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特開2022-119350樹脂製延伸フィルム及びそれを用いた充填包装体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119350
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】樹脂製延伸フィルム及びそれを用いた充填包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/26 20060101AFI20220809BHJP
   B65D 75/20 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
B65D65/26
B65D75/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021016406
(22)【出願日】2021-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000001100
【氏名又は名称】株式会社クレハ
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 大介
(72)【発明者】
【氏名】加藤 公文
【テーマコード(参考)】
3E067
3E086
【Fターム(参考)】
3E067AA04
3E067AA11
3E067AB06
3E067AB14
3E067BA11A
3E067BB14A
3E067BC03A
3E067CA06
3E067CA24
3E067DA03
3E067EA06
3E067EB04
3E067EB05
3E067EB06
3E067EE02
3E067EE59
3E067FA01
3E067FC01
3E086AB01
3E086AC07
3E086AC11
3E086AC13
3E086AD12
3E086BA02
3E086BA15
3E086BB05
3E086BB51
3E086CA01
3E086CA05
3E086DA07
3E086DA08
(57)【要約】
【課題】第一に、圧痕を有していても、その製造過程においてフィルムの巻きずれを抑制することができ、第二に、充填包装体の製造工程においては、フィルム切れを起こしにくく、第三に、加圧加熱殺菌(熱処理)した後は外耳部から容易に開封することが可能な充填包装体を与える樹脂製延伸フィルム及びそれを用いた充填包装体を提供する。
【解決手段】本発明に係る樹脂製延伸フィルムは、圧痕を有し、前記圧痕は前記樹脂製延伸フィルムを貫通せず、前記樹脂製延伸フィルムは、前記樹脂製延伸フィルムの側端から0.50mm~15mmの側縁部に前記圧痕が前記樹脂製延伸フィルムの長手方向に並んだ圧痕列を有し、前記圧痕の前記長手方向の間隔は2.0mm~3.9mmであり、前記樹脂製延伸フィルムの短手方向への前記圧痕の幅は0.65mm~3.5mmである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧痕を有する樹脂製延伸フィルムであって、
前記圧痕は前記樹脂製延伸フィルムを貫通せず、
前記樹脂製延伸フィルムは、前記樹脂製延伸フィルムの側端から0.50mm~15mmの側縁部に前記圧痕が前記樹脂製延伸フィルムの長手方向に並んだ圧痕列を有し、
前記圧痕の前記長手方向の間隔は2.0mm~3.9mmであり、
前記樹脂製延伸フィルムの短手方向への前記圧痕の幅は0.65mm~3.5mmである樹脂製延伸フィルム。
【請求項2】
圧痕列の数が1列~20列である請求項1に記載の樹脂製延伸フィルム。
【請求項3】
塩化ビニリデン系樹脂を含む請求項1又は2に記載の樹脂製延伸フィルム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂製延伸フィルムの両側縁部が、前記樹脂製延伸フィルムの表裏面が対向するように、重ね合わされ、長手方向に縦シールされた筒状の樹脂製延伸フィルムに内容物が充填されて両端部が封止された充填包装体であって、前記樹脂製延伸フィルムの圧痕列を有する側縁部が、前記筒状の樹脂製延伸フィルムの外側に帯状にはみ出した外耳部を形成する充填包装体。
【請求項5】
熱処理された請求項4に記載の充填包装体。
【請求項6】
前記圧痕の少なくとも一部に代えて貫通孔を有する請求項5に記載の充填包装体。
【請求項7】
前記外耳部は、前記外耳部の側端から0.20mm~8.0mmの側縁部に前記貫通孔が前記外耳部の長手方向に並んだ貫通孔列を有し、前記貫通孔の前記長手方向の間隔は1.0mm~2.9mmであり、前記外耳部の短手方向への前記貫通孔の幅は0.30mm~2.7mmである請求項6に記載の充填包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製延伸フィルム及びそれを用いた充填包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
