(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119488
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】加圧浮上分離装置および加圧浮上分離装置の運転方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/24 20060101AFI20220809BHJP
C02F 1/52 20060101ALI20220809BHJP
C02F 1/40 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
C02F1/24 A
C02F1/24 B
C02F1/52 Z
C02F1/40 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021016659
(22)【出願日】2021-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮ノ下 友明
(72)【発明者】
【氏名】横山 知士
(72)【発明者】
【氏名】本宮 明紘
【テーマコード(参考)】
4D015
4D037
4D051
【Fターム(参考)】
4D015BA22
4D015BB09
4D015BB12
4D015BB14
4D015CA14
4D015CA20
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4D037AA01
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4D051AB03
4D051CA02
4D051DB02
4D051DD23
(57)【要約】
【課題】被処理水の水質の変化に対して加圧浮上分離装置の処理状態を適切に判断することができる加圧浮上分離装置および加圧浮上分離装置の運転方法を提供する。
【解決手段】被処理水中の固形分を浮上分離するための浮上分離槽14と、加圧状態で空気を溶解した加圧水を浮上分離槽14へ供給する加圧タンク16と、を備える加圧浮上分離装置1であって、浮上分離槽14のスカム排出口80に向かって液面下から液面上まで傾斜するように設置された板状部材であるビーチ板78の上方に配置され、ビーチ板78上の被処理水およびスカムの画像を撮影する撮像装置20と、撮像装置20によって撮影された画像に基づいて加圧浮上分離装置1の処理状態を判断する判断手段と、を備える加圧浮上分離装置1である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水中の固形分を浮上分離するための浮上分離槽と、加圧状態で空気を溶解した加圧水を前記浮上分離槽へ供給する加圧水供給手段と、を備える加圧浮上分離装置であって、
前記浮上分離槽のスカム排出口に向かって液面下から液面上まで傾斜するように設置された板状部材であるビーチ板の上方に配置され、前記ビーチ板上の被処理水およびスカムの画像を撮影する撮像手段と、
前記撮像手段によって撮影された画像に基づいて前記加圧浮上分離装置の処理状態を判断する判断手段と、
を備えることを特徴とする加圧浮上分離装置。
【請求項2】
請求項1に記載の加圧浮上分離装置であって、
前記浮上分離槽の前段に設けられた、被処理水に凝集剤を添加し、撹拌して凝集処理を行う凝集処理手段と、
前記判断手段から得られた情報に基づいて、前記凝集処理手段における前記凝集剤の注入量、撹拌強度を調整するための撹拌速度、pH、前記浮上分離槽における前記加圧水の供給量、前記加圧水の空気量、前記加圧水の圧力を含む運転条件のうちのいずれか一つ以上を変更する制御手段と、
をさらに備えることを特徴とする加圧浮上分離装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の加圧浮上分離装置であって、
前記撮像手段は、前記ビーチ板上の被処理水およびスカムに向けて照射された照射光の反射または吸収の状態の画像を撮影し、
前記判断手段は、その画像の解析結果に基づいて前記加圧浮上分離装置の処理状態が正常か異常か、異常の場合には前記凝集処理の影響なのか前記加圧水の影響なのか、あるいはその両方なのかを判断することを特徴とする加圧浮上分離装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の加圧浮上分離装置であって、
前記被処理水の水質を測定して被処理水水質の情報を取得する被処理水水質測定手段、前記被処理水の流量を測定して被処理水量の情報を取得する被処理水量測定手段、前記加圧水の流量を測定して加圧水量の情報を取得する加圧水量測定手段、前記加圧水の圧力を測定して加圧水圧力の情報を取得する圧力測定手段のうちのいずれか一つ以上をさらに備え、前記判断手段は、それらの取得した情報に基づいて前記撮像手段によって撮影された画像の解析を行うことを特徴とする加圧浮上分離装置。
【請求項5】
請求項4に記載の加圧浮上分離装置であって、
前記制御手段は、前記取得した情報の過去データと新たなデータとを比較し、その比較結果に基づいて前記運転条件のうちのいずれか一つ以上を変更することを特徴とする加圧浮上分離装置。
【請求項6】
