IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スター精密株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-プリンタ 図1
  • 特開-プリンタ 図2
  • 特開-プリンタ 図3
  • 特開-プリンタ 図4
  • 特開-プリンタ 図5
  • 特開-プリンタ 図6
  • 特開-プリンタ 図7
  • 特開-プリンタ 図8
  • 特開-プリンタ 図9
  • 特開-プリンタ 図10
  • 特開-プリンタ 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022011935
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/38 20060101AFI20220107BHJP
   H04N 1/00 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
B41J29/38 104
B41J29/38 401
H04N1/00 885
H04N1/00 127Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020113365
(22)【出願日】2020-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000107642
【氏名又は名称】スター精密株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(72)【発明者】
【氏名】時田 大介
(72)【発明者】
【氏名】牧田 莉奈
【テーマコード(参考)】
2C061
5C062
【Fターム(参考)】
2C061AP01
2C061AQ04
2C061HJ08
2C061HJ10
2C061HK10
2C061HK11
2C061HN15
2C061HN29
2C061HQ20
5C062AA05
5C062AB22
5C062AB38
5C062AB40
5C062AB42
5C062AB46
5C062AB49
5C062AC04
5C062AC22
5C062AC38
5C062AC58
5C062BA07
(57)【要約】
【課題】 給電と通信に関わる3つのモードに対応し、パワーデリバリー(PD)に非対応のデバイス(端末)も含めて接続可能としつつ、給電とデータ通信を実施可能とするプリンタを提供する。
【解決手段】
プリンタ100は、パワーデリバリー対応のUSBタイプCに準拠したコネクタ302と、コネクタ302の端子に電力を供給する電源部180と、USB制御部152と、モード記憶部158を備え、USB制御部152は、コネクタ302に接続されたデバイスが、パワーデリバリー対応のUSBタイプCに準拠したデバイスであるか否かを判定し、判定した結果と、モード記憶部158の設定値とに基づき、給電および/またはデータ通信の制御を実施する。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーデリバリー対応のUSBタイプCに準拠したコネクタと、
前記コネクタの端子に電力を供給する電源部と、
給電と通信に関して、給電とデータ通信を実施可能な第1のモードと、給電専用である第2のモードと、データ通信専用の第3のモードに対応し、パワーデリバリーに非対応のデバイスも含めて接続可能としつつ、給電とデータ通信を実施可能とする制御を実施するUSB制御部と、
前記第1のモード、前記第2のモード、及び前記第3のモードのいずれかが設定値として記憶されるモード記憶部と、
を備え、
前記USB制御部は、
前記コネクタに接続されたデバイスが、パワーデリバリー対応のUSBタイプCに準拠したデバイスであるか否かを判定し、
前記判定した結果と、前記モード記憶部の設定値とに基づき、給電および/またはデータ通信の制御を実施する、
ことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
パワーデリバリー対応のUSBタイプCに準拠したコネクタと、
前記コネクタの端子に電力を供給する電源部と、
給電と通信に関して、給電とデータ通信を実施可能な第1のモードと、給電専用である第2のモードと、データ通信専用の第3のモードに対応し、パワーデリバリーに非対応のデバイスも含めて接続可能としつつ、給電とデータ通信を実施可能とする制御を実施するUSB制御部と、
前記第1のモード、前記第2のモード、及び前記第3のモードのいずれかが設定値として記憶されるモード記憶部と、
を備え、
前記USB制御部は、
前記コネクタに接続されたデバイスが、パワーデリバリー対応のUSBタイプCに準拠したデバイスであり、かつ前記モード記憶部の設定値が第1のモードである場合には、給電とデータ通信を実施可能とし、
前記コネクタに接続されたデバイスが、パワーデリバリー対応のUSBタイプCに準拠したデバイスであり、かつ前記モード記憶部の設定値が第2のモードである場合には給電、第3のモードである場合にはデータ通信を実施可能とし、
前記コネクタに接続されたデバイスが、パワーデリーには非対応であるデバイスであり、かつ前記モード記憶部の設定値が第1のモードである場合には給電またはデータ通信のいずれか一方を実施可能とし、
前記コネクタに接続されたデバイスが、パワーデリバリーには非対応であるデバイスであり、かつ前記モード記憶部の設定値が第2のモードである場合には給電、前記第3のモードである場合にはデータ通信を実施可能とする制御を実施する、
ことを特徴とするプリンタ。
【請求項3】
パワーデリバリー対応のUSBタイプCに準拠したコネクタと、
前記コネクタの端子に電力を供給する電源部と、
給電と通信に関して、給電とデータ通信を実施可能な第1のモードと、給電専用である第2のモードと、データ通信専用の第3のモードに対応し、パワーデリバリーに非対応のデバイスも含めて接続可能としつつ、給電とデータ通信を実施可能とする制御を実施するUSB制御部と、
前記コネクタに接続されて使用されることが予定されるデバイスについて、事前に、使用用途が、充電であるか、データ通信であるか、が設定されるモード記憶部と、
を備え、
前記USB制御部は、
前記コネクタに接続されたデバイスが、パワーデリバリー対応のUSBタイプCに準拠したデバイスであるとき、前記第1のモードを採用して、給電とデータ通信を実施可能とし、
前記コネクタに接続されたデバイスが、パワーデリバリーには非対応であるデバイスであるとき、前記モード記憶部を参照して、給電のみ、データ通信のみ、のいずれかを決定し、
かつ、
前記コネクタに前記デバイスが接続されたときのモードが、給電のみの第2のモードであり、前記決定がデータ通信のみである場合には、前記第2のモードを、データ通信が可能な前記第3のモードに変更する制御を実施し、
前記コネクタに前記デバイスが接続されたときのモードが、データ通信のみの第3のモードであり、前記決定が給電のみである場合には、前記第3のモードを、給電が可能な前記第2のモードに変更する制御を実施する、
ことを特徴とするプリンタ。
【請求項4】
前記プリンタの前記第1、第2の各モードにおいて、前記コネクタに接続されるデバイスのパワーデリバリーへの対応/非対応に応じて、選択できる給電電圧と最大電流の組が複数用意され、その複数組には、給電電圧が同じで最大電流が異なる少なくとも2組が含まれ、
前記USB制御部は、実際に使用する給電電圧と最大電流の組を選択し、前記コネクタへの給電電力を、その選択に応じて切り替える制御を実施する、
ことを特徴とする、請求項1乃至3の何れか1項に記載の、パワーデリバリーに対応したUSBタイプCコネクタを備えるプリンタ。
【請求項5】
前記電源部の電源容量が、前記コネクタを介した、プリンタの外部への給電用と、プリンタの内部での印刷を含む動作用に分かれており、
前記USB制御部は、前記第1のモードにおいて、前記コネクタに接続されたデバイスから給電及び印刷の要求があるときは、分かれている各電源容量の範囲内で、給電と印刷を実施させる、
ことを特徴とする、請求項1乃至4の何れか1項に記載のプリンタ。
【請求項6】
前記USB制御部は、
前記コネクタに接続されたデバイスが、パワーデリバリー対応のUSBタイプCに準拠したデバイスである場合において、
プリンタが、
給電に関して給電側となり、かつ、データ通信に関して、データを送る側になったときは、
USBのパワーデリバリー規格に従って、データロールスワップを実施させて、プリンタを、データを受ける側に変更し、プリンタからデバイスへの給電と、デバイスからプリンタへのデータの通信を実施し、
給電に関して受電側となり、かつ、データ通信に関して、データを受ける側になったときは、
USBのパワーデリバリー規格に従って、パワーロールスワップを実施させて、プリンタを給電側に変更して、プリンタからデバイスへの給電と、デバイスからプリンタへのデータの通信を実施する、
ことを特徴とする、請求項1乃至5の何れか1項に記載のプリンタ。
【請求項7】
前記USB制御部は、
前記USB制御部が設けられている回路基板の温度が、第1の温度閾値以上となった場合に、前記第1、第2の各モードにおいて、給電電圧は変更せず、最大電流が低くなるように切り替えて変更し、
前記回路基板の温度が、前記第1の温度閾値よりも低い第2の温度閾値以下となった場合に、前記第1、第2の各モードにおいて、給電電圧は変更せず、最大電流を、変更前の最大電流に切り替えて変更する、
ことを特徴とする、請求項4乃至6の何れか1項に記載のプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ等に関し、例えば、キッチンプリンタ、POSシステムに接続して使用可能なPOSプリンタのような、比較的小型のサーマルプリンタ等に関する。なお、USB(Universal Serial Bus)、USB Type-C(あるいはUSB-C)は、共に登録商標である。
【背景技術】
【0002】
USB Type-C(登録商標)のコネクタは、上下左右対称な形状を有することから、コネクタの挿し込み口がリバーシブルであり、どちらの向きでも挿し込むことができるという利便性を有する。また、そのサイズは、マイクロUSBと同等のサイズ(約8.4mm×約2.6mm)にまでコンパクト化されており、タブレットやスマートフォンなどのポータブルデバイス(単にデバイスあるいは端末という場合もある)にも搭載可能である。
