.5重量%未満の量の溶媒を含み、次いで、ステップi)の再利用水として再び供給される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
重合ステップi)は、例えばナトリウム塩又はアンモニウム塩の形態のEDTAなどの鉄封鎖剤の添加により終了され、続いて、前記水性懸濁液は、未反応モノマーの除去、前記水性懸濁液の濾過及びその洗浄のステップに供され、ポリマーと痕跡量の溶媒を含む水とを、45/55~55/45の重量比で、好ましくは1:1以上の重量比で含む濾過ケーキを得る、請求項1~2のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項4】
ステップi)~vi)及び前記紡糸ステップにおいて、前記溶媒は同じであり、好ましくは、前記溶媒はジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、又はジメチルスルホキシド(DMSO)から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
ステップii)において、前記温度が0℃未満である、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
ステップii)の溶媒/水混合液中の水の量が、前記混合液の総重量に対して0重量%~20重量%の範囲で変動する、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
ステップiv)において、前記温度が7℃である、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
均質な紡糸可能なポリマー溶液が、前記紡糸溶液の総重量に対して12重量%~22重量%のポリマー含有量をである、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
ステップiii)及びステップiv)において、水溶性添加剤が添加され、前記水溶性添加剤は、好ましくはアンモニア、第1級アミン、第2級アミン、第4級アンモニウム塩、前記ポリマーのイオン性末端基を塩化可能な銅又は銀などの金属イオンの塩、又は前記ポリマー溶液のレオロジーを改善するための水溶性ポリマーなどから選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記ポリマーが高分子量ポリマーであり、高分子量が80,000Da~200,000Daであるか、又は前記ポリマーが中分子量ポリマーであり、中分子量が40,000Da~55,000Daである、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
アクリロニトリルコポリマーが、前記コポリマーの総重量に対して90重量%~99重量%の量のアクリロニトリルと、前記コポリマーの総重量に対して1重量%~10重量%の量の1種類又は複数種類のコモノマーと、からなる請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記コモノマーが、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ビニルアセテート、アクリルアミドなどの中性ビニル化合物、アクリル酸、イタコン酸、スルホン化スチレン、などの1又は複数の酸性基を有する化合物、例えばビニルピリジンなど、前記ポリマーに種々の化学的物理的特徴を付与可能な化合物から選択される、請求項10に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル繊維の製造のための統合及び改善されたプロセス、具体的には、コモノマーから開始され、紡糸ステップに至り、最終的な繊維が得られるプロセスに関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、アクリロニトリルから開始するポリマー、又は主にアクリロニトリル(ポリマーの総重量に対して90重量%~99重量%)とポリマーの総重量に対して通常1重量%~10重量%の量の1種類又は複数種類のその他のコモノマーとから構成されるコポリマーの調製を提供する、アクリル繊維の製造に関する分野の範囲内にある。
【0003】
