(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119291
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】乳性飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/38 20210101AFI20220809BHJP
A23L 29/238 20160101ALI20220809BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20220809BHJP
A23C 9/152 20060101ALI20220809BHJP
A23C 9/154 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
A23L2/38 P
A23L29/238
A23L2/52
A23C9/152
A23C9/154
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021016287
(22)【出願日】2021-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】里 紗弥香
【テーマコード(参考)】
4B001
4B041
4B117
【Fターム(参考)】
4B001AC02
4B001AC03
4B001AC20
4B001BC01
4B001EC01
4B041LC02
4B041LC10
4B041LD01
4B041LE08
4B041LH07
4B041LK07
4B041LK09
4B041LK37
4B041LP04
4B117LC01
4B117LE10
4B117LK08
4B117LK12
4B117LK18
4B117LL02
4B117LL04
4B117LP05
4B117LP17
(57)【要約】
【課題】乳性飲料において白色度を高めることができる新規な技術を提供する。
【解決手段】飲料中の無脂乳固形分量が1.0質量%以上である乳性飲料であって、大豆多糖類およびフィチン酸を含む乳性飲料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料中の無脂乳固形分量が1.0質量%以上である乳性飲料であって、
大豆多糖類およびフィチン酸を含む乳性飲料。
【請求項2】
前記大豆多糖類の含有量が0.05~1.0質量%である、請求項1に記載の乳性飲料。
【請求項3】
前記フィチン酸の含有量が0.05~0.5質量%である、請求項1または2に記載の乳性飲料。
【請求項4】
ペクチンを非含有である、請求項1から3のいずれか一つに記載の乳性飲料。
【請求項5】
濃縮飲料である、請求項1から4のいずれか一つに記載の乳性飲料。
【請求項6】
透明な容器に充填されている容器詰め飲料である、請求項1から5のいずれか一つに記載の乳性飲料。
【請求項7】
糖度が25以上である、請求項1から6のいずれか一つに記載の乳性飲料。
【請求項8】
乳性飲料の白色度を高める方法であって、
飲料中の無脂乳固形分量を1.0質量%以上とするとともに、大豆多糖類およびフィチン酸を含有させることを含む方法。
【請求項9】
前記大豆多糖類の含有量を0.05~1.0質量%として飲料中に含有させる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記フィチン酸の含有量を0.05~0.5質量%として飲料中に含有させる、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記乳性飲料がペクチンを非含有である、請求項8から10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
前記乳性飲料が濃縮飲料である、請求項8から11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
前記乳性飲料が透明な容器に充填されている容器詰め飲料である、請求項8から12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
前記乳性飲料の糖度を25以上とする、請求項8から13のいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乳性飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
