(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119340
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】床シート
(51)【国際特許分類】
B32B 3/14 20060101AFI20220809BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20220809BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220809BHJP
E04F 15/10 20060101ALI20220809BHJP
B61D 17/18 20060101ALN20220809BHJP
【FI】
B32B3/14
B32B7/12
B32B27/00 E
E04F15/10 104A
B61D17/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021016393
(22)【出願日】2021-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(72)【発明者】
【氏名】岡本 武明
【テーマコード(参考)】
2E220
4F100
【Fターム(参考)】
2E220AA07
2E220AA10
2E220AB24
2E220AC01
2E220BA19
2E220DA02
2E220GA22X
2E220GA24X
2E220GB32X
4F100AK25
4F100AK25B
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4F100AK52B
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4F100DC21
4F100DC21A
4F100DC21C
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4F100DC22C
4F100DD04
4F100DD04B
4F100GB07
4F100GB31
4F100GB33
4F100JJ07
4F100JJ07A
4F100JL11
4F100JL11B
(57)【要約】
【課題】本発明は、シール材を使用しなくとも止水性や異物侵入防止が確保できる床シートの提供を目的とする。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る床シートは、ベース層と、上記ベース層の表面側に接着層を介して積層される表面層とを備え、上記ベース層が、外縁を突き合わせて配置される複数の第1パッチシートにより形成され、上記表面層が、外縁を突き合わせて配置される複数の第2パッチシートにより形成されており、上記第1パッチシート同士の合わせ目と、上記第2パッチシート同士の合わせ目とが、平面視で重なって並走していない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース層と、
上記ベース層の表面側に接着層を介して積層される表面層と
を備え、
上記ベース層が、外縁を突き合わせて配置される複数の第1パッチシートにより形成され、
上記表面層が、外縁を突き合わせて配置される複数の第2パッチシートにより形成されており、
上記第1パッチシート同士の合わせ目と、上記第2パッチシート同士の合わせ目とが、平面視で重なって並走していない床シート。
【請求項2】
少なくとも上記第2パッチシート同士の合わせ目にシール材が用いられていない請求項1に記載の床シート。
【請求項3】
上記第2パッチシート同士の合わせ目を構成する一対の外縁が、表面側で突き合わされ、裏面側で離間している請求項1又は請求項2に記載の床シート。
【請求項4】
上記接着層が、上記第2パッチシート同士の合わせ目を構成する一対の外縁間に突出する凸状部を有する請求項3に記載の床シート。
【請求項5】
上記複数の第1パッチシート及び上記複数の第2パッチシートが、それぞれ長尺状であり、その長手方向に延びる外縁同士を突き合わせて配置されている請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の床シート。
【請求項6】
平面視で、上記第1パッチシート同士の合わせ目と上記第2パッチシート同士の合わせ目との最小距離が2cm以上である請求項5に記載の床シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床シートに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道、バス等の車両や建造物などが備える床構造体は、床材の表面に床シートを積層することで形成される。このような床構造体は、一般に面積が広く、1枚の床シートで床材表面を覆うことは難しい。例えば鉄道の床材の表面を覆うには、長尺シート状のゴムシートが用いられ、複数枚で鉄道車両床面の短手方向の一端から他端までを被覆する(例えば国際公開第2018/008277号参照)。
