(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119399
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】車両用シート及びシートパッド
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20220809BHJP
【FI】
B60N2/90
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021016483
(22)【出願日】2021-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八重樫 賢
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ホアン ヴァン タン
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DE09
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】ワイヤハーネス等をシートパッドに沿って配置した状態で当該ワイヤハーネス等を支持させる。
【解決手段】車両用シート10は、着座乗員Pの臀部P1をシート下方側から支持するシートクッション12と、着座乗員Pの背部をシート後方側から支持するシートバック14と、シートクッション12又はシートバック14の一部を構成するシートパッド18と、を備えている。シートパッド18における着座乗員Pとは反対側の面には、シート状の裏面材28が接合されている。裏面材28には、板状に形成されていると共に第1クリップ54等が取り付けられるクリップ挿通孔48を有するベース部材46が固定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座乗員の臀部をシート下方側から支持するシートクッションと、
着座乗員の背部をシート後方側から支持するシートバックと、
前記シートクッション又は前記シートバックの一部を構成し、着座乗員とは反対側の面にシート状の裏面材が接合されたシートパッドと、
板状に形成されていると共に支持部材が取り付けられる被取付部を有し、前記裏面材に固定されたベース部材と、
を備えた車両用シート。
【請求項2】
前記ベース部材が、前記裏面材に縫製で接合された請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記ベース部材が、樹脂シート又は発泡樹脂シートを用いて形成されている請求項1又は請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記シートパッドは、前記シートクッションの一部を構成しており、
前記ベース部材が、前記シートパッドのシート下方側の面に沿って配置されている請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の車両用シート。
【請求項5】
シートクッション及びシートバックの一部を構成するシートパッド本体と、
シート状に形成され、前記シートパッド本体に接合された裏面材と、
板状に形成されていると共に支持部材が取り付けられる被取付部を有し、前記裏面材に固定されたベース部材と、
を備えたシートパッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シート及びシートパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ワイヤハーネスを固定する部材等を不要にすることを実現する車両内装部材が開示されている。この文献に記載された車両内装部材では、ワイヤハーネスがセットされた基材と表皮との間にウレタンフォームを充填することで、ワイヤハーネスがウレタンフォーム内に埋設されるようになっている。これにより、ワイヤハーネスがウレタンフォームに支持されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両用シートの一部を構成するワイヤハーネス等をシートパッドに沿って配置した状態で当該ワイヤハーネス等を支持させる場合、上記特許文献1に記載された構成を適用することは難しい。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、ワイヤハーネス等をシートパッドに沿って配置した状態で当該ワイヤハーネス等を支持させることができる車両用シート及びシートパッドを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の車両用シートは、着座乗員の臀部をシート下方側から支持するシートクッションと、着座乗員の背部をシート後方側から支持するシートバックと、前記シートクッション又は前記シートバックの一部を構成し、着座乗員とは反対側の面にシート状の裏面材が接合されたシートパッドと、板状に形成されていると共に支持部材が取り付けられる被取付部を有し、前記裏面材に固定されたベース部材と、を備えている。
【0007】