【0003】
一方、USB-PD(PowerDelivery)規格は、大電力容量での充電・給電を可能とするために、例えば、電圧5V~12V~20V、電流1.5A~2A~3A~5Aの範囲内で、充電電流・電圧を選択可能であり、例えば、10W・18W・36W・65W・最大100WまでUSB充電・給電が可能とされている。
【0004】
また、USB-PD規格は、従来のケーブルやコネクタとも互換性を備え、USB2.0(最大電力2.5W)、USB3.1(最大電力4.5W)、USBバッテリ充電規格であるBC1.2(最大電力7.5W)とも共存する独立した規格である。
【0005】
USB-Cと、USB-PDの各規格が融合することで、小型のUSBコネクタ及びUSBケーブルを介して、広範囲で大電力の充電・給電が可能となり、近年、この技術が、多様な機器に応用されることが期待されている。
【0006】
特許文献1には、PD(Power Delivery)対応のUSBタイプCに準拠し、外部機器に電力を供給する画像形成装置が示されている。例えば、特許文献1の[0013]には、『印刷を実行した場合に給電が一時停止されることを示す画面を表示し、給電の許可をユーザーから受け付けた場合に、外部機器への給電を開始し、給電中に印刷を実行する場合に給電を停止し、給電が停止されると印刷を実行し、印刷が終了すると、外部機器への給電を再開するので、印刷と外部機器への充電を両立させることができる』と記載されている。
【0007】
また、特許文献1の[0018]及び[0019]では、『画像形成装置100は、外部機器であり、情報処理装置である周辺機器112とUSBケーブル117で接続し、PC116とネットワーク115で接続されている。画像形成装置100は、PC116から画像データを受信して記録紙などの記録媒体に画像データが示す画像を印刷する。また、画像形成装置100は、受電可能な周辺機器にUSBケーブル117を用いて給電可能となっている。そして、画像形成装置100、周辺機器112、及びUSBケーブル117はPD-USB規格に対応している。』と記載されている。この画像形成装置は、PC116に接続されて使用されることから、デスクトップパソコン等の周辺機器としてのプリンタであると考えられ、また、プリンタの種類は、記録媒体として『記録紙』があげられていることから、感光体ドラム式やインクジェット式のプリンタであると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2015-174373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者は、キッチンプリンタ、POSプリンタのような、比較的小型のサーマルプリンタ(感熱紙を使用したプリンタ)にパワーデリバリー対応のUSBタイプCコネクタを搭載し、USBタイプCに準拠した、例えばスマートフォンやタブレットのようなデバイス(端末)との間で、USBケーブルを介して充電(給電)及びデータ通信(例えば印刷データの通信)を実施することを検討した(但し、本発明の適用範囲は、サーマルプリンタに限定されるものではない)。
【0010】
ここで、上記の特許文献1では、プリンタは給電と印刷が両立しておらず、一方を実施するときは他方を停止させる必要がある。これに対し、本発明者は、給電(充電)を実施しながら、印刷も同時に実施できることを前提に検討を行った。この結果、以下の課題が明らかとなった。
【0011】
(1)給電とデータ通信を同時に実行可能とする場合、各々をバランスさせる必要がある。電源の適切な配分や、給電(充電)の際に使用可能な電力容量等の適切な設定が求められ、設計がむずかしくなる。
【0012】
(2)印刷データの通信が行われるということは、印刷処理が同時に実施されるということである。デバイス(端末)へのある程度の大容量の電力伝送と、印刷ヘッドへの電源供給とが同時に行われるため、消費電力が増大する傾向が生じ、電源回路等の発熱によって回路基板の温度が上昇する可能性がある。その上昇の程度が大きいと、例えば、回路部品の劣化が懸念され、また、プリンタの電力定格を超えてしまって最悪の場合にはプリンタの電源が落ちてしまうといった弊害も想定され得る。
【0013】
(3)プリンタに接続されるデバイス(端末)には、USBタイプCには準拠するが、パワーデリバリー(PD)規格には準拠していないものも存在する。これらのデバイス(端末)のプリンタへの接続を一律に禁止すると、ユーザーの使い勝手が悪くなる。したがって、PDに非対応のデバイス(端末)についてもプリンタに接続して使用可能とすることが好ましい。
【0014】
しかし、この場合は、USB規格が不統一であり、デバイス(端末)側の希望する動作をプリンタ側で正確に実施することに関して、困難が生じる。例えば、プリンタは接続されたデバイスを認識はするが、デバイスの要求を受け付けることができないといった問題が生じ、デバイスが希望する動作が実行されない場合も想定され得る。
【0015】
(4)本発明者がデバイスへの給電と印刷データの通信に着眼して検討したところ、ユーザーに提供可能なモードとしては、給電と通信に関わる以下の3つのモードがあることがわかった。第1のモードは、「給電+通信」モードであり、第2のモードは、「給電専用モード」であり、第3のモードは、「通信専用モード」である。
【0016】
プリンタは、USBタイプC(さらにPDにも対応)に準拠したUSBコネクタ(あるいはUSBアダプタ)を実装しているが、プリンタとデバイスの間で実際に行われる動作は、このUSBコネクタに接続するデバイスの仕様、接続に使用するケーブルの種類、接続のタイミング等により、ユーザーの認識しないところでランダムに決められてしまう。この点を考慮すると、プリンタにおいて、USBコネクタにUSBタイプCに準拠したデバイスが接続されたときのモードを、上記3つのモードに個別に切り替えて設定できる(言い換えれば、ユーザーが、プリンタのUSBタイプCの機能を個別に選択できる)ようにするのが好ましい。
【0017】
プリンタのモードを、「給電+通信」が可能な第1のモード、「給電専用モード」である第2のモード、「通信専用モード」である第3のモードに、適宜、切り替えることで、USBユーザーの使い勝手を向上させることができる。
【0018】
但し、この場合、例えば、プリンタが「給電専用モード」である第2のモードに設定されているときに、デバイス(端末)側から、印刷のためのデータ転送要求があったときは、プリンタ側では、データ通信には対応できていないため、印刷の実行ができない。
【0019】
また、例えば、プリンタが「通信専用モード」である第3のモードに設定されているときに、デバイス(端末)側から、充電のための電力供給要求があったときは、プリンタ側では、給電には対応できていないため、給電を実行できない。
【0020】
(5)また、上記(3)のUSB規格の不統一の場合で、さらに、上記(4)のプリンタのモードとデバイス(端末)側の要求とが不整合の場合もあり得る。この場合は、プリンタとデバイス(端末)との間でのネゴシエーションに困難があることから、デバイス(端末)側が望むどおりの処理をプリンタに実施させるのが、さらにむずかしくなる。
【0021】
例えば、プリンタが「給電+通信」の第1のモードに設定されているときに、パワーデリバリーに非対応のデバイス(端末)が接続されたが、ネゴシエーションがうまくいかず、デバイス(端末)側は充電と印刷の双方を希望しているにもかかわらず、例えば給電のみが実施され、印刷は無視されてしまい、ユーザーの意図が反映されない、といったことが想定され得る。
【0022】
(6)上記(1)~(5)の課題の対策をたてる場合に、キッチンプリンタやPOSプリンタ等が小型、軽量かつローコストを指向する製品である点を考慮して、これらの傾向に沿うような対策が求められる。例えば、高価で多機能な電源回路を使用して対応するといった方法は採用が困難である。
【0023】
特許文献1には、上記の課題については記載がなく、その対策についても言及されていない。
【0024】
本発明の1つの目的は、給電と通信に関わる3つの動作モードに対応し、パワーデリバリーに非対応のデバイス(端末)も含めて接続可能としつつ、給電とデータ通信を実施可能とするプリンタを提供することである。
【0025】
本発明の他の目的は、以下に例示する態様及び最良の実施形態、並びに添付の図面を参照することによって、当業者に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0026】
以下に、本発明の概要を容易に理解するために、本発明に従う態様を例示する。
【0027】
第1の態様において、プリンタは、
パワーデリバリー対応のUSBタイプCに準拠したコネクタと、
前記コネクタの端子に電力を供給する電源部と、
給電と通信に関して、給電とデータ通信を実施可能な第1のモードと、給電専用である第2のモードと、データ通信専用の第3のモードに対応し、パワーデリバリーに非対応のデバイスも含めて接続可能としつつ、給電とデータ通信を実施可能とする制御を実施するUSB制御部と、
前記第1のモード、前記第2のモード、及び前記第3のモードのいずれかが設定値として記憶されるモード記憶部と、
を備え、
前記USB制御部は、
前記コネクタに接続されたデバイスが、パワーデリバリー対応のUSBタイプCに準拠したデバイスであるか否かを判定し、
前記判定した結果と、前記モード記憶部の設定値とに基づき、給電および/またはデータ通信の制御を実施する。
【0028】
第1の態様において、プリンタはUSBタイプC(USB Type-C、あるいはUSB-C)コネクタを搭載し、また、USB Power Delivery(USB PD)に対応している。そして、給電と通信に関わる下記の3つのモードを備える。
第1のモード:給電+通信モード(デフォルト)
第2のモード:給電専用モード
第3のモード:通信専用モード