ソーセージ、チーズ、ハンバーグ、ういろう等の固体状又はペースト状の加工食品等の内容物が充填された充填包装体は、通常、帯状の樹脂製フィルムの長手方向に延びる両側縁部を縦シールして形成した、長手方向に延びる縦シール部を有する筒状の樹脂製フィルムの内部に、前記の加工食品等の内容物が充填され、当該筒状の樹脂製フィルムの長手方向の両端部が、アルミワイヤクリップ等の金属製のワイヤクリップ又は横シールフィルム(補強テープ)又はその他の手段によって集束され密封された構造となっている。充填包装体に備えられる筒状の樹脂製フィルムを形成する樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリアミド系樹脂(ナイロン-6等)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂等が使用され、酸素ガスバリア性に優れ、耐熱性や強度のバランスの観点から、ポリ塩化ビニリデン系樹脂が好ましく使用されている。
【0003】
これらの充填包装体から筒状の樹脂製フィルムを剥がして内容物である加工食品等を取り出すためには、筒状の樹脂製フィルムの長手方向両端部の集束された部分を切断して除去したり、筒状の樹脂製フィルムを例えば長手方向に延びる両側縁部の縦シールされた部分に沿って、又は、縦シールされた部分に直交する方向に切断したりして、内容物を露出させる必要がある。しかしながら、筒状の樹脂製フィルム、例えば、ポリ塩化ビニリデン系樹脂から形成された筒状の樹脂製フィルムは、フィルムが強靭であるため、消費者が内容物を取り出す際、手指の力だけでは開封ができない場合がある。この場合は、ハサミやナイフ等の切断用具を用意して切断しなければならず、又は、切断用具を利用しても、内容物を良好に露出させられないこともある等の問題があった。
【0004】
充填包装体からの内容物の取り出しが容易である易開封性を有する充填包装体を提供することを目的として、例えば、特許文献1には、熱収縮フィルムの両側縁部を該熱収縮フィルムの表裏面が対向するように重ね合わせ、長手方向にシールした筒状フィルムと、内容物が充填された前記筒状フィルムの両端部を封止する封止部材と、を備え、前記熱収縮フィルムの傷痕列を有する側縁部は、前記筒状フィルムの外側に帯状にはみ出した外耳片を形成し、熱処理後の前記側縁部が有する傷痕の長手方向の間隔が、3.0mm~28mmである、密封包装体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-37431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、フィルムに貫通する傷痕を付与するため、製造時にフィルム屑が発生し、充填包装体にフィルム屑の混入の虞があり、充填包装体の製造時には、フィルムに付加される張力によって傷痕部から亀裂が発生してフィルム切れが起こる虞が有る。また、傷痕の長手方向の間隔が長く、易開封性が十分に達成されているとは言い難い。
【0007】
これを解決する手段の1つとして、充填包装体の外耳部に圧痕を長手方向に短い間隔で設けることが考えられる。このような外耳部に圧痕を有する充填包装体は、側縁部に圧痕を有するフィルム原反を用いて製造される。具体的には、ロール状のフィルム原反からフィルムを繰り出し、両側縁部を重ね合わせて縦シールすることで筒状にし、必要に応じて適当な長さにカットする。しかしながら、単に圧痕を設けただけでは、フィルム原反のロールのうち、圧痕を有する側縁部側が耳立ちし(ロールの軸方向の中心部に比べて、端部が太くなること)、フィルムの巻きずれ(フィルムをロール状に巻き取った際に、ロールの端面が凸凹になること)が生じるため、フィルムをフラットに送り出すことが難しくなり、フィルムを筒状に成形できない。また、充填包装体の外耳部に圧痕を付与しただけでは、開封し易くはなるが、必ずしも十分ではない。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、第一に、圧痕を有していても、その製造過程においてフィルムの巻きずれを抑制することができ、第二に、充填包装体の製造工程においては、フィルム切れを起こしにくく、第三に、加圧加熱殺菌(熱処理)した後は外耳部から容易に開封することが可能な充填包装体を与える樹脂製延伸フィルム及びそれを用いた充填包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、圧痕を有する樹脂製延伸フィルムであって、前記圧痕は前記樹脂製延伸フィルムを貫通せず、前記樹脂製延伸フィルムは、所定の位置に所定の間隔及び所定の幅で並ぶ圧痕列を有する樹脂製延伸フィルムにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明に係る樹脂製延伸フィルムは、圧痕を有し、前記圧痕は前記樹脂製延伸フィルムを貫通せず、前記樹脂製延伸フィルムは、前記樹脂製延伸フィルムの側端から0.50mm~15mmの側縁部に前記圧痕が前記樹脂製延伸フィルムの長手方向に並んだ圧痕列を有し、前記圧痕の前記長手方向の間隔は2.0mm~3.9mmであり、前記樹脂製延伸フィルムの短手方向への前記圧痕の幅は0.65mm~3.5mmである。