好ましいコモノマーは、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ビニルアセテート、アクリルアミド、及び類似体などの中性ビニル分子、又はアクリル酸、イタコン酸、スルホン化スチレン、及び類似体などの1又は複数の酸性基を有する分子、又は、例えば、材料をアニオン性染料で染色可能にするビニルピリジンなど、得られるポリマーに種々の化学的物理的特徴を付与可能なその他のコモノマーである。
【0004】
調製されたポリマー又はコポリマーは、次に紡糸に供されて、繊維製品的利用及び工業的利用の両方のための異なる加工技術を用いたその後の製品化に適した、トウの状態で回収される繊維が製造される。
【0005】
特定の種類のアクリル繊維は、炭素繊維のための繊維「前駆体」である。これらは、アクリロニトリルと上記に記載されるものから選択され、ポリマーの総重量に対して通常1重量%~5重量%の量である1種類又は複数種類のコモノマーとの高分子量コポリマーである。次に、ポリアクリロニトリルをベースとした繊維「前駆体」の適切な加熱処理により、炭素繊維が得られる。
【0006】
種々の重合方法及び紡糸方法を用いるアクリル繊維の調製のための多様な産業プロセスが存在する。
【0007】
先行技術は、以下のように分類及び体系化され得る。
【0008】
A.非連続的プロセス(2ステップ)
2ステップ非連続的プロセスにおいては、ポリマーは、通常、水性懸濁液中で製造され、単離され、続いて、紡糸される適切な溶媒中に溶解され、繊維又は炭素繊維の場合は繊維前駆体に変換される。紡糸溶液の調製のために最も一般的に用いられる溶媒は、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、チオシアン酸ナトリウム(NaSCN)の水溶液、及び特許EP2894243B1に最近記載されるようなジメチルスルホキシド(DMSO)と各種量の水との混合液である。
【0009】
B.連続的プロセス(1ステップ)
一方、連続的プロセスにおいては、重合は溶媒中で行われ、得られた溶液が、ポリマーの中間単離を伴わずに紡糸に直接使用される。これらのプロセスに最も一般的に用いられる溶媒は、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、塩化亜鉛(ZnCl)の水溶液、及びチオシアン酸ナトリウム(NaSCN)の水溶液である。
【0010】
非連続的プロセスは、管理的観点から重要な利点を有する。重合及び紡糸の2つのステップは、実際に独立しており、紡糸ステップの前に、洗浄および濾過により痕跡量の不純物及び未反応のモノマーをポリマーから容易に分離することができる。
【0011】
結果的としてこの種類のプロセスはアクリル繊維の製造の産業的実施においてより広く用いられており、炭素繊維の前駆体製造プロセスのかなりのシェアを示す。
【0012】
産業的に、非連続的プロセスにより、ベルト乾燥機又流動床乾燥機により実施される、水性懸濁液中での重合により得られたポリマーの乾燥ステップが提供される。次に、粉末状のポリマーはサイロに輸送され、そこで使用の時点まで保管される。紡糸溶液(ドープ)を調製するため、次に、粉末ポリマーは、塊及びゲルを含まない溶液を得るのに適した手段により、溶液と十分に混合される。濾過後、ドープは最終的に紡糸機に送られる。先行技術による上記のプロセスは、図1に図式的に記載される。
【0013】
しかしながら、繊維調製プロセスは、全体として考えると、得られる製品の性能の最適化及び製造コストの観点の両方について改善の余地がある種々の弱点を有している。
【0014】
先行技術に記載されるプロセスの一番目の欠点は、ポリマーの重合ステップ、洗浄ステップ、及び乾燥ステップの間に、及び繊維前駆体の製造の場合は、紡糸ステップにおいても、消費される大量の水である。実際に、後者の場合、繊維の最後の洗浄ステップは、残存溶媒を完全に除去するため、脱塩水を用いて行われる。この洗浄水は、0.5%未満である非常に少量の溶媒が含まれていることを考慮するとこの洗浄水を溶媒回収プラントに送ることは非経済的であり、通常、次いで廃棄水処理に送られる。
【0015】
二番目の欠点は、重合ステップに特有であるが、コモノマーの選択が主に液体又は水溶性のコモノマーに制限される一方で、固体の不溶性又は低水溶性のコモノマーは、反応性であったとしても添加が困難であることである。
【0016】
さらに、紡糸溶液の調製ステップ同様、粉末状のポリマーの単離ステップ、乾燥ステップ、及び運搬ステップは、このプロセスにおいて微細で、爆発の可能性のある粉末が存在しているので、安全性の観点で特別な注意を要する複雑で高価な装置を必要とする。さらに、これらのプロセスのステップはまた、通常、温風又は窒素で動作させる乾燥ユニット及び粉末状のポリマーを輸送するためのユニットの存在により、エネルギーの観点から非常に不利である。