被処理水中の固形分を浮上分離するための浮上分離槽と、加圧状態で空気を溶解した加圧水を前記浮上分離槽へ供給する加圧水供給手段と、を備える加圧浮上分離装置の運転方法であって、
前記浮上分離槽のスカム排出口に向かって液面下から液面上まで傾斜するように設置された板状部材であるビーチ板上の被処理水およびスカムの画像を撮影し、その撮影された画像に基づいて前記加圧浮上分離装置の処理状態を判断することを特徴とする加圧浮上分離装置の運転方法。
【請求項7】
請求項6に記載の加圧浮上分離装置の運転方法であって、
前記判断によって得られた情報に基づいて、前記浮上分離槽の前段の、被処理水に凝集剤を添加し、撹拌して凝集処理を行う凝集処理工程における前記凝集剤の注入量、撹拌強度を調整するための撹拌速度、pH、前記浮上分離槽における前記加圧水の供給量、前記加圧水の空気量、前記加圧水の圧力を含む運転条件のうちのいずれか一つ以上を変更することを特徴とする加圧浮上分離装置の運転方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の加圧浮上分離装置の運転方法であって、
前記ビーチ板上の被処理水およびスカムに向けて照射された照射光の反射または吸収の状態の画像を撮影し、その画像の解析結果に基づいて前記加圧浮上分離装置の処理状態が正常か異常か、異常の場合には前記凝集処理の影響なのか前記加圧水の影響なのか、あるいはその両方なのかを判断することを特徴とする加圧浮上分離装置の運転方法。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか1項に記載の加圧浮上分離装置の運転方法であって、
前記被処理水の水質を測定して取得した被処理水水質の情報、前記被処理水の流量を測定して取得した被処理水量の情報、前記加圧水の流量を測定して取得した加圧水量の情報、前記加圧水の圧力を測定して取得した加圧水圧力の情報のうちのいずれか一つ以上の情報に基づいて前記撮影された画像の解析を行うことを特徴とする加圧浮上分離装置の運転方法。
【請求項10】
請求項9に記載の加圧浮上分離装置の運転方法であって、
前記取得した情報の過去データと新たなデータとを比較し、その比較結果に基づいて前記運転条件のうちのいずれか一つ以上を変更することを特徴とする加圧浮上分離装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧浮上分離装置および加圧浮上分離装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
浄水処理、下水処理、工業用水処理、排水処理等における固液分離装置の1つとして、加圧浮上分離装置がある。この加圧浮上分離装置では、浮上分離槽にて、加圧状態で空気を溶解した加圧水を被処理水に供給し、加圧水から発生させた気泡と付着した固形分(SS(浮遊固形物)成分、濁度成分)を水から浮上分離することによって、清澄な処理水を得る(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
加圧浮上分離装置において、被処理水に無機凝集剤、pH調整剤、有機高分子凝集剤を加えて、撹拌装置を備えた撹拌槽にて撹拌することによって凝集およびフロック形成を行い、このフロックに浮上分離槽において気泡を付着させて被処理水中の固形分を除去することも知られている。
【0004】
さらに、加圧浮上分離装置において、浮上分離槽内に整流装置を備えることによって、整流装置がない場合よりも例えば3~6倍以上の高流速で固液分離を行うことを可能とした高速加圧浮上分離装置が知られている。
【0005】
これらのような加圧浮上分離装置において、被処理水の水質の変化に対して、凝集剤の注入量、凝集pHが適切でない場合や、加圧水の流量、空気量または圧力が不十分な場合、被処理水中の除去対象物質である固形分を十分に処理することができないことがある。
【0006】
被処理水の水質の変化に対しては、被処理水のSS成分等の濃度を計測して所定の演算式にてSS濃度から凝集剤の注入率を制御する方法等が実施されているが、SS濃度だけでは凝集剤の注入率を決定できない場合、例えば色度成分が処理対象に含まれる場合には有効ではない。また、加圧水は被処理水の水質変化を考慮して、最大必要量を常時確保することによって安定運転を図っているが、加圧水を供給する減圧弁に夾雑物等が詰まる等によって、所定量の加圧水が浮上分離槽に供給されないことがある。
【0007】
したがって、被処理水の水質の変化に対して加圧浮上分離装置の処理状態を適切に判断することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、被処理水の水質の変化に対して加圧浮上分離装置の処理状態を適切に判断することができる加圧浮上分離装置および加圧浮上分離装置の運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、被処理水中の固形分を浮上分離するための浮上分離槽と、加圧状態で空気を溶解した加圧水を前記浮上分離槽へ供給する加圧水供給手段と、を備える加圧浮上分離装置であって、前記浮上分離槽のスカム排出口に向かって液面下から液面上まで傾斜するように設置された板状部材であるビーチ板の上方に配置され、前記ビーチ板上の被処理水およびスカムの画像を撮影する撮像手段と、前記撮像手段によって撮影された画像に基づいて前記加圧浮上分離装置の処理状態を判断する判断手段と、を備える、加圧浮上分離装置である。