プリンタに接続されるデバイス(端末)の仕様、接続に使用するケーブルの種類、接続のタイミング等により、プリンタとデバイス(端末)の間で実際に行われる動作が、ユーザーの認識しないところでランダムに決められてしまうことがないように、本態様では、デバイスの仕様や用途等に応じて、あらかじめプリンタの給電と通信に関わるモードを選択しておく。
これにより、プリンタとデバイス(端末)の間の給電と双方向の通信について、ユーザーが所望する動作をさせることができる。
【0029】
第2の態様において、プリンタは、
パワーデリバリー対応のUSBタイプCに準拠したコネクタと、
前記コネクタの端子に電力を供給する電源部と、
給電と通信に関して、給電とデータ通信を実施可能な第1のモードと、給電専用である第2のモードと、データ通信専用の第3のモードに対応し、パワーデリバリーに非対応のデバイスも含めて接続可能としつつ、給電とデータ通信を実施可能とする制御を実施するUSB制御部と、
前記第1のモード、前記第2のモード、及び前記第3のモードのいずれかが設定値として記憶されるモード記憶部と、
を備え、
前記USB制御部は、
前記コネクタに接続されたデバイスが、パワーデリバリー対応のUSBタイプCに準拠したデバイスであり、かつ前記モード記憶部の設定値が第1のモードである場合には、給電とデータ通信を実施可能とし、
前記コネクタに接続されたデバイスが、パワーデリバリー対応のUSBタイプCに準拠したデバイスであり、かつ前記モード記憶部の設定値が第2のモードである場合には給電、第3のモードである場合にはデータ通信を実施可能とし、
前記コネクタに接続されたデバイスが、パワーデリバリーには非対応であるデバイスであり、かつ前記モード記憶部の設定値が第1のモードである場合には給電またはデータ通信のいずれか一方を実施可能とし、
前記コネクタに接続されたデバイスが、パワーデリバリーには非対応であるデバイスであり、かつ前記モード記憶部の設定値が第2のモードである場合には給電、前記第3のモードである場合にはデータ通信を実施可能とする制御を実施する。
【0030】
第2の態様では、第1の態様と同様に、デバイスの仕様や用途等に応じて、あらかじめプリンタの給電と通信に関わるモードを選択しておき、プリンタと端末の間の給電と双方向の通信について、ユーザーが所望する動作をさせる。
このとき、デバイスが、パワーデリバリー(PD)対応のUSBタイプCに準拠したデバイスであるか、USBタイプCに準拠しているが、パワーデリバリーには非対応であるデバイスであるかを判定して、その判定結果に応じた制御が実施される。
デバイスがPDにも対応する場合は、プリンタのUSB規格と整合がとれていることから、モード記憶部の設定に応じて、第1のモードでは給電及びデータ通信を実施可能とし、第2のモードでは給電、第3のモードではデータ通信を可能とする。
一方、デバイスがPD非対応の場合は、プリンタのUSB規格とは不整合となる。不整合が生じると、例えば、プリンタとデバイス(端末)間での十分なネゴシエーションができない等の事態が生じ得る。よって、この場合には、モード記憶部の設定値が第1のモードのときは、給電またはデータ通信のいずれか一方を実施可能とし、第2のモードのときは給電を実施可能とし、第3のモードのときは、データ通信を実施可能とする。
これによって、プリンタに、PD対応/PD非対応の双方のデバイス(端末)を接続して、ユーザーが所望する動作を行わせることができる。よって、USBタイプC規格に準拠したコネクタを備えるプリンタの使い勝手を向上させることができる。
【0031】
第3の態様において、プリンタは、
パワーデリバリー対応のUSBタイプCに準拠したコネクタと、
前記コネクタの端子に電力を供給する電源部と、
給電と通信に関して、給電とデータ通信を実施可能な第1のモードと、給電専用である第2のモードと、データ通信専用の第3のモードに対応し、パワーデリバリーに非対応のデバイスも含めて接続可能としつつ、給電とデータ通信を実施可能とする制御を実施するUSB制御部と、
前記コネクタに接続されて使用されることが予定されるデバイスについて、事前に、使用用途が、充電であるか、データ通信であるか、が設定されるモード記憶部と、
を備え、
前記USB制御部は、
前記コネクタに接続されたデバイスが、パワーデリバリー対応のUSBタイプCに準拠したデバイスであるとき、前記第1のモードを採用して、給電とデータ通信を実施可能とし、
前記コネクタに接続されたデバイスが、パワーデリバリーには非対応であるデバイスであるとき、前記モード記憶部を参照して、給電のみ、データ通信のみ、のいずれかを決定し、
かつ、
前記コネクタに前記デバイスが接続されたときのモードが、給電のみの第2のモードであり、前記決定がデータ通信のみである場合には、前記第2のモードを、データ通信が可能な前記第3のモードに変更する制御を実施し、
前記コネクタに前記デバイスが接続されたときのモードが、データ通信のみの第3のモードであり、前記決定が給電のみである場合には、前記第3のモードを、給電が可能な前記第2のモードに変更する制御を実施する。
【0032】
第3の態様では、接続されたデバイス(端末)がパワーデリバリー(PD)対応であるときは、プリンタは、「給電+データ通信」が可能な第1のモードでの動作となり、PD非対応のデバイス(端末)のときは、「給電のみ」又は「データ通信のみ」の何れかを選択して動作するものとする。これが基本的な設計方針となる。
【0033】
PD対応のデバイスについては、PD規格を活かして給電とデータ通信を実施可能とする。その一方、PD非対応のデバイスについては、プリンタとデバイスでUSB規格の不整合が生じた状態では、何れか一方の動作に絞って実行する。
【0034】
また、第3の態様では、プリンタにおけるUSBタイプCのモードを、USBタイプC規格のモードに合わせて、第1のモード(給電+データ通信)、第2のモード(給電のみ)、第3のモード(データ通信のみ)とすることができる。言い換えれば、各モードを個別に設定することが可能である。この点も、基本的な設計方針の1つである。これによってUSBユーザーの使い勝手が向上する。
【0035】
但し、こうすると、PDへの対応/非対応というミスマッチの他に、プリンタのモードとデバイス側の要求とのミスマッチという新しい課題も生じる。そこで、本態様では、モード記憶部を用いた事前設定の手法を導入する。
【0036】
キッチンプリンタやPOSプリンタ等の小型プリンタは、基本的には店舗での注文受付や会計処理といった商業ベースでの利用が中心であり、例えば、本態様のプリンタが店舗に新規設置されたときは、システムの管理者等が、プリンタに接続可能なデバイスの種類と用途を予め指定あるいは限定して、ユーザー(例えば店舗の従業員等)に使用を許可する、というような利用形態となるものと想定される。例えば、本態様のプリンタには、スマートフォンを限定的に接続可能とし、その用途は、印刷のみ、あるいは、充電のみ、とする、というように、具体的に定めることができる。言い換えれば、事前に、使用予定のデバイスと、その用途を特定できるということである。
【0037】
この点に着目すると、モード記憶部に、使用が予定されるデバイスの特定情報(例えばデバイス名)に関連付けて、用途情報(「充電」か「印刷」かを示す情報)を記憶させること(言い換えれば、事前に登録すること)が可能である。モード記憶部は、例えばOS(オペレーションシステム)付属のユーティリティプログラムをCPUやMPUで実行させることで、簡単に実現でき、コスト上昇も抑制される。
【0038】
こうしておくと、プリンタは接続されたデバイスを認識できれば、以降の複雑なネゴシエーションを経ることなく、デバイス側の要求の内容(言い換えれば、デバイスの仕様や用途等に応じた、ユーザーが実行したいと望む動作)を、容易に、かつ素早く検出(検知)することが可能である。
【0039】
その検出(検知)の結果として、例えば、PD非対応のデバイスについてのプリンタ側の動作として、給電のみ、データ通信のみ、のいずれかが決定される。このとき、プリンタの現在のモードが、その決定と不整合であるときは、整合するようにプリンタのモードが自動的に変更される。
【0040】
例えば、プリンタの現在のモードが、給電のみの第2のモードであり、その決定がデータ通信のみである場合には、第2のモードを、データ通信が可能な第3のモードに変更する制御が実施される。同様に、現在のモードが、データ通信のみの第3のモードであり、その決定が給電のみである場合には、第3のモードを、給電が可能な第2のモードに変更する制御が実施される。
【0041】
本態様のプリンタによれば、幅広い種類のUSB規格に準拠した多様な機器を接続対象としつつ、給電と印刷の両立が可能となる。また、プリンタ側とデバイス側とのミスマッチの解消を、ネゴシエーションを極力低減し負担を少なくして、かつ低コストで実現することができる。よって、プリンタを、USBタイプC規格に準拠するUSB機器としても活用したいと望むユーザーの使い勝手が向上し、また、プリンタを従来とは別の用途で、幅広く利用することもできるようになる。よって、プリンタの多様性、利便性が向上する。
【0042】
第1乃至第3の何れか1つの態様に従属する第4の態様において、
前記プリンタの前記第1、第2の各モードにおいて、前記コネクタに接続されるデバイスのパワーデリバリーへの対応/非対応に応じて、選択できる給電電圧と最大電流の組が複数用意され、その複数組には、給電電圧が同じで最大電流が異なる少なくとも2組が含まれ、
前記USB制御部は、実際に使用する給電電圧と最大電流の組を選択し、前記コネクタへの給電電力を、その選択に応じて切り替える制御を実施してもよい。
【0043】
第4の態様では、プリンタに接続されたデバイスの仕様(例えば採用する通信プロトコルの種類)や用途等に応じて、給電電圧と最大電流の組を、予め用意されている複数の組の中から選択する等、切り替えを主体として、電力定格を決定する。
【0044】
言い換えれば、プリンタが第1のモード(給電+データ通信)であるとき、第2のモード(給電のみ)であるときの何れの場合にも対応できるように、各モード毎に、接続されるデバイスのPD対応/PD非対応に応じた給電電圧と最大電流の組を、複数用意し、その電力の組の中から、適切なものを選択し、電力定格を切り替えて給電する、というUSBの給電制御が実施される。
【0045】
選択的な切り替えによる電力定格(電力容量)の変更であるため、例えば、状況に応じて電圧や電流を可変に生成するといった複雑な処理を行う場合と比較して、負担が少なく、高速処理が可能であり、かつ処理負担が少ないという利点がある。
