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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119272
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】蓄熱体の再利用システム
(51)【国際特許分類】
   F28D 20/02 20060101AFI20220809BHJP
   C09K 5/06 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
F28D20/02 D
C09K5/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021016261
(22)【出願日】2021-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000116699
【氏名又は名称】株式会社アイホー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松村 祥子
(72)【発明者】
【氏名】柘植 和幸
(57)【要約】
【課題】蓄熱体をよりスムーズに再利用することができる蓄熱体の再利用システムを提供する。
【解決手段】潜熱蓄熱材が収容された使用済みの蓄熱体20を、繰り返し再利用する蓄熱体20の再利用システムである。再利用システム1は、複数の蓄熱体20を洗浄する洗浄装置30と、洗浄した複数の蓄熱体20、20、…を潜熱蓄熱材が溶融する温度まで加熱する加熱装置50と、複数の蓄熱体20、20、…を収納するとともに複数の蓄熱体20、20、…を収納した状態で、洗浄装置30および加熱装置50に投入される収納カゴ10と、を少なくとも備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜熱蓄熱材が収容された使用済みの蓄熱体を、繰り返し再利用する蓄熱体の再利用システムであって、
前記再利用システムは、
複数の前記蓄熱体を洗浄する洗浄装置と、
洗浄した前記複数の蓄熱体を潜熱蓄熱材が溶融する温度まで加熱する加熱装置と、
前記複数の蓄熱体を収納するとともに、前記複数の蓄熱体を収納した状態で、前記洗浄装置および前記加熱装置に投入される収納カゴと、を少なくとも備えることを特徴とする蓄熱体の再利用システム。
【請求項2】
前記加熱装置は、前記収納カゴに収納された前記複数の蓄熱体を湯に浸漬する浸漬槽を備えており、
前記収納カゴは、蓄熱体を挿入する開口部が形成されたカゴ本体と、
前記カゴ本体の前記開口部に、前記開口部に対して回動自在に取り付けられた一対の取っ手と、を備えており、
前記収納カゴは、前記開口部に対して前記取っ手が起立した姿勢から、前記収納カゴの内側の前記取っ手の回動範囲を、前記収納カゴに収納された状態の蓄熱体の上面よりも高い位置まで、制限する制限部を備えることを特徴とする請求項1に記載の蓄熱体の再利用システム。
【請求項3】
前記取っ手は、前記カゴ本体の開口部に対して前記取っ手が起立した姿勢から、前記収納カゴの外側に回動自在であり、
前記各取っ手が、前記収納カゴの外側に向かって最大の範囲で回動した最大回動位置において、前記一対の取っ手が対向する方向に沿った前記収納カゴの幅は、前記浸漬槽の対向する開口縁の幅よりも広くなっていることを特徴とする請求項2に記載の蓄熱体の再利用システム。
【請求項4】
前記収納カゴは、前記複数の蓄熱体を配列した状態で、
前記各蓄熱体の下方に向いた矩形平面を支持するように、間隔を空けて併設された複数の第1線材と、前記各第1線材と直交する方向に間隔を空けて併設された複数の第2線材と、を含む支持部と、
前記蓄熱体同士を前記第2線材に沿って仕切る線材からなる仕切り部と、を有しており、
前記蓄熱体の前記矩形平面は、長辺と短辺を有しており、
前記蓄熱体は、前記長辺を前記第2線材に沿わせ、かつ、隣接する前記第2線材同士の間に配置されるものであり、
前記第1線材は、一対の短辺よりも内側の領域において、前記蓄熱体の前記矩形平面を支持するように配置され、