【0011】
上記樹脂製延伸フィルムにおいては、圧痕列の数が1列~20列であることが好ましい。
【0012】
上記樹脂製延伸フィルムは、塩化ビニリデン系樹脂を含むことが好ましい。
【0013】
本発明に係る充填包装体は、本発明に係る樹脂製延伸フィルムの両側縁部が、前記樹脂製延伸フィルムの表裏面が対向するように、重ね合わされ、長手方向に縦シールされた筒状の樹脂製延伸フィルムに内容物が充填されて両端部が封止された充填包装体であって、前記樹脂製延伸フィルムの圧痕列を有する側縁部が、前記筒状の樹脂製延伸フィルムの外側に帯状にはみ出した外耳部を形成する。
【0014】
上記充填包装体は、熱処理されたものであることが好ましい。
【0015】
上記充填包装体は、前記圧痕の少なくとも一部に代えて貫通孔を有することが好ましい。
【0016】
上記充填包装体において、前記外耳部は、前記外耳部の側端から0.20mm~8.0mmの側縁部に前記貫通孔が前記外耳部の長手方向に並んだ貫通孔列を有し、前記貫通孔の前記長手方向の間隔は1.0mm~2.9mmであり、前記外耳部の短手方向への前記貫通孔の幅は0.30mm~2.7mmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上記課題を解決することができる。即ち、本発明に係る樹脂製延伸フィルムは、圧痕を有していても、その製造過程においてフィルムの巻きずれを抑制することができ、また、充填包装体の製造工程においては、フィルム切れを起こしにくい。また、本発明に係る樹脂製延伸フィルムは、加圧加熱殺菌(熱処理)した後は外耳部から容易に開封することが可能な充填包装体を与える。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態の樹脂製延伸フィルムの斜視図を示す。
図2】本実施形態の樹脂製延伸フィルムの圧痕の断面図を示す。
図3】本実施形態の樹脂製延伸フィルムの圧痕の正面図を示す。
図4】本実施形態の樹脂製延伸フィルムの圧痕の正面図の別様態を示す。
図5】本実施形態の樹脂製延伸フィルムの圧痕の正面図の別様態を示す。
図6】本実施形態の樹脂製延伸フィルムの圧痕の正面図の別様態を示す。
図7】本実施形態の樹脂製延伸フィルムの圧痕列の一態様を示す。
図8】本実施形態の樹脂製延伸フィルムの圧痕列の別態様を示す。
図9】本実施形態の圧痕の付与方法の例を示す。
図10】本実施形態の充填包装体の一態様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0020】
〔筒状の樹脂製延伸フィルム〕
本発明の充填包装体は、筒状の樹脂製延伸フィルム及び内容物を備える充填包装体であって、前記筒状の樹脂製延伸フィルムは、長手方向に延びる外耳部を有する縦シール部を備え、長手方向の両端部が集束されたものである。
【0021】
本発明に係る樹脂製延伸フィルムは、圧痕(押されたり、圧力を加えられたりしたときにできる跡)を有する樹脂製延伸フィルムであって、前記圧痕は前記樹脂製延伸フィルムを貫通せず、前記樹脂製延伸フィルムは、前記樹脂製延伸フィルムの側端から0.50mm~15mmの側縁部に前記圧痕が前記樹脂製延伸フィルムの長手方向に並んだ圧痕列を有し、前記圧痕の前記長手方向の間隔が2.0mm~3.9mmであり、前記樹脂製延伸フィルムの短手方向への前記圧痕の幅が0.65mm~3.5mmである。
【0022】
筒状の樹脂製延伸フィルムを形成する樹脂製延伸フィルムとしては、従来、ソーセージ、プロセスチーズ、ハム、ハンバーグ等の加工食品等の内容物が充填されて封入され密閉状に個別包装された充填包装体に備えられる筒状の樹脂製延伸フィルムを形成するために使用されている樹脂製延伸フィルムを使用することができる。
【0023】
〔熱収縮率〕
本発明の樹脂製延伸フィルムは熱収縮性を有することが好ましく、MD(フィルムの長手方向)の100℃の熱収縮率は、好ましくは19%~35%であり、より好ましくは19%~25%である。また、TD(フィルムの短手方向)の100℃の熱収縮率は、好ましくは19%~30%であり、より好ましくは19%~25%である。100℃のMDとTDの熱収縮率を19%以上にすることによって、充填包装体を熱処理した後に貫通孔が形成され易くなる。また、100℃の熱収縮率をMDが35%以下、TDが30%以下にすることによって、充填包装体を熱処理した後に充填包装体の曲がりや収縮を抑制することができる。
【0024】
〔圧痕〕
本実施形態の樹脂製延伸フィルムの圧痕について、樹脂製延伸フィルムの斜視図である図1と、圧痕の態様を示す図2~8を用いて説明する。図1に示されるように、本実施形態の樹脂製延伸フィルム1は、側端2から0.50mm~15mmの領域である側縁部3の少なくとも一部に、圧痕4を有する。ここで、すべての側縁部が圧痕4を有する必要はなく、好ましい態様としてはMD(フィルムの長手方向)に沿った側端のうち1つの側縁部が圧痕を有すればよい。