【0046】
また、プリンタのモードとデバイスのPD対応/非対応に応じて選択できる電力の組が複数用意され、その複数組には、電圧が同じで電流(最大電流の値等)が異なる少なくとも2組が含まれる。
【0047】
これにより、どの状況であっても、いずれの電力の組を選択するかによって、電圧を変化させずに、電流を変化させて給電電力を変化させることができる。また、電流を変化させて給電電力(給電パワー)を低下させる手法は、プリンタ側の回路基板の温度が上昇したときの電力低減(パワーセーブ給電)としても利用可能である。
【0048】
第1乃至第4の何れか1つの態様に従属する第5の態様において、
前記電源部の電源容量が、前記コネクタを介した、プリンタの外部への給電用と、プリンタの内部での印刷を含む動作用に分かれており、
前記USB制御部は、前記第1のモードにおいて、前記コネクタに接続されたデバイスから給電及び印刷の要求があるときは、分かれている各電源容量の範囲内で、給電と印刷を実施させてもよい。
【0049】
第5の態様では、電源容量を、外部接続デバイスへの供給用と、印刷等のプリンタ動作用に分ける構成が採用される。言い換えれば、少なくとも2系統の電源ラインが設けられ、一方の電源ラインを給電用に用いてもよく、他方の給電ラインを印刷等のプリンタ動作用に用いてもよい、ということである。例えば、100VのAC(交流)電圧をDC(直流)電圧に変換する際、AC/DC変換器として、出力トランスを2つもつマルチ出力タイプを利用することで、相互の影響が少ない2系統の電源供給線を実現することができる(但し、一例であり、これに限定されるものではない)。そして、例えば、分けた電源容量(電力量)の範囲内で(その電力量を固定して変更せずに)、給電や印刷を実施することで、給電動作の状況が変化しても印刷動作には影響がでず、印刷状況が変化しても給電動作には影響がでないようにすることができ、常に安定した動作が可能である。
【0050】
また、本態様では、給電状況や印刷状況に応じて、各動作に使用できる電力を可変に制御するといった高度な電源管理は不要であり、USB制御部の負担が軽減される。このことは、ローコスト化にも貢献する。
【0051】
第1乃至第5の態様に従属する第6の態様において、
前記USB制御部は、
前記コネクタに接続されたデバイスが、パワーデリバリー対応のUSBタイプCに準拠したデバイスである場合において、
プリンタが、
給電に関して給電側となり、かつ、データ通信に関して、データを送る側になったときは、
USBのパワーデリバリー規格に従って、データロールスワップを実施させて、プリンタを、データを受ける側に変更し、プリンタからデバイスへの給電と、デバイスからプリンタへのデータの通信を実施し、
給電に関して受電側となり、かつ、データ通信に関して、データを受ける側になったときは、
USBのパワーデリバリー規格に従って、パワーロールスワップを実施させて、プリンタを給電側に変更して、プリンタからデバイスへの給電と、デバイスからプリンタへのデータの通信を実施してもよい。
【0052】
USBパワーデリバリー(USB PD)規格では、給電とデータ通信は基本的には双方向の通信である。但し、プリンタにPD対応のUSBタイプCコネクタを搭載した場合の使用では、給電は、プリンタからデバイスへの給電(単方向の給電)であり、また、データ通信は、プリンタからデバイスへの通信がないとはいわないが、主たる通信は、デバイスからプリンタへの印刷データの通信(転送)であり、この主たる通信も、単方向のデータ通信である。
【0053】
方向が一方向である給電やデータ通信を、何の工夫もせずに、PD規格のデフォルト機能である双方向通信のみで実施するのは非効率的といえる。そこで、本態様では、PD規格がもつパワーロールスワップ、データロールスワップの各機能を利用して、上記の単方向の給電やデータ通信を実現する。
【0054】
パワーロールスワップは、給電側(ソース)と受電側(シンク)を入れ替える機能であり、データロールスワップは、データの送信側(ホスト)とデータの受信側(デバイス)とを入れ替える機能である。このスワップ機能を適宜、実施することで、双方向の給電、双方向のデータ通信を基本としつつ、実質的に(一時的に)、プリンタからデバイスへの単方向の給電と、デバイスからプリンタへの単方向のデータ通信とを実現(両立)することができる。
【0055】
第4乃至第6の態様に従属する第7の態様において、
前記USB制御部は、
前記USB制御部が設けられている回路基板の温度が、第1の温度閾値以上となった場合に、前記第1、第2の各モードにおいて、給電電圧は変更せず、最大電流が低くなるように切り替えて変更し、
前記回路基板の温度が、前記第1の温度閾値よりも低い第2の温度閾値以下となった場合に、前記第1、第2の各モードにおいて、給電電圧は変更せず、最大電流を、変更前の最大電流に切り替えて変更してもよい。
【0056】
第7の態様では、プリンタ側で回路基板(プリント基板等)の温度管理を実施し、温度が第1の温度閾値以上となって高温が検出されたときは、温度上昇を抑制する処理を実施する。
【0057】
温度上昇を抑制する処理は、プリンタが第1のモード(給電+データ通信)、又は第2のモード(給電のみ)のときに、給電電圧は変更せず、最大電流が低くなるように切り替え、電力を低下させて、回路等からの発熱を抑えることで実現される。
【0058】
これを実現する簡易な手法は、例えば、第4の態様における、「プリンタのモードとデバイスのPD対応/非対応に応じて選択できる電力の組が複数用意され、その複数組には、電圧が同じで電流(最大電流の値等)が異なる少なくとも2組が含まれる」という構成を利用するものである。
【0059】
言い換えれば、ある状況下で、所定電圧、所定最大電流での給電を行っていたところ、電力量が大きいため回路の発熱が大きく、基板温度が第1の温度閾値を超えてしまったときは、電圧は同じで、最大電流値が低いもう一方の組の給電に切り替えればよい。これによって、給電パワーが低下し、発熱が抑制され得る。電流を変化させて給電電力(給電パワー)を低下させる手法を、プリンタ側の回路基板の温度が上昇したときの電力低減(パワーセーブ給電)として利用したものであり、構成も簡易なものでよく、実現が容易という利点がある。
【0060】
また、本態様では、第1の温度閾値を超えて上昇した基板の温度が、徐々に下がって、第1の温度閾値を下回っても、低パワーでの給電は維持され、その後、第1の温度閾値よりも小さな値の第2の温度閾値以下となってはじめて、低パワーの給電を、元のパワーでの給電に戻す。言い換えれば、給電パワーの切り替えにヒステリシス特性をもたせたものである。これにより、高温による回路部品の劣化や、プリンタの電源が落ちてしまうといった問題が、確実に防止される。
【0061】
当業者は、例示した本発明に従う態様が、本発明の精神を逸脱することなく、さらに変更され得ることを容易に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1図1(A)は、パワーデリバリーに対応したUSBタイプCコネクタを備えるプリンタに、USBタイプCに対応したスマートフォンを接続して給電や印刷を実施するときの利点を説明するための図、図1(B)、(C)は、プリンタとスマートフォンとの間の不整合(ミスマッチ)の発生要因について説明するための図である。
図2図2は、給電と通信に関わる3つのモードに対応し、パワーデリバリー(PD)に非対応のデバイス(端末)も含めて接続可能としつつ、給電とデータ通信を実施可能とするプリンタの、各モードにおけるプリンタの設定例を表形式で示す図である。
図3】プリンタが、タイプC以外の規格に準拠したコネクタをもつ場合に、そのコネクタに、パワーデリバリーに非対応である規格に準拠するデバイスを接続したときの動作例を表形式で示す図である。
図4】プリンタのシステム構成の一例を示す図である。
図5】プリンタの内部構成の一例を示す図である。
図6】接続されたデバイスが、パワーデリバリー対応のUSBタイプCであるかを判定し、その判定結果とモード記憶部の設定情報に基づいてプリンタの動作を制御する手順例を示すフローチャートである。
図7】モード記憶部の事前設定処理の手順例を示すフローチャートである。
図8】パワーデリバリー対応のUSBタイプCに準拠したコネクタに、USBタイプCに準拠したデバイスを接続したときの処理手順例の概要を示すフローチャートである。
図9図8のステップS13に相当する、パワーデリバリーに非対応のデバイスに対する処理の手順例を示すフローチャートである。
図10】基板の温度上昇を抑制する処理の手順例を示すフローチャートである。
図11】プリンタの、使用準備時の処理の一例、及び使用中の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下に説明する最良の実施形態は、本発明を容易に理解するために用いられている。従って、当業者は、本発明が、以下に説明される実施形態によって不当に限定されないことを留意すべきである。
【0064】
(第1の実施形態)
図1(A)は、パワーデリバリーに対応したUSBタイプCコネクタを備えるプリンタに、USBタイプCに対応したスマートフォンを接続し、給電や印刷を実施するときの利点を説明するための図、図1(B)、(C)は、プリンタとスマートフォンとの間の不整合(ミスマッチ)の発生要因について説明するための図である。
【0065】
図1(A)では、パワーデリバリー(PD)に対応したUSBタイプCコネクタを備えるプリンタ100と、スマートフォン(携帯端末:広義にはデバイス、あるいは電子機器)200が、USBケーブル300により接続されている。このUSBケーブル300を経由して、プリンタ100からスマートフォン200への電力伝送(給電あるいは充電)と、双方向のデータ通信が可能である。
【0066】
なお、スマートフォンは例示であり、これに限定されるものではない。例えば、カメラ、ビデオカメラ、POS端末、タブレット端末等の情報端末、その他のポータブル通信機器等であってもよい。
【0067】