前記蓄熱体のいずれか一方の短辺が、前記収納カゴの平面視において、前記第1線材と前記第2線材とにより囲まれた領域に位置するように、前記第1線材および前記第2線材が配置されることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄熱体の再利用システム。
【請求項5】
前記蓄熱体には、前記矩形平面の前記一方の短辺に隣接し、前記一方の短辺から前記蓄熱体の側面まで、前記矩形平面に対して傾斜した傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の蓄熱体の再利用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜熱蓄熱材が収容された使用済みの蓄熱体を、繰り返し再利用する蓄熱体の再利用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として、たとえば、特許文献1には、熱を潜熱の形態で蓄えるための蓄熱体と、蓄熱体を加熱するための電熱ヒータと、を備えた蓄熱ユニットが提案されている。蓄熱体は、潜熱蓄熱材と、潜熱蓄熱材を封入した袋体とを備えている。袋体は、柔軟性を有した材料からなる。この蓄熱ユニットによれば、蓄熱体の中に収納した潜熱蓄熱材の相変化によって、電熱ヒータから熱を吸熱して蓄熱し、蓄熱した熱を、加温が必要な箇所で放熱することができる。このような作業を繰り返すことにより、蓄熱体は、繰り返し再利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-190657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数の蓄熱体の潜熱蓄熱材を放熱した後、放熱後(すなわち、使用後)の蓄熱体を再利用する際に汚れが生じている場合、1つずつ手作業で洗浄することになり、この作業には、手間と時間がかかってしまう。さらに、洗浄した後、複数の蓄熱体を再利用のために加熱装置で再度加熱する必要があるが、その場合、加熱装置に1つずつ投入し、加熱された状態の蓄熱体を1つずつ加熱装置から取り出すことになり、この作業にも手間と時間がかかってしまう。
【0005】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、蓄熱体をよりスムーズに再利用することができる蓄熱体の再利用システムを提供することになる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を鑑みて、本発明に係る蓄熱体の再利用システムは、潜熱蓄熱材が収容された使用済みの蓄熱体を、繰り返し再利用する蓄熱体の再利用システムであって、前記再利用システムは、複数の前記蓄熱体を洗浄する洗浄装置と、洗浄した前記複数の蓄熱体を潜熱蓄熱材が溶融する温度まで加熱する加熱装置と、前記複数の蓄熱体を収納するとともに、前記複数の蓄熱体を収納した状態で、前記洗浄装置および前記加熱装置に投入される収納カゴと、を少なくとも備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、使用した複数の蓄熱体を収納カゴに収納した状態で、収納カゴを洗浄装置に投入して、複数の蓄熱体をまとめて洗浄することができる。蓄熱体の洗浄後には、洗浄した蓄熱体を収納カゴごと、洗浄装置から取り出して、保管することができる。
【0008】
さらに、蓄熱体を再利用する際には、複数の蓄熱体を収納カゴに収納した状態で、収納カゴを加熱装置に投入して、複数の蓄熱体をまとめて加熱して、蓄熱体に収納された潜熱蓄熱材を溶融することができる。加熱後には、加熱した蓄熱体を収納カゴごと、加熱装置から取り出して、各蓄熱体を再利用することができる。
【0009】
このようにして、複数の蓄熱体を収納カゴから取り出すことなく洗浄および加熱を行うため、蓄熱体の再利用をより簡単にかつスムーズに行うことができる。なお、加熱装置は、電熱ヒータで直接加熱したり、蒸気を介して加熱したりしてもよく、その加熱方式は特に限定されない。
【0010】