乳を含み、該乳由来の風味を楽しむことができる乳性飲料が親しまれている。乳性飲料においては、消費者等が乳を想起することができるようにすることなどを意図し、白色等の外観を呈するように飲料が構成されている。
【0003】
一方、乳性飲料においては、無脂乳固形分の含有量が多くなるにつれて、保存等を行ったときにタンパク質のアミノ基と還元糖との間で起きる反応などを原因として褐変が生じ、製造直後の白さが失われてしまい、外観が悪化する場合がある。
乳性飲料において色調等の劣化を抑制する方法としては、例えば特許文献1に記載の発明が提案されている。また、出願人も特許文献2に記載の発明を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第01/097624号 パンフレット
【特許文献2】特開2019-198322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
商品設計の自由度などの観点から、乳性飲料の白色度を高めることができる技術について、さらなる選択肢が存在することが好ましい。
本発明は、乳性飲料において白色度を高めることができる新規な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述のとおり、乳性飲料においてその白さが失われると外観が悪化してしまう。本発明者は、鋭意研究の結果、所定の無脂乳固形分量とするとともに大豆多糖類およびフィチン酸を含有させることで、白色度をより高めることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]
飲料中の無脂乳固形分量が1.0質量%以上である乳性飲料であって、
大豆多糖類およびフィチン酸を含む乳性飲料。
[2]
前記大豆多糖類の含有量が0.05~1.0質量%である、[1]に記載の乳性飲料。
[3]
前記フィチン酸の含有量が0.05~0.5質量%である、[1]または[2]に記載の乳性飲料。
[4]
ペクチンを非含有である、[1]から[3]のいずれか一つに記載の乳性飲料。
[5]
濃縮飲料である、[1]から[4]のいずれか一つに記載の乳性飲料。
[6]
透明な容器に充填されている容器詰め飲料である、[1]から[5]のいずれか一つに記載の乳性飲料。
[7]
糖度が25以上である、[1]から[6]のいずれか一つに記載の乳性飲料。
[8]
乳性飲料の白色度を高める方法であって、
飲料中の無脂乳固形分量を1.0質量%以上とするとともに、大豆多糖類およびフィチン酸を含有させることを含む方法。
[9]
前記大豆多糖類の含有量を0.05~1.0質量%として飲料中に含有させる、[8]に記載の方法。
[10]
前記フィチン酸の含有量を0.05~0.5質量%として飲料中に含有させる、[8]または[9]に記載の方法。
[11]
前記乳性飲料がペクチンを非含有である、[8]から[10]のいずれか一つに記載の方法。
[12]
前記乳性飲料が濃縮飲料である、[8]から[11]のいずれか一つに記載の方法。
[13]
前記乳性飲料が透明な容器に充填されている容器詰め飲料である、[8]から[12]のいずれか一つに記載の方法。
[14]
前記乳性飲料の糖度を25以上とする、[8]から[13]のいずれか一つに記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、乳性飲料において白色度を高めることができる新規な技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の1つの実施形態について、詳細に説明する。
本実施形態は、白色の外観(容器詰め飲料である場合にはその内容物の外観)を有する乳性飲料に関する。本実施形態の乳性飲料は、無脂乳固形分量が1.0質量%以上であり、大豆多糖類およびフィチン酸を含む。
【0010】
本明細書において、乳性飲料とは、乳を含む飲料をいう。
本実施形態において、原材料として用いる乳は、動物又は植物由来のいずれの乳であってもよい。例えば、牛乳、山羊乳、羊乳、馬乳等の獣乳、豆乳等の植物乳を用いることができ、牛乳が一般的である。これらの乳は、単独又は二種類以上の混合物として用いることができる。また、これらの乳を、乳酸菌やビフィズス菌等の微生物を用いて発酵させた発酵乳として用いることもできる。
乳の形態は特に限定されず、例えば、全脂乳、脱脂乳、乳清、乳蛋白濃縮物が挙げられ、また、粉乳や濃縮乳から還元した乳も使用できる。
【0011】
本明細書において無脂乳固形分(SNF)とは、乳から水分及び脂質を除いた残りの成分をいい、蛋白質、乳糖および無機質などにより構成されている。
