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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119532
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】型枠
(51)【国際特許分類】
   E01B 3/40 20060101AFI20220809BHJP
   E04G 13/02 20060101ALI20220809BHJP
   E01B 1/00 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
E01B3/40
E04G13/02 A
E01B1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021016734
(22)【出願日】2021-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】500538472
【氏名又は名称】株式会社札幌山水
(71)【出願人】
【識別番号】000100986
【氏名又は名称】アオイ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 芳男
(72)【発明者】
【氏名】塩本 崇公
【テーマコード(参考)】
2D056
2E150
【Fターム(参考)】
2D056AA06
2E150BA19
2E150BA38
2E150BA48
2E150BA52
2E150BA53
2E150DA14
2E150GB31
2E150HD02
2E150HD12
2E150MA02Y
2E150MA03Y
2E150MA11X
2E150MA46Z
(57)【要約】
【課題】軽量化することでその取り扱いが良好となり、その作業効率を向上させることができ、しかも、円柱状突起の仕上がり面が滑らかになる型枠を提供する。
【解決手段】型枠1は、合成樹脂製の円筒状部材4と、該円筒状部材4の軸方向上下端にそれぞれ装着され、該円筒状部材4から径方向外方に突設される円環状のフランジ部6を有する金属製のリング部材5と、を備え、リング部5材は、円筒状部材4の外周面に沿って配置される。これにより、型枠1全体を軽量化することができ、取り扱いが良好となり、その作業効率を向上させることができ、しかも、成型後の円柱状突起の外周面を滑らかできれいな仕上がり面とすることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラブ軌道に設置されるコンクリート製の円柱状突起を成型するための型枠であって、
合成樹脂製の円筒状部材と、
該円筒状部材の軸方向上下端にそれぞれ装着され、該円筒状部材から径方向外方に突設される円環状のフランジ部を有する金属製のリング部材と、を備え、
前記リング部材は、前記円筒状部材の外周面に沿って配置されることを特徴とする型枠。
【請求項2】
前記円筒状部材は、径方向に沿って、一方の半円筒状部材と他方の半円筒状部材とに2分割されて構成され、前記リング部材は、径方向に沿って、一方の半リング部材と他方の半リング部材とに2分割されて構成され、
前記型枠は、前記一方の半円筒状部材から径方向外方に突設された連結用鍔部と、前記他方の半円筒状部材から径方向外方に突設された連結用鍔部とを重ね合わせ、それぞれに設けた取付孔を一致させると共に各取付孔を介してボルト、ナットにより連結する構成であることを特徴とする請求項1に記載の型枠。
【請求項3】
前記円筒状部材は、塩化ビニル樹脂製であり、
前記リング部材は、アルミ製またはステンレス製であることを特徴とする請求項1または2に記載の型枠。
【請求項4】
前記円筒状部材は、径方向に沿って、一方の半円筒状部材と他方の半円筒状部材とに2分割されて構成され、前記リング部材は、径方向に沿って、一方の半リング部材と他方の半リング部材とに2分割されて構成され、
前記型枠は、前記一方の半円筒状部材から径方向外方に突設された連結用鍔部と、前記他方の半円筒状部材から径方向外方に突設された連結用鍔部とが、断面コ字状のクリップ部材により連結されて構成されることを特徴とする請求項1に記載の型枠。
