(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119529
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 9/08 20060101AFI20220809BHJP
H01L 23/02 20060101ALI20220809BHJP
H01L 23/28 20060101ALI20220809BHJP
H01G 2/10 20060101ALI20220809BHJP
H01G 2/06 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
H01G9/08 D
H01L23/02 K
H01L23/28 L
H01G2/10 M
H01G2/10 K
H01G9/08 C
H01G2/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021016730
(22)【出願日】2021-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 昌史
【テーマコード(参考)】
4M109
【Fターム(参考)】
4M109AA01
4M109BA04
4M109CA02
4M109DB09
4M109EE02
(57)【要約】
【課題】圧力耐性の高い部品と圧力耐性の低い部品とが混在して実装されている場合であっても、部品破損、部品変形等の無い半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】実施形態の半導体装置は、第1部品及び第1部品よりも圧力耐性が低い第2部品が実装された基板と、第2部品をゲル部材を介して覆うとともに、モールディング成型時に印可される圧力によりゲル部材を外部に圧出可能とする圧出経路を確保したケーシングと、ケーシングにより第2部品を覆った状態で、第1部品、第2部品及びケーシングを基板と一体に封止する封止部材と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部品及び前記第1部品よりも圧力耐性が低い第2部品が実装された基板と、
前記第2部品をゲル部材を介して覆うとともに、モールディング成型時に印可される圧力により前記ゲル部材を外部に圧出可能とする圧出経路を確保したケーシングと、
前記ケーシングにより前記第2部品を覆った状態で、前記第1部品、前記第2部品及び前記ケーシングを前記基板と一体に封止する封止部材と、
を備えた半導体装置。
【請求項2】
前記ケーシングは、有底筒状形状あるいは有底矩形形状を有し、前記ケーシングの開口端が前記基板と所定距離を介して対向するように前記第2部品に支持されている、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ケーシングは、有底筒状形状あるいは有底矩形形状を有し、前記ケーシングの開口端には、一又は複数の切欠部が設けられている、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ケーシングは、有底筒状形状あるいは有底矩形形状を有し、前記ケーシングの側壁には、一又は複数の開口部が設けられている、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ケーシングは、金属製あるいは樹脂製であり、
前記ゲル部材は、前記ケーシングの内面に接着されている、
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記ケーシングは、前記ゲル部材を介して前記第2部品に支持されている、
請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
第1部品及び前記第1部品よりも圧力耐性が低い第2部品が実装された基板を有する半導体装置の製造方法において、
内部にゲル部材が接着され、モールディング成型時に印可される圧力により前記ゲル部材を外部に圧出可能とする圧出経路を確保したケーシングを前記第2部品に被せる工程と、
前記ケーシングを前記第2部品に被せた状態で、前記第1部品、前記第2部品及び前記ケーシングを前記基板と一体に封止部材で封止する工程と、
を備えた半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回路基板と、回路基板に実装された半導体部品と、回路基板および半導体部品を樹脂により覆ってモールドする樹脂モールド方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1記載の樹脂モールド方法では、電解コンデンサの蓄電部を保護する保護部は、蓄電部の周囲を覆う環状の側壁部と、側壁部の開口部を閉塞する蓋部と、を有し、側壁部には、溶融状態のモールド樹脂によって電解コンデンサを被覆する際に生じる圧力から電解コンデンサを保護するための環状を成す圧力吸収部材が接着固定されている構成が開示されている。