【0003】
このように床シート複数枚を並べて使用する場合、外縁が突き合わせられる合わせ目から床構造体の表面まで水や異物が侵入するおそれがある。このため、上記合わせ目にはシール材を塗布することで止水性や異物侵入防止が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
床シートの合わせ目にシール材を用いる場合、施行工数が増え工期や費用が増加するうえ、合わせ目付近で床シート表面に、硬さや高さが異なる不連続部分が生じ易い。
【0006】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、シール材を使用しなくとも止水性や異物侵入防止が確保できる床シートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る床シートは、ベース層と、上記ベース層の表面側に接着層を介して積層される表面層とを備え、上記ベース層が、外縁を突き合わせて配置される複数の第1パッチシートにより形成され、上記表面層が、外縁を突き合わせて配置される複数の第2パッチシートにより形成されており、上記第1パッチシート同士の合わせ目と、上記第2パッチシート同士の合わせ目とが、平面視で重なって並走していない。
【発明の効果】
【0008】
本発明の床シートは、シール材を使用しなくとも止水性や異物侵入防止が確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る床シートを示す模式的斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の床シートの第2パッチシート同士の合わせ目近傍を示す模式的拡大断面図である。
【
図3】
図3は、
図1とは異なる床シートを示す模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
【0011】
本発明の一実施形態に係る床シートは、ベース層と、上記ベース層の表面側に接着層を介して積層される表面層とを備え、上記ベース層が、外縁を突き合わせて配置される複数の第1パッチシートにより形成され、上記表面層が、外縁を突き合わせて配置される複数の第2パッチシートにより形成されており、上記第1パッチシート同士の合わせ目と、上記第2パッチシート同士の合わせ目とが、平面視で重なって並走していない。
【0012】
当該床シートは、表面層とベース層との合わせ目が平面視で重なって並走していない。また、表面層とベース層との間が接着層で封止されているので、仮に表面層の合わせ目から水や異物が侵入したとしても、表面層とベース層との境界で接着層に沿って移動することが防止されるため、ベース層の合わせ目に到達し難い。従って、当該床シートは、水や異物が床構造体の表面まで到達することを抑止できるので、シール材を使用しなくとも止水性や異物侵入防止が確保できる。
【0013】
少なくとも上記第2パッチシート同士の合わせ目にシール材が用いられていないとよい。上述のように当該床シートは、第2パッチシート同士の合わせ目にシール材を用いなくとも止水性や異物侵入防止を確保できる。
【0014】
上記第2パッチシート同士の合わせ目を構成する一対の外縁が、表面側で突き合わされ、裏面側で離間しているとよい。このように上記第2パッチシート同士の合わせ目を構成する一対の外縁を表面側で突き合わせ、裏面側で離間させることで、突き合わせ部分の接触圧が高まり、止水性や異物侵入防止の効果を高めることができる。
【0015】
上記接着層が、上記第2パッチシート同士の合わせ目を構成する一対の外縁間に突出する凸状部を有するとよい。このように上記接着層に、上記一対の外縁間に突出する凸状部を設けることで、さらに止水性や異物侵入防止の効果を高めることができる。
【0016】
上記複数の第1パッチシート及び上記複数の第2パッチシートが、それぞれ長尺状であり、その長手方向に延びる外縁同士を突き合わせて配置されているとよい。上記複数の第1パッチシート及び上記複数の第2パッチシートをこのように構成することで、上記第1パッチシート同士の合わせ目と、上記第2パッチシート同士の合わせ目とが、平面視で交差しない配置とすることができるので、さらに止水性や異物侵入防止の効果を高めることができる。
【0017】
平面視で、上記第1パッチシート同士の合わせ目と上記第2パッチシート同士の合わせ目との最小距離が2cm以上であるとよい。このように上記最小距離を上記下限以上とすることで、さらに止水性や異物侵入防止の効果を高めることができる。
【0018】