USBケーブルを介した有線通信では、例えば近距離無線通信を利用した通信に比べて接続不良や誤通信の可能性が低減される。また、プリンタ100に接続できるデバイス(電子機器)の種類も増える。また、プリンタ100とスマートフォン200との間のオペレーティングシステム(OS)の違いも、両者が共通に備えるUSBタイプCの機能を活用することで問題がなくなる。図1(A)において、プリンタ100にはOS1が搭載され、スマートフォン200には例えばOS2(OS1とは種類が異なる)が搭載される場合であっても接続が可能である。
【0068】
但し、プリンタ100とスマートフォン200との不整合(ミスマッチ)に起因して、ユーザーが希望する動作が実施されないおそれが生じるため、対策が必要となる。図1(B)、(C)は、上記の不整合(ミスマッチ)の要因の例を示している。
【0069】
図1(B)を参照する。スマートフォン200側のミスマッチの要因としては、パワーデリバリー(PD)規格に準拠しているか否かがあげられる。PD非対応の場合は、PD対応のプリンタ100との間で規格上の不整合が生じる。
【0070】
また、ユーザーの要求としては、充電のみ、印刷のみ、充電及び印刷の双方の3種類があるが、プリンタ100側で、その要求の認識ができなかったり、誤って認識したりすると、ユーザーが望む動作が行われないことになる。
【0071】
また、スマートフォン200は所定の電力定格を有しており、充電時に利用できる通信プロトコルや電力の程度も、スマートフォンの機種等に依存して異なる場合がある。その電力定格等を無視してプリンタ側から給電すると、発熱等の問題が生じるので、スマートフォン側の電力定格等も十分考慮した給電とする必要がある。
【0072】
図1(C)を参照する。図1(C)の例では、プリンタ側にも不整合を生じさせる要因が存在する。本発明のプリンタでは、プリンタの給電と通信に関わるモードを個別に設定可能である。給電と通信に関わる第1のモードでは「給電とデータ通信」が可能であり、第2のモードでは「給電のみ」が可能であり、第3のモードでは「データ通信のみ」が可能である。
【0073】
ここで、例えば、プリンタが「給電のみの第2のモード」に設定されたとき、プリンタは、USBを介した処理に関しては、本来の印刷機能を失い、給電機器として動作することになる。
【0074】
プリンタ100のモードを個別に設定可能としたのは、プリンタの印刷機能のみならず、USB機能についても快適に使用したいというユーザーのニーズを考慮した設計としたためである。
【0075】
但し、この設計によれば、例えば、プリンタ100が「給電のみ(第2のモード)」のときに、スマートフォン200側から印刷の要求があったときは、プリンタ側の機能と、スマートフォン側の要求との間に不整合が生じる。プリンタ100が「データ通信のみ(第3のモード)」のときに、スマートフォン200側から充電の要求があったときも同様である。
【0076】
本発明は、以上説明したような、プリンタと、そのプリンタに接続されるデバイス(端末)との間のいろいろな不整合を解消し、簡易な構成で、高速に、安全に、かつ安定的に、ユーザーの望む処理を実現する。以下、順を追って説明する。
【0077】
図2を参照する。図2は、給電と通信に関わる3つのモードに対応し、パワーデリバリー(PD)に非対応のデバイス(端末)も含めて接続可能としつつ、給電とデータ通信を実施可能とすることが可能なプリンタの、各モードにおけるプリンタ機能の設定例を表形式で示す図である。
【0078】
図2のプリンタの設定例では、プリンタが、上述した、給電と通信に関わる第1~第3の各モードに対応している(言い換えれば、プリンタの給電と通信に関わるモードを個別に設定可能である)ことが前提となる。図2の表の、左端の欄において、プリンタの給電と通信に関わるモードが、「給電+通信(第1のモード)」、「給電専用(第2のモード)」、「通信専用(第3のモード)」に分類されているのは、このことを表している。
【0079】
ここで、プリンタの給電と通信に関わるモードを、個別に設定する方法例について説明しておく。各モードは、モード記憶部設定コマンド(これについては後述する)と、例えば用紙のフィードボタン等の操作により、個別に設定可能である。
【0080】
具体例を説明する。例えば、電源投入状態にて、プリンタのカバーを開けた状態にし、フィードボタンを5秒以上押下する。赤色LEDが点滅したらボタンを離す。赤LEDの点滅は、「通信専用モード」が選択されたことを示す。
【0081】
次に、ボタンを押すと、青LEDが点滅して「給電専用モード」となる。次にボタンを押すと、紫LEDが点滅して「給電+通信」モードとなる。以下、ボタンを押すたびに、同様の動作が繰り返される。
【0082】
次に、設定したい機能のLED表示となっている際に、プリンタのカバーを閉じると、設定が保存され、自動的にハードウェアリセットが実行される。また、登録された設定の内容等を確認できるようにするため、設定情報等が自動的に印字される。
【0083】
このように、プリンタに接続するデバイス(端末)の仕様や用途等に応じて、予め、プリンタにおける、給電と通信に関わるモードを選択しておくことで、USBを介した処理に関しては、プリンタとデバイス(端末)の間の給電と双方向の通信について、ユーザーが所望する動作を、選択的に実行させることができる。
【0084】
例えば、ユーザーが、パワーデリバリー(PD)に対応したデバイス(端末)を接続し、プリンタからデバイスへの給電と、双方向の通信をしたい場合は、「給電+通信(第1のモード)」を選択する。PDに非対応のデバイスを接続して、プリンタからデバイスへの給電をしたい場合には、「給電専用モード(第2のモード)」を選択する。PDに非対応のデバイスを接続し、双方向の通信をしたい場合は、「通信専用モード(第3のモード)」を選択する。
【0085】
図2に戻って説明を続ける。図2では、上記の第1~第3の各モードにおいて、プリンタに接続されるデバイスがPDに対応しているか、非対応であるかによって分類し、各分類の中で、USBのプロトコルのタイプ等に応じて使用可能な電圧と最大電流の組(電力の組)が、複数、定められている。
【0086】
例えば、「給電+通信(第1のモード)」では、PDに対応するデバイスに対しては、9Vかつ2A、9Vかつ1A、5Vかつ3A、5Vかつ1.5Aの4つの組が定められている。
【0087】
この例からわかるように、電圧が9Vで同じであっても、最大電流が2A/1Aと異なっている2組(少なくとも2組)が存在する。また、この例では、一方の組の最大電流が2Aであるのに対し、他方の組の最大電流は1Aであり、電流量が半分であり、これに伴い、電力も半分となっている。
【0088】
ここで、第1のモードは、PDに対応するデバイスのみに適用され、PDに非対応のデバイスについては不適用である。
【0089】
また、第1のモードで、PDに非対応のデバイスに対しては、給電と通信を実施することはできず、「給電のみ」、「通信のみ」の何れかしか実行できない仕様としている。
【0090】
PDに非対応のデバイスについては、「USBタイプCのcurrent規格」に対応する、電圧5Vかつ最大電流3Aの組と、5Vかつ1.5Aの組と、上記モードに対応しないデバイスに適用する、デフォルトUSBパワーと称される5Vかつ0.5Aの組が定められている。BC1.2という7.5Wの給電を行う規格も存在するが、第1のモードでは、このBC1.2は採用せず、デバイス側からBC1.2による充電の要求があったときは、デフォルトUSBパワーにて対応する。
【0091】
この例からわかるように、電圧が5Vで同じであっても、最大電流が3A/1.5Aと異なっている2組(少なくとも2組)が存在する。また、この例では、一方の組の最大電流が3Aであるのに対し、他方の組の最大電流は1.5Aであり、電流量が半分であり、これに伴い、電力も半分となっている。
【0092】
次に、「給電専用(第2のモード)」について説明する。プリンタ側のUSBタイプCの機能が給電専用となっているときは、接続されるデバイスのPD対応/PD非対応にかかわらず、使用できる機能は給電のみである。また、PDに対応するデバイスへの給電で利用できる電圧と最大電流の組は、第1のモードと同じである。PDに非対応のデバイスへの給電で利用できる電圧と最大電流の組については、第1のモードの例に、さらにBC1.2規格に準拠した5V及び1.5Aの組が追加されている。給電専用モードであることを考慮し、BC1.2規格にも対応できるようにして利便性を向上させている。
【0093】
「通信専用(第3のモード)」では、接続されるデバイスのPDへの対応/非対応にかかわらず、通信のみ(双方向のデータ通信)ができ、給電(充電)は不可である。
【0094】
このように、プリンタが、第1のモード(給電+データ通信)であるとき、第2のモード(給電のみ)であるときの何れの場合にも対応できるように、各モード毎に、接続されるデバイスのPD対応/PD非対応に応じた給電電圧と最大電流の組を、複数用意し、その電力の組の中から、適切なものを選択し、電力定格を切り替えて給電する、というUSBの給電制御が実施される。
【0095】
選択的な切り替えによる電力定格(電力容量)の変更であるため、例えば、状況に応じて電圧や電流を可変に生成するといった複雑な処理を行う場合と比較して、負担が少なく、高速処理が可能であり、かつ処理負担が少ないという利点がある。
【0096】
また、プリンタのモードとデバイスのPD対応/非対応に応じて選択できる電力の組が複数用意され、その複数組には、電圧が同じで電流(最大電流の値等)が異なる少なくとも2組が含まれる。
【0097】
これにより、どの状況であっても、いずれの電力の組を選択するかによって、電圧を変化させずに、電流を変化させて給電電力を変化させることができる。また、電流を変化させて給電電力(給電パワー)を低下させる手法は、プリンタ側の回路基板の温度が上昇したときの電力低減(パワーセーブ給電)としても利用可能である(この点は、後述する)。
【0098】
次に、図3を参照する。図3は、プリンタが、タイプC以外の規格に準拠したコネクタをもつ場合に、そのコネクタに、パワーデリバリーに非対応である規格に準拠するデバイスを接続したときの動作例を表形式で示す図である。
【0099】
例えば、プリンタが複数のUSBコネクタを有している場合があり、その1つが、パワーデリバリ(PD)に非対応である場合も想定され得る。プリンタの、そのPD非対応のコネクタに、PD非対応のデバイス(端末)が接続されたときの動作の設定例が、図3に示されている。
