(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119408
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02K 5/22 20060101AFI20220809BHJP
H02K 11/30 20160101ALI20220809BHJP
【FI】
H02K5/22
H02K11/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021016498
(22)【出願日】2021-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 望
(72)【発明者】
【氏名】長谷 将洋
(72)【発明者】
【氏名】丸山 雄秋
(72)【発明者】
【氏名】杉山 智也
(72)【発明者】
【氏名】大西 元気
【テーマコード(参考)】
5H605
5H611
【Fターム(参考)】
5H605AA07
5H605BB05
5H605CC01
5H605CC06
5H605EC20
5H611BB01
5H611BB07
5H611BB08
5H611TT01
5H611UA04
(57)【要約】
【課題】回転電機の出力側かつ上側において、周辺部材の良好な搭載性を確保しやすくする。
【解決手段】ケースと、回転電機と、インバータモジュールと、インバータモジュールと回転電機とを電気的に接続する配線部と、を含む車両用駆動装置であって、ケースは、回転電機が収容される第1室を形成し、回転電機に対して径方向で対向する周壁部を有するケース部材と、ケース部材の軸方向の一方側に取り付けられ、第1室を軸方向に覆うカバー部材とを含み、インバータモジュールは、第1室に対して径方向に周壁部を介して隣接し、配線部は、第1室内における軸方向の一方側の端部にて周壁部を通ってインバータモジュール側へと径方向外側に延在し、かつ、軸方向の一方側へと屈曲しつつ径方向外側に更に延在する、車両用駆動装置が開示される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
回転電機と、
インバータモジュールと、
前記インバータモジュールと前記回転電機とを電気的に接続する配線部と、を含む車両用駆動装置であって、
前記ケースは、前記回転電機が収容される第1室を形成するケース部材であって、前記回転電機に対して径方向で対向する周壁部を有するケース部材を含み、
前記インバータモジュールは、前記第1室に対して径方向に前記周壁部を介して隣接し、
前記配線部は、前記第1室内における軸方向の前記一方側の端部にて前記周壁部を通って前記インバータモジュール側へと径方向外側に延在し、かつ、軸方向の前記一方側へと屈曲しつつ径方向外側に更に延在する、車両用駆動装置。
【請求項2】
前記ケースは、前記ケース部材の軸方向の一方側に取り付けられかつ前記第1室を軸方向に覆うカバー部材を、更に含み、
前記ケース部材と前記カバー部材との間の軸方向の合わせ面は、前記配線部における軸方向の前記一方側の端部よりも、軸方向で前記一方側とは逆の他方側に配置される、請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記インバータモジュールが収容される第3室は、前記合わせ面よりも前記一方側に延在する、請求項2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記インバータモジュールは、前記回転電機よりも前記一方側に延在する、請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カバー部材の上部にインバータモジュールを設け、回転電機とインバータモジュールとを電気的に接続する配線部を、出力ギヤと回転電機の外径差によって生じるデッドスペースを利用して配置する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術では、ケースにおける出力ギヤを収容する部分の上部(回転電機の出力側かつ上側)のスペースが小さくなりやすく、かかるスペースに係る周辺部材の搭載性が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、1つの側面では、本開示は、回転電機の出力側かつ上側において、周辺部材の良好な搭載性を確保しやすくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、ケースと、