ここで、「平面視で重なって並走していない」とは、平面視で重なりがないことに加え、平面視で重なった点における各合わせ目の接線のなす角度が80度以上、好ましくは90度である場合を含む概念である。
【0019】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の一実施形態に係る床シートについて、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1に示す床シート1は、ベース層10と、ベース層10の表面側に積層される表面層20とを備える。表面層20は、第1接着層30を介して積層されている。また、当該床シート1は、ベース層10の裏面側に第2接着層40を備える。
【0021】
当該床シート1は、車両や建造物などの床面Xに敷設される。中でも、当該床シート1は鉄道車両の床面Xに好適に敷設される。
【0022】
<ベース層>
ベース層10は、複数の第1パッチシート11により形成されている。複数の第1パッチシート11は、外縁11aを突き合わせて配置される。具体的には、複数の第1パッチシート11は、それぞれ長尺状であり、その長手方向に延びる外縁11a同士を突き合わせて配置されている。
【0023】
第1パッチシート11は、難燃性ゴム組成物から形成されている。この難燃性ゴム組成物は、1種又は2種以上のゴム成分を加硫することで得られる。この難燃性ゴム組成物は、ゴム成分に加えて無機系難燃剤を含有することが好ましい。なお、上記ゴム成分として、あらかじめ加硫されているものを用いてもよい。また、上記ゴム成分としては、例えばスチレン-ブタジエンゴム等を採用することができる。ここで、スチレン/ブタジエン重量比率は特に限定されないが、23.5以上46未満であることが好ましい。この比率範囲であれば、通常のゴム加工設備によって容易に加工を行うことができる。
【0024】
上記難燃性ゴム組成物に含有される無機系難燃剤は、難燃性ゴム組成物が含有するゴム成分100重量部に対して好ましくは50重量部以上、より好ましくは55重量部以上、さらに好ましくは60重量部以上含有されていると良い。また、無機系難燃剤は、難燃性ゴム組成物が含有するゴム成分100重量部に対して好ましくは90重量部未満、より好ましくは80重量部未満、さらに好ましくは70重量部未満含有されていると良い。無機系難燃剤の含有量が、上記下限値以上であることにより当該床シート1の難燃性が向上し、上記上限値未満であることにより当該床シート1のゴム特性の低下を抑えることができる。
【0025】
この難燃性ゴム組成物に含有される無機系難燃剤は、種々のものを採用できるが、発煙性を抑える観点から水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン又はその両方であることが好ましい。さらに、発煙性の低減等の難燃性を高める観点から、第1パッチシート11を形成する難燃性ゴム組成物には、水酸化アルミニウム及び三酸化アンチモンに加えて、無機系以外の難燃剤として塩素化パラフィンを含有させることが好ましい。
【0026】
上記水酸化アルミニウムは、難燃性ゴム組成物が含有するゴム成分100重量部に対して好ましくは70重量部以上、より好ましくは75重量部以上、さらに好ましくは78重量部以上含有されていると良い。また、この水酸化アルミニウムは、難燃性ゴム組成物が含有するゴム成分100重量部に対して好ましくは88重量部未満、より好ましくは85重量部未満、さらに好ましくは82重量部未満含有されていると良い。水酸化アルミニウムの含有量が、上記下限値以上であることにより発煙量を抑えることができ当該床シート1の難燃性が向上し、上記上限値未満であることによりゴム特性の低下を抑えることができる。
【0027】
上記三酸化アンチモンは、難燃性ゴム組成物が含有するゴム成分100重量部に対して好ましくは2重量部以上、より好ましくは3重量部以上、さらに好ましくは4重量部以上含有されていると良い。また、この三酸化アンチモンは、難燃性ゴム組成物が含有するゴム成分100重量部に対して好ましくは8重量部未満、より好ましくは7重量部未満、さらに好ましくは6重量部未満含有されていると良い。三酸化アンチモンの含有量が、上記下限値以上であることにより当該床シート1の難燃性が向上し、上記上限値未満であることによりゴム特性の低下を抑えることができる。
【0028】
さらに、上記塩素化パラフィンは、難燃性ゴム組成物が含有するゴム成分100重量部に対して好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは1重量部以上、さらに好ましくは1.5重量部以上含有されていると良い。また、この塩素化パラフィンは、難燃性ゴム組成物が含有するゴム成分100重量部に対して好ましくは15重量部未満、より好ましくは10重量部未満、さらに好ましくは9重量部未満含有されていると良い。塩素化パラフィンの含有量が、上記下限値以上であることにより当該床シート1の難燃性が向上し、上記上限値未満であることにより燃焼した際に発生する燃焼ガスの毒性を低くすることができる。