【0025】
図2に示すように樹脂製延伸フィルム1を貫通しない圧痕4の深さaは圧痕付与前の全フィルム厚み(2層積層の場合は積層された2層の厚み)に対して、好ましくは10%~90%であり、より好ましくは20%~60%である。圧痕4の深さaを圧痕付与前の全フィルム厚みに対して10%以上とすることによって開封が容易になり、90%以下にすることによって製造過程におけるフィルム切れが抑制される。また、圧痕4の形状は特に限定されず、図3~6に示すように、四角形、楕円形、折れ線形、三角形等を例示できる。
【0026】
圧痕4は長手方向(図1でいえばMD)に並び、圧痕列5を形成する。圧痕列の数は、好ましくは1列~20列であり、より好ましくは1列~3列であり、更により好ましくは2列である。また、図7及び図8に示すように、圧痕列5が複数ある場合には、隣り合う圧痕列5の圧痕4の位置は長手方向に同じ位置にあっても、ずれた位置にあってもよいし、圧痕列5の圧痕4の間隔は列間で同一であっても異なっていてもよい。更に、同一の列内における圧痕4の間隔についても、所定の範囲(2.0mm~3.9mm)を満たすものであれば、均等であっても不均等であってもよい。
【0027】
図7及び図8に示すように、圧痕列5の圧痕4の間隔bは、2.0mm~3.9mmであり、好ましくは2.5mm~3.5mmであり、より好ましくは2.5mm~3.0mmである。圧痕4の間隔が3.9mm以下であることにより、開封箇所が増え、易開封性が向上する。また、圧痕の間隔が2.0mm以上であることにより、耳立ちが緩和され、製造過程におけるフィルム巻きずれが抑制される。
【0028】
図7及び図8に示すように、圧痕列5の圧痕4の幅cは、0.65mm~3.5mmであり、好ましくは0.80mm~1.2mmであり、より好ましくは0.80mm~1.0mmである。圧痕4の幅が0.65mm以上であることにより、製造過程においてフィルムを貫通せずに圧痕を安定的に付与することができる。また、圧痕4の幅が3.5mm以下であることにより、耳立ちが緩和され、製造過程におけるフィルム巻きずれが抑制される。また、圧痕列が複数ある場合に、それら圧痕列の間隔dは、好ましくは0.01mm~8.2mmであり、より好ましくは0.80mm~1.2mmであり、更により好ましくは0.80mm~1.0mmである。
【0029】
図7及び図8に示すように、側端2から圧痕列5の圧痕4の間隔eは、好ましくは0.50mm~2.0mmであり、より好ましくは0.80mm~1.5mmであり、更により好ましくは1.0mm~1.5mmである。側端2から圧痕4の間隔eが0.50mm以上であることにより、製造過程におけるフィルム切れが抑制される。また、側端2から圧痕4の間隔eが2.0mm以下であることにより、易開封性が向上する。
【0030】
〔樹脂材料〕
筒状の樹脂製延伸フィルムを形成する樹脂材料としては、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリアミド系樹脂(ナイロン-6等)、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)等が挙げられる。酸素ガスバリア性や水蒸気バリア性の観点から、筒状の樹脂製延伸フィルムは、ポリ塩化ビニリデン系樹脂から形成されることが好ましい。
【0031】
〔ポリ塩化ビニリデン系樹脂〕
筒状の樹脂製延伸フィルムを形成する樹脂材料として好ましく使用されるポリ塩化ビニリデン系樹脂(以下、「PVDC」ということがある。)とは、塩化ビニリデンのホモ重合体でもよいが、通常、塩化ビニリデン60~98質量%と、塩化ビニリデンと共重合可能な他の単量体2~40質量%との共重合体である。塩化ビニリデンと共重合可能な他の単量体としては、例えば、塩化ビニル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ラウリル等のアクリル酸アルキルエステル(アルキル基の炭素数1~18);メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸アルキルエステル(アルキル基の炭素数1~18);アクリロニトリル等のシアン化ビニル;スチレン等の芳香族ビニル;酢酸ビニル等の炭素数1~18の脂肪族カルボン酸のビニルエステル;炭素数1~18のアルキルビニルエーテル;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等のビニル重合性不飽和カルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のビニル重合性不飽和カルボン酸のアルキルエステル(部分エステルを含み、アルキル基の炭素数1~18)等が挙げられる。より好ましくは塩化ビニル、アクリル酸メチル又はアクリル酸ラウリルから選ばれる少なくとも1種である。塩化ビニリデンと共重合可能な他の単量体は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。他の単量体の共重合割合は、より好ましくは3~35質量%、更に好ましくは3~25質量%、特に好ましくは4~22質量%の範囲である。他の単量体の共重合割合が少なすぎると溶融加工性が低下する傾向にあり、他方、他の単量体の共重合割合が大きすぎると酸素ガスバリア性が低下する傾向にある。また、溶融加工性を向上させるために2種以上のPVDCを混合してもよい。