回転電機と、
インバータモジュールと、
前記インバータモジュールと前記回転電機とを電気的に接続する配線部と、を含む車両用駆動装置であって、
前記ケースは、前記回転電機が収容される第1室を形成するケース部材であって、前記回転電機に対して径方向で対向する周壁部を有するケース部材を含み、
前記インバータモジュールは、前記第1室に対して径方向に前記周壁部を介して隣接し、
前記配線部は、前記第1室内における軸方向の前記一方側の端部にて前記周壁部を通って前記インバータモジュール側へと径方向外側に延在し、かつ、軸方向の前記一方側へと屈曲しつつ径方向外側に更に延在する、車両用駆動装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
1つの側面では、本開示によれば、回転電機の出力側かつ上側において、周辺部材の良好な搭載性を確保しやすくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】モータ駆動システムの全体構成の一例を示す図である。
【
図3】車両用駆動装置におけるケースの概略的な説明図である。
【
図4】第1カバー部材を取り外した状態で車両用駆動装置を軸方向第1側L1から視た斜視図である。
【
図5】
図3のラインA-Aに沿った車両用駆動装置の概略的な断面図である。
【
図6】
図5のラインB-Bに沿った車両用駆動装置の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。
【0010】
ここでは、まず、本実施例による車両用駆動装置の説明に先立って、まず、本実施例による車両用駆動装置が適用されるのが好適な電動車両用のモータ駆動システムSMについて説明する。なお、電動車両用モータ駆動システムSMに関する
図1の説明において、特に言及しない限り、各種の要素間の“接続”という用語は、“電気的な接続”を意味する。
【0011】
図1は、モータ駆動システムSMの全体構成の一例を示す図である。モータ駆動システムSMは、高圧バッテリHBの電力を用いて回転電機1を駆動することにより車両を駆動させるシステムである。なお、電動車両は、電力を用いて回転電機1を駆動して走行するものであれば、その方式や構成の詳細は任意である。電動車両は、典型的には、動力源がエンジンと回転電機1であるハイブリッド自動車や、動力源が回転電機1のみである電気自動車を含む。以下、車両とは、特に言及しない限り、モータ駆動システムSMが搭載される車両を指す。
【0012】
モータ駆動システムSMは、
図1に示すように、高圧バッテリHB、平滑コンデンサSCと、インバータIV、回転電機1、及びインバータ制御装置6Aを備える。
【0013】
高圧バッテリHBは、電力を蓄積して直流電圧を出力する任意の蓄電装置であり、ニッケル水素バッテリ、リチウムイオンバッテリや電気2重層キャパシタ等の容量性素子を含んでよい。高圧バッテリHBは、典型的には、定格電圧が100Vを超えるバッテリであり、定格電圧が例えば288Vである。
【0014】
インバータIVは、正極ラインと負極ラインとの間に互いに並列に配置されるU相、V相、W相の各アームを含む。U相アームはスイッチング素子(本例ではIGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)Q1、Q2の直列接続を含み、V相アームはスイッチング素子(本例ではIGBT)Q3、Q4の直列接続を含み、W相アームはスイッチング素子(本例ではIGBT)Q5、Q6の直列接続を含む。また、各スイッチング素子Q1~Q6のコレクタ-エミッタ間には、それぞれ、エミッタ側からコレクタ側に電流を流すようにダイオードD11~D16が配置される。なお、スイッチング素子Q1~Q6は、MOSFET(metal oxide semiconductor field-effect transistor)のような、IGBT以外の他のスイッチング素子であってもよい。
【0015】