【0029】
この塩素化パラフィンの炭素数、塩素化率は特に限定されるものではないが、炭素数としては炭素数12以上26未満が好ましい。また、塩素化パラフィン分子量中に占める塩素原子の原子量の割合として表す塩素化率としては、難燃性付与の観点から、塩素化率40%以上70%未満が好ましい。
【0030】
なお、第1パッチシート11を形成する難燃性ゴム組成物には、上述した難燃剤以外にも、クレー、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタンなどの各種添加剤も含有させることが可能である。
【0031】
第1パッチシート11の厚さの下限としては、0.5mmが好ましく、1mmがより好ましい。一方、第1パッチシート11の厚さの上限としては、2mmが好ましく、1.5mmがより好ましい。第1パッチシート11の厚さが上記下限未満であると、ベース層10の強度が不足するおそれがある。逆に、第1パッチシート11の厚さが上記上限を超えると、捲回して保管することが困難になるなど取扱性が困難となるおそれがある。ここで、「厚さ」とは、JIS K7130に準拠して測定される平均厚さを意味する。具体的には、厚さ計を用いて、第1パッチシート11の幅方向に等間隔で10箇所の厚さを測定したその平均値を意味している。他の部材においても厚さは同様の定義である。
【0032】
第1パッチシート11の長さは、特に限定されるものではないが、鉄道車両の床面Xの長手方向全域を一枚の第1パッチシート11によって被覆するような長さを有することが好ましい。具体的には、第1パッチシート11の長さの下限としては、10mが好ましく、12mがより好ましく、14mがさらに好ましく、16mが特に好ましい。一方、第1パッチシート11の長さの上限としては、28mが好ましく、26mがより好ましく、24mがさらに好ましく、22mが特に好ましい。
【0033】
第1パッチシート11の幅(短手方向の長さ)は、特に限定されるものではないが、複数枚(例えば三枚)の第1パッチシート11によって鉄道車両の床面の幅方向全域を被覆するような幅を第1パッチシート11が有することが好ましい。具体的には、第1パッチシート11の幅の下限としては、0.3mが好ましく、0.5mがより好ましく、0.9mがさらに好ましい。一方、第1パッチシート11の幅の上限としては、1.5mが好ましく、1.2mがより好ましい。第1パッチシート11の幅が上記下限未満であると、第1パッチシート11同士の合わせ目11bの数が多くなるため、止水性や異物侵入防止の効果が低下するおそれがある。逆に、第1パッチシート11の幅が上記上限を超えると、取扱性が困難となるおそれがある。なお、複数の第1パッチシート11において幅は同一であるとは限らない。
【0034】
第1パッチシート11同士の合わせ目11bを構成する一対の外縁11aは、全長にわたって突き合わされ、離間していないことが好ましい。このように第1パッチシート11同士の合わせ目11bを離間させないことで、床面Xの表面までの水や異物の侵入を抑止し易い。
【0035】
<表面層>
表面層20は、複数の第2パッチシート21により形成されている。複数の第2パッチシート21は、外縁21aを突き合わせて配置される。具体的には、複数の第2パッチシート21は、それぞれ長尺状であり、その長手方向に延びる外縁21a同士を突き合わせて配置されている。
【0036】
また、第1パッチシート11同士の合わせ目11bと、第2パッチシート21同士の合わせ目21bとは、平面視で重なって並走していない。当該床シート1では、複数の第1パッチシート11及び複数の第2パッチシート21を長尺状とし、その長手方向に延びる外縁11a、21a同士を突き合わせて配置することで、第1パッチシート11同士の合わせ目11bと、第2パッチシート21同士の合わせ目21bとが、平面視で交差しない配置となる。このような構成とすることで、さらに止水性や異物侵入防止の効果を高めることができる。
【0037】
第2パッチシート21は、第1パッチシート11と同様の組成とすることができる。特に、第1パッチシート11と第2パッチシート21とは、第1接着層30による接着力の確保の観点から、同じ組成とすることが好ましい。
【0038】
第2パッチシート21の厚さは、第1パッチシート11の厚さと同様とすることができる。第1パッチシート11の厚さと第2パッチシート21の厚さとは異なってもよい。
【0039】
第2パッチシート21の長さは、特に限定されるものではないが、第1パッチシート11と同じ長さとされる。
【0040】