【0032】
本発明で好ましく使用されるPVDCは、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法等の任意の重合法により合成することができるが、粉体レジンとしてコンパウンドを形成する場合には、懸濁重合法により合成することが好ましい。このように懸濁重合法により合成した場合には、PVDCからなる粉体レジンの粒度を調整するための粉砕工程を必要としない傾向にある。このようなPVDCからなる粉体レジンの粒度は、40μm~2mmの範囲であることが好ましく、50μm~1mmの範囲であることがより好ましく、60~700μmの範囲であることが更に好ましい。なお、粉体レジンの粒度は、例えば、標準篩いを用いる乾式篩い分け法により測定するものである。
【0033】
〔添加剤〕
筒状の樹脂製延伸フィルムを形成する樹脂材料、好ましくはPVDCには、必要に応じて、種々の特性や成形加工性の改良を目的として添加される熱安定剤、可塑剤、加工助剤、着色剤、紫外線吸収剤、pH調整剤、分散助剤等の各種添加剤を含有させることができる。
【0034】
例えば、熱安定剤としては、エポキシ化植物油、エポキシ化動物油、エポキシ化脂肪酸エステル、エポキシ樹脂プレポリマー等のエポキシ化合物;エポキシ基含有樹脂等が挙げられ、好ましくはエポキシ化植物油である。熱安定剤を使用する場合の含有量は、樹脂材料、好ましくはPVDC100質量部に対して、0.05~6質量部の範囲であることが好ましく、0.08~5質量部の範囲であることがより好ましく、0.1~4質量部の範囲であることが特に好ましい。熱安定剤の含有量が0.05質量部以上であると、熱安定性を十分に改善しやすく、成形加工が容易になるとともに、黒化しにくい。他方、熱安定剤の含有量が6質量部以下であると、筒状の樹脂製延伸フィルムの酸素ガスバリア性や耐寒性が低下しにくく、ブリードやフィッシュアイが発生しにくい。他の添加剤の種類や添加量についても、従来、充填包装体に備えられる筒状の樹脂製延伸フィルムにおいて、使用される各種添加剤におけると同様に選択することができる。これらの添加剤は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの添加剤は、その使用量の一部又は全部をPVDC等の樹脂材料の重合工程で単量体組成物中に含有させてもよいし、重合後にPVDC等の樹脂材料にブレンドしてもよい。
【0035】
〔他の樹脂〕
更に、筒状の樹脂製延伸フィルムを形成する樹脂材料、好ましくはPVDCには、種々の特性や成形加工性の改良を目的として、必要に応じて、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリエチレン(低密度ポリエチレン又は高密度ポリエチレン)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アクリル酸エステルの単独重合体又は共重合体、メタクリル酸エステルの単独重合体又は共重合体、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体等の他の樹脂を含有させることができる。アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルは、アルキル基の炭素数1~18のアルキルエステルであることが好ましい。他の樹脂を使用する場合の含有量は、樹脂材料、好ましくはPVDC100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、16質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが更に好ましく、5質量部以下であることが特に好ましい。
【0036】
他の樹脂の性状、形状や大きさは、筒状の樹脂製延伸フィルムを形成する樹脂材料との均一分散性等を考慮して、所望により適宜選択することができる。例えば、粒状、粉末状又はペレット状等の固体状でもよいし、液状又は融解状態のものでもよい。また、所望により、他の樹脂の表面を表面処理したものでもよい。
【0037】
〔筒状の樹脂製延伸フィルムの大きさ及び厚み〕