【0017】
EP3375915には、水性懸濁液中での重合技術、及びそれに続く、溶媒として低減された量の水を含むDMSOの使用による紡糸を用いる、単純化されたプロセスが最近記載されており、前記プロセスはポリマーの乾燥ステップを排除し、保管サイロへの運搬及びその後の紡糸溶液を調製するためのステップは粉末から開始する。
【0018】
特に炭素繊維前駆体の製造において、既存の2ステッププロセスのさらなる制限は、アンモニア又は第1級アミン若しくは第2級アミンの添加が困難なことである。これらの添加剤は、前駆体の製造プロセスの改善及び高性能の炭素繊維の獲得に大きく貢献することが知られている。従来技術では、この困難は、ドープを気体アンモニアで処理するか、又は紡糸機において伸張状態でアミン若しくはアンモニアの添加を可能にする追加のステップを加えることにより解消される。次に、このステップの後に、弛緩段階、続いて、高温での新たな伸張段階が続く。
【0019】
イタリア特許出願番号第102019000014880号には、ドープの調製中にアンモニア水を添加することが最近記載されているが、この溶液は使用される溶媒が少量の水を含むDMSOである場合にのみ可能である。
【0020】
したがって、本発明の目的は、既知の技術の上記の制限及び欠点を解消し、製品の品質及び製造コストの観点から重要な利点を得ることを可能にする、アクリル繊維の調製プロセスを提供することである。
【0021】
発明の詳細な説明
本発明は以下のステップを含むプロセスに関する。
i)水性懸濁液中でコモノマーを、前記水性懸濁液の総重量に対して3重量%~25重量%、好ましくは5重量%~10重量%の量の溶媒の存在下で重合するステップであって、ここで、前記溶媒は、以下のステップii)~vi)において使用される溶媒と同じ溶媒であり、前記水性懸濁液を構成する水は、紡糸ステップの最後の洗浄ステップからの再利用水を、前記水性懸濁液の水の総重量に対して10重量%~40重量%、好ましくは20重量%~30重量%の量で含み、前記重合反応は、触媒量の硫酸鉄の存在下で酸化還元過硫酸アンモニウム/重亜硫酸アンモニウムのペアにより触媒され、続いて、未反応のモノマーの除去、前記水性懸濁液の濾過及びその洗浄により、ポリマーと痕跡量の溶媒を含む水とを、40/60~60/40の重量比で、好ましくは1:1以上の重量比で含む濾過ケーキを得る、前記ステップ。
【0022】
ii)ステップi)で得られた前記第一の濾過ケーキを、前記ケーキの重量の2倍~10倍の重量比の溶媒/水混合液中又は純溶媒中で、好ましくは7℃以下の温度で5分間~15分間、撹拌下で、分散するステップ。
【0023】
iii)前記ポリマー分散物の固体相/液体相を濾過又は遠心分離により分離し、ポリマー、及び溶媒と水の重量比が60/40~85/15である溶媒/水混合液を含む第二のケーキを得るステップ。
【0024】
iv)ステップiii)で得られた前記第二のケーキを、前記ケーキ中のポリマーの重量の2倍~10倍の重量比の前記ステップii)と同じ溶媒又は水/溶媒混合液中で、室温又は室温より低い温度で5分間~20分間再分散して、溶媒/ポリマーの重量比が90/10~70/30である均質な分散物又は「スラリー」を得るステップ。
【0025】
v)ステップiv)で得られた前記均質な分散物又はスラリーを、好ましくは前記スラリーを熱交換器を通過させることにより、前記ポリマーが完全に溶解するまで加熱して均質な紡糸溶液を得るステップ。
【0026】
vi)ステップv)の最後に得られた前記均質な紡糸溶液を紡糸ステップに供給するステップ。
【0027】
紡糸ステップは、湿式紡糸プロセス又は乾式ジェット湿式紡糸プロセスにより行われ、ここで、水と溶媒の混合液から構成される凝固浴槽中での凝固ステップの後、得られたフィラメントの束は、初期長の約8倍~12倍の長さまで、好ましくは9倍~10倍の長さまで、伸張され続いて洗浄され、次いで、水による最終洗浄ステップに供されて残存する痕跡量の溶媒が除去され、前記洗浄水は、次にステップi)の再利用水として再び供給される。
【0028】
本発明のプロセスから得られる紡糸溶液は、有利にゲル及び不溶解残渣を含まないので、紡糸ラインに直接供給することができる。
【0029】