【0004】
また特許文献2記載の樹脂モールド基板においては、耐圧性の低い回路部品に耐圧キャップを冠着してモールドする技術が開示されている。
すなわち、圧力耐性が低い部品を樹脂モールド時の圧力から保護するために当該部品に圧力吸収部材を接着固定したり、当該部品に耐圧キャップをかぶせることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6205882号公報
【特許文献2】実開昭62-124877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、圧力耐性が低い部品(例えば、電解コンデンサ、コイル等)に圧力吸収部材を接着固定させるためには、プリント基板への実装前に部品に接着するか、あるいは、実装後に接着するかのいずれかとなる。実装前に圧力吸収部材を接着する場合は、非接着の部品とは、サイズが異なる上、サイズのばらつきが大きく、実装精度や生産速度低下を招くおそれがあった。
【0007】
また、実装後に圧力吸収部材を接着する場合は、対象となる部品の周りに、大型部品が実装されているプリント基板や、実装密度が高いプリント基板などは、圧力部材を取り付ける事は非常に困難であり、これによる設計制約増加の要因となってしまうおそれがあった。
【0008】
一方、耐圧キャップをかぶせる場合には、耐圧キャップをかぶせてから樹脂成形までの間に起きる衝撃、または、樹脂充填時の圧力などによって、部品からキャップの脱落やズレなどにより実装不良が発生するおそれがあった。
また耐圧キャップをかぶせているだけであるため、モールド樹脂の成形時の圧力に対して逃げ場がなく、部品に圧力が印可されてしまい、部品の破損、変形を招くおそれがあった。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、圧力耐性の高い部品と圧力耐性の低い部品とが混在して実装されている場合であっても、部品破損、部品変形等の無い半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態の半導体装置は、第1部品及び前記第1部品よりも圧力耐性が低い第2部品が実装された基板と、前記第2部品をゲル部材を介して覆うとともに、モールディング成型時に印可される圧力により前記ゲル部材を外部に圧出可能とする圧出経路を確保したケーシングと、前記ケーシングにより前記第2部品を覆った状態で、前記第1部品、前記第2部品及び前記ケーシングを前記基板と一体に封止する封止部材と、を備える。
上記構成によれば、ケーシング内のゲル部材がケーシング外に圧出されることにより、前記封止部材による封止時の圧力を当該ケーシング外に逃がすことができ、前記第2部品の変形、破壊を防ぐことができる。
【0011】
この場合において、前記ケーシングは、有底筒状形状あるいは有底矩形形状を有し、前記ケーシングの開口端が前記基板と所定距離を介して対向するように前記第2部品に支持されているようにしてもよい。
上記構成によれば、前記基板とケーシングの開口端との間隙からゲル部材が圧出されて封止部材による封止時の圧力を当該ケーシング外に逃がすことができ、第2部品の変形、破壊を防ぐことができる。
【0012】
また、前記ケーシングは、有底筒状形状あるいは有底矩形形状を有し、前記ケーシングの開口端には、一又は複数の切欠部が設けられているようにしてもよい。
上記構成によれば、切欠部からゲル部材が圧出されて封止部材による封止時の圧力を当該ケーシング外に逃がすことができ、第2部品の変形、破壊を防ぐことができる。
【0013】
また、前記ケーシングは、有底筒状形状あるいは有底矩形形状を有し、前記ケーシングの側壁には、一又は複数の開口部が設けられているようにしてもよい。
上記構成によれば、開口部からゲル部材が圧出されて封止部材による封止時の圧力を当該ケーシング外に逃がすことができ、第2部品の変形、破壊を防ぐことができる。
【0014】
また、前記ケーシングは、金属製あるいは樹脂製であり、前記ゲル部材は、前記ケーシングの内面に接着されているようにしてもよい。
上記構成によれば、容易にケーシングとゲル部材とを一体に取り扱うことができ、自動実装などが行える。
【0015】
また、前記ケーシングは、前記ゲル部材を介して前記第2部品に支持されているようにしてもよい。
上記構成によれば、ケーシングは第2部品により確実に支持され、樹脂充填時の圧力などによって、ケーシングの部品からの脱落やズレなどが発生するのを防ぐことができる。
【0016】