第2パッチシート21の幅は、第1パッチシート11の幅と同様とできるが、第1パッチシート11同士の合わせ目11bと第2パッチシート21同士の合わせ目21bとが平面視で重なって並走していないように、適宜幅が調整されている。このため、複数の第2パッチシート21において幅は同一であるとは限らないが、意匠性の観点から複数の第2パッチシート21の幅は等幅であることが好ましい。
【0041】
平面視で、第1パッチシート11同士の合わせ目11bと第2パッチシート21同士の合わせ目21bとの最小距離としては、2cmが好ましく、5cmがより好ましく、10cmがさらに好ましい。このように上記最小距離を上記下限以上とすることで、さらに止水性や異物侵入防止の効果を高めることができる。中でも、
図1に示すように、第2パッチシート21の幅方向の中央に第1パッチシート11同士の合わせ目11bが位置することが特に好ましい。このように第1パッチシート11同士の合わせ目11bを位置させることで、止水性や異物侵入防止の効果を最大化できる。
【0042】
少なくとも第2パッチシート21同士の合わせ目21bに、好ましくは第1パッチシート11同士の合わせ目11b及び第2パッチシート21同士の合わせ目21bの両方に、シール材が用いられていないとよい。当該床シート1は、第2パッチシート21同士の合わせ目21bにシール材を用いなくとも止水性や異物侵入防止を確保できる。
【0043】
第2パッチシート21同士の合わせ目21bを構成する一対の外縁21aは、
図2に示すように、表面側で突き合わされ、裏面側で離間している。このように第2パッチシート21同士の合わせ目21bを構成する一対の外縁21aを表面側で突き合わせ、裏面側で離間させることで、突き合わせ部分の接触圧が高まり、止水性や異物侵入防止の効果を高めることができる。
【0044】
<第1接着層>
第1接着層30は、第1パッチシート11と第2パッチシート21とを接着する。
【0045】
第1接着層30の厚さの下限としては、50μmが好ましく、60μmがより好ましく、70μmがさらに好ましい。一方、第1接着層30の厚さの上限としては、500μmが好ましく、300μmがより好ましく、200μmがさらに好ましい。第1接着層30の厚さを上記下限以上とすることで、第1パッチシート11と第2パッチシート21とを強固に固定することができ、その結果、第1パッチシート11と第2パッチシート21との相対位置変化や剥離をより確実に抑制できる。逆に、第1接着層30の厚さが上記上限を超えると、施工時や使用時に、第1パッチシート11と第2パッチシート21との位置ずれが生じ易くなるおそれがある。
【0046】
第1接着層30としては、接着剤により形成される層、粘着剤により形成される層、フィルム状基材とこの基材の両面に積層される粘着剤層とを備える両面テープにより形成される層等が挙げられる。第1接着層30としては、これらの中でも粘着性を有する層、すなわち粘着剤により形成される層及び上記両面テープにより形成される層が好ましく、粘着剤により形成される層がより好ましい。粘着剤を有する層は、敷設作業を容易に行うことができ、また剥離作業が必要な場合にはその剥離性に優れ、かつ取扱性及び耐久性が高い。
【0047】
第1接着層30を接着剤により形成する場合、上記接着剤としては、例えば2液混合型接着剤等の反応系接着剤、ホットメルト接着剤、溶剤型接着剤、水分散系接着剤などが挙げられる。
【0048】
第1接着層30を粘着剤により形成する場合、上記粘着剤としては、例えばシリコーンゴムを主成分とするシリコーン系粘着剤、シリコーンゴム以外のゴムを主成分とするゴム系粘着剤、アクリル樹脂を主成分とするアクリル系粘着剤、ウレタン樹脂を主成分とするウレタン系粘着剤等が挙げられ、これらの中で、アクリル系粘着剤が好ましい。ここで「主成分」とは、最も含有量の多い成分であり、例えば含有量が50質量%以上の成分を指す。
【0049】
上記アクリル系粘着剤の主成分であるアクリル樹脂は、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステルを常法によりビニル重合することで得られる。また、上記アクリル樹脂は、光学特性、耐熱性等の向上の観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと改質用モノマーとの共重合体であってもよい。
【0050】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、直鎖状又は分岐状のアルキル基を有する。上記アルキル基の炭素数の下限としては、通常1であり、4が好ましい。一方、上記アルキル基の炭素数の上限としては、18が好ましく、12がより好ましい。具体的な(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