【0011】
前記加圧浮上分離装置において、前記浮上分離槽の前段に設けられた、被処理水に凝集剤を添加し、撹拌して凝集処理を行う凝集処理手段と、前記判断手段から得られた情報に基づいて、前記凝集処理手段における前記凝集剤の注入量、撹拌強度を調整するための撹拌速度、pH、前記浮上分離槽における前記加圧水の供給量、前記加圧水の空気量、前記加圧水の圧力を含む運転条件のうちのいずれか一つ以上を変更する制御手段と、をさらに備えることが好ましい。
【0012】
前記加圧浮上分離装置において、前記撮像手段は、前記ビーチ板上の被処理水およびスカムに向けて照射された照射光の反射または吸収の状態の画像を撮影し、前記判断手段は、その画像の解析結果に基づいて前記加圧浮上分離装置の処理状態が正常か異常か、異常の場合には前記凝集処理の影響なのか前記加圧水の影響なのか、あるいはその両方なのかを判断することが好ましい。
【0013】
前記加圧浮上分離装置において、前記照射光が、レーザー光であることが好ましい。
【0014】
前記加圧浮上分離装置において、前記被処理水の水質を測定して被処理水水質の情報を取得する被処理水水質測定手段、前記被処理水の流量を測定して被処理水量の情報を取得する被処理水量測定手段、前記加圧水の流量を測定して加圧水量の情報を取得する加圧水量測定手段、前記加圧水の圧力を測定して加圧水圧力の情報を取得する圧力測定手段のうちのいずれか一つ以上をさらに備え、前記判断手段は、それらの取得した情報に基づいて前記撮像手段によって撮影された画像の解析を行うことが好ましい。
【0015】
前記加圧浮上分離装置において、前記制御手段は、前記取得した情報の過去データと新たなデータとを比較し、その比較結果に基づいて前記運転条件のうちのいずれか一つ以上を変更することが好ましい。
【0016】
本発明は、被処理水中の固形分を浮上分離するための浮上分離槽と、加圧状態で空気を溶解した加圧水を前記浮上分離槽へ供給する加圧水供給手段と、を備える加圧浮上分離装置の運転方法であって、前記浮上分離槽のスカム排出口に向かって液面下から液面上まで傾斜するように設置された板状部材であるビーチ板上の被処理水およびスカムの画像を撮影し、その撮影された画像に基づいて前記加圧浮上分離装置の処理状態を判断する、加圧浮上分離装置の運転方法である。
【0017】
前記加圧浮上分離装置の運転方法において、前記判断によって得られた情報に基づいて、前記浮上分離槽の前段の、被処理水に凝集剤を添加し、撹拌して凝集処理を行う凝集処理工程における前記凝集剤の注入量、撹拌強度を調整するための撹拌速度、pH、前記浮上分離槽における前記加圧水の供給量、前記加圧水の空気量、前記加圧水の圧力を含む運転条件のうちのいずれか一つ以上を変更することが好ましい。
【0018】
前記加圧浮上分離装置の運転方法において、前記ビーチ板上の被処理水およびスカムに向けて照射された照射光の反射または吸収の状態の画像を撮影し、その画像の解析結果に基づいて前記加圧浮上分離装置の処理状態が正常か異常か、異常の場合には前記凝集処理の影響なのか前記加圧水の影響なのか、あるいはその両方なのかを判断することが好ましい。
【0019】
前記加圧浮上分離装置の運転方法において、前記照射光が、レーザー光であることが好ましい。
【0020】
前記加圧浮上分離装置の運転方法において、前記被処理水の水質を測定して取得した被処理水水質の情報、前記被処理水の流量を測定して取得した被処理水量の情報、前記加圧水の流量を測定して取得した加圧水量の情報、前記加圧水の圧力を測定して取得した加圧水圧力の情報のうちのいずれか一つ以上の情報に基づいて前記撮影された画像の解析を行うことが好ましい。
【0021】
前記加圧浮上分離装置の運転方法において、前記取得した情報の過去データと新たなデータとを比較し、その比較結果に基づいて前記運転条件のうちのいずれか一つ以上を変更することが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によって、被処理水の水質の変化に対して加圧浮上分離装置の処理状態を適切に判断することができる加圧浮上分離装置および加圧浮上分離装置の運転方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係る加圧浮上分離装置の一例を示す概略構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る加圧浮上分離装置の浮上分離槽における液面付近を斜め上方向から見た概略図である。
【
図3】比較例で用いた加圧浮上分離装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0025】
本発明の実施形態に係る加圧浮上分離装置の一例の概略を
図1に示し、その構成について説明する。
【0026】
図1に示す加圧浮上分離装置1は、加圧浮上分離部13を備え、加圧浮上分離部13は、被処理水中の固形分を浮上分離するための浮上分離槽14と、加圧状態で空気を溶解した加圧水を浮上分離槽14へ供給する加圧水供給手段として加圧タンク16と、浮上分離槽14のスカム排出口(後述する