【請求項5】
前記円筒状部材は、径方向に沿って、一方の半円筒状部材と他方の半円筒状部材とに2分割されて構成され、前記リング部材は、径方向に沿って、一方の半リング部材と他方の半リング部材とに2分割されて構成され、
前記型枠は、前記一方の半円筒状部材から径方向外方に突設された連結用鍔部と、前記他方の半円筒状部材から径方向外方に突設された連結用鍔部とが、蝶番金具により連結されて構成されることを特徴とする請求項1に記載の型枠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラブ軌道に設置する円柱状突起を成型するための型枠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道の軌道には、古くからのバラスト軌道をはじめ、様々な軌道構造があるが、保守の省力化を目的とした軌道構造の代表的なものにスラブ軌道40(図10参照)がある。スラブ軌道40は、まくら木を砕石(バラスト)で支えるバラスト軌道と異なり、図9及び図10を参照して、コンクリート製の道床50上に設けたてん充層51にてその高さを調節して、その上に並べたプレキャスト製の軌道スラブ52の上にレール53、53を固定して構成されている。軌道スラブ52は、コンクリート製であって、縦長で直方体からなる。
【0003】
鉄道の軌道のうち、特に、新幹線の軌道は、山陽新幹線で本格的にこのスラブ軌道40が採用されて以来、日本中の新幹線の軌道に採用されている。図9及び図10を参照して、上述したスラブ軌道40に備えられたプレキャスト製の軌道スラブ52の長手方向両端面には、平面視半円形状の凹部55、55がそれぞれ設けられている。この軌道スラブ52、52が長手方向に沿って直列に複数配置され、隣接する軌道スラブ52、52の凹部55、55間に設けられた円形状空間内に、円柱状突起60がはめ込まれている。当該円柱状突起60は、コンクリート製であって、コンクリート製の道床50の上面から一体的にスラブ軌道40に沿って一定間隔をおいて複数立設(打設)されている。
【0004】
これら円柱状突起60、60により、直列に複数配置された軌道スラブ52、52が、水平方向からの力を受けても変位しないように拘束することが可能になっている(特許文献1参照)。これら円柱状突起60は、各軌道スラブ52が水平方向からの力で変位することを抑制するために立設されているが、その機能以外に列車を制御するための信号送信機を設置する設置台にもなる。具体的には、円柱状突起60の上面に、平面視矩形状(例えば6cm×8cm)の機器設置用凹部(図示略)を設け、この機器設置用凹部に信号送信機を設置できるように構成されている。
【0005】
なお、円柱状突起60は、トンネル内(トンネル内で坑口から200mよりも奥側)における軌道スラブ52、52間に設置するものと、トンネル外(トンネル内で坑口から200mよりも手前を含む)における軌道スラブ52、52間に設置するものとでは、寸法が異なっている。具体的には、トンネル内に設置される各円柱状突起60の寸法は、直径500mm、高さ250mmに設定されている。一方、トンネル外に設置される各円柱状突起60の寸法は、直径520mm、高さ260mmに設定されている。
【0006】
ところで、環境や気温の変化による、軌道スラブ52上のレール53、53の伸縮については、レール締結装置(図示略)上で滑るように固定されているため、通常時はレール53、53の伸縮によって、軌道スラブ52は追従しないようになっている。一方、軌道スラブ52の温度伸縮は、円柱状突起60の外周面と、軌道スラブ52の長手方向端面に設けた凹部55との間のクリアランス(目地)にて吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-148120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般的に、円柱状突起60は、コンクリート製の道床50の設置位置における上面を平坦に調整して、その箇所に略円筒形状の金属製の型枠を設置したのち、型枠内にコンクリートを打設することで形成される。