上記アクリル系粘着剤は、イソシアネート系硬化剤等の硬化剤、可塑剤、酸化防止剤、補強剤、充填材、消泡剤、界面活性剤等をさらに含有してもよい。上記アクリル系粘着剤が上記硬化剤を含有する場合、上記アクリル系粘着剤における上記硬化剤の含有量の下限としては、アクリル系粘着剤100質量部に対し、0.1質量部が好ましく、0.4質量部がより好ましく、0.8質量部がさらに好ましい。一方、上記硬化剤の含有量の上限としては、アクリル系粘着剤100質量部に対し、5質量部が好ましく、3質量部がより好ましく、1.5質量部がさらに好ましい。上記硬化剤の含有量が上記下限より小さい場合、接着層2の弾性が低下するおそれがある。逆に、硬化剤の添加量が上記上限を超える場合、接着層2の粘着力が不十分となるおそれがある。
【0052】
第1接着層30を両面テープにより形成する場合、上記両面テープの基材としては、例えば紙、合成樹脂フィルム、布等が挙げられる。また、上記両面テープの粘着剤層を形成する接着剤としては、例えば上述した粘着剤と同様のもの等が挙げられる。
【0053】
第1接着層30は、施工法に依存して、ベース層10と表面層20との界面全体に連続して設けることもできるが、例えば表面層20を構成する第2パッチシート21の裏面側に設けられている場合、
図1に示すように、第2パッチシート21の合わせ目21bに沿って合わせ目31bを有する構成とすることもできる。この構成にあっても、第1接着層30同士の接着力により界面全体に連続して設けたものと同等の止水性や異物侵入防止の効果が得られる。
【0054】
第1接着層30は、
図2に示すように、第2パッチシート21同士の合わせ目21bを構成する一対の外縁21a間に突出する凸状部32を有する。このように第1接着層30に、上記一対の外縁21a間に突出する凸状部32を設けることで、さらに止水性や異物侵入防止の効果を高めることができる。この凸状部32は、例えば表面層20をベース層10に貼り合わせる際の圧縮力により形成することができる。
【0055】
凸状部32は、上記一対の外縁21aに接するように設けられることが好ましい。また、凸状部32の高さの下限としては、0.01mmが好ましく、0.05mmがより好ましい。一方、凸状部32の高さの上限としては、0.15mmが好ましく、0.1mmがより好ましい。凸状部32の高さが上記下限未満であると、止水性や異物侵入防止の向上効果が不十分となるおそれがある。逆に、凸状部32の高さが上記上限を超えると、施工時に第1接着層30の接着力を確保しつつ、凸状部32を形成することが困難となるおそれがある。
【0056】
<第2接着層>
第2接着層40は、床面Xとベース層10とを接着する。第2接着層40は、第1接着層30と同様に構成できるので、詳細説明を省略する。
【0057】
<施工方法>
当該床シート1の施行方法について説明する。なお、以下に説明する施工方法は、一例であって、他の方法で当該床シート1を施行することを妨げるものではない。
【0058】
当該床シート1の施工方法は、準備工程と、ベース層形成工程と、表面層形成工程とを備える。
【0059】
(準備工程)
上記準備工程では、第1パッチシート11及び第2パッチシート21を予め加工する。
【0060】
第1パッチシート11の加工では、例えば第1パッチシート11を加硫成形後、裏面側(地上面側)に第2接着層40を塗布し、さらにその裏面側を全面にわたって剥離シートで覆う。
【0061】
上記離型シートとしては、種々のものを採用可能であり、例えばポリエチレンテレフタレートやポリエチレン等のプラスチックフィルムや、クレープ紙や離型紙等の紙材から構成することができる。ただし、上記離型シートとしては、破断伸び率や伸長回復率を高める観点から、ポリエチレンシートやクレープ紙が好適に用いられる。
【0062】
上記離型シートの破断伸び率の下限としては、10%が好ましく、20%がより好ましく、30%がさらに好ましく、40%が特に好ましい。また、上記離型シートの伸長回復率の下限としては、50%が好ましく、60%がより好ましく、70%がさらに好ましく、80%が特に好ましい。上記離型シートの破断伸び率及び伸長回復率を上記下限値以上とすることで、加工した第1パッチシート11を芯材等に捲回した状態で保管した場合に、上記離型シートに皺、破れ、第2接着層40との間の隙間等が生じない利点を有する。なお、破断伸び率は、JIS K6251で測定される値である。また、伸長回復率は、JIS L1096により測定される値である。
【0063】
上記離型シートは、長手方向に沿って分割される分割線を有しているとよい。例えば一本の分割線が設けられ、この分割線の左右それぞれに離型片が形成され、この左右一対の離型片から上記離型シートを構成することができる。上記離型シートに分割線を設けることで、2つの離型片に分けて上記離型シートを剥離することができる。この場合、一方の離型片のみを剥離した状態で、第1パッチシート11を床面Xに位置合わせしつつ貼り付け、その後に他方の離型片を剥離して貼り付けることで第1パッチシート11を床面Xに固定できる。このような手順を踏むことで、施行中に不用意に第1パッチシート11が位置ずれすることを抑止できる。