【0100】
プリンタのコネクタとしては、USBタイプA、Bが想定され得る。USBタイプAのコネクタに対しては、ケーブル(接続形式)は、「タイプA」と「タイプMicro-B」との接続用ケーブル、「タイプA」と「タイプC」の接続用ケーブルが想定され得る。
また、USBタイプBのコネクタに対しては、「タイプBからタイプAオスへの変換ケーブル(USBオン・ザ・ゴー:OTG対応)」と「タイプAメスからMicro-Bへの変換ケーブル(OTG対応)」とを接続するケーブルと、「タイプBとタイプCの接続用ケーブル」が想定され得る。
【0101】
プリンタのコネクタが「タイプA」又は「タイプB」であるときの、デバイス(端末)側のコネクタとしては、「タイプMicro-B」、「タイプC(PD非対応)」が想定され得る。
【0102】
各設定における利用可能な動作は、図3の表の右欄に記載されるとおりである。プリンタのコネクタが「タイプA」であるときの動作は、プリンタからデバイス(端末)に向かう方向(図3では「プリンタからデバイス方向」と表記している)の給電のみが可能である。プリンタのコネクタが「タイプB」であり、かつケーブルが「変換ケーブルを用いたOTG仕様」であるときは、双方向の通信のみが可能である、プリンタのコネクタが「タイプB」であり、かつケーブルが「タイプBとタイプCの接続ケーブル」である場合は、デバイスからプリンタに向かう方向(図3では、「デバイスからプリンタ方向」と表記している)の給電のみが可能である場合、又は、その給電と双方向の通信とが可能である場合が想定され得る。但し、デバイスからプリンタに向かう方向の給電は、プリンタがAC電源アダプタから電力供給されている場合には、特に必要ではないともいえる。但し、例えば、USBモバイルバッテリー等からモバイルプリンタへ給電するような場合も想定され得る。この場合は、デバイスからプリンタに向かう方向の給電が有効である。
【0103】
次に、図4を参照する。図4は、プリンタのシステム構成の一例を示す図である。図1に示した本発明にかかるプリンタ100は、MPU(CPU)110と、ユーザーインターフェース(ユーザーI/F)120と、ROM130と、RAM140と、USBインターフェース(USBI/F)150と、EEPROM170と、パワーデリバリー(PD)対応のUSBタイプCに準拠したコネクタ302と、を有する。
【0104】
また、ユーザーI/F120は、表示コントローラ122と、表示部124と、タッチパネルコントローラ126と、タッチパネル128と、を有する。タッチパネル128には、先に説明した用紙のフィードボタン等が含まれる。また、表示部124には、液晶パネルのようなディスプレイの他、先に説明した、赤、青、紫の各LED等が含まれる。
【0105】
また、EEPROM170は、USB(PD対応のUSB-C)I/F管理プログラム172と、モード記憶部用ユーティリティプログラム174と、GUIプログラム176と、基本OS(例えば図1に示したOS1)178と、を有する。
【0106】
なお、MPU(CPU)110が、モード記憶部用ユーティリティプログラム174に従って動作することで、機能ブロックとしてのモード記憶部(図5の符号158)が構築される。モード記憶部の詳細については後述する。
【0107】
次に、図5を参照する。図5は、プリンタの内部構成の一例を示す図である。図5において、前掲の図面と共通する部分には同じ符号を付している。プリンタ100は、ユーザーI/F120と、USBI/F(回路基板)150と、電源部180と、印刷部192と、パワーデリバリー対応のUSBタイプCに準拠したコネクタ302と、を有する。コネクタ302は、電力伝送用のVBUS端子T1と、データ通信用CC1、CC2端子(T2、T3)と、GND端子T4と、を有する。T2、T3の各端子は、プルアップ抵抗R1、R2を介して5Vの電圧に接続されている。
【0108】
USBI/F(回路基板)150は、USB制御部152(給電制御部154を備える)と、PD通信制御部156と、モード記憶部158と、回路基板の温度を測定する温度センサ160と、給電/受電切り替えスイッチ162と、バッテリ164と、接続されたデバイスからの異常通知等を監視する異常監視部166と、を有する。なお、USBの給電時には、スイッチ162は,a端子側に切り替えられ、受電時には、b端子側に切り替えられる。受電した電力は、例えばバッテリ164の充電に使用することもできる(但し一例であり、負荷抵抗を介して接地に流すこともできる)。
【0109】
電源部180は、100Vの交流電源(外部電源)AC1から供給される交流電圧を受けるACアダプタ181(2出力AC/DC変換器182を備える)と、印刷部以外の電源電圧を生成して出力するDC-DC変換器184と、USB給電用の電圧可変DC-DC変換器186と、出力電流値(上限電流値)可変バッファ回路(ボルテージフォロワ)188と、を有する。なお、ACアダプタ181は、プリンタ100の外に位置してもよい。
【0110】
印刷部192は、印刷電源I/F194と、サーマルプリンタ制御部196と、サーマルプリンタヘッド198と、を有する。
【0111】
先に、モード毎に、接続されるデバイスのPD対応/PD非対応に応じた給電電圧と最大電流の組を、複数用意し、その電力の組の中から、適切なものを選択し、電力定格を切り替えて給電する点を説明したが、異なる電圧(図2の例でいえば9Vと5V)を生成するために、電源部180において出力電圧が可変のDC-DC変換器186が設けられている。
【0112】
また、先に、プリンタのモードとデバイスのPD対応/非対応に応じて選択できる電力の組が複数用意され、その複数組には、電圧が同じで電流(最大電流の値等)が異なる少なくとも2組が含まれ、このとき、電圧を変化させずに、電流を変化させて給電電力を変化させることができる点を説明したが、この出力電流(の最大電流値)を変化させるために、電源部180において、出力電流値可変バッファ回路(ボルテージフォロワ)188が設けられている。ボルテージフォロワであるため、出力電圧は入力電圧と同じであるが、例えば、電流制限抵抗の抵抗値を可変に制御(例えば切り替え制御)することで、インピーダンス変換後の出力電流の電流量(上限電流量)を可変に制御(例えば切り替え制御)することが可能である。図2の例でいえば、9Vかつ2Aを、9Vかつ1Aとしたり、5Vかつ3Aを、5Vかつ1.5Aとしたりすることができる。
【0113】
電圧可変DC-DC変換器186、出力電流値可変バッファ回路188の各動作は、USB制御部152に備わる給電制御部154によって制御される。また、給電制御部154は、温度センサ160からの温度情報に基づいて回路基板が高温になったと判定されるときは、温度上昇を抑制する(さらに温度を低下させる)ために、出力電流値可変バッファ回路188に指示して、出力電流値(上限電流値)を例えば半分の値に切り替える(パワーセーブ給電の実施)。また、USB制御部152は、PD通信制御部156から、接続されたデバイス(端末)とのネゴシエーションで得られたデバイスの特定情報、デバイスの仕様等の情報、あるいは、デバイス側から発せられた異常通知の検出情報等を受け、適宜、適切な対応処理を実施するべく、各部を制御する。
【0114】
また、先に、USB給電用と印刷等のプリンタ動作用の電源を2系統に分ける点を説明したが、これを実現するために、図5では、電源部180において、マルチ出力(ここでは2出力)AC/DC変換器182を用いている。2出力AC/DC変換器182は、例えば、2つの出力トランスを有し、2系統の独立した(相互の影響がない)、かつ個別に設定された電圧値をもつ電源出力を生成することができる。
【0115】
次に、図6を参照する。図6は、接続されたデバイスが、パワーデリバリー対応であるかを判定し、その判定結果とモード記憶部の設定情報に基づいてプリンタの動作を制御する手順例を示すフローチャートである。
【0116】
まず、プリンタのモード記憶部に第1~第3の何れかのモードを設定する(ステップS100)。ここで、第1のモードは、給電及び通信が可能なモード(デフォルト)であり、第2のモードは給電専用モードであり、第3のモードは通信専用モードである。次に、プリンタのUSBタイプC端子(コネクタ)にデバイスが接続される(ステップS101)。
【0117】
続いて、モード記憶部の設定内容が判定される(ステップS102)。設定内容が第1のモードであるときはステップS103に進む。ステップS103では、デバイスがパワーデリバリー(PD)に対応するか否かを判定する。対応する場合は、ステップS104に進み、プリンタの状況を判定する。非対応のときは、ステップS108に移行する(この点については後述する)。
【0118】
ステップS104におけるプリンタの状況は、例えば、端末の仕様や接続のタイミングによって、一時的に、プリンタから端末方向の給電のみの状態(パワーロール=ソース(電源の供給側),データロール=ホスト(データの送信側))となったり、あるいは、双方向の通信のみの状態(パワーロール=シンク(電源の受電側),データロール=デバイス)となったりする。ここで、プリンタがソース/ホストになった場合、USB PD規格に従って、データロールとしてのホストとデバイスを入れ替えるデータロールスワップ(Data Role Swap)を使用して、プリンタからデバイス(端末)方向の給電と、双方向の通信を可能とする(ステップS105)。また、プリンタがシンク/デバイスになったときは、USB PD規格に従って、ソース(電源の供給側)とシンク(電源の受電側)を入れ替えるパワーロールスワップ(Power Role Swap)を使用して、プリンタからデバイス(端末)方向の給電と、双方向の通信を可能とする(ステップS106)。
【0119】
ステップS107では、プリンタから端末方向の給電と、双方向の通信とを実行する。給電に関しては、先に説明したように、9V×2A(または1A)の給電方式、あるいは、5V×3A(または1.5A)の給電方式があり、例えばデバイスとの通信によって、どの給電方式を採用するかが適宜、決定される。また、データ通信に関しては、プリンタからデバイスへの通信、及びデバイスからプリンタへの通信の双方が可能である。
