(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119400
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】車両用シート及びシートパッド
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20220809BHJP
【FI】
B60N2/90
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021016484
(22)【出願日】2021-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八重樫 賢
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ホアン ヴァン タン
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DE09
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】ワイヤハーネス等をシートパッドに沿って配置した状態で当該ワイヤハーネス等を支持させる。また、支持されたワイヤハーネス等を容易に取り外す。
【解決手段】車両用シート10は、着座乗員Pの臀部P1をシート下方側から支持するシートクッション12と、着座乗員Pの背部をシート後方側から支持するシートバック14と、シートクッション12又はシートバック14の一部を構成するシートパッド18と、を備えている。シートパッド18における着座乗員Pとは反対側の面には、シート状の裏面材28が接合されている。裏面材28には、ベース部材70が固定されている。ベース部材70は、裏面材28に固定されるベース本体部78と、第1クリップ54等が係止される係止部76と、ベース本体部78と係止部76との間に形成されることで係止部76のベース本体部78に対する変位が許容されるスリット74と、を有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座乗員の臀部をシート下方側から支持するシートクッションと、
着座乗員の背部をシート後方側から支持するシートバックと、
前記シートクッション又は前記シートバックの一部を構成し、着座乗員とは反対側の面にシート状の裏面材が接合されたシートパッドと、
板状に形成され、前記裏面材に固定されるベース本体部と、支持部材が係止される係止部と、前記ベース本体部と前記係止部との間に形成されることで前記係止部の前記ベース本体部に対する変位が許容されるスリットと、を有するベース部材と、
を備えた車両用シート。
【請求項2】
前記係止部には、前記支持部材の一部を構成するクリップ部が挿通されるクリップ挿通孔が形成されている請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記スリットは、第1スリット部と、前記第1スリット部の両端からそれぞれ一方側へ向けて延びる一対の第2スリット部と、を有することにより、前記ベース部材の厚み方向から見てU字状に形成され、
前記ベース本体部が、一対の前記第2スリット部が延びる方向の一方側及び他方側の2箇所で前記裏面材に固定されている又は一対の前記第2スリット部が延びる方向と直交する方向の一方側及び他方側の2箇所で前記裏面材に固定されている請求項1又は請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
シートクッション及びシートバックの一部を構成するシートパッド本体と、
シート状に形成され、前記シートパッド本体に接合された裏面材と、
板状に形成され、前記裏面材に固定されるベース本体部と、支持部材が係止される係止部と、前記ベース本体部と前記係止部との間に形成されることで前記係止部の前記ベース本体部に対する変位が許容されるスリットと、を有するベース部材と、
を備えたシートパッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シート及びシートパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ワイヤハーネスを固定する部材等を不要にすることを実現する車両内装部材が開示されている。この文献に記載された車両内装部材では、ワイヤハーネスがセットされた基材と表皮との間にウレタンフォームを充填することで、ワイヤハーネスがウレタンフォーム内に埋設されるようになっている。これにより、ワイヤハーネスがウレタンフォームに支持されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両用シートの一部を構成するワイヤハーネス等をシートパッドに沿って配置した状態で当該ワイヤハーネス等を支持させる場合、上記特許文献1に記載された構成を適用することは難しい。