また、実施形態の半導体装置の製造方法は、第1部品及び前記第1部品よりも圧力耐性が低い第2部品が実装された基板を有する半導体装置の製造方法であって、内部にゲル部材が接着され、モールディング成型時に印可される圧力により前記ゲル部材を外部に圧出可能とする圧出経路を確保したケーシングを前記第2部品に被せる工程と、前記ケーシングを前記第2部品に被せた状態で、前記第1部品、前記第2部品及び前記ケーシングを前記基板と一体に封止部材で封止する工程と、を備える。
上記構成によれば、封止する工程において、ケーシング内のゲル部材がケーシング外に圧出されることにより、封止部材による封止時の圧力を当該ケーシング外に逃がすことができ、第2部品の変形、破壊を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、第1実施形態の半導体装置の概要構成断面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態のケーシングの説明図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態における圧縮成形によるモールディング成形時の説明図である。
【
図4】
図4は、圧縮成形によるモールディング成形時のケーシングの外観斜視図である。
【
図5】
図5は、モールディング成形時の成形圧力の変化の説明図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態のケーシングの説明図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態における圧縮成形によるモールディング成形時の説明図である。
【
図8】
図8は、第3実施形態のケーシングの説明図である。
【
図9】
図9は、第3実施形態における圧縮成形によるモールディング成形時の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。以下に示される実施形態の構成(技術的特徴)、ならびに当該構成によってもたらされる作用および効果は、あくまで一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能であるとともに、基本的な構成によって得られる種々の効果のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0019】
なお、以下の例示的な複数の実施形態には、同様の構成要素が含まれている。よって、以下では、同様の構成要素には共通の符号が付されるとともに、重複する説明が省略される。また、本明細書において、序数は、部材(部品)や部位等を区別するために便宜上付与されており、優先順位や順番を示すものではない。
【0020】
[1]第1実施形態
図1は、第1実施形態の半導体装置の概要構成断面図である。
半導体装置10は、回路基板11と、部品12A~12Cと、低耐圧部品13と、ケーシング14と、ゲル部材15と、封止部材16と、を備えている。
【0021】
上記構成において、回路基板11は、例えば、プリント配線基板として構成されている。
部品12A~12Cは、第1部品として機能しており、例えば、半導体部品や、面実装部品などの電子部品として構成され、第2部品として機能する低耐圧部品13よりも圧力耐性が高く、そのままでも樹脂モールド可能な部品である。
【0022】
低耐圧部品13は、電解コンデンサや、コイル等として構成されており、部品12A~12Cよりも圧力耐性が低く、圧縮成形あるいはトランスファー成形により破損する虞がある部品である。
ケーシング14は、樹脂あるいは金属で形成されており、その形状は、開口端部を有する断面円形状の有底筒状部材である。以下においては、ケーシング14として断面円形状の有底筒状部材を用いる場合について説明するが、断面矩形形状の有底矩形形状部材を用いるようにしてもよい。
【0023】
ゲル部材15は、ケーシング14に接着されており、樹脂モールディング時には、樹脂モールディング時の圧力により、回路基板11とケーシング11の開口端部との間の間隙から圧出するようになっている。
この結果、低耐圧部品13に印可される圧力を緩和して、低耐圧部品の変形あるいは破損を防止している。
【0024】
ゲル部材15としては、例えば、スチレン系エラストマー、パラフィン系鉱物油、フェノール系酸化防止剤及び重質炭酸カルシウムの混合材が挙げられ、弾性により圧縮成形あるいはトランスファー成形の際の圧力を吸収するとともに、ケーシング14外に圧出されることで、圧力が不必要に低耐圧部品13に印可されるのを防止している。
【0025】
封止部材16は、圧縮成形あるいはトランスファー成形により加圧状態で部品を封止するための封止部材であり、熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂として構成されている。
【0026】
ところで、樹脂モールドによって成形される電子デバイスにおいては、実装された部品(電子部品)は、モールド時の高い成形圧力に耐える耐圧性を有することが必要となる。