【0120】
ステップS103の判定の結果、接続されたデバイスがPD規格に非対応であったときは、ステップS108に進む。ステップS108では、プリンタからデバイス(端末)方向の給電、あるいは、双方向の通信の何れか1つを実行する。給電が行われるときは、先に説明したように、デバイスがUSBタイプC Current規格に対応していれば、5V×3A(または1.5A)の給電が実行される。デバイスがUSBタイプC Current規格に非対応であれば、5V×0.5Aの、プリンタからデバイスへの給電が実行される。また、データ通信が行われるときは、プリンタからデバイスへの通信、及びデバイスからプリンタへの通信の双方が可能である。
【0121】
ステップS102の判定の結果が第2のモードであったときは、ステップS109に移行する。ステップS109では、デバイスがパワーデリバリー(PD)対応するか否かを判定する。対応する場合は、ステップS110に進み、非対応のときは、ステップS111に進む。
【0122】
ステップS110では、パワーデリバリー(PD)に対応するデバイスに対して、プリンタからの給電(給電のみ)が行われる。給電方式としては、9V×2A(または1A)の給電、あるいは、5V×3A(または1.5A)の給電がある。
【0123】
ステップS111では、パワーデリバリー(PD)に非対応であるデバイスに対して、プリンタから給電(給電のみ)が行われる。ここで、デバイスがUSBタイプC Current規格に対応していれば、5V×3A(または1.5A)の給電が行われる。デバイスがUSBタイプC Current規格に非対応であり、かつ、BC1.2規格に対応しているときは、5V×1.5Aの給電が行われる。デバイスがUSBタイプC Current規格に非対応であり、かつ、BC1.2規格に非対応であるときは、5V×0.5Aの給電(言い換えれば、デフォルトUSBパワーでの給電)が行われる。
【0124】
ステップS102の判定の結果が第3のモードであったときは、ステップS112に移行する。ステップS112では、プリンタとデバイスとの間で双方向の通信(通信のみ)が行われる。
【0125】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、プリンタの実際の使用も想定しつつ、好ましいプリンタの動作制御例について、詳細に説明する。
次に、図7を参照する。図7は、モード記憶部の事前設定処理の手順例を示すフローチャートである。まず、プリンタを使用するシステムの管理者等が、PD対応のUSBタイプCを備えるPOSプリンタ、又はキッチンプリンタに対して接続が許可された、あるいは接続が予定される、USBタイプCのコネクタ付きのデバイス(スマートフォン、POS端末、タブレット端末等)に、PD非対応のものがあるかを確認する(ステップS1)。
【0126】
ステップS1でNのときは、モード記憶部の設定は終了する。Yのときは、上記の管理者等が、各デバイス毎に印刷専用で使用するか、充電専用で使用するかを決定する(ステップS2)。
【0127】
次に、ステップS2での決定に基づき、各デバイス毎に、モード記憶部を設定する(ステップS3)。モード記憶部の設定は、プリンタのユーザーI/F(例えば、操作ボタン、テンキー、通信コマンド等)を用いて行う。例えば、モード記憶部に0を設定したときは給電専用となり、1を設定したときは印刷専用となる。
【0128】
次に、すべてのデバイスについて設定されたかを確認する。Nのときは、ステップS2に戻る。Yのときは、モード記憶部の設定を終了する。
【0129】
このモード記憶部(図5の符号158)への設定は、例えば、店舗のPOSシステムを運営する管理者等が行うが、その管理者等が、実際にプリンタを利用する者(従業員等)に、予め、使用可能なデバイス、及び各デバイスで利用できる用途(充電か印刷か)を周知徹底することで、モード記憶部158への設定内容は、実際にプリンタを使用する者(従業員等)が期待する動作と一致することになり、特に、問題は生じない。
【0130】
次に、図8を参照する。図8は、パワーデリバリー対応のUSBタイプCに準拠したコネクタに、USBタイプCに準拠したデバイスを接続したときの処理手順例の概要を示すフローチャートである。
【0131】
接続されたデバイスの情報が取得され(ステップS10)、続いて、そのデバイスがPD(パワーデリバリー)対応であるかが判定される(ステップS11)。Yのときは、ステップS12に進む。Nの場合は、PD非対応デバイスに対する処理を実施する(ステップS13)。なお、PD非対応デバイスに対する処理の内容は後述する。
【0132】
ステップS12では、例えば、9Vかつ2A(Max18W)又は、5Vかつ3Aの何れを選択するかを、相手デバイスに問い合わせ、相手デバイスからの応答を取得する。但し、相手に問い合わせすることなく、すでに取得した情報に基づいて、プリンタ側で判定してもよい。
【0133】
次にステップS14では、現在のプリンタの給電と通信に関わるモードを判定する。第1のモード(デフォルト)であるときは、ステップS16に進む。第2又は第3のモードであるときは、ステップS15に進み、第1のモードに切り替える。ステップS15において、第1のモードに切り替えるのは、先に説明したように、接続されたデバイスがPD対応のときは、給電と通信の双方が可能なように対応するというのが基本方針であるため、この方針に従うものである。
【0134】
ステップS16では、プリンタからデバイスへの給電と、デバイスからプリンタへの印刷データの通信による印刷処理と、を同時に実施する。また、先に説明したように、プリンタの電源部において、予め電源容量を外部供給用と印刷等の動作用に分けておき、各容量内で、電源供給、印刷等の動作を同時に実行する。言い換えれば、電源部180の電源容量が、コネクタ302を介した、プリンタの外部への給電用と、プリンタの内部での印刷を含む動作用に分かれており、USB制御部152は、給電及び通信を実行する第1のモードにおいて、コネクタ302に接続されたデバイスから給電及び印刷の要求があるときは、分かれている各電源容量の範囲内で、給電と印刷を実施させる。なお、上記の説明では、第1のモードにおいて、と記載しているが、これに限定されるものではない。第1のモードのみならず、給電専用の第2のモード、あるいは通信専用の第3のモードにおいても、分かれている各電源容量の範囲内で、給電と印刷が実行される。また、必要に応じて、給電、通信の各方向を切り替えるために、パワーロールスワップ、データロールスワップを実施する。
【0135】
ここで、パワーロールスワップ、データロールスワップについて説明する。USBパワーデリバリー(USB PD)規格では、給電とデータ通信は基本的には双方向の通信である。但し、プリンタにPD対応のUSBタイプCコネクタを搭載した場合の使用では、給電は、プリンタからデバイスへの給電(単方向の給電)であり、また、データ通信は、プリンタからデバイスへの通信がないとはいわないが、主たる通信は、デバイスからプリンタへの印刷データの通信(転送)であり、この主たる通信も、単方向のデータ通信である。
【0136】
方向が一方向である給電やデータ通信を、何の工夫もせずに、PD規格のデフォルト機能である双方向通信のみで実施するのは非効率的といえる。そこで、本態様では、PD規格がもつパワーロールスワップ、データロールスワップの各機能を利用して、上記の単方向の給電やデータ通信を実現する。
【0137】
パワーロールスワップは、給電側(ソース)と受電側(シンク)を入れ替える機能であり、データロールスワップは、データの送信側(ホスト)とデータの受信側(デバイス)とを入れ替える機能である。このスワップ機能を適宜、実施することで、双方向の給電、双方向のデータ通信を基本としつつ、実質的に(一時的に)、プリンタからデバイスへの単方向の給電と、デバイスからプリンタへの単方向のデータ通信とを実現(両立)することができる。
【0138】
ステップS16の後、仮に基板温度が第1の温度閾値以上となって、回路部品の劣化や電源落ち等が懸念される事態となったときは、適宜、ステップS17を実施する。ステップS17は、回路基板温度に基づく、給電の電力抑制処理(あるいは温度上昇抑制処理)である。
【0139】
次に、図9を参照する。図9は、図8のステップS13に相当する、パワーデリバリーに非対応のデバイスに対する処理の手順例を示すフローチャートである。先に説明したように、モード記憶部(図5の符号158)には、予め、PD非対応のデバイス毎に、用途を示す情報が登録されている。そこで、ステップS20では、接続されたデバイスの情報(例えば登録名)に基づくモード記憶部の参照処理が実施される。なお、例えば「登録名」は、各デバイスのユーザーが、各デバイスに自由に登録しておくことができる。モード記憶部158には、例えば、その登録されている登録名と同じ登録名を事前に記憶させておくことができる。
【0140】
ステップS21では、モード記憶部の参照結果が、「0」か「1」かが判定される。「0」は、用途が充電であることを意味する。「1」は、用途が印刷であることを意味する。ここで「0(充電)」のときは、ステップS22に進み、「1(印刷)」のときは、ステップS26に進む。
【0141】
ステップS22では、必要に応じて、プリンタの給電と通信に関わるモードの変更が実施される。第1、第2のモードのときは、給電が可能であるため問題はない。但し、第3のモード(通信専用)であるときは、給電ができないため、デバイスからの充電要求に応えることができない。そこで、この場合は、第3のモードを、第2のモードに変更する。これで給電が可能となる。
【0142】
ステップS23では、例えば、相手デバイスに、充電の態様(仕様等)を問い合わせる。但し、プリンタ側で、既得の情報から充電仕様を特定できるのであれば、このステップS23の処理は不要である。
【0143】
ステップS24では、先に図2で説明した動作が実行される。プリンタ側が第1のモードのときは、BC1.2規格に非対応であるため、デバイスがUSBタイプC Current規格に非対応であればデフォルトUSBパワーを選択する。
プリンタ側が第2のモードのときは、BC1.2をサポートしている(対応している)ため、BC1.2規格の仕様に基づく給電が可能となる。また、ステップS24で示されているモードの何れにも該当しないときは、デフォルトUSBパワーでの給電となる。