請求項1記載の車両用シートによれば、シートクッション又はシートバックの一部を構成するシートパッドには、その着座乗員とは反対側の面にシート状の裏面材が接合されている。この裏面材には、被取付部を有するベース部材が固定されている。また、ベース部材の被取付部には、支持部材が取り付けられる。これにより、ワイヤハーネス等を支持部材に支持させることにより、ワイヤハーネス等をシートパッドに沿って配置した状態で当該ワイヤハーネス等を支持させることができる。
【0008】
請求項2記載の車両用シートは、請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記ベース部材が、前記裏面材に縫製で接合されている。
【0009】
請求項2記載の車両用シートによれば、ベース部材が、裏面材に縫製で接合されている。この構成では、ベース部材と裏面材との接合部において異音が発生することを抑制することができる。
【0010】
請求項3記載の車両用シートは、請求項1又は請求項2に記載の車両用シートにおいて、前記ベース部材が、樹脂シート又は発泡樹脂シートを用いて形成されている。
【0011】
請求項3記載の車両用シートによれば、ベース部材が、樹脂シート又は発泡樹脂シートを用いて形成されている。これにより、ベース部材が取り付けられた裏面材を備えたシートパッドの軽量化を図ることができ、その結果、車両用シートの軽量化を図ることができる。
【0012】
請求項4記載の車両用シートは、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の車両用シートにおいて、前記シートパッドは、前記シートクッションの一部を構成しており、前記ベース部材が、前記シートパッドのシート下方側の面に沿って配置されている。
【0013】
請求項4記載の車両用シートによれば、板状のベース部材が、シートクッションの一部を構成するシートパッドのシート下方側の面に沿って配置されている。この構成では、シートパッドにおいてワイヤハーネス等が支持される部分のシート下方側への突出量が低減される。これにより、シートクッションのシート下方側のスペースが狭まることを抑制することができる。
【0014】
請求項5記載のシートパッドは、シートクッション及びシートバックの一部を構成するシートパッド本体と、シート状に形成され、前記シートパッド本体に接合された裏面材と、板状に形成されていると共に支持部材が取り付けられる被取付部を有し、前記裏面材に固定されたベース部材と、を備えている。
【0015】
請求項5記載のシートパッドによれば、シートクッション又はシートバックの一部を構成するシートパッドの着座乗員とは反対側の面にシート状の裏面材が接合されている。この裏面材には、被取付部を有するベース部材が固定されている。また、ベース部材の被取付部には、支持部材が取り付けられる。これにより、ワイヤハーネス等を支持部材に支持させることにより、ワイヤハーネス等をシートパッドに沿って配置した状態で当該ワイヤハーネス等を支持させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る車両用シート及びシートパッドは、ワイヤハーネス等をシートパッドに沿って配置した状態で当該ワイヤハーネス等を支持させることができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態の車両用シートをベース部材が設けられた部分において前後方向及び上下方向に沿って切断した断面を示す断面図である。
【
図2】本実施形態の車両用シートをベース部材が設けられた部分において左右方向及び上下方向に沿って切断した断面を示す断面図である。
【
図3】シートパッドを斜め下方側から見た斜視図である。
【
図4】
図3に示されたシートパッドにおいて二点鎖線4で囲まれた部分を拡大して示す拡大斜視図である。
【
図5】シートパッドにおいてベース部材が設けられた部分にワイヤハーネスが支持された状態を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1~
図5を用いて、本発明の実施形態に係る車両用シートについて説明する。なお、図中に示す矢印FR、矢印UP、矢印LH、矢印RHは、車両用シートに着座した乗員から見たシート前方側、上方側、左側、右側をそれぞれ示している。以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、シート前後方向の前後、シート上下方向の上下、シート左右方向の左右を示すものとする。
【0019】
図1及び
図2に示されるように、本実施形態の車両用シート10は、着座乗員Pの臀部P1を下方側から支持するシートクッション12と、着座乗員Pの背部を後方側から支持するシートバック14と、を備えている。なお、
図1及び
図2においては、図面に見やすさを考慮して、後述する裏面材28及びベース部材46にのみ断面のハッチングを付している。
【0020】