また、上記特許文献1に記載された構成では、支持されたワイヤハーネス等を容易に取り外すことが難しい。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、ワイヤハーネス等をシートパッドに沿って配置した状態で当該ワイヤハーネス等を支持させることができると共に、支持されたワイヤハーネス等を容易に取り外すことができる車両用シート及びシートパッドを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の車両用シートは、着座乗員の臀部をシート下方側から支持するシートクッションと、着座乗員の背部をシート後方側から支持するシートバックと、前記シートクッション又は前記シートバックの一部を構成し、着座乗員とは反対側の面にシート状の裏面材が接合されたシートパッドと、板状に形成され、前記裏面材に固定されるベース本体部と、支持部材が係止される係止部と、前記ベース本体部と前記係止部との間に形成されることで前記係止部の前記ベース本体部に対する変位が許容されるスリットと、を有するベース部材と、を備えている。
【0007】
請求項1記載の車両用シートによれば、シートクッション又はシートバックの一部を構成するシートパッドには、その着座乗員とは反対側の面にシート状の裏面材が接合されている。この裏面材には、ベース部材が固定されている。また、ベース部材は、裏面材に固定されるベース本体部と、支持部材が係止される係止部と、を備えている。これにより、ワイヤハーネス等を支持部材に支持させることにより、ワイヤハーネス等をシートパッドに沿って配置した状態で当該ワイヤハーネス等を支持させることができる。また、ベース部材は、ベース本体部と係止部との間に形成されたスリットを備えている。このスリットを有することにより、係止部のベース本体部に対する変位が許容される。これにより、係止部をベース本体部に対して変位させて、係止部に係止された支持部材の取り外し作業を行うことができる。その結果、シートパッドに支持部材を介して支持されたワイヤハーネス等を容易に取り外すことができる。
【0008】
請求項2記載の車両用シートは、請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記係止部には、前記支持部材の一部を構成するクリップ部が挿通されるクリップ挿通孔が形成されている。
【0009】
請求項2記載の車両用シートによれば、ベース部材の係止部をベース本体部に対して変位させて、係止部のクリップ挿通孔に挿通されたクリップ部における挿入方向側の部位にアクセスすることができる。これにより、クリップ部における挿入方向側の部位を操作して、当該クリップ部を係止部のクリップ挿通孔から容易に抜け出させることができる。
【0010】
請求項3記載の車両用シートは、請求項1又は請求項2に記載の車両用シートにおいて、前記スリットは、第1スリット部と、前記第1スリット部の両端からそれぞれ一方側へ向けて延びる一対の第2スリット部と、を有することにより、前記ベース部材の厚み方向から見てU字状に形成され、前記ベース本体部が、一対の前記第2スリット部が延びる方向の一方側及び他方側の2箇所で前記裏面材に固定されている又は一対の前記第2スリット部が延びる方向と直交する方向の一方側及び他方側の2箇所で前記裏面材に固定されている。
【0011】
請求項3記載の車両用シートによれば、スリットの第1スリット部及び第2スリット部に工具等を挿入することに加えて、固定部において裏面材に固定されている2箇所の間に工具等を挿入することにより、係止部に係止された支持部材の取り外し作業を行うことができる。
【0012】
請求項4記載のシートパッドは、シートクッション及びシートバックの一部を構成するシートパッド本体と、シート状に形成され、前記シートパッド本体に接合された裏面材と、板状に形成され、前記裏面材に固定されるベース本体部と、支持部材が係止される係止部と、前記ベース本体部と前記係止部との間に形成されることで前記係止部の前記ベース本体部に対する変位が許容されるスリットと、を有するベース部材と、を備えている。
【0013】