さらに、より好ましい態様としては、前記加熱装置は、前記収納カゴに収納された前記複数の蓄熱体を湯に浸漬する浸漬槽を備えており、前記収納カゴは、蓄熱体を挿入する開口部が形成されたカゴ本体と、前記カゴ本体の前記開口部に、前記開口部に対して回動自在に取り付けられた一対の取っ手と、を備えており、前記収納カゴは、前記開口部に対して前記取っ手が起立した姿勢から、前記収納カゴの内側の前記取っ手の回動範囲を、前記収納カゴに収納された状態の蓄熱体の上面よりも高い位置まで、制限する制限部を備える。
【0011】
この態様によれば、蓄熱体を再度加熱する際には、複数の蓄熱体を収納カゴに収納した状態で、複数の蓄熱体の上面が、浸漬槽の湯の湯面に近くになるまで、蓄熱体を、浸漬槽の開口部の上方から下方に向かって湯に浸漬する。この際、収納カゴの制限部が、収納カゴの内側の取っ手の回動範囲を、収納カゴに収納された状態の蓄熱体の上面よりも高い位置まで制限するので、取っ手を蓄熱体の高さと同じ程度の湯面よりも高い位置に配置することができる。これにより、取っ手が湯の中に沈むことはなく、作業者の手が浸漬槽の湯に触れずに取っ手を掴むことができるので、作業者が加熱した蓄熱体を収納カゴごと浸漬槽から安全に取り出すことができる。
【0012】
さらに、より好ましい態様としては、前記取っ手は、前記カゴ本体の開口部に対して前記取っ手が起立した姿勢から、前記収納カゴの外側に回動自在であり、前記各取っ手が、前記収納カゴの外側に向かって最大の範囲で回動した最大回動位置において、前記一対の取っ手が対向する方向に沿った前記収納カゴの幅は、前記浸漬槽の対向する開口縁の幅よりも広くなっている。
【0013】
この態様によれば、蓄熱体を収納カゴに収納したまま浸漬槽に投入する際に、収納カゴの取っ手が最大回動位置にある姿勢で、作業者がカゴ本体の開口部を持って、収納カゴを浸漬槽の湯に浸漬することがある。このような場合であっても、取っ手が最大回動位置における収納カゴ全体の幅は、浸漬槽の対向する開口縁の幅よりも広くなっているので、カゴ本体が浸漬槽の開口縁内に投入されても、取っ手は開口縁により、開口縁内に入り込むことが阻止される。このため、取っ手が開口縁とカゴ本体の間に挟まった状態のまま浸漬槽内に入り込むことを防止することができる。なお、蓄熱体を収納することができるのであれば、収納カゴおよび蓄熱体の形状は特に限定されるものではない。
【0014】
さらに、より好ましい態様としては、前記収納カゴは、前記複数の蓄熱体を配列した状態で、前記各蓄熱体の下方に向いた矩形平面を支持するように、間隔を空けて併設された複数の第1線材と、前記各第1線材と直交する方向に間隔を空けて併設された複数の第2線材と、を含む支持部と、前記蓄熱体同士を前記第2線材に沿って仕切る線材からなる仕切り部と、を有しており、前記蓄熱体の前記矩形平面は、長辺と短辺を有しており、前記蓄熱体は、前記長辺を前記第2線材に沿わせ、かつ、隣接する前記第2線材同士の間に配置されるものであり、前記第1線材は、前記一対の短辺よりも内側の領域において、前記蓄熱体の前記矩形平面を支持するように配置され、前記蓄熱体のいずれか一方の短辺が、前記収納カゴの平面視において、前記第1線材と前記第2線材とにより囲まれた空間に位置するように、前記1線材および前記第2線材が配置されている。
【0015】
この態様によれば、蓄熱体の加熱後、加熱した蓄熱体を収納カゴから取り出す際に、いずれか一方の短辺が位置する蓄熱体の上部を押し込むと、蓄熱体は第1線材を中心に回動し、その短辺を含む部分が、第1線材と第2線材により囲まれた領域内に入り込む。この回動により、蓄熱体の矩形平面の他方の短辺を含む部分が持ち上がる。このようにして、複数の蓄熱体が、仕切り部材で仕切られた状態で、収納カゴに緻密に配列されていたとしても、押し込んだ1つの蓄熱体の回動により、蓄熱体の持ち上がった部分を作業者は把持し、収納カゴから蓄熱体を1つずつ簡単に取り出すことができる。
【0016】
さらに好ましい態様としては、前記蓄熱体には、前記矩形平面の前記一方の短辺に隣接し、前記一方の短辺から前記蓄熱体の側面まで、前記矩形平面に対して傾斜した傾斜面が形成されている。
【0017】