しかしながら、上述したように低圧力耐性の低耐圧部品(アルミ電解コンデンサ、コイル等)13は、モールド時の高い成形圧力に耐えることはできない。
【0027】
図2は、第1実施形態のケーシングの説明図である。
そこで、本第1実施形態においては、基板に実装される低耐圧部品13に対し、基板上方向から基板を平面視した場合に低耐圧部品がその内部に収まるようにケーシング14を構成している。
【0028】
このケーシング14は、樹脂製あるいは金属製であり、その形状は、
図2(A)の外観斜視図に示すように、キャップ形状(有底筒状部材)とされている。
ケーシング14は、
図2(B)の底面図に示すように、円筒形状で有り、下端部は、開口端部とされている。
【0029】
このケーシング14の形状は、
図2(C)の一部断面図に示すように、低耐圧部品13をその内部に収納可能な形状であって、ゲル部材15が接着されて収納された形状とされている。
【0030】
この場合において、ゲル部材15は、低耐圧部品13の形状に合わせて、所定の厚みを有するとともに、少なくとも低耐圧部品13の天面に接した状態で低耐圧部品13に支持され、その下端は、ケーシング14の開口端部14BTに至っている。
また、ゲル部材15は、ケーシング14の内面に接着されている。また、ゲル部材15の形状は、対応する低耐圧部品13の形状にある程度沿った形状とされている。
【0031】
これは、ケーシング14を低耐圧部品13を挿入するように被せるだけで装着可能とするためである。この結果、容易にケーシング14を対象となる低耐圧部品13に装着することができ、当該作業の自動化も図れるためである。
そして、ケーシング14を所定位置装着した状態において、ケーシング14の開口端部14BTと基板11との間には、間隙20が形成されるように、ケーシング14の高さ及びゲル部材15の厚さが設定されている。
【0032】
ここで、間隙20は、モールディング成形時の圧力を逃がすためにゲル部材15が圧出される圧出経路を構成している。
すなわち、ケーシング14とゲル部材15は、協働して低耐圧部品13に印可される圧力を吸収する機能を有することとなっている。さらにケーシング14は、低耐圧部品13の形状に合わせてゲル部材を15を均一に保持する機能及び全方位からの圧力によって潰れたゲル部材15の逃げ道である圧出経路を意図的に設ける機能を実現している。
【0033】
図3は、第1実施形態における圧縮成形によるモールディング成形時の説明図である。
圧縮成形によるモールディング成形時には、ケーシング14及びゲル部材15が装着された低耐圧部品13に全方位から圧力MPが印可される。
【0034】
この場合において、ケーシング14においてより面積の大きい周面に対し、天面よりも大きい圧力が印可されることとなるので(すなわち、単位面積あたりの圧力は同じであるため)、ケーシング14が受けた各面からの応力をケーシング14内部のゲル部材15が吸収する。そして、ゲル部材15が受けた応力は、ゲル部材15が変形して流路抵抗が弱い方向へ流れる原理によって、ケーシング14の開口端部から間隙20を介して、
図3に黒線矢印で示すように、ケーシング14外に圧出されることとなる。
【0035】
図4は、圧縮成形によるモールディング成形時のケーシングの外観斜視図である。
このとき、間隙24の開口面積は、ケーシング14の受圧面積(ケーシング14のモールディング樹脂に接している外面(天面及び側面)の面積)よりも小さいため、間隙20から圧出されるゲル部材15の圧力は、モールド樹脂の圧力よりも高くなっているため、得4に示すようにケーシング14の開口端部から間隙20を介して、圧出され、樹脂モールドを押し戻すこととなる。
【0036】
このときのケーシング14内の低耐圧部品13に印可される圧力は、モールディング樹脂の圧力よりも低くなっているため、低耐圧部品13が変形したり、破壊したりすることがなく、部品機能を実現する正常な状態を保つことができる。
【0037】
図5は、モールディング成形時の成形圧力の変化の説明図である。
図5に実線で示すように、ケーシング14及びゲル部材15を設けた場合の低耐圧部品13に印可される最大衝撃力FMAXは、
図5に破線で示すように、ケーシング14及びゲル部材15を設けない場合の低耐圧部品13に印可される最大衝撃力FMAX0から大きく低下し、低耐圧部品13が変形、破壊に至る可能性がある衝撃力閾値Fthよりも小さくすることができ、より確実に低耐圧部品13を保護することが可能となる。
【0038】
以上の説明のように、本第1実施形態によれば、基板に実装された低耐圧部品13にかぶせたケーシング14が受けた応力をゲル部材15を介して、再びケーシング14外に逃がすことができるため、モールディング成形時の低耐圧部品13の変形、破壊を低減することができる。
【0039】