請求項4記載のシートパッドによれば、シートクッション又はシートバックの一部を構成するシートパッド本体には、その着座乗員とは反対側の面にシート状の裏面材が接合されている。この裏面材には、ベース部材が固定されている。また、ベース部材は、裏面材に固定されるベース本体部と、支持部材が係止される係止部と、を備えている。これにより、ワイヤハーネス等を支持部材に支持させることにより、ワイヤハーネス等をシートパッドに沿って配置した状態で当該ワイヤハーネス等を支持させることができる。また、ベース部材は、ベース本体部と係止部との間に形成されたスリットを備えている。このスリットを有することにより、係止部のベース本体部に対する変位が許容される。これにより、係止部をベース本体部に対して変位させて、係止部に係止された支持部材の取り外し作業を行うことができる。その結果、シートパッドに支持部材を介して支持されたワイヤハーネス等を容易に取り外すことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る車両用シート及びシートパッドは、ワイヤハーネス等をシートパッドに沿って配置した状態で当該ワイヤハーネス等を支持させることができると共に、支持されたワイヤハーネス等を容易に取り外すことができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態の車両用シートをベース部材が設けられた部分において前後方向及び上下方向に沿って切断した断面を示す断面図である。
【
図2】本実施形態の車両用シートをベース部材が設けられた部分において左右方向及び上下方向に沿って切断した断面を示す断面図である。
【
図3】シートパッドを斜め下方側から見た斜視図である。
【
図4】
図3に示されたシートパッドにおいて二点鎖線4で囲まれた部分を拡大して示す拡大斜視図である。
【
図5】シートパッドにおいてベース部材が設けられた部分にワイヤハーネスが支持された状態を示す拡大斜視図である。
【
図6】取り外し構造が適用されたベース部材を有するシートパッドを分解して示す分解斜視図である。
【
図7】取り外し構造が適用されたベース部材が裏面材に接合された状態を示す拡大斜視図である。
【
図8】取り外し構造が適用されたベース部材が裏面材に接合された状態を示す
図7に対応する拡大斜視図であり、
図7に示された構成とは縫製位置が異なる構成を示している。
【
図10】取り外し構造が適用された他のベース部材を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1~
図5を用いて、本発明の実施形態に係る車両用シートについて説明する。なお、図中に示す矢印FR、矢印UP、矢印LH、矢印RHは、車両用シートに着座した乗員から見たシート前方側、上方側、左側、右側をそれぞれ示している。以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、シート前後方向の前後、シート上下方向の上下、シート左右方向の左右を示すものとする。
【0017】
図1及び
図2に示されるように、本実施形態の車両用シート10は、着座乗員Pの臀部P1を下方側から支持するシートクッション12と、着座乗員Pの背部を後方側から支持するシートバック14と、を備えている。なお、
図1及び
図2においては、図面に見やすさを考慮して、後述する裏面材28及びベース部材46にのみ断面のハッチングを付している。
【0018】
シートクッション12は、当該シートクッション12の骨格を構成するシートクッションフレーム16にシートパッド18が取り付けられた構成となっている。なお、シートバック14は、当該シートバック14の骨格を構成するシートバックフレームにシートパッド20が取り付けられた構成となっている。ここで、シートクッション12の一部を構成するシートパッド18及びシートバック14の一部を構成するシートパッド20をそれぞれシートクッションパッド及びシートバックパッドと呼ぶこともある。シートクッション12は、シートスライドレール22を介して車体のフロア24に支持されている。
【0019】
図2及び
図3に示されるように、シートクッション12の一部を構成するシートパッド18は、ウレタンフォームを用いて形成されたシートパッド本体26と、シートパッド本体26の裏面に接合された裏面材28と、を備えている。
【0020】
シートパッド本体26は、着座乗員Pの臀部P1と上下方向に対向して配置されるメイン部30と、メイン部30の左側及び右側にそれぞれ設けられた左右一対のサイドサポート部32と、を備えている。シートパッド本体26におけるメイン部30とサイドサポート部32との境目には、着座乗員Pの臀部P1が開放された溝部34が前後方向に沿って形成されている。
【0021】
また、
図3に示されるように、シートパッド本体26は、メイン部30及び左右一対のサイドサポート部32の前端から下方側へ向けて突出する前側突出部36と、左側のサイドサポート部32の左側の端及び右側のサイドサポート部32の右側の端からそれぞれ下方側へ向けて突出する左右一対のサイド側突出部38と、を備えている。さらに、シートパッド本体26は、メイン部30の後端から後方側へ向けて突出する後係止部40を備えている。