実際、本発明により、ゲルを含まず、不溶性の塊の形成を伴わないでアクリロニトリルのホモポリマー又はコポリマーの溶液が得られ、水性懸濁液中での重合に関する利点が増大するが、ポリマーの乾燥、粉末状のポリマーの保管サイロへの輸送、及び紡糸のための溶媒中へのその後の再溶解のための危険で高価なステップが排除される。したがって、本発明のプロセスにより、重合ステップ及び紡糸ステップの2つのステップが単純かつ経済的な方法で統合されるが、所望により均質な紡糸溶液が中間保管タンクに送られ得ることは除外されない。
【0030】
溶媒として、その後のドープ調製及び紡糸のステップii)~vi)において使用される溶媒と同じ溶媒を含む水性懸濁液中での重合プロセスにより、反応媒体中へのモノマーの溶解度の増大のため重合速度が上昇し、先行技術のプロセスにより水のみを用いて得られる同様の変換に到達するために必要とされる時間が約10~15%低減される。
【0031】
さらに、米国特許第4,403,055号に示されるように痕跡量の水を含む溶媒中に予め浸漬されている粉末は分散が困難ではないので、純溶媒とポリマーを混合することにより行われるステップiv)は、特に溶媒がDMSOである場合、特に容易である。
【0032】
米国特許第9,296,889号に開示されるように、溶媒を用いた湿式粉末の密接な吸収は、分散及び溶解が困難なコアセルベートの形成を防止し、同時に微細で均質な懸濁液の形成を最適化する。
【0033】
本開示では、ポリマーとの用語は、通常、アクリロニトリルから開始して得られるホモポリマーと、アクリロニトリル及び1種類又は複数種類のその他のコモノマーから開始して得られるコポリマーとの両方を指す。
【0034】
特に、ポリマーは、80,000~200,000Daの高分子量ポリマーである。
【0035】
重合ステップi)は、酸化還元型の触媒、例えば重合自体に関与するラジカル種の形成の「促進剤」としての触媒量の硫酸鉄の存在下で過硫酸アンモニウム/重亜硫酸アンモニウムのペアを用いて、水性懸濁液の総重量に対して3重量%~25重量%の範囲内、好ましくは5重量%~10重量%で変動する量の溶媒の存在下、水性懸濁液中で行われ、前記溶媒はドープ調製及び紡糸のステップii)~vi)において使用される溶媒と同じ溶媒である。
【0036】
好ましい溶媒は、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、及びジメチルスルホキシド(DMSO)である。
【0037】
任意の可能な固形コモノマー(イタコン酸及びアクリル酸など)もまた、前記溶媒の溶液中、重合反応器に都合よく供給することができる。
【0038】
水性懸濁液を構成する水は、紡糸ラインの最後の洗浄セクションからの再利用水を、前記水性懸濁液の水の総重量に対して10重量%~40重量%、好ましくは20重量%~30重量%の量で含む。紡糸プロセスの最後の洗浄ステップに由来するこの水は、少量(0.5重量%未満)の同じ溶媒を含み、その使用は、重合反応において特に便利であり、脱塩水の総消費量を低減する。
【0039】
重合ステップは、ナトリウム塩又はアンモニウム塩の形態のEDTAなどの鉄封鎖剤の添加により終了され、重合反応器に残った水性懸濁液は、その後の未反応モノマーの除去、水性懸濁液の濾過及びその洗浄のステップに供される。
【0040】
より具体的には、反応器に残った水性懸濁液は、過剰なアクリロニトリル及び未反応の揮発性コモノマーを水性懸濁液から分離する適切な除去カラムに供給され、次に、アクリロニトリル及び未反応のコモノマーは重合ステップに再利用される。
【0041】
ポリマー、触媒系の残存塩、痕跡量の溶媒、及び反応の副産物を含む得られた水性懸濁液は、既知の技術に従って、フィルターの表面にケーキを形成する固体から液相を分離する回転真空フィルターに供給される。このケーキは温水で洗浄されて存在する無機塩が除去され、洗浄の最後に得られた濾過ケーキは、ポリマーと痕跡量の溶媒を含む水とを、40/60~60/40の重量比で、好ましくは45/55~55/45の重量比で、より好ましくは1:1以上の重量比で含む。
【0042】
本発明のプロセスのステップii)においては、純溶媒又は水/溶媒混合液が用いられ、低温、すなわち、通常7℃以下の温度である。この温度はまた、溶媒の凝固点が許す場合は、0℃未満であってもよい。
【0043】
ステップii)の溶媒/水混合液中の水の量は、前記混合液の総重量に対して0重量%~20重量%の間で変動し得る。
【0044】
本発明のプロセスの種々のステップ、すなわち、ステップii)及びステップiv)における使用に適した溶媒は、例えばジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、又はジメチルスルホキシド(DMSO)など、アクリル繊維を紡糸するための重合体溶液の形成に一般的に用いられる溶媒である。