飲料における無脂乳固形分量の調整は、例えば、原材料として使用される乳の形態や量を調整するなどして行うことができる。また、飲料中の無脂乳固形分量は、例えば製造に用いられる原材料に基づき算出することができるほか、ケルダール法などにより測定することができる。
【0012】
また、本実施形態の乳性飲料においては、乳に加えて、大豆多糖類を含有する。
大豆多糖類とは、大豆に由来する水溶性の多糖類をいう。
大豆多糖類は、特に限定されないが、例えば、乳蛋白質の安定化剤として知られたものが使用でき、大豆製品の製造工程において副生するオカラ(繊維状の絞りかす)から抽出精製された多糖類であって、含有されるガラクツロン酸のカルボキシル基に由来して酸性下マイナスに帯電しているものなどが使用できる。市販品としては、例えば、商品名「SM-1200」(三栄源エフ・エフ・アイ社製)などが挙げられる。
大豆多糖類は、ペクチンと比較してより少ない量で本実施形態の乳性飲料中の乳蛋白質の安定性を改善でき、好ましい。
【0013】
また、本実施形態の乳性飲料においては、大豆多糖類とともにフィチン酸(イノシトールのヘキサリン酸エステル、(1r,2R,3S,4s,5R,6S)-cyclohexane-1,2,3,4,5,6-hexayl hexakis[dihydrogen (phosphate)])を含有する。
なお、フィチン酸が本実施形態の飲料中にどのようにして含有されるようになるかは特に限定されず、単独で飲料中に添加されてもよいほか、他の物質(例えば、果汁や酸味料など)との混合物として飲料中に添加されてもよい。
【0014】
無脂乳固形分量が1.0質量%以上である乳性飲料において乳に加えて大豆多糖類およびフィチン酸を含有するように構成することで、乳性飲料の外観における白色度を高めることができる。
本実施形態の乳性飲料において、大豆多糖類の含有量は特に限定されず、当業者が適宜設定できるが、飲料中の乳蛋白質の安定性を改善できるため、0.05~1.0質量%であることが好ましく、さらにより好ましくは0.1~0.5質量%である。
本実施形態の乳性飲料において、フィチン酸の含有量も特に限定されず、当業者が適宜設定できるが、より白色度を高めることができるため、0.05~0.5質量%であることが好ましい。
また、本実施形態の乳性飲料において、大豆多糖類とフィチン酸の含有量の比率についても特に限定されず、当業者が適宜設定できるが、乳蛋白質安定性の観点から、フィチン酸1質量部に対し大豆多糖類0.5~5質量部が好ましく、フィチン酸の含有量が0.15質量%以下であり且つフィチン酸1質量部に対し大豆多糖類1~5質量部との関係を満たすことがより好ましい。
【0015】
なお、乳性飲料の白色度は無脂乳固形分量が多い方が高くなるため、無脂乳固形分量:2.0質量%以上が好ましく、より好ましくは2.5質量%以上であり、3.0質量%以上、3.5質量%以上、4.0質量%以上、4.5質量%以上、5.0質量%以上と、無脂乳固形分量が多くなるにつれてさらにより好ましくなる。
【0016】
本明細書において、白色度とは、飲料の白さに関する指標であり、分光測色計によって求められる明度に係るL値と色相・彩度に係るa値およびb値に基づき、以下の式を用いて求めることができる。
W(白色度)=100-sqr〔(100-L)2+(a2+b2)〕
【0017】
また、さらに好ましい態様として、本実施形態に係る乳性飲料を85℃で2~3秒間加熱する場合に以下の関係を満足するように原材料を構成することが挙げられる。
加熱後白色度-加熱前白色度>0
【0018】
加熱後白色度と加熱前白色度との差については原材料の構成によって調節することができ、具体的には糖度によりその値を調節することができ、0より大きいようにするためには、糖度をより高めればよい。より具体的には、糖度を30以上、より好ましくは35以上、さらに好ましくは40以上にするなどすればよい。
【0019】
なお、上記成分値の上限値については特に限定されず、それぞれについて当業者が適宜設定することができるが、乳性飲料の粘度が上がってしまい製造時に送液しにくい、乳蛋白質が不安定化するなどの観点から、無脂乳固形分量:6.0質量%以下、大豆多糖類:1.0質量%以下、フィチン酸:0.5質量%以下とすることが好ましい。
また、飲料中の大豆多糖類、フィチン酸の含有量は、例えば製造に用いられる原材料に基づき算出することができる。
【0020】
また、飲料中の乳蛋白質の安定性の観点から、本実施形態の乳性飲料は糖度が25以上であることが好ましい。