この態様によれば、傾斜面を水平方向に近づくように、蓄熱体の矩形平面の一方の短辺を押し込むことにより、蓄熱体をさらに回動させることができるため、蓄熱体の矩形平面の他方の短辺を含む部分を、さらに持ち上げることができる。これにより、収納カゴから蓄熱体を1つずつ簡単に取り出すことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、蓄熱体をよりスムーズに洗浄および加熱し、蓄熱体を再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る蓄熱体の再利用システムの模式図である。
図2図1に示す収納カゴの平面図である。
図3図2に示す収納カゴの側面図である。
図4図2に示す収納カゴの斜視図である。
図5図1に示す蓄熱体の模式的斜視図である。
図6図4に示す蓄熱体を収納カゴから取り出す状態を説明するための模式図である。
図7】(a)は、図2に示す収納カゴを、浸漬槽に投入する前の模式図であり、(b)は、図2に示す収納カゴを、浸漬槽に投入した後の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず、図1を参照しながら、本実施形態に係る蓄熱体20の再利用システム1を説明する。
【0021】
1.再利用システム1について
図1に示すように、蓄熱体20の再利用システム1は、潜熱蓄熱材が収容された使用済みの蓄熱体20を繰り返し再利用するシステムである。再利用システム1は、複数の蓄熱体20、20、…を洗浄する洗浄装置30と、洗浄した複数の蓄熱体20、20、…を潜熱蓄熱材が溶融する温度まで加熱する加熱装置50と、を備えている。
【0022】
再利用システム1は、複数の蓄熱体20、20、…を収納するとともに、複数の蓄熱体20、20、…を収納した状態で、洗浄装置30および加熱装置50に投入される収納カゴ10と、をさらに備えている。再利用システム1は、加熱装置50に投入するまでの間、洗浄した複数の蓄熱体20、20、…を保管する保管庫40を、必要に応じて、備えていてもよい。
【0023】
図1に示すように、洗浄装置30は、洗浄時は蓄熱体20を収納カゴ10に収納したまま洗浄を行う装置であり、本実施形態では、食器等を洗浄するための連続式またはバッチ式の洗浄機である。洗浄装置30は、装置本体31を備えており、装置本体31には、搬送装置32、洗浄ノズル33、および洗浄槽34が、収容されている。搬送装置32は、収納カゴ10を搬送するコンベアである。洗浄ノズル33は、搬送装置32の搬送方向に沿って、複数配置されており、洗浄ノズル33の下方には、洗浄槽34が配置されており、洗浄槽34は、洗浄水Wから放出された洗浄水Wを回収する。
【0024】
このような洗浄装置30を用いて、使用済みの蓄熱体20、20、…を収納した収納カゴ10A(10)を、洗浄装置30に投入すると、収納カゴ10は、搬送装置32で搬送され、洗浄ノズル33の洗浄水Wが、収納カゴ10に吹き付けられる。このようにして、収納カゴ10に収納された複数の蓄熱体20を、スムーズに洗浄することができる。なお、収納カゴ10に吹き付けられた洗浄水Wは、洗浄槽34に回収され、ポンプ(図示せず)を介して、洗浄ノズル33に循環させてもよい。
【0025】
保管庫40は、洗浄した複数の蓄熱体20、20、…を収納カゴ10B(10)に収納したまま、保管する装置である。具体的には、保管庫40は、装置本体41と、内部に設けられた複数の棚42を備えており、装置本体41には、熱源(図示せず)により加熱され熱風Fが送風されるようになっている。
【0026】
このような保管庫40を用いて、収納カゴ10を庫内に投入して、熱風Fの循環により消毒と乾燥を行う。熱風Fの循環の終了後、複数の蓄熱体20、20、…は、収納カゴ10に収容されたまま、次の使用まで庫内に保管庫40に保管するか、後述する加熱装置50の浸漬槽51に水を張らずに保管してもよい。その他にも、保管庫40は、異なる保管棚で消毒を行わずに保管してもよい。
【0027】
加熱装置50は、保管された複数の蓄熱体20、20、20を収納カゴ10C(10)に収納したまま、加熱する装置である。加熱装置50は、収納カゴ10に収納された複数の蓄熱体20を湯Hに浸漬する浸漬槽51を備えている。浸漬槽51には、電気式のヒータ52が取り付けられており、ヒータ52により、浸漬槽51に投入された水または湯を加熱することができる。
【0028】