回転電機1は、例えば3相の交流モータであり、U、V、W相の3つのコイルの一端が中性点で共通接続される。U相コイルの他端は、スイッチング素子Q1、Q2の中点M1に接続され、V相コイルの他端は、スイッチング素子Q3、Q4の中点M2に接続され、W相コイルの他端は、スイッチング素子Q5、Q6の中点M3に接続される。スイッチング素子Q1のコレクタと負極ラインとの間には、平滑コンデンサSCが接続される。
【0016】
インバータ制御装置6Aには、回転電機1を流れる電流を検出する電流センサ(図示せず)等の各種センサが接続される。インバータ制御装置6Aは、各種センサからのセンサ情報に基づいて、インバータIVを制御する。インバータ制御装置6Aは、例えばCPU、ROM、メインメモリ(全て図示せず)などを含み、インバータ制御装置6Aの各種機能は、ROM等に記録された制御プログラムがメインメモリに読み出されてCPUにより実行されることによって実現される。インバータIVの制御方法は、任意であるが、基本的には、U相に係る2つのスイッチング素子Q1、Q2が互いに逆相でオン/オフし、V相に係る2つのスイッチング素子Q3、Q4が互いに逆相でオン/オフし、W相に係る2つのスイッチング素子Q5、Q6が互いに逆相でオン/オフする。
【0017】
なお、
図1に示す例では、モータ駆動システムSMは、単一の回転電機1を備えるが、追加のモータ(発電機を含む)を備えてもよい。この場合、追加のモータ(複数も可)は、対応するインバータと共に、回転電機1及びインバータIVと並列な関係で、高圧バッテリHBに接続されてもよい。また、
図1に示す例では、モータ駆動システムSMは、DC/DCコンバータを備えていないが、高圧バッテリHBとインバータIVの間にDC/DCコンバータを備えてもよい。
【0018】
高圧バッテリHBと平滑コンデンサSCとの間には、
図1に示すように、高圧バッテリHBから電力供給を遮断するための遮断用スイッチSW1が設けられる。遮断用スイッチSW1は、半導体スイッチやリレー等で構成されてもよい。遮断用スイッチSW1は、常態でオン状態であり、例えば車両の衝突検出時等にオフとされる。なお、遮断用スイッチSW1のオン/オフの切換はインバータ制御装置6Aにより実現されてもよいし、他の制御装置により実現されてもよい。
【0019】
図2は、車両用駆動装置100のスケルトン図である。
【0020】
車両用駆動装置100は、車輪Wの駆動力源となる回転電機1と、回転電機1と車輪Wとを結ぶ動力伝達経路Pに設けられた駆動伝達機構10と、を備える。本実施例では、一例として、駆動伝達機構10は、入力部材3と、カウンタギヤ機構4と、差動歯車機構5と、第1出力部材61及び第2出力部材62と、を備える。
【0021】
回転電機1は、その回転軸心としての第1軸A1上に配置される。本実施例では、一例として、入力部材3も第1軸A1上に配置される。カウンタギヤ機構4は、その回転軸心としての第2軸A2上に配置される。差動歯車機構5は、その回転軸心としての第3軸A3上に配置される。本実施例では、一例として、第1出力部材61及び第2出力部材62も第3軸A3上に配置される。第1軸A1、第2軸A2、及び第3軸A3は、互いに異なる仮想軸であり、互いに平行に配置される。
【0022】
以下の説明では、上記の軸A1~A3に平行な方向を、車両用駆動装置100の「軸方向L」とする。そして、軸方向Lにおいて、入力部材3に対して回転電機1が配置される側を「軸方向第1側L1」とし、その反対側を「軸方向第2側L2」とする。
【0023】
入力部材3は、駆動伝達機構10の入力要素である。入力部材3は、入力軸31と、入力ギヤ32とを有する。
【0024】
入力軸31は、第1軸A1まわりに回転する回転部材である。入力軸31は、軸方向Lに沿って延在するように形成される。入力ギヤ32は、回転電機1からの駆動力をカウンタギヤ機構4に伝達するギヤである。入力ギヤ32は、入力軸31と一体的に回転するように、入力軸31に連結される。
【0025】
カウンタギヤ機構4は、動力伝達経路Pにおいて、入力部材3と差動歯車機構5との間に配置される。カウンタギヤ機構4は、カウンタ軸41と、第1カウンタギヤ42と、第2カウンタギヤ43とを有する。カウンタ軸41は、第2軸A2まわりに回転する回転部材である。カウンタ軸41は、軸方向Lに沿って延在するように形成される。
【0026】