【0045】
ステップii)において分散物を得るための条件は、ポリマー顆粒を溶解又は膨張させないものでなければならず、したがって、溶媒/水混合液中の水の濃度、前記分散物を得るための操作温度、及び分散が行われる撹拌タンク中の滞留時間は、適切に定義されるべきである。
【0046】
ステップii)の分散において、濾過ケーキは、前記ケーキの重量の2~10倍の重量の範囲の溶媒/水又は純溶媒の混合液で分散される。
【0047】
これらの条件下、すなわち低温で、溶媒/水混合液の場合には、正確な量の水を提供する特定の溶媒を用いて、ステップii)の分散媒体はポリマーに対する溶媒能力を有していない。より具体的には、ステップii)において、ケーキの固体粒子、及びポリマー自体の顆粒の内部は、それらを溶媒又は溶媒/水混合液で浸す分散媒体と接触し、ステップii)に供給されたケーキ中に存在する水との交換がもたらされ、この水が前述のように少量の水を含む純溶媒又は溶媒/水混合液に交換される。
【0048】
したがって、滞留時間は、分散媒体中の水/溶媒濃度が平衡に達するのに十分な時間、すなわち、ステップii)の分散媒体がステップi)からの高分子物質中に染み込んだ水を純溶媒又は水/溶媒混合液に交換されるような時間である。この条件は、通常、分散物を5分間~15分間撹拌し続けることにより達成され、これにより適切なポリマー分散物が得られる。
【0049】
続くステップiii)において、濾過又は遠心分離により、固体相/液体相の二相の分離により、非常に溶媒に富むがポリマーを溶解する能力は有していない水性溶液中に浸されたポリマーの第二のケーキが形成される。
【0050】
ステップiii)の濾過/遠心分離の最後に第二のケーキ中に残存する水の含量は、ステップii)のポリマーの再分散に用いられる水/溶媒の比、第一のケーキが再分散された水/溶媒の量、及びステップiii)の濾過又は遠心分離により得られる第二のケーキの最終的な液体/固体の比と関連することになる。
【0051】
ステップiii)の濾過又は遠心分離により生じる液体相は、通常、蒸留により溶媒回収系に送られるか、純溶媒を用いたタイターの可能な補正の後、分散ステップii)に再循環され得る。
【0052】
ポリマー/溶媒/水の比がわかっているステップiii)に由来する第二のケーキは、スクリューコンベヤ系又はベルトコンベヤ系によりステップiv)に運搬され、そこで、撹拌タンク中、溶媒に添加されて、それはスラリーを形成することになり、続いて、下流の熱交換器によりドープに変換される。
【0053】
実際、ステップiv)において、ステップiii)で得られた第二のケーキは、ステップii)と同じ溶媒又は水/溶媒混合液中に、前記ケーキ中のポリマーの重量の2倍~10倍の重量比で、室温又は室温未満の温度で、5分間~20分間、再分散され、均質な分散物又は「スラリー」が得られる。室温未満の温度はまた、DMSOを用いる場合は約7℃の温度を指し、DMAc及びDMFなどの溶媒を用いる場合は-5℃/-10℃を指す。
【0054】
ステップv)において、得られたスラリーは、熱交換器によって50℃~100℃、好ましくは60℃~90℃の温度に、3分間~60分間、大気圧で加熱される。この加熱により、12重量%~22重量%のポリマー、1重量%~10重量%の水、及び68重量%~85重量%の溶媒を含む均質な紡糸溶液が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
本明細書は2つの図面を含む。
図1】以前に開示されている、先行技術のプロセスの略図である。
図2】本発明のプロセスの一実施形態の略図である。
【0056】
したがって、本発明の処理対象物の実施形態は図2に図式化して記載される。
【0057】
本発明のプロセスの他の利点は、紡糸ステップに供給される紡糸溶液又はドープ溶液中に含まれる特定量の水により決定され、本発明のプロセスにより得られるアクリル繊維の製造のための均質な溶液中に残存する水の割合は、実際に、乾式紡糸技術又は湿式紡糸技術及びDJWS(乾式ジェット湿式紡糸又はエアギャップ)技術の両方によるアクリル繊維紡糸技術と完全に両立し得る。したがって、紡糸用の溶液から水を完全に除去する必要はない。
【0058】
さらに、米国特許第3,932,577号に権利請求されるようなアクリル繊維紡糸溶液中の少量の水の存在により、溶液自体の凝固浴槽との適合性が促進され、空胞及び亀裂を含まない繊維がもたらされ、これらの特徴は、良好な光沢及び密集構造を有する炭素繊維前駆体又は織物繊維の製造において特に有利である。