【0009】
しかしながら、この従来の型枠は、その全体が金属製であり、重量が大きく、運搬作業等において大きな労力を必要として、その取り扱いが非常に悪かった。また、従来の型枠は、コンクリート打設のたびにその内面に多くの剥離剤を塗布する必要があり作業が煩雑になっていた。また、従来の型枠には鉄製のものもあり、防錆のためにその表面を塗装しているが、繰り返し使用により塗装も剥げ、剥げた部分が錆びるという繰り返しで、そのたびに錆落とし作業が必要になっていた。しかも、従来の型枠では、錆落としが不足したり、その使用回数が増えると、脱型後の円柱状突起60の外周面の仕上げ表面が粗くなる虞があり、好ましくない。
【0010】
そして、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、軽量化することでその取り扱いが良好となり、その作業効率を向上させることができ、しかも、成型後の円柱状突起の仕上がり面を滑らかになる型枠を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、請求項1の発明は、スラブ軌道に設置されるコンクリート製の円柱状突起を成型するための型枠であって、合成樹脂製の円筒状部材と、該円筒状部材の軸方向上下端にそれぞれ装着され、該円筒状部材から径方向外方に突設される円環状のフランジ部を有する金属製のリング部材と、を備え、前記リング部材は、前記円筒状部材の外周面に沿って配置されることを特徴とする。
請求項1の発明では、型枠の主体である円筒状部材は、合成樹脂にて構成されているので、型枠全体を軽量化することができ、型枠の取り扱いが非常に良好となり、しかも、錆落とし等の作業等の余計な作業を無くすことができる。また、リング部材は、円筒状部材の外周面に沿って配置されているので、型枠の内壁面全域に、合成樹脂製の円筒状部材の内壁面を露出させることができ、成型されたコンクリート製の円柱状突起の外周面が滑らかできれいな仕上げ面となり、しかも、剥離剤の塗布作業をほとんど必要としない。さらに、合成樹脂製の円筒状部材の軸方向上下端に、金属製のリング部材がそれぞれ装着されているので、型枠として、その必要とする剛性を確保することができる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載の発明において、前記円筒状部材は、径方向に沿って、一方の半円筒状部材と他方の半円筒状部材とに2分割されて構成され、前記リング部材は、径方向に沿って、一方の半リング部材と他方の半リング部材とに2分割されて構成され、前記型枠は、前記一方の半円筒状部材から径方向外方に突設された連結用鍔部と、前記他方の半円筒状部材から径方向外方に突設された連結用鍔部とを重ね合わせ、それぞれに設けた取付孔を一致させると共に各取付孔を介してボルト、ナットにより連結する構成であることを特徴とする。
請求項2の発明では、型枠は、一方の半円筒状部材の連結用鍔部と、他方の半円筒状部材の連結用鍔部とを重ね合わせて、各連結用鍔部の取付孔を一致させつつ各取付孔を介してボルト、ナットにより連結する構成であるので、作業者による、コンクリート打設時における型枠(2つの半円筒状部材)の組付作業、及びコンクリート打設後の脱型時における2つの半円筒状部材への分解作業を効率良く行うことができ、その作業効率を向上させることができる。また、円筒状部材及びリング部材が、径方向に沿って2分割されて構成されているので、コンクリート製の半円柱状突起を成型する際にも、この型枠を支障なく採用することができる。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記円筒状部材は、塩化ビニル樹脂製であり、前記リング部材は、アルミ製またはステンレス製であることを特徴とする。