このような加熱装置50を用いて、保管された収納カゴ10を浸漬槽51の湯Hに浸漬して、蓄熱体20に収容された潜熱蓄熱材が溶融する温度まで加熱する。具体的には、収納カゴ10を浸漬槽51に投入する前に、収納カゴ10に収納した蓄熱体20が浸かる深さまで、浸漬槽51に水または湯を張る。潜熱蓄熱材が溶融する温度以上に加熱した後、蓄熱体20の全体が湯Hに浸漬されるまで、収納カゴ10を浸漬槽51に投入する。
【0029】
加熱装置50により潜熱蓄熱材を溶融させた後、浸漬槽51から収納カゴ10を取り出して、収納カゴ10に収納された蓄熱体20を、収納カゴ10D(10)から取り出す。取り出した蓄熱体20は、図示しないが、たとえば、食品を収納した筐体とともに、断熱容器に配置し、密封される。これにより、筐体内の食品を蓄熱体20で保温(例えば、65℃以上で2時間以上)することができる。
【0030】
このようにして、再利用システム1によれば、使用した複数の蓄熱体20を収納カゴ10に収納した状態で、収納カゴを洗浄装置30に投入して、複数の蓄熱体20、20、…をまとめて洗浄することができる。複数の蓄熱体20、20、…を収納カゴ10ごと、洗浄装置30から取り出して、保管することができる。洗浄後には、必要に応じて、複数の蓄熱体20、20、…を収納カゴ10に収納した状態で、保管庫40で消毒および保管することができる。
【0031】
さらに、蓄熱体20を再利用する際には、複数の蓄熱体20、20、…を収納カゴ10に収納した状態で、収納カゴ10を加熱装置50に投入して、複数の蓄熱体20、20、…をまとめて加熱して、蓄熱体20に収納された潜熱蓄熱材を溶融することができる。加熱後には、加熱した蓄熱体20を収納カゴ10ごと、加熱装置50から取り出して、各蓄熱体20を再利用することができる。
【0032】
このようにして、複数の蓄熱体20、20、…を収納カゴ10から取り出すことなく洗浄および加熱をスムーズに行い、蓄熱体20の再利用を行うことができる。
【0033】
上述した一連の作業をよりスムーズに行うことができる収納カゴ10および蓄熱体20の好ましい形態について、図2図7を参照して詳細に説明する。
【0034】
2.収納カゴ10について
本実施形態に係る収納カゴ10は、ステンレス鋼などの金属製の線材等で成形されたカゴである。図2図4に示すように、収納カゴ10は、蓄熱体20を挿入する開口部11aが形成されたカゴ本体11と、カゴ本体11の開口部11aに、開口部11aに対して回動自在に取り付けられた一対の取っ手12、12と、を備えている。
【0035】
カゴ本体11は、蓄熱体20の矩形平面(底面)22を支持する支持部(底壁部)13と、支持部13を囲うように立設した側壁部14と、複数の蓄熱体20を収納状態で、各蓄熱体20を仕切る複数の仕切り部15、15、…を備えている。
【0036】
本実施形態では、支持部13は、カゴ本体11の底部に相当し、間隔を空けて配置された複数の第1線材16A、16A、…と、各第1線材16Aに直交する方向に間隔を空けて配置された複数の第2線材16B、16B、…と、により、構成されている。第1線材16Aと第2線材16Bとが交差する位置で、第1線材16Aと第2線材16Bとは、溶接等により接合されている。
【0037】
さらに、第1線材16Aおよび第2線材16Bは、支持部13の周縁において、立ち上がるように屈曲し、カゴ本体11の開口部11aまで延在し、側壁部14を形成している。側壁部14には、支持部13の周縁から立ち上った各第1線材16Aおよび各第2線材16Bと交差するように、複数の第3線材16C、16C、…が配置されている。
【0038】
各第3線材16Cは、側壁部14を周回するように配置されており、第1線材16Aおよび第2線材16Bとのそれぞれに交差する位置において、これらと溶接等により接合されている。複数の第3線材16C、16C、…は、上下方向に間隔を空けて配置されており、その最上部に位置する第3線材16Cが、カゴ本体11の開口部11aを形成している。
【0039】
3.蓄熱体20について
ここで、図5を参照して、収納カゴ10に収納される蓄熱体20について説明する。本実施形態に係る蓄熱体20は、潜熱蓄熱材を収容する容器本体21Aと、これを容器本体21Aに封止する蓋体21Bと、からなる容器21を備えており、容器21には、潜熱蓄熱材(図示せず)が封入されている。