【0059】
ドープ中のこのような少量の水の存在に関連する他の利点は、再分散ステップii)及びスラリーの調製ステップiv)の両方における、ポリマー、ひいては特定性能を有する最終繊維を提供可能である水溶性添加剤の運搬の可能性である。
【0060】
ポリマー、ひいては特定性能を有する最終繊維を提供可能である添加剤の非限定的な例は、アンモニア、第1級アミン、第2級アミン、第4級アンモニウム塩、銅又は銀などのポリマーのイオン性末端基を塩化可能な銅又は銀などの金属イオンの塩、ポリマー溶液のレオロジーを改善するための水溶性ポリマーなどである。
【0061】
具体的には、炭素繊維前駆体について、欧州特許出願第3783132号に記載されるように、ポリマー溶液への適切な量のアンモニア又はアミンの添加により、凝固浴槽中の繊維の伸張がさらに改善され、より密集した空胞を含まない繊維が提供され、酸化/炭化段階における反応速度が上昇することを忘れてはならない。
【0062】
得られた紡糸溶液又はドープ溶液は、適切な紡糸ラインへの供給にすぐに使用され得るか、又は加熱されたタンク中に保管され得る。
【0063】
前述したように、先行技術のプロセスを説明するために、アクリロニトリル(21)、可能な液体コモノマー(22)、触媒系の水溶液(23)、可能な固体コモノマーの水溶液(24)、及び水(25)が連続的に重合反応器1に供給される、図1に記載されるプラント図について説明する。水中のスラリーの形態である重合反応器1からのポリマーは、未反応モノマーの除去のための剥離カラム2での処理の後、真空下で、回転フィルター3上で洗浄及び濾過される。粉末ポリマーは、通常、温風又は窒素で動作させる乾燥ユニット12を通って、続いてライン13を通って保管サイロ14へ運搬され、前記ポリマーはスクリュー又はその他の運搬手段によりミキサー部15へ供給され、そこにはライン16を通って保管タンクからの新たな溶媒も到達する。
【0064】
ミキサー15において、前記粉末ポリマーは前記溶媒中に分散され、得られたポリマースラリーが保管タンク17に供給され、変換器18により紡糸溶液に変換される。次に、この溶液は、可能な粒子の除去のための40μm~5μmの選択的クロスを有する一連の加圧フィルター19に送られ、ライン20を通って紡糸ライン又は保管タンク(図1に図示せず)に送られる。
【0065】
本発明のプロセスの一実施形態を説明するために、プロセスが好ましくは連続的に実施される、図2に示されるプラント略図について以下に説明する。
【0066】
アクリロニトリル(21)、可能な液体モノマー(22)、触媒系の水溶液(23)、紡糸に使用される溶媒と同じ溶媒の溶液中の可能な固体コモノマー(24)、溶媒(25)、及び紡糸ラインの最後の洗浄セクションからの再利用水の必要量を含む水(26)は、重合反応器1に連続的に供給される。
【0067】
水中のスラリーの形態である重合反応器1からのポリマーは、未反応モノマーの除去のための剥離カラム2での処理の後、真空下で、回転フィルター3上で洗浄及び濾過され、本発明のプロセスのステップi)~ステップii)を経たポリマーと水からなるケーキを生じる。次に、回転フィルター3からのケーキは、アンモニアを含み得る溶媒/水混合液、又は純溶媒がライン27を通って低温で供給される撹拌タンク4中で再分散される。撹拌タンク4において、懸濁液は7℃以下に維持される。生じた懸濁液は撹拌下で数分間維持され、次に、第2の回転フィルター又は遠心分離機5に供給され、そこで本発明のプロセスのステップiii)が行われる。水/溶媒に浸された塊は、螺旋コンベヤ又はその他のコンベヤ6により撹拌タンク17に供給され、そこにはライン16を通って保管タンクからの新たな溶媒も到達し、混合物の全体が変換器18により紡糸溶液に変換される。
【0068】
次に、前記溶液は、任意の不溶解粒子の除去のための40μm~5μmの選択的クロスを有する一連の加圧フィルター19に送られ、ライン20を通って紡糸ライン又はドープ保管タンク(図2に図示せず)に送られる。
【0069】
使用される紡糸ラインは、水と溶媒の混合液から構成される凝固浴槽中に浸された紡糸口金を用いる湿式紡糸型であってもよい。凝固の後、フィラメントの束は既知の技術により連続的に伸張及び洗浄されてトウが生成され、トウはボビン上又は箱中に回収され、次に、炭素繊維の製造のための炭化ラインに送られる。本明細書に記載される紡糸ステップにおける溶媒は、ステップii)~vi)において既に使用された溶媒と同じ溶媒である。