図2に示すスカム排出口80)に向かって設置された液面下から液面上まで傾斜しスカム排出口へつながっている板状部材であるビーチ板(後述する
図2に示すビーチ板78)の上方に配置され、ビーチ板上の被処理水およびスカムの画像を撮影する撮像手段として撮像装置20と、撮像装置20によって撮影された画像に基づいて加圧浮上分離装置1の処理状態を判断する判断手段として制御装置18と、を備える。加圧浮上分離部13は、照射光を照射する光源22を備えてもよい。
【0027】
加圧浮上分離装置1は、浮上分離槽14の前段に設けられた、被処理水に凝集剤を添加し、撹拌して凝集処理を行う凝集処理手段として凝集処理部11を備えてもよい。凝集処理部11は、例えば、被処理水と凝集剤とを混和するための混和手段として混和槽10と、混和された混和液中にフロックを形成するためのフロック形成手段としてフロック形成槽12と、を備える。
【0028】
加圧浮上分離装置1において、混和槽10の被処理水入口には、配管86が接続されている。配管86には、例えば、ある被処理水の供給源からの配管82がポンプ24を介して接続され、別の被処理水の供給源からの配管84がポンプ26を介して接続されている。加圧浮上分離装置1は、必要に応じて、被処理水を貯留する貯留槽を備えてもよい。混和槽10とフロック形成槽12とは混和槽10からフロック形成槽12へ被処理水が連続的に流入できるように下部で接続されている。混和槽10には、モーター等の回転駆動手段および撹拌羽根等を有する撹拌手段として撹拌装置44が設置され、混和槽10内の被処理水のpHを測定するpH測定手段としてpH計46が設置されている。フロック形成槽12には、モーター等の回転駆動手段および撹拌羽根等を有する撹拌手段として撹拌装置48が設置されている。混和槽10の薬剤入口には、無機凝集剤タンク30がポンプ38を介して配管104によって接続され、アルカリ剤タンク32がポンプ40を介して配管106によって接続され、酸タンク34がポンプ42を介して配管108によって接続されている。フロック形成槽12の薬剤入口には、高分子凝集剤タンク28がポンプ36を介して配管102によって接続されている。
【0029】
加圧浮上分離部13の浮上分離槽14は、例えば円筒型の槽である。浮上分離槽14の中心には、回転導入筒66が設けられており、フロック形成槽12の下部の被処理水出口と、回転導入筒66の下部の被処理水入口とは、配管88によって接続されている。回転導入筒66の下端部は、浮上分離槽14の底壁に回動自在にシールされている。
【0030】
回転導入筒66の上部は、テーパ状に拡がっており、上端部分から被処理水が放射方向に流出するようになっている。回転導入筒66の下部には、浮上分離槽14の底面上に位置するスクレーパ70が取り付けられており、回転導入筒66の回転によって底面に沿って回転するようになっている。浮上分離槽14の底面には汚泥の排出部72が設けられ、排出部72には、配管92が接続されている。
【0031】
浮上分離槽14の高さ方向の中間部分には、その周壁と回転導入筒66との間の空間に整流装置68が配置されている。この整流装置68は,例えば、多孔板、多孔管、スリット板等が用いられる。なお、このような整流装置68を備える浮上分離槽14を含む加圧浮上分離装置は、一般に高速加圧浮上分離装置と呼ばれる。
【0032】
回転導入筒66の上端部分には、液面部に位置するスキマー64が取り付けられている。浮上分離槽14の周壁の一部には、スキマー64によって掻き上げられたスカムを液面上から受け取るスカム排出部62が設けられており、スカム排出部62には配管90が接続されている。
【0033】
図2に、加圧浮上分離装置1の浮上分離槽14における液面付近を斜め上方向から見た概略図を示す。上記の通り、回転導入筒66の上端部分には、液面部に位置する例えば2個のスキマー64が取り付けられている。スキマー64は、例えばゴム等の弾性体、樹脂等で構成された長方体形状の部材であり、液面に沿って浮上分離槽14の中心部から半径方向に延びている。スキマー64は、例えば、2個設けられ、2個のスキマー64は略等間隔になるように配置されている。液面付近には
図1のスカム排出部62に連通するスカム排出口80が設けられ、スカム排出口80は、例えば長方形状であり、液面に沿って浮上分離槽14の半径方向に延びている。スカム排出口80におけるスキマー64が向かってくる側の長辺部にはビーチ板78が設置されている。ビーチ板78は、例えばステンレス等の金属で構成された扇型の板状部材であり、ビーチ板78上に液面が来るように、スカム排出口80に向かって液面下から液面上まで緩やかに傾斜するように配置されている。スキマー64が回転導入筒66の回転とともに
図2の矢印方向に液面に沿って回転して、液面上に浮上堆積するスカム110をビーチ板78上に掻き上げてスカム排出口80から排出し、スカム排出部62に貯留されるようになっている。スカム排出口80におけるもう一方の長辺部にもう1つのビーチ板が設置されていてもよい(図示せず)。このもう1つのビーチ板は、ビーチ板上に液面が来るように、スカム排出口80から緩やかに傾斜して上がるように配置されている。
【0034】