請求項3の発明では、円筒状部材を塩化ビニル樹脂製とすると、軽量化できることに加え、塩化ビニル樹脂は、その特性として、長期間にわたり強度を維持できる安定性、及び劣化しにくい耐久性等が優れているので、何度も再使用される型枠として十分な機能を発揮することができる。また、リング部材をアルミ製とした場合には、型枠全体のさらなる軽量化に貢献することができ、リング部材をステンレス製とした場合には、型枠が耐食性に優れたものとなる。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1に記載の発明において、前記円筒状部材は、径方向に沿って、一方の半円筒状部材と他方の半円筒状部材とに2分割されて構成され、前記リング部材は、径方向に沿って、一方の半リング部材と他方の半リング部材とに2分割されて構成され、前記型枠は、前記一方の半円筒状部材から径方向外方に突設された連結用鍔部と、前記他方の半円筒状部材から径方向外方に突設された連結用鍔部とが、断面コ字状のクリップ部材により連結されて構成されることを特徴とする。
請求項4の発明では、一方の半円筒状部材の連結用鍔部と、他方の半円筒状の連結用鍔部とをクリップ部材により連結するので、作業者による、コンクリート打設時における型枠(2つの半円筒状部材)の組付作業、及びコンクリート打設後の脱型時における2つの半円筒状部材への分解作業を効率良く行うことができ、その作業効率をさらに向上させることができる。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1に記載の発明において、前記円筒状部材は、径方向に沿って、一方の半円筒状部材と他方の半円筒状部材とに2分割されて構成され、前記リング部材は、径方向に沿って、一方の半リング部材と他方の半リング部材とに2分割されて構成され、前記型枠は、前記一方の半円筒状部材から径方向外方に突設された連結用鍔部と、前記他方の半円筒状部材から径方向外方に突設された連結用鍔部とが、蝶番金具により連結されて構成されることを特徴とする。
請求項5の発明では、一方の半円筒状部材の連結用鍔部と他方の半円筒状部材の連結用鍔とは蝶番金具により連結されるので、型枠(2つの半円筒状部材)を運搬する際等、その取り扱いが良好となる。しかも、作業者による、コンクリート打設時における型枠(2つの半円筒状部材)の組付作業、及びコンクリート打設後の脱型時における2つの半円筒状部材への分解作業をさらに効率良く行うことができ、その作業効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の型枠によれば、軽量化することでその取り扱いが良好となり、剥離剤の塗布や錆落とし等の作業を抑制でき、しかも、成型後の円柱状突起の外周面を滑らかできれいな仕上がり面とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本実施形態に係る型枠の平面図である。
図2図2は、本実施形態に係る型枠の側面図である。
図3図3は、本実施形態に係る型枠の側面図である。
図4図4(a)は、本実施形態に係る型枠に採用される半円筒状部材の平面図であり、(b)は側面図である。
図5図5(a)は、本実施形態に係る型枠に採用される半リング部材の平面図であり、(b)は側面図である。
図6図6は、本実施形態に係る型枠に採用される半リング部材の半円筒部が半円筒状部材の連結用鍔部の収容凹部に収容された状態を示す断面図である。
図7図7(a)は、本実施形態に係る型枠に採用される各半円筒状部材の連結用鍔部がクリップ部材により連結される様子を示す斜視図であり、(b)は平面図である。
図8図8(a)は、本実施形態に係る型枠に採用される各半円筒状部材の連結用鍔部蝶番金具により連結される様子を示す斜視図であり、(b)は、各半円筒状部材が蝶番金具を中心に閉じた状態を示す平面図であり、(c)は、各半円筒状部材が蝶番金具を中心に開いた状態を示す平面図である。
図9図9は、鉄道に採用されるスラブ軌道を示す斜視図である。
図10図10は、スラブ軌道に採用される軌道スラブの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を図1図10に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る型枠1は、図9を参照して、鉄道のスラブ軌道40に複数設置されるコンクリート製の円柱状突起60を成型するためのものである。図1図3に示すように、本実施形態に係る型枠1は、径方向外方に突設され、軸方向に延びる鍔部7を有する合成樹脂製の円筒状部材4と、該円筒状部材4の軸方向上下端にそれぞれ装着され、径方向外方に突設される円環状のフランジ部6を有するリング部材5と、を備えている。当該リング部材5は、円筒状部材4の外周面に沿って配置されている。