本明細書において糖度(Brix)とは、20℃における糖用屈折計の示度であり、例えば、デジタル屈折計Rx-5000α(アタゴ社製)を使用して20℃で測定した飲料における可溶性固形分量を意味する。糖度の調整は、例えば原材料として使用される乳の形態や量の調整、後述する糖度調整剤の配合などにより行うことができる。
なお、糖度の上限値については特に限定されないが、製造時における粘度との関係から、60以下が好ましい。
【0021】
本実施形態においては、本発明の効果を得ることができる範囲で必要に応じて他の成分を適宜、乳性飲料中に含ませることができる。
本実施形態の飲料において含有される他の成分としては、例えば、水の他、pH調整のための酸味料、果汁や、糖度調整剤、乳タンパク質安定化剤、高甘味度甘味料、香料、色素などが挙げられる。
なお、本実施形態の飲料においては、飲料の粘度が上がってしまうことにより、製造時のライン送液が悪く、食感(テクスチャー)への影響が大きいとの観点、また、飲料の糖度が高い場合にはゲル化してしまうという観点から、ペクチンを含有しないことが好ましい。
【0022】
酸味料としては、例えば、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、酢酸、グルコン酸、コハク酸、フマル酸等の有機酸又はその塩、リン酸等の無機酸またはその塩などが挙げられる。
果汁としては、例えば、オレンジ、レモン、グレープフルーツ等の柑橘系の果汁や、ブドウ、モモ、リンゴ、バナナなどの果汁が挙げられる。
なお、本実施形態の乳性飲料において、pHは特に限定されず当業者が適宜設定できるが、例えばpHを7未満とすることができ、より好ましくは4未満とすることができる(このとき、酸性乳性飲料とも称される)。
pHの調整は、例えば、酸味料を使用する方法が挙げられるほか、発酵乳を使用する方法、果汁を使用する方法、またはこれらの方法を併用する方法により行うこともできるが、所望のpHとすることができれば特に限定されない。
【0023】
糖度調整剤としては、例えば、ショ糖、麦芽糖、果糖、ブドウ糖、果糖ブドウ糖液糖、オリゴ糖等の糖類や、エリスリトール、マルチトール、キシリトール等の糖アルコールや、難消化性デキストリン、寒天等の食物繊維などが挙げられる。
【0024】
乳蛋白質安定化剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ジェランガム、グアーガム、キサンタンガム、アラビアガムなどが挙げられる。なお、上述の大豆多糖類も乳蛋白質安定化剤として作用し得る。
【0025】
高甘味度甘味料としては、アセスルファムカリウム、スクラロース、ステビア、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、グリチルリチン、グリチルリチン酸ジカリウム、ソーマチンなどが挙げられる。
【0026】
本実施形態に係る乳性飲料は、容器等に入れられた状態のものを摂取する飲料(ストレート飲料)としてもよいほか、容器等に収容されて保存されるとともに、任意の濃度に水や牛乳等で希釈して飲用する飲料(濃縮飲料)としてもよい。希釈倍率としては、例えば、3~5倍とすることができる。通常、ストレート飲料よりも乳成分や糖分が多く、褐変しやすいため、濃縮飲料に本実施形態の構成が適用されることが好ましい。
容器としては、例えば、ガラス製、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチック製、紙製、アルミ製、スチール製の密封容器が挙げられる。このうち、透明な容器(内容物を透けて見ることができ、内容物の外観を開封することなく確認できる容器)に充填されている飲料は内溶液を視認しやすいため、本実施形態の構成が適用されることが好ましい。
【0027】
本実施形態の乳性飲料は、例えば、飲料中の無脂乳固形分量を1.0質量%以上とするとともに、大豆多糖類およびフィチン酸を含有するように原材料の組成を調整することによって製造することができる。
具体的には、乳と、大豆多糖類およびフィチン酸と、必要によって加えられる液体原料などのその他の成分とを、無脂乳固形分量:1.0質量%以上となるように混合する工程を含む方法により本実施形態の飲料を製造することができる。
液体原料は水のほか、上述の他の成分の溶液や分散液であってもよい。乳、大豆多糖類およびフィチン酸は液体原料に同時に配合されてもよく、また、それぞれが別々に液体原料に配合されてもよく、さらにその順番も特に限定されない。
【0028】
本実施形態に係る製造方法においては、得られた飲料に対して、均質化処理や殺菌処理を行なうようにしてもよい。