図1に示すように、浮上分離槽14の整流装置68と底面の中間部分の側面の処理水出口には、バルブ73を介して配管94が接続されている。配管94におけるバルブ73の上流側から分岐した配管96がバルブ74、加圧ポンプ54を介して加圧タンク16の処理水入口に接続されている。コンプレッサ52と、配管96における加圧ポンプ54の下流側とは、配管98によって接続されている。加圧タンク16の加圧水出口と、浮上分離槽14の回転導入筒66の下部とは、減圧弁76を介して配管100によって接続されている。配管94におけるバルブ73の下流側には、処理水の色度を測定する色度測定手段として色度計56が設置されていてもよい。配管100における減圧弁76の上流側には、加圧水の流量を測定する加圧水量測定手段として流量計58、加圧水の圧力を測定する圧力測定手段として圧力計60が設置されていてもよい。
【0035】
浮上分離槽14のビーチ板78の上方には、ビーチ板78上の液面に向けて照射光を照射することができるように光源22が設置され、ビーチ板78上の液面の画像を撮影できるように撮像装置20が設置されている。
【0036】
制御装置18は、撮像装置20、光源22、ポンプ24,26,36,38,40,42、撹拌装置44,48のモーター部等、pH計46、回転導入筒66のモーター部等、コンプレッサ52、加圧ポンプ54、色度計56、流量計58、圧力計60のうちのいずれか1つ以上と有線または無線の電気的接続等によって接続されていてもよい。
【0037】
本実施形態に係る加圧浮上分離装置1の運転方法について説明する。
【0038】
ある供給源からのSS(浮遊固形物)成分、濁度成分等の固形分を含む被処理水(原水)は、ポンプ24によって配管82を通して必要に応じて貯留槽等に貯留された後、配管86を通して凝集処理部11の混和槽10に送液される。別の供給源からの被処理水が、ポンプ26によって配管84を通して必要に応じて貯留槽等に貯留された後、配管86を通して凝集処理部11の混和槽10に送液されてもよい。
【0039】
混和槽10には、無機凝集剤タンク30からポンプ38によって配管104を通して無機凝集剤が供給され、必要に応じてアルカリ剤タンク32からポンプ40によって配管106を通してpH調整剤であるアルカリ剤が供給され、必要に応じて酸タンク34からポンプ42によって配管108を通してpH調整剤である酸が供給される。混和槽10内において所定のpHに調整された状態で、被処理水と無機凝集剤とが撹拌装置44によって急速撹拌混合される(混和工程)。混和槽10内の被処理水のpHは、pH計46によって測定される。
【0040】
無機凝集剤が混合された被処理水はフロック形成槽12に導入され、ここで撹拌装置48によって緩速撹拌されフロックの粗大化が行われる(フロック形成工程)。フロック形成槽12には、必要に応じて高分子凝集剤タンク28からポンプ36によって配管102を通して高分子凝集剤が添加され、フロックの粗大化が助長されてもよい。
【0041】
フロックが形成された被処理水は、配管88を通して加圧浮上分離部13の浮上分離槽14に回転導入筒66の下部から導入される。
【0042】
後述する通り生成された加圧タンク16からの加圧水が、配管100を通して減圧弁76を介して回転導入筒66の下部に供給される。加圧水は、例えば3~5気圧等の高圧で空気を溶解したものであり、回転導入筒66に導入された場合には大気圧に近い状態となり、溶解した空気が過飽和状態となって微細気泡が発生する。この際、固液の界面において微細気泡が発生しやすく、被処理水中のフロックに微細気泡が付着して、フロックが浮上する(加圧浮上分離工程)。回転導入筒66の上部は、テーパ状に拡がっており、上端部分からフロックを含む被処理水が放射方向に流出する。
【0043】
回転導入筒66の上端部分の液面部に位置するスキマー64が回転導入筒66の回転によって、
図2に示すように、汚泥等が液面上に浮上堆積するスカム110をビーチ板78上に掻き上げてスカム排出口80から排出し、スカム110は、スカム排出部62に貯留され、配管90を通して排出される。
【0044】
処理水は、浮上分離槽14の整流装置68と底面の中間部分からバルブ73が開状態で配管94を通して排出される。ここで、処理水の少なくとも一部は、バルブ74が開状態で配管96を通して加圧ポンプ54によって、加圧タンク16に供給される。加圧タンク16には、コンプレッサ52によって配管98を通して加圧空気が供給され、加圧タンク16内において処理水に加圧された圧力に応じた空気が溶解された加圧水が生成される。生成された加圧水は、上記の通り、加圧タンク16から配管100を通して減圧弁76を介して回転導入筒66の下部に供給される。
【0045】
回転導入筒66の下部に取り付けられ、浮上分離槽14の底面上に位置するスクレーパ70は、回転導入筒66の回転によって浮上分離槽14の底面上に沈殿堆積する汚泥を掻き寄せ、汚泥は排出部72から配管92を通して排出される。
【0046】
整流装置68によって、整流装置68の上部の水の流れが略均一化されることによって固液分離が促進される。すなわち、浮上すべきスカムが整流装置68の下方に行きにくくなっている。
【0047】
本実施形態に係る加圧浮上分離装置1において、撮像装置20によって浮上分離槽14の液面のスカム排出口80に設置されたビーチ板78上の被処理水およびスカム110の画像を撮影し、その撮影した画像に基づいて加圧浮上分離装置1の処理状態を判断する。
【0048】