【0019】
円筒状部材4は、一方の半円筒状部材10と他方の半円筒状部材10とに2分割されて構成される。半円筒状部材10は、合成樹脂製、詳しくは、塩化ビニル樹脂製である。図4も参照して、半円筒状部材10は、半円筒部12と、該半円筒部12の周方向両端部から径方向外方にそれぞれ突設され、軸方向に延びる連結用鍔部13と、を一体的に備えている。半円筒部12には、後述する半リング部材20の半円筒部22との連結のためのリベット26’(図6参照)が挿通される挿通孔18が複数形成される。この挿通孔18は、半円筒部12の軸方向上下端部において、その周方向に沿って間隔を置いて複数形成される。
【0020】
連結用鍔部13は、断面矩形状に形成される。図4及び図6を参照して、連結用鍔部13は半円筒部12の軸方向略全域に亘って形成されているが、各連結用鍔部13の軸方向上下端に、後述する半リング部材20の半フランジ部23の厚み相当分の切欠部16、16がそれぞれ形成されると共に、各連結用鍔部13の軸方向(長手方向)上下端面には、その基端部に後述する半リング部材20の半円筒部22を収容するための収容凹部17が軸方向に沿ってそれぞれ形成される。連結用鍔部13には、取付孔15が軸方向に沿って間隔を置いて複数形成されている。各連結用鍔部13の切欠部16の表面には、後述する半リング部材20の半フランジ部22との連結のためのリベット26が挿通される挿通孔16aが形成される。
【0021】
図1図3を参照して、これら、一方の半円筒状部材10に設けた各連結用鍔部13と、他方の半円筒状部材10に設けた各連結用鍔部13とを重ね合わせると共に、各連結用鍔部13の各取付孔15、15(図4参照)を一致させて、該各取付孔15、15を介してボルト、ナット19により連結することで、鍔部7(連結用鍔部13、13が重なった部位)を有する円筒状部材4を構成することができる。
【0022】
図1図3に示すように、リング部材5は、一方の半リング部材20と他方の半リング部材20とに2分割されて構成される。半リング部材20は、金属製である。半リング部材20は、好ましくは、アルミ製またはステンレス製である。図5も参照して、半リング部材20は、半円筒部22と、該半円筒部22の軸方向端部から径方向外方に半円環状にて突設される半フランジ部23と、を備えている。
【0023】
図5を参照して、半円筒部22には、半円筒状部材10の半円筒部12との連結のためのリベット26’(図6参照)が挿通される挿通孔24が複数形成される。この挿通孔24は、半円筒部22において、周方向に沿って間隔を置いて複数形成される。図6を参照して、半リング部材20を構成する半円筒部22の内径が、半円筒状部材10を構成する半円筒部12の外径に略一致する。図5を参照して、半フランジ部23には、周方向に間隔をおいて複数の貫通孔25が形成される。半フランジ部23の周方向両端には、半円筒状部材10の連結用鍔部13との連結のためのリベット26等が挿通される挿通孔27がそれぞれ形成されている。
【0024】
半リング部材20において、半フランジ部23の、半円筒部22からの突出量と、半円筒状部材10において、連結用鍔部13の、半円筒部12からの突出量とは略同じである。後で述べているが、図6から解るように、半リング部材20の半フランジ部23と、半円筒状部材10の連結用鍔部13とは、半フランジ部23の挿通孔27及び連結用鍔部13の挿通孔16aにそれぞれ挿通されるリベット26等により連結される。
【0025】
そして、図1図3及び図6に示すように、半リング部材20を、半円筒状部材10の軸方向上下端にそれぞれ配置する。その際、半リング部材20の半円筒部22の内周面を半円筒状部材10の半円筒部12の外周面に当接させつつ、また、半リング部材20の半円筒部22を半円筒状部材10の各連結用鍔部13の収容凹部17に収容すると共に、半リング部材20の半フランジ部23を各連結用鍔部13の切欠部16に沿うようにして配置する。