【0040】
ここで、潜熱蓄熱材としては、少なくとも常温では固相状態であり、湯煎により溶融するものであれば、特に限定されるものではない。潜熱蓄熱材は、たとえば25℃以上、100℃以下の温度範囲において、固相状態から液相状態に相変化する相変化温度を有するものが好ましい。以下、容器21は、樹脂からなり、その樹脂は、湯煎の熱により軟化しないものが好ましく、その樹脂の軟化点は100℃以上であることが好ましい。
【0041】
蓄熱体20は、扁平した直方体状の形状であり、容器本体21Aに装着された蓋体21Bが突出しないように、陥没した形状になっている。蓋体21Bの両側には、肩部24、24が形成されている。
【0042】
蓄熱体20には、収納カゴ10に収容した姿勢で、カゴ本体11の支持部13に接触する底面22が形成されている。蓄熱体20の底面22は、矩形状の平面であり、本発明でいう「矩形平面」に相当する。蓄熱体20の底面22は、対向する一対の短辺22a、22aと、一対の長辺22b、22bにより、構成されている。なお、図7では、便宜上、蓄熱体20の底面22と上面23とを示しているが、底面22は、収納カゴ10の収納時に、下方を向いた矩形平面であればよく、蓄熱体20を配置する姿勢によっては、図7に示す蓄熱体20の底面22と上面23が逆転してもよい。
【0043】
さらに、蓄熱体20は、長辺22b側から底面22と上面23とを繋ぐ、一対の幅広側面25、25を有しており、短辺22a側から底面22と上面23とを繋ぐ、一対の幅狭側面26、26とを有している。一方側の幅狭側面26が、肩部24、24の表面となっている。蓄熱体20には、底面22の一方の短辺(蓋体21B側の端面)22aに隣接し、一方の短辺22aから蓄熱体20の幅狭側面26までの間に、底面22に対して傾斜した傾斜面27が形成されている。
【0044】
4.収納カゴ10と蓄熱体20との関係について
このような形状を有した複数の蓄熱体20と、これらを収納する収納カゴ10との関係を、より詳細に説明する。図4および図6に示すように、本実施形態では、収納カゴ10の支持部13において、第1線材16Aは、複数の蓄熱体20、20、…を配列した状態で、各蓄熱体20の底面22を支持するように、間隔を空けて併設されている。
【0045】
より具体的には、図6に示すように、2つの第1線材16A、16Aは、一対の短辺22a、22aよりも内側の領域(支持領域)Gにおいて、蓄熱体20の底面22を支持するように、配置されている。本実施形態では、収納カゴ10内において、2列に蓄熱体20を配列させる。各列の蓄熱体20は、2本の第1線材16A、16Aにより、支持されている。ただし、収納カゴ10に収納した蓄熱体20が、第1線材16Aおよび第2線材16B同士の間から脱落せず、後述する蓄熱体20が回動することが可能であれば、第1線材16Aの本数は特に限定されるものではない。さらに、図6に示すように、第2線材16Bは、蓄熱体20の長辺22bに沿うように配置される。複数の第2線材16B、16B、…は、隣接する第2線材16B、16B同士の間に、蓄熱体20が位置するように、配置されている。
【0046】
本実施形態では、収納カゴ10には、複数の蓄熱体20を収納した状態で、各蓄熱体20を仕切る仕切り部15が、さらに形成されている。仕切り部15は、蓄熱体20、20、…同士を第2線材16Bに沿って仕切るように配設された線材からなる。仕切り部15は、第1線材16Aの方向に沿って、等間隔に配置されている。仕切り部15は、カゴ本体11の開口部11aに向かって、第2線材16Bから立設するように、第2線材16Bに接合されている。仕切り部15は、凹字状であり、その中央には、支持部13に向かって凹むように屈曲した屈曲部15aが形成されており、この屈曲部15aは、第2線材16Bの中央に形成されている。
【0047】
図2に示すように、収納カゴ10の平面視において、蓄熱体20を収納カゴ10に収納した状態で、肩部24側の底面22の短辺22aが、第1線材16Aと第2線材16Bとにより囲まれた空間Sに位置するように、第1線材16Aおよび第2線材16Bが配置される。
【0048】