撮像装置20によって撮影した画像は、制御装置18のPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)に供給される。例えば、制御装置18は、撮像装置20から得られた被処理水およびスカム110の画像に基づいて加圧浮上分離装置1の処理状態を判断し、得られた処理状態の情報に基づいて、加圧浮上分離装置1の運転条件を変更すればよい。例えば、制御装置18は、得られた処理状態の情報に基づいて、凝集処理部11の混和槽10およびフロック形成槽12における凝集剤の注入量、撹拌強度を調整するための撹拌速度、pH、加圧浮上分離部13の浮上分離槽14における加圧水の供給量、加圧水の空気量、加圧水の圧力を含む運転条件のうちのいずれか一つ以上を変更すればよい。具体的には、例えば、制御装置18は、得られた処理状態の情報に基づいて、ポンプ38を制御して混和槽10における無機凝集剤の注入量、ポンプ36を制御してフロック形成槽12における高分子凝集剤の注入量、撹拌装置44を制御して混和槽10における撹拌強度を調整するための撹拌速度、撹拌装置48を制御してフロック形成槽12における撹拌強度を調整するための撹拌速度、ポンプ40またはポンプ42を制御して混和槽10およびフロック形成槽12におけるpH、ポンプ54を制御して浮上分離槽14における加圧水の供給量、コンプレッサ52を制御して加圧水の空気量、ポンプ54を制御して加圧水の圧力等のうちのいずれか一つ以上を変更すればよい。
【0049】
例えば、制御装置18は、撮像装置20によって浮上分離槽14の液面のスカム排出口80に設置されたビーチ板78上の被処理水およびスカム110に向けて照射された照射光の反射または吸収の状態の画像を撮影し、その撮影した画像に基づいて加圧浮上分離装置1の処理状態を判断する。制御装置18は、得られた処理状態の情報に基づいて、上記と同様にして加圧浮上分離装置1の運転条件を変更すればよい。例えば、制御装置18は、照射光の反射または吸収の状態の画像の解析結果に基づいて加圧浮上分離装置1の処理状態が正常か異常か、異常の場合には凝集処理部11における凝集処理の影響なのか加圧浮上分離部13における加圧水の影響なのか、あるいはその両方なのかを判断すればよい。そして、その判断結果に基づいて上記と同様にして加圧浮上分離装置1の運転条件を変更すればよい。
【0050】
例えば、浮上分離槽14の液面のスカム排出口80に設置されたビーチ板78上の被処理水およびスカム110の画像から
(1)スキマー64がスカム排出口80に接近するときにビーチ板78上に「スカムが存在するか」をレーザー光の吸収量を利用して測定する。スカムが認識できない、少量である場合、加圧水が不十分または凝集処理部11における凝集が不十分と判断することができる。
(2)スキマー64がスカム排出口80から遠ざかるときにビーチ板78上の「水が透明か」をレーザー光の反射量を利用して測定する。水に濁りがある場合、凝集処理部11における凝集が不十分と判断することができる。
【0051】
すなわち、
(1)Yes、(2)Yesの場合には、加圧浮上分離装置1の処理状態は「正常」である。
(1)Yes、(2)Noの場合には、凝集処理部11における「凝集が不十分」である。
(1)No、(2)Yesの場合には、加圧浮上分離部13における「加圧水が不十分」である。
(1)No、(2)Noの場合には、凝集処理部11における「凝集が不十分」であり、かつ、加圧浮上分離部13における「加圧水が不十分」である。
と画像データの結果から加圧浮上分離装置1の処理状態と処理状態が悪い場合の原因を判断することができる。
【0052】
凝集処理部11における「凝集が不十分」であると判断された場合には、例えば、制御装置18は、ポンプ38を制御して混和槽10における無機凝集剤の注入量、ポンプ36を制御してフロック形成槽12における高分子凝集剤の注入量、撹拌装置44を制御して混和槽10における撹拌強度を調整するための撹拌速度、撹拌装置48を制御してフロック形成槽12における撹拌強度を調整するための撹拌速度、ポンプ40またはポンプ42を制御して混和槽10およびフロック形成槽12におけるpH等のうちのいずれか一つ以上を変更すればよい。
【0053】
加圧浮上分離部13における「加圧水が不十分」であると判断された場合には、例えば、制御装置18は、ポンプ54を制御して浮上分離槽14における加圧水の供給量、コンプレッサ52を制御して加圧水の空気量、ポンプ54を制御して加圧水の圧力等のうちのいずれか一つ以上を変更すればよい。
【0054】
また、被処理水の水質を測定して被処理水水質の情報を取得する被処理水水質測定手段として、濁度計、pH計等、被処理水の流量を測定して被処理水量の情報を取得する被処理水量測定手段として、流量計等、加圧水の流量を測定して加圧水量の情報を取得する加圧水量測定手段として、流量計58等、加圧水の圧力を測定して加圧水圧力の情報を取得する圧力測定手段として、圧力計60等、撮像装置20によって撮影された画像の情報を取得する画像情報取得手段のうちのいずれか一つ以上を備え、制御装置18は、それらの取得した情報に基づいて撮像装置20によって撮影された画像の解析を行ってもよい。これによって、画像解析の精度を向上させることができる。
【0055】
さらに、混和槽10へ送水する手段、例えばポンプ24およびポンプ26のON/OFF情報を制御装置18に送り、画像解析の調整を行うことによって、画像解析の精度を向上させることが可能となる。