【0026】
その後、半リング部材20の半フランジ部23の周方向両端と、半円筒状部材10の周方向両端に位置する各連結用鍔部13、13とを、半フランジ部23の周方向両端に設けた挿通孔27、27及び各連結用鍔部13、13に設けた挿通孔16a、16aを介してリベット26、26等でそれぞれ連結する。また、半円筒状部材10の半円筒部12の軸方向上下端部において、半リング部材20の半円筒部22と重なった部位を、各半円筒部12、22にそれぞれ設けた挿通孔18、24(図4及び図5参照)を介してリベット26’(図6のみに図示)等によりそれぞれ連結する。
【0027】
引き続き、一方の半リング部材20が装着された一方の半円筒状部材10の各連結用鍔部13と、他方の半リング部材20が装着された他方の半円筒状部材10の各連結用鍔部13とを重ね合わせると共に、各連結用鍔部13の各取付孔15、15を一致させて、該各取付孔15、15を介してボルト、ナット19により連結する。その結果、本実施形態に係る型枠1が構成される。言い換えれば、本実施形態に係る型枠1は、2つの半円筒状部材10、10を連結してなる円筒状部材4の軸方向上下端に、円環状のフランジ部6を有するリング部材5(2つの半リング部材20、20)がそれぞれ装着されて構成される。
【0028】
なお、本実施形態に係る型枠1として構成されると、図6に示すように、半リング部材20(リング部材5)の半フランジ部23(フランジ部6)の先端面と、半円筒状部材10(円筒状部材4)の連結用鍔部13(鍔部7)の先端面とが同一平面上に位置する。また、半円筒状部材10(円筒状部材4)の軸方向端面と、半リング部材20(リング部材5)の半フランジ部23(フランジ部6)の軸方向端面とが同一平面上に位置する。また、図1及び図6から解るように、本実施形態に係る型枠1の内壁面全域に、塩化ビニル樹脂製の円筒状部材4(2つの半円筒状部材10、10)の内壁面が露出する。
【0029】
次に、図9を参照して、以上のように構成された、本実施形態に係る型枠1を使用して、スラブ軌道40に備えられた軌道スラブ52の長手方向両端面に設けた凹部55に係合する円柱状突起60を施工する方法を以下に説明する。
まず、本実施形態に係る型枠1の内壁面(円筒状部材4の内壁面)をウエスにて水拭きする。なお、金ブラシは傷をつけるので使用を控える。続いて、型枠1の内壁面が非常に粗くなった場合には、刷毛にて剥離剤を塗布する必要があるが、通常は塗布しない。続いて、スラブ軌道40に備えられたコンクリート製の道床50上の所定位置に型枠1を設置する。このとき、型枠1の設置位置が平坦となるように下地調整を行う。
【0030】
続いて、型枠1を固定する際には、型枠1に採用したリング部材5のフランジ部6に設けた複数の貫通孔25にアンカーを打ってボルト止めすることも可能であるが、通常、木製の棒でリング部材5のフランジ部6を上から押さえつけて、この木製の棒を釘で止めて固定する方法が採用される。
【0031】
続いて、型枠1内にコンクリートを打設する(コンクリートを打設する前に型枠1内に鉄筋を配置する場合がある)。続いて、所定時間が経過後脱型し、使用した型枠1は他の設置箇所にて再使用する。型枠1は、複数回転用することができる。再使用の際にも、型枠1の内壁面に剥離剤を塗布せずに使用することが可能である。なお、脱型時には、型枠1の、一方の半円筒状部材10(一方の半リング部材20を含む)の各連結用鍔部13と、他方の半円筒状部材10(他方の半リング部材20を含む)の各連結用鍔部13とを連結しているボルト、ナット19を取り外すことで脱型する。これにより、スラブ軌道40に、外周面が滑らかできれいな仕上がり面となる円柱状突起60を立設(打設)することができる。
【0032】