【0022】
シートパッド本体26の下方側の面(裏面)においてメイン部30と対応する部位には、裏面材28が接合されている。この裏面材28は、一例としてシート状に形成されたフェルトがシートパッド本体26の下方側の面と対応する形状に予め成形された成形フェルトである。この裏面材28は、シートパッド本体26を発泡成形するのと同時に当該シートパッド本体26と接合される。
【0023】
裏面材28においてメイン部30の右後方側と対応する箇所の一部分は、後述するベース部材46が固定されるベース部材固定部42となっている。
図1及び
図2に示されるように、ベース部材固定部42には、ベース部材46の形状と対応する形状の開口42Aが形成されている。この開口42Aの寸法は、ベース部材46の寸法よりも小さな寸法に設定されている。これにより、ベース部材46の外周部が開口42Aの縁部42Bに重ねられた状態で、ベース部材46の外周部が開口42Aの縁部42Bに縫製で固定(接合)されるようになっている。
【0024】
図4に示されるように、ベース部材46は、一例として樹脂シート又は発泡樹脂シートを用いて形成されている。本実施形態のベース部材46は、発泡樹脂シートを用いて形成されており、その外周縁が六角形状に形成されている。また、ベース部材46には、被取付部としての3つのクリップ挿通孔48が形成されている。3つのクリップ挿通孔48は、前後方向を長手方向とする長孔状に形成されている。なお、最も後方側に配置されたクリップ挿通孔48を第1クリップ挿通孔48H1と呼び、最も前方側に配置されたクリップ挿通孔48を第2クリップ挿通孔48H2と呼び、第1クリップ挿通孔48H1及び第2クリップ挿通孔48H2に対して左側に配置されたクリップ挿通孔48を第3クリップ挿通孔48H3と呼ぶ。第1クリップ挿通孔48H1及び第2クリップ挿通孔48H2の左右方向の位置は、ほぼ同じ位置となっている。第3クリップ挿通孔48H3の前後方向の位置は、第1クリップ挿通孔48H1の前後方向の位置と第2クリップ挿通孔48H2の前後方向の位置とのほぼ中央の位置となっている。
【0025】
以上説明したベース部材46は、裏面材28のベース部材固定部42の下方側に沿って配置された状態でベース部材固定部42に縫製で固定(接合)されている。なお、縫製箇所を破線で示すと共に符号50で指し示している。この縫製箇所は、ベース部材46の外周部に沿って六角形状となっている。また、ベース部材46は、裏面材28がシートパッド本体26に接合される前に裏面材28に縫製で固定される。
【0026】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0027】
図1、
図3及び
図4に示されるように、以上説明した車両用シート10の組立工程では、先ず、ベース部材46を裏面材28のベース部材固定部42に縫製で接合する(ベース部材固定工程)。なお、ベース部材固定工程においては、ベース部材46を裏面材28のベース部材固定部42に接着剤を用いて固定する等の他の方法を適用することもできる。
【0028】
次に、裏面材28を金型にセットして、当該金型内にウレタンフォームを充填することにより、シートパッド本体26を形成すると共に裏面材28をシートパッド本体26の裏面に接合する(裏面材接合工程)。この工程でシートパッド18が形成される。なお、裏面材接合工程においては、シートパッド本体26を形成した後に、裏面材28をシートパッド本体26の裏面に接着剤や縫製により接合するようにしてもよい。そして、この工程で形成されたシートパッド18をシートクッションフレーム16に取り付ける(シートパッド取付工程)。
【0029】
次に、車両用シート10側に設けられたワイヤハーネスとしてのシート側ハーネス52をベース部材46に支持させる。詳述すると、シート側ハーネス52が挿通された支持部材としての第1クリップ54のクリップ部56をベース部材46の第1クリップ挿通孔48H1に挿通させることで、第1クリップ54をベース部材46に係止させる(シート側ハーネス支持工程)。なお、シート側ハーネス52は、シートバック14に設けられた図示しないヒータと繋がっている。
【0030】
以上の工程を経て、車両用シート10が製造される。
【0031】
また、以上の工程を経て製造された車両用シート10は、車体のフロア24に固定される(車両用シート固定工程)。
【0032】
次に、
図4及び
図5に示されるように、ワイヤハーネスとしての車体側ハーネス58に端部に設けられた支持部材としての車体側カプラ60とシート側ハーネス52の端部に設けられたシート側カプラ62とを係合させる(カプラ接続工程)。
【0033】