シートクッション12は、当該シートクッション12の骨格を構成するシートクッションフレーム16にシートパッド18が取り付けられた構成となっている。なお、シートバック14は、当該シートバック14の骨格を構成するシートバックフレームにシートパッド20が取り付けられた構成となっている。ここで、シートクッション12の一部を構成するシートパッド18及びシートバック14の一部を構成するシートパッド20をそれぞれシートクッションパッド及びシートバックパッドと呼ぶこともある。シートクッション12は、シートスライドレール22を介して車体のフロア24に支持されている。
【0021】
図2及び
図3に示されるように、シートクッション12の一部を構成するシートパッド18は、ウレタンフォームを用いて形成されたシートパッド本体26と、シートパッド本体26の裏面に接合された裏面材28と、を備えている。
【0022】
シートパッド本体26は、着座乗員Pの臀部P1と上下方向に対向して配置されるメイン部30と、メイン部30の左側及び右側にそれぞれ設けられた左右一対のサイドサポート部32と、を備えている。シートパッド本体26におけるメイン部30とサイドサポート部32との境目には、着座乗員Pの臀部P1が開放された溝部34が前後方向に沿って形成されている。
【0023】
また、
図3に示されるように、シートパッド本体26は、メイン部30及び左右一対のサイドサポート部32の前端から下方側へ向けて突出する前側突出部36と、左側のサイドサポート部32の左側の端及び右側のサイドサポート部32の右側の端からそれぞれ下方側へ向けて突出する左右一対のサイド側突出部38と、を備えている。さらに、シートパッド本体26は、メイン部30の後端から後方側へ向けて突出する後係止部40を備えている。
【0024】
シートパッド本体26の下方側の面(裏面)においてメイン部30と対応する部位には、裏面材28が接合されている。この裏面材28は、一例としてシート状に形成されたフェルトがシートパッド本体26の下方側の面と対応する形状に予め成形された成形フェルトである。この裏面材28は、シートパッド本体26を発泡成形するのと同時に当該シートパッド本体26と接合される。
【0025】
裏面材28においてメイン部30の右後方側と対応する箇所の一部分は、後述するベース部材46が固定されるベース部材固定部42となっている。
図1及び
図2に示されるように、ベース部材固定部42には、ベース部材46の形状と対応する形状の開口42Aが形成されている。この開口42Aの寸法は、ベース部材46の寸法よりも小さな寸法に設定されている。これにより、ベース部材46の外周部が開口42Aの縁部42Bに重ねられた状態で、ベース部材46の外周部が開口42Aの縁部42Bに縫製で固定(接合)されるようになっている。
【0026】
図4に示されるように、ベース部材46は、一例として樹脂シート又は発泡樹脂シートを用いて形成されている。本実施形態のベース部材46は、発泡樹脂シートを用いて形成されており、その外周縁が六角形状に形成されている。また、ベース部材46には、被取付部としての3つのクリップ挿通孔48が形成されている。3つのクリップ挿通孔48は、前後方向を長手方向とする長孔状に形成されている。なお、最も後方側に配置されたクリップ挿通孔48を第1クリップ挿通孔48H1と呼び、最も前方側に配置されたクリップ挿通孔48を第2クリップ挿通孔48H2と呼び、第1クリップ挿通孔48H1及び第2クリップ挿通孔48H2に対して左側に配置されたクリップ挿通孔48を第3クリップ挿通孔48H3と呼ぶ。第1クリップ挿通孔48H1及び第2クリップ挿通孔48H2の左右方向の位置は、ほぼ同じ位置となっている。第3クリップ挿通孔48H3の前後方向の位置は、第1クリップ挿通孔48H1の前後方向の位置と第2クリップ挿通孔48H2の前後方向の位置とのほぼ中央の位置となっている。
【0027】
以上説明したベース部材46は、裏面材28のベース部材固定部42の上方側に沿って配置された状態でベース部材固定部42に縫製で固定(接合)されている。なお、縫製箇所を破線で示すと共に符号50で指し示している。この縫製箇所は、ベース部材46の外周部に沿って六角形状となっている。また、ベース部材46は、裏面材28がシートパッド本体26に接合される前に裏面材28に縫製で固定される。
【0028】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0029】
図1、
図3及び
図4に示されるように、以上説明した車両用シート10の組立工程では、先ず、ベース部材46を裏面材28のベース部材固定部42に縫製で接合する(ベース部材固定工程)。なお、ベース部材固定工程においては、ベース部材46を裏面材28のベース部材固定部42に接着剤を用いて固定する等の他の方法を適用することもできる。
【0030】
次に、裏面材28を金型にセットして、当該金型内にウレタンフォームを充填することにより、シートパッド本体26を形成すると共に裏面材28をシートパッド本体26の裏面に接合する(裏面材接合工程)。この工程でシートパッド18が形成される。なお、裏面材接合工程においては、シートパッド本体26を形成した後に、裏面材28をシートパッド本体26の裏面に接着剤や縫製により接合するようにしてもよい。そして、この工程で形成されたシートパッド18をシートクッションフレーム16に取り付ける(シートパッド取付工程)。