【0064】
ここで、上記分割線は、シートを厚さ方向に表面から裏面まで貫通する切断線から構成することも可能であり、また、剥離時等において長手方向に分割する際にシートを容易に切断するための切断容易線から構成することも可能である。この切断容易線としては、例えばミシン目や表面溝等から構成することも可能である。
【0065】
第2パッチシート21の加工も同様に行える。つまり、第2パッチシート21の加工では、例えば第2パッチシート21を加硫成形後、裏面側(地上面側)に第1接着層30を塗布し、さらにその裏面側を全面にわたって剥離シートで覆う。
【0066】
(ベース層形成工程)
上記ベース層形成工程では、複数の第1パッチシート11を床面Xに貼り合わせることでベース層10を形成する。
【0067】
具体的には、複数の第1パッチシート11の上記剥離シートを剥離し、外縁11aを突き合わせて配置しつつ、床面Xに貼り付ける。
【0068】
(表面層形成工程)
上記表面層形成工程では、複数の第2パッチシート21をベース層10に貼り合わせることで表面層20を形成する。
【0069】
具体的には、複数の第2パッチシート21の上記剥離シートを剥離し、外縁21aを突き合わせて配置しつつ、ベース層10に貼り付ける。このとき、第2パッチシート21同士の合わせ目21bが第1パッチシート11同士の合わせ目11bと平面視で重なって並走していないように配置される。この配置は、複数の第1パッチシート11及び複数の第2パッチシート21の幅を予め調整しておくことで実現される。例えば4枚の第1パッチシート11について、両端の2枚の第1パッチシート11の幅を450mm、中央の2枚の第1パッチシート11の幅を9000mmとし、3枚の第2パッチシート21について、全て幅を900mmとすることで、
図1に示すように、第2パッチシート21同士の合わせ目21bが第1パッチシート11同士の合わせ目11bと平面視で重なって並走していない構成とすることができる。
【0070】
以上の手順によって、当該床シート1を例えば鉄道車両の床面Xに施行することができる。
【0071】
<利点>
当該床シート1は、表面層20とベース層10との合わせ目11b、21bが平面視で重なって並走していない。また、表面層20とベース層10との間が第1接着層30で封止されているので、仮に表面層20の合わせ目21bから水や異物が侵入したとしても、表面層20とベース層10との境界で第1接着層30に沿って移動することが防止されるため、ベース層10の合わせ目11bに到達し難い。従って、当該床シート1は、水や異物が床構造体の表面まで到達することを抑止できるので、シール材を使用しなくとも止水性や異物侵入防止が確保できる。
【0072】
[その他の実施形態]
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【0073】
上記実施形態では、複数の第1パッチシート及び複数の第2パッチシートが、それぞれ長尺状であり、その長手方向に延びる外縁同士を突き合わせて配置されている構成を説明したが、第1パッチシート及び第2パッチシートの形状及び突き合せ方は、第1パッチシート同士の合わせ目と第2パッチシート同士の合わせ目とが平面視で重なって並走していない限り、これに限定されるものではない。例えば複数の第1パッチシート及び複数の第2パッチシートが同心円環状で、隣接する円環が付き合わされるように構成されてもよい。また、
図3に示す床シート2のように、複数の第1パッチシート12及び複数の第2パッチシート22が、それぞれ方形状であり、平面視で互いの縦と横との合わせ目が直交するように、つまり平面視で重なって並走していない構成を採用しても、同様の効果を奏する。
【0074】
上記実施形態では、第2パッチシート同士の合わせ目を構成する一対の外縁が、表面側で突き合わされ、裏面側で離間している構成を説明したが、第2パッチシート同士の合わせ目を構成する一対の外縁の構成はこれに限定されるものではない。例えば上記一対の外縁の構成として、全長にわたって突き合わされ、離間していない構成を採用することもできる。
【0075】
また、接着層が、第2パッチシート同士の合わせ目を構成する一対の外縁間に突出する凸状部を有する構成は、必須の構成ではなく、上記凸状部を有さない接着層も本発明の意図するところである。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の床シートは、シール材を使用しなくとも止水性や異物侵入防止が確保できる。
【符号の説明】
【0077】
1、2 床シート
10 ベース層
11、12 第1パッチシート
11a 外縁
11b 合わせ目
20 表面層
21、22 第2パッチシート
21a 外縁
21b 合わせ目
30 第1接着層
31b 合わせ目
32 凸状部
40 第2接着層
X 床面