また、本第1実施形態の手法によれば、モールディング成形圧力を変更せずに、通常の樹脂モールド条件下で適応可能となり成形精度に影響することがない。
また、基板に部品実装後にケーシング14及びゲル部材15を対象となる低耐圧部品に装着するので、金型設計に依存しないため、金型の設計制約が無く、金型の制作費用を低くできる。
【0040】
また、ケーシング14は、金属製あるいは樹脂製であり、ゲル部材15を接着した状態でも固形として扱うことができるため、搬送、実装においても自動機などでピックアップすることができ、生産工程を簡略化できる。
また、低耐圧部品13毎に個別にケーシング14を制作できるため、低耐圧の全ての部品形状に適用が可能である。
【0041】
[2]第2実施形態
上記第1実施形態においては、ケーシング14及びゲル部材15を低耐圧部品13に支持させて、間隙20を設ける構成を採っていたが、本第2実施形態は、ケーシング14Aの開口端部に切欠部21を一つ又は複数設けるとともに、ケーシング14Aを基板11により支持するようにした実施形態である。
【0042】
図6は、第2実施形態のケーシングの説明図である。
本第2実施形態においても、基板に実装される低耐圧部品13に対し、基板上方向から基板を平面視した場合に低耐圧部品がその内部に収まるようにケーシング14Aを構成している。
【0043】
このケーシング14Aは、第1実施形態と同様に、樹脂製あるいは金属製であり、その形状は、
図6(A)の外観斜視図に示すように、キャップ形状(有底筒状部材)とされている。
そして、ケーシング14Aの開口端部には、切欠部21が設けられている(
図6の例では、4個の切欠部21)。
【0044】
ケーシング14Aは、
図6(B)の底面図に示すように、円筒形状で有り、下端部は、開口端部とされ、切欠部21が設けられている。そして切欠部21が設けられていない部分の開口端部は、足部となって、
図6(C)の一部断面図に示すように、基板11に当接するようになっている。
このケーシング14Aの形状は、
図6(C)に示すように、低耐圧部品13をその内部に収納可能な形状であって、ゲル部材15が接着されて収納された形状とされている。
【0045】
この場合においても第1実施形態と同様に、ゲル部材15は、低耐圧部品13の形状に合わせて、所定の厚みを有するとともに、少なくとも低耐圧部品13の天面に接した状態で低耐圧部品13に支持され、その下端は、ケーシング14Aの開口端部に至っている。
【0046】
また、ゲル部材15は、ケーシング14Aの内面に接着されている。また、ゲル部材15の形状は、対応する低耐圧部品13の形状にある程度沿った形状とされている。
ここで、切欠部21は、基板11と協働して、モールディング成形時の圧力を逃がすためにゲル部材15が圧出される圧出経路を構成している。
【0047】
すなわち、ケーシング14Aとゲル部材15は、協働して低耐圧部品13に印可される圧力を吸収する機能を有することとなっている。さらにケーシング14Aの切欠部21は、低耐圧部品13の形状に合わせてゲル部材を15を均一に保持する機能及び全方位からの圧力によって潰れたゲル部材15の逃げ道である圧出経路を意図的に設ける機能を実現している。
【0048】
図7は、第2実施形態における圧縮成形によるモールディング成形時の説明図である。
圧縮成形によるモールディング成形時には、ケーシング14A及びゲル部材15が装着された低耐圧部品13に全方位から圧力MPが印可される。
【0049】
この場合において、ケーシング14Aにおいてより面積の大きい周面に対し、天面よりも大きい圧力が印可されることとなるので(すなわち、単位面積あたりの圧力は同じであるため)、ケーシング14Aが受けた各面からの応力をケーシング14A内部のゲル部材15が吸収する。そして、ゲル部材15が受けた応力は、ゲル部材15が変形して流路抵抗が弱い方向へ流れる原理によって、ケーシング14Aの切欠部21を介して、
図7に黒線矢印で示すように、ケーシング14A外に圧出されることとなる。
【0050】
以上の説明のように、本第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、基板に実装された低耐圧部品13にかぶせたケーシング14Aが受けた応力をゲル部材15を介して、再びケーシング14A外に逃がすことができるため、モールディング成形時の低耐圧部品13の変形、破壊を低減することができる。
【0051】
さらに本第2実施経形態によれば、ケーシング14Aは、基板11に当接しているため、その位置が変わることは無く、したがって低耐圧部品13との間の距離も一定に保つことができ、モールディング成形条件の変化にも容易に対応できる。
また、他の効果についても第1実施形態と同様である。
【0052】
[3]第3実施形態