【0056】
具体的には、例えば、相対的にSS濃度の高い被処理水を送水するポンプ24が運転中の場合、被処理水を貯留する被処理水槽のSS濃度が高くなるので、浮上分離槽14におけるスカム110のレーザー光吸収度は大きくなり、反射は小さくなるので正の誤差を生じやすい。逆に、例えば、相対的にSS濃度の低い被処理水を送水するポンプ26が運転中の場合、被処理水を貯留する被処理水槽のSS濃度が低くなるので、浮上分離槽14におけるスカム110のレーザー光吸収度は小さくなり、反射は大きくなるので負の誤差を生じやすい。そこで、ポンプ24が運転中のときは光源22によるレーザー光等の照射光の強度を大きくするようにし、ポンプ26が運転中のときは光源22によるレーザー光等の照射光の強度を小さくするようにすればよい。このように光源22によるレーザー光等の照射光の出力調整を行ってもよいし、レーザー光等の照射光の出力を一定として画像データのコントラスト調整を行う、すなわち、撮像装置20の感度調整によって誤差の軽減を図ってもよい。
【0057】
また、ここでは被処理水を送水するポンプが2台の場合を説明したが、被処理水を送水するポンプが1台の場合であっても被処理水を貯留する被処理水槽に流入する被処理水の水質変動によって、被処理水の水質が変動することがある。その場合は、被処理水の水質を測定する被処理水水質測定手段、例えば濁度計、pH計等の計測結果に基づいて上記と同様にして加圧浮上分離装置1の運転条件を変更してもよい。
【0058】
このように、加圧浮上分離装置1の処理水の悪化原因が凝集処理の影響なのか加圧水の影響なのか、その両方なのかを一つの撮像装置で判断できるようになる。
【0059】
制御装置18は、取得した情報の過去データと新たなデータとを比較し、その比較結果に基づいて上記と同様にして加圧浮上分離装置1の運転条件を変更してもよい。
【0060】
また、例えば、ビーチ板78の表面に、撮像装置20によって認識可能な絵、図形、文字等の任意の形状の記号を加工して描いておき、撮像装置20によってビーチ板78上の被処理水およびスカム110に向けて照射された照射光の反射または吸収の状態の画像を撮影し、その撮影した画像における記号の認識状態に基づいて加圧浮上分離装置1の処理状態を判断し、その判断結果に基づいて上記と同様にして加圧浮上分離装置1の運転条件を変更してもよい。
【0061】
撮像装置20としては、ビーチ板78上の被処理水およびスカムの画像を撮影できるものであればよく、特に制限はない。撮像装置20としては、例えば、カメラ、ビデオカメラ、画像センサ、赤外線カメラ等が挙げられる。
【0062】
照射光は、照射光を照射する光源22によって照射された光であってもよいし、自然光であってもよい。照射光としては、自然光、レーザー光、LED光、赤外光、紫外光等が挙げられ、例えば夜間や屋外のような場合は、光源を用いることが好ましく、自然光や照明の影響を受けにくい等の点からレーザー光を用いることが好ましい。
【0063】
判断手段、制御手段として機能する制御装置18は、例えば、プログラムを演算するCPU等の演算手段、プログラムや演算結果を記憶するROMおよびRAM等の記憶手段等を含んで構成されるマイクロコンピュータと電子回路等で構成される。制御装置18は、上記の通り、加圧浮上分離装置1の運転条件を変更する機能を有する。制御装置18は、情報を表示するためのディスプレイ等の表示装置を備えてもよい。
【0064】
浮上分離槽14は、例えば円筒型の槽であり、矩形型の槽であってもよい。矩形型の槽の場合は、1つの辺側にその辺に沿って延びる例えば長方形状のスカム排出口が設けられ、スカム排出口に向かって液面下から液面上まで緩やかに傾斜するように例えば長方形状の板状部材であるビーチ板が設置されればよい。なお、「緩やかに傾斜する」とは、例えば、液面下から液面上まで10度~30度程度の角度で傾斜することを言う。スキマーは、液面に沿ってその辺の方向に延びており、その辺に向かってその辺に対抗する辺側から液面に沿って移動して、液面上に浮上堆積するスカムをビーチ板上に掻き上げてスカム排出口から排出し、スカム排出部に貯留すればよい。
【0065】
凝集剤としては、無機凝集剤および高分子凝集剤のうちの少なくとも1つが用いられる。
【0066】
無機凝集剤としては、特に制限はないが、例えば、塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄等の鉄系無機凝集剤、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム(PAC)等のアルミニウム系無機凝集剤等が挙げられる。
【0067】
無機凝集剤の添加量は、特に制限はないが、例えば、被処理水のSS濃度0.5mg/L当たり1~10mg/L(0.5~10倍)の範囲とすればよい。
【0068】
高分子凝集剤としては、ノニオン性高分子凝集剤、アニオン性高分子凝集剤またはカチオン性高分子凝集剤等、特に制限されるものではないが、例えば、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリルアミド・アクリル酸塩共重合体、アクリルアミドプロパンスルフォン酸ナトリウム、キトサン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレートおよびポリアミジン等が挙げられる。高分子凝集剤は、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