以上説明した、本発明の実施形態に係る型枠1では、塩化ビニル樹脂製の円筒状部材4(2つの半円筒状部材10、10)と、該円筒状部材4の軸方向上下端にそれぞれ装着され、該円筒状部材4から径方向外方に突設される円環状のフランジ部6(2つの半フランジ部23、23)を有するステンレス製またはアルミ製のリング部材5(2つの半リング部材20、20)と、を備えている。このように、型枠1の主体である円筒状部材4が塩化ビニル樹脂にて構成されているので、型枠1全体を軽量化することができ、型枠1の取り扱いが非常に良好となり、その作業効率を向上させることができる。
【0033】
また、本発明の実施形態に係る型枠1では、塩化ビニル樹脂製の円筒状部材4は、径方向外方に突設され、軸方向に延びる鍔部7を有し、当該円筒状部材4の軸方向上下端に、ステンレス製またはアルミ製のリング部材5がそれぞれ装着されて構成されているので、塩化ビニル樹脂製の円筒状部材4を採用した型枠1であっても、その必要とする剛性を確保することができる。その結果、円筒状部材4内に打設されるコンクリートによる内圧に対して耐久性があり、複数回の使用に問題なく適応することができ、ひいては、コンクリート製の円柱状突起60の打設工事を円滑に進めることができる。
【0034】
さらに、本発明の実施形態に係る型枠1は、リング部材5は、円筒状部材4の外周面に沿って配置されており、型枠1の内壁面全域に、塩化ビニル樹脂製の円筒状部材4の内壁面を露出させる構成となっている。これにより、成型されたコンクリート製の円柱状突起60の外周面が滑らかできれいな仕上げ面となる。しかも、本発明の実施形態に係る型枠1を採用すると、錆落とし等の作業等の余計な作業を無くすことができ、また、剥離剤の塗布作業もほとんど必要としないので、その作業効率をさらに向上させることができる。
【0035】
さらにまた、本発明の実施形態に係る型枠1では、円筒状部材4は、径方向に沿って、各半円筒状部材10、10に2分割され、リング部材5は、径方向に沿って、半リング部材20、20に2分割されて構成されている。また、本発明の実施形態に係る型枠1は、一方の半円筒状部材10(一方の半リング部材20を含む)の連結用鍔部13と、他方の半円筒状部材10(他方の半リング部材20を含む)の連結用鍔部13とを重ね合わせて、各連結用鍔部13、13の取付孔15、15を一致させつつ各取付孔15、15を介してボルト、ナット19により連結する構成である。これにより、作業者による、コンクリート打設時における型枠1の組付作業、及びコンクリート打設後の脱型作業を効率良く行うことができ、その作業効率を向上させることができる。また、本発明の実施形態に係る型枠1を、コンクリート製の半円柱状突起を成型する際にも、支障なく採用することができる。この場合、半リング部材20を含む半円筒状部材10の開放側を塞ぐように、塩化ビニル樹脂製の平板を組み付けるように構成する必要がある。
【0036】
さらにまた、本発明の実施形態に係る型枠1では、該型枠1の主体である円筒状部材4を塩化ビニル樹脂にて構成しているので、型枠1を、長期間にわたり強度を維持できる安定性、及び劣化しにくい耐久性等が優れたものとすることができ、何度も再使用される型枠1として効果的である。また、リング部材5をアルミ製とした場合には、型枠1全体のさらなる軽量化に貢献でき、リング部材5をステンレス製とした場合には、型枠1が耐食性に優れたものとなる。
【0037】
なお、本実施形態では、図2及び図3から解るように、一方の半円筒状部材10(一方の半リング部材20を含む)の連結用鍔部13と、他方の半円筒状部材10(他方の半リング部材20を含む)の連結用鍔部13とをボルト、ナット19にて連結して型枠1を構成しているが、図7に示すように、一方の半円筒状部材10の連結用鍔部13と、他方の半円筒状部材10の連結用鍔部13とを重ね合わせ、断面コ字状の金属製のクリップ部材28にて挟み込むように嵌合して、クリップ部材28により各連結用鍔部13、13を連結することも可能である。クリップ部材28は、対向する、互いに近接する方向に付勢される弾性変形可能な挟持板部29、29を有している。
【0038】