【0144】
ステップS25では、実際の給電処理が開始される。最大電力15W(5V×3A)の充電が可能である。
【0145】
ステップS21で、「1(印刷)」のときは、ステップS26に移行する。ステップS26では、必要に応じて、プリンタの給電と通信に関わるモードの変更が実施される。プリンタのモードが、第1、第3のモードであるときは、印刷が可能であるため問題はないが、第2のモード(給電専用)であるときは、印刷データを受け付けて印刷処理を行うことができない。そこで、この場合は、第2のモードを第3[0]のモードに変更する。
【0146】
ステップS27では、USBコネクタを経由したデータ通信処理、及びプリンタ内部での印刷処理が実施される。
【0147】
このように、モード記憶部の参照によって、複雑なネゴシエーションを経ることなく、プリンタのモードを、デバイス側の要求を実施するために必要なモードへと自動的に変更することができ、高速な処理が実現する。また、先に説明したように、モード記憶部への設定内容は、実際のユーザーの要求と一致している(一致しているとみなすことができる)ため、プリンタの機能と、プリンタを実際に使用するユーザーの要求する機能とが不一致となる事態が生じない。よって、常に、ユーザーの希望どおりのプリンタの動作が確保されることになる。
【0148】
次に、図10を参照する。図10は、基板の温度上昇を抑制する処理の手順例を示すフローチャートである。ここでは、先に図2に示した動作設定例に基づく処理がなされることを前提として説明する。
【0149】
ステップS30では、PD対応のUSBタイプC規格に基づく9V/2A又は5V/3Aの給電中であるかが判定される。Yのときは、ステップS31に進み、Nのときは、ステップS35に進む。
【0150】
ステップS31では、回路基板の温度を監視し、回路基板の温度が第1の温度閾値(ここでは71℃とする)以上であるかが判定される。なお、第1の温度閾値を、第1の閾値という場合もある。Nのときは、回路基板の温度の監視を継続する。Yのときは、ステップS32に進む。
【0151】
ステップS32では、現在の給電が、PD対応のUSBタイプC規格に基づく9V/2Aの給電であるときは、9V/1Aの給電に変更する。現在の給電が5V/3Aの給電であるときは、5V/1.5Vの給電とする。言い換えれば、電圧は変えずに電流を変化させて、電力を半減させ、パワーセーブモードの給電とする。これによって、電力を抑制することで、回路や配線の発熱を抑え、回路基板の温度上昇を抑制し、さらに低下させることができる。
【0152】
ステップS33では、回路基板の温度が、第2の温度閾値(ここでは64℃とする)以下となったかを判定する。なお、第2の温度閾値を、第2の閾値という場合もある。Nのときは、同様の判定を継続し、この間は、パワーセーブ給電が維持される。Yのときは、ステップS34に進み、パワーセーブ給電を解除し、元の給電に復帰させる。
【0153】
ここで、第2の温度閾値(64℃)は、第1の温度閾値(71℃)よりも7度も低い温度である。従って、パワーセーブ給電が開始された後、回路基板の温度が、第1の温度閾値(71℃)を下回っても、すぐにはパワーセーブ給電は解除されない。十分に低い温度である第2の温度閾値(64℃)以下となってはじめて、パワーセーブ給電が解除されて、元の給電に復帰する。このようなヒステリシス特性をもつ温度上昇抑制処理がなされることから、回路基板の発熱が確実に抑制される。
【0154】
ステップS30でNのときは、ステップS35に進む。ステップS35では、USBタイプCのCurrent規格に基づく5V/3Aの給電中であるかが判定される。Yのときは、ステップS36に進み、Nのときは、処理を終了する。
【0155】
ステップS36では、回路基板の温度を監視し、回路基板の温度が第1の温度閾値(71℃)以上であるかが判定される。Yのときは、ステップS37に進み、Nのときは、回路基板の温度の監視を継続する。
【0156】
ステップS37では、USBタイプCのCurrent規格の5V/1.5Aの給電に切り替えてパワーセーブ給電とする。ここでも、電圧を変えずに、電流を変化させてパワーを半減する。
【0157】
ステップS38では、回路基板の温度が、第2の温度閾値(64℃)以下となったかを判定する。Nのときは、同様の判定を継続し、この間は、パワーセーブ給電が維持される。Yのときは、ステップS39に進み、パワーセーブ給電を解除し、元の給電に復帰させる。ここでも、ヒステシリス特性をもつ温度上昇抑制処理が実施されることから、回路基板の温度上昇が確実に防止される。よって、安全性が確保される。
【0158】
次に、図11を参照する。図11は、プリンタの、使用準備時の処理の一例、及び使用中の処理の一例を示すフローチャートである。図11では、先に説明した各処理をまとめた全体の手順の概要を説明する。
【0159】
ステップS40では、例えば、USBタイプCに準拠するが,PDには非対応であるデバイス(端末)の仕様や用途等に基づいて、プリンタのモード記憶部に、充電/印刷のいずれかを、個別に、事前設定する。
【0160】
ステップS41では、プリンタのPD対応のコネクタに、USBタイプCに対応したデバイス(端末)を接続する。ステップS42では、接続されたデバイスが、PD(パワーデリバリー)に対応しているかが判定される。Yのときは、ステップS43に進む。Nのときは、ステップS44に進む。
【0161】
ステップS43では、必要に応じて、プリンタの給電と通信に関わるモードを変更する(第2、第3のモードから第1のモードに変更する)と共に、プリンタからデバイス(端末)への電源供給(最大18W/9V×2A)と、デバイス(端末)からプリンタへの印刷要求の処理(印刷用データ等の通信、及び印刷)とを同時に実施する。言い換えれば、プリンタの、給電と通信が同時に可能な第1のモードによる処理を実施する。また、プリンタにおいて、予め電源容量を外部供給用と印刷等の動作用に分けておき(2系統電源構成)、各容量内で、電源供給及び印刷等の動作を同時に実施する。また、給電方向を、プリンタからデバイス(端末)とするために、適宜、パワーロールスワップを実施する。データ通信方向を、デバイス(端末)からプリンタとするために、適宜、データロールスワップを実施する。また、温度監視による基板温度上昇抑制処理を実施する。言い換えれば、温度が第1の閾値を超えたときは給電電流を切り替え、温度が第2の閾値(<第1の閾値)を下回ったときに元の給電電流に復帰させるヒステリシス特性をもつ処理を実施する。
【0162】
ステップS42にてNの場合は、ステップS44に進む。ステップS44では、プリンタのモード記憶部の内容を読み出す。ステップS45では、モード記憶部の設定内容が、充電であるか印刷であるかが判定される。充電のときは、ステップS46に進み、印刷のときは、ステップS47に進む。
【0163】
ステップS46では、必要に応じて、プリンタの給電と通信に関わるモードを変更する(第3のモードを第2のモードに変更する)と共に、プリンタからデバイス(端末)への給電を実行する(最大15W/5V3A)。また、給電方向を、プリンタからデバイス(端末)とするために、適宜、パワーロールスワップを実施する。また、温度監視による基板温度上昇抑制処理(ヒステリシス特性をもつ)を実施する。
【0164】
ステップS47では、データ通信(印刷データの転送等)、及び印刷が実施される。また、データ通信方向を、デバイス(端末)からプリンタとするために、適宜、データ
ロールスワップを実施する。
【0165】
以上説明したように、本発明によれば、給電と通信に関わる3つのモードに対応し、パワーデリバリーに非対応のデバイス(端末)も含めて接続可能としつつ、給電とデータ通信を実施可能なプリンタを提供することができる。
【0166】
本発明は、上記の実施形態に限定されず、種々、変形が可能である。例えば、モード記憶部には、デバイスの用途のみならず、給電の電圧や電流値等も登録し、これを活用して給電の開始をより迅速化してもよい。また、上記の第2の実施形態では、USBタイプCに準拠するがPDには準拠しないデバイスの情報をモード記憶部に登録することとしているが、これに限定されるものではない。例えば、プリンタに接続できるデバイスの種類や仕様が増えた場合には、PD対応のUSBタイプCに準拠したデバイスの給電(及び/又はデータ通信)に関する情報をモード記憶部に登録し、プリンタ側での処理負担の軽減や処理の迅速化等を図ってもよい。
【0167】
本発明は、上述の例示的な実施形態に限定されず、また、当業者は、上述の例示的な実施形態を特許請求の範囲に含まれる範囲まで、容易に変更することができるであろう。
【符号の説明】
【0168】
100・・・プリンタ、110・・・MPU(CPU)、120・・・ユーザーI/F、122・・・表示コントローラ、124・・・表示部、126・・・タッチパネルコントローラ、128・・・タッチパネル、130・・・ROM、140・・・RAM、150・・・USBI/F、152・・・USB制御部、154・・・給電制御部、156・・・PD通信制御部、158・・・モード記憶部、160・・・回路基板の温度を測定する温度センサ、162・・・給電/受電切り替えスイッチ、164・・・バッテリ、166・・・異常監視部、170・・・EEPROM、172・・・USB(PD対応のUSB-C)I/F管理プログラム、174・・・モード記憶部用ユーティリティプログラム、176・・・GUIプログラム、178・・・基本OS、180・・・電源部、181・・・ACアダプタ、182・・・2出力AC/DC変換器、184・・・印刷部以外の電源用のDC-DC変換器184、186・・・USB給電用の電圧可変DC-DC変換器、188・・・出力電流値(上限電流値)可変バッファ回路(ボルテージフォロワ)、192・・・印刷部、194・・・印刷電源I/F、196・・・サーマルプリンタ制御部、198・・・サーマルプリンタヘッド、200・・・プリンタに接続されるデバイスとしてのスマートフォン、302・・・パワーデリバリー(PD)対応のUSBタイプCに準拠したコネクタ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11