上記第2実施形態においては、ケーシング14Aに切欠部21を設ける構成を採っていたが、本第3実施形態は、ケーシング14Bの側面部(周面部)に開口部22を一つ又は複数設けるとともに、ケーシング14Bを基板11により支持するようにした実施形態である。
【0053】
図8は、第3実施形態のケーシングの説明図である。
本第3実施形態においても、基板に実装される低耐圧部品13に対し、基板上方向から基板を平面視した場合に低耐圧部品がその内部に収まるようにケーシング14Bを構成している。
【0054】
このケーシング14Bも、第1実施形態と同様に、樹脂製あるいは金属製であり、その形状は、
図8(A)の外観斜視図に示すように、キャップ形状(有底筒状部材)とされている。
そして、ケーシング14Bの側面部(周面部)には、開口部22が設けられている(
図8の例では、4個の開口部22)。
【0055】
ケーシング14Bは、
図8(B)の底面図に示すように、円筒形状であり、下端部は、開口端部とされている。そしてケーシング14Bの側面部(周面部)には、開口部22が設けられている。そしてケーシング14Bの開口端部は、
図8(C)の一部断面図に示すように、基板11に当接して支持されるようになっている。
【0056】
このケーシング14Bの形状も、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、
図8(C)に示すように、低耐圧部品13をその内部に収納可能な形状であって、ゲル部材15が接着されて収納された形状とされている。
【0057】
この場合においても第1実施形態と同様に、ゲル部材15は、低耐圧部品13の形状に合わせて、所定の厚みを有するとともに、少なくとも低耐圧部品13の天面に接した状態で低耐圧部品13に支持され、その下端は、ケーシング14Bの開口端部に至っている。
また、ゲル部材15は、ケーシング14Bの内面に接着されている。また、ゲル部材15の形状は、対応する低耐圧部品13の形状にある程度沿った形状とされている。
【0058】
ここで、開口部22は、モールディング成形時の圧力を逃がすためにゲル部材15が圧出される圧出経路を構成している。
【0059】
すなわち、ケーシング14Bとゲル部材15は、協働して低耐圧部品13に印可される圧力を吸収する機能を有することとなっている。さらにケーシング14Bは、低耐圧部品13の形状に合わせてゲル部材を15を均一に保持する機能及び全方位からの圧力によって潰れたゲル部材15の逃げ道である圧出経路を意図的に設ける機能を実現している。
【0060】
図9は、第3実施形態における圧縮成形によるモールディング成形時の説明図である。
圧縮成形によるモールディング成形時には、ケーシング14B及びゲル部材15が装着された低耐圧部品13に全方位から圧力MPが印可される。
【0061】
この場合において、ケーシング14Bにおいてより面積の大きい周面に対し、天面よりも大きい圧力が印可されることとなるので(すなわち、単位面積あたりの圧力は同じであるため)、ケーシング14Bが受けた各面からの応力をケーシング14B内部のゲル部材15が吸収する。そして、ゲル部材15が受けた応力は、ゲル部材15が変形して流路抵抗が弱い方向へ流れる原理によって、ケーシング14Bの開口部22を介して、ケーシング14外に圧出されることとなる。
【0062】
以上の説明のように、本第3実施形態によれば、第1実施形態と同様に、基板に実装された低耐圧部品13にかぶせたケーシング14Bが受けた応力をゲル部材15を介して、再びケーシング14B外に逃がすことができるため、モールディング成形時の低耐圧部品13の変形、破壊を低減することができる。
【0063】
さらに本第3実施経形態によれば、ケーシング14Bは、基板11に当接しているため、その位置が変わることは無く、したがって低耐圧部品13との間の距離も一定に保つことができ、モールディング成形条件の変化にも容易に対応できる。
【0064】
また、基板11に対する当接面は、環状となっているため、ケーシング14Bの強度を高く保つことができる。
また、他の効果については第1実施形態と同様である。
【0065】
以上の第3実施形態においては、ケーシングの側面部に開口部が設けられている場合について説明したが、ケーシングの上面部に開口部が設けられてもよい。また、ケーシングの側面部の開口部とともに、ケーシングの開口端部の切欠部あるいは側面部の開口部を設けるようにすることも可能である。
【0066】
以上、本発明の実施形態を例示したが、上記実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、表示要素等のスペック(構造、種類、方向、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0067】
10 半導体装置
11 回路基板
12A~12C 部品(第1部品)
13 低耐圧部品(第2部品)
14、14A、14B ケーシング
15 封止部材
20 間隙
21 切欠部
22 開口部