均質化処理は、通常、ホモゲナイザーを用いて行うことができる。均質化条件は特に限定されないが、温度5~25℃で圧力10~50Mpaの条件が好ましく挙げられる。また、均質化処理は、殺菌処理の前後のいずれか、もしくは両方で行うことができる。
殺菌処理は、65℃で10分間相当以上の条件(例えば、80~120℃で1~300秒間)で飲料を加熱するなどして行うことができる。また、殺菌処理の方法は当該方法に限定されるものではなく、通常のプレート式殺菌、チューブラー式殺菌、レトルト殺菌、バッチ殺菌、オートクレーブ殺菌等の方法を採用することができる。また、殺菌処理は、均質化処理の前後のいずれか、もしくは両方で行うか、または容器充填前後のいずれか、もしくは両方で行うことができる。
【0029】
また、上述のとおり本実施形態の乳性飲料は容器詰飲料としてもよい。本実施形態の飲料を殺菌された容器詰めの乳性飲料とする方法としては、例えば、容器に飲料をホットパック充填し、充填した容器を冷却する方法、又は容器充填に適した温度まで飲料を冷却して、予め洗浄殺菌した容器に無菌充填する方法などにより行うことができ、特に限定されない。
【0030】
以上、本実施形態によれば、乳性飲料の白色度を高めることができるので、より商品価値の高い乳性飲料を提供することが可能である。
【実施例0031】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
以下の試験においては、実施例、比較例について発酵乳をベースにBx45となるよう糖度を調整した。フィチン酸、大豆多糖類の量を増減させて、殺菌前後と加速試験(55℃7日)後の白色度および粒子径を測定した。また、殺菌後の粘度も測定した。
【0032】
[飲料の調製]
以下に示す手順に従い、実施例および比較例の飲料を調製した。
実施例1~8:発酵乳をよく撹拌し、そこに砂糖、大豆多糖類(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社、SM-1200、以下同じ。)、フィチン酸、50%乳酸、100質量%とする量の水の順で投入した。
比較例1:発酵乳をよく撹拌し、そこに砂糖、50%乳酸、100質量%とする量の水の順で投入した。
比較例2:発酵乳をよく撹拌し、そこに砂糖、フィチン酸、50%乳酸、100質量%とする量の水の順で投入した。
比較例3:発酵乳をよく撹拌し、そこに砂糖、大豆多糖類、50%乳酸、100質量%とする量の水の順で投入した。
各混合物について、ホモゲナイザーを用いて15Mpaの圧力で均質化した後、85℃で2~3秒間加熱し、瓶に充填した後に30秒間倒置し、水冷し、実施例および比較例の容器詰め乳性飲料を得た。
【0033】
各飲料について、糖度は、デジタル屈折計Rx-5000α(アタゴ社製)を使用して飲料を20℃として測定した。無脂乳固形分量、大豆多糖類およびフィチン酸の含有量は、配合した原材料に基づく。なお、実施例、比較例の各飲料においてペクチンは添加しておらず、非含有である。
各飲料の乳酸酸度(%)は1.24に調整し、また、pHは3.20に調整した。
【0034】
発酵乳は、9%還元脱脂粉乳を、乳酸菌を用いて30℃24時間発酵させた後、10℃下、ホモゲナイザーで、圧力15MPaで均質化処理を行った後、加熱殺菌して、10℃以下に冷却したものを用いた。
【0035】
[白色度の算出]
実施例および比較例の各飲料について、分光測色色差計(CM-5 コニカミノルタ株式会社)を用いて、L値(明度)、a値およびb値(色相・彩度)を測定し(条件:シャーレ、反射光、30mm)、次式により白色度を算出した。白色度の測定は、上述の飲料の85℃での2~3秒間の加熱の前後と加速試験後に行った。加速試験は、瓶に詰めた状態で55℃のインキュベータに7日間静置することにより行い、その後、5℃に冷却した。
W(白色度)=100-sqr〔(100-L)2+(a2+b2)〕
【0036】
[乳蛋白質粒子径]
乳蛋白質粒子径を測定することにより、飲料中の乳蛋白質の安定性を判断でき、より値が小さいほうが飲料中の乳蛋白質がより安定に存在しているといえる。
実施例、比較例の各飲料の上記殺菌前後で乳蛋白粒子の粒径(直径)及び粒度分布を粒度分布測定装置(型式LA-960、(株)堀場製作所製)を用いて測定した。粒径としてはメジアン径を採用した。
【0037】
[粘度]
殺菌した実施例、比較例の飲料を5℃に調温し、粘度をビスメトロン粘度計(型式VDA、芝浦セムテック(株))を用いて測定した。
【0038】
【0039】
表1から、大豆多糖類およびフィチン酸を含有する実施例の乳性飲料は、大豆多糖類およびフィチン酸を含有しない比較例1の乳性飲料と比較して、より高い白色度を有していることが理解できる。