筒状の樹脂製延伸フィルムの大きさや厚みは、充填される内容物の大きさに応じて定められる。筒状の樹脂製延伸フィルムの周長は、例えば、15~400mm、多くの場合30~300mm、広く採用されるのは40~200mmの範囲であり、筒状の樹脂製延伸フィルムの長手方向の長さは、例えば、50~400mm、多くの場合70~300mm、広く採用されるのは80~250mmの範囲である。また、筒状の樹脂製延伸フィルムの厚みは、充填される内容物に応じたフィルムの強度や酸素ガスバリア性等を勘案して定められるが、例えば、15~300μm、多くの場合18~200μm、広く採用されるのは20~150μmの範囲である。
【0038】
筒状の樹脂製延伸フィルムの強度の増大、酸素ガスバリア性の改良、耐熱性の改良、収縮性の調整等のために、積層フィルムを使用することができる。例えば、PVDCフィルムと、ポリエチレンテレフタレートフィルム又はポリプロピレンフィルム等の他の樹脂製延伸フィルムとの積層フィルムを使用することができる。また、筒状の樹脂製延伸フィルムは、印刷が施されたものでもよい。
【0039】
なお、筒状の樹脂製延伸フィルムとしては、該筒状の樹脂製延伸フィルムに充填される内容物と密着しない非密着フィルムと、充填される内容物と密着する密着フィルムとがあり、本発明の充填包装体に備えられる筒状の樹脂製延伸フィルムにおいてはいずれも使用することができる。充填される内容物と密着することにより内部に空気が存在しないので、腐敗防止の観点からは、密着フィルムである筒状の樹脂製延伸フィルムが好ましいことが多いが、筒状の樹脂製延伸フィルムと内容物との密着力が大きすぎると、該樹脂製延伸フィルムが加工食品等の内容物から剥離しにくく、内容物を取り出しにくい場合がある。
【0040】
〔筒状の樹脂製延伸フィルムの製造〕
本発明における筒状の樹脂製延伸フィルムは、従来、充填包装体に備えられる筒状の樹脂製延伸フィルムを製造する方法として採用されている方法によって得ることができる。具体的には、帯状の樹脂製延伸フィルムの長手方向に延びる両側縁部が重なるように筒状に巻いて筒状フィルムを形成し、次いで、筒状フィルムの前記の両側縁部を縦シールすることにより、筒状の樹脂製延伸フィルムを形成することができる。
【0041】
〔帯状の樹脂製延伸フィルムの製造〕
筒状の樹脂製延伸フィルムを形成するための帯状の樹脂製延伸フィルムは、製造方法が特に限定されない。例えば、押出成形によって、シート状又は管状の押出フィルムを成形して延伸することによって熱収縮性を付与した後、管状の押出フィルムの場合は内側同士を重ねて所定の幅を有する2枚重ねの帯状の樹脂製延伸フィルムを得ることができ、必要に応じ長手方向に切断することにより、所望の幅を有する帯状の樹脂製延伸フィルムを製造することができる。筒状の樹脂製延伸フィルムが積層フィルムである場合は、共押出成形又は押出ラミネーションにより積層した帯状の樹脂製延伸フィルムを製造してもよいし、複数のフィルムを接着剤、例えばウレタン系接着剤により接着させて積層した帯状の樹脂製延伸フィルムを製造してもよい。筒状の樹脂製延伸フィルムを印刷が施されたものとする場合は、得られた帯状の樹脂製延伸フィルムに印刷を施してもよい。
【0042】
〔圧痕の製造〕
本発明における樹脂製延伸フィルムに付与される圧痕の製造方法は特に限定されない。例えば、図9に示すように樹脂製延伸フィルム1の特定の位置を円板回転押圧体6及びロール部材7で挟み付けて樹脂製延伸フィルムを押圧することにより、フィルムに圧痕を付与することができる。
【0043】
〔長手方向に延びる外耳部を有する縦シール部〕
本発明の筒状の樹脂製延伸フィルムは、長手方向に延びる外耳部を有する縦シール部を備えるものである。即ち、本発明における筒状の樹脂製延伸フィルムは、長手方向に延びる縦シール部を備え、該縦シール部は、同じく長手方向に延びる外耳部を有するものである。
【0044】
〔長手方向に延びる縦シール部〕
筒状の樹脂製延伸フィルムに備えられる長手方向に延びる縦シール部は、従来、充填包装体に備えられる筒状の樹脂製延伸フィルムに備えられる長手方向に延びる縦シール部と同様の趣旨で備えられるものである。即ち、帯状の樹脂製延伸フィルムを長手方向に延びる両側縁部が重なるように筒状に巻いて筒状フィルムを形成し、次いで、該筒状フィルムの前記の両側縁部を、高周波誘電加熱、超音波加熱、レーザー加熱、抵抗加熱等による溶着、接着剤による接着(ヒートシールを含む。)等の常法に従って、長手方向(縦方向)に連続してシール(接着)することにより、筒状の樹脂製延伸フィルムが形成されるものである。縦シール部は、筒状の樹脂製延伸フィルムの長手方向の全長に亘って備えられ、これにより、筒状の樹脂製延伸フィルムに充填されて封入される内容物を密封状態に保存することができる。筒状の樹脂製延伸フィルムに備えられる長手方向に延びる縦シール部の幅は、適宜定めることができる。
【0045】
〔長手方向に延びる外耳部〕