また、この実施形態の場合、各連結用鍔部13の一側面にV字状の溝部31、31を設け、一方、クリップ部材28の各挟持板部29、29の先端に、互いに近接する方向に延びる爪部32、32をそれぞれ設ける。そして、一方の半円筒状部材10の連結用鍔部13と、他方の半円筒状部材10の連結用鍔部13とを重ね合わせ、これらをクリップ部材28にて挟み込むようにして連結した際、クリップ部材28の爪部32、32が、各連結用鍔部13、13の一側面に設けた溝部31、31にそれぞれ嵌合するように構成する。これにより、クリップ部材28が各連結用鍔部13、13から抜脱されるのを抑制することができ、各連結用鍔部13、13を安定して連結することができる。
【0039】
そして、この実施形態では、一方の半円筒状部材10の連結用鍔部13と、他方の半円筒状部材10の連結用鍔部13とをボルト、ナット19にて連結する実施形態よりも、作業者による、コンクリート打設時における型枠1の組付作業、及びコンクリート打設後の脱型作業を効率良く行うことができ、その作業効率をさらに向上させることができる。なお、一方の半円筒状部材10における一方の連結用鍔部13と、他方の半円筒状部材10における一方の連結用鍔部13とをボルト、ナット19にて連結して、一方の半円筒状部材10における他方の連結用鍔部13と、他方の半円筒状部材10における他方の連結用鍔部13とをクリップ部材28にて連結することもできる。
【0040】
また、図8に示すように、一方の半円筒状部材10の連結用鍔部13と、他方の半円筒状部材10の連結用鍔部13とを重ね合わせ、各連結用鍔部13、13に蝶番金具33を固定して、両者13、13を連結することもできる。この実施形態の場合、図8(b)及び(c)を参照して、一方の半円筒状部材10(一方の半リング部材20を含む)と、他方の半円筒状部材10(他方の半リング部材20を含む)とを、蝶番金具33を中心に互いに回動自在、言い換えれば、蝶番金具33を中心に開閉自在に構成することができる。なお、この実施形態では、一方の半円筒状部材10における一方の連結用鍔部13と、他方の半円筒状部材10における一方の連結用鍔部13とを蝶番金具33にて連結して、一方の半円筒状部材10における他方の連結用鍔部13と、他方の半円筒状部材10における他方の連結用鍔部13とをボルト、ナット19にて連結してもよい。
【0041】
また、一方の半円筒状部材10における一方の連結用鍔部13と、他方の半円筒状部材10における一方の連結用鍔部13とを蝶番金具33にて連結して、一方の半円筒状部材10における他方の連結用鍔部13と、他方の半円筒状部材10における他方の連結用鍔部13とをクリップ部材28により連結してもよい。
【0042】
そして、この実施形態の場合、型枠1において、一方の半円筒状部材10における一方の連結用鍔部13と、他方の半円筒状部材10における一方の連結用鍔部13とは、予め、蝶番金具33により連結されて構成されているので、型枠1を運搬する際等、片方の半円筒状部材10(半リング部材20を含む)が紛失する等の不都合を無くすことができ、その取り扱いが良好となる。しかも、コンクリート打設時及び脱型時には、作業者は、一方の半円筒状部材10における他方の連結用鍔部13と、他方の半円筒状部材10における他方の連結用鍔部13とだけをボルト、ナット19やクリップ部材28等により連結または連結解除すればよく、作業者による、コンクリート打設時における型枠1の組付作業、及びコンクリート打設後の脱型作業を効率良く行うことができ、その作業効率をさらに向上させることができる。
【0043】
なお、図示は省略するが、本実施形態に係る型枠1、1を上下に2つ重ねるように配置して、上側の型枠1のフランジ部6と下側の型枠1のフランジ部6とを重ね合わせて、各フランジ部6、6に形成された各貫通孔25、25を整合して、ボルト、ナット等により結合し、縦長の型枠1、1を形成することも可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 型枠,4 円筒状部材,5 リング部材,6 フランジ部,10 半円筒状部材,12 半円筒部,13 連結用鍔部,15 取付孔,19 ボルト、ナット,20 半リング部材,22 半円筒部,23 半フランジ部,28 クリップ部材,33 蝶番金具,40 スラブ軌道,60 円柱状突起
図1
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図10