本実施形態では、収納カゴ10に蓄熱体20を収納する際には、仕切り部15に沿って、これらの間に、カゴ本体11の開口部11aから、蓄熱体20を、2列で収納する。本実施形態では、2列の蓄熱体20の肩部24同士は対向しており、空間Sは、支持部13の第1線材16Aが延在する方向に沿って、2列に形成されている。このように、蓄熱体20は収納カゴ10内で間隔を置いて整列されるため、洗浄装置30による洗浄時は洗浄水Wが蓄熱体20の間を通過して蓄熱体20全体を効率よく洗浄することができ、加熱装置50による加熱時は湯Hが蓄熱体20全体に回りやすく、ムラなく加熱することができる。
【0049】
そして、図6に示すように、蓄熱体20の加熱後、加熱した蓄熱体20を収納カゴ10から取り出す際に、一方の短辺22aが位置する蓄熱体20の上部20a(上側の肩部24)を下方に押し込む。この際に、蓄熱体20は第1線材16Aを中心に回動し、その短辺22aを含む下側の肩部24が、第1線材16Aと第2線材16Bにより囲まれた空間Sに入り込む。これにより、蓄熱体20を仕切り部15で案内しながら、収納カゴ10内の仕切り部15、15同士の間で回動させることができる。この回動により、蓄熱体20の底面22の他方の短辺22aを含む部分20cが持ち上がる。
【0050】
特に、蓄熱体20の傾斜面27を水平方向に近づくように、蓄熱体20を押し込むことにより、傾斜面27が無い場合と比べて蓄熱体20をさらに回動させることができるため、蓄熱体20の底面22の他方の短辺22aを含む部分20cを、さらに持ち上げることができる。これにより、収納カゴ10から蓄熱体20を1つずつ簡単に取り出すことができる。
【0051】
また、本実施形態では、支持部13に向かって凹むように屈曲した屈曲部15aが、蓄熱体20の傾斜面27を含む肩部24に対向するように形成されているので、仕切り部15と第2線材16Bとの間に、蓄熱体20の上側の肩部24が潜り込むことを規制し、蓄熱体20が1つの場合でも、蓄熱体20が仕切り部15の中央に寄ったときに、その下部が仕切り部15に潜り込むのを規制することができる。また、仕切り部15の部分のうち、屈曲部15a以外の部分により、蓄熱体20の回動時に、蓄熱体20が仕切り部15を乗り越えることを防止することができる。
【0052】
このようにして、複数の蓄熱体20、20、…が、仕切り部15で仕切られた状態で、収納カゴ10に緻密に配列されていたとしても、押し込んだ1つの蓄熱体20の回動により、蓄熱体20の持ち上がった部分(すなわち他方の短辺22aを含む部分20c)を作業者は把持し、収納カゴから蓄熱体20を1つずつ簡単に取り出すことができる。
【0053】
5.収納カゴ10の取っ手12と浸漬槽51との関係について
浸漬槽51に浸漬させるに好適な収納カゴ10の構造をより詳細に説明する。
図2図6に示すように、収納カゴ10には、一対の取っ手12、12を備えている。取っ手12は、カゴ本体11の開口部11aに、開口部11aに対して回動自在に取り付けられている。
【0054】
具体的には、各取っ手12は、開口部11aに回動自在に取り付けられた線材からなるフレーム12Aと、フレーム12Aの中央に取り付けられ、作業者が把持する把持部12Bとを備えている。フレーム12Aと把持部12Bは、線材により形成されたものであり、フレーム12Aの両端部には、環状部12a、12aが形成されている。環状部12aの内部に、カゴ本体11の開口部11aを形成する第3線材16Cが挿通されている。これにより、フレーム12Aが、カゴ本体11の開口部11aに対して回動することが可能となる。
【0055】
さらに、図3に示すように、取っ手12は、開口部11aに対して取っ手12が起立した姿勢から、収納カゴ10の内側に、所定の回動範囲RIで回動自在である。取っ手12が起立した姿勢とは、収納カゴ10の側面視において、取っ手12のフレーム12Aが鉛直方向に延在する状態である。本実施形態では、図3および図6に示すように、収納カゴ10は、取っ手12の回動範囲RIを、収納カゴ10に収納された状態の蓄熱体20の上面23よりも高い位置まで、制限する制限部18を備えている。
【0056】