本発明における筒状の樹脂製延伸フィルムに備えられる長手方向に延びる縦シール部が有する、同じく長手方向に延びる外耳部とは、先に説明した筒状フィルムの前記の帯状の樹脂製延伸フィルムの両側縁部を、常法に従って長手方向(縦方向)に連続してシール(接着)するに際して、外表面に露出する側縁部の長手方向に直交する側端部をシールしないことで形成される筒状の樹脂製延伸フィルムの長手方向に延びる非シール部である。外耳部の幅は、例えば、1~15mm、多くの場合2~8mmの範囲内である。なお、長手方向に延びる外耳部(非シール部)は、例えば、筒状の樹脂製延伸フィルムの長手方向の全長に亘って均一の幅で形成されるが、外耳部(非シール部)の幅が異なるように形成してもよい。
【0046】
〔長手方向の両端部の集束〕
本発明の充填包装体は、長手方向に延びる外耳部を有する縦シール部を備え、長手方向の両端部が集束された筒状の樹脂製延伸フィルムを備える。即ち、本発明の充填包装体は、筒状の樹脂製延伸フィルムに加工食品等の内容物を充填した後に、筒状の樹脂製延伸フィルムの長手方向の両端部を集束することによって形成され、内容物を密封状態に保存することができる。筒状の樹脂製延伸フィルムの長手方向の両端部の集束は、従来、充填包装体に備えられる筒状の樹脂製延伸フィルムについてされていた長手方向の両端部の集束方法、例えば、アルミワイヤクリップ等の金属製のワイヤクリップ或いは横シールフィルム(補強テープ)又はその他の手段による集束方法を採用することができる。
【0047】
〔充填包装体〕
本発明の充填包装体は、樹脂製延伸フィルムの両側縁部を前記樹脂製延伸フィルムの表裏面が対向するように重ね合わせ、長手方向に縦シールした筒状の樹脂製延伸フィルムと、内容物が充填された前記筒状の樹脂製延伸フィルムの両端部が封止された充填包装体であって、前記樹脂製延伸フィルムの圧痕列を有する側縁部は、前記筒状の樹脂製延伸フィルムの外側に帯状にはみ出した外耳部を形成する。そして、充填包装体を加圧加熱殺菌(熱処理)することによって、圧痕の少なくとも一部が貫通孔になる事ができる。圧痕のまま(貫通孔にならない)でも開封性を有するが、貫通孔になる事によって、開封性が更に向上する。充填包装体を加圧加熱殺菌(熱処理)することによって、圧痕の少なくとも一部が貫通孔になる理由は必ずしも明らかでないが、加圧加熱殺菌(熱処理)時に樹脂製延伸フィルムに収縮力が発生し、圧痕の厚みの薄い部分に応力集中が起こることで貫通孔が形成されると考えられる。
【0048】
図10に充填包装体11の斜視図を示す。筒状の樹脂製延伸フィルムは、樹脂製延伸フィルム1の圧痕列5を有する側縁部3が筒状の樹脂製延伸フィルムの外側に帯状にはみ出した外耳部8を形成するように、樹脂製延伸フィルムの両側縁部を該樹脂製延伸フィルムの表裏面が対向するように重ね合わせ、長手方向に縦シールしたものである。内容物が密封された充填包装体11は、加圧加熱殺菌(熱処理)が施されたものであり、外耳部8に形成された貫通孔9が並んだ貫通孔列10は、圧痕4が加圧加熱殺菌(熱処理)によって貫通したものである。このような貫通孔群を起点として、外耳部は容易に手指で切断できるようになる。
【0049】
加圧加熱殺菌(熱処理)後の充填包装体における貫通孔列の貫通孔の間隔b’は、1.0mm~2.9mmであり、好ましくは1.6mm~2.8mmである。貫通孔の間隔が1.0mm以上であることにより、貫通孔同士が切れてつながり、意図せず貫通孔部分から切断が起こることを抑制することができる。また、貫通孔の間隔が2.9mm以下であることにより、易開封性がより向上する。
【0050】
加圧加熱殺菌(熱処理)後の充填包装体における貫通孔列の貫通孔の幅c’は、0.30mm~2.7mmであり、好ましくは0.35mm~0.6mmである。また、貫通孔列が複数ある場合に、それら貫通孔列の間隔d’は、0.01mm~7.6mmであり、好ましくは0.50mm~0.90mmである。
【0051】
加圧加熱殺菌(熱処理)後の充填包装体における外耳部の側端から貫通孔列の貫通孔の間隔e’は、0.20mm~1.5mmであり、好ましくは0.40mm~1.0mmである。外耳部の側端から貫通孔列の貫通孔の間隔が上記範囲内であることにより、易開封性がより向上し、意図しない切断を抑制することができる。
【実施例0052】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を更に説明するが、本発明は、本実施例に限定されるものではない。本発明の充填包装体における特性は、以下の方法により測定した。
【0053】
〔製造適性:製造過程におけるフィルム巻きずれ〕
樹脂製延伸フィルムの側縁部片側に圧痕を付与したフィルムを1500m巻取ることでロールを作製し、フィルムの巻きずれが発生しないものを製造適性に問題がないと評価した(表では「〇」と表記する)。フィルムの巻きずれが発生したものを製造適性に問題があると評価した(表では「×」と表記する)。
【0054】
〔圧痕状態〕
上記フィルムのロールからフィルムを1m引き出して、フィルムの側縁部片側に圧痕が付与されているか目視で確認した。フィルムの側縁部に圧痕が付与されていれば、圧痕状態に問題がないと評価した(表では「〇」と表記する)。フィルムの側縁部に貫通孔が付与されていれば、圧痕状態に問題があると評価した(表では「×」と表記する)。