【0070】
あるいは、紡糸ラインは、水と溶媒の混合液から構成される凝固浴槽の表面に近接して空中に保たれた紡糸口金を用いる乾式ジェット湿式紡糸型(エアギャップ紡糸)であってもよい。凝固の後、フィラメントの束は既知の技術により連続的に伸張及び洗浄されてトウが生成され、トウはボビン上に回収され、次に、炭素繊維の製造のための炭化ラインに送られる。本明細書に記載される紡糸ステップにおける溶媒は、ステップii)~vi)において既に使用された溶媒と同じ溶媒である。
【0071】
いずれの紡糸技術においても、残存する痕跡量の溶媒を除去するための繊維の最後の洗浄ステップにおいて脱塩水が用いられる。この水は、洗浄後、痕跡量の水を含み、溶媒回収プラント(操作が経済的に便利ではない)又は廃棄水処理(水の廃棄)に送られる代わりに、重合反応器1に送り返されるので、水の総消費量の低減及びエネルギーの節約に貢献する。
【実施例0072】
本発明の非限定的な例として、本発明のプロセスのいくつかの実施形態の例を以下に示す。
【0073】
先行技術による比較例1(図1を参照)
反応pHを2.0~3.5の値に維持するために十分な硫酸が添加された、100kg/hのアクリロニトリル、1kg/hのメチルアクリレート、5重量%で水に溶解された2kg/hのイタコン酸、水に溶解された0.4kg/hの過硫酸アンモニウム、水に溶解された0.5kg/hの重亜硫酸アンモニウム、水に溶解された2g/hの硫酸鉄、及び250kg/hの水を、撹拌器及び排水管を備えたアルミニウム反応器に、62℃の温度で連続的に添加した。成分は、90分の滞留時間となるような速度で供給された。排水管中にEDTAの水溶液を添加することにより90分後に反応が停止され、スラリーは剥離カラムに供給され、そこで未反応のアクリロニトリル及びメチルアクリレートが除去され、底部に水中のポリマーのスラリーが得られた。反応器への供給の78重量%に相当するコポリマーへのアクリロニトリルの変換が得られた。前記ポリマーは、図1に示されるように濾過、洗浄、及び乾燥され、サイロ14中に保管される粉末が得られた。続いて、前記ポリマーは、図1に示される静的ミキサー15及び熱交換器18により-10℃の温度でDMAcに溶解された。得られた溶液は、40μm~5μmで徐々に変化する選択的クロスを有する一連の加圧フィルターにより濾過され、24,000穴の紡糸口金を有する湿式紡糸ラインに供給された。溶媒回収プラントからの水を用いる伸張及び洗浄セクションの終わりに、脱塩水を用いて最後の洗浄ステップが行われ、続いて、前記脱塩水は排水処理に送られた。
【0074】
紡糸プロセスの最後に、炭素繊維の製造に適切な、以下の特徴を有する24K前駆体ボビンが得られた。
・タイター:1.25dtex
・強度(Tenacity):61.1cN/tex
・伸度(Elongation):15.2%
【0075】
実施例2.図2を参照
反応pHを2.0~3.5の値に維持するために十分な硫酸、紡糸段階の最後の洗浄ステップからの40kg/hの水、及び15kg/hのDMAcが添加された、100kg/hのアクリロニトリル、1kg/hのメチルアクリレート、DMAcに溶解された2kg/hのイタコン酸、水に溶解された0.4kg/hの過硫酸アンモニウム、水に溶解された0.5kg/hの重亜硫酸アンモニウム、水に溶解された2g/hの硫酸鉄、及び200kg/hの水を、撹拌器及び排水管を備えたアルミニウム反応器に、62℃の温度で連続的に添加した。成分は、90分の滞留時間となるような速度で供給された。排水管中にEDTAの水溶液を添加することにより90分後に反応が停止され、スラリーは剥離カラムに供給され、そこで未反応のアクリロニトリル及びメチルアクリレートが除去され、底部の水中にポリマーのスラリーが得られた。反応器への供給の84重量%に相当するコポリマーへのアクリロニトリルの変換が得られた。
【0076】
水中のスラリーの形態である重合反応器からの前記ポリマーは、未反応モノマーの除去のための剥離カラムでの処理の後、真空下で、回転フィルター上で洗浄及び濾過され、ポリマー(53重量%)と水(47重量%)からなるケーキを生じた。
【0077】
このケーキの100kgが撹拌タンクに移され、-10℃の温度に保たれた255kgの純ジメチルアセトアミドが添加された。生じた懸濁液は、この温度で冷却されたタンク中で、5分間、撹拌下で維持され、次に、回転真空フィルターに供給され、濾過の後に40重量%のDMAc、9重量%の水、及び51重量%のポリマーを含む塊が得られた。
【0078】