次に、車体側カプラ60のクリップ部56をベース部材46の第2クリップ挿通孔48H2に挿通させることで、車体側カプラ60をベース部材46に係止させる。これに加えて、車体側ハーネス58が挿通された支持部材としての第2クリップ64のクリップ部56をベース部材46の第3クリップ挿通孔48H3に挿通させることで、第2クリップ64をベース部材46に係止させる(車体側ハーネス支持工程)。
【0034】
以上説明した工程を経ることにより、本実施形態の車両用シート10では、シート側ハーネス52及び車体側ハーネス58をシートパッド18に沿って配置した状態で、当該シート側ハーネス52及び車体側ハーネス58を支持させることができる。
【0035】
また、本実施形態では、ベース部材46が裏面材28に縫製で接合されている。この構成では、ベース部材46を裏面材28に締結部材を用いて固定した場合のような締結部材の緩みに伴う異音が発生しない。すなわち、本実施形態では、ベース部材46と裏面材28との接合部において異音が発生することを抑制することができる。
【0036】
さらに、本実施形態では、ベース部材46が発泡樹脂シートを用いて形成されている。これにより、ベース部材46が取り付けられた裏面材28を備えたシートパッド18の軽量化を図ることができ、その結果、車両用シート10の軽量化を図ることができる。
【0037】
また、本実施形態では、板状のベース部材46が、シートクッション12の一部を構成するシートパッド18の下方側の面に沿って配置されている。この構成では、シートパッド18においてシート側ハーネス52及び車体側ハーネス58が支持される部分の下方側への突出量が低減される。これにより、シートクッション12の下方側のスペースが狭まることを抑制することができ、車両用シート10の後席の足元スペースへの影響を少なくすることができる。さらに、本実施形態では、ベース部材46が裏面材28のベース部材固定部42の上方側に沿って配置されている。すなわち、ベース部材46が裏面材28に対して下方側に突出しない構成となっている。これによっても、シートクッション12の下方側のスペースが狭まることを抑制することが可能となっている。また、ベース部材46が裏面材28のベース部材固定部42の上方側に沿って配置された状態でベース部材46が裏面材28に縫製で接合される構成では、ベース部材46が接合された裏面材28を金型にセットして、当該金型内にウレタンフォームを充填してシートパッド本体26を形成する際に、ベース部材46と裏面材28との接合部からウレタンフォームが漏れ出すことを抑制することができる。
【0038】
なお、本実施形態では、シート側ハーネス52及び車体側ハーネス58をベース部材46によってシートパッド18に支持させた例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、他の配線や配管をベース部材46によってシートパッド18に支持させた構成としてもよい。
【0039】
また、本実施形態では、シート側ハーネス52及び車体側ハーネス58をベース部材46によってシートクッション12の一部を構成するシートパッド18に支持させた例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、シート側ハーネス52及び車体側ハーネス58をベース部材46によってシートバック14の一部を構成するシートパッド20に支持させた構成としてもよい。また、本発明の構造は、後席にも適用することができる。
【0040】
(クリップ部を容易に取り外すことができる構成)
次に、
図6~
図9を用いて、ベース部材70に係止された第1クリップ54等を当該ベース部材70から容易に取り外すことができる構成(以下この構造を「取り外し構造」と呼ぶ)が適用されたベース部材70について説明する。
【0041】
図6には、取り外し構造が適用されたベース部材70を有するシートパッド72の分解斜視図が示されている。なお、このシートパッド72は、前述の車両用シート10の一部を構成するシートパッド18の構成と同様に構成されている。そのため、シートパッド72を構成する部材及び部分において前述のシートパッド18と対応する部材及び部分には、前述のシートパッド18と対応する部材及び部分と同じ符号を付して、その説明を省略することがある。
【0042】
図6、
図7、
図8及び
図9に示されるように、裏面材28のベース部材固定部42には、後述するベース部材70の形状と対応する矩形状の開口42Aが形成されている。この開口42Aの寸法は、ベース部材70の寸法よりも小さな寸法に設定されている。これにより、ベース部材70の外周部が開口42Aの縁部42Bに重ねられた状態で、ベース部材70の外周部が開口42Aの縁部42Bに縫製で固定(接合)されるようになっている。
【0043】
図7及び