【0055】
〔熱収縮率〕
樹脂製延伸フィルムの熱収縮率は、100℃の熱水中に100mm四方の樹脂製延伸フィルムを3分間浸漬させた後、取り出して室温まで冷却し、収縮したフィルムサンプルの寸法を測定して、下記式より算出した。
・MDの熱収縮率(%)
(100-収縮後のフィルムのMDの長さ(mm))/100×100
・TDの熱収縮率(%)
(100-収縮後のフィルムのTDの長さ(mm))/100×100
【0056】
〔レトルト(加圧加熱殺菌)耐性〕
本発明の充填包装体のレトルト耐性は、以下の方法に従って実施し、評価した。即ち、株式会社日阪製作所製のRCS型レトルト殺菌機FlavorAce-60/10TGを使用して、充填包装体10本を、温度120℃、圧力2.0kg/cm(ゲージ圧)のレトルト釜内に10分間静置した後、取り出して、縦シール部が剥離しているもの又は縦シール部に亀裂があるものの本数(パンク本数)を目視で計数した。パンク本数が0本であれば、充填包装体はレトルト耐性を有すると評価した(表では「○」と表記する)。パンク本数が1本以上であれば、充填包装体はレトルト耐性を有しないと評価した(表では「×」と表記する)。
【0057】
〔貫通孔状態〕
上記レトルト処理後の充填包装体のうち、パンクが発生しなかったものを5本サンプリングした。得られたサンプルの外耳部に貫通孔が付与されているものの本数を目視で計数した。外耳部に貫通孔が付与されていれば、貫通孔状態に問題がないと評価した。(表では「〇」と表記する)。外耳部に貫通孔が付与されず、圧痕の状態であれば、貫通孔状態に問題があると評価した(表では「×」と表記する)。
【0058】
〔易開封性〕
上記レトルト処理後の密封包装体のうち、パンクが発生しなかったものを無作為に1本サンプリングした。得られたサンプルについて、外耳部を摘まみ開封することができれば、易開封性が良好であると評価した(表では「〇」と表記する)。外耳部を摘まみ開封できなければ、易開封性が不良であると評価した(表では「×」と表記する)。
【0059】
〔実施例1〕
PVDC(株式会社クレハ製の塩化ビニリデン―塩化ビニル共重合体。塩化ビニリデンに由来する構成単位の含量が89質量%となり、塩化ビニルに由来する構成単位の含量が11質量%となるように調製した。)を溶融して、環状ダイから押し出して環状フィルムを製造し、延伸温度28℃で、MD(長手)に2.4倍、TD(短手)に4.0倍のインフレーション二軸延伸を行い、環状フィルムの内側同士を重ね合わせて、厚み40μm(厚み20μmのフィルム2枚の厚み)の帯状のPVDC製延伸フィルムを得た。得られたPVDC製延伸フィルムの熱収縮率は、MD22.4%、TD19.9%であった。その後、帯状フィルムを裁断し、圧痕を図7のように付与した帯状のフィルム原反を得た。なお、圧痕の深さaは全フィルム厚みに対して25%(10μm)、圧痕の間隔bは3.0mm、圧痕の幅cは0.8mm、圧痕列の間隔dは1.0mm、フィルム側端から圧痕の間隔eは1.5mm、圧痕列は2列(2列のa、b、cは同一で、隣り合う圧痕列の長手方向の間隔fは1.5mm)とした。その後、帯状のPVDC製フィルムを、長手方向に延びる両側縁部が重なるように筒状に巻いて筒状フィルムを形成し、該筒状フィルムの重なった両側縁部を、所定の電圧及び電流に基づく高周波電力が印加されている高周波誘電加熱装置のシール電極とアース電極との間を通過させることにより、筒状フィルムの前記の両側縁部を縦シールして、長手方向に延びる幅8mmの外耳部を有する縦シール部を備える筒状のPVDC製フィルムを形成した。続いて、筒状のPVDC製フィルムに、充填装置から魚肉ソーセージ用のすり身(魚肉すり身52%、水23%、でんぷん13%、豚脂10%、食塩2%)を供給して充填した後、筒状のPVDC製フィルムの長手方向の両端部をアルミワイヤクリップで集束し、切断することによって、周長42mm、クリップ間長さ170mmである充填包装体を製造した。充填包装体の各々には、魚肉ソーセージ用のすり身20gが充填され封入されるものとした。表1にレトルト前の各種性能評価の評価結果を示し、表2にレトルト(加圧加熱殺菌)後の各種性能評価の評価結果を示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
表1及び表2に示す通り、本発明に係る樹脂製延伸フィルムは、圧痕を有していても、その製造過程においてフィルムの巻きずれを抑制することができ、また、充填包装体の製造工程においては、フィルム切れを起こしにくいことが確認された。同様に、本発明に係る樹脂製延伸フィルムは、加圧加熱殺菌(熱処理)した後は外耳部から容易に開封することが可能な充填包装体を与えることが確認された。
【符号の説明】
【0063】
1:樹脂製延伸フィルム,2:側端,3:側縁部,4:圧痕,5:圧痕列,6:円板回転押圧体,7:ロール部材,8:外耳部,9:貫通孔,10:貫通孔列,11:充填包装体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10