前記フィルターから排出されたケーキは、-5℃の温度で維持された148kgのDMAcを含む撹拌タンクへ移され、撹拌下で10分間維持され、21重量%のポリマー、75重量%のDMAc、及び4重量%の水を含むスラリーが生成された。
【0079】
次に、このスラリーは、歯車ポンプを通って、以下を用いて行われる、ドープへの変換ステップに移された。
・管束熱交換器
・均質化のための静的ミキサー
・40μm~5μmで徐々に変化する選択的クロスを有する一連の加圧フィルター
【0080】
生成されたドープは、60%のDMAc及び40%の水を含む凝固浴槽中に浸された24,000穴の紡糸口金を用いる湿式紡糸ラインに供給され、55℃で維持された。得られたフィラメントの束は、その初期長の10倍に連続的に伸長され、洗浄された。溶媒回収プラントからの回収水を用いる伸長及び洗浄セクションの最後に、脱塩水を用いて最後の洗浄ステップが行われ、続いて、前記脱塩水は図2の重合反応器1に送られた。紡糸プロセスの最後に、トウがボビン上に70m/分の速度で回収され、炭素繊維の製造に適切な、以下の特徴を有する24K前駆体ボビンが得られた。
・タイター:1.22dtex
・強度(Tenacity):59.5cN/tex
・伸度(Elongation):14.5%
【0081】
実施例3.図2を参照
反応pHを2.0~3.5の値に維持するために十分な硫酸、紡糸段階の最後の洗浄ステップからの40kg/hの水、及び25kg/hのDMSOが添加された、100kg/hのアクリロニトリル、2kg/hのメチルアクリレート、DMSOに溶解された2kg/hのイタコン酸、水に溶解された0.4kg/hの過硫酸アンモニウム、水に溶解された0.5kg/hの重亜硫酸アンモニウム、水に溶解された2g/hの硫酸鉄、及び200kg/hの水を、撹拌器及び排水管を備えたアルミニウム反応器に、62℃の温度で連続的に添加した。
【0082】
成分は、90分の滞留時間となるような速度で供給された。排水管中にEDTAの水溶液を添加することにより90分後に反応が停止され、スラリーは剥離カラムに供給され、そこで未反応のアクリロニトリル及びメチルアクリレートが除去され、底部の水中にポリマーのスラリーが得られた。反応器への供給の86重量%に相当するコポリマーへのアクリロニトリルの変換が得られた。
【0083】
水中のスラリーの形態である重合反応器からの前記ポリマーは、未反応モノマーの除去のための剥離カラムでの処理の後、回転真空フィルター上で洗浄及び濾過され、ポリマー(55重量%)と水(45重量%)からなるケーキを生じた。
【0084】
このケーキの100kgが撹拌タンクに移され、7℃の温度に保たれたDMSO(80%)と水(20%)からなる570kgの混合液が添加された。生じた懸濁液は、この温度で冷却されたタンク中で、5分間、撹拌下で維持され、次に、回転フィルターに供給され、濾過の後に42重量%のDMSO、10重量%の水、及び48重量%のポリマーを含む塊が得られた。
【0085】
前記フィルターから排出されたケーキは、-5℃の温度で維持された180kgのDMSOを含む撹拌タンクへ移され、撹拌下で10分間維持され、19重量%のポリマー、77重量%のDMSO、及び4重量%の水を含むスラリーが生成された。次に、このスラリーは、歯車ポンプを通って、以下を用いて行われる、ドープへの変換ステップに移された。
・管束熱交換器
・均質化のための静的ミキサー
・40μm~5μmで徐々に変化する選択的クロスを有する一連の加圧フィルター
【0086】
生成されたドープは、5℃の温度で35%のDMSO及び65%の水を含む凝固浴槽の表面から4mmの距離に位置された3,000穴の紡糸口金を用いる乾式ジェット湿式紡糸ラインに供給された。凝固の後に得られたフィラメントの束は、水中で伸長され、続いて、その初期長の9倍に蒸気中で伸長(蒸気伸長)され、最後に残存する溶媒を除去するために洗浄された。溶媒回収プラントからの回収水を用いる伸長及び洗浄セクションの最後に、脱塩水を用いて最後の洗浄ステップが行われ、次に、前記脱塩水は図2の重合反応器1に送られた。紡糸プロセスの最後に、単一の紡糸口金から生じた3Kのトウを4つ重ね合わせることにより12Kの前駆体ボビンが得られた。ボビン上に240m/分の速度で回収された得られた繊維は、完全な円形断面を有しており、密集しており、亀裂を含んでおらず、炭素繊維の製造に適切な、以下の特徴を有している。
・タイター:1.0dtex
・強度(Tenacity):65.3cN/tex
・伸度(Elongation):14.1%
図1
図2