【0031】
次に、車両用シート10側に設けられたワイヤハーネスとしてのシート側ハーネス52をベース部材46に支持させる。詳述すると、シート側ハーネス52が挿通された支持部材としての第1クリップ54のクリップ部56をベース部材46の第1クリップ挿通孔48H1に挿通させることで、第1クリップ54をベース部材46に係止させる(シート側ハーネス支持工程)。なお、シート側ハーネス52は、シートバック14に設けられた図示しないヒータと繋がっている。
【0032】
以上の工程を経て、車両用シート10が製造される。
【0033】
また、以上の工程を経て製造された車両用シート10は、車体のフロア24に固定される(車両用シート固定工程)。
【0034】
次に、
図4及び
図5に示されるように、ワイヤハーネスとしての車体側ハーネス58に端部に設けられた支持部材としての車体側カプラ60とシート側ハーネス52の端部に設けられたシート側カプラ62とを係合させる(カプラ接続工程)。
【0035】
次に、車体側カプラ60のクリップ部56をベース部材46の第2クリップ挿通孔48H2に挿通させることで、車体側カプラ60をベース部材46に係止させる。これに加えて、車体側ハーネス58が挿通された支持部材としての第2クリップ64のクリップ部56をベース部材46の第3クリップ挿通孔48H3に挿通させることで、第2クリップ64をベース部材46に係止させる(車体側ハーネス支持工程)。
【0036】
以上説明した工程を経ることにより、本実施形態の車両用シート10では、シート側ハーネス52及び車体側ハーネス58をシートパッド18に沿って配置した状態で、当該シート側ハーネス52及び車体側ハーネス58を支持させることができる。
【0037】
また、本実施形態では、ベース部材46が裏面材28に縫製で接合されている。この構成では、ベース部材46を裏面材28に締結部材を用いて固定した場合のような締結部材の緩みに伴う異音が発生しない。すなわち、本実施形態では、ベース部材46と裏面材28との接合部において異音が発生することを抑制することができる。
【0038】
さらに、本実施形態では、ベース部材46が発泡樹脂シートを用いて形成されている。これにより、ベース部材46が取り付けられた裏面材28を備えたシートパッド18の軽量化を図ることができ、その結果、車両用シート10の軽量化を図ることができる。
【0039】
また、本実施形態では、板状のベース部材46が、シートクッション12の一部を構成するシートパッド18の下方側の面に沿って配置されている。この構成では、シートパッド18においてシート側ハーネス52及び車体側ハーネス58が支持される部分の下方側への突出量が低減される。これにより、シートクッション12の下方側のスペースが狭まることを抑制することができ、車両用シート10の後席の足元スペースへの影響を少なくすることができる。さらに、本実施形態では、ベース部材46が裏面材28のベース部材固定部42の上方側に沿って配置されている。すなわち、ベース部材46が裏面材28に対して下方側に突出しない構成となっている。これによっても、シートクッション12の下方側のスペースが狭まることを抑制することが可能となっている。また、ベース部材46が裏面材28のベース部材固定部42の上方側に沿って配置された状態でベース部材46が裏面材28に縫製で接合される構成では、ベース部材46が接合された裏面材28を金型にセットして、当該金型内にウレタンフォームを充填してシートパッド本体26を形成する際に、ベース部材46と裏面材28との接合部からウレタンフォームが漏れ出すことを抑制することができる。
【0040】
なお、本実施形態では、シート側ハーネス52及び車体側ハーネス58をベース部材46によってシートパッド18に支持させた例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、他の配線や配管をベース部材46によってシートパッド18に支持させた構成としてもよい。
【0041】
また、本実施形態では、シート側ハーネス52及び車体側ハーネス58をベース部材46によってシートクッション12の一部を構成するシートパッド18に支持させた例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、シート側ハーネス52及び車体側ハーネス58をベース部材46によってシートバック14の一部を構成するシートパッド20に支持させた構成としてもよい。また、本発明の構造は、後席にも適用することができる。
【0042】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0043】
10 車両用シート
12 シートクッション
14 シートバック
18 シートパッド
26 シートパッド本体
28 裏面材
46 ベース部材
48 クリップ挿通孔(被取付部)
48H1 第1クリップ挿通孔(被取付部)
48H2 第2クリップ挿通孔(被取付部)
48H3 第3クリップ挿通孔(被取付部)
54 第1クリップ(支持部材)
60 車体側カプラ(支持部材)
64 第2クリップ(支持部材)
P 着座乗員
P1 着座乗員の臀部