高分子凝集剤の添加量は、特に制限はないが、例えば、0.1~2mg/Lの範囲とすればよい。
【0070】
混和工程において、必要に応じて、pH調整を行ってもよい(pH調整工程)。pH調整剤は、塩酸、硫酸等の酸や、水酸化ナトリウム等のアルカリ剤である。pHは、例えば、4~11の範囲に調整すればよい。
【0071】
混和工程において、撹拌速度は、例えば、撹拌強度として100~300S-1程度の急速撹拌とすればよい。
【0072】
フロック形成工程において、撹拌速度は、例えば、撹拌強度として20~50S-1程度の緩速撹拌とし、フロック径を成長させることができる。
【0073】
凝集処理(混和工程、フロック形成工程、加圧浮上分離工程)における液温度は、特に制限はなく、例えば、15~35℃の範囲である。粘性等によって分離性が変わるため、液温度はできるだけ一定になるように調整することが望ましい。
【0074】
浮上分離槽14における加圧水の供給量は、特に制限はないが、例えば、被処理水量に対して5~40%の範囲とすればよい。
【0075】
加圧水の空気量は、特に制限はないが、例えば、加圧水量に対してNm3で0.1~0.3倍量の範囲とすればよい。
【0076】
加圧水の圧力は、特に制限はないが、例えば、0.3~0.7MPaの範囲とすればよい。
【0077】
処理対象である被処理水は、例えば、SS(浮遊固形物)成分、濁度成分等の固形分を含む水であり、例えば、河川水、工業用水、排水等が挙げられる。
【0078】
本実施形態に係る加圧浮上分離装置は、例えば、浄水処理、下水処理、工業用水処理、排水処理等に用いることができる。
【実施例0079】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0080】
以下の装置仕様、通水条件で試験を行った。実施例1では、
図1に示す加圧浮上分離装置1を用いて処理を行った。比較例1では、従来の方法である
図3に示す加圧浮上分離装置3を用いて処理を行った。
【0081】
<比較例1>
比較例1では、被処理水を混和槽10に供給する配管86に設置した濁度計112によって被処理水の濁度を、混和槽10に設置したpH計46によってpHを、処理水を排出する配管94に設置した濁度計116によって処理水の濁度を自動測定し、それを現場の盤内PLCを有する制御装置118に取り込み、PLC内に予め入力しておいた演算式に基づく計算結果から無機凝集剤(FeCl3)を注入するポンプ38の出力、pH調整用のアルカリ剤である苛性ソーダ(NaOH)を注入するポンプ40または塩酸(HCl)を注入するポンプ42の出力、有機高分子凝集剤を注入するポンプ36の出力と、混和槽10の撹拌装置44のモーター出力、フロック形成槽12の撹拌装置48のモーター出力と、スキマー64を回転する回転導入筒66のモーター出力を自動制御した。
【0082】
<実施例1>
実施例1の方法は、自動測定機器、自動制御機器は比較例1と同様であるが、加圧浮上分離部13における浮上分離槽14のビーチ板78の液面の上方に撮像装置20としてカメラおよび光源22としてレーザー光源を設置し、ステンレス製で光を反射するビーチ板78上の被処理水、その液面に浮かんでいるスカムのレーザー光の反射および吸収の状態をカメラにより撮影し、その画像に基づいて加圧浮上分離装置の処理状況を判断した。
【0083】
比較例1、実施例1における通水条件は、処理水量40m3/h、SS濃度20~50mg/L、目標処理水SS濃度10mg/L以下、被処理水pH5.5~8.5に対してpH調整剤として塩酸と水酸化ナトリウム溶液を用いて被処理水pHを6.2~6.8とし、無機凝集剤は塩化第二鉄(FeCl3)の注入率70~200mg/L、アニオン系有機高分子凝集剤1.0mg/L、混和槽滞留時間3分、混和槽撹拌強度200S-1、フロック形成槽滞留時間6分、フロック形成槽撹拌強度40S-1、浮上分離槽滞留時間8分、浮上分離槽流速20m/h、加圧水圧力0.45MPa、加圧水比(加圧水量÷被処理水量)0.2とした。
【0084】
実施例1では、被処理水の水質の変化に対して加圧浮上分離装置の処理状態を適切に判断することができた。
1,3 加圧浮上分離装置、10 混和槽、11 凝集処理部、12 フロック形成槽、13 加圧浮上分離部、14 浮上分離槽、16 加圧タンク、18,118 制御装置、20 撮像装置、22 光源、24,26,36,38,40,42 ポンプ、28 高分子凝集剤タンク、30 無機凝集剤タンク、32 アルカリ剤タンク、34 酸タンク、44,48 撹拌装置、46 pH計、52 コンプレッサ、54 加圧ポンプ、56 色度計、58 流量計、60 圧力計、62 スカム排出部、64 スキマー、66 回転導入筒、68 整流装置、70 スクレーパ、72 排出部、73,74 バルブ、76 減圧弁、78 ビーチ板、80 スカム排出口、82,84,86,88,90,92,94,96,98,100,102,104,106,108 配管、110 スカム、112,116 濁度計、114 温度計。