第1カウンタギヤ42は、カウンタギヤ機構4の入力要素である。第1カウンタギヤ42は、入力部材3の入力ギヤ32と噛み合う。第1カウンタギヤ42は、カウンタ軸41と一体的に回転するように、カウンタ軸41に連結される。
【0027】
第2カウンタギヤ43は、カウンタギヤ機構4の出力要素である。本実施例では、一例として、第2カウンタギヤ43は、第1カウンタギヤ42よりも小径に形成される。第2カウンタギヤ43は、カウンタ軸41と一体的に回転するように、カウンタ軸41に連結される。
【0028】
差動歯車機構5は、回転電機1の側から伝達される駆動力を、第1出力部材61と第2出力部材62とに分配する。差動歯車機構5は、差動入力ギヤ51を含む。差動入力ギヤ51は、差動歯車機構5の入力要素である。差動入力ギヤ51は、カウンタギヤ機構4の第2カウンタギヤ43と噛み合う。差動入力ギヤ51は、差動ケース52と一体的に回転するように、差動ケース52に連結される、差動ケース52は、第3軸A3まわりに回転する回転部材である。差動ケース52は、中空の部材である。差動ケース52の内部には、図示しないが、ピニオンシャフトと、一対のピニオンギヤと、左右のサイドギヤが設けられる。
【0029】
第1出力部材61及び第2出力部材62のそれぞれは、車輪Wに駆動連結される。第1出力部材61及び第2出力部材62のそれぞれは、差動歯車機構5によって分配された駆動力を車輪Wに伝達する。なお、第1出力部材61は、中継部材(図示せず)を含む態様で2部材以上により形成されてもよい。
【0030】
図3は、車両用駆動装置100におけるケース2の概略的な説明図である。
【0031】
本実施例では、回転電機1及び駆動伝達機構10は、ケース2に収容される。
【0032】
ケース2は、ケース部材21と、第1カバー部材22と、第2カバー部材23とを含む。ケース部材21は、回転電機1及び駆動伝達機構10の径方向外側を囲む筒状に形成される。第1カバー部材22及び第2カバー部材23は、径方向に延在するように形成される。第1カバー部材22は、ケース部材21の軸方向第1側L1の開口を閉塞するように、ケース部材21の軸方向第1側L1の端部に固定される。第2カバー部材23は、ケース部材21の軸方向第2側L2の開口を閉塞するように、ケース部材21の軸方向第2側L2の端部に固定される。
【0033】
ケース部材21は、周壁部211、212とともに、隔壁部24を形成する。ケース部材21は、一ピースのケース部材であるが、2ピース以上により構成されてもよい。隔壁部24は、ケース部材21の径方向内側の空間であって、第1カバー部材22と第2カバー部材23との間の空間を2つの室SP1、SP2へと軸方向Lに区画するように形成される。すなわち、ケース部材21は、隔壁部24よりも軸方向第1側L1の周壁部211と、隔壁部24よりも軸方向第2側L2の周壁部212とを含む。本実施例では、一例として、軸方向で隔壁部24と第1カバー部材22との間の室SP1(第1室の一例)には、回転電機1が配置される。そして、軸方向で隔壁部24と第2カバー部材23との間の室SP2(第2室の一例)には、駆動伝達機構10が配置される。
【0034】
ケース2は、インバータケース部2aを含む。インバータケース部2aは、ケース2と一体に形成されてよい。すなわち、インバータケース部2aは、回転電機1が収容される室SP1を形成するケース部材21の周壁部211(又は周壁部211及び周壁部212)により仕切られる態様で、当該ケース部材21と一体に形成されてよい。あるいは、インバータケース部2aの一部又は全部は、ケース部材21とは別体であり、ケース部材21に取り付けられてもよい。
【0035】
インバータケース部2aは、
図3に示すように、ケース2の上部に配置される。インバータケース部2aにより形成される室SP3には、インバータモジュールMJが収容される。インバータモジュールMJは、
図1を参照して上述したインバータIVやインバータ制御装置6A等を内蔵するモジュールであり、平滑コンデンサSCを更に内蔵してもよい。インバータケース部2aの室SP3は、好ましくは、蓋部材25により外部に対して閉じられる。すなわち、インバータケース部2aは、閉塞空間である室SP3を形成し、当該閉塞空間内にインバータモジュールMJが配置される。これにより、インバータモジュールMJに係るEMC(Electromagnetic Compatibility)対策を適切に実現できるとともに、空間共鳴等の問題も低減できる。