なお、本実施形態では、取っ手12を内側に回動させても、蓄熱体20上面23よりも高い位置に取っ手12の把持部12Bは位置するので、本実施形態の如く、制限部18は、取っ手12の回動範囲RIを、カゴ本体11の開口部11aの近傍までにする(収納カゴ10の側面視において、側面視でフレーム12Aが水平方向に延在する)ことが好ましい。
【0057】
図4に示すように、制限部18は、フレーム12Aの両端の環状部12a、12aをわたすようにフレーム12Aに接合された線材である。取っ手12のフレーム12Aが、回動範囲RIまで回動すると、カゴ本体11の側壁部14(具体的には、第1線材16A)に、制限部18が係止される。なお、本実施形態では、制限部18は、取っ手12に取り付けられたが、取っ手12の内側の回動を制限することができるのであれば、カゴ本体11に設けられてもよい。
【0058】
図3に戻り、取っ手12は、カゴ本体11の開口部11aに対して取っ手12が起立した姿勢から、収納カゴ10の外側に回動自在である。図7(a)に示すように、各取っ手12が、収納カゴ10の外側に向かって最大の範囲ROで回動した最大回動位置において、一対の取っ手12、12が対向する方向に沿った収納カゴ10の幅W1は、浸漬槽51の対向する開口縁51aの幅W2よりも広くなっている。なお、「一対の取っ手12、12が対向する方向に沿った収納カゴ10の幅W1」とは、各取っ手12の最大回動位置において、一対の取っ手12、12が対向する方向に沿った、一対の取っ手12、12の最外側部分12c、12c間の距離のことをいう。なお、収納カゴ10のカゴ本体11を浸漬槽51に浸漬することから、カゴ本体11の幅W3は、浸漬槽51の対向する開口縁51aの幅W2よりも狭くなっている。
【0059】
蓄熱体20を加熱する際には、複数の蓄熱体20、20、…を収納カゴ10に収納した状態で、収納カゴ10を浸漬槽51に投入し、蓄熱体20を湯Hに浸漬する。なお、この浸漬を行う前に、蓄熱体20が湯に浸漬されるよう浸漬槽51に投入する湯Hの量を調整する。
【0060】
ここで、複数の蓄熱体20、20、…を収納カゴ10に収納したまま浸漬槽51に投入する際に、図7(a)に示すように、収納カゴ10の取っ手12が外側に最大回動位置にある姿勢で、作業者がカゴ本体11の開口部11aを持って、収納カゴ10を浸漬槽51の湯Bに浸漬することがある。
【0061】
このような場合であっても、取っ手12が最大回動位置における収納カゴ10全体の幅W1は、浸漬槽51の対向する開口縁51aの幅W2よりも広くなっているので、カゴ本体11の一部が、浸漬槽の開口縁51a内に投入されても、取っ手12は浸漬槽51の開口縁51aに当たり、開口縁51a内に入り込むことが阻止される。このため、取っ手12が開口縁51aとカゴ本体11の間に挟まった状態のまま浸漬槽51内に入り込むことを防止することができる。
【0062】
さらに、図7(b)に示すように、収納カゴ10の浸漬時に、収納カゴ10の制限部18が、収納カゴ10の内側の取っ手12の回動範囲RIを、収納カゴ10に収納された状態の蓄熱体20の上面23よりも高い位置まで、制限するので、取っ手12を、湯面HLよりも高い位置に配置することができる。これにより、作業者の手が浸漬槽51の湯Hに触れずに取っ手12、12を掴み、作業者が加熱した蓄熱体20を収納カゴ10ごと浸漬槽51から安全に取り出すことができる。
【0063】
また、収納カゴ10保管時に、取っ手12を内側に回動した状態で保管すれば、隣り合う収納カゴ10同士で干渉し合うのを防ぐことができ、さらに、取っ手12の上に別の収納カゴ10を積み重ねることで、別の収納カゴ10の底面が入り込むことなく、収納された蓄熱体20を保護し、省スペースに保管することができる。
【0064】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0065】
1:再利用システム、10:収納カゴ、11:カゴ本体、11a:開口部、12:取っ手、13:支持部、15:仕切り部、16A:第1線材、16B:第2線材、18:制限部、20:蓄熱体、22:底面(矩形平面)、22a:短辺、22b:長辺、27:傾斜面、30:洗浄装置、50:加熱装置、51:浸漬槽、51a:開口縁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7