図9に示されるように、ベース部材70は、矩形板状に形成されている。このベース部材70を厚み方向から見た中心部(図心と対応する部分)には、第1クリップ54のクリップ部56が挿通されるクリップ挿通孔48が形成されている。
【0044】
また、ベース部材70には、当該ベース部材70の厚み方向から見て略U字状に形成されたスリット74が形成されている。このスリット74は、ベース部材70の一端70Aと平行に延びる直線状の第1スリット部74Aと、第1スリット部74Aの両端からそれぞれ当該第1スリット部74が延びる方向と直交する方向の一方側へ向けて延びる直線状の一対の第2スリット部74Bと、によって構成されている。この第1スリット部74A及び一対の第2スリット部74Bに囲まれた範囲内にクリップ挿通孔48が配置されている。ここで、第1スリット部74A及び一対の第2スリット部74Bに囲まれた矩形状(舌片状)の範囲を係止部76と呼ぶ。また、ベース部材70の外周部である係止部76の外側の矩形枠状の範囲をベース本体部78と呼ぶ。そして、ベース部材70に上記のスリット74が形成されていることで、係止部76のベース部材70に対する変位が許容されるようになっている。
【0045】
また、ベース部材70のベース本体部78が裏面材28のベース部材固定部42に形成された開口42Aの縁部42Bと重ねて配置された状態で、ベース本体部78と開口42Aの縁部42Bとが、2箇所の縫製部50で固定されている。2箇所の縫製部50は、一対の第2スリット部74が延びる方向の一方側及び他方側にそれぞれ配置されている。なお、
図8に示されるように、ベース本体部78と開口42Aの縁部42Bとが、一対の第2スリット部74が延びる方向と直交する方向の一方側及び他方側の2箇所の縫製部50で固定されていてもよい。
【0046】
図6~
図9に示されるように、以上説明した取り外し構造が適用されたベース部材70の構成では、例えば、スリット74に工具等を挿入することにより、ベース部材70の係止部76をベース本体部78に対してシートパッド本体26とは反対側へ変位させることで、係止部76のクリップ挿通孔48に挿通された第1クリップ54のクリップ部56における挿入方向側の部位にアクセスすることができる。これにより、クリップ部56における挿入方向側の部位を縮径させるように操作して、当該クリップ部56を係止部76のクリップ挿通孔48から容易に抜け出させることができる。すなわち、以上説明した取り外し構造が適用されたベース部材70の構成では、シートパッド72に第1クリップ54を介して支持されたワイヤハーネス等を容易に取り外すことができる。
【0047】
また、
図7及び
図8に示されるように、ベース部材70は、前述の2箇所の縫製部50で固定されている。そのため、スリット74に工具等を挿入することに加えて、ベース本体部78において裏面材28に固定されている2箇所の縫製部50の間に工具等を挿入することにより、係止部76に係止された第1クリップ54の取り外し作業を行うことができる。
【0048】
なお、以上説明した例では、ベース部材70の係止部76に第1クリップ54のクリップ部56を挿入することで、ワイヤハーネス等をシートパッド72に支持させた例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ワイヤハーネス等を支持させるための支持部材をカシメや接着剤、溶着等によりベース部材70の係止部76に係止させるように構成してもよい。この場合においても、係止部76をベース本体部78に対して変位させることで、カシメ箇所や接着箇所、溶着箇所等の切り離し作業を容易に行うことができる。すなわち、シートパッド72に支持部材を介して支持されたワイヤハーネス等を容易に取り外すことができる。
【0049】
また、ベース部材70の構成を前述のベース部材46に適用する場合、
図10に示されたベース部材80のように、各々のクリップ挿通孔48の周りにそれぞれスリット74を形成すればよい。なお、ベース部材80において前述のベース部材70及びベース部材46と対応する部分には、前述のベース部材70及びベース部材46と対応する部分と同じ符号を付している。
【0050】
また、以上説明した各構成は、互いに組み合わせることができる。
【0051】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0052】
10 車両用シート
12 シートクッション
14 シートバック
18 シートパッド
26 シートパッド本体
28 裏面材
46 ベース部材
54 第1クリップ(支持部材)
60 車体側カプラ(支持部材)
64 第2クリップ(支持部材)
P 着座乗員
P1 着座乗員の臀部
70 ベース部材
72 シートパッド
74 スリット
74A 第1スリット部
74B 第2スリット部
76 係止部
78 ベース本体部
80 ベース部材