【0036】
ここで、
図4及び
図5を参照して、車両用駆動装置100におけるインバータモジュールMJと回転電機1との間の配線構造について説明する。
【0037】
図4は、第1カバー部材22を取り外した状態で車両用駆動装置100を軸方向第1側L1から視た斜視図であり、
図5は、
図3のラインA-Aに沿った車両用駆動装置100の断面図である。なお、
図5には、上下方向が定義されている。なお、
図5に示す上下方向は、重力方向と平行であってもよいし、重力方向に対して若干傾斜してもよい。
【0038】
バスバー7U、7V、7W(配線部の一例)は、ケース2内に延在する。バスバー7U、7V、7Wは、例えば板状の形態(例えば板金部材)であるが、断面が円形の導体線により実現されてもよい。バスバー7U、7V、7Wは、それぞれ、U相、V相、及びW相の各相に対応して設けられ、回転電機1からの各相の動力線(リード線)1U、1V、1W(
図1も参照)に接合される。動力線1U、1V、1Wは、軸方向第1側L1において、バスバー7U、7V、7Wに接続される。
図5には、バスバー7U、7V、7Wと動力線1U、1V、1Wとの間の接合部9U、9V、9Wが模式的に示される。なお、バスバー7U、7V、7Wと動力線1U、1V、1Wとの間の接合は、例えばボルトの締付けにより実現されてよい。
【0039】
バスバー7U、7V、7Wは、一端側が室SP1内で動力線1U、1V、1Wに接合され、他端側が室SP3内でインバータモジュールMJのインバータIV側のバスバー8U、8V、8Wに接合される。従って、バスバー7U、7V、7Wは、室SP1と室SP3との間の壁部(すなわち、周壁部211)を貫通する態様で配置される。なお、バスバー8U、8V、8Wは、インバータIVの中点M1、M2、M3(
図1参照)まで延在してもよいし、他のバスバーを介してインバータIVの中点M1、M2、M3に電気的に接続されてもよい。
【0040】
バスバー7U、7V、7Wは、接合部9U、9V、9Wを形成する部分や、バスバー8U、8V、8Wとの接合部を形成する部分だけが露出する態様で、樹脂部70により封止されてもよい。この場合、樹脂部70は、バスバー7U、7V、7Wを共通に保持する端子台の態様で、ケース2に固定されてよい。なお、
図5では、バスバー7U、7V、7Wは、第3軸A3の上方のケース2(ケース部材21)の上部に支持される。
【0041】
次に、
図6及び
図7を参照して、本実施例による配線構造の特徴と効果について説明する。
図6は、
図5のラインB-Bに沿った車両用駆動装置100の概略的な断面図である。
図7は、比較例による車両用駆動装置100’におけるケース構造(回転電機等のレイアウト)の説明図である。
図8は、比較例による配線構造の概略的な断面図である。
【0042】
本実施例では、
図6に示すように、バスバー7W(バスバー7U、7Vについても同様)は、室SP1内における軸方向第1側L1の端部にて周壁部211を通ってインバータモジュールMJ(室SP3)側へと径方向外側に延在し、かつ、軸方向第1側L1へと屈曲しつつ径方向外側に更に延在(オーバーハング)する。
【0043】
具体的には、バスバー7W(バスバー7U、7Vについても同様)は、例えば板金部材により形成され、室SP3において、第1直立部71と、第2直立部72と、水平部73と、傾斜部74とを含む。なお、
図6に示すように、第1直立部71及び傾斜部74は、樹脂部70により封止されてもよい。
【0044】
第1直立部71は、上下方向に視て、インバータモジュールMJに重複する位置(重なる位置)に配置される。第1直立部71は、動力線1Wとバスバー7Wとの間の接合部に対して略真上に配置される。第1直立部71は、接合部9Wの位置から径方向外側へと上下方向に略平行に延在する。なお、第1直立部71の下端部は、動力線1Wとバスバー7Wとの間の接合部9Wを形成してもよい。なお、第1直立部71は、軸方向Lに視て、インバータモジュールMJの軸方向第1側L1の部位に重複しない範囲に延在する。
【0045】
第2直立部72は、第1直立部71に対して軸方向第1側L1にオフセットして配置される。第2直立部72は、第1直立部71と同様、傾斜部74の上端位置から径方向外側へと上下方向に略平行に延在する。第2直立部72は、上下方向に視て、インバータモジュールMJに重複せず、バスバー8Wと重複する。また、第2直立部72の上部は、軸方向Lに視て、インバータモジュールMJの軸方向第1側L1の部位に重複する。
【0046】
水平部73は、軸方向第2側L2が第2直立部72から連続し、略水平面内に延在する。水平部73は、軸方向第1側L1が自由端であり、バスバー8Wと接合される。水平部73は、インバータモジュールMJの軸方向第1側L1の部位よりも、軸方向第1側L1に配置される。
【0047】
傾斜部74は、軸方向第2側L2の一端(下端)が第1直立部71から連続し、軸方向第1側L1の他端(上端)が第2直立部72へと連続する。傾斜部74は、
図6に示すように、第1直立部71から軸方向第1側L1へ斜めに延在する。これにより、傾斜部74と第1直立部71との間には、屈曲部75Aが形成され、傾斜部74と第2直立部72との間には、屈曲部75Aとは逆向きの屈曲部75Bが形成される。
【0048】
傾斜部74は、上下方向に視て、軸方向第2側L2はインバータモジュールMJに重複するが、軸方向第1側L1はインバータモジュールMJに重複しない。また、傾斜部74は、軸方向Lに視て、インバータモジュールMJの軸方向第1側L1の部位に重複しない範囲に延在する。ただし、傾斜部74の上部は、軸方向Lに視て、インバータモジュールMJの軸方向第1側L1の部位に重複してもよい。
【0049】
このようにして、バスバー7W(バスバー7U、7Vについても同様)は、室SP3において軸方向第1側L1へと屈曲しつつ径方向外側に延在するので、インバータモジュールMJを回転電機1に対して軸方向Lで軸方向第1側L1に配置できる。
【0050】
ところで、
図7に示すような比較例では、室SP3’内のインバータモジュールMJの軸方向第1側L1の端部が室SP1’内の回転電機1の軸方向第1側L1の端部よりも軸方向第2側L2に配置される。それに伴い、当該比較例では、インバータケース部2a’は、第1カバー部材22’よりも軸方向第2側L2に配置される。このような比較例では、
図8に示すように、バスバー7W’は、
図6に示す傾斜部74を有さない態様で形成され、周壁部211’のケース部材21’と第1カバー部材22’との間の軸方向の合わせ面220’は、バスバー8Wとバスバー7W’との間の接合部よりも軸方向第1側L1となる。この場合、軸方向Lで合わせ面220’の位置を基準とすると、合わせ面220’からインバータモジュールMJの軸方向第2側L2の端部までの距離が、本実施例に比べて長くなる分だけ、スペース80’の軸方向Lの長さが短くなる。なお、比較例において合わせ面220’から回転電機1までの軸方向Lの距離は、本実施例の合わせ面220から回転電機1までの距離と同じであるとする。
【0051】
これに対して、本実施例では、
図6に示すように、インバータケース部2a及びそれに伴い室SP3は、第1カバー部材22とケース部材21との間の軸方向の合わせ面220よりも、軸方向第1側L1まで延在する。この場合、インバータモジュールMJを回転電機1に対して軸方向Lで軸方向第1側L1に配置でき、インバータモジュールMJの軸方向第2側L2のスペース80を有効活用できる。すなわち、車両用駆動装置100の回転電機1の出力側(軸方向第2側L2)かつ上側において、周辺部材の良好な搭載性を確保できる。
【0052】
また、本実施例では、
図6に示すように、バスバー7W(バスバー7U、7Vについても同様)は、室SP3において軸方向第1側L1へと屈曲しつつ径方向外側に延在することで、軸方向Lで合わせ面220よりも軸方向第1側L1まで延在する。これにより、バスバー7Wがバスバー7W’のように傾斜部74を有さない場合に比べて、インバータモジュールMJを室SP3内における軸方向第1側L1に寄せて配置できる。この結果、スペース80の軸方向Lの長さを効率的に増加させることができる。
【0053】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0054】
1・・・回転電機、2・・・ケース、21・・・ケース部材、22・・・第1カバー部材(カバー部材)、220・・・合わせ面、7U、7V、7W・・・バスバー(配線部)、MJ・・・インバータモジュール、100・・・車両用駆動装置、SP1・・・室(第1室)、SP2・・・室(第2室)、SP3・・・室(第3室)、